説明

非水電解液二次電池

【課題】容量劣化を抑制し、サイクル寿命特性を向上させることができる非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池20は有底円筒状の電池缶6を有しており、電池缶6には正負極板が捲回された捲回群15が収容されている。捲回群15を構成する正極板は、正極集電体としてアルミニウム箔1を有しており、アルミニウム箔1の両面には、正極活物質としてマンガン酸リチウムを含む正極合剤が塗着されて正極合剤層2が形成されている。負極板は、負極集電体として銅箔3を有しており、銅箔3の両面には、負極活物質として易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とが混合された混合物を含む負極合剤が塗着されて負極合剤層4が形成されている。充放電に伴う負極合剤層4の体積変化が抑制され、リチウムイオンの拡散性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解液二次電池に係り、特に、正極活物質にリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた正極と、負極活物質に炭素材を用いた負極とを非水電解液に浸潤させた非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水電解液二次電池においては、負極活物質として金属リチウムまたは、リチウムと鉛等とのリチウム合金が用いられていた。このような電池では、充放電を繰り返すうちに金属リチウムが負極でデンドライト状に析出し内部短絡を起こすことから、発熱や発火等の安全性の点で問題があった。これを解決するために負極活物質として金属リチウムやリチウム合金に代えて、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材が用いられるようになった。このような炭素材として、高結晶性の黒鉛粉末(またはそれに類するものも含む。)や、黒鉛粉末より結晶性の低い非晶質炭素粉末が一般に使用されている。
【0003】
負極活物質に黒鉛粉末を使用した非水電解液二次電池は、以下に示すような特徴を有している。すなわち、黒鉛粉末の真密度が非晶質炭素粉末と比べて高いため、負極活物質の充填密度を高くすることができ、電池作製直後の一回目の充放電時に非水電解液の分解が抑制されるため、ク−ロン効率が高くなる。このため、非水電解液二次電池の高エネルギー密度化を図ることができる、という長所がある。ところが、黒鉛粉末が高密度充填されることから、負極で非水電解液が保持されるべき空間が減少するため、充放電反応時のリチウムイオンの拡散性が低下し、特に高率放電時において過電圧が増大して放電電圧が低くなる、という短所がある。また、黒鉛粉末では、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積の膨張・収縮が非晶質炭素粉末より大きいため、高率充放電によって炭素構造が崩壊しやすくなり、サイクル寿命特性が低下することもある。
【0004】
一方、負極活物質に非晶質炭素粉末を用いた非水電解液二次電池では、非晶質炭素粉末の真密度が黒鉛粉末より低いため充填密度が低くなり、その結果、非水電解液二次電池の高エネルギー密度化が難しい、という短所がある。また、電池作製直後の一回目の充放電時におけるク−ロン効率が黒鉛粉末を用いた電池より低くなる。ところが、非晶質炭素粉末ではリチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積の膨張・収縮が黒鉛粉末より少ないため、高率充放電でも炭素構造が崩壊しにくくサイクル寿命特性が向上する、という長所がある。
【0005】
このような非晶質炭素には、2000〜3000℃の加熱によって黒鉛になりにくい難黒鉛化性炭素材(ハードカーボン)と、黒鉛になりやすい易黒鉛化性炭素材(ソフトカーボン)とがある。負極活物質に黒鉛粉末を用いても高率充放電におけるサイクル寿命が短いため、高出力形の非水電解液二次電池では、黒鉛粉末より単位重量あたりの容量の大きな難黒鉛化性炭素材が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−339795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、負極活物質に難黒鉛化性炭素材を用いるため、高容量化を図り高率充放電でのサイクル寿命特性を改善することはできるものの、電池の容量劣化が大きいため、保存特性が低下する、という問題がある。一方で、負極活物質に易黒鉛化性炭素材を用いた場合は、容量劣化が難黒鉛化性炭素材より小さいため、保存特性の向上を図ることができるが、単位重量あたりの容量が難黒鉛化性炭素材より小さく、また、サイクル寿命特性も低下することとなる。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、容量劣化を抑制し、サイクル寿命特性を向上させることができる非水電解液二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、正極活物質にリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた正極と、負極活物質に炭素材を用いた負極とを非水電解液に浸潤させた非水電解液二次電池において、前記炭素材は、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とが混合されていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、負極活物質の炭素材が易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とが混合されているので、炭素材に非水電解液が浸潤しやすくリチウムイオンの拡散性が確保され、保存時の容量劣化を抑制することができ、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とがいずれも低結晶性で充放電に伴う炭素構造の崩壊が抑制され、サイクル寿命特性を向上させることができる。
【0011】
この場合において、難黒鉛化性炭素材が易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材との総重量に対する重量が0.5%〜8%の割合で混合されていてもよい。このとき、難黒鉛化性炭素材が総重量に対する重量が2%〜4%の割合で混合されていることが好ましい。また、易黒鉛化性炭素材を、石油ピッチ、ポリアセン、ポリシロキサン、ポリパラフェニレン、ポリフルフリルアルコールを800℃から1000℃の温度で焼成した炭素材から選ばれる少なくとも1種としてもよい。難黒鉛化性炭素材を、石油ピッチ、ポリアセン、ポリシロキサン、ポリパラフェニレン、ポリフルフリルアルコールを500℃から800℃の温度で焼成した炭素材から選ばれる少なくとも1種としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、負極活物質の炭素材が易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とが混合されているので、炭素材に非水電解液が浸潤しやすくリチウムイオンの拡散性が確保され、保存時の容量劣化を抑制することができ、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とがいずれも低結晶性で充放電に伴う炭素構造の崩壊が抑制され、サイクル寿命特性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を適用した円筒型リチウムイオン二次電池の実施の形態について説明する。
【0014】
(構成)
図1に示すように、本実施形態の円筒型リチウムイオン二次電池20は、電池容器となるニッケルメッキを施された鉄製で有底円筒状の電池缶6を有している。電池缶6には、帯状の正負極板が捲回された捲回群15が収容されている。
【0015】
捲回群15は、正負極板が微多孔性でポリエチレン製多孔膜のセパレータ5を介して断面渦巻状に捲回されている。セパレータ5は、本例では、厚さが30μm、幅が58.5mmに設定されている。捲回群15の上端面には、一端を正極板に固定されたアルミニウム製でリボン状の正極タブ端子8が導出されている。正極タブ端子8の他端は、捲回群15の上側に配置され正極外部端子となる円盤状の電池蓋7の下面に超音波溶接で接合されている。一方、捲回群15の下端面には、一端を負極板に固定された銅製でリボン状の負極タブ端子9が導出されている。負極タブ端子9の他端は、電池缶6の内底部に抵抗溶接で接合されている。従って、正極タブ端子8および負極タブ端子9は、それぞれ捲回群15の両端面の互いに反対側に導出されている。捲回群15の外周面全周には、図示を省略した絶縁被覆が施されている。
【0016】
電池蓋7は、絶縁性の樹脂製ガスケット12を介して電池缶6の上部にカシメ固定されている。このため、リチウムイオン二次電池20の内部は密封されている。また、電池缶6内には、図示しない非水電解液が注液されている。非水電解液には、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメチルカーボネートの体積比1:1:1のカーボネート系混合溶媒中に6フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットル溶解して使用することができる。非水電解液の注液量は、本例では、5mlに設定されている。
【0017】
捲回群15を構成する正極板は、正極集電体としてアルミニウム箔1を有している。アルミニウム箔1の厚さは本例では20μmに設定されており、15〜25μmの範囲で設定されることが好ましい。アルミニウム箔1の両面には、正極活物質として、平均粒子径が5.8〜8.6μmのリチウム含有遷移金属複合酸化物としてのマンガン酸リチウムを含む正極合剤が略均等に塗着されて正極合剤層2が形成されている。正極合剤には、例えば、正極活物質、導電材として平均粒子径が0.5μmの黒鉛粉末とアセチレンブラック、炭酸リチウム、および、バインダ(結着材)のポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業株式会社製、商品名:KF#1120)が89.69:9.03:1.80:1.48:3の重量比率で配合されている。正極合剤をアルミニウム箔1に塗着するときには、粘度調整溶媒のN−メチルピロリドン(以下、NMPと略記する。)に分散させてスラリ状の溶液が作製される。この溶液がアルミニウム箔1にロール・ツー・ロール転写法で塗布される。正極板は、乾燥後、プレス加工で一体化され、幅が54mm、長さが725mmに裁断されている。正極板の長手方向略中央部には、正極タブ端子8が超音波溶接で接合されている。正極板は、厚さが91〜99μm、正極合剤層2の密度が2.7g/cmに設定されている。なお、これ以上のプレス加工をすると、正極合剤層2の密度はほとんど変わらないものの、アルミニウム箔1が伸びて寸法変化が生ずる。
【0018】
一方、負極板は、負極集電体として銅箔3を有している。銅箔3の厚さは本例では10μmに設定されており、5〜20μmの範囲で設定されることが好ましい。銅箔3の両面には、負極活物質として易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とが混合された混合物を含む負極合剤が略均等に塗着されて負極合剤層4が形成されている。負極合剤には、例えば、負極活物質、導電剤のアセチレンブラック、および、バインダのポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業株式会社製、商品名:KF#9130)が90.5:4.7:4.8の重量比率で配合されている。負極合剤を銅箔3に塗着するときには、粘度調整溶媒のNMPに分散させてスラリ状の溶液が作製される。この溶液が銅箔3にロール・ツー・ロール転写法で塗布される。負極板は、乾燥後、プレス加工で一体化され、幅が56mm、長さが775mmに裁断されている。負極板の長手方向一端には、負極タブ端子9が超音波溶接で接合されている。なお、使用した炭素材料の種類や混合比率にも依存するが、銅箔3の伸びによる寸法変化が生じない範囲でプレス加工されている。
【0019】
負極活物質に用いる易黒鉛化性炭素材は、2000〜3000℃の加熱処理をすると黒鉛になりやすい性質を有する、いわゆるソフトカーボンであり、次のようにして調製したものである。すなわち、原料として石油ピッチ、ポリアセン、ポリシロキサン、ポリパラフェニレンまたはポリフルフリルアルコールを用い、原料を800〜1000℃の温度で焼成し調製される。負極活物質には、焼成し得られた炭素材から選ばれる少なくとも1種が混合されている。
【0020】
一方、難黒鉛化性炭素材は、2000〜3000℃の加熱処理をしても黒鉛になりにくい性質を有する、いわゆるハードカーボンであり、次のようにして調製したものである。すなわち、原料として石油ピッチ、ポリアセン、ポリシロキサン、ポリパラフェニレンまたはポリフルフリルアルコールを用い、原料を易黒鉛化性炭素材の焼成温度より低い500〜800℃の温度で焼成し調製される。負極活物質には、焼成し得られた炭素材から選ばれる少なくとも1種が混合されている。
【0021】
調製した易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とが、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材との総重量に対する難黒鉛化性炭素材の重量が0.5〜8%の割合となるように混合されている。保存時の容量劣化の抑制やサイクル寿命特性の向上を考慮すれば、総重量に対する難黒鉛化性炭素材の重量を2〜4%の割合とすることが好ましい。
【0022】
(電池組立)
電池の作製では、まず、正負極合剤をそれぞれの集電体(アルミニウム箔1、銅箔3)に塗着した後、得られた正負極板に正極タブ端子8および負極タブ端子9をそれぞれ超音波溶接する。正負極板をセパレータ5を介して捲回し捲回群15を作製する。捲回群15を電池缶6内に挿入し、負極タブ端子9を電池缶6の内底部に溶接する。電池缶6内に非水電解液を注液後、予め正極タブ端子8の他端を溶接した電池蓋7を電池缶6の上部にガスケット12を介して嵌合させる。電池缶6の上部をカシメ固定することでリチウムイオン二次電池20の組立を完成する。
【0023】
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池20の作用等について説明する。
【0024】
本実施形態では、負極活物質として、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とが混合された炭素材が用いられている。易黒鉛化性炭素材および難黒鉛化性炭素材は、いずれも低結晶性のため、結晶子間に空隙が形成されていることから、充放電時におけるリチウムイオンの吸蔵・放出に際して、体積の膨張・収縮が抑制される。とりわけ、難黒鉛化性炭素材では、易黒鉛化性炭素材と比べて結晶子間の空隙が大きいため、体積変化の抑制効果が大きくなる。このため、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とを配合した負極合剤層4の剥落や崩壊が抑制されるので、リチウムイオン二次電池20のサイクル寿命特性を向上させることができる。
【0025】
また、易黒鉛化性炭素材、難黒鉛化性炭素材共に結晶子間に空隙が形成されているため、非水電解液を十分に浸潤させることができる。このため、充放電時や保存時にリチウムイオンの拡散性が確保されるので、容量劣化を抑制することができる。更に、難黒鉛化性炭素材では、易黒鉛化性炭素材と比べて結晶子間の空隙が大きい分で単位重量あたりの容量が大きくなるので、リチウムイオン二次電池20の高容量化を図ることができる。
【0026】
更に、本実施形態では、難黒鉛化性炭素材の混合量が、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材との総重量に対する重量で0.5〜8%の割合となるように設定されている。このため、易黒鉛化性炭素材と比べて保存時の容量劣化が大きい難黒鉛化性炭素材の混合量が制限されるので、難黒鉛化性炭素材でサイクル寿命特性の向上を図りつつ、容量劣化を抑制することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、易黒鉛化性炭素材、難黒鉛化性炭素材の原料として石油ピッチ、ポリアセン、ポリシロキサン、ポリパラフェニレン、ポリフルフリルアルコールを例示したが、これらに制限されるものではない。易黒鉛化性炭素材としては2000〜3000℃の加熱処理で黒鉛になりやすい性質を有していればよく、難黒鉛化性炭素材としては2000〜3000℃で加熱処理しても黒鉛になりにくい性質を有していればよい。
【0028】
また、本実施形態では、正極活物質のリチウム含有遷移金属複合酸化物としてマンガン酸リチウムを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム等のリチウムコバルト複酸化物、ニッケル酸リチウム等のリチウムニッケル複酸化物、リチウムマンガンコバルトニッケル複酸化物、リチウムマンガンニッケル複酸化物等を用いてもよい。また、結晶中のリチウムやマンガン等の遷移金属元素の一部をFe、Co、Ni、Cr、Al、Mg等の遷移金属元素で置換またはドープしたリチウム含有金属酸化物を用いることもできる。更に、結晶構造についても特に制限はなく、スピネル型、層状型、オリビン型のいずれの結晶構造を有していてもよい。
【0029】
更に、本実施形態では、円筒型リチウムイオン二次電池20を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、円筒型に限らず、角型その他の多角形状の電池にも適用可能である。また、電池の内部構造についても特に制限されないことはもちろんである。
【実施例】
【0030】
次に、本実施形態に従い作製したリチウムイオン二次電池20の実施例について説明する。なお、比較のために作製した比較例についても説明する。
【0031】
(実施例1〜実施例5)
下表1に示すように、実施例1〜実施例5では、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材との混合割合を変えて調製した混合物を負極活物質として用い、リチウムイオン二次電池20を作製した。各炭素材の混合割合の重量比、すなわち、易黒鉛化性炭素材:難黒鉛化性炭素材は、実施例1では99.5:0.5、実施例2では99:1、実施例3では98:2、実施例4では96:4、実施例5では92:8とした。
【0032】
【表1】

【0033】
(比較例1〜比較例2)
表1に示すように、比較例1〜比較例2では、易黒鉛化性炭素材および難黒鉛化性炭素材を混合せず、いずれか一方のみを負極活物質として用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。すなわち、比較例1では易黒鉛化性炭素材のみを用い、比較例2では難黒鉛化性炭素材のみを用いた。
【0034】
(評価)
各実施例および比較例のリチウムイオン二次電池について、サイクル充放電試験後の容量保持率および保存試験後の容量保持率を評価した。サイクル充放電試験では、リチウムイオン二次電池を周囲温度25℃、4.1Vの定電圧で5時間充電した後、1Cの電流値で終止電圧2.7Vまで放電する充放電パターンを100サイクル繰り返した。1サイクル目の放電容量と、100サイクル目の放電容量とを測定し、式{(100サイクル目の放電容量)÷(1サイクル目の放電容量)×100%}からサイクル容量保持率を求めた。また、保存試験では、周囲温度25℃、4.1Vの定電圧で5時間充電した後、周囲温度50℃で30日間放置した。放置前の放電容量と放置後の放電容量とを測定し、式{(放置後の放電容量)÷(放置前の放電容量)×100%}から放置後容量保持率を求めた。サイクル容量保持率および放置後容量保持率の結果を表1にあわせて示した。
【0035】
表1に示すように、負極活物質に易黒鉛化性炭素材のみを用いた比較例1のリチウムイオン二次電池では、サイクル容量保持率が90.9%、放置後容量保持率が89.7%を示した。また、難黒鉛化性炭素材のみを用いた比較例2のリチウムイオン二次電池では、サイクル容量保持率が88.2%、放置後容量保持率が84.8%を示した。これに対して、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とを混合して用いた実施例1〜実施例5のリチウムイオン二次電池20では、サイクル容量保持率および放置後容量保持率がいずれも優れた結果を示した。中でも、難黒鉛化性炭素材の割合を2〜4%とした実施例3〜実施例4のリチウムイオン二次電池20では、サイクル容量保持率が94%以上、放置後容量保持率が91%以上を示した。このことから、難黒鉛化性炭素材の割合を0.5〜8%の範囲とすることでサイクル容量保持率、放置後容量保持率を共に向上させることができ、特に、2〜4%とすることが好ましいことが判った。
【0036】
以上説明したように、負極活物質として使用する易黒鉛化性炭素材、難黒鉛化性炭素材の混合量を最適化することによって、放電容量の変化が少なく長寿命なリチウムイオン二次電池を得ることができることが明らかとなった。これは、負極合剤層内で非水電解液が入り込める空隙を確保することができ、良好な電子伝導のネットワ−クを形成することができるためと考えられる。また、負極製造工程では従来の工程の大幅な変更を要せず、上述した効果を容易に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は容量劣化を抑制し、サイクル寿命特性を向上させることができる非水電解液二次電池を提供するため、非水電解液二次電池の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用した実施形態の円筒型リチウムイオン二次電池の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 正極合剤層
4 負極合剤層
15 捲回群
20 円筒型リチウムイオン二次電池(非水電解液二次電池)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質にリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた正極と、負極活物質に炭素材を用いた負極とを非水電解液に浸潤させた非水電解液二次電池において、前記炭素材は、易黒鉛化性炭素材と難黒鉛化性炭素材とが混合されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記難黒鉛化性炭素材は、前記易黒鉛化性炭素材と前記難黒鉛化性炭素材との総重量に対する重量が0.5%〜8%の割合で混合されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記難黒鉛化性炭素材は、前記総重量に対する重量が2%〜4%の割合で混合されていることを特徴とする請求項2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記易黒鉛化性炭素材は、石油ピッチ、ポリアセン、ポリシロキサン、ポリパラフェニレン、ポリフルフリルアルコールを800℃から1000℃の温度で焼成した炭素材から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記難黒鉛化性炭素材は、石油ピッチ、ポリアセン、ポリシロキサン、ポリパラフェニレン、ポリフルフリルアルコールを500℃から800℃の温度で焼成した炭素材から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2009−176448(P2009−176448A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11131(P2008−11131)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】