説明

非水系二次電池用電極群およびこれを用いた非水系二次電池

【課題】電極群の構成時に加わる応力、若しくは充放電時の電極板の膨張収縮に伴う応力を緩和して、電極板の破断等を抑制することのできる信頼性・安全性の高い二次電池用電極群を提供する。
【解決手段】電極群4の構成が、正極板14および負極板24の少なくとも一方の極板が、電極群4の長径方向の端部にある湾曲部において、集電体21上に合剤層22a,22bが形成されない未塗工部23a,23bを有し、且つ、未塗工部23a,23bの露出した集電体部26a,26bと塗工端部27a,27bとからなる断面形状が露出した集電体部26a,26bの幅より露出した集電体部26a,26bに隣接する両塗工端27a,27bからなす幅の方が大きい台形形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に代表される非水系二次電池に使用される電極群およびこれを用いた非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウムイオン二次電池は、負極にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極にLiCoO等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって、高電位で高放電容量の非水系二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化や小型・薄型化に伴って、高容量化を図ったリチウムイオン二次電池が望まれている。
【0003】
ところで、高容量化が進むと、正極板と負極板との内部短絡が起きた場合、電池内で急激な温度上昇が起こるおそれがあるため、特に、大型・高出力な二次電池では、急激な温度上昇を抑制する等の安全性の向上が強く要求される。特に、扁平状に捲回された電極群が角形電池ケースに収納された電池の場合には、電極群の長手方向の両側にある湾曲部は曲率半径が小さいため、電極群の構成時に、曲率半径の小さい湾曲部において電極板に大きな応力が加わることによって、合剤層が脱落したり、電極板が破断するおそれがある。また、電池の充放電に伴う電極板の膨張収縮が起きると、電極板に加わる応力によって電極板が挫屈を起こし破断するおそれがある。このような電極板の破断が起きると、破断した電極板がセパレータを突き破り、正極板と負極板とが内部短絡するおそれがある。また、このような問題は、円筒状の電極群が収納された円筒形電池においても、電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位で起こるおそれがある。
【0004】
電極板の破断を抑制する方法として、図16に示すように、集電体91の一面に設けられた合剤層92を、複数の凹部93により合剤層の単位92Uに分割して電極板90を構成する方法が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、集電体の内周側に形成された合剤層を集電体の外周側に形成された合剤層よりも柔軟性の高い材料で形成する方法が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−343340号公報
【特許文献2】特開2007−103263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に示される従来技術では、電極板を柔軟にするという点においては効果があるものの、扁平状に捲回された電極群に適用した場合、電極群の長手方向の両側にある曲率半径の小さい湾曲部に凹部93を位置させていないため、曲率半径の小さい箇所に加わる曲げ応力を内周側と外周側の両方で吸収することは難しい。また、上述した特許文献2に示される従来技術では、電池の充放電時に伴う電極板の膨張収縮による応力を緩和して、電極板の破断を抑制する効果は期待できるものの、二種類の合剤層を集電体に形成する必要があるため、電極板を作製するプロセスが複雑になってしまう。
【0008】
本発明は上記従来の課題を鑑みて成されたもので、電極群の構成時に加わる応力、若しくは充放電時の電極板の膨張収縮に伴う応力を緩和して、電極板の破断等を抑制することのできる信頼性・安全性の高い非水系二次電池用電極群およびこれを用いた非水系二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の二次電池用電極群は、集電用芯材からなる集電体の表面に活物質層が形成された帯状の正極と負極の電極板と、その間にセパレータを介在させ捲回した二次電池用電極群において、扁平状に形成した電極群を構成する正極板および負極板の少なくとも一方の電極板が、電極群の長径方向の端部にある湾曲部に集電体上に合剤層が形成されていない集電体を露出した未塗工部を有し、且つ、捲回時前の未塗工部の露出した集電体部と前記集電体部に隣接した塗工端部とからなる断面形状が露出した集電体部の幅より露出した集電体に隣接する両塗工端からなす幅の方が大きい台形形状とした電極板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願出願人は、この知見に基づき、捲回または積層時の合剤層の脱落や電極板の破断を抑制する方法として、特願2008−133849号の出願明細書に開示している。すなわち、渦巻状に捲回またはつづら折れ状に積層したものを扁平になるように成形する正極板および負極板の少なくともいずれか一方の曲率の小さい箇所に合剤層のない部分を形成することにより電極群の構成時に加わる応力、若しくは充放電時の電極板の膨張収縮に伴う応力を緩和して、電極板の破断や挫屈を抑制することができる。
【0011】
さらに、未塗工部の露出した集電体部とその集電体部に隣接した塗工端部とからなる断面形状が露出した集電体部の幅より露出した集電体部に隣接する両塗工端からなす幅の方が大きい台形形状とした電極板を用いたことにより、捲回時の合剤の脱落が抑制され電極板同士の短絡をさらに抑制できる。これにより、上記内容に起因する内部短絡を効果的に抑制することができるため、信頼性・安全性の高い二次電池用電極群を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)本発明の一実施の形態における電極群の構成を示した断面図、(b)本発明の一実施の形態における電極群の部分拡大図、(c)本発明の一実施の形態における電極群に捲回する前の正極板、負極板およびセパレータの構成を示した断面図、(d)本発明の一実施の形態における電極板の合剤層の塗工端部にある弧状を示す塗工部の部分拡大図
【図2】本発明の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示した断面図
【図3】本発明の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図4】本発明の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図5】本発明の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図6】本発明の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図7】本発明の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図8】本発明の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図9】(a)本発明の別の一実施の形態における電極群の構成を示した断面図、(b)本発明の別の一実施の形態における電極群の部分拡大図、(c)本発明の別の一実施の形態における電極群に捲回する前の正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図、(d)本発明の別の一実施の形態における電極板の合剤層の塗工端部にある弧状を示す塗工部の部分拡大図
【図10】本発明の別の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図11】本発明の別の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図12】本発明の別の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図13】本発明の別の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図14】本発明の別の一実施の形態における正極板、負極板およびセパレータの構成を示す断面図
【図15】本発明の一実施の形態における角形の非水系二次電池の構成を示した一部切欠斜視図
【図16】従来の電極板の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の発明においては、集電用芯材からなる集電体の表面に活物質層が形成された帯状の正極と負極の電極板と、その間にセパレータを介在させ捲回した二次電池用電極群において、扁平状に形成した電極群を構成する正極板および負極板の少なくとも一方の電極板は、電極群の長径方向の端部にある湾曲部に集電体上に合剤層が形成されていない集電体を露出した未塗工部を有し、且つ、捲回時前の未塗工部の露出した集電体部と集電体部に隣接した塗工端部とからなる断面形状が露出した集電体部の幅より露出した集電体部に隣接する両塗工端からなす幅の方が大きい台形形状とした電極板であることにより、電極群の構成時に加わる応力、若しくは充放電時の電極板の膨張収縮に伴う応力を緩和して、電極群の破断や挫屈を抑制することができ、且つ、未塗工部の露出した集電体部とその両塗工端部とからなる断面形状を逆台形にすることで捲回時の合剤の脱落が抑制され電極板同士の短絡を抑制することが可能である。
【0014】
本発明の第2の発明においては、合剤層からなる塗工端部の頂部が弧状であることにより、電極群の構成時における合剤の脱落を抑制することが可能である。
【0015】
本発明の第3の発明においては、合剤層および未塗工部を含む電極板の表面に多孔性絶縁層を形成したことにより、電極板同士の短絡を抑制することが可能である。
【0016】
本発明の第4の発明においては、未塗工部は、電極板の両面のうち、少なくとも電極群の内周側の面に形成されていることにより、電極群の巻き形状と曲率の違いに応じて、合剤層のない部分を最適に形成することができるため、捲回時または積層時の合剤層の脱落を抑制し、この部分で電極板に加わる応力を緩和することで電極板の破断を抑制し、これらにより内部短絡を抑制することが可能である。
【0017】
本発明の第5の発明においては、未塗工部が形成された集電体の表面に多孔性絶縁層が形成されていることにより、特に集電体部分での捲回時の合剤の脱落や破断等に起因する内部短絡によって生じる発熱などの熱暴走をより効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明の第6の発明においては、未塗工部は集電体の両面に形成されており、電極群の内周側の面に形成された未塗工部は電極群の外周側の面に形成された未塗工部よりも幅が
広く形成されていることにより、電極群を構成した際にこの部分で電極板に加わる応力を緩和することで電極板の挫屈を抑制し、これらにより内部短絡を抑制することが可能である。
【0019】
本発明の第7の発明においては、未塗工部の代わりに合剤層の厚みが薄い肉薄部が形成され、且つ、捲回時前の肉薄部と塗工端からなる断面形状が台形形状を有した電極板であることにより、捲回時の合剤層の脱落や電極板の破断を抑制するとともに、電池容量の低下を抑制することが可能である。
【0020】
本発明の第8の発明においては、未塗工部は集電体の両面に形成されており、集電体の一方の面に形成された未塗工部と、集電体の他方の面に形成された未塗工部とは位相をずらして形成されていることにより、電極板の引っ張り応力に対する強度を保ちながら電極板の長手方向に対して充放電時の電極板の膨張収縮に伴う応力を緩和することができるので電極板の破断を抑制し、これらにより内部短絡を抑制することが可能である。
【0021】
本発明の第9の発明においては、電極群は扁平状の代わりに円筒状に形成されており、未塗工部は、扁平状の電極群の長径方向の端部にある湾曲部の代わりに、円筒状の電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位において形成されていることにより、巻き始め側と巻き終わり側の曲率の差に起因した応力差を緩和して、充放電時の電極板の膨張収縮に伴う破断または挫屈を抑制し、さらにこれらに起因する内部短絡を効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明の第10の発明においては、正極板、負極板、およびセパレータを備えた電極群が電解液とともに電池ケース内に収納された二次電池であって、電極群は本発明の第1〜8のいずれかの二次電池用電極群からなることにより、電極板の破断または挫屈を抑制して内部短絡を抑制することができるので、安全性の高い非水系二次電池を提供することができる。
【0023】
以下に、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の一実施の形態との組み合わせも可能である。
【0024】
本発明の電極群4は、図1(a)に示すように複合リチウム酸化物を活物質とする正極板14とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板24とを間に多孔質絶縁層としてのセパレータ31を介して渦巻状に捲回し、且つ、扁平になるように成形して形成している。さらに電極群4の要部の拡大部を図1(b)に示すように、電極板を渦巻状に捲回し、且つ、扁平に成形した負極板24の曲率半径の小さい湾曲部に負極合剤層22a,22bが形成されていない未塗工部23a,23bを形成している。これにより、一般的に曲率が小さい箇所で電極板を渦巻状に捲回する際に発生する合剤層の割れ、はがれを起因とする合剤層の脱落を抑制し、また電極板の厚みの内外周差により発生する電極板に加わる曲げ応力を緩和することで電極板の破断を抑制しこれらに起因した内部短絡を抑制することができる。
【0025】
電極群4の長径方向の端部にある湾曲部に未塗工部23a,23bを形成するには、図1(c)に示すように、負極集電体21の表面に長手方向に対して垂直方向の負極合剤層22aの一部に合剤層のない部分である未塗工部23aを形成し、裏面にも負極合剤層22bの一部に、表面と同幅、且つ、同位相の合剤層のない部分である未塗工部23bを形成した負極板24と正極板14とをセパレータ31を介して、負極合剤層22a,22bのない未塗工部23a,23bが、電極群4の長径方向の端部にある湾曲部に位置するように渦巻状に捲回し、且つ、扁平形状になるように成形すればよい。また、図1(d)に
示すような未塗工部23a,23bの露出した集電体部26a,26bと集電体部26a,26bに隣接した負極合剤層22a,22bの端部である塗工端部27a,27bとからなる断面形状が露出した集電体部26a,26bの幅より露出した集電体部26a,26bに隣接する塗工端部27a,27bとからなす幅の方が大きい台形形状で頂部25a,25bが弧状の負極合剤層22a,22bのない未塗工部23a,23bを形成する方法としては、ダイコータ等を用いた間欠塗布の方法を用いることができる。すなわち、ダイのマニホールド内部の圧力を負圧に調整することで、ダイ先端部から吐出する負極合剤塗料を調整しながら止め、その後、再び圧力を開放して負極合剤塗料を調整しながら吐出させることで、負極合剤層22a,22bのない未塗工部23a,23bを形成することが可能である。なお、負極合剤層22a,22bのない未塗工部23a,23bは、負極集電体21の長手方向の少なくとも2箇所以上に形成されていればよい。また、上記の一実施の形態では、負極板24にのみ未塗工部23a,23bを形成したが、図2に示すように、正極板14にも、正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bを形成してもよい。また、正極板14にのみ未塗工部13a,13bを形成してもよい。負極合剤層22a,22bのない未塗工部23a,23bの形成パターンは、図1(c)に示したパターンに限らず、下記に示すような種々の形成パターンを適用することができる。
【0026】
以下に負極合剤層22a,22bのない未塗工部23a,23b、正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bの形成パターンについて、図面を参照しながら説明する。図3は、負極集電体21の片面にのみ未塗工部23aを形成し、他方の面には負極合剤層22bを全面に形成した実施の形態で、未塗工部23aを電極群4の内周側の面に形成することによって、内周側の負極合剤層22bに加わる圧縮応力を緩和することができる。これにより、圧縮応力による合剤層の脱落や電極板の破断をより効果的に抑制することが可能となる。
【0027】
また図4は、電極群4の内周側の面に形成された未塗工部23aの幅W1を、電極群4の外周側の面に形成された未塗工部23bの幅W2よりも広く形成した実施の形態で、電極群4の外周側の負極合剤層22aには引張応力が加わり、内周側の負極合剤層22bには圧縮応力が加わることになるが、内周側に幅の広い未塗工部23aを設けることにより、圧縮応力による合剤層の脱落や電極板の破断をより効果的に抑制することが可能となる。
【0028】
さらに図5は、電極群4の巻き始めから巻き終わりに向かって、未塗工部23a,23bのピッチP1,P2,P3,・・・が徐々に長くなるように形成した実施の形態で、巻始め側の負極板24は、巻終り側の負極板24よりも大きな曲げ応力が加わることになるが、ピッチの長さを調整することにより、電極群4の長径方向の端部にある湾曲部に確実に未塗工部23a,23bを形成することができ、捲回時の合剤層の脱落や電極板の破断をより効果的に抑制することが可能となる。さらに、未塗工部が形成された集電体の表面に多孔性絶縁層を形成するようにしてもよい。
【0029】
次に未塗工部が形成された集電体の表面に多孔性絶縁層を形成するパターンについて、図面を参照しながら説明する。図1(c)に示した未塗工部23a,23bの形成パターンに対して、図6に示すように、負極合剤層22a,22bと未塗工部23a,23bを覆うように、負極集電体21の表面に多孔性絶縁層6a,6bを形成してもよい。負極合剤層22a,22bと未塗工部23a,23bを多孔性絶縁層6a,6bで保護することによって、捲回時の合剤層の脱落をより効果的に抑制することが可能となる。また、図1(c)に示した未塗工部23a,23bの形成パターンに対して、図7に示すように、負極合剤層のない未塗工部23a,23bの表面に、多孔性絶縁層6a,6bを形成するようにしてもよい。未塗工部23a,23bを多孔性絶縁層6a,6bで保護することにより、捲回時に電極板の破断が生じた場合でも、内部短絡の発生をより効果的に抑制するこ
とが可能となる。なお、多孔性絶縁層6a,6bは、例えば、シリカ粉末、Al粉末等の無機添加剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の結着剤を含む材料からなる塗料を、ダイコート等などを用いて負極集電体21に塗布することによって形成することができる。
【0030】
また図8に示すように、未塗工部23a,23bを形成する部位に、負極合剤層22a,22bの厚みを薄くした肉薄部42a,42bを設けるようにしてもよい。未塗工部23a,23bの代わりに、負極合剤層22a,22bの肉薄部42a,42bを形成することにより、捲回時の合剤層の脱落や電極板の破断を抑制するとともに、電池容量をさらに増やすことができる。ここで、負極合剤層22a,22bの肉薄部42a,42bを形成するには、ダイコータのマニホールド内部を減圧させて負極合剤塗料の吐出量を減少させ、その後、再び元の圧力に戻して負極合剤塗料を吐出させることで、負極合剤層22a,22bの肉薄部42a,42bを形成することができる。また、負極合剤層22a,22bの肉薄部42a,42bの横断面を台形形状にし、頂部が弧状になるように形成することによって、負極合剤層22a,22bの脱落をより効果的に抑制することができる。なお、負極合剤層22a,22bについて説明したが、正極合剤層12a,12bに肉薄部を設けてもよい。また上記の一実施の形態では、扁平状の電極群の長径方向の端部にある湾曲部に、集電体上に合剤層が形成されていない未塗工部を設けることによって、電極群の構成時に加わる応力、若しくは充放電時の電極板の膨張収縮に伴う応力を緩和して、電極板の破断等を抑制する効果を奏するようにしたが、円筒状の電極群の場合でも、電極群の巻き始め側においては、曲率半径の小さい部位が生じるため、かかる部位に、合剤層が形成されていない未塗工部を設けることによって、同様の効果を奏することができる。
【0031】
次に別の一実施の形態である円筒形二次電池用電極群について、図を参照にして説明する。図9(a)〜(d)に示すように、正極集電体11上に正極合剤層12a,12bが形成された正極板14、および負極集電体21上に負極合剤層22a,22bが形成された負極板24を、セパレータ31を介して捲回して電極群4が円筒状に形成されている。そして、正極板14は、電極群4の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位において、正極集電体11上に正極合剤層12aが形成されていない未塗工部13aを有している。このような構成により、曲率半径の小さい部位において、帯状の正極板14、負極板24を捲回する際に発生する合剤層の脱落を抑制し、また、電極板に加わる曲げ応力を緩和することで、電極板の破断を防止し、これに起因した内部短絡を抑制することができる。なお、上記実施形態では、正極集電体11の片面にのみ未塗工部13aを設けたが、正極集電体11の両面に設けてもよい。また、正極板14にのみ未塗工部13aを設けたが、負極板24にも未塗工部を設けても構わない。あるいは、負極板24にのみ未塗工部を設けても構わない。さらには図9(d)に示すように、未塗工部13aの露出した未塗工部16aと集電体部16aに隣接した正極合剤層12aの端部である塗工端部17aとからなる断面形状が台形形状をし、正極合剤層12aの頂部15aが弧状であればなお良い。また、正極合剤層のない未塗工部13aの形成パターンは、図9(c)に示したパターンに限らず、下記に示すような種々の形成パターンを適用することができる。
【0032】
以下に正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bの形成パターンについて、図面を参照しながら説明する。図10は、正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bを、正極板14の表面と裏面で位相をずらせて形成したものである。これにより、正極板14の膨張収縮に伴う応力を緩和する効果を、帯状の電極板の長手方向に対してより効果的に発揮させることができ、電極板の破断をより効果的に抑制することが可能となる。
【0033】
図11は、正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bの幅を、正極板14の長手方向で変えて形成したもので、電極群の巻始め側から巻終わり側に向かって順に
幅W11<W12<W13・・・の間隔で形成したものである。正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bの幅を、巻き始め側から巻き終わり側に向かって広くすることによって、電極群4を構成した際に、正極板14の巻き始め側と巻き終わり側の曲率半径の差に起因した応力差を緩和することができるため、正極板14の破断または挫屈を抑制し、さらにこれらに起因する内部短絡を効果的に抑制することができる。
【0034】
図12は、同位相で形成した正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bの幅を、電極群の巻き始め側から巻き終わり側に向かって広くするとともに(W11<W12<W13・・・,W21<W22<W23・・・)、電極群の内周側の未塗工部13aの幅を、外周側の未塗工部13bの幅よりも広くなるように(W11>W21,W12>W22,W13>W23・・・)形成したものである。電極群を捲回して形成する際に、曲率半径の違いにより、正極板14の外周側の正極合剤層12aには引張応力が加わり、内周側の正極合剤層12bには圧縮応力が加わることになるが、内周側に幅の広い未塗工部13aを設けることにより、巻き内側と巻き外側の曲率半径の差に起因した応力差をより効果的に緩和することができる。
【0035】
図13は、正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bを形成するピッチを正極板の表面と裏面で変えて形成したもので、電極群の外周側のピッチP21を、内周側のピッチP11よりも大きく(幅は同一)して形成したものである。電極群を構成する際、正極板14の外周側の正極合剤層12aには引張応力が加わり、内周側の正極合剤層12bには圧縮応力が加わるが、外周側のピッチP21を内周側のピッチP11よりも大きくすることにより、巻き内側と巻き外側の曲率半径の差に起因した応力差をより効果的に緩和することができる。
【0036】
図14は、正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bを形成するピッチを、電極群の巻始め側から巻終わり側に向かって順にピッチの間隔を広くする(P11<P12<P13・・・,P21<P22<P23・・・)とともに、外周側のピッチを内周側のピッチよりも大きくして(P21>P11,P22>P12,P23>P13・・・)形成したものである。電極群4を構成した際に、曲率半径の違いにより正極板14は巻始め側は巻終わり側より曲げ応力が加わることになるが、未塗工部13a,13bのピッチを巻き始め側から巻き終わり側に向かって広くすることによって、正極板14の巻き始め側と巻き終わり側の曲率半径の差に起因した応力差を効果的に緩和することができる。さらに、電極群を捲回する際に、曲率半径の違いにより、正極板14の外周側の正極合剤層12aには引張応力が加わり、内周側の正極合剤層12bには圧縮応力が加わることになるが、内周側に幅の広い未塗工部13aを設けることにより、巻き内側と巻き外側の曲率半径の差に起因した応力差を緩和することができる。
【0037】
図15は、本実施形態における電極群を備えた二次電池の構成を示した図である。ここでは、扁平状に形成された電極群を備えた角形非水系二次電池の例を示すが、円筒状の電極群を備えた円筒形二次電池も、電極群としての基本的な構成は同じである。図15に示すように、複合リチウム酸化物を活物質とする正極板14と、リチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板24とを、セパレータ31を介して渦巻状に捲回して扁平状の電極群4が構成される。この電極群4を有底偏平形の電池ケース36の内部に絶縁板37と共に収容し、電極群4の上部より導出した負極リード33をガスケット39を周縁に取り付けた端子40に接続する。次いで、正極リード32を封口板38に接続した後、電池ケース36の開口部に封口板38を挿入し、電池ケース36の開口部の外周に沿って封口板38と電池ケース36を溶接して封口する。然る後、封栓口41から電池ケース36に所定量の非水溶媒からなる電解液を注液した後、封栓42を封口板38に溶接することにより、角形非水系二次電池30を得ることができる。
【0038】
以上、本発明を好適な実施の形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上記の実施の形態においては、正極板および負極板がセパレータを介して捲回された電極群について説明したが、正極板および負極板がセパレータを介してつづら折れ状に積層された電極群であってもよい。次に以下に本発明に関わる非水系二次電池と非水系二次電池の製造方法について図を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0039】
活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に混練することで、正極合剤塗料を作製した。続いて図2に示したように、正極合剤塗料を、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体11の両面に、長手方向に対して幅が5mmで正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bを同位相で等ピッチで設けて塗布し、乾燥後に片面側の正極合剤層12a,12bの厚みがそれぞれ100μmとなる正極板14を作製した。さらに、正極板14を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層12a,12bの厚みをそれぞれ75μmにした。その後、角形非水系二次電池の規定されている幅にスリット加工して、正極板14を作製した。
【0040】
次に活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに攪拌し、負極合剤塗料を作製した。続いて図2に示したように、負極合剤塗料を、厚みが10μmで銅箔の負極集電体21の両面に、長手方向に対して幅が5mmで負極合剤層22a,22bのない未塗工部23a,23bを同位相で等ピッチで設けて塗布し、乾燥後に片面側の負極合剤層22a,22bの厚みがそれぞれ110μmとなる負極板24を作製した。さらに、負極板24を総厚みが180μmとなるようにプレスすることで、片面側の負極合剤層22a,22bの厚みをそれぞれ85μmにした。その後、角形非水系二次電池の規定されている幅にスリット加工して、負極板24を作製した。
【0041】
以上のようにして作製した正極板14と負極板24とを用いて、図15に示すような角形非水系二次電池30を作製した。具体的には、正極板14と負極板24とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ31を介して、負極合剤層22a,22bのない未塗工部23a,23bおよび正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13bが曲率半径の小さい箇所に位置するように渦巻状に図2の矢印Aの方向に捲回し、扁平に成形した電極群4を100個作製した。続いて作製した電極群4の中から60個を抜き出し、有底偏平形の電池ケース36の内部に絶縁板37と共に収容した後、電極群4の上部より導出した負極リード33を絶縁ガスケット39が縁に取り付けられた端子40に接続し、次いで、電極群4の上部より導出した正極リード32を封口板38に接続した。その後、電池ケース36の開口部に封口板38を挿入し、電池ケース36の開口部の外周に沿って封口板38を溶接して封口した。その後、封栓口41から電池ケース36に電解液を注液した後、封栓42を封口板38と溶接して角形非水系二次電池30を作製した。
【実施例2】
【0042】
実施例1と同様の方法で、図3に示したような正極合剤層のない未塗工部を設けていない正極板14を作製した。また、実施例1と同様の方法で、図3に示したような負極集電体21の片面にのみ未塗工部23aが設けられた負極板24を作製した。なお、未塗工部23aの幅は、実施例1と同じ5mmとした。以上のようにして作製した正極板14と負
極板24とを用いて、実施例1と同様の方法で、図15に示すような角形非水系二次電池30を作製した。
【実施例3】
【0043】
実施例1と同様の方法で、図4に示したような正極合剤層のない未塗工部を設けていない正極板14を作製した。また、実施例1と同様の方法で、図4に示したような負極集電体21の両面に未塗工部23a,23bが設けられた負極板24を作製した。なお、未塗工部23aの幅は5mmとし、未塗工部23bの幅は3mmとした。以上のようにして作製した正極板14と負極板24とを用いて、実施例1と同様の方法で、図15に示すような角形非水系二次電池30を作製した。
【実施例4】
【0044】
実施例1と同様の方法で、図5に示したような正極合剤層のない未塗工部を設けていない正極板14を作製した。また、実施例1と同様の方法で、図5に示したような負極集電体21の両面に未塗工部23a,23bが設けられた負極板24を作製した。なお、未塗工部23a,23bの幅は5mmとし、電極群4の巻き始めから巻き終わりに向かって、未塗工部23a,23bのピッチP1,P2,P3を20mm,30mm,40mmとした。以上のようにして作製した正極板14と負極板24とを用いて、実施例1と同様の方法で、図15に示すような角形非水系二次電池30を作製した。
【実施例5】
【0045】
実施例1と同様の方法で、図6に示したような正極合剤層のない未塗工部を設けていない正極板14を作製した。また、実施例1と同様の方法で、図6に示したような負極集電体21の両面に未塗工部23a,23bが設けられた負極板24を作製した。なお、未塗工部23a,23bの幅は5mmとした。また、負極合剤層22a,22bを覆うように、負極集電体21の両面に多孔性絶縁層の塗料を塗布・乾燥して、多孔性絶縁層6a,6bを形成した。多孔性絶縁層の塗料は、平均粒径1.0μmのシリカ粉末を100重量部、ポリフッ化ビニリデンをシリカ粉末100重量部に対し10重量部を適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して作製した。以上のようにして作製した正極板14と負極板24とを用いて、実施例1と同様の方法で、図15に示すような角形非水系二次電池30を作製した。
【実施例6】
【0046】
実施例1と同様の方法で、図7に示したような正極合剤層のない未塗工部を設けていない正極板14を作製した。また、実施例1と同様の方法で、図7に示したような負極集電体21の両面に未塗工部23a,23bが設けられた負極板24を作製した。なお、未塗工部23a,23bの幅は5mmとした。また、未塗工部23a,23bの表面に、実施例5と同じ材料からなる多孔性絶縁層6a,6bを形成した。以上のようにして作製した正極板14と負極板24とを用いて、実施例1と同様の方法で、図15に示すような角形非水系二次電池30を作製した。
【0047】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で、未塗工部を設けていない正極板14および負極板24を作製し、これを用いて、実施例1と同様の方法で、図15に示すような角形非水系二次電池30を作製した。上記各実施例と比較例の所要内容を(表1)に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
(表1)の条件で捲回した電極群4および角形非水系二次電池30において、以下の内容で評価を行った。実施例1から実施例6および比較例1についてそれぞれ100個の中から40個を抜き出して電極群4を解体して電極板の破断や合剤層の脱落の有無を観察した結果を(表2)に示す。
【0050】
さらに、上述のようにして実施例1から実施例6および比較例1について作製したそれぞれ60個の角形非水系二次電池30のうち30個を抜き出して、充放電を500サイクル繰り返したときの初期容量に対する容量維持率と500サイクル繰り返した後に角形非水系二次電池および電極群を解体して、電極板の破断や合剤層の脱落の有無を観察した結果を(表2)に示す。
【0051】
また、上述のようにして実施例1から実施例6および比較例1について作製した60個の角形非水系二次電池のうち30個を抜き出して、次のような試験を行った。落下試験として、上述の各実施例と比較例でそれぞれ作製した60個の角形非水系二次電池のうち30個を抜き出して、上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後に、1.5mの高さからコンクリート面上に、角形非水系二次電池30の6面に対して各10回落下試験を行い、室温25℃にて10個の温度を測定し、10個の平均値を求めた結果を(表2)に示す。また落下試験後の発熱の有無を確認した結果を(表2)に示す。
【0052】
丸棒圧壊試験としては、上述の角形非水系二次電池を、上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後、電池を寝かせた状態で長さ方向に対し垂直方向に、直径10mmの丸棒で圧壊試験を実施し、室温25℃にて10個の温度を測定し、10個の平均値を求めた結果を(表2)に示す。
【0053】
さらに150℃加熱試験として、上述の角形非水系二次電池を、上限電圧4.2V、電流2Aの条件で2時間充電を行った後、電池を恒温層に挿入し、常温から5℃/分の条件で恒温層の温度を150℃まで昇温させて、そのときの電池の温度を測定し10個の平均値を求めた結果を(表2)に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
(表2)に示すように、実施例1〜6のいずれも、電極板の破断や合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また、500サイクル後の初期容量に対する容量維持率、および500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また、落下試験、丸棒圧壊試験、150℃加熱試験についても、不具合は認められなかった。これは、捲回時に合剤層の脱落や電極板の破断が抑制できて、それらに起因する内部短絡を抑制することができたために、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。さらに、実施例5,6では、電極板の表面に多孔性絶縁層6a,6bを施した電池は、外部からの物理的衝撃が与えられて、正極板14と負極板24とが接触して発熱しても、それ以上広がることがないため、内部短絡における安全性がさらに良好である。
【0056】
一方、比較例1では、捲回後の合剤層の脱落や電極板の破断が発生している。また、500サイクル後の容量維持率も低く、電極板の破断、挫屈、リチウム析出、合剤層の脱落の発生頻度も高い。また、落下、丸棒圧壊、150℃加熱、いずれの試験においても、温度が高い。これらは、曲率半径の小さい箇所に合剤層があることで、その箇所での合剤脱落や破断が発生することにより、これらに起因する内部短絡が原因と考えられる。
【0057】
次に、上記実施例1〜6と同様の方法で、図2〜図8に示したような正極板14および負極板24を作製し、図15に示すような角形非水系二次電池30を作製し、これを実施例7〜12とした。ただし、実施例7〜12では、実施例1〜6において形成した未塗工部の代わりに、合剤層の肉薄部42a,42bを形成した。なお、肉薄部42a,42bの厚みは9μmとした。なお、比較例2は、上記比較例1と同じ構成のものである。上記実施例7〜12と比較例2の構成を(表3)に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
上記各実施例と比較例について、上記実施例1〜6、比較例1について行ったのと同じ評価を行った評価結果を(表4)に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
(表4)に示すように、実施例7〜12のいずれも、電極板の破断や合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また、500サイクル後の初期容量に対する容量維持率、および500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の
挫屈、合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また、落下試験、丸棒圧壊試験、150℃加熱試験についても、不具合は認められなかった。これは、捲回時に合剤層の脱落や電極板の破断が抑制できて、それらに起因する内部短絡を抑制することができたために、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。さらに、実施例11,12では、電極板の表面に多孔性絶縁層6a,6bを施した電池は、外部からの物理的衝撃が与えられて、正極板14と負極板24とが接触して発熱しても、それ以上広がることがないため、内部短絡における安全性がさらに良好である。
【0062】
一方、比較例2では、捲回後の合剤層の脱落や電極板の破断が発生している。また、500サイクル後の容量維持率も低く、電極板の破断、挫屈、リチウム析出、合剤層の脱落の発生頻度も高い。また、落下、丸棒圧壊、150℃加熱、いずれの試験においても、温度が高い。これらは、曲率半径の小さい箇所に合剤層があることで、その箇所での合剤脱落や破断が発生することにより、これらに起因する内部短絡が原因と考えられる。
【0063】
次に上記実施例1〜6と同様の方法で、図2、図10、図4、図11〜13、図5、図14、図6、図7に示したような正極板14および負極板24を作製して、これを用いて図9に示すような円筒状の電極群を作製し、さらに、この電極群を用いて円筒形二次電池を作製し、これを実施例13〜22とした。ただし、未塗工部の形成に関しては、図2,図4〜7に示した正極板14および負極板24を、逆の構成とした。また、正極合剤層12a,12bを覆うともに、正極合剤層12a,12bのない未塗工部13a,13b上にも多孔性絶縁層多孔性絶縁層を形成した正極板14を用いて円筒状の電極群4を作製し、これを実施例23とした。また、実施例1と同様の方法で、未塗工部13a,13bを設けていない正極板14、負極板24を用いて円筒状の電極群4を作製し、これを比較例3とした。上記実施例13〜23と比較例3の構成を(表5)に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
上記各実施例と比較例について、上記実施例1〜6、比較例1について行ったのと同じ評価に加え、以下のような釘刺し試験を行った。釘刺し試験として、円筒形二次電池を上限電圧4.25Vで充電を行った後、分解することなく60℃の恒温槽内に入れ、電池温度が60℃に達するまでキープした。加圧子に鉄製の釘(直径3mm)を用いて電極群に突き刺した。加圧条件は1mm/秒、最大圧力を30kNとした。そして、短絡によって電池電圧が4.0V以下となった後、さらに釘を200μm移動させた後に停止させた。熱電対を用いて電池表面を測定し、短絡発生後5秒間での電池温度上昇量を評価し、10個の平均値を求めた結果を(表6)に示す。
【0066】
【表6】

【0067】
(表6)に示すように、実施例13〜実施例18においては、いずれも正極板14、負極板24ともに電極板の破断や電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また500サイクル後の初期容量に対する容量維持率および500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。また、落下試験、丸棒圧壊試験、150℃加熱試験についても、不具合は認められなかった。これは、捲回時の合剤層脱落や電極板の破断が抑制できて、それらに起因する内部短絡を抑制することができたために、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。また、実施例13〜20では、電極板の外表面に多孔性絶縁層6a,6bを施していないため、外部からの物理的衝撃である釘刺し試験ではやや発熱したが、熱暴走に至ることはなかった。これに対し、実施例21〜実施例23では、電極板の外表面に多孔性絶縁層6a,6bを施しており、外部からの物理的衝撃が与えられても、多孔性絶縁層6a,6bにより正極板14と負極板24とが接触して発熱してもそれ以上広がることがないため、多孔性絶縁層6a,6bを設けることは、内部短絡における安全性に対してさらに効果が大きいことがわかった。
【0068】
一方、比較例3では、500サイクル後に分解し観察した結果、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合が認められた。また落下試験、丸
棒圧壊試験、釘刺し試験、150℃加熱試験のいずれの試験においても、温度が高いことより、捲回時の合剤層脱落や電極板の破断に起因する内部短絡や挫屈が発生していることが原因と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等の電池に有用である。
【符号の説明】
【0070】
4 電極群
6a,6b 多孔性絶縁層
11 正極集電体
12a,12b 正極合剤層
13a,13b 未塗工部
14 正極板
15a 頂部
16a 露出した集電体部
17a 塗工端部
21 負極集電体
22a,22b 負極合剤層
23a,23b 未塗工部
24 負極板
25a,25b 頂部
26a,26b 露出した集電体部
27a,27b 塗工端部
30 角形非水系二次電池
31 セパレータ
32 正極リード
33 負極リード
36 電池ケース
37 絶縁板
38 封口板
39 ガスケット
40 端子
41 封栓口
42 封栓
42a,42b 肉薄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電用芯材からなる集電体の表面に活物質層が形成された帯状の正極と負極の電極板と、その間にセパレータを介在させ捲回した二次電池用電極群において、扁平状に形成した前記電極群を構成する前記正極板および前記負極板の少なくとも一方の電極板が、前記電極群の長径方向の端部にある湾曲部に前記集電体上に前記合剤層が形成されていない前記集電体を露出した未塗工部を有し、且つ、捲回時前の前記未塗工部の露出した集電体部と前記集電体部に隣接した塗工端部とからなる断面形状が露出した前記集電体部の幅より露出した前記集電体部に隣接する両塗工端からなす幅の方が大きい台形形状とした前記電極板であることを特徴とする非水系二次電池用電極群。
【請求項2】
前記合剤層からなる塗工端部の頂部が弧状であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項3】
前記合剤層および未塗工部を含む前記電極板の表面に多孔性絶縁層を形成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項4】
前記未塗工部は、前記電極板の両面のうち少なくとも前記電極群の内周側の面に形成され、且つ、少なくとも前記未塗工部側の面に多孔性絶縁層を形成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群。
【請求項5】
前記未塗工部が形成された前記集電体の表面に多孔性絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極群。
【請求項6】
前記未塗工部は前記集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された未塗工部は前記電極群の外周側の面に形成された未塗工部よりも幅が広く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極群。
【請求項7】
前記未塗工部の代わりに前記合剤層の厚みが薄い肉薄部が形成され、且つ、捲回前の前記薄肉部と塗工端部とからなる断面形状が台形形状を有した電極板であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極群。
【請求項8】
前記未塗工部は、前記集電体の両面に形成されており、前記集電体の一方の面に形成された未塗工部と、前記集電体の他方の面に形成された未塗工部とは位相をずらして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極群。
【請求項9】
前記電極群は扁平状の代わりに円筒状に形成されており、前記未塗工部は前記扁平状の電極群の長径方向の端部にある湾曲部の代わりに前記円筒状の電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位において形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用電極群。
【請求項10】
正極板、負極板、およびセパレータを備えた電極群が電解液とともに電池ケース内に収納された二次電池であって、前記電極群は請求項1〜8のいずれかに記載された二次電池用電極群からなることを特徴とする非水系二次電池。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−100674(P2011−100674A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255766(P2009−255766)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】