説明

非水系顔料分散体の製造方法

【課題】微細化され、かつ分散性及び保存安定性に優れた非水系顔料分散体の製造方法、及びその非水系顔料分散体を提供する。
【解決手段】本発明は、下記の工程1及び工程2を含む顔料分散体の製造方法、及びその方法によって得られる非水系顔料分散体である。
工程1:有機溶媒(A)、及びSP値〔溶解度パラメータ(cal/cm31/2〕が〔有機溶媒(A)のSP値+1〕〜〔有機溶媒(A)のSP値+3〕であるグラフトポリマー(B)を混合し、加熱処理して予備分散体を得る工程
工程2:得られた予備分散体に顔料(C)を添加し、分散処理して顔料分散体を得る工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系顔料分散体の製造方法、及びその非水系顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料を非水系溶媒中に分散させるためにポリマー材料が有用であることが知られており、非水系顔料分散体を調合するためにポリマー材料が使用されてきた。非水系顔料分散体は、例えば自動車外装用の溶剤ペイントや、カラー液晶ディスプレイのカラーフィルター用インキとして汎用されている。特に、カラーフィルター分野においては、カラー液晶ディスプレイの高品質化のため高い彩度、明度が求められ、カラーフィルター中の顔料にも微細化が要望されている。
カラーフィルターの製造法として顔料分散法が採用されているが、この方法では顔料分散液と感光組成物を混合したカラーレジスト溶液を透明基板上に塗布した後、露光し、硬化させることで透明基板上に着色パターンを形成させる。この顔料分散法においては顔料を微細に分散させるために、界面活性剤や分散剤が用いられているが、
顔料の微細化に伴い、分散性能及び保存安定性能が格段に求められている。
【0003】
ところで、顔料分散剤として用いられるポリマーとしては、グラフトポリマーが良好な性能を有することが知られている。例えば、特許文献1には、有機顔料と、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーと、窒素原子含有基及びエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの共重合体とを含む非水系顔料分散体が開示されている。しかしながら、特許文献1は、本発明の技術的思想を示唆するものではない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−339949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微細化され、かつ分散性及び保存安定性に優れた非水系顔料分散体の製造方法、及びその非水系顔料分散体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、非水系顔料分散体の特性向上において、温度変化によりポリマーの溶解度、及び溶液中の運動量が変化することに着目し、まず溶媒に対して難溶性のポリマーを懸濁させた後、加熱処理して、ポリマーを該溶媒中に均一に分散させた予備分散体を調製し、ここに顔料を分散させることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)下記の工程1及び工程2を含む顔料分散体の製造方法。
工程1:有機溶媒(A)、及びSP値〔溶解度パラメータ(cal/cm31/2〕が〔有機溶媒(A)のSP値+1〕〜〔有機溶媒(A)のSP値+3〕であるグラフトポリマー(B)を混合し、加熱処理して予備分散体を得る工程
工程2:得られた予備分散体に顔料(C)を添加し、分散処理して顔料分散体を得る工程
(2)前記(1)の製造方法によって得られる非水系顔料分散体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、微細化されても、分散性及び保存安定性に優れた非水系顔料分散体の製造方法、及びその非水系顔料分散体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の非水系顔料分散体の製造方法は、下記の工程1及び工程2を含むことを特徴とする。
工程1:有機溶媒(A)、及びSP値〔溶解度パラメータ(cal/cm31/2〕が〔有機溶媒(A)のSP値+1〕〜〔有機溶媒(A)のSP値+3〕であるグラフトポリマー(B)を混合し、加熱処理して予備分散体を得る工程
工程2:得られた予備分散体に顔料(C)を添加し、分散処理して顔料分散体を得る工程
以下、本発明に用いられる各成分及び各工程について説明する。
【0009】
〔有機溶媒(A)〕
本発明に用いられる有機溶媒(A)は特に限定されないが、特にカラーフィルター用の油性インクとして用いる場合、沸点が70℃以上、さらに100℃以上の高沸点の有機溶媒が好ましい。また、顔料(C)の分散性の観点、及び顔料分散体を油性とする観点から、有機溶媒(A)のSP値(溶解度パラメータ)は、好ましくは8〜9(cal/cm31/2、より好ましくは8.4〜8.9(cal/cm31/2である。なお、有機溶媒(A)のSP値は、Fedorsの方法〔Robert F.Fedors, Polymer Engineering and Science, 14, 147-154 (1974)〕により計算することができる。
【0010】
このような有機溶媒(A)の具体例としては、セロソルブ類、カルビトール類、アルコール類等、及び下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、R3は水素原子又はメチル基を示す。)
セロソルブ類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。カルビトール類としては、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
上記の中では、前記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0013】
一般式(1)において、R1及びR2の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、及びtert−ブチル基が挙げられる。これらの中では、メチル基及びエチル基が好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、(i)エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテート、(ii)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等のアルカンジイルグリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
これらの中では、グラフトポリマー(B)の溶解性又は分散性と、顔料(C)、特にジケトピロロピロール系顔料の分散性の観点から、アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、SP値8.73、沸点145℃)がより好ましい。
有機溶媒(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
〔グラフトポリマー(B)〕
本発明においては、グラフトポリマー(B)として、SP値〔溶解度パラメータ(cal/cm31/2〕が〔有機溶媒(A)のSP値+1〕〜〔有機溶媒(A)のSP値+3〕であるものを用いる。グラフトポリマー(B)のSP値は、好ましくは10〜12(cal/cm31/2であり、より好ましくは10.5〜11.5(cal/cm31/2である
ここでポリマーのSP値(溶解度パラメータ)は、下記式で示すように、凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表されるものである。
SP値((cal/cm31/2)=(△E/△V)1/2
上式において、△Eは凝集エネルギー密度を表し、△Vは分子容を表す。その値は、Fedorsの方法〔Robert F.Fedors, Polymer Engineering and Science, 14, 147-154 (1974)〕により計算することができる。
例えば、グラフトポリマー(B)が、ジメチルアクリルアミド/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリル酸メチルマクロマー(重量比)=10/10/80のグラフトポリマー(商品名AA−6、東亜合成株式会社製)である場合、SP値は次のように計算される。
ジメチルアクリルアミドホモポリマーのSP値が10.08(モノマーは8.81)、2−ヒドロキシエチルメタクリレートホモポリマーのSP値が13.47(モノマーは12.06)、ポリ(メタ)アクリル酸メチルマクロマーのSP値が10.08と計算されるため、得られたグラフトポリマー(B)のSP値は
10.08×0.1+13.47×0.1+10.08×0.8=10.42
となる。
このグラフトポリマー(B)は、顔料(C)、特にジケトピロロピロール系顔料を安定に分散させるための分散剤として用いられ、カラーフィルター等を形成する場合はバインダーとしての働きをするものと考えられる。
グラフトポリマー(B)は、下記の構成単位(b1)、(b2)及び(b3)を有するものが好ましい。以下、これらの各構成単位について説明する。
【0015】
[構成単位(b1)]
構成単位(b1)は、エチレン性不飽和二重結合と窒素原子を有するモノマー(以下「含窒素モノマー(b1−1)」ということがある)、又は窒素原子を含有する重合体由来の構成単位であり、好ましくは、片末端にエチレン性不飽和二重結合を有し、更に窒素原子を含有する重合性マクロモノマー(以下「含窒素マクロモノマー(b1−2)」ということがある)由来の構成単位である。構成単位(b1)は、グラフトポリマー(B)を顔料(C)に吸着させる機能を有すると考えられる。
含窒素マクロモノマー(b1−2)としては、エチレン性不飽和二重結合と窒素原子を有するモノマーの重合体、片末端にエチレン性不飽和二重結合を有するポリ(N−アシルアルカンジイルイミン)が挙げられる。
【0016】
エチレン性不飽和二重結合と窒素原子を有するモノマーとしては、ビニルピリジン類、含窒素スチレン系モノマー、(メタ)アクリルアミド類、含窒素(メタ)アクリル酸エステル;N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
ビニルピリジン類としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられ、含窒素スチレン系モノマーとしては、p−スチレンスルホンアミド、p−アミノスチレン、アミノメチルスチレン等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノアルキル(アルキル基の好ましい炭素数1〜6)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド2−メチルプロピルスルホン酸、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
含窒素(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノアルキル(アルキル基の好ましい炭素数1〜6)(メタ)アクリレート、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有する1−(N,N−ジアルキルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素(メタ)アクリル酸エステル;N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0017】
片末端にエチレン性不飽和二重結合を有するポリ(N−アシルアルカンジイルイミン)としては、片末端に(メタ)アクリロイル基やスチリル基を有し、一般式(2)で表される構造単位を持つポリ(N−アシルアルカンジイルイミン)が挙げられる。
【0018】
【化2】

【0019】
式(2)中、R4は炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を示し、nは2又は3の整数を示す。
かかるポリ(N−アシルアルカンジイルイミン)としては、例えば特許第2643403号明細書に記載されているように、2−アルキルオキサゾリンや2−アルキルオキサジンのカチオン開環重合により得られるものが挙げられる。
【0020】
これらの含窒素マクロモノマー(b1−2)の中では、片末端(メタ)アクリロイル型の窒素原子含有重合性マクロモノマーが好ましい。その具体例としては、片末端(メタ)アクリロイル型のポリ(N−アシル(アシル基の炭素数2〜9)アルカンジイル(アルカンジイル基の炭素数2〜3)イミン)、ポリ(N−アルキル(アルキル基の炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリドン)が挙げられる。
これらの中では、片末端(メタ)アクリロイル型のポリ(N−アシル(アシル基の炭素数2〜4)アルカンジイル(アルカンジイル基の炭素数2〜3)イミン)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピロリドン)がより好ましく、片末端メタクリロイル型のポリ(N−アシル(アシル基の炭素数2〜4)アルカンジイル(アルカンジイル基の炭素数2〜3)イミン)が更に好ましく、片末端メタクリロイル型のポリ(2−エチルオキサゾリン)が特に好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
含窒素マクロモノマー(b1−2)の重量平均分子量は、300〜30,000が好ましく、400〜20,000がより好ましく、500〜10,000が特に好ましい。
【0021】
[構成単位(b2)]
構成単位(b2)は、窒素原子を含有しない重合体由来の構成単位であり、好ましくは、片末端にエチレン性不飽和二重結合を有し、窒素原子を含有しない重合性マクロモノマー(以下「マクロモノマー(b2)」ということがある)由来の構成単位である。構成単位(b2)は、有機溶媒(A)中で、グラフトポリマー(B)を安定に分散させる機能を有すると考えられる。
マクロモノマー(b2)としては、片末端に(メタ)アクリロイル基又はスチリル基を有するマクロモノマーが好ましい。その好適例としては、ポリスチレンや、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル等のポリ(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)の分子の片末端に(メタ)アクリロイル基が結合したマクロモノマーを挙げることができる。
マクロモノマー(b2)の重量平均分子量は、500〜30,000が好ましく、500〜20,000がより好ましく、500〜15,000が特に好ましい。
このような重合性マクロモノマーの市販品としては、片末端メタクリロイル型ポリスチレン(数平均分子量6,000、商品名AS−6、東亜合成株式会社製)、片末端メタクリロイル型ポリメタクリル酸メチル(数平均分子量6,000、重量平均分子量12,000、商品名AA−6、東亜合成株式会社製)、及び片末端メタクリロイル型ポリアクリル酸n−ブチル(数平均分子量6,000、商品名AB−6、東亜合成株式会社製)を挙げることができる。
【0022】
[構成単位(b3)]
構成単位(b3)は、含窒素モノマー(b1−1)又は含窒素マクロモノマー(b1−2)、及びマクロモノマー(b2)と共重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(以下「モノマー(b3)」ということがある)由来の構成単位である。構成単位(b3)は、顔料の溶解を抑制する機能を有すると考えられる。構成単位(b3)は、グラフトポリマー(B)中の基幹ユニットであり、一方に構成単位(b1)を結合し、他方に構成単位(b2)を結合している。
【0023】
モノマー(b3)は、疎水基を有することが好ましく、かかる疎水基としては、炭素数4以上、好ましくは炭素数6以上のアルキル基、フッ素含有アルキル基、及びアルキルシロキシ基が挙げられる。
炭素数4以上のアルキル基を有するモノマーとしては、炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的には、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート(SP値8.67)、メタクリル酸(SP値10.73)、アクリル酸(SP値11.08)、ジメチルアクリルアミド(SP値10.59)、アクリルアミド(SP値10.64)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(SP値12.45)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(SP値12.06)、グリセリンモノメタクリレート(SP値13.30)等が挙げられ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、SP値12.06)が好ましい。
【0024】
フッ素含有アルキル基を有するモノマーとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、パーフルオロ(メタ)アクリレート等が挙げられる。より具体的には、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキルシロキシ基を有するモノマーとしては、ジメチルシロキシ基、トリメチルシロキシ基を有するモノマー等が挙げられ、具体例としては、下記の一般式(3)〜(6)で表わされるシリコーンマクロモノマー等が挙げられる。
【0025】
【化3】

【0026】
上記式(3)〜(6)中、R5は水素原子又はメチル基を示し、R6〜R14はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。nは1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜20の数である。
これらの中では、一般式(6)で表わされるシリコーンマクロモノマーが好ましい。
【0027】
本発明に用いられるグラフトポリマー(B)は、上記の構成単位(b1)、(b2)及び(b3)に、更に他の構成単位を含むグラフト鎖を有することができる。
グラフトポリマー(B)は、例えば、含窒素モノマー(b1−1)と含窒素マクロモノマー(b1−2)から選ばれる1種以上、マクロモノマー(b2)、及びモノマー(b3)を含むモノマー混合物を共重合して得ることができる。
グラフトポリマー(B)の製造方法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられるが、その中でも特に溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0028】
グラフトポリマー(B)中の全構成単位に対する構成単位(b1)の割合は、顔料への吸着性を高め、良好な顔料の分散安定性を得る観点から、2〜50重量%が好ましく、3〜45重量%がより好ましい。
グラフトポリマー(B)中の全構成単位に対する構成単位(b2)の割合は、有機溶媒(A)への分散性を高める観点から、20〜95重量%が好ましく、30〜90重量%がより好ましく、40〜85重量%が特に好ましい。
グラフトポリマー(B)中の全構成単位に対する構成単位(b3)の割合は、グラフトポリマー(B)の顔料表面への固定化を促進させる観点から、3〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、7〜35重量%が特に好ましい。
グラフトポリマー(B)の重量平均分子量は、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜70,000がより好ましい。
なお、含窒素マクロモノマー(b1−2)、マクロモノマー(b2)、グラフトポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定され、詳細は実施例に記載する。
【0029】
〔顔料(C)〕
本発明に用いられる顔料としては、無機顔料及び有機顔料いずれであってもよい。また必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えばカーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム及びタルク等が挙げられる。有機顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、レーキ顔料が挙げられる。
アゾ顔料としてはC.I.ピグメントレッド3等の不溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1等の溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6等の銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
縮合多環顔料としては、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のインジゴ系顔料、C.I.ピグメントグリーン8等の金属錯体顔料、C.I.ピグメントレッド254、同255、同264、同270、同272、C.I.ピグメントオレンジ71、同73等のジケトピロロピロール系顔料が挙げられる。
これらの中では、下記一般式(7)で表されるジケトピロロピロール系顔料が好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子、−SO3H基又は−CN基を示す。
ジケトピロロピロール系顔料の中では、特に、C.I.ピグメントレッド254が好ましく、その市販品としては、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、商品名「Irgaphor RED BT−CF」、「Irgaphor RED B−CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin Red 2030」、「Irgazin DPP Red BOX」、「Irgazin Red BTR」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」、「Microlith DPP Red B−K/KP」、「Microlith DPP Red B−WA」、「Microlen Red2028−MC」、「Microlen Red2030−MC」等が挙げられる。
上記顔料(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
〔非水系顔料分散体の製造方法〕
本発明の非水系顔料分散体は、下記の工程1及び工程2を含む製造方法によれば、グラフトポリマー(B)が顔料(C)の表面に強固に固定化された形態の非水系顔料分散体として効率的に製造することができる。
工程1:有機溶媒(A)、及びSP値〔溶解度パラメータ(cal/cm31/2〕が〔有機溶媒(A)のSP値+1〕〜〔有機溶媒(A)のSP値+3〕であるグラフトポリマー(B)を混合し、加熱処理して予備分散体を得る工程
工程2:得られた予備分散体に顔料(C)を添加し、分散処理して顔料分散体を得る工程
【0033】
〔工程1〕
工程1では、有機溶媒(A)とグラフトポリマー(B)を混合し、加熱処理して予備分散体を得る。有機溶媒(A)とグラフトポリマー(B)については、前記のとおりである。
有機溶媒(A)とグラフトポリマー(B)の混合方法に特に制限はなく、公知の分散機、混練機等を用いて分散させることができる。例えば、ペイントシェーカー、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料の微細化の観点から、ペイントシェーカーや高圧ホモジナイザーが好ましい。
加熱処理の温度は特に制限はないが、グラフトポリマー(B)を有機溶媒(A)中に均一に分散させる観点から、好ましくは40〜150℃、より好ましくは60〜130℃である。
【0034】
〔工程2〕
工程2では、工程1で得られた予備分散体に顔料(C)を添加し、分散処理して顔料分散体を得る。顔料(C)については、前記のとおりである。
工程1で得られた予備分散体と顔料(C)との分散方法に特に制限はなく、工程1で述べた公知の分散機、混練機等を用いて、前記予備分散体と顔料(C)を湿式分散させることができる。
これらの中では、サンドミル等のメディア式分散機が好ましい。メディア式分散機は、分散室(ミル)内にメディア粒子を滞留させ、そこを流通する顔料の予備分散体にメディア粒子による粉砕、剪断、衝突という分散エネルギーを与えながら分散を行い、必要に応じて、メディア粒子と分散処理物とを遠心分離等により分離し、分散処理物のみを分散室外に流出させるものである。サンドミルとしては、連続式が好ましく、ローラミルタイプ、ニーダータイプ、ピンミキサータイプ等を用いることができる。
メディア式分散機に用いるメディア粒子の材質としては、例えば、ガラス、スチール、クロム合金等の高硬度金属、アルミナ、ジルコニア、ジルコン、チタニア等の高硬度セラミックス、超高分子量ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料等が挙げられる。メディア粒子の粒径(直径)は、顔料(C)の分散性向上の観点から、通常30〜500μm、好ましくは30〜300μmである。
湿式粉砕分散における、メディア粒子/分散液(有機溶媒(A)、グラフトポリマー(B)及び顔料(C)等全てを含む分散液)の重量比は、顔料(C)の分散安定性の観点から、通常10/1〜4/6、好ましくは5/1〜1/1である。
工程2における分散処理の温度は、工程1における加熱処理温度以下の低い温度とすることが好ましい。より具体的には、好ましくは0〜80℃、より好ましくは0〜40℃で分散処理することが好ましい。分散時間は1〜15時間が好ましく、1〜5時間がより好ましい。このような条件で分散処理した後、メディア粒子を除去すれば、工程1で得られた均一な予備分散体中の含まれるグラフトポリマー(B)が、顔料(C)の表面に強固に固定化された非水系顔料分散体を得ることができる。
【0035】
〔非水系顔料分散体〕
本発明の非水系顔料分散体は、有機溶媒(A)、グラフトポリマー(B)、及び顔料(C)を含有し、それらの割合は、保存安定性等の観点から、次のとおりである。
有機溶媒(A)の含有量は、20〜95重量%が好ましく、30〜92重量%がより好ましく、40〜90重量%がさらに好ましい。グラフトポリマー(B)の含有量は、2〜30重量%が好ましく、2〜40重量%がより好ましい。顔料(C)の含有量は、3〜50重量%が好ましく、4〜40重量%がより好ましく、5〜40重量%がさらに好ましい。
顔料分散体中の顔料(C)の体積中位粒径(D50)は、カラーフィルター用色材とした際に良好なコントラストを得るために、20〜150nmが好ましく、30〜140nmがより好ましく、40〜130nmがさらに好ましい。
なお、本発明において体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が小粒径側から累積して50%になる粒径を意味する。本発明における体積中位粒径(D50)の値は、実施例記載の方法により行うことができる。
本発明の非水系顔料分散体の固形分20重量%における粘度(25℃)は、カラーフィルター用色材とした時に良好な粘度とするために、1〜200mPa・sが好ましく、1〜100mPa・sがより好ましい。また、インクジェット法によりカラーフィルターを製造する際の良好な吐出性を維持するために、1〜50mPa・sが好ましく、1〜30mPa・sがより好ましい。
【0036】
本発明の顔料分散体は、顔料が微細化されても保存安定性に優れており、カラーフィルターの色材等として有効に利用できる。カラーフィルター用として用いる場合は、上記成分以外にバインダー、多官能モノマー、光重合開始剤等を含有することができる。
バインダーとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体とアルコール類との反応物等を挙げることができる。その重量平均分子量は、5,000〜200,000が好ましい。本発明の非水系顔料分散体中のバインダーの含有量は、全固形分に対して20〜80重量%が好ましい。
多官能モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等を挙げることができる。本発明の顔料分散体中の多官能モノマーの含有量は、全固形分に対して10〜60重量%が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]が好ましい。本発明の非水系顔料分散体中の光重合開始剤の含有量は、全固形分に対し、0.2〜10重量%が好ましい。
さらに、粘度を調節して、均一な塗布膜形成を可能とし、保存安定性を高める観点から、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、酢酸エチル等の溶剤を添加することもできる。
【実施例】
【0037】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り、「重量部」及び「重量%」である。なお、マクロモノマー及びポリマーの重量平均分子量、顔料分散体の体積中位粒径、及びポリマーの顔料表面への吸着率の測定方法は以下のとおりである。
(1)マクロモノマーの重量平均分子量(Mw)の測定
カラムとして昭和電工株式会社製、KF−804Lカラムを用い、溶媒としてC12のジメチルアミンを1mmol/L添加したクロロホルムを用いたGPC法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定
カラムとして東ソー株式会社製、α−Mカラムを用い、溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いたGPC法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(3)保存安定性の評価
顔料分散体の調製直後(保存前)の粘度を、B型粘度計(ローターNo.2、60rpm、25℃)を用いて測定した。同様にして、顔料分散体を30℃で5日間保存した後の粘度を測定し、保存前後の粘度変化を対比して、下記式により保存安定性(分散安定性)を評価した。
保存安定性=5日間保存後の粘度/調製直後(保存前)の粘度
(4)顔料分散体の体積中位粒径(D50)の測定
製造直後の顔料分散体をPGMEAで300倍に希釈し、粒度分析計(HONEYWELL社製、Microtrac UPA MODEL:9340−UPA)を用いてD50を測定した。測定条件として、ジケトピロロピロール系顔料粒子屈折率:1.51、ジケトピロロピロール系顔料密度:1.45g/cm3、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)屈折率:1.40、PGMEA粘度:1.081cPを入力した。
D50の値が小さいほど分散性に優れていることを示す。
(5)ポリマーの顔料表面への吸着率の測定
顔料分散体を顔料濃度5%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で希釈し、遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CP56G)を用いて30000rpmで3時間遠心分離した後、遠心分離前及び遠心分離後の上澄み液の固形分を赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製、FD−240)を用いて測定し、下記式によりポリマーの顔料表面への吸着率を算出した。なお、この吸着率(%)は、顔料分散体が低粘度でかつ分散安定性が良好な範囲では、高い方が好ましい。
【0038】
【数1】

【0039】
合成例1〔片末端メタクリロイル型ポリ(2−エチルオキサゾリン):含窒素マクロモノマー(b1)の合成〕
ナスフラスコ中に脱水酢酸エチル300gと2−エチルオキサゾリン132gを仕込み、更に合成ゼオライト系吸着剤(東ソー株式会社製、商品名「ゼオラムA−4」)65gを入れ、室温で4時間撹拌後、濾過して前記吸着剤を除去し、脱水2−エチルオキサゾリン溶液を得た。
次に、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口フラスコに、調製した脱水2−エチルオキサゾリン溶液380g、ジエチル硫酸17.9gを仕込み、乾燥窒素にて置換した後、80℃で12時間撹拌した。反応液を40℃以下まで冷却した後に、予め前記吸着剤により脱水しておいたメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルを加え、室温で4時間撹拌後、大量のヘキサンにて再沈、回収し、片末端メタクリロイル型ポリ(2−エチルオキサゾリン)マクロモノマーを得た。得られたマクロモノマーの重量平均分子量は1,000、数平均分子量は760であった。このマクロモノマーには2−エチルオキサゾリンユニットが6ユニット導入されていることから、このマクロモノマーのSP値は9.82と計算される。(連結4級塩部位は3級として計算した。)
【0040】
製造例1〔ポリマー(B−1)の製造〕
含窒素マクロモノマー(b1)として、合成例1で得られた片末端メタクリロイル型ポリ(2−エチルオキサゾリン)マクロモノマー5g(0.01mol、SP値は9.82)と、マクロモノマー(b2)として、片末端メタクリロイル型ポリメタクリル酸メチル(数平均分子量6,000、重量平均分子量12,000、商品名AA−6、東亜合成株式会社製、計算によるSP値は10.08)65g(0.0108mol)と、モノマー(b3)として、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、和光純薬工業株式会社製、計算によるホモポリマーのSP値は13.47)30g(0.231mol)と、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)75g、イソプロパノール(IPA)75g、及び重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、V−65)2gを混合した溶液(モノマー濃度40%)を用意した。
この混合溶液の体積10%を、攪拌機、滴下ロート、窒素ガス流入管を備えた500mlガラスフラスコに仕込み、窒素置換を行った後、75℃で撹拌しながら、残りの混合溶液を1時間かけて滴下することでポリマーを重合した。
得られたポリマーの溶液をMEK/IPA=1/1(重量比)の混合溶媒により10倍に希釈し、その溶液をその7倍量のヘキサン溶媒中に滴下し、ポリマーを再沈し、得られたポリマーを乾燥、粉末化して、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート−g−(2−エチルオキサゾリン)−g−メタクリル酸メチル)の共重合ポリマーを得た。このポリマー(B−1)の重量平均分子量は44,200であった。
このポリマー(B−1)のSP値は、下記のとおり11.08であった。
13.47×(30/100)+9.82×(5/100)+10.08×(65/100)=11.08
結果を表1に示す。
【0041】
製造例2〔ポリマー(B−2)の製造〕
含窒素マクロモノマー(b1)として、合成例1で得られた片末端メタクリロイル型ポリ(2−エチルオキサゾリン)マクロモノマー2.5g(0.005mol、SP値は9.82)と、マクロモノマー(b2)として、実施例1で用いた片末端メタクリロイル型ポリメタクリル酸メチル(商品名AA−6)35g(0.0058mol、SP値は10.08)と、モノマー(b3)として、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、和光純薬工業株式会社製)12.5g(0.096mol、SP値は13.47)と、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)16.5g、イソプロパノール(IPA)16.6g、及び重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、V−65)1gを混合した溶液(モノマー濃度60%)を用意した。
その後、実施例1と同様の操作を行って、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート−g−(2−エチルオキサゾリン)−g−メタクリル酸メチル)の共重合ポリマーを得た。このポリマー(B−2)の重量平均分子量は53,600であった。
このポリマー(B−2)のSP値は、下記のとおり10.91であった。
13.47×(12.5/50)+9.82×(2.5/50)+10.08×(35/50)=10.91
結果を表1に示す。
【0042】
製造例3〔ポリマー(B−3)の製造〕
含窒素マクロモノマー(b1)を使用せず、マクロモノマー(b2)として、実施例1で用いた片末端メタクリロイル型ポリメタクリル酸メチル(商品名AA−6)を32.5g(0.0054mol、SP値は10.08)、モノマー(b3)として、HEMAを17.5g(0.135mol、SP値は13.47)、溶剤としてMEK16.5g、IPA16.5g、及び重合開始剤(V−65)1gを混合した溶液(モノマー濃度60%)を用意した。
その後、実施例1と同様の操作を行って、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート−g−メタクリル酸メチル)の共重合ポリマーを得た。このポリマー(B−3)の重量平均分子量は34,900であった。
このポリマー(B−3)のSP値は、上記と同様に算出した結果、11.27であった。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〔分散体の調製〕
製造例1で得られた共重合ポリマー(B−1)4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、SP値8.73、沸点145℃)86gに懸濁させ、これを密閉ポリエチレン容器に入れ70℃のオーブン下で十分に加熱させ透明均一溶液を得た。この容器中に、顔料(C)として、ジケトピロロピロール系顔料(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「IRGAPHOR BT−CF」、平均一次粒径30nm(カタログ値))を10gと、ジルコニアビーズ(直径0.3mm)を200g加え、ペイントシェイカーによって3時間解砕を行った。解砕後、メッシュを用いてジルコニアビーズを取り除き、ジケトピロロピロール系顔料のPGMEA分散体を得た。粘度、粒径、吸着率の測定結果を表2に示す。
【0045】
実施例2〔分散体の調製〕
製造例2で得られた共重合ポリマー(B−2)を用いて、実施例1と同様の操作を行って、ジケトピロロピロール系顔料のPGMEA分散体を得た。粘度、粒径、吸着率の測定結果を表2に示す。
【0046】
実施例3〔分散体の調製〕
製造例3で得られた共重合ポリマー(B−3)を用いて、実施例1と同様の操作を行って、ジケトピロロピロール系顔料のPGMEA分散体を得た。粘度、粒径、吸着率の測定結果を表2に示す。
【0047】
比較例1
製造例1で得られた共重合ポリマー(B−1)4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)86gに懸濁させた。得られた溶液は、共重合ポリマーが有機溶媒に均一に分散しないものであった。
この懸濁液を密閉ポリエチレン容器に入れ、実施例1で用いたジケトピロロピロール系顔料10gと、ジルコニアビーズ(直径0.3mm)200g加え、ペイントシェイカーによって3時間解砕を行った。解砕後、メッシュを用いてジルコニアビーズを取り除き、ジケトピロロピロール系顔料のPGMEA分散体を得た。得られた分散体は、5日間保存後にゲル化したため、実施例と同様の5日後の粘度、及び保存安定性の評価測定をすることはできなかった。
比較例2
製造例1で得られた共重合ポリマー(B−1)4gをヘキサン(SP値7.28、沸点67℃)86gに混合する。これを密閉ポリエチレン容器に入れ、50℃のオーブン下で十分に加熱させ溶液を得た。得られた溶液は、共重合ポリマーが有機溶媒に均一に分散しないものであった。この容器中に、実施例1で用いたジケトピロロピロール系顔料10gと、ジルコニアビーズ(直径0.3mm)200g加え、ペイントシェイカーによって3時間解砕を行った。解砕後、メッシュを用いてジルコニアビーズを取り除き、ジケトピロロピロール系顔料のヘキサン分散体を得ようとしたが、通常の分散状態の分散体として得られず、実施例と同様の評価測定をすることはできなかった。
【0048】
【表2】

【0049】
表2において、実施例1〜3で得られた非水系顔料分散体は、分散性及び保存安定性が極めて優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の非水系顔料分散体は、カラー液晶ディスプレイ等に用いられるカラーフィルターの色材等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1及び工程2を含む非水系顔料分散体の製造方法。
工程1:有機溶媒(A)、及びSP値〔溶解度パラメータ(cal/cm31/2〕が〔有機溶媒(A)のSP値+1〕〜〔有機溶媒(A)のSP値+3〕であるグラフトポリマー(B)を混合し、加熱処理して予備分散体を得る工程
工程2:得られた予備分散体に顔料(C)を添加し、分散処理して顔料分散体を得る工程
【請求項2】
工程1の加熱処理を40〜150℃で行う、請求項1に記載の非水系顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
有機溶媒(A)のSP値が8〜9(cal/cm31/2である、請求項1又は2に記載の非水系顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
グラフトポリマー(B)のSP値が10〜12(cal/cm31/2である、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって得られる非水系顔料分散体。

【公開番号】特開2009−57422(P2009−57422A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223983(P2007−223983)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】