説明

非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構

【課題】測定ヘッドの軸ストロークおよび測定時における測定ヘッドの移動に要する時間を短縮できる非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構を提供する。
【解決手段】3次元直交座標系72中の被測定物73における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッド71を、位置、姿勢を制御可能に保持する機構において、3次元直交座標系72の各軸上を移動可能な基台11と、第1,第2アーム12,13を設ける。第1アーム12は、基台11の下面に一端側を軸支してその軸周り方向に回転自在とし、他端側を下方側に曲げ形成する。第2アーム13は、第1アーム12の他端側の下面に一端側を軸支してその軸周り方向に回転自在とし、他端側を下方側に曲げ形成し、その下面に測定ヘッド71を下方側に向けて取り付ける。第2アーム13が軸周りに回転したとき、測定ヘッド71の投射光軸が逆円錐状の軌跡を描くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構(非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を用いて非接触で3次元直交座標を測定する非接触3次元座標測定装置は、光を光源から被測定物に投射し、その反射光を光センサで受け、上記光源の位置、光の投射角度・位置、光センサの位置等から三角測量の原理により求められる光源−被測定物間の距離に基づき、被測定物表面の3次元座標を測定する周知の座標測定装置である。
このような非接触3次元座標測定装置は、例えばクランクシャフトの鍛造型のような複雑な表面形状の各点の座標、ひいてはその表面形状の測定に好適であるが、この種の座標測定装置の測定ヘッド(上記光源、光センサ等を備えて構成され、一般にセンサと称される部品)の保持機構は、従来、次のように構成されていた。
すなわち、図8に示すように、非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド71を、3つの回転軸(r1軸、r2軸及びr3軸)の周りに回転可能に保持したものである。ここで、r1軸は、測定ヘッド71からの投射光74の光軸に平行に測定ヘッド71を貫く軸であり、測定ヘッド71はこの軸の周りに回転可能である。r2軸はr1軸に直交する軸(アームの回転軸)、r3軸はr1軸及びr2軸に直交する軸(アームの回転軸)である(特許文献1参照)。
【0003】
非接触3次元座標測定装置は、このように保持された測定ヘッド71を、上記3つの回転軸r1、r2及びr3の周りに適宜回転して所定の姿勢に制御し、3次元直交座標系72中の被測定物73表面の座標(x,y,z)を、光、詳しくは投射光74及びその反射光75を用いて非接触で測定するものである。座標測定に当たり、測定ヘッド71を所定の姿勢に制御するのは、投射光74及び反射光75による座標測定を可能とするためである。
図示を省略しているが、上記3つの回転軸r1、r2及びr3は、3次元直交座標系72のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台に連結、保持されており、この基台の移動によって測定ヘッド71の位置が制御される。
図中、DZ、DXは、座標(x,y,z)の測定に当たって、測定ヘッド71を破線アで示す位置から実線で示す位置に移動させる際の移動軸(Z、X)、移動方向(下向き、右向き)及び移動量(D、D)を示す。
測定ヘッド71は、このDZ、DXの移動が終了した後(あるいは移動と共に)、回転軸r1、r2及びr3の周りに適宜回転され、実線で示す姿勢に制御される。つまり、測定ヘッド71の焦点位置fが被測定物73上の所望位置に合わされ、その座標(x,y,z)が測定される
ここで焦点位置fとは、測定ヘッド71から3次元座標を測定したい方向(投射光74の投射方向)において、実際にその3次元座標の測定が可能な距離範囲(レンジ)内の各位置を指し、上記焦点位置fが合わされるとは、3次元座標を測定する際に、その測定が可能な上記レンジ内に測定ヘッド71を位置させることをいう。
【0004】
なお、特許文献1に記載の技術は、非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構(位置/姿勢制御機構)に係るものではないが、この特許文献1に記載の多関節ロボットにおける工具把持部材の保持機構(位置/姿勢制御機構)は、従来、一般的に行われている上述した測定ヘッド保持機構に共通する技術である。
【0005】
【特許文献1】特開平6−8182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、次のような問題が生じていた。
すなわち、上記のような非接触3次元座標測定装置において、クランクシャフトの鍛造型のような3次元的に複雑な形状をもつ被測定物を測定対象とした場合、投射光の拡散反射率を確保するためには測定ヘッド(センサ)を多方向に向けて、つまり、姿勢を様々に変えて測定する必要がある。しかし、上記従来技術においては、姿勢を変えると焦点位置が変化、つまり測定したい位置から外れてしまい、焦点位置を測定したい位置に合わせるためには測定ヘッドを大きく移動させなければならない。このため従来技術では、被測定物の長さに比較して軸ストロークを長くしなければならず、加えて、測定時における測定ヘッドの移動に要する時間も長くなった。
【0007】
図9は、従来技術において、実線で示す位置、姿勢にある測定ヘッド71を移動して、被測定物73長手方向の両端の上面隅部の座標α,βを測定する場合に、測定ヘッド71の焦点位置を、座標α,βの測定を可能とする位置、姿勢に変化させる様子を例示する。
この場合、測定ヘッド71は、実線で示す姿勢から破線アで示す姿勢に変えられ、次に測定ヘッド71の全軸ストロークL1の右端まで移動され、最後に高さH1だけ下降される。これにより、測定ヘッド71は、その焦点位置につき座標αの測定を可能とする位置、姿勢とされる(破線イで示す測定ヘッド71参照)。
上述動作は座標αの測定時に係るもので、座標βの測定時には、座標αの測定時とは左右を逆にした動作が行われる。座標αの測定に続いて座標βの測定を行う場合、換言すれば、測定ヘッド71を図9中の破線ウに示す姿勢に制御する場合には、座標αの測定時に行った高さ(Z)方向の移動は無用となる。
いずれにしても、従来技術においては、測定ヘッド71の被測定物長手方向に対応する全軸ストロークL1は、被測定物73の長手方向の長さL11よりもかなり長くなり、また、高さ(Z)方向の移動も必要となった。
【0008】
図10は、図9の右側面(被測定物73短手方向)において、その両端の上面隅部の座標α1,α2を測定する場合に、測定ヘッド71の焦点位置を、座標α1,α2の測定を可能とする位置、姿勢に変化させる様子を例示する。
この図において、破線エは座標α1測定時の測定ヘッド71の姿勢を示し、破線オは座標α2測定時の測定ヘッド71の姿勢を示す。
この図10に示すように、被測定物73短手方向両端の上面隅部の座標α1,α2を測定する際にも、測定ヘッド71の被測定物短手方向に対応する全軸ストロークL2は、被測定物73の短手方向の長さL21よりもかなり長くなり、また、高さ(Z)方向の移動も必要となった。
なお、これらの位置、姿勢の制御は、測定ヘッド保持機構を構成する基台(図示せず)及び回転軸r1、r2及びr3(図8参照)を制御して行われることは勿論である。
【0009】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、測定ヘッドの軸ストロークを短縮でき、測定時における測定ヘッドの移動に要する時間も短縮できる非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構を下記各態様の構成とすることによって解決される。
各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴及びそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
【0011】
以下の各項のうち、(1)項が請求項1に、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(5)項が請求項5に、(6)項が請求項6に、各々対応する。
【0012】
(1)3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第1アームと、この第1アームの他端側の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第2アームとを備え、前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第2アームの他端側の下面に取り付けられたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
(2)3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第1アームを備え、前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第1アームの他端側の下面に取り付けられたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
(3)3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第1アームを備え、前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第1アームの他端側の下面に軸支されてその軸周り方向に回転自在になされたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
(4)3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第1アームと、この第1アームの他端側の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第2アームとを備え、前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第2アームの他端側の下面に軸支されてその軸周り方向に回転自在になされたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
(5)3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在の第1アームと、この第1アームの他端側の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在の第2アームとを備え、前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第2アームの他端側の下面に取り付けられ、前記第2アームの回転中心軸を、該第2アームの下面側にて前記第1アームの回転中心軸側に向けて傾斜させると共に、前記第2アームが回転中心軸にて回転したときに前記測定ヘッドの投射光軸が逆円錐状の軌跡を描くように構成されたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
(6)前記第2アームの回転中心軸を、該第2アームの下面側にて前記第1アームの回転中心軸側に向けて傾斜させると共に、前記第2アームが回転中心軸にて回転したときに前記測定ヘッドの投射光軸が逆円錐状の軌跡を描かせるために、前記第1アームの他端側及び/又は前記第2アームの他端側を下方側に曲げ、又は前記第1アームと前記第2アームとの間及び/又は前記第2アームと前記測定ヘッドとの間に傾斜面付きブラケットを挿入することを特徴とする(5)に記載の非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定ヘッドの軸ストロークを短縮でき、測定時における測定ヘッドの移動に要する時間も短縮できる非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構を提供できる。
本発明が上記のような効果を発揮できることは、非接触3次元座標測定装置を小型化でき、また、非接触3次元座標測定装置における座標測定時間を短縮できることをも意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本明細書で参照される各図間において、同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1は、本発明による非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構の第1実施形態を示す構成図である。
この図に示すように、第1実施形態の測定ヘッド保持機構は、基台11と第1アーム12と第2アーム13とを備えてなる。
【0015】
ここで、基台11は、3次元直交座標系72のX,Y,Zの各軸上を移動可能な、つまり図中の左右方向、図示面と直交する方向及び図中の上下方向に移動可能な台である。
第1アーム12は、基台11の下面に一端部が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端部が下方側に曲げられたアームである。
第2アーム13は、第1アーム12の他端部の下面に一端部が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端部が下方側に曲げられたアームである。
測定ヘッド71は、その光投射口76を下方側に向けた状態で上記第2アーム13の他端部の下面に取り付けられている。
【0016】
すなわち、本実施形態では、非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド71を、2つの回転軸(R1軸及びR2軸)の周りに回転可能に保持したものである。ここで、R1軸はX−Y平面に直交する軸であり、第1アーム12はこのR1軸の軸周りに回転可能である。R2軸は第1アーム12の下方側に曲げられた他端部の平坦面に直交する軸であり、第2アーム13はこのR2軸の軸周りに回転可能である。
第1アーム12の他端部の曲げ角度は、R1軸とR2軸の交点が測定ヘッド71の焦点位置にほぼ一致するような角度に選定される。ここでは、第1アーム12の一端部の平坦面に対して約35度の角度で下方側に曲げられている。実際には、焦点位置は測定ヘッドからの投射光74の光軸(投射光軸)上に或る距離範囲を有しているので、第1アーム12の他端部の曲げ角度は、R1軸とR2軸の交点が測定ヘッド71の焦点位置の上記距離範囲(レンジ)内のほぼ中央に位置するような角度に選定されている。
第2アーム13の他端部の曲げ角度も、ここでは第1アーム12の曲げ角度と同様に設定されている。この曲げ角度によれば、第2アーム13がR2軸の軸周りをR1軸側に回転した場合に、その他端部が第1アーム12の一端部の直下に重なる。また図示例では、第2アーム13がR2軸を中心に回転した場合に、第2アーム13の他端部が第1アーム12の一端部の直下に重なった際に、測定ヘッド71の投射光軸がR1軸と重なるように構成されている。
なお、上記基台11、第1,第2アーム12,13の各駆動機構としては、図示を省略しているが、多関節ロボットの制御等に通常用いられている公知の駆動機構が用いられる。
【0017】
以上の構成によれば、第2アーム13がR2軸の軸周りに回転した場合に、測定ヘッド71の投射光軸が逆円錐状の軌跡を描くようになる。つまり、測定ヘッド71の姿勢を変えても焦点位置(逆円錐状の円錐頂点)は変化しなくなる。また、第1アーム12がR1軸の軸周りに回転した場合も、焦点位置は変わらない。
したがって、測定したい位置を焦点位置から外すことなく測定ヘッド71の姿勢を変えられる。つまり、座標測定できない(投射光74の拡散反射率を確保できない)姿勢を、第1,第2のR1軸,R2軸の回転によって測定できる姿勢を変えることができる。このとき、基台11の3次元座標系上の位置(x,y,z)を移動させる必要はない。
このことは、被測定物73の長手方向両端の上面隅部の座標α,βや、被測定物73の短手方向両端の上面隅部の座標α1,α2の測定についても同様である。
以上の作用、効果を発揮できれば、第1,第2アーム12,13のいずれか一方のみに曲げを形成するようにしてもよい。
【0018】
以下、座標α,βや座標α1,α2の測定について、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、本実施形態において、実線で示す位置、姿勢にある測定ヘッド71を移動して、被測定物73の長手方向両端の上面隅部の座標α,βを測定する場合に、測定ヘッド71の焦点位置を、座標α,βの測定を可能とする位置、姿勢に変化させる様子を例示する。
この場合、測定ヘッド71は、実線で示す姿勢から破線カで示す姿勢に変えられ、次に、その姿勢のまま、測定ヘッド71の全軸ストロークL3の右端まで移動される。これにより、測定ヘッド71は、その焦点位置につき座標αの測定を可能とする位置、姿勢とされる(破線キで示す測定ヘッド71参照)。この間、従来技術におけるような高さH1(図9参照)の下降は必要ない。
上述動作は座標αの測定時に係るもので、座標βの測定時には、座標αの測定時とは左右を逆にした動作が行われる。座標αの測定に続いて座標βの測定を行う場合、換言すれば、測定ヘッド71を図2中の破線クに示す姿勢に制御する場合も、高さ(Z)方向の移動は無用である。
いずれにしても、本実施形態においては、測定ヘッド71の被測定物長手方向に対応する全軸ストロークL3が被測定物73の長手方向の長さよりも長くなることはなく、図示例では被測定物の長手方向の長さと同じである。また、高さ(Z)方向の移動も無用となる。
すなわち、座標α,βの測定時において、被測定物長手方向の全軸ストロークL3を従来技術の全軸ストロークL1(図9参照)に比べて大幅に短縮できると共に、測定ヘッド71の移動に要する時間も従来技術に比べて大幅に短縮できる。
【0019】
図3は、図2の右側面(被測定物73短手方向)において、その両端の上面隅部の座標α1,α2を測定する場合に、測定ヘッド71の焦点位置を、座標α1,α2の測定を可能とする位置、姿勢に変化させる様子を例示する。
この図において、破線ケは座標α1測定時の測定ヘッド71の姿勢を示し、破線コは座標α2測定時の測定ヘッド71の姿勢を示す。
この図3に示すように、被測定物73の短手方向両端の上面隅部の座標α1,α2を測定する際にも、測定ヘッド71の被測定物短手方向に対応する全軸ストロークL4は、被測定物73の短手方向の長さよりも長くなることはなく、図示例では被測定物73の短手方向の長さと同じである。また、高さ(Z)方向の移動も無用となる。
すなわち、座標α1,α2の測定時において、被測定物短手方向の全軸ストロークL4を従来技術の全軸ストロークL2(図10参照)に比べて大幅に短縮できると共に、測定ヘッド71の移動に要する時間も従来技術に比べて大幅に短縮できる。
なお上述動作において、測定ヘッド71の位置、姿勢の制御は、測定ヘッド保持機構を構成する基台11及び回転軸R1及びR2(図1参照)を制御して行われることは勿論である。
【0020】
図4は、本発明による非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構の第2実施形態を示す構成図である。
この第2実施形態においては、図示するように、測定ヘッド保持機構を、基台11と第1アーム41とで構成している。
ここで、基台11は図1に示す基台11と同様である。第1アーム41は、図1に示す第1アーム12とほぼ同様に構成されている。すなわち、基台11の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられている。この第1アーム41は2段に曲げられている。
第1アーム41の他端側には測定ヘッド71が直接、つまり図1に示す第2アーム13等を介することなく、かつ第1アーム41に回転可能とされずに、取り付けられている。測定ヘッド71は、その光投射口76を下方側に向けた状態で上記第1アーム13の他端部の下面に取り付けられている。
【0021】
すなわち、第2実施形態では、非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド71を、1つの回転軸(R1軸)の周りに回転可能に保持したものである。ここで、R1軸はX−Y平面に直交する軸であり、第1アーム41はこのR1軸の軸周りに回転可能である。
第1アーム41の他端部の曲げ角度は、測定ヘッド71の焦点位置がR1軸上に位置するような角度に選定される。したがって、第1アーム41がR1軸を中心に回転した場合に、焦点位置がR1軸上に位置したまま測定ヘッド71が回転する。つまり、姿勢を変えても焦点位置が変わることがない。
【0022】
図5は、本発明による非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構の第3実施形態を示す構成図である。
この第3実施形態においては、図示するように、測定ヘッド保持機構を、基台11と第1アーム41とで構成している。
ここで、基台11及び第1アーム41は、図4に示す基台11及び第1アーム41と同様であるが、測定ヘッド71は、その光投射口76を下方側に向けた状態で上記第1アーム41の他端側の下面に軸支されてその軸周り方向に回転自在である。
【0023】
すなわち、第3本実施形態では、非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド71を、2つの回転軸(R1軸及びR2軸)の周りに回転可能に保持したものである。ここで、R1軸はX−Y平面に直交する軸であり、第1アーム41はこのR1軸の軸周りに回転可能である。R2軸は第1アーム41の下方側に曲げられた他端部の平坦面に直交する軸であるが、図1に示すR2軸とは異なり第2アーム13を回転可能とする軸ではなく、測定ヘッド71の投射光軸を回転させる軸である。
第1アーム41の他端部の曲げ角度は、測定ヘッド71がR2軸上の図示回転角度にあるときにその焦点位置がR1軸上に位置するような角度に選定される。したがって、測定ヘッド71がR2軸上の図示回転角度にあるときに、第1アーム41がR1軸を中心に回転した場合、焦点位置がR1軸上に位置したまま測定ヘッド71が回転する。つまり、姿勢を変えても焦点位置が変わることがない。R2軸の周りに測定ヘッド71を回転させれば、基台11を移動させずに焦点位置を移動できる。
【0024】
図6は、本発明による非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構の第4実施形態を示す構成図である。
この第4実施形態は、図示するように、測定ヘッド保持機構を、基台11と第1アーム12と第2アーム13とで構成している。
すなわちこの第4実施形態は、図1に示す第1実施形態とほぼ同様に構成されている。しかし測定ヘッド71については、第1実施形態では第2アーム13に回転可能とされずに取り付けられているのに対して、この第4実施形態では第2アーム13の他端側の下面に軸支されてその軸周り方向に回転自在である
したがって第4本実施形態では、図1に示す第1実施形態における動作に加えて、測定ヘッド71のR3軸の周りの回転動作が可能であり、更なる姿勢制御(焦点位置を変える制御を含む)を、基台11を移動させずに可能である。
【0025】
なお、図1、図4〜図6のいずれの実施形態にあっても、測定ヘッド71の投射光軸をR1軸に交差又は接近させるための傾きを、アーム12,13,41の曲げによって与えていたが、これを、傾斜面付きブラケットを用いて与えるようにしてもよい。
図4に示した第2実施形態において、傾斜面付きブラケットを適用した例を図7に示す。この図に示すように、測定ヘッド71は、曲げのない第1アーム41の他端部の下面に、傾斜面101が形成されたブラケット(傾斜面付きブラケット)102を介して取着されており、測定ヘッド71の投射光軸(投射光74)は、傾斜面付きブラケット102によってR1軸に交差する方向に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による測定ヘッド保持機構の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】同上測定ヘッド保持機構の座標測定動作(その1)の説明図である。
【図3】同上測定ヘッド保持機構の座標測定動作(その2)の説明図である。
【図4】本発明による測定ヘッド保持機構の第2実施形態を示す構成図である。
【図5】同じく第3実施形態を示す構成図である。
【図6】同じく第4実施形態を示す構成図である。
【図7】第1〜4実施形態とは異なる実施形態を示す構成図である。
【図8】従来技術による測定ヘッド保持機構の構成図である。
【図9】同上測定ヘッド保持機構の座標測定動作(その1)の説明図である。
【図10】同上測定ヘッド保持機構の座標測定動作(その2)の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
11:基台、12,41:第1アーム、13:第2アーム、71:測定ヘッド、72:3次元直交座標系、73:被測定物、74:投射光、75:反射光、76:光投射口、f:焦点位置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、
前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、
この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第1アームと、
この第1アームの他端側の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第2アームとを備え、
前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第2アームの他端側の下面に取り付けられたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
【請求項2】
3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、
前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、
この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第1アームを備え、
前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第1アームの他端側の下面に取り付けられたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
【請求項3】
3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、
前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、
この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第1アームを備え、
前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第1アームの他端側の下面に軸支されてその軸周り方向に回転自在になされたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
【請求項4】
3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、
前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、
この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第1アームと、
この第1アームの他端側の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在で、他端側が下方側に曲げられた第2アームとを備え、
前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第2アームの他端側の下面に軸支されてその軸周り方向に回転自在になされたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
【請求項5】
3次元直交座標系中の被測定物における座標を、光を用いて非接触で測定する装置の測定ヘッドを、位置及び姿勢を制御可能に保持する機構において、
前記3次元直交座標系のX,Y,Zの各軸上を移動可能な基台と、
この基台の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在の第1アームと、
この第1アームの他端側の下面に一端側が軸支されてその軸周り方向に回転自在の第2アームとを備え、
前記測定ヘッドは、その光投射口を下方側に向けた状態で前記第2アームの他端側の下面に取り付けられ、
前記第2アームの回転中心軸を、該第2アームの下面側にて前記第1アームの回転中心軸側に向けて傾斜させると共に、前記第2アームが回転中心軸にて回転したときに前記測定ヘッドの投射光軸が逆円錐状の軌跡を描くように構成されたことを特徴とする非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。
【請求項6】
前記第2アームの回転中心軸を、該第2アームの下面側にて前記第1アームの回転中心軸側に向けて傾斜させると共に、前記第2アームが回転中心軸にて回転したときに前記測定ヘッドの投射光軸が逆円錐状の軌跡を描かせるために、前記第1アームの他端側及び/又は前記第2アームの他端側を下方側に曲げ、又は前記第1アームと前記第2アームとの間及び/又は前記第2アームと前記測定ヘッドとの間に傾斜面付きブラケットを挿入することを特徴とする請求項5に記載の非接触3次元座標測定装置の測定ヘッド保持機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−185543(P2008−185543A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21393(P2007−21393)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】