説明

非水性液体コーティング組成物

少なくとも1つのヒドロキシル官能性成分A、少なくとも1つの成分Aとは異なる少なくとも1つのヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂B、ならびにAおよびBのヒドロキシル基に対して反応性がある基を有する少なくとも1つの架橋剤Cを含有する非水性液体コーティング組成物であって、少なくとも1つの成分Aは、室温で固体ではなく、および/または溶解された形で存在し、少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bは、40〜180℃の融点を有する粒子として存在するコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシル官能性結合剤、およびヒドロキシル官能性結合剤用の架橋剤を含有する新規非水性液体コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシル官能性結合剤およびヒドロキシル官能性結合剤用の架橋剤に基づく非水性液体コーティング組成物は周知である。例は、対応するヒドロキシル官能性アクリル樹脂に基づく1液または2液型コーティング系である(European Coatings Handbook、Curt R.Vincentz Verlag、Hannover、2000、64〜66頁を参照のこと)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ自体周知のヒドロキシル官能性結合剤およびヒドロキシル官能性結合剤用の架橋剤に基づく非水性液体コーティング組成物は、これまで一般的なヒドロキシル官能性結合剤に加えて、特定の種類のヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂をさらに含有する場合に改善できることが今やわかっている。このようにして、例えば、コーティング組成物の(同一またはわずかに高い塗布粘度の場合でさえ)より高い固形分、コーティング組成物を用いて生成されたコーティング層の(高温の場合でさえ)改善された垂れ特性、改善された貯蔵安定性、および改善された技術的特性、具体的には良好な耐ストーンチッピング性および良好な耐引掻性を実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも1つのヒドロキシル官能性成分A、少なくとも1つの成分Aとは異なる少なくとも1つのヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂B、ならびにAおよびBのヒドロキシル基に対して反応性がある基を有する少なくとも1つの架橋剤Cを含有する非水性液体コーティング組成物であって、少なくとも1つの成分Aは、室温で固体ではなく、および/または溶解された形で存在し、少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bは、40〜180℃、具体的には60〜160℃の融点を有する粒子として存在するコーティング組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明によるコーティング組成物は、液体であり、有機溶媒を含有し、例えば40〜85重量%、好ましくは45〜75重量%の固形分を有する。
【0006】
本発明によるコーティング組成物の固形分は、樹脂固形分、ならびに次の任意の成分:顔料、充填剤(エクステンダー)、および非揮発性添加剤からなる。
【0007】
本発明によるコーティング組成物の樹脂固形分は、成分AおよびBを含む結合剤固形分、ならびに少なくとも1つの架橋剤Cを含む。具体的には、本発明によるコーティング組成物の樹脂固形分は、50〜90、好ましくは70〜90重量%の成分AおよびBからなる結合剤固形分、10〜50重量%の1つまたは複数の架橋剤C、ならびに0〜30重量%の1つまたは複数の成分D(ただし、重量百分率は合計100重量%になる)からなる。樹脂固形分は成分Dを含まず、50〜90、好ましくは70〜90重量%の成分AおよびBからなる結合剤固形分、ならびに10〜50重量%、好ましくは10〜30重量%の1つまたは複数の架橋剤C(ただし、重量百分率は合計100重量%になる)からなることが好ましい。
【0008】
結合剤固形分は、0重量%より多く95重量%まで、例えば40〜95重量%、好ましくは50〜95重量%の少なくとも1つのヒドロキシル官能性成分A、および5重量%から100重量%未満、例えば5〜60重量%、好ましくは5〜50重量%の少なくとも1つのヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂B(ただし、重量百分率は合計100重量%になる)からなる。本発明によるコーティング組成物中の成分Aに由来するヒドロキシル基対ポリウレタン樹脂Bに由来するヒドロキシル基のモル比は、例えば50:1〜0.1:1である。
【0009】
少なくとも1つのヒドロキシル官能性成分Aは、具体的には従来のヒドロキシル官能性結合剤である。これらは、室温で固体ではなく、代わりに、例えば液体であり、および/または有機溶媒(混合物)に可溶である。有機溶媒(混合物)に可溶であるヒドロキシル官能性結合剤は、有機溶媒を含有する本発明によるコーティング組成物に溶解された形で存在する。
【0010】
考慮し得るヒドロキシル基を有する結合剤Aは、当業者に周知の従来のヒドロキシル官能性結合剤である。例は、ポリエステル、ポリウレタン、および(メタ)アクリル酸系コポリマー樹脂、ならびにこれらのクラスの結合剤に由来するハイブリッド結合剤であり、いずれの場合にも、ヒドロキシル値が、例えば60〜300mgのKOH/gであり、数平均モル質量が500〜10,000である。
【0011】
本明細書で記載された数平均モル質量データはすべて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;固定相としてジビニルベンゼン架橋ポリスチレン、液相としてテトラヒドロフラン、ポリスチレン標準物質)で決定された、または決定されるはずの数平均モル質量である。
【0012】
ポリウレタン樹脂Bは、ヒドロキシル官能性樹脂であり、本発明によるコーティング組成物中に粒子、具体的には非球形状の粒子として存在し、40〜180℃、具体的には60〜160℃の融点を有する。融点は、一般的にはシャープな融点ではなく、代わりに幅広い溶融範囲の上端が、例えば30〜150℃である。溶融範囲、したがって融点は、例えばDSC(示差走査熱分析)により10K/分の加熱速度で決定することができる。ポリウレタン樹脂Bは、例えば50〜300mgのKOH/gのヒドロキシル値を有する。
【0013】
ポリウレタン樹脂Bは、コーティング組成物に不溶または事実上不溶であり、その中に粒子として存在する。ポリウレタン樹脂Bは、コーティングで一般的な有機溶媒に、可溶であるとしても非常にわずかしか可溶でなく、溶解性は、20℃において、例えば10g未満、具体的には5g未満/酢酸ブチル1リットルとなる。
【0014】
ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂の生成は、当業者に周知である。具体的には、ポリイソシアナートを過剰のポリオールと反応させることによって生成することができる。ポリウレタン樹脂Bの生成に適したポリオールは、実験式および構造式で定義された低モル質量化合物の形のポリオールだけでなく、例えば800までの数平均モル質量を有するオリゴマーまたはポリマーのポリオール、例えば対応するヒドロキシル官能性ポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネートでもある。しかし、実験式および構造式で定義された低モル質量ポリオールが好ましい。当業者は、ポリウレタン樹脂Bの生成のためのポリイソシアナートおよびポリオールの性質および比率を、上記の融点および上記の溶解性挙動を有するポリウレタン樹脂Bが得られるように選択する。
【0015】
ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Bは、適切な有機溶媒(混合物)の存在下で生成することができるが、このようにして得られたポリウレタン樹脂を単離し、それから溶媒を除去する必要がある。しかし、好ましくは、溶媒なしに、かつその後の精製操作なしに、ポリウレタン樹脂Bの生成を実施する。
【0016】
第1の好ましい実施形態では、ポリウレタン樹脂Bは、1,6−ヘキサンジイソシアネートとジオール成分をx:(x+1)のモル比(式中、xは、2〜6の任意の所望の値、好ましくは2〜4を意味する)で反応させることによって調製することができるポリウレタンジオールであり、ジオール成分は、62〜600の範囲のモル質量を有する単一ジオール、具体的には単一(シクロ)脂肪族ジオール、または複数のジオール、好ましくは2つ〜4つ、具体的には2つまたは3つのジオールの組合せであり、ジオール組合せの場合、ジオールはそれぞれ、好ましくはジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。ジオール組合せの場合、ジオールの少なくとも70モル%、具体的には100モル%は、(シクロ)脂肪族ジオールであり、それぞれ、62〜600の範囲のモル質量を有することが好ましい。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲で使用する「(シクロ)脂肪族」という用語は、脂肪族残基を有する脂環式、線状脂肪族、分枝状脂肪族、および脂環式を包含する。(シクロ)脂肪族ジオールと異なるジオールは、したがって芳香族および/または脂肪族で結合されたヒドロキシル基を有する芳香族またはアル脂肪族ジオールを含む。一例はビスフェノールAである。(シクロ)脂肪族ジオールと異なるジオールは、例えば800までの数平均モル質量を有するオリゴマーまたはポリマーのジオール、例えば対応するポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネートジオールをさらに含むことができる。
【0018】
ポリウレタンジオールの生成を適切な有機溶媒(混合物)の存在下で実施し、続いてそのようにして調製されたポリウレタンジオールを単離することができる。好ましくは、溶媒なしに、かつその後の精製操作なしに、ポリウレタンジオールの生成を実施する。
【0019】
1,6−ヘキサンジイソシアネートとジオール成分を、xモルの1,6−ヘキサンジイソシアネート:(x+1)モルのジオールのモル比(式中、xは、2〜6の任意の所望の値、好ましくは2〜4を意味する)で互いに化学量論的に反応させる。
【0020】
62〜600の範囲のモル質量を有する単一ジオール、具体的には単一(シクロ)脂肪族ジオールを、ジオール成分として使用する。複数のジオール、好ましくは2つ〜4つ、具体的には2つまたは3つのジオールの組合せを使用することも可能であり、ジオールはそれぞれ、好ましくはジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成し、ジオールの少なくとも70モル%、具体的には100モル%は、(シクロ)脂肪族ジオールであることがさらに好ましく、それぞれ、62〜600の範囲のモル質量を有する。
【0021】
ジオール組合せの場合は、ジオール成分を、その構成要素であるジオールの混合物として導入することができ、またはジオール成分を構成するジオールを個別に合成に導入することができる。所定の比率の、混合物としてのジオールを導入し、残りの比率または複数の比率を純粋なジオールの形で導入することも可能である。ジオールはそれぞれ、好ましくはジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。
【0022】
ジオール成分の単一ジオールとして可能なジオールの例は、エチレングリコール、異性体のプロパン−およびブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ならびにダイマー脂肪アルコールである。
【0023】
ジオール成分の構成要素として可能なジオールの例は、オリゴマーまたはポリマーのジオールの代表として、両端二官能性(メタ)アクリル酸系ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール(それぞれ、例えば800までの数平均モル質量を有する)、実験式および構造式で定義された低モル質量非(シクロ)脂肪族ジオールの代表としてビスフェノールA、ならびに62〜600の範囲の低モル質量を有する実験式および構造式で定義された(シクロ)脂肪族ジオールの代表として、エチレングリコール、異性体のプロパン−およびブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、異性体のシクロヘキサンジオール、異性体のシクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、およびダイマー脂肪アルコールである。
【0024】
好ましくは、1,6−ヘキサンジイソシアネートとジオール成分を一緒に、溶媒なしで反応させる。反応物質をすべて、ここで一緒に同時に、または2つ以上の合成段階で反応させることができる。合成を多段階で行う場合、反応物質を最も変化のある順序、例えば連続でも、または交互方式で添加することができる。ジオール成分は、例えば1,6−ヘキサンジイソシアネートを、最初にジオール成分の一部分と反応させ、その後に残りの比率のジオール成分とさらに反応させるように、例えば2つ以上の部分に分割することができる。個々の反応物質は、いずれの場合も、その全体または2つ以上の部分で添加することができる。反応は発熱性であり、反応混合物の融点を超える温度で進行する。反応温度は、例えば60〜200℃である。添加する反応物質の添加速度または量は、したがって発熱度を基準として決定され、液体(溶融)反応混合物を、加熱または冷却によって所望の温度範囲内に維持することができる。
【0025】
溶媒なしに実施する反応が完了し、反応混合物が冷却すると、固体ポリウレタンジオールが得られる。実験式および構造式で定義された低モル質量ジオールをポリウレタンジオールの合成のために使用する場合、その計算されたモル質量は、522以上、例えば2200までの範囲である。
【0026】
ポリウレタンジオールは、モル質量分布を示す混合物の形をとる。しかし、ポリウレタンジオールは、仕上げを必要とし、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Bとして直接使用することができる。
【0027】
第2の好ましい実施形態では、ポリウレタン樹脂Bは、ジイソシアネート成分およびジオール成分をx:(x+1)(式中、xは、2〜6の任意の所望の値、好ましくは2〜4を意味する)のモル比で反応させることによって調製することができるポリウレタンジオールであり、50〜80モル%のジイソシアネート成分は1,6−ヘキサンジイソシアネートで生成され、20〜50モル%は1つまたは2つのジイソシアネートで生成され、それぞれ、ジイソシアネート成分の少なくとも10モル%を構成し、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、およびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択され、それぞれのジイソシアネートのモル%は合計100モル%になり、ジオール成分の20〜100モル%は、少なくとも1つの線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールで生成され、0〜80モル%は、線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールと異なる少なくとも1つのジオールで生成され、ジオール成分のジオールはそれぞれ、好ましくはジオール成分内の少なくとも10モル%を構成し、それぞれのジオールのモル%は合計100モル%になる。
【0028】
ポリウレタンジオールの生成を適切な有機溶媒(混合物)の存在下で実施し、続いてそのようにして調製されたポリウレタンジオールを単離することができる。好ましくは、溶媒なしに、かつその後の精製操作なしに、ポリウレタンジオールの生成を実施する。
【0029】
ジイソシアネート成分とジオール成分を、xモルのジイソシアネート:x+1モルのジオールのモル比(式中、xは、2〜6の任意の所望の値、好ましくは2〜4を表す)で互いに化学量論的に反応させる。
【0030】
ジイソシアネート成分の50〜80モル%は、1,6−ヘキサンジイソシアネートで生成され、20〜50モル%は、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、およびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択された1つまたは2つのジイソシアネートで生成され、2つのジイソシアネートが選択された場合、ジイソシアネートはそれぞれ、ジイソシアネート成分のジイソシアネートの少なくとも10モル%を構成する。好ましくは、ジイソシアネート成分の合計で20〜50モル%を構成するジイソシアネートまたは2つのジイソシアネートは、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、およびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートから選択される。
【0031】
ジオール成分は、20〜100モル%の範囲までの少なくとも1つの線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオール、および0〜80モル%の範囲までの線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールと異なる少なくとも1つのジオールとからなる。ジオール成分は、好ましくは4つ以下の異なるジオールからなり、具体的には1つ〜3つのジオールからのみなる。1つのジオールのみの場合は、したがって、線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールを含む。2つ、3つまたは4つのジオールの組合せの場合は、ジオール成分は、20〜100モル%の範囲まで、好ましくは80〜100モル%の少なくとも1つの線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオール、および0〜80モル%の範囲まで、好ましくは0〜20モル%の線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールと異なり、好ましくは12個超の炭素原子を有するα,ω−ジオールとも異なる少なくとも1つのジオールからなる。線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールと異なり、好ましくは12個超の炭素原子を有するα,ω−ジオールとも異なる少なくとも1つのジオールは、具体的には76〜600の範囲の低モル質量を有する実験式および構造式で定義された(シクロ)脂肪族ジオールを含む。可能な非(シクロ)脂肪族ジオールの比率は、好ましくはジオール成分のジオールの30モル%以下になる。ジオール組合せの場合は、ジオールはそれぞれ、好ましくはジオール成分の少なくとも10モル%を占める。
【0032】
好ましくは、ジオール成分は、非(シクロ)脂肪族ジオールを含まない。最も好ましくは、線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールと異なるジオールを含まず、むしろ1つ〜4つ、好ましくは1つ〜3つ、具体的には1つのみの線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールからなる。
【0033】
ジオール組合せの場合は、ジオール成分を、その構成要素であるジオールの混合物として導入することができ、またはジオール成分を構成するジオールを個別に合成に導入することができる。所定の比率の、混合物としてのジオールを導入し、残りの比率または複数の比率を純粋なジオールの形で導入することも可能である。ジオールはそれぞれ、好ましくはジオール成分のジオールの少なくとも10モル%を構成する。
【0034】
単一ジオールまたはジオール成分の構成要素として使用することができる線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールの例は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、および1,12−ドデカンジオールである。
【0035】
線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールと異なり、ジオール成分中で使用することができるジオールの例は、オリゴマーまたはポリマーのジオールの代表として、両端二官能性(メタ)アクリル酸系ポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール(それぞれ、例えば800までの数平均モル質量を有する)、実験式および構造式で定義された低モル質量非(シクロ)脂肪族ジオールおよび前述のパラグラフで指定されたプロパンジオールおよびブタンジオールの異性体とは異なるプロパンジオールおよびブタンジオールの異性体の代表として、ビスフェノールA、ならびに76〜600の範囲の低モル質量を有する実験式および構造式で定義された(シクロ)脂肪族ジオールの代表として、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、異性体のシクロヘキサンジオール、異性体のシクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、およびダイマー脂肪アルコールである。
【0036】
好ましくは、ジイソシアネート成分のジイソシアネート、およびジオール成分のジオールまたは複数のジオールを一緒に、溶媒なしで反応させる。反応物質をすべて、ここで一緒に同時に、または2つ以上の合成段階で反応させることができる。合成を多段階で行う場合、反応物質を最も変化のある順序、例えば連続でも、または交互方式で添加することができる。ジオール成分は、例えばジイソシアネートを、最初にジオール成分の一部分と反応させ、その後に残りの比率のジオール成分とさらに反応させるように、例えば2つ以上の部分または個々のジオールに分割することができる。しかし、同様に、ジイソシアネート成分は、例えばヒドロキシル成分を、最初にジイソシアネート成分の一部分と反応させ、最後に残りの比率のジイソシアネート成分と反応させるように、2つ以上の部分または個々のジイソシアネートに分割することもできる。個々の反応物質は、いずれの場合も、その全体または2つ以上の部分で添加することができる。反応は発熱性であり、反応混合物の融点を超える温度で進行する。反応温度は、例えば60〜200℃である。添加する反応物質の添加速度または量は、したがって発熱度を基準として決定され、液体(溶融)反応混合物を、加熱または冷却によって所望の温度範囲内に維持することができる。
【0037】
溶媒なしに実施する反応が完了し、反応混合物が冷却すると、固体ポリウレタンジオールが得られる。実験式および構造式で定義された低モル質量ジオールをポリウレタンジオールの合成のために使用する場合、その計算されたモル質量は、520以上、例えば2200までの範囲である。
【0038】
ポリウレタンジオールは、モル質量分布を示す混合物の形をとる。しかし、ポリウレタンジオールは、仕上げを必要とし、ヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Bとして直接使用することができる。
【0039】
個々の場合、上記に説明した好ましい実施形態によるポリウレタンジオールの合成のために使用される所定の比率のジオール成分が、少なくとも1つのトリオールを含むトリオール成分で置換されている場合、分枝状であり、および/またはそれぞれのポリウレタンジオールに比べて高度にヒドロキシル官能性であるポリウレタン樹脂Bが得られる。このようなポリウレタン樹脂Bを用いる実施形態は、それ自体さらに好ましい実施形態である。例えば、ジオール成分のジオールの70モル%までを、トリオール成分のトリオールで置換することができる。対応するトリオール成分の構成要素として使用できるトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、および/またはグリセロールである。グリセロールは、好ましくはトリオール成分として単独で使用される。
【0040】
少なくとも1つのヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Bは、粒状の形、具体的には非球形状の粒子の形で、コーティング組成物中にで存在する。レーザー回折によって決定されたポリウレタン樹脂B粒子の平均粒径(平均粒子直径)は、例えば1〜100μmである。ポリウレタン樹脂B粒子は、固体ポリウレタン樹脂Bの粉砕(ミリング)で生成することができる。そのためには、例えば、従来の粉体コート生成技術を使用することができる。ポリウレタン樹脂B粒子を、粉砕された紛体として、それ自体液体のコーティング組成物、またはその液体構成要素に撹拌または混合することができ、続いて、例えばビーズミルによって、さらにポリウレタン樹脂B粒子の湿式粉砕または分散を得られた懸濁液中で行うことが可能である。
【0041】
ポリウレタン樹脂B粒子を生成するための他の方法は、少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bを溶解媒体で熱溶解し、続いて冷却中および/または冷却後にポリウレタン樹脂B粒子を生成するものであり、具体的には、少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bを、融点以上、例えば40〜180℃超の温度に加熱しながら、所定の比率または全部の成分Aに溶解し、その結果、ポリウレタン樹脂B粒子は、その後の冷却中および/または冷却後に生成され得る。少なくとも1つのポリウレタン樹脂B用の溶解媒体として使用される成分Aはここでは、それ自体、液体または溶融した形で、あるいは有機溶媒中の溶液として存在することができる。冷却中、十分な混合または撹拌を行うことが好ましい。少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bの溶解は、有機溶媒中で加熱しながら、行うこともでき、その後の冷却中および/または冷却後に進行するポリウレタン樹脂B粒子の生成は、溶媒単独の中で、または得られたものの未だ冷却されていない溶液を成分Aと混合した後に進行することができる。熱溶解、続いて冷却中および/または冷却後のポリウレタン樹脂B粒子生成の方法を使用することによって、特に、例えば1〜50μm、具体的には1〜30μmの範囲の平均粒径の範囲の下端に平均粒径を有するポリウレタン樹脂B粒子を生成することが可能である。
【0042】
すでに記載した通り、本発明によるコーティング組成物は、AおよびBのヒドロキシル基に対して反応性がある基を有する1つまたは複数の架橋剤Cを含有する。これらは、当業者に周知の、ヒドロキシル官能性結合剤に基づくコーティング系のための従来の架橋剤、例えばエステル交換架橋剤;遊離またはブロックポリイソシアナート架橋剤;メラミンホルムアルデヒド樹脂などのアミノプラスト樹脂架橋剤;および/またはトリスアルコキシカルボニルアミノトリアジン架橋剤を含む。
【0043】
本発明によるコーティング組成物は、樹脂固形分に寄与する、1つまたは複数のさらなる成分Dを含有することができる。「成分D」という用語は、ヒドロキシル基を含まない成分を包含し、これらの成分は、具体的には対応する樹脂を含む。例は、物理的に乾燥している樹脂、またはヒドロキシル基が関与せずに進行する反応によって化学的に硬化することができる樹脂である。
【0044】
成分A、B、C、およびDの1つ、複数、またはそれぞれは、ラジカル重合性オレフィン性二重結合を含むことができる。次いで、本発明によるコーティング組成物は、成分AおよびBのヒドロキシル基と、前記ヒドロキシル基に対して反応性がある架橋剤Cの基の反応だけでなく、さらにオレフィン系二重結合のラジカル重合、具体的には光誘起ラジカル重合によっても硬化することができる。
このような組成物は、「デュアル硬化」コーティング組成物とも呼ばれる。
【0045】
本発明によるコーティング組成物は有機溶媒を含有し、例えば40〜85重量%、好ましくは45〜75重量%の固形分を有する。有機溶媒含有量は、例えば15〜60重量%、好ましくは25〜55重量%であり、固形分と有機溶媒含有量の重量%の合計は、この場合例えば90〜100重量%である(合計100重量%になるための、0より多く10重量%までの対応する範囲のあり得る差は、一般に揮発性添加剤で生じる)。有機溶媒は、具体的には従来のコーティング溶剤、例えばブチルグリコール、ブチルジグリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;エチルグリコールアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテートなどのグリコールエーテルエステル;酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどのエステル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール;キシレン、Solvesso(登録商標)100(沸点範囲155℃〜185℃の芳香族炭化水素の混合物)、Solvesso(登録商標)150(沸点範囲182℃〜202℃の芳香族炭化水素の混合物)などの芳香族炭化水素、および脂肪族炭化水素である。
【0046】
溶媒とは別に、コーティング組成物は従来のコーティング添加剤、例えば、阻害剤、触媒、レベリング剤、濡れ剤、クレーター防止剤、酸化防止剤、および/または光安定剤をさらに含有することができる。添加剤は、当業者に周知の通常の量で使用する。デュアル硬化コーティング組成物の場合、一般に光開始剤を含める。
【0047】
コーティング組成物は、透明顔料、色を付与する顔料、および/または特殊効果を付与する顔料、および/または充填剤も含有することができ、例えば顔料に充填剤を加えた和:樹脂固形分の重量比が0:1〜2:1の範囲に対応する。適切な色を付与する顔料は、従来の有機質または無機質のコーティング顔料のいずれかである。無機または有機の色を付与する顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、およびピロロピロール顔料である。特殊効果顔料の例は、例えばアルミニウム、銅、または他の金属の金属顔料;例えば金属酸化物で被覆された金属顔料などの干渉顔料、例えば酸化鉄被覆アルミニウム;例えば二酸化チタン被覆マイカなどの被覆マイカ;グラファイト効果を与える顔料、フレーク状酸化鉄、液晶顔料、被覆酸化アルミニウム顔料、被覆二酸化ケイ素顔料である。充填剤の例は、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、およびタルクである。
【0048】
本発明によるコーティング組成物は、非水性液体コーティング組成物である。しかし、40〜180℃の融点を有する粒子として存在する少なくとも1つのBタイプポリウレタン樹脂を含有する同様な水性コーティング組成物を調製することも可能である。その場合、例えば外部から乳化剤および水を添加することによって、Aタイプ結合剤を水相に変換することができる。Aタイプの非水性であるが水希釈性の結合剤は、通常の親水性基を含む。これらの例は、ポリエチレンオキシド単位などの非イオン性親水性基、および/またはイオン性基、またはイオン性基に変換可能な基である。このような結合剤を、水の添加、または中和剤および水の添加によって水相に変換することができる。水性コーティング組成物を生成する場合、少なくとも1つのBタイプポリウレタン樹脂を少なくとも1つのAタイプ水希釈性結合剤に添加した後に、それを水相に変換することが好ましい。
【0049】
コーティング組成物は、単層コーティングの生成、または多層コーティング内の1つもしくは複数のコーティング層、具体的には自動車車体または自動車車体部品上の自動車用多層コーティングなどの生成のために使用することができる。これは、オリジナルコーティングと補修コーティングの両方の用途に関することがある。コーティング組成物は、具体的にはプライマーサーフェーサー層の生成のために顔料含有の形で、あるいは多層コーティングの外側クリアトップコート層または透明シーリング層の生成のために顔料を含まない形で使用することができる。これらは、例えば先に塗布され、予め乾燥させた、色を付与しおよび/または特殊効果を付与するベースコート層にクリアトップコート層を形成するために使用することができる。
【0050】
コーティング組成物は、従来の塗布方法、具体的には任意の所望の未被覆またはプレコート付き基材、例えば金属またはプラスチックにスプレーすることによって塗布することができる。本発明によるコーティング組成物は、比較的高い樹脂固形分で低い塗布粘度を示すことができる。これは、スプレー塗布の場合に有利である。というのは、そのとき、工業コーティング設備で液体コーティングの塗布に使用されるような従来のスプレー塗布装置を使用することが可能であるからである。
【0051】
塗布すると、溶媒を除去するために、最初に本発明によるコーティング組成物の層を、例えば20〜80℃で1〜5分間フラッシュオフすることができる。次いで、熱硬化は、対応するコーティング組成物に含まれるヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂Bの融点を超える物体温度で、例えば40〜220℃で5〜30分間、例えば焼付けによって進行する。融点と実際の硬化温度の差が十分に大きい場合、最初にポリウレタン樹脂B粒子の溶融しか、または実質的に溶融しかもたらすことができず、その後に、硬化温度への温度上昇の最中および/またはその後に、実際の架橋が引き続いて進行する。溶融中および/または溶融後に、ポリウレタン樹脂B粒子は樹脂基体に組み込まれ得る。
【0052】
本発明によるコーティング組成物が、デュアル硬化コーティング組成物である場合、熱硬化を、高エネルギー放射線、具体的には紫外線の照射によって誘起されるオレフィン性二重結合のラジカル重合による硬化と組み合わせる。熱硬化および放射線硬化は、この場合、同時にまたは所望の順序で進行することができる。しかし、硬化する前に、ポリウレタン樹脂B粒子の溶融を確実にしておかなければならない。
【実施例】
【0053】
実施例1a〜1l(ポリウレタンジオールの調製):
下記の一般合成方法に従って、HDI(1,6−ヘキサンジイソシアネート)、またはHDIとDCMDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)の混合物と、1つもしくは複数のジオールを反応させることによって、ポリウレタンジオールを生成した。
【0054】
撹拌機、温度計、および塔を装備した2リットルの四つ口フラスコに、1つのジオール、またはジオールの混合物を最初に導入し、最初のジオールの導入量に対して0.01重量%のジラウリン酸ジブチルスズを添加した。混合物を80℃に加熱した。次いで、HDIまたはHDI/DCMDI混合物を分配し、温度を、熱反応混合物が固化しないように維持した。反応混合物を、遊離イソシアネートが検出されなくなるまで撹拌した(NCO含有量<0.1%)。次いで、ホットメルトを取り出し、放冷し、固化させた。
【0055】
得られたポリウレタンジオールの溶融挙動をDSC(示差走査熱分析、加熱速度10K/分)で調査した。
【0056】
実施例1a〜1lを表1に示す。表には、どの反応物質がどういうモル比で反応されたかが示され、DSCで測定された溶融過程の最終温度は、℃単位で記載されている。
【0057】
表1

BPA: ビスフェノールA
DFA: ダイマー脂肪アルコール
HEX: 1,6−ヘキサンジオール
PENT: 1,5−ペンタンジオール
PROP: 1,3−プロパンジオール
【0058】
実施例2a〜2e(ポリウレタンポリオールの調製):
下記の一般合成方法に従って、HDI、または混合物HDIとDCMDIの混合物と、GLY(グリセロール)と1つもしくは複数のジオールの混合物を反応させることによって、ポリウレタンポリオールを生成した。
【0059】
撹拌機、温度計、および塔を装備した2リットルの四つ口フラスコに、ポリオールを最初に導入し、最初のポリオールの導入量に対して0.01重量%のジラウリン酸ジブチルスズを添加した。混合物を80℃に加熱した。次いで、HDIまたはHDI/DCMDI混合物を分配し、温度を、熱反応混合物が固化しないように維持した。反応混合物を、遊離イソシアネートが検出されなくなるまで撹拌した(NCO含有量<0.1%)。次いで、ホットメルトを取り出し、放冷し、固化させた。
【0060】
得られたポリウレタンポリオールの溶融挙動をDSC(示差走査熱分析、加熱速度10K/分)で調査した。
【0061】
実施例2a〜2eを表2に示す。表には、どの反応物質がどういうモル比で反応されたかが示され、DSCで測定された溶融過程の最終温度は、℃単位で記載されている。
【0062】
表2

略語については、表1を参照のこと。
【0063】
実施例3(比較多層コーティングのクリアコート組成物および外側クリアコート層の生成):
下記の成分を混合することによって、ベースを調製した。
61.6部:Solvesso(登録商標)100と酢酸ブチルの混合物(2:1)中、メタクリル酸系コポリマー(酸価:5mgのKOH/g、ヒドロキシル値:147mgのKOH/g)の65重量%溶液
6.7部:Solvesso(登録商標)100中、分枝状ポリエステル(酸価:41mgのKOH/g、ヒドロキシル値:198mgのKOH/g、数平均分子量:1000)の65重量%溶液
5.3部:エトキシプロピルアセテート
6.8部:Solvesso(登録商標)150
1.2部:Ciba製Tinuvin(登録商標)292(光保護剤)
1.2部:Ciba製Tinuvin(登録商標)384(紫外線吸収剤)
2.0部:酢酸ブチル
4.3部:ブチルジグリコールアセテート
4.4部:ブチルグリコールアセテート
6.5部:Solvesso(登録商標)100
【0064】
ベース100pbw(重量部)と、Solvesso(登録商標)100と酢酸ブチルの混合物(2:1)中、ポリイソシアナート硬化剤混合物(重量比2:1のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートとヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート)68重量%溶液50部を混合することによって、クリアコートを調製した。
【0065】
DIN EN ISO 2431に従って、DIN 4カップを用いて、20℃における初期フロー時間を、ベースとポリイソシアナート硬化剤の混合直後(28秒)に決定した。時間で表したクリアコートの可使時間は、2時間であった。
【0066】
電気泳動プライマーおよび厚さ35μmのヒドロプライマーサーフェーサー層を塗布し、焼付けて準備した金属パネルに、黒色の水系ベースコートを15μmの乾燥層厚さにスプレーコーティングし、70℃で5分間フラッシュオフし、次いでクリアコートを垂直位で楔形、層厚さ勾配10μmから70μm(乾燥層厚さ)でスプレーコーティングし、室温で10分間フラッシュオフした後、焼付けを130℃(物体温度)で30分間実施した。クリアコートの垂れ限界を目視で決定した。
【0067】
電気泳動プライマーおよび厚さ35μmのヒドロプライマーサーフェーサー層を塗布し、焼付けて準備した金属パネルに、黒色の水系ベースコートを15μmの乾燥層厚さにスプレーコーティングし、、70℃で5分間フラッシュオフし、次いでクリアコートを40μmの乾燥層厚さにスプレーコーティングし、室温で10分間フラッシュオフした後、焼付けを130℃(物体温度)で30分間実施した。耐洗浄引掻性は、リフロー前および後の残存光沢(%)(多層コーティングの初期の光沢と洗浄引掻き後のその光沢との比。光沢はいずれの場合も20°の照射角度で測定;リフローは、引掻いたパネルを物体温度60℃の実験室用オーブンに1時間曝露したことを意味する)の測定によって決定した。引掻きは、実験室規模のAmtec Kistler自動車洗浄装置を使用して実施した(Th.KlimmaschおよびTh.Engbert、Development of a uniform laboratory test method for assessing the car−wash scratch resistance of automotive top coats,in DFO Proceedings 32、59〜66頁、Technologie−Tage、Proceedings of the seminar on April 29 and 30、1997 in Cologne、Deutsche Forschungsgesellschaft fuer Oberflaechenbehandlung e.V.により発表、Adersstrasse 94,40215 Duesseldorfを参照のこと)。
【0068】
実施例4a〜4i(本発明による多層コーティングクリアコート組成物および外側クリアコート層の生成):
実施例1a、d、e、f、h、k、lの固体ポリウレタンジオール、ならびに実施例2aおよび2dの固体ポリウレタンポリオールを、いずれの場合も、粉体コーティングの生成で一般的な粉砕および篩い分け方法によって粉砕し、すり砕き、篩い分けし、この方式で、平均粒径50μmの結合剤粉末(レーザー回折によって決定)に変換した。
【0069】
ヒドロキシル官能性メタクリル酸系コポリマーの一部分を、前述のパラグラフで記載された手順に従って調製された粉末状のポリウレタンジオールまたはポリウレタンポリオールに置換して、実施例3を数回繰り返した。置換は、いずれの場合も10モル%の条件で、または第2のシリーズでは、いずれの場合も20モル%のOH置換の条件で、粉末状のポリウレタンジオールまたはポリオールを、メタクリル酸系コポリマーの溶液の一部分の代わりに使用することによって行った。必要に応じて、初期フロー時間を、実施例3の場合と同様の値に調整した。
【0070】
可使時間、垂れ限界、および耐洗浄引掻性を、実施例3の場合と同様の条件下で決定した。
【0071】
表3は、実施例3および4a〜4i(いずれの場合も10モル%または20モル%のOH置換)について、可使時間、測定された垂れ限界(単位μm)、および耐洗浄引掻性を示す。最初に記載された値は、いずれの場合も、10モル%の置換に関し、次に記載された値は、20モル%の置換に関する。
【0072】
表3

【0073】
実施例5(比較多層コーティングのクリアコート組成物および外側クリアコート層の生成):
下記の成分を混合することによって、クリアコートを調製した。
53.3部:Solvesso(登録商標)100とブタノールの混合物(4:1)中、メタクリル酸系コポリマー(酸価:20mgのKOH/g、ヒドロキシル値:119mgのKOH/g)の65重量%溶液
28.0部:BASF製Luwipal(登録商標)018(メラミン樹脂)
11.8部:Solvesso(登録商標)150
0.9部:Ciba製Tinuvin(登録商標)1130(紫外線吸収剤)
0.9部:Ciba製Tinuvin(登録商標)144(光保護剤)
0.9部:King製Nacure(登録商標)5225(触媒)
4.2部:Solvesso(登録商標)100
【0074】
クリアコートの40℃における貯蔵安定性を、以下の通り決定した。DIN EN ISO 2431に従って、DIN 4カップを用いて、20℃における初期フロー時間を決定した(28秒)。次いで、クリアコート組成物を40℃で2週間貯蔵し、フロー時間を再度測定した(42秒)。
【0075】
クリアコートの塗布、ならびにその垂れ限界および耐洗浄引掻性の決定を、実施例3に記載するのを同様の条件下で行った。
【0076】
実施例6a〜6i(本発明による多層コーティングのクリアコート組成物および外側クリアコート層の生成):
ヒドロキシル官能性メタクリル酸系コポリマーの一部分を、実施例4a〜4iで記載したように調製された粉末状のポリウレタンジオールまたはポリウレタンポリオールに置換して、実施例5を数回繰り返した。置換は、いずれの場合も10モル%の条件で、または第2のシリーズでは、いずれの場合も20モル%のOH置換の条件で、粉末状のポリウレタンジオールまたはポリオールを、メタクリル酸系コポリマーの溶液の一部分の代わりに使用することによって行った。必要に応じて、初期フロー時間を、実施例5の場合と同様の値に調整した。
【0077】
貯蔵安定性、垂れ限界、および耐洗浄引掻性を、実施例5の場合と同様の条件下で決定した。
【0078】
表4は、実施例5および6a〜6i(いずれの場合も、10モル%または20モル%のOH置換)について、貯蔵安定性、測定された垂れ限界(単位μm)、および耐洗浄引掻性を示す。ここで、最初に記載された値は、いずれの場合も、10モル%の置換に関し、次に記載された値は、20モル%の置換に関する。
【0079】
表4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのヒドロキシル官能性成分A、前記少なくとも1つの成分Aとは異なる少なくとも1つのヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂B、ならびにAおよびBのヒドロキシル基に対して反応性がある基を有する少なくとも1つの架橋剤Cを含有する非水性液体コーティング組成物であって、前記少なくとも1つの成分Aは、室温で固体でなく、および/または溶解された形で存在し、前記少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bは、40〜180℃の融点を有する粒子として存在するコーティング組成物。
【請求項2】
固形分が40〜85重量%であり、有機溶媒含有量が15〜60重量%であり、前記固形分と前記有機溶媒含有量の重量%の合計が90〜100重量%であり、前記固形分は、樹脂固形分、ならびに任意の成分:顔料、充填剤、および非揮発性添加剤からなる請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記樹脂固形分が、50〜90重量%の成分AおよびBからなる結合剤固形分、10〜50重量%の1つまたは複数の架橋剤C、ならびに0〜30重量%の1つまたは複数の成分D(ただし、重量百分率は合計100重量%になる)からなる請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記結合剤固形分が、0重量%より多く95重量%までの少なくとも1つのヒドロキシル官能性成分A、および5重量%から100重量%未満の少なくとも1つのヒドロキシル官能性ポリウレタン樹脂B(ただし、重量百分率は合計100重量%になる)からなる請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bの融点が、30〜150℃の幅広い溶融範囲の上端である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bの溶解性が、20℃において10g未満/酢酸ブチル1リットルである請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
レーザー回折によって決定された前記ポリウレタン樹脂B粒子の平均粒径が1〜100μmである請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記ポリウレタン樹脂B粒子が、前記少なくとも1つの固体ポリウレタン樹脂Bの粉砕、または前記少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bの溶解媒体での熱溶解、続いて冷却中および/または冷却後の粒子形成によって形成される請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bが、1,6−ヘキサンジイソシアネートとジオール成分を、x:(x+1)のモル比(式中、xは、2〜6の任意の所望の値を意味する)で反応させることによって調製することができるポリウレタンジオールであり、前記ジオール成分が、単一ジオールまたはジオールの組合せである請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bが、ジイソシアネート成分とジオール成分を、x:(x+1)のモル比(式中、xは、2〜6の任意の所望の値を意味する)で反応させることによって調製することができるポリウレタンジオールであり、前記ジイソシアネート成分の50〜80モル%は、1,6−ヘキサンジイソシアネートで生成され、20〜50モル%は、1つまたは2つのジイソシアネートで生成され、それぞれ、前記ジイソシアネート成分の少なくとも10モル%を構成し、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、およびテトラメチレンキシリレンジイソシアネートからなる群から選択され、前記それぞれのジイソシアネートのモル%は合計100モル%になり、前記ジオール成分の20〜100モル%は、少なくとも1つの線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールで生成され、0〜80モル%は、線状脂肪族α,ω−C2〜C12−ジオールと異なる少なくとも1つのジオールで生成され、前記それぞれのジオールのモル%は合計100モル%になる請求項1〜8のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
所定の比率の前記ジオール成分が、少なくとも1つのトリオールを含むトリオール成分で置換される請求項9または10に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
コーティング層の調製方法であって、
下記の連続ステップ:
1)請求項1〜11のいずれか一項に記載のコーティング組成物によるコーティング層を塗布するステップと、
2)場合によっては、前記塗布されたコーティング層をフラッシュオフして、溶媒を除去するステップと、
3)前記コーティング層を、前記少なくとも1つのポリウレタン樹脂Bの融点を超える物体温度で熱硬化するステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記コーティング層が、単層コーティング、および多層コーティング内のコーティング層からなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記多層コーティング内のコーティング層が、自動車車体、および自動車車体部品からなる群から選択された基材上の自動車用多層コーティングである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティング層が、プライマーサーフェーサー層、外側クリアトップコート層、および透明シーリング層からなる群から選択される請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2009−509028(P2009−509028A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532388(P2008−532388)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/036843
【国際公開番号】WO2007/035876
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】