説明

非水電解液二次電池

【課題】 安全性および高温保存特性を向上させた非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】 正極、負極、および非水電解液を備えた非水電解液二次電池において、負極は、リチウムと合金化可能な元素を含む活物質、カーボンナノファイバの成長を促す触媒元素、および前記活物質の表面に成長させたカーボンナノファイバを含む複合粒子を含み、非水電解液は、ホスファゼン化合物およびリン酸エステル類の少なくとも1つを添加剤として含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンを活物質とする非水電解液二次電池に関し、特に、負極材料および非水電解液材料の好適な組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池は、高容量化に代表される性能の向上に伴い、その安全性および高温保存における耐久性など、電池の信頼性を向上させることが重要な技術的な課題となってきている。そこで、非水電解液二次電池の安全性および高温保存特性を向上させる目的で、電解液にホスファゼン化合物やリン酸エステル類などを添加する技術が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2など)。
これらは、電解液の難燃性または自己消化性を向上させる効果を狙っている。
【特許文献1】特開平06−013108号公報
【特許文献2】特開平08−111238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、黒鉛を主とする炭素材料を負極材料として用いる従来の非水電解液二次電池では、ホスファゼン化合物やリン酸エステル類などの添加剤は、電池の充電時に負極で還元分解を受けてしまうため、電池特性の低下や電解液の難燃性の低下などを引き起こす不都合があった。このためホスファゼン化合物やリン酸エステル類を効果的に使用することは非常に困難であった。また、黒鉛の代わりにリチウムと合金化可能な元素を含む材料を負極材料として用いた場合においても、導電性を向上させるためにカーボンブラックなどの炭素系導電剤を用いると、ホスファゼン化合物やリン酸エステル類は、同様に還元分解による特性の低下を起こしてしまう。
【0004】
本発明は、上記課題を解決し、安全性および高温保存特性を向上させた非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の非水電解液二次電池は、正極、負極、および非水電解液を備えた非水電解液二次電池において、前記負極は、リチウムと合金化可能な元素を含む活物質、カーボンナノファイバの成長を促す触媒元素、および前記活物質の表面に成長させたカーボンナノファイバを含む複合粒子を含んでおり、前記非水電解液は、ホスファゼン化合物およびリン酸エステル類の少なくとも1つからなる添加剤を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明では、負極の導電剤として、活物質の表面に成長させたカーボンナノファイバを用いているが、このカーボンナノファイバは炭素系材料であるにも関わらず、上記のような添加剤の還元分解が起こることなく、安定に使用できることが分かってきた。この理由の詳細は現在のところ明らかではないが、活物質の表面に成長させたカーボンナノファイバの構造が特殊なものであるためであると考えられる。
【0007】
カーボンナノファイバを成長させるためには、表面に触媒元素を含む化合物を担持させた活物質粒子を、不活性ガス中で昇温させたのち、炭素含有ガスと水素ガスとの混合ガスを流入して反応させる方法がある。触媒元素としては、特に限定はされないが、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Moなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上が混合されてもよい。また、炭素含有ガスとしては、こちらも特に限定はされないが、メタン、エタン、ブタン、エチレン、アセチレン、一酸化炭素、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。触媒元素と炭素含有ガスおよび反応温度の選択によって、成長するカーボンナノファイバの形状などがそれぞれに異なるが、上記のようにホスファゼン化合物およびリン酸エステル類の添加剤を含む電解液を安定に使用できることは、種々の組み合わせにおいて見られる。
【0008】
本発明で用いるホスファゼン化合物およびリン酸エステル類は、特に限定されることなく、公知となっている種々のものを使用することが可能である。例えば、ホスファゼン化合物では、以下の式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(ただし、nは1〜15、R1は一価の有機基で、異なる位置のR1はそれぞれ異なっていてもよい。)
で表される鎖状ホスファゼン化合物、および式(2):
【0011】
【化2】

【0012】
(ただし、nは3〜15、R2は一価の有機基で、異なる位置のR2はそれぞれ異なっていてもよい。)
で表される環状ホスファゼン化合物などがある。
式(1)および(2)の有機基R1やR2にはエーテル結合を含むのが好ましく、アルコキシ基が好ましい。また、R1およびR2は、その中の水素がフッ素などのハロゲン元素で置換されていてもよい。
【0013】
リン酸エステル類では、式(3):
【0014】
【化3】

【0015】
(ただし、R3は炭素数1〜4のアルキル基で、それぞれ異なっていてもよい。)
で表される鎖状リン酸エステル類、および式(4):
【0016】
【化4】

【0017】
(ただし、R4は炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数2〜8のアルキレン基である。)
で表される環状リン酸エステル類などがある。
式(3)および(4)のアルキル基R4やR5は、その中の水素がフッ素などのハロゲン元素で置換されていてもよい。
【0018】
上に上げた化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、数種類を混合して用いてもよい。
リチウムと合金化可能な元素は、Siおよび/またはSnであることが好ましい。
さらに、前記電解液中における添加剤の体積百分率は、1〜20%であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ホスファゼン化合物および/またはリン酸エステル類によって、非水電解液の難燃性を向上させ、非水電解液二次電池の安全性を向上することが可能である。また、これら添加剤の効果および電池特性を添加剤の還元分解によって損なうことなく、安定に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の具体的な実施の形態について、実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
(電解液1)
1モル/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの等比体積混合溶液(三菱化学(株)製、ソルライト)に、以下の式(5)で示されるホスファゼン化合物を混合した。混合したホスファゼン化合物の電解液中における体積百分率は10%である。
【0022】
【化5】

【0023】
(電解液2)
式(5)で示されるホスファゼン化合物の代わりに、以下の式(6)で示されるホスファゼン化合物を用いたこと以外、電解液1と同様にして電解液2を得た。
【0024】
【化6】

【0025】
(電解液3)
ホスファゼン化合物の代わりに、リン酸トリメチルを用いたこと以外、電解液1と同様にして電解液3を得た。
【0026】
(電解液4)
ホスファゼン化合物の代わりに、リン酸エチレンメチルを用いたこと以外、電解液1と同様にして電解液4を得た。
【0027】
(電解液5)
ホスファゼン化合物の電解液中における体積百分率を0.5%としたこと以外、電解液1と同様にして電解液5を得た。
(電解液6)
ホスファゼン化合物の電解液中における体積百分率を30%としたこと以外、電解液1と同様にして電解液6を得た。
【0028】
(電解液7)
1モル/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの等比体積混合溶液の代わりに、1.2モル/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの体積比率1:2:1の混合溶液(三菱化学(株)製、ソルライト)を用いたこと以外、電解液1と同様にして電解液7を得た。
【0029】
(電解液8)
さらにリン酸トリメチルを電解液中における体積百分率が10%となるように混合させたこと以外、電解液1と同様にして電解液8を得た。
(電解液9)
1.2モル/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの体積比率1:2:1の混合溶液に、式(2)で示されるホスファゼン化合物およびリン酸エチレンメチルを混合した。混合したホスファゼン化合物およびリン酸エチレンメチルの電解液中における体積百分率は、それぞれ5%および15%である。
【0030】
(比較例電解液1)
1モル/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの等比体積混合溶液を比較例電解液1とした。
(比較例電解液2)
1.2モル/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの体積比率1:2:1の混合溶液を比較例電解液2とした。
【0031】
(電解液の難燃性評価)
調製した電解液それぞれについて、下記の方法で難燃性を評価した。
すなわち、長さ127mm×幅12.7mmの短冊状のガラス繊維濾紙をそれぞれの電解液に浸したのち引き上げ、余剰の液滴を除いて、長さ方向は水平に、幅方向は水平に対して45°の傾斜を持たせた状態で、クランプ付きスタンドに保持させた。このガラス繊維濾紙の一端にバーナーで着火し、その炎の燃焼挙動を観察した。着火した点から長さ方向に25.4mmまでの範囲内で炎が消火した場合には「難燃性」ありとし、25.4mmを越え101.6mmまでの範囲内で炎が消火した場合には「自己消火性」ありとし、101.6mm以上まで炎が消火しなかった場合には「燃焼性」ありとした。この試験結果を表1に示す。
【0032】
表1では、1モル/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの等比体積混合溶液を「1M EC/DEC」、1.2モル/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの体積比率1:2:1の混合溶液を「1.2M EC/EMC/DMC」、式(5)のホスファゼン化合物を「ホスファゼン1」、式(6)のホスファゼン化合物を「ホスファゼン2」、リン酸トリメチルを「TMP」、リン酸エチレンメチルを[EMP]と表した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果から、ホスファゼン化合物またはリン酸エステル類を電解液に添加することにより、電解液の難燃性が向上していることが分かる。ホスファゼン化合物やリン酸エステルの種類、または電解液の種類によらず、いずれも難燃性向上の効果が見られる。ただし、添加量が少ない電解液5では、電解液1〜4、および6〜9に比べて難燃性が低くなっている。従って、電池の安全性を十分に向上させるためには、添加量は体積百分率で1%以上であることが好ましい。
【0035】
《実施例1》
(負極の作製)
あらかじめ粉砕し、分級して粒径10μm以下とした一酸化ケイ素粉末(和光純薬工業(株)製、試薬)100重量部と硝酸ニッケル(II)六水和物(関東化学(株)製、特級試薬)1重量部とをイオン交換水を溶媒として混合した。これを1時間攪拌したのち、エバポレーター装置で溶媒を除去し、乾燥させることにより、SiOの粒子表面に硝酸ニッケル(II)が担持された粒子を得た。この粒子をSEMで分析した結果、硝酸ニッケル(II)が粒径100nm程度の粒子状であることが確認された。
【0036】
得られた活物質粒子をセラミック製反応容器に投入し、ヘリウムガス雰囲気中において550℃まで昇温させたのち、水素ガス50%とエチレンガス50%の混合ガスに置換して550℃で1時間保持し、硝酸ニッケル(II)を還元するとともにカーボンナノファイバを成長させた。その後、混合ガスをヘリウムガスに置換して室温まで冷却した。さらに、得られた複合粒子をアルゴンガス雰囲気中において700℃で1時間保持してカーボンナノファイバを熱処理し、負極活物質を得た。この活物質粒子をSEMで分析した結果、SiO粒子の表面に繊維径80nm程度で、長さ100μm程度のカーボンナノファイバが成長していることが確認された。成長したカーボンナノファイバの重量比率は、活物質全体に対して20重量%程度であった。
【0037】
上記負極活物質100重量部に、バインダーとしてスチレンブタジエンゴムのエマルジョンを固形分換算で10重量部、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲン、4H)3重量部を、イオン交換水を適量加えながら十分混合してペースト状にした。このペーストを集電体である厚み15μmの銅箔の両面に塗布した。これを乾燥、圧延して負極を得た。
【0038】
(正極の作製)
正極活物質としてLiCoO2の粉末を用いた。この正極活物質100重量部に、導電剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、デンカブラック)10重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを固形分換算で8重量部、およびN−メチル−2−ピロリドンを適量加えながら十分混合してペースト状にした。このペーストを集電体である厚み20μmのアルミニウム箔の両面に塗布した。これを乾燥、圧延して正極を得た。
【0039】
(評価用電池の作製)
図1に、本実施例で用いた電池の要部を切り欠いた正面図を示す。
まず、上記のようにして作製した正極1と負極2とを、それぞれ必要な長さに切断したのち、超音波溶接により正極1にアルミニウムからなる正極リード9を取り付け、同様に負極2にニッケルからなる負極リード10を取り付けた。その後、この正極1、負極2、および両者間に介在させたセパレータ3として厚み20μmの多孔質ポリエチレンフィルム(旭化成工業(株)製、ハイポア)を、円筒状に捲回して極板群4を構成した。極板群4の上下にそれぞれポリプロピレン製の絶縁リング11および12を配して電池ケース6に挿入し、電池ケース6の上部に段部5を形成した後、正極リード9を封口板7に溶接し、負極リード10を電池ケース6の底部に溶接した。その後、非水電解液として、上記の電解液1を所定量注入し、封口板7およびガスケット8により電池ケースの開口部を密閉して直径18mm、総高65mmの円筒形電池を作製した。電池の設計容量は2400mAhである。
【0040】
《実施例2〜9》
電解液1の代わりに電解液2〜9を用いたこと以外、実施例1と同様にしてそれぞれ実施例2〜9の円筒型電池を作製した。
【0041】
《実施例10》
一酸化ケイ素の代わりにケイ素粉末(和光純薬工業(株)製、試薬)を用いたこと以外、実施例1と同様にして負極活物質を得た。Si粒子表面に担持された硝酸ニッケル(II)の粒径、および成長したカーボンナノファイバの繊維径、繊維長、および重量比率は、実施例1とほぼ同じであった。得られた負極活物質を用いて、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0042】
《実施例11》
一酸化ケイ素の代わりに酸化スズ(IV)粉末(関東化学(株)製、特級試薬)を用いたこと以外、実施例1と同様にして負極活物質を得た。この酸化スズ(IV)SnO2粒子表面に担持された硝酸ニッケル(II)の粒径、および成長したカーボンナノファイバの繊維径、繊維長、および重量比率は、実施例1とほぼ同じであった。得られた負極活物質を用いて、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0043】
《実施例12》
一酸化ケイ素の代わりに以下の方法で作製したTi−Si合金を用いたこと以外、実施例1と同様にして負極活物質を得た。Ti−Si合金粒子の表面に担持された硝酸ニッケル(II)の粒径、および成長したカーボンナノファイバの繊維径、繊維長、および重量比率は、実施例1とほぼ同じであった。
【0044】
Ti−Si合金は以下の方法で作製した。
チタン粉末(高純度化学(株)製、試薬150μm以下)50重量部、およびケイ素粉末(和光純薬工業(株)製、試薬)100重量部を混合し、その3.5kgを振動ミル装置に投入した。直径2cmのステンレス鋼製ボールを装置内体積の70%となるように投入し、アルゴンガス雰囲気中において80時間メカニカルアロイング操作を行って、Ti−Si合金を得た。
【0045】
得られたTi−Si合金をXRDやTEMなどで観察した結果、非晶質な相、10nm〜20nm程度の微結晶なSiの相、および同様なTiSi2の相が存在していることが確認された。SiとTiSi2のみからなると仮定した場合、重量比でおよそSi:TiSi2=30:70程度であった。
得られた負極活物質を用いて、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0046】
《実施例13》
硝酸ニッケル(II)六水和物の代わりに硝酸コバルト(II)六水和物(関東化学(株)製、特級試薬)を用いたこと以外、実施例1と同様にして負極活物質を得た。SiO粒子表面に担持された硝酸コバルト(II)の粒径、および成長したカーボンナノファイバの繊維径、繊維長、および重量比率は、実施例1とほぼ同じであった。得られた負極活物質を用いて、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0047】
《比較例1および2》
電解液1の代わりに比較例電解液1および2を用いたこと以外、実施例1と同様にしてそれぞれ比較例1および2の円筒型電池を作製した。
【0048】
《比較例3》
あらかじめ粉砕し、分級して粒径10μm以下とした一酸化ケイ素粉末80重量部、人造黒鉛(ティムカル社製、SLP30、平均粒径16μm)20重量部、バインダーとしてスチレンブタジエンゴムのエマルジョンを固形分換算で10重量部、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロース3重量部を、イオン交換水を適量加えながら十分混合してペースト状にした。このペーストを集電体である厚み15μmの銅箔の両面に塗布した。これを乾燥、圧延して負極を得た。この負極を用いたこと以外、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0049】
《比較例4》
非水電解液として電解液3を用いたこと以外、比較例3と同様にして円筒型電池を作製した。
《比較例5》
人造黒鉛20重量部の代わりにアセチレンブラック(ABと略す)20重量部を用いたこと以外、比較例3と同様にして円筒型電池を作製した。
《比較例6》
非水電解液として電解液3を用いたこと以外、比較例5と同様にして円筒型電池を作製した。
【0050】
《比較例7》
あらかじめ粉砕し、分級して粒径10μm以下とした一酸化ケイ素粉末をセラミック製反応容器に投入し、ヘリウムガス雰囲気中において1000℃まで昇温した。その後、ヘリウムガスをベンゼンガス50%とヘリウムガス50%の混合ガスに置換し、1000℃で1時間保持することによって、SiO粒子の表面にCVD法(詳細はJournal of The Electrochemical Society,Vol.149,A1598(2002)参照)によるカーボン層を導電層として形成し、負極活物質を得た。得られた活物質粒子をSEMで分析した結果、SiO粒子の表面をカーボン層が被覆していることが確認された。カーボン層の重量比率は、活物質全体に対して20重量%程度であった。
得られた負極活物質を用いて、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0051】
《比較例8》
非水電解液として電解液3を用いたこと以外、比較例7と同様にして円筒型電池を作製した。
【0052】
《比較例9》
負極活物質として人造黒鉛(ティムカル社製、SLP30、平均粒径16μm)を用いたこと以外、実施例1と同様にして負極を作製し、この負極を用いて実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。
【0053】
《比較例10》
非水電解液として電解液3を用いたこと以外、比較例9と同様にして円筒型電池を作製した。
《比較例11》
非水電解液として電解液6を用いたこと以外、比較例9と同様にして円筒型電池を作製した。
【0054】
(電池特性の評価)
作製したそれぞれの電池について、20℃において480mA(0.2C)で4.2Vから2.5Vまでの定電流充放電を行い、0.2Cでの放電容量を確認した。さらに、20℃において2400mA(1C)で2.5Vまでの定電流放電および1680mA(0.7C)で4.2Vまでの定電流充電を繰り返した。50サイクルの充放電の後に、480mAで4.2Vから2.5Vまでの定電流充放電を行って0.2Cでの放電容量を確認し、初期放電容量に対する比でそれぞれの電池のサイクル容量維持率を確認した。
【0055】
以上の試験の結果を表2に示す。表2では活物質粒子の表面にカーボンナノファイバを成長させることを「CNF成長」、CVD処理によって活物質粒子の表面にカーボン層を被覆することを「CVD被覆」と表した。
【0056】
【表2】

【0057】
電解液にホスファゼン化合物またはリン酸エステル類を添加した実施例1〜13は、添加していない比較例1および2と比べて、電池特性の大きな劣化が見られない。ただし、添加量が多い実施例6のみ、他の実施例に比べて若干の特性劣化が見られる。これに対して、導電剤としてカーボンナノファイバ以外の炭素材料を用いた比較例3〜8や活物質として黒鉛を用いた比較例9〜11では、サイクル特性に明らかな劣化が見られる。特に、添加量の多い比較例11では劣化が非常に大きくなっている。
【0058】
これらの結果から、本発明のようにリチウムと合金化可能な元素を含む活物質粒子の表面にカーボンナノファイバを成長させた場合において、電池特性を劣化させることなく、安定してホスファゼン化合物またはリン酸エステル類を電解液添加剤として用いることが可能であることが分かる。
リチウムと合金化可能な元素を含む活物質としてPbO、ZnOなどを用いた場合でも、本発明の最良の形態である実施例1〜13と比較すると、全体的にサイクル特性がやや劣ってはいたが、上記実施例とほぼ同様の効果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の非水電解液二次電池は、安全性および高温保存特性の両立がされているので、ポータブル機器等の電源として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例で用いた電池の要部を切り欠いた正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、および非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、
前記負極は、リチウムと合金化可能な元素を含む活物質、カーボンナノファイバの成長を促す触媒元素、および前記活物質の表面に成長させたカーボンナノファイバを含む複合粒子を含み、前記非水電解液は、ホスファゼン化合物およびリン酸エステル類の少なくとも1つの添加剤を含むことを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記リチウムと合金化可能な元素が、SiおよびSnの少なくとも1つである請求項1記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記非水電解液中における添加剤の体積百分率が1〜20%である請求項1記載の非水電解液二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2007−207455(P2007−207455A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21897(P2006−21897)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】