説明

非晶質アジスロマイシン粒子の生成方法

本発明は、アジスロマイシンおよび溶媒を含む溶液を生成するステップと、溶液を微粒化するステップと、その後溶媒の少なくとも一部分を溶液から蒸発させて、非晶質アジスロマイシンを生成するステップとを含む、非晶質アジスロマイシンの生成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速な溶媒蒸発方法を使用して非晶質アジスロマイシン粒子を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アジスロマイシンは、以下の構造式を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
アジスロマイシンは、米国特許第4517359号および同第4474768号に記載されている。アジスロマイシンは、9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリトマイシンAとしても知られている。
【0005】
いくつかの薬物の非晶質形態は、結晶形態と比べて異なる溶解特性、場合によっては異なる生体利用度パターンを示すことがわかっている(Konno T.、Chem.Pharm.Bull.、1990年、第38巻:2003〜2007ページ)。一部の治療適応症では、一方の生体利用度パターンがもう一方よりも好まれる場合がある。
【0006】
非晶質アジスロマイシンの調製は、以前に記載されている。たとえば、米国特許第6245903号は、無水形態のアジスロマイシン、ならびにクロマトグラフィー手順の使用または溶媒蒸発法の使用による、非晶質無水アジスロマイシンの精製方法について記載している。
【0007】
米国特許第6451990B1号は、アジスロマイシンをt−ブタノール(2−メチル−2−プロパノール)または環状エーテルに溶かした溶液の凍結乾燥による、およびアジスロマイシンをエタノールやイソプロパノールなどの脂肪族アルコールに溶かした溶液の蒸発による、非結晶性(すなわち、非晶質)アジスロマイシンの調製手順を記載している。
【0008】
WO2004/009608A2は、アジスロマイシンの斜方晶同形偽多形を生成し、次いで精製されたこの結晶形を、凍結乾燥または真空乾燥による溶媒および過剰な水の除去によって非晶質生成物に変換することを記載している。
【0009】
WO02/094843A1は、アジスロマイシン結晶格子から水および/または溶媒を除去して製造される非晶質状態のアジスロマイシンを記載している。非晶質アジスロマイシンは、結晶形Aのアジスロマイシンを真空中で加熱して生成される。
【0010】
公開米国特許出願第2002/0111318号は、非吸湿性のアジスロマイシン二水和物の調製方法を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
小さい均一な粒子の非晶質アジスロマイシンを調製するための効果のある手段は、未だ求められ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(a)アジスロマイシンおよび溶媒を含む溶液を生成するステップと、(b)溶液を微粒化して液滴にするステップと、(c)溶媒の少なくとも一部分を溶液から蒸発させて、非晶質アジスロマイシンを生成するステップとを含む、非晶質アジスロマイシンの生成方法に関する。溶媒は、噴霧乾燥またはスプレーコーティングによって除去することが好ましい。
【0013】
非晶質アジスロマイシンは、アジスロマイシンを溶媒に溶解させ、溶媒を急速に蒸発させたときに生成されることが発見された。アジスロマイシンは、広範囲な溶媒において溶解性が良好であり、非晶質アジスロマイシンの生成方法は、溶媒の必要量を減らすことで改良することができる。さらに、このような急速な生成方法によって小さい粒径が実現されると、粉砕ステップの必要が少なくなり、それによって市販品としての材料の製造における単位操作数が減る。
【0014】
急速な蒸発は、粒径分布および形状が比較的均一な粒子が生成されるというさらに別の利点を実現する。凍結乾燥方法によって生成されるものなどの、ガラス状の泡沫を機械的に破砕することによって生成される非晶質アジスロマイシンは、サイズ分布が広い傾向があり、個々の粒子は、ギザギザしたまたは鋭い縁を有する傾向がある。対照的に、急速な蒸発によって生成される粒子は、より丸くなる傾向があり、サイズ分布が狭い。急速な蒸発によって生成される粒子は、より良好な流動特性を有し、錠剤または他の剤形を生成する取扱いの際などの製造時により分離しにくい。したがって、本発明は、より取り扱いやすい非晶質アジスロマイシンを提供することによって、剤形製造の際の分離を軽減することができる。
【0015】
急速な蒸発によって実現される小さい粒径は、より急速な溶解特性を有する粒子をもたらすとも考えられる。これは、小さい粒子の広い表面積のためであるといえる。
【0016】
前述および他の本発明の目的、特徴、および利点は、以下の本発明の詳細な説明を考慮に入れればより容易に理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この方法は、アジスロマイシンを溶媒に溶解させ、得られる溶液を微粒化した後、溶媒を蒸発させて、非晶質アジスロマイシンを生成するものである。用語「非晶質」とは、本明細書では、並進的な(translational)長距離三次元秩序をもたない特定の固体形態のアジスロマイシンを意味する。用語「非晶質」とは、本質的に秩序をもたない材料だけでなく、若干の少ない程度の秩序を有することがあるが、秩序が三次元未満であり、かつ/または短距離にしか及ばない材料も含むものとする。部分的に結晶性の材料および結晶性中間相で、たとえば、一次元または二次元の並進的秩序を有するもの(液晶)、または配向無秩序を有するもの(配向無秩序結晶)、または配座無秩序を有するもの(配座無秩序結晶)もさらに含まれる。非晶質材料は、粉末X線回折(PXRD)結晶学、固体NMR、または示差走査熱量測定(DSC)のような熱的な技術などの、当業界で知られている技術によって特徴付けることができる。得られた非晶質の薬物中に存在する結晶性アジスロマイシンの量は少ない。本発明の方法によって生成されたアジスロマイシンの少なくとも90重量%が非晶質であることが好ましい。より好ましくは、本発明の方法によって生成されたアジスロマイシンの少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%が非晶質である。
【0018】
当業者ならばわかるように、溶液を生成するために溶解させるアジスロマイシンは、たとえば、結晶性もしくは非晶質のものだけでなく、無秩序結晶、液晶、プラスチック結晶、中間相など、またはこれらの任意の混合物などの、どんな形態でもよい。アジスロマイシンは、たとえば米国特許第4517359号および同第4474768号に記載のとおりに、容易に合成することができる。用語「アジスロマイシン」は、遊離塩基形態、塩形態、溶媒和物、水和物、多形体、仮晶、および同形体を含む。
【0019】
本発明の方法による非晶質アジスロマイシンの生成に使用するアジスロマイシンは、任意の形態のアジスロマイシンでもよいし、または2種以上の形態のアジスロマイシンの混合物でもよい。本発明の方法の利点の1つは、アジスロマイシンを、本発明の方法で使用する前に単結晶性形態に精製する必要がないことである。
【0020】
非晶質アジスロマイシンは、溶媒を使用する溶媒処理によって生成される。溶媒処理に適する溶媒は、アジスロマイシンが可溶性となるどんな溶媒でもよい。アジスロマイシンは、溶媒への溶解性が少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%であることが好ましい。溶媒はまた、揮発性であり、沸点が150℃以下であることが好ましい。さらに、溶媒は、毒性が比較的低いものにすべきであり、調和国際会議(ICH)のガイドラインに従う許容レベルまで、非晶質アジスロマイシンから除去すべきである。そのレベルまでの溶媒の除去には、トレー乾燥などの後続の処理ステップが必要となる場合もある。好ましい溶媒には、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、様々な異性体のブタノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル;ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;ブタンやペンタンなどのアルカン;ペンテンやシクロヘキセンなどのアルケン;アセトニトリルなどのニトリル;塩化メチレン、トリクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどのハロゲン化アルキル;トルエンなどの芳香族化合物;ならびにこれらの混合物が含まれる。ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシドなどの揮発性のより低い溶媒を、揮発性溶媒との混合物中に少量で使用してもよい。50%メタノールと50%アセトンなどの溶媒混合物を使用することもでき、水との混合物も同様である。好ましい溶媒には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、およびこれらの混合物が含まれる。最も好ましい溶媒には、アセトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチル、およびこれらの混合物が含まれる。上記のものと水の混合物を使用してもよい。
【0021】
非晶質アジスロマイシンは、(a)溶媒に溶解したアジスロマイシンを含む溶液を生成するステップと、(b)溶液を微粒化するステップと、(c)溶媒を急速に蒸発させるステップとによって生成する。溶液は、当業界で知られている技術を使用してアジスロマイシンを溶媒に溶解させることにより生成することができる。これは一般に、溶媒に固体アジスロマイシンを加え、次いで混合することによって実現される。混合は一般に、オーバーヘッドミキサー、磁気駆動ミキサーと攪拌子、遊星型ミキサー、ホモジナイザーなどの機械的な手段を使用して行うことができる。溶液は周囲温度で生成してもよいし、またはアジスロマイシンの溶解を助けるために溶媒を加熱してもよい。溶液中のアジスロマイシンは本質的にすべて溶媒に溶解していることが好ましい。
【0022】
アジスロマイシンは、溶解度の限界まで噴霧溶液に溶解させてもよいが、溶解させる量は通常、微粒化前の溶液温度でのアジスロマイシンの溶液への溶解度の80%未満である。アジスロマイシンの濃度は、薬物およびポリマーの溶媒への溶解度に応じて、0.1重量%〜30重量%の範囲でよい。溶液中のアジスロマイシンの濃度は、好ましくは少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも約1重量%、最も好ましくは少なくとも約5重量%である。非晶質アジスロマイシンを生成するために蒸発させなければならない溶媒の体積が減るので、溶液に高濃度のアジスロマイシンが含まれることが好ましい。しかし、アジスロマイシンの濃度は高すぎてはならず、または他に、噴霧溶液が粘稠性になりすぎて、効率的に小さい液滴に微粒化することができない場合もある。噴霧溶液の粘性は、約0.5〜約50,000cp、より典型的な例では10〜2000cpの範囲である。
【0023】
噴霧溶液は、溶媒に加えて、アジスロマイシンが噴霧溶液に十分に可溶性のままである限りオプションの賦形剤を含有してもよい。オプションの賦形剤は、噴霧溶液に溶解させることができ、噴霧溶液に懸濁させることができ、またはこれらの任意の混合物に溶解もしくは懸濁させることができるものである。
【0024】
一実施形態では、溶液はアルカリ化剤を含有する。溶液にアルカリ化剤を加えると、処理中および/または最終生成物中での非晶質アジスロマイシンの化学的安定性が促進される場合がある。アルカリ化剤には、たとえば、制酸剤に加え、他の薬学的に許容できる(1)有機および無機の塩基、(2)有機および無機の弱酸の塩、ならびに(3)緩衝剤が含まれる。
【0025】
そのようなアルカリ化剤の例には、ケイ酸マグネシウムアルミニウムなどのアルミニウム塩;炭酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩;炭酸カルシウムなどのカルシウム塩;炭酸水素カルシウムおよび炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩;第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第二リン酸ナトリウム、三塩基性リン酸ナトリウム(TSP)、二塩基性リン酸カリウム、三塩基性リン酸カリウムなどのリン酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;酸化マグネシウムなどの金属酸化物;N−メチルグルコサミン;アルギニンおよびその塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)などのアミン;ならびにこれらの混合物が含まれるがこの限りでない。
【0026】
別の実施形態では、溶液は、基材形成材料を含有する。基材形成材料は、非晶質アジスロマイシンを安定化し、結晶性アジスロマイシンの生成を防止しまたは遅らせる助けとなるものでよく、あるいは剤形への加工に向けて非晶質アジスロマイシンの特性を改善するものでもよい。基材形成材料は、ポリマーでもポリマーでないものでもよく、いくつかの構成要素からなる混合物を含むものでもよい。すなわち、基材形成材料は、ポリマー構成要素からなる混合物、非ポリマー構成要素からなる混合物、またはポリマー構成要素と非ポリマー構成要素とからなる混合物を含む場合がある。
【0027】
用語「ポリマー」は、通常どおりに使用し、つなぎ合わされてより大きい分子を形成するモノマーからできた化合物を意味する。ポリマー構成要素は一般に、少なくとも約20個のモノマーからなる。したがって、ポリマー構成要素の分子量は一般に、約2000ダルトン以上となる。ポリマー構成要素は、中性でもイオン化し得るものでもよく、セルロース系でも非セルロース系でもよい。一般に、有用なポリマーは、水溶解度が少なくとも約0.1mg/mLである。中性の非セルロース系ポリマーの例には、ビニルポリマーおよびコポリマー、すなわち、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン/ポリビニルアルコールコポリマー、および(ポロキサマーとしても知られている)ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーが含まれる。イオン化し得る非セルロース系ポリマーの例には、カルボン酸によって官能性を持たせたポリメタクリル酸およびカルボン酸によって官能性を持たせたポリアクリル酸、アミンによって官能性を持たせたポリアクリル酸およびポリメタクリル酸、ゼラチンやアルブミンなどのタンパク質、ならびにデンプングリコラートなどのカルボン酸によって官能性を持たせたデンプンが含まれる。中性セルロース系ポリマーの例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルエチルセルロースである。イオン化し得るセルロース系ポリマーの例は、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および酢酸セルローストリメリテートである。
【0028】
「非ポリマー」とは、ポリマーでない構成要素を意味する。基材形成材料として使用する好例となる非ポリマー材料には、ステアリン酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、および薬学的に許容できるその塩などの有機酸およびその塩;モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素付加された植物油、ジベヘン酸グリセリル、モノ、ジ、およびトリアルキルグリセリドの混合物などの長鎖脂肪酸エステル;ステアリン酸ポリエチレングリコールやジステアリン酸ポリエチレングリコールなどのグリコール化脂肪酸エステル;ポリソルベート;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウムなどの塩;アラニンやグリシンなどのアミノ酸;グルコース、スクロース、キシリトール、フルクトース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖;ラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸マグネシウムなどのアルキル硫酸塩;レシチンなどのリン脂質;ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0029】
アジスロマイシンおよび溶媒を含む溶液を生成したなら、それを、溶液を小さい液滴にばらすアトマイザーに送達する。一般に、微粒化は、(1)「圧力」ノズルまたは一流体ノズル、(2)二流体ノズル、(3)遠心式または回転ディスク式アトマイザー、(4)超音波ノズル、ならびに(5)機械式振動ノズルによるものを含むいくつかの方法のうちの1つで行われる。微粒化方法の詳細な説明は、Lefebvreの「Atomization and Sprays」(1989年)または「Perry’s Chemical Engineers’Handbook」(第7版、1997年)で見ることができる。一般に、アトマイザーによって生成される液滴は、アトマイザーから出たとき、直径約500μm未満であるべきである。液滴の生成に使用することのできるノズルの種類の例には、二流体ノズル、噴水型ノズル、扁平ファン型ノズル、圧力ノズル、および回転式アトマイザーが含まれる。一実施形態では、圧力ノズルを使用する。
【0030】
微粒化したならば、溶液から溶媒の少なくとも一部分を除去して、非晶質アジスロマイシンを含む複数の固体粒子を生成する。本明細書では、溶液から溶媒の「少なくとも一部分」を除去するとは、固体材料を生成するために十分な量の溶媒を溶液から除去することを意味する。固体材料生成のために除去する溶媒の量は、アジスロマイシンの溶媒への溶解度、ならびに溶液中のアジスロマイシン濃度および任意のオプションの賦形剤に応じて決まる。一般に、もともと溶液中に存在する溶媒の少なくとも約60重量%を除去して、固体材料を生成する。溶液から除去する溶媒の量が多いほど、結晶性アジスロマイシンが生成されにくい。したがって、非晶質アジスロマイシンを生成するために溶液から除去する溶媒の量は、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、またはさらに少なくとも90重量%となり得る。
【0031】
非晶質アジスロマイシンを生成するには、溶媒を溶液から急速に除去することも好ましい。用語「急速に除去する」および「急速な除去」とは、溶液中にもともと存在する溶媒の少なくとも90重量%が5分以内に除去されるように十分に急速に溶液から溶媒を除去することを意味する。溶媒の急速な除去は、溶媒をゆっくりと除去する方法よりも高い割合の非晶質薬物を有する生成物をもたらすと考えられる。したがって、溶媒の90重量%を5分以内、1分以内、またはさらに20秒以内で除去する場合もある。
【0032】
噴霧乾燥方法を使用して非晶質アジスロマイシンを生成することもできる。アジスロマイシンを溶媒に溶解させ、次いで溶媒が急速に除去される噴霧乾燥装置中に噴霧し、非晶質アジスロマイシンの固体粒子を生成する。用語「噴霧−乾燥」は、通常どおりに使用し、液体混合物を小さい液滴にばらし(微粒化)、液滴から溶媒を蒸発させる推進力の強い噴霧乾燥装置中で混合物から溶媒を急速に除去するものである方法を広く指す。噴霧乾燥方法および噴霧乾燥機器は、「Perry’s Chemical Engineers’Handbook」、20−54〜20−57ページ(第6版、1984年)に一般に記載されている。噴霧乾燥方法および機器についてのさらなる詳細は、Marshall、「Atomization and Spray−Drying」、50 Chem.Eng.Prog.Monogr.Series2(1954年)、およびMasters、「Spray Drying Handbook」(第4版、1985年)で総説されている。溶媒除去のための強い推進力は、一般に、噴霧乾燥装置中での溶媒の分圧を、乾燥過程の液滴の温度で溶媒の蒸気圧を十分に下回る状態に保つことによって得られる。これは、(1)噴霧乾燥装置中の圧力を部分的な減圧状態(たとえば、0.01〜0.50atm)に保つこと、または(2)液体の液滴と温かい乾燥用気体とを混合すること、または(3)(1)と(2)の両方によって実現される。さらに、溶媒の蒸発に必要となる熱の少なくとも一部分を、噴霧溶液の加熱によって得ることもできる。
【0033】
溶媒を含む供給物は、広範な種類の条件下で噴霧乾燥することができ、それでも非晶質アジスロマイシンをもたらす。たとえば、様々な種類のノズルを使用して噴霧溶液を微粒化し、それによって噴霧溶液を小さい液滴の集合として噴霧乾燥チャンバーに導入する。生成される液滴が、噴霧乾燥チャンバーの壁に粘着し、またはそれをコーティングしないように(溶媒の蒸発により)十分に乾燥するような十分な小ささになる限り、本質的にどんな種類のノズルを使用して溶液を噴霧してもよい。
【0034】
溶液は、広範囲な温度および流速で1つまたは複数のスプレーノズルに送達することができる。一般に、溶液の温度は、概ね、溶媒の凝固点の少し上から、(溶液を加圧することによる)その周囲圧力沸点より約20℃高い温度、場合によってはさらに高い温度に及んでよい。スプレーノズルへの溶液の流速は、ノズルの種類、噴霧乾燥機の大きさ、および入口温度や乾燥用気体の流速などの噴霧乾燥条件に応じて広い範囲で様々でよい。一般に、噴霧乾燥工程で溶液からの溶媒を蒸発させるためのエネルギーは、主に乾燥用気体からくる。
【0035】
乾燥用気体は、原理的には本質的にどんな気体でもよいが、安全性の理由で、またアジスロマイシンの望ましくない酸化を最小限に抑えるために、窒素、窒素を多く含む空気、アルゴンなどの不活性ガスを利用することが好ましい。乾燥用気体は通常、約60℃〜約300℃、好ましくは約80℃〜約240℃の温度で乾燥用チャンバーに導入する。
【0036】
液滴の表面積対体積比が大きく、溶媒蒸発のための推進力が大きいと、液滴の凝固時間が速くなる。凝固時間は、約20秒未満、好ましくは約10秒未満、より好ましくは1秒未満にすべきである。この速い凝固はしばしば、結晶性と非晶質のアジスロマイシンを含む材料とは対照的にむらのない均質な非晶質材料を保つ粒子には不可欠である。好ましい実施形態では、米国特許第6763607号に詳細に記載されているように、噴霧乾燥機の高さおよび体積を、液滴が噴霧乾燥機の内表面に衝突する前に乾燥するのに十分な時間が得られるよう調整する。
【0037】
凝固した後、得られる非晶質アジスロマイシンの固体粉末は通常、噴霧乾燥チャンバー中に約5〜60秒間留まり、固体粉末からさらに溶媒を蒸発させる。非晶質アジスロマイシンの、乾燥機を出るときの最終の残留溶媒レベルは、低くすべきである。一般に、非晶質アジスロマイシンの、噴霧乾燥チャンバーを出るときの溶媒レベルは、10重量%未満、好ましくは2重量%未満になるべきである。生成の後、非晶質アジスロマイシンを、トレー乾燥、流動層乾燥、マイクロ波乾燥、ベルト乾燥、回転式乾燥、真空乾燥、および当業界で知られている他の乾燥方法などの適切な乾燥方法を使用して乾燥させて、残りの溶媒を除去することができる。乾燥後の最終残留溶媒レベルは、好ましくは約1重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満である。
【0038】
得られる噴霧乾燥された非晶質アジスロマイシンは、通常は小さい粒子の形である。粒子の体積平均直径は、直径約500μm未満、または直径約200μm未満、または直径約100μm未満、または直径約50μm未満、または直径約25μm未満でよい。
【0039】
別の有用なパラメータは、次式
【0040】
【数1】

で定められる「スパン」であり、式中、D50は、直径が等しいまたは小さい方の粒子の総体積の50%を占める粒子の直径に相当する直径であり、D90は、直径が等しいまたは小さい方の粒子の総体積の90%を占める粒子の直径に相当する直径であり、D10は、直径が等しいまたは小さい方の粒子の総体積の10%を占める粒子の直径に相当する直径である。時に当業界ではRelative Span FactorまたはRSFと呼ばれるスパンは、粒径分布の均一性の指標である無次元パラメータである。一般に、スパンが小さいほど、またサイズ分布が狭いほど、改善された流動特性がもたらされる。本方法によって生成される粒子のスパンは、約3未満であることが好ましく、より好ましくは約2.5未満、最も好ましくは約2.0未満である。非晶質アジスロマイシン粒子の大きさは、ふるい分析、顕微鏡観察、光散乱、沈降などの方法を含む、当業界でよく知られている方法を使用して測定することができる。そのような機器の例には、Coulter CounterおよびMalvern Particle Size Analyzerが含まれる。たとえば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、第20版(2000年)を参照されたい。
【0041】
非晶質アジスロマイシンは、スプレーコーティングによって製造することもできる。用語「スプレーコーティング」は、通常どおりに使用し、芯に非晶質アジスロマイシンをコーティングし、または層状に重ねることを指す。この方法では、アジスロマイシンは、上述のように溶媒に溶解させる。次いで、この溶液を微粒化して液滴にし、それを芯に吹き付ける。芯上の液滴から溶媒を除去し、芯上で1または複数の非晶質アジスロマイシン固体層を生成する。
【0042】
芯は、薬学的に不活性なものでよい。芯は、関連する体液中で崩壊しない固体の粒子または物体でよい。あるいは、芯は、関連する体液中で層状の粒子を急速に崩壊させる崩壊剤を含んでもよい。芯は、主に非晶質アジスロマイシンの層を有するものとする。芯材料の例は、ノンパレイルの種子、糖ビーズ、ろうビーズ、ガラスビーズ、ラクトース、微結晶セルロース、ポリマービーズ、デンプン、コロイドシリカなどである。芯は、溶融または噴霧凝結、押出し/球形化、造粒、噴霧乾燥などの既知のどんな方法によって製造してもよい。あるいは、芯は、錠剤、丸剤、多粒子、カプセルなどの剤形でもよい。剤形は、アジスロマイシンまたは異なる薬物を含んでいてもよいし、即時放出または制御放出をもたらすものでもよい。非晶質アジスロマイシンを剤形にスプレーコーティングすることは、アジスロマイシンと別の薬物の併用療法に有用となり得る。
【0043】
芯は、所望の層状粒子の製造に適するどんな形状、大きさ、サイズ分布を有するものでもよい。一実施形態では、芯は一般に球状であり、表面が滑らかである。別の実施形態では、芯は、大きさが約1μm〜約3000μm、好ましくは約10μm〜約1000μm、より好ましくは約50μm〜約500μmの範囲である。むらのない最終生成物を得るために、サイズ分布の狭い芯を使用することが一般に所望される。芯は、本発明に従って1または複数の層で層状にした凝集塊、顆粒、または粒子でよい。凝集塊および顆粒は、押出し球形化、回転造粒、溶融凝結、噴霧乾燥、真空乾燥、または噴霧造粒などの、当業界で慣習的に使用される任意の方法によって製造することができる。
【0044】
場合により非晶質アジスロマイシンで1または複数回層成してもよい芯に、パンコーター(たとえば、東京のフロイント産業株式会社から入手可能なハイコーター、英国リバプールのManestyから入手可能なAccela−Cota)、流動層塗工機(たとえば、米国ニュージャージー州RamseyのGlatt Air Technologiesおよびスイス国BubendorfのNiro Pharma Systemsから入手可能なWursterコーターまたはトップスプレー装置)、回転造粒機(たとえば、フロイント産業株式会社から入手可能なCF−グラニュレーター)などの、製薬業界で知られているコーティング機器を使用して、アジスロマイシンを含有する微粒化した溶液を噴霧する。噴霧処理は、芯を気体中に浮遊させながら、二または三流体ノズルによって実施することができる。あるいは、圧力ノズルなどの他のノズルタイプを使用してもよい。ノズルは、噴霧処理チャンバーの上部、側壁、または下部に置くことができ、チャンバーには複数のノズルを設けることができる。
【0045】
芯粒子は、好都合などんなやり方で気体中に浮遊させてもよい。芯粒子は、噴霧処理チャンバーの下部から、適切な気体流によって上向きに運ぶことができる。次いで、気体中に浮遊した芯粒子が、ノズルから噴射される1または複数の小さい液滴によって命中される。一実施形態では、噴霧溶液は、浮遊気体と同じ方向に向けられる。
【0046】
噴霧処理後、芯粒子上にあてがわれた溶媒を除去して、芯上に非晶質アジスロマイシンの付着物または層を得る。コーティングを実施するチャンバーを溶媒の除去にも使用することが好ましい。一実施形態では、芯を浮遊させる気体を使用して、噴霧処理ゾーンから、層成された芯を乾燥させるための蒸発ゾーンへと芯を移動させる場合もある。
【0047】
芯を浮遊させる気体は、乾燥用気体でよい。チャンバー中を上向きに移動させる間、および噴霧処理の後、溶媒を急速に蒸発させる。十分な溶媒を除去して、粒子がチャンバーを出てから互いに付着しないようにする。
【0048】
溶媒を十分に蒸発させてから、直ちにまたは貯蔵した後、粒子を新たな噴霧および蒸発の処理にかけてもよい。層成された粒子の処理は、所定の粒径または重量が得られるまで続ける。所望の粒径または重量であるかの判定は、既知の分類手順に従って行うことができる。あるいは、所定の量の芯に所定の量の溶液を噴霧して、所望の粒径もしくは重量、または所望の芯質量あたりアジスロマイシン量を有する粒子を生成する。
【0049】
コーティングされた芯は、最終サイズが約3mm未満、好ましくは約2mm未満、より好ましくは約1mm未満であることが好ましい。コーティングされた芯は、スパンが約3未満、より好ましくは約2.5未満、最も好ましくは約2.0未満であることが好ましい。
【0050】
非晶質アジスロマイシンをスプレーコーティングされた芯は、製造の際に純粋な非晶質材料より分離しにくい、大きい高密度な粒子を提供するという付加的な利点を有する。さらに、このようなコーティングされた芯は、表面が丸く、サイズ分布が狭く、これにより流動特性が改善され、取扱いが容易になる。
【0051】
非晶質アジスロマイシンを生成したならば、非晶質アジスロマイシンを、錠剤、カプセル、懸濁液、懸濁液用の粉末、クリーム、経皮パッチ、デポー剤などの剤形に組み込みやすくするためのいくつかの処理作業を使用することができる。これらの処理作業には、乾燥、造粒、および粉砕が含まれる。
【0052】
本発明はまた、哺乳動物、魚類、または鳥類における細菌感染または原虫感染の治療方法であって、前記哺乳動物、魚類、または鳥類に、治療有効量の本発明の非晶質アジスロマイシンを投与することを含む方法に関する。
【0053】
本発明はまた、哺乳動物、魚類、または鳥類において細菌感染または原虫感染を治療するための、治療有効量の本発明の非晶質アジスロマイシンと薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0054】
用語「治療」とは、本明細書では、別段の指摘がない限り、本発明の方法において提供される、細菌感染または原虫感染の治療または予防を意味し、前記感染を治癒させ、その症状を軽減し、またはその進行を緩徐にすることを含む。用語「治療する」および「治療すること」は、前述の用語「治療」に合わせて定義される。
【0055】
本明細書では、別段の指摘がない限り、用語「細菌感染」または「原虫感染」は、哺乳動物、魚類、および鳥類で起こる細菌感染および原虫感染に加え、本発明の非晶質アジスロマイシンなどの抗生物質の投与によって治療または予防することができる、細菌感染および原虫感染に関連する障害を含む。そのような細菌感染および原虫感染、ならびにそのような感染に関連する障害には、以下のものが含まれる。すなわち、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、Moraxella catarrhalis、黄色ブドウ球菌、またはペプトストレプトコッカス種による感染に関連する肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、扁桃炎、および乳突炎;化膿連鎖球菌、C群およびG群連鎖球菌、Clostridium diptheriae、またはActinobacillus haemolyticumによる感染に関連する咽頭炎、リウマチ熱、および糸球体腎炎;肺炎マイコプラズマ、Legionella pneumophila、肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、または肺炎クラミジアによる感染に関連する気道感染症;黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌(すなわち、表皮ブドウ球菌、S.hemolyticusなど)、化膿連鎖球菌、Streptococcus agalactiae、連鎖球菌のC〜F群(微小な集落の連鎖球菌)、ビリダンス型連鎖球菌、Corynebacterium minutissimum、クロストリジウム種、またはBartonella henselaeによる感染に関連する無併発性の皮膚および軟部組織感染症、膿瘍および骨髄炎、ならびに産褥熱;Staphylococcus saprophyticusまたはエンテロコッカス種による感染に関連する無併発性の急性尿路感染;トラコーマクラミジア、軟性下疳菌、梅毒トレポネーマ、Ureaplasma urealyticum、または淋菌による感染に関連する、尿道炎および子宮頸炎、ならびに性感染症;黄色ブドウ球菌(食中毒および毒素性ショック症候群)、またはA、B、およびC群連鎖球菌による感染に関連する毒素疾患;ヘリコバクターピロリによる感染に関連する潰瘍;回帰熱ボレリア感染に関連する全身性熱性症候群;ライム病ボレリアによる感染に関連するライム病;トラコーマクラミジア、淋菌、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、インフルエンザ菌、またはリステリア種による感染に関連する結膜炎、角膜炎、および涙嚢炎;トリ結核菌またはMycobacterium intracellulareによる感染に関連する多発性トリ結核菌複合体(MAC)疾患;Campylobacter jejuniによる感染に関連する胃腸炎;クリプトスポリジウム種による感染に関連する腸の原虫;ビリダンス型連鎖球菌による感染に関連する歯性感染症;百日咳菌による感染に関連する持続的な咳;パラウェルシュ菌またはバクテロイド種による感染に関連するガス壊疽;ならびにヘリコバクターピロリまたは肺炎クラミジアによる感染に関連するアテローム性動脈硬化。動物において治療または予防することのできる細菌感染および原虫感染、ならびにそのよう感染に関連する障害には、以下のものが含まれる。P.haem.、P.multocida、Mycoplasma bovis、またはボルデテラ種による感染に関連するウシの呼吸器疾患;大腸菌または原虫(すなわち、コクシジウム、クリプトスポリジウムなど)による感染に関連する雌ウシの腸疾患;黄色ブドウ球菌、Strep.uberis、Strep.agalactiae、Strep.dysgalactiae、クレブシエラ種、コリネバクテリウム、またはエンテロコッカス種による感染に関連する乳牛の乳腺炎;A.pleuro.、P.multocida、またはマイコプラズマ種による感染に関連するブタの呼吸器疾患;大腸菌、Lawsonia intracellularis、サルモネラ、またはSerpulina hyodyisinteriaeによる感染に関連するブタの腸疾患;フソバクテリウム種による感染に関連する雌ウシの腐蹄;大腸菌による感染に関連する雌ウシの子宮炎;雌ウシのFusobacterium necrophorumまたはBacteroides nodosusによる感染に関連する毛状のいぼ;Moraxella bovisによる感染に関連する雌ウシのピンクアイ;原虫(すなわちneosporium)による感染に関連する雌ウシの胎盤早期剥離;大腸菌による感染に関連するイヌおよびネコの尿路感染;Staph.epidermidis、Staph.intermedius、コアグラーゼ陰性Staph.multocida、またはP.multocidaによる感染に関連するイヌおよびネコの皮膚および軟部組織感染症;ならびにアルカリゲネス種、バクテロイド種、クロストリジウム種、エンテロバクター種、真正細菌、ペプトストレプトコッカス、ポルフィロモナス、またはプレボテラによる感染に関連するイヌおよびネコの歯または口の感染症。本発明の方法に合わせて治療または予防することのできる他の細菌感染および原虫感染、ならびにそのような感染症に関連する障害は、J.P.Sanfordら、「The Sanford Guide To Antimicrobial Therapy」、第26版、(Antimicrobial Therapy,Inc.、1996年)で言及されている。
【0056】
本発明の他の特徴および実施形態は、本発明の意図される範囲を限定するというよりも本発明を例示するために示す以下の実施例から明らかとなろう。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
以下の手順を使用する溶媒法を使用して、非晶質アジスロマイシンを調製した。125gmのアジスロマイシン二水和物を1125gmのアセトンに溶解させ、10重量%のアジスロマイシンのアセトン溶液を生成することによって、噴霧溶液を生成した。高圧ポンプ(Bran Luebbe N−P31)を使用して、圧力アトマイザー(Spraying Systems Pressure Nozzle and Body(SK80−16))を備え付けた噴霧乾燥機(Liquid−Feed Process Vessel付きNiro XP型Portable Spray−Dryer[PSD−1])に噴霧溶液を送り込んだ。PSD−1に9−インチのチャンバー延長部を備え付けた。この噴霧乾燥機には、1%の開いた区域を有する拡散プレートも備え付けた。作動中、ノズルは拡散プレートと接触させた。約125psig(9.5atm)の微粒化圧力をかけて、噴霧溶液を約78gm/分で噴霧乾燥機に送り込んだ。乾燥用気体(窒素)を入口温度約100℃で拡散プレートに送達した。蒸発した溶媒および湿った乾燥用気体は、温度約58℃で噴霧乾燥機を出た。次いで、得られる非晶質アジスロマイシンを室温の真空デシケーター中で使用するまで保存した。
【0058】
噴霧乾燥前のアジスロマイシン(結晶性二水和物)と噴霧乾燥後のアジスロマイシン(非晶質アジスロマイシン)の試料を、Bruker AXS D8 Advance回折計を用いる粉末X線回折(PXRD)分析によって分析した。カップの下部としてSi(511)プレートを装着してバックグラウンドシグナルが出ないようにしたLucite試料カップに、噴霧乾燥前後のアジスロマイシン(約100mg)試料を詰め、ガラス製顕微鏡スライドを使用して試料表面をならして、試料カップ上部と同じ高さの一貫して滑らかな試料表面を準備した。試料をφ平面で30rpmの速度で回転させて、結晶の配向効果を最小限に抑えた。X線源(KCuα、λ=1.54Å)は、45kVの電圧および40mAの電流で操作した。各試料のデータは、連続的な検出器走査モードで、走査速度を約1.2〜1.8秒/ステップ、1ステップあたりのステップサイズを0.02°〜0.04°とし、約20〜約60分間にわたって収集した。4°〜40°の2θ範囲にわたる回折図を収集した。
【0059】
噴霧乾燥前のこの分析の結果を図1に示す。この回折図は、結晶性二水和物形態のアジスロマイシンの特徴的なピークを示している。
【0060】
図2は、実施例1の噴霧乾燥したアジスロマイシンの回折図を示す。この図は非晶質のハローを示し、この分析の精度の範囲内で検出された結晶ピークはない。これらのデータは、実施例1の噴霧乾燥方法によって生成したアジスロマイシンがほとんど完全に非晶質であったことを示している。
【0061】
(実施例2)
覆いのないシャーレ容器に入れて1週間および3週間貯蔵した後の実施例1の非晶質アジスロマイシンの化学的安定性を、表1に列挙する異なる条件下で調査した。安定性試料は、粉末X線回折および逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)で試験した。RP−HPLC分析は、電気化学的な検出器を備えたAgilent HP1100システム、ならびにES Industries AluminaγRP−1ガードカラムおよびES Industries AluminaγRP−1分析用カラムを使用して実施した。カラム温度は周囲温度とし、流速は0.6ml/分とした。77%0.02M KHPO/23%アセトニトリルからなる移動相(pH=10.7)を用いる定組成法を使用した。
【0062】
RP−HPLC試験を実施するために、粉末試料を5mLのアセトニトリルおよび95mLの77%0.02M KHPO/23%アセトニトリル(pH=8.0)に溶解させ、溶液をHPLCカラムに注入した。ピークを積分して、分解の程度を決定した。主な分解物の含有量を表1に示す。分解物は、3週間後、70℃/30%RHおよび70℃/75%RHでレベルの増加を示したが、他の貯蔵条件では増加が認められなかった。さらに、70℃/75%RH以外のすべての条件下で試料は非晶質のままであった。これらのデータは、噴霧乾燥した非晶質アジスロマイシンが約70℃より低い温度で安定であることを示している。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例3)
実施例1の方法を使用して製造した非晶質アジスロマイシンの物理的安定性をさらに試験するために、試料を40℃かつ75%RHで5カ月間貯蔵し、次いで取り出し、PXRDによって実施例1のように分析した。図3に示すこの分析の結果は、これらの条件下で5カ月間貯蔵した後のアジスロマイシンが本質的にすべて非晶質であったことを示している。
【0065】
(実施例4)
噴霧乾燥によって生成した非晶質アジスロマイシンの試料を走査型電子顕微鏡法(SEM)によって分析した。図4Aは、非晶質材料のSEM像を1000倍の拡大率で示し、図4Bは、非晶質材料のSEM像を6500倍の拡大率で示す。これらの像は、この噴霧乾燥方法によって生成される噴霧乾燥された非晶質粒子が、球状、一般にはつぶれた球の形になる傾向があること示している。この形状のために、噴霧乾燥によって生成した非晶質アジスロマイシンは、結晶性アジスロマイシンと比べて改善された特性を有し、非晶質粒子は流動特性が十分であり、脆性が低い。
【0066】
比較として、図5は、ジェット粉砕されている結晶性アジスロマイシン二水和物のSEM像を1000倍(図5A)および6500倍(図5B)の拡大率で示す。これらの像は、結晶性材料が、結晶性材料であることを示す直線状の縁の多い不規則な形状を有することを示している。
【0067】
(実施例5)
非晶質アジスロマイシンを以下の手順によって調製する。アセトンなどの揮発性溶媒中のアジスロマイシン約2000mgとアルカリ化剤のリン酸三ナトリウム(TSP)約250mgからなる溶液を生成する。次いで、この溶液を実施例1に記載の方法を使用して噴霧乾燥して、非晶質アジスロマイシンを生成する。
【0068】
前述の明細書の中で用いてきた用語および表現は、限定の用語でなく記述の用語としてそこで使用し、そのような用語および表現の使用には、示しまた記載した特徴を有する等価物またはその一部分を除外する意図はなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義され、限定されると認識される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1の噴霧溶液の生成に使用したアジスロマイシン二水和物のPXRD回折図である。
【図2】実施例1の噴霧乾燥方法によって生成した非晶質アジスロマイシンのPXRD回折図である。
【図3】40℃かつ相対湿度(RH)75%で5カ月間貯蔵後の非晶質アジスロマイシンのPXRD回折図である。
【図4】噴霧乾燥方法によって生成した非晶質アジスロマイシンの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図5】ジェット粉砕された結晶性アジスロマイシン二水和物の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アジスロマイシンおよび溶媒を含む溶液を生成するステップと、
(b)前記溶液を微粒化して液滴にするステップと、
(c)前記溶媒の少なくとも一部分を前記溶液から蒸発させて、非晶質アジスロマイシンを生成するステップと
を含む非晶質アジスロマイシンの生成方法。
【請求項2】
前記溶媒の少なくとも70重量%を前記溶液から蒸発させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒の少なくとも90重量%を前記溶液から蒸発させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒の少なくとも90重量%を前記溶液から5分以内に蒸発させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒の少なくとも90重量%を前記溶液から1分以内に蒸発させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、水、アルコール、ケトン、エステル、アルカン、アルケン、ハロゲン化アルキル、ニトリル、芳香族化合物、アセトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒を噴霧乾燥によって蒸発させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液を芯上にスプレーコーティングすることによって前記溶媒を蒸発させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記芯が、ノンパレイルの種子、糖ビーズ、ろうビーズ、ガラスビーズ、ラクトース、微結晶セルロース、ポリマービーズ、デンプン、およびコロイドシリカからなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非晶質アジスロマイシンが、体積平均直径が約200μm未満である粒子の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法の生成物。
【請求項12】
哺乳動物、魚類、または鳥類における細菌感染または原虫感染の治療方法であって、前記哺乳動物、魚類、または鳥類に、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物を治療有効量投与することを含む方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−501206(P2009−501206A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520973(P2008−520973)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001859
【国際公開番号】WO2007/007148
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】