説明

非接触ICカード

【課題】電源電圧レベルが所定の閾値電圧を下回ったとき、主制御部はメモリアクセスに失敗している可能性がある。このため、主制御部をリセットし、主制御部の処理を初めから再実行させるので、処理時間が長くなる。
【解決手段】リーダライタ1からアンテナ部7を介して受信した搬送波を整流して動作電力を得る整流部(電源部)8による電源電圧レベルを検出する電源電圧レベル監視部21と、検出した電源電圧レベルが不揮発性メモリ50の動作に必要な所定の閾値電圧を下回った状態で、主制御部30が不揮発性メモリへのアクセスを要求したときに、そのメモリアクセスをキャンセルするメモリアクセスキャンセル部43と、検出した電源電圧レベルが閾値電圧を下回った状態で、主制御部が不揮発性メモリへのアクセスを要求したときに、そのメモリアクセスに失敗したことを主制御部へ通知するアクセス失敗通知部44とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波によって電力が供給され、情報を不揮発性メモリに記憶する非接触ICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の非接触ICカードについて説明する。図11は従来の非接触ICカードシステムの構成を示すブロック図である。この非接触ICカードシステムは、リーダライタ(R/W)1とICカード2から構成され、無線でデータをやりとりするシステムである。リーダライタ1は、ICカード2との間で情報の送受信を行うアンテナ部3と、通信動作を制御する通信部4と、受信した情報に従って処理を実行する処理部5と、外部の制御装置との間で通信を行うインターフェース(I/F)部6から構成されている。ICカード2は、リーダライタ1との間で情報および電力の伝送を行うアンテナ部7と、搬送波を整流してICカード動作用の電力を得る整流部(電力部)8と、通信動作を制御する通信部9と、受信した情報に従って処理を実行する処理部10から構成されている。処理部10は、命令を実行する主制御部30と、主制御部30を初期化するリセット部20と、カード情報を記憶する不揮発性メモリ50と、不揮発性メモリ50の動作を制御するメモリ制御部40から構成されている。
【0003】
図12は上記の処理部10の構成を示すブロック図である。不揮発性メモリ50は、動作を安定化してデータの保証を行うために、動作に必要な電圧レベル以下で読み出し/書き込み(アクセス)禁止となっている。リセット部20は、ICカードの動作用電源電圧のレベルを監視する電源電圧レベル監視部21と、主制御部30を初期化するリセット発生部22から構成されている。不揮発性メモリ50の動作に必要な最低の電源電圧を閾値電圧Vth0とする。ICカード2の電源電圧が閾値電圧Vth0を下回ったときは、電圧低下検出信号S0をアクティブにしてリセット発生部22とメモリ制御部40のメモリアクセスキャンセル部43に送出するように構成されている。メモリ制御部40は、主制御部30と不揮発性メモリ50との間のインターフェースを制御するメモリI/F部41と、主制御部30による不揮発性メモリ50へのアクセス要求を検出するメモリアクセス要求検出部42と、アクティブな電圧低下検出信号S0を受けとったときに主制御部30による不揮発性メモリ50へのアクセスをキャンセルするメモリアクセスキャンセル部43から構成されている。
【0004】
以上のように構成された非接触ICカードについて、以下にその動作を説明する。
【0005】
メモリ制御部40におけるメモリアクセス要求検出部42は、主制御部30からの不揮発性メモリ50へのアクセス要求をメモリI/F部41を介して検出すると、アクセス要求検出信号Saをアクティブにしてメモリアクセスキャンセル部43に送出する。一方、リセット部20における電源電圧レベル監視部21は、ICカードの動作用電源電圧レベルを監視し、閾値電圧Vth0を下回ったことを検出すると、電圧低下検出信号S0をアクティブにしてリセット発生部22とメモリアクセスキャンセル部43へ送出する。メモリアクセスキャンセル部43は、アクティブなアクセス要求検出信号Saの入力状態で、アクティブな電圧低下検出信号S0を受けとったとき、アクセスキャンセル信号ScをアクティブにしてメモリI/F部41に送出する。これにより、メモリI/F部41は主制御部30による不揮発性メモリ50へのアクセス要求を禁止する。これによって、不揮発性メモリ50のデータ保護を行う。これとともに、アクティブな電圧低下検出信号S0を受け取ったリセット発生部22は、リセット信号Srをアクティブにして主制御部30をリセットし、主制御部30の処理を初めから再実行させる。電源電圧が閾値電圧Vth0を下回っている期間に、主制御部30がメモリアクセスに失敗している可能性があったとしても、再実行により、この不都合を未然に防止できる(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
図13は従来の非接触ICカードの動作の具体例を示すタイムチャートである。図13(a)は電源電圧が低下しない場合の動作を示し、図13(b)は電源電圧が低下した場合の動作を示す。電源電圧が低下しない図13(a)の場合、電源電圧は安定しているのでリセットは発生しない。このため、主制御部30は、処理1、処理2、メモリアクセス、処理3を処理時間T1の間に完了する。ところが、処理2の途中で電源電圧が低下した図13(b)の場合、処理2の途中でリセット部20はリセット信号SrをアクティブのLowレベルにして主制御部30を初期化する。電源電圧が回復したとき、主制御部30は処理1から再実行する。処理3まで完了するのに要する処理時間T2は、処理時間T1より長くなる。
【特許文献1】特開2003−23366号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように上記従来の構成では、電源電圧が不揮発性メモリ50の動作に必要な閾値電圧Vth0を下回ったときには主制御部30をリセットして初めから再実行させるので、処理時間が長くなる課題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、処理時間を短縮することができる非接触ICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による非接触ICカードは、
リーダライタとの間で情報および電力の伝送を行う手段と、
アンテナ部を介して受信した搬送波を整流して動作電力を得る電源部と、
前記電源部による電源電圧レベルを検出する手段と、
受信した情報に従って処理を実行する主制御部と、
前記主制御部の制御に基づいて情報を記憶する不揮発性メモリと、
検出した前記電源電圧レベルが前記不揮発性メモリの動作に必要な所定の閾値電圧を下回った状態で、前記主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセス(読み出し/書き込み)を要求したときに、そのメモリアクセスをキャンセルする手段とを備えた非接触ICカードにおいて、
検出した前記電源電圧レベルが前記閾値電圧を下回った状態で、前記主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセス(読み出し/書き込み)を要求したときに、そのメモリアクセスに失敗したことを前記主制御部へ通知する手段を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、主制御部のメモリアクセス要求はキャンセルされるが、主制御部のリセットは行われない。主制御部は、電源電圧が所定の閾値電圧を下回った状態でのメモリアクセス要求に起因するアクセス失敗の通知を受けると、処理を初めから再実行するのではなく、続けて処理実行できるため、処理時間を短縮できる。
【0011】
上記構成において、さらに、検出した前記電源電圧レベルが前記閾値電圧を下回った状態で、前記主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求したときに、そのメモリアクセス状況を記録し、前記主制御部へ通知する手段を備えた態様もある。
【0012】
このように構成すれば、主制御部はメモリアクセス失敗時の状況が分かるので、短時間で、失敗したメモリアクセスを再度やり直すことができ、処理時間を短縮できる。
【0013】
また、上記構成において、さらに、検出した前記電源電圧レベルが前記閾値電圧を下回った状態で、前記主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求したときに、そのメモリアクセスが禁止状態であることを前記主制御部へ通知する手段を備えた態様もある。
【0014】
このように構成すれば、主制御部は、事前に、メモリアクセスの禁止/許可状態が分かり、無駄なメモリアクセス失敗を減らし、その時間で別の処理ができるため、処理時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、主制御部のメモリアクセス要求はキャンセルされるが、主制御部のリセットは行われない。主制御部は、電源電圧が所定の閾値電圧を下回った状態でのメモリアクセス要求に起因するアクセス失敗の通知を受けると、処理を初めから再実行するのではなく、続けて処理実行できるため、処理時間を短縮できる。
【0016】
電波によって電力供給される非接触ICカードでは、長距離通信時にリーダライタから送信される電波が弱くなるので、電源電圧が低下する。また、鉄道改札の通過などに使用される非接触ICカード(電子乗車券)では、人間が移動しながら通信するので、通信距離の確保とともに処理時間内に通信を完了させる必要がある。以上の観点から、電源電圧が低下した場合に処理時間の短縮できる本発明の効果は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかわる非接触ICカードの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の実施の形態においては、従来の技術について図11で示した概略構成が援用されるものとする。
【0018】
(基本の実施の形態)
図1は本発明の基本の実施の形態における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図である。この処理部10は、主制御部30を初期化するリセット部20と、命令を実行する主制御部30と、不揮発性メモリ50の動作を制御するメモリ制御部40と、カード情報を記憶する不揮発性メモリ50から構成されている。
【0019】
リセット部20は、ICカードの動作用電源電圧のレベルを監視する電源電圧レベル監視部21と、主制御部30を初期化するリセット発生部22から構成されている。不揮発性メモリ50の動作に必要な最低の電源電圧を第1の閾値電圧Vth1、主制御部30の動作に必要な最低の電源電圧を第2の閾値電圧Vth2とし、第1の閾値電圧Vth1は第2の閾値電圧Vth2よりも高いものとする(Vth1>Vth2)。電源電圧レベル監視部21は、電源電圧を監視し、第1の閾値電圧Vth1を下回ったときは、第1の電圧低下検出信号S1をアクティブにしてメモリ制御部40のメモリアクセスキャンセル部43とアクセス失敗通知部44へ送出し、第2の閾値電圧Vth2を下回ったときは、第2の電圧低下検出信号S2をアクティブにしてリセット発生部22に送出するように構成されている。リセット発生部22は、アクティブな第2の電圧低下検出信号S2を入力したときは、リセット信号Srをアクティブにして主制御部30に送出するように構成されている。
【0020】
メモリ制御部40は、主制御部30と不揮発性メモリ50との間のインターフェースを制御するメモリI/F部41と、主制御部30の不揮発性メモリ50へのアクセス要求を検出するメモリアクセス要求検出部42と、メモリアクセスキャンセル部43と、アクセス失敗通知部44から構成されている。
【0021】
メモリアクセス要求検出部42は、主制御部30からの不揮発性メモリ50へのアクセス要求をメモリI/F部41を介して検出すると、アクセス要求検出信号Saをアクティブにしてメモリアクセスキャンセル部43とアクセス失敗通知部44に送出するように構成されている。メモリアクセスキャンセル部43は、リセット部20の電源電圧レベル監視部21からアクティブな第1の電圧低下検出信号S1を受けとっている状態で、アクティブなアクセス要求検出信号Saを入力したときは、アクセスキャンセル信号ScをアクティブにしてメモリI/F部41に送出するように構成されている。これにより、メモリI/F部41は主制御部30による不揮発性メモリ50へのアクセス要求を禁止し、不揮発性メモリ50のデータ保護を行う。アクセス失敗通知部44は、アクティブな第1の電圧低下検出信号S1を受けとっている状態で、アクティブなアクセス要求検出信号Saを入力したときは、メモリアクセスに失敗したことを示すアクセス失敗通知信号Siを主制御部30に送出するように構成されている。
【0022】
基本の実施の形態における電源電圧レベル監視部21の動作を図2に示すタイミングチャートに従って説明する。
【0023】
第1の電圧低下検出信号S1および第2の電圧低下検出信号S2はロウアクティブである。電源電圧が第1の閾値電圧Vth1以上のときに第1の電圧低下検出信号S1はインアクティブの“H”レベルであり、このとき不揮発性メモリ50は動作可能である。電源電圧が第1の閾値電圧Vth1を下回ったときは第1の電圧低下検出信号S1はアクティブの“L”レベルとなり、このとき不揮発性メモリ50は動作不可能となる。
【0024】
また、電源電圧が第2の閾値電圧Vth2以上のときに第2の電圧低下検出信号S2はインアクティブの“H”レベルであり、このとき主制御部30は動作可能である。また、電源電圧が第2の閾値電圧Vth2を下回ったときは第2の電圧低下検出信号S2はアクティブの“L”レベルとなり、このとき主制御部30は動作不可能となる。
【0025】
したがって、主制御部30は不揮発性メモリ50よりも長い時間動作可能である。
【0026】
次に、基本の実施の形態における処理部10の動作を図3に示すタイミングチャートに従って説明する。
【0027】
主制御部30の処理2の途中で、電源電圧が第2の閾値電圧Vth2以上を保ちつつ第1の閾値電圧Vth1を下回ったとする。このとき、電源電圧レベル監視部21は第1の電圧低下検出信号S1をアクティブにしてメモリアクセスキャンセル部43とアクセス失敗通知部44に送出する。第2の電圧低下検出信号S2はインアクティブのままであり、リセット信号Srはインアクティブのままである。主制御部30は動作可能である。このような状態において、主制御部30が不揮発性メモリ50へアクセス(読み出し/書き込み)を要求すると、メモリアクセス要求検出部42がアクセス要求検出信号Saをアクティブにしてメモリアクセスキャンセル部43とアクセス失敗通知部44に送出する。メモリアクセスキャンセル部43は、アクティブな第1の電圧低下検出信号S1とアクティブなアクセス要求検出信号Saとを入力したことからアクセスキャンセル信号Scをアクティブにし、メモリI/F部41を介して主制御部30による不揮発性メモリ50へのアクセスをキャンセルする。これにより、不揮発性メモリ50でのデータ保護が確保される。一方、アクセス失敗通知部44は、アクティブな第1の電圧低下検出信号S1とアクティブなアクセス要求検出信号Saとを入力したことからアクセス失敗通知信号Siをアクティブにして主制御部30に送出し、これを受け取った主制御部30は、メモリアクセスに失敗したことを認識し(φ1)、失敗したメモリアクセスを復旧するための処理を行う(φ2)。ここでは、途中の処理2まで戻って、処理2を実行し、その計算結果を不揮発性メモリ50へ書き込むメモリアクセスを行う(φ3)。
【0028】
本発明の基本の実施の形態の非接触ICカードによる効果を従来技術との比較で説明する。図4(a)は従来技術の場合の動作を示すタイムチャート、図4(b)は本発明の基本の実施の形態の動作を示すタイムチャートである。
【0029】
従来技術の場合、処理2の途中で電源電圧が低下すると、リセット信号SrをLowレベルにして主制御部30を初期化する。主制御部30は、処理1から再実行し、処理3まで完了するのに処理時間T2が必要である。
【0030】
これに対して本発明の基本の実施の形態の場合、電源電圧が第1の閾値電圧Vth1を下回りかつ第2の閾値電圧Vth2以上であれば、主制御部30のメモリアクセス要求はキャンセルされるが、主制御部30のリセットは行わない。このため、主制御部30は、処理を初めから再実行する必要がなく、続けて処理実行できるため、処理時間T3になる。従来技術に比べて処理時間を短縮することができる。
【0031】
次に説明する実施の形態1,2は、上記のアクセス失敗通知部44と組み合わせる手段の具体例についてのものである。
【0032】
(実施の形態1)
図5は本発明の実施の形態1における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、基本の実施の形態において、さらに、メモリ制御部40において、メモリアクセスに失敗したときのメモリアクセス状況を記録して、主制御部30へ通知するアクセス失敗状況記録通知部45を備えている。その他の構成については、基本の実施の形態と同様である。
【0033】
次に、上記構成の実施の形態1における非接触ICカードの処理部10の動作を図6のタイムチャートに従って説明する。
【0034】
主制御部30の処理2の途中で、電源電圧が第2の閾値電圧Vth2以上を保ちつつ第1の閾値電圧Vth1を下回ったとする。このとき、主制御部30は動作可能である。このような状態において、主制御部30が不揮発性メモリ50へアクセス(読み出し/書き込み)を要求すると、メモリアクセス要求検出部42がアクセス要求検出信号Saをアクティブにしてメモリアクセスキャンセル部43とアクセス失敗通知部44とアクセス失敗状況記録通知部45に送出する。メモリアクセスキャンセル部43とアクセス失敗通知部44の動作は基本の実施の形態と同様である。
【0035】
アクセス失敗状況記録通知部45は、アクティブな第1の電圧低下検出信号S1とアクティブなアクセス要求検出信号Saとを入力したことからメモリアクセス失敗時のメモリアクセス状況を記録するとともに、そのメモリアクセス状況の情報Smを主制御部30に送出する。アクティブなアクセス失敗通知信号Siを受けた主制御部30は、さらにアクセス失敗状況記録通知部45からのアクセス失敗時のメモリアクセス状況の情報Smを受け取り、その状況を確認し(φ4)、失敗したメモリアクセスを再度やり直す(φ3)。
【0036】
実施の形態1の非接触ICカードによる効果を基本の実施の形態との比較で説明する。図7(a)は基本の実施の形態の動作を示すタイムチャート、図7(b)は実施の形態1の動作を示すタイムチャートである。
【0037】
本発明の基本の実施の形態の場合、アクセス失敗通知信号Siを受けた主制御部30は、途中の処理2まで戻って、処理2を再実行し、その計算結果を不揮発性メモリ50へ書き込むメモリアクセス(φ3)を実行するので、処理3まで完了するために処理時間T3が必要である。
【0038】
これに対して実施の形態1の場合、主制御部30はメモリアクセス失敗時の状況が分かるので(φ4)、失敗したメモリアクセスを短時間で再度やり直すことができる。基本の実施の形態のように途中まで戻って処理を再実行する必要がないため、処理時間を基本の実施の形態の場合のT3よりも短いT4へ短縮することができる。
【0039】
(実施の形態2)
図8は本発明の実施の形態2における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、基本の実施の形態において、さらに、メモリ制御部40において、電源電圧が第1の閾値電圧Vth1よりも低下して不揮発性メモリ50へのアクセスが禁止状態であることを主制御部30へ通知するアクセス禁止状態通知部46を備えている。その他の構成については、基本の実施の形態と同様である。
【0040】
次に、上記構成の実施の形態2における非接触ICカードの処理部の動作を図9のタイムチャートに従って説明する。
【0041】
主制御部30の処理2の途中で、電源電圧が第2の閾値電圧Vth2以上を保ちつつ第1の閾値電圧Vth1を下回ったとする。このとき、主制御部30は動作可能である。このような状態において、アクセス禁止状態通知部46は、アクティブな第1の電圧低下検出信号S1を入力したことから揮発性メモリ50へのアクセスが禁止状態であることを示すアクセス禁止状態検出信号Snを主制御部30へ送出する。主制御部30は、メモリアクセスの処理(φ3)の前に、アクセス禁止状態通知部46からのアクセス禁止状態検出信号Snをチェックして、メモリアクセスできるか否かを確認する(φ5)。主制御部30は、メモリアクセスが禁止状態であるので、メモリアクセスを行わず、処理3を先に実行する。
【0042】
実施の形態2の非接触ICカードによる効果を基本の実施の形態との比較で説明する。図10(a)は基本の実施の形態の動作を示すタイムチャート、図10(b)は実施の形態2の動作を示すタイムチャートである。
【0043】
実施の形態2の場合、主制御部30は事前にメモリアクセスが禁止状態であることが分かり(φ5)、無駄なメモリアクセスは行わず、別の処理3に進むため、処理時間T5になる。無駄なメモリアクセス失敗が減るので、メモリアクセス失敗の復旧処理(φ2)もなくなり、その時間で別の処理をできるため、処理時間をT3からT5へ短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電源電圧が低下した場合に処理時間を短縮できるので、移動しながら通信する非接触ICカード等として有用である。また、通信距離の確保とともに、処理時間内に通信を完了させる必要がある電子乗車券等の用途にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の基本の実施の形態における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図
【図2】本発明の基本の実施の形態における非接触ICカードの電源電圧レベル監視部の動作を示すタイムチャート
【図3】本発明の基本の実施の形態における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャート
【図4】本発明の基本の実施の形態における非接触ICカードの効果を示すタイムチャート
【図5】本発明の実施の形態1における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態1における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャート
【図7】本発明の実施の形態1における非接触ICカードの効果を示すタイムチャート
【図8】本発明の実施の形態2における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図
【図9】本発明の実施の形態2における非接触ICカードの処理部の動作を示すタイムチャート
【図10】本発明の実施の形態2における非接触ICカードの効果を示すタイムチャート
【図11】従来の技術における非接触ICカードシステムの構成を示すブロック図
【図12】従来の技術における非接触ICカードの処理部の構成を示すブロック図
【図13】従来の技術における非接触ICカードの動作を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0046】
1 リーダライタ
2 ICカード
7 アンテナ部
8 整流部(電力部)
9 通信部
10 処理部
20 リセット部
21 電源電圧レベル監視部
22 リセット発生部
30 主制御部
40 メモリ制御部
41 メモリI/F部
42 メモリアクセス要求検出部
43 メモリアクセスキャンセル部
44 アクセス失敗通知部
45 アクセス失敗状況記録通知部
46 アクセス禁止状態通知部
50 不揮発性メモリ
S1 第1の電圧低下検出信号
S2 第2の電圧低下検出信号
Sa アクセス要求検出信号
Sc アクセスキャンセル信号
Sr リセット信号
Si アクセス失敗通知信号
Sm メモリアクセス状況の情報
Sn アクセス禁止状態検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタとの間で情報および電力の伝送を行う手段と、
アンテナ部を介して受信した搬送波を整流して動作電力を得る電源部と、
前記電源部による電源電圧レベルを検出する手段と、
受信した情報に従って処理を実行する主制御部と、
前記主制御部の制御に基づいて情報を記憶する不揮発性メモリと、
検出した前記電源電圧レベルが前記不揮発性メモリの動作に必要な所定の閾値電圧を下回った状態で、前記主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求したときに、そのメモリアクセスをキャンセルする手段と、
検出した前記電源電圧レベルが前記閾値電圧を下回った状態で、前記主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求したときに、そのメモリアクセスに失敗したことを前記主制御部へ通知する手段とを備えている非接触ICカード。
【請求項2】
さらに、検出した前記電源電圧レベルが前記閾値電圧を下回った状態で、前記主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求したときに、そのメモリアクセス状況を記録し、前記主制御部へ通知する手段を備えている請求項1に記載の非接触ICカード。
【請求項3】
さらに、検出した前記電源電圧レベルが前記閾値電圧を下回った状態で、前記主制御部が前記不揮発性メモリへのアクセスを要求したときに、そのメモリアクセスが禁止状態であることを前記主制御部へ通知する手段を備えている請求項1に記載の非接触ICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−285735(P2006−285735A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106000(P2005−106000)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】