説明

非水電解液二次電池

【課題】非水電解液二次電池の出力特性を向上させる。
【解決手段】非水電解液二次電池は、非水系溶媒に電解質を溶解させた非水系電解液を含む非水電解液二次電池であって、負極集電体121の表面上に配置された負極活物質層122と、負極活物質層122の表面上に配置され、リチウム含有チタン酸化物を含む付加層14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的に非水系溶媒に電解質を溶解させた非水系電解液を含む非水電解液二次電池に関し、特定的には出力特性を改善した非水電解液二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高出力、高エネルギー密度の二次電池として、非水電解液を用い、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて、充放電を行うようにした非水電解液二次電池が利用されている。
【0003】
また、近年においては、このような非水電解液二次電池を電気自動車の電源など、様々な分野に利用することが検討されている。非水電解液二次電池を電気自動車の電源などの様々な分野に利用する場合、高い出力特性が非水電解液二次電池に要求される。
【0004】
上記の要求に応えるために、たとえば、特開平5−121066号公報(以下、特許文献1という)には、非水電解液二次電池の高容量化のためにドープ量が大きく、電流効率のよい特定の炭素質材料を用いた負極の構成が提案されている。この負極においては、負極の活物質は、炭素網面の面間隔d002が0.337nm未満の黒鉛状炭素質を炭素網面の面間隔d002が0.337nm以上の炭素質で被覆してなる複合炭素質である。このように負極を構成することにより、電流効率が高く、かつ容量の大きな非水電解液二次電池が得られることが特許文献1に記載されている。すなわち、特許文献1では、出力特性を向上させるために、負極を形成する炭素粒子の表面に低結晶性炭素を被覆して、炭素と電解液界面の直流抵抗を低減するという方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−121066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で提案された方法を採用しても、非水電解液二次電池の出力特性を十分に向上させることができなかった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、非水電解液二次電池の出力特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従った非水電解液二次電池は、非水系溶媒に電解質を溶解させた非水系電解液を含む非水電解液二次電池であって、負極集電体の表面上に配置された負極活物質層と、この負極活物質層の表面上に配置され、リチウム含有チタン酸化物を含む付加層とを備える。
【0009】
この発明の非水電解液二次電池においては、負極活物質層の表面上にリチウム含有チタン酸化物を含む付加層が配置されている。これにより、作動電位の高いリチウム含有チタン酸化物が負極活物質層の表面上に均一に配置されるので、直流抵抗が特異的に低減されるものと推測される。その結果、非水電解液二次電池の出力特性を向上させることができる。
【0010】
この発明の非水電解液二次電池において、付加層の厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0011】
このように付加層の厚みを限定することにより、直流抵抗をより効果的に低減させることができる。
【0012】
また、この発明の非水電解液二次電池において、リチウム含有チタン酸化物の平均粒径が、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0013】
このようにリチウム含有チタン酸化物の平均粒径を限定することにより、直流抵抗をより効果的に低減させることができる。
【0014】
さらに、この発明の非水電解液二次電池において、負極活物質層は炭素材料を含むことが好ましい。さらにまた、炭素材料は、結晶化度の高い炭素からなる芯材と、この芯材の表面の少なくとも一部を被覆し、結晶化度の低い炭素からなる表面層とを含むことが好ましい。
【0015】
このように負極活物質層を構成することにより、直流抵抗をより効果的に低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のようにこの発明によれば、非水溶媒に電解質を溶解させた非水系電解液を含む非水電解液二次電池において、直流抵抗を特異的に低減させることができるので、出力特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の非水電解液二次電池の一つの実施の形態である非水電解液二次電池の一例としてリチウムイオン二次電池の電池要素を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の非水電解液二次電池の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明の非水電解液二次電池の一つの実施の形態である非水電解液二次電池の一例としてリチウムイオン二次電池の電池要素を示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、電池要素10では、複数の短冊状の正極11と複数の短冊状の負極12とが、複数の短冊状のセパレータ13を介して、交互に積層されて形成されている。
【0021】
ここで、正極11は、正極集電体111の両面に正極活物質層112が積層されて形成されている。一例として、正極集電体111はアルミニウムからなり、正極活物質層112はコバルト酸リチウム複合酸化物(LCO)からなる。
【0022】
一方、負極12は、負極集電体121の両面に負極活物質層122が積層されて形成されている。一例として、負極集電体121は銅からなり、負極活物質層122は炭素材料からなる。
【0023】
付加層14が、負極活物質層122の表面上に積層されて形成され、リチウム含有チタン酸化物を含む。言い換えれば、付加層14は、セパレータ13と負極活物質層122との間に形成されている。一例として、付加層14は、チタン酸リチウム層からなる。付加層14の厚みは10μm以上50μm以下であるのが好ましい。付加層14に含まれるリチウム含有チタン酸化物の平均粒径は0.5μm以上10μm以下であるのが好ましい。図1では、付加層14は、負極活物質層122の表面上に直接形成されているが、負極活物質層122の表面上に中間層を介在させて形成されていてもよく、付加層14は、負極活物質層122の表面の上に少なくとも配置されていればよい。
【0024】
なお、複数の正極11を構成する複数の正極集電体111の端部が集約された正極集端部113は、正極接続端子に電気的に接続されており、複数の負極12を構成する複数の負極集電体121の端部が集約された負極集端部123は、負極接続端子に電気的に接続されている。
【0025】
上記の付加層14に含まれるリチウム含有チタン酸化物としては、一般的に組成式LiTi5−xMe12(x=0〜1、Meは、Mg,Al,Ti,Zr,Mo,Nb,Sr,Ni,Co,Mn,Wのうち少なくとも一種)を用いることができる。
【0026】
上記の負極活物質層122の材料としては、炭素材料、シリコン(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)などを用いることができる。いずれの材料を用いた場合においても本発明の効果を得ることができるが、コストの観点から負極活物質層122の材料としては炭素材料を使うことが好ましい。炭素材料としては、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークスなどを用いることができる。
【0027】
負極活物質層122の材料として炭素材料を用いる場合、負極活物質層122は、結晶化度の高い炭素からなる芯材と、この芯材の表面の少なくとも一部を被覆し、結晶化度の低い炭素からなる表面層とからなる炭素材料を含むことが好ましい。この場合、結晶化度の高い炭素からなる芯材としての黒鉛と、その黒鉛の表面の少なくとも一部を被覆し、結晶化度の低い炭素からなる表面層とからなる低結晶性炭素被覆黒鉛としては、ラマン分光法により求められる1350/cmの強度IAと、1580/cmの強度IBとの強度比(IA/IB)が0.2〜0.3の範囲のものを用いることが好ましい。ここで、1580/cmのピークは黒鉛構造に近い六方対称性をもった積層に起因して得られるピークであり、1350/cmのピークは炭素局部の乱れた低結晶性構造に起因して得られるピークであり、上記のIA/IBの値が大きいほど、表面における低結晶性炭素の割合が大きくなる。そして、上記のIA/IBの値が0.2未満になると、黒鉛の表面における低結晶性炭素の割合が少なくなって、リチウムイオンの受け入れ性を十分に高めることが困難になる。一方、IA/IBの値が0.3を越えると、低結晶性炭素の量が多くなって黒鉛の割合が低下し、負極活物質層122の構成に起因して電池容量が低下する。
【0028】
また、本発明における非水電解液二次電池において、非水電解液の非水系溶媒としては、たとえば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピネート(MP)、エチルアセテート(EA)等を単独または2種類以上混合させて使用することができる。また、非水電解液二次電池のサイクル性能をさらに向上させるために、非水電解液の非水系溶媒にビニレンカーボネート(VC)やビニルエチレンカーボネート(VEC)を混合させることが好ましい。ビニレンカーボネート(VC)またはビニルエチレンカーボネート(VEC)の混合量は、サイクル性能の観点から、非水電解液の総重量に対し、0.1重量部〜5重量部であることが好ましい。その混合量が0.1重量部より少ないと、サイクル特性向上の効果が得られにくく、5重量部より多いと、負極上で非水系溶媒の還元分解生成物が多くなりすぎて、電池の出力性能が低下する。
【0029】
上記の非水電解液において、非水系溶媒に溶解させる電解質としては、非水電解液二次電池において一般に使用されているものを用いることができ、たとえば、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CSO、LiAsF、LiClO等を単独または2種類以上混合させて使用することができる。電解質の量は溶媒総重量に対して、0.5mol%〜1.5mol%であることが好ましい。電解質の量が0.5mol%以下であると、十分な電解液の伝導率が得られず、出力特性が低下し、1.5mol%以上であると、電解液の粘度が高くなりすぎ、イオン拡散速度が低下し、電池の出力特性が低下する。
【0030】
また、上記の非水電解液に含有させるオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、具体的にはリチウム−ビス(オキサラト)ボレート、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム等を用いることができる。
【0031】
正極11と負極12を電気的に絶縁するセパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)から選ばれる1種以上から構成される微多孔膜を用いることができる。この微多孔膜には、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)などのフィラーが含まれていてもよい。上記のフィラーとバインダとしての樹脂とのみからセパレータが形成されていてもよい。
【0032】
本発明の非水電解液二次電池において、正極11に用いる正極活物質層112の材料としては、非水電解液二次電池において一般に使用されているものを用いることができ、たとえば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)等のリチウム遷移金属複合酸化物や、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウム含有リン酸塩等を用いることができる。また、正極活物質層112の材料としては、上記のリチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属の一部を他の金属元素で置換させたものを用いることも可能であり、このような金属元素としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)から選択される1種又は2種以上を用いることができる。さらに、正極活物質層112の材料としては、上記のような正極活物質を混合したものを用いることも可能である。
【0033】
本発明の非水電解液二次電池において、正極11の正極活物質層112を作製するにあたっては、上記のような正極活物質の他に、炭素材料などの導電剤と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を加えた正極合剤を用いることができる。そして、この正極合剤中に導電剤として炭素材料を加える場合、正極合剤中における炭素材料の量を3重量%〜15重量%の範囲内にすることが好ましい。また、正極活物質層112中における上記の導電剤と結着剤との合計量は、エネルギー密度を確保する観点から、10重量%以下であることが好ましい。また、導電剤に用いる炭素材料としては、たとえば、アセチレンブラック等の塊状炭素や繊維状炭素等を用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下のようにして作製した正極11と負極12と非水電解液とを用いて、付加層14としてのチタン酸リチウム層の厚みやチタン酸リチウムの平均粒径を表1に示すように異ならせることにより、付加層14を形成した実施例1〜12の非水電解液二次電池を作製した。また、付加層14を形成しない比較例1〜2の非水電解液二次電池も作製した。
【0035】
(実施例1)
実施例1においては、以下のようにして作製した正極11と負極12と非水電解液とを用い、図1に示すような積層型の電池要素10を備え、電池容量が20mAhである非水電解液二次電池を作製した。
【0036】
[正極の作製]
正極活物質としてLi1.01(Ni0.33Co0.33Mn0.33)Oを用い、この正極活物質と、導電剤の炭素材料と、結着剤のポリフッ化ビニリデンを溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液とを、正極活物質と導電剤と結着剤との重量比が90:5:5になるように調製した。この調製されたものを混練して正極合剤スラリーを作製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔からなる正極集電体111の上に塗布したものを乾燥させて圧延ローラーにより圧延し、これに集電タブを取り付けて正極11を作製した。
【0037】
このときの単位面積あたりの正極合材の目付け量を6.5mg/cm、充填密度を2.8g/ccとした。正極11の寸法を50mm×50mmとした。この正極11の単位容量を、電解液の電解質として1mol/LのLiPF、溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で混合した混合溶媒を用い、対極にリチウム金属を用いて、充電10mA−4.3V、放電10mA−2.5Vにて測定した。その結果、1g当たり150mAhの単位容量を得た。
【0038】
[負極の作製]
負極活物質として、低結晶性炭素で被覆された平均粒径15μmの球状天然黒鉛粒子を用いた。そして、この低結晶性炭素被覆天然黒鉛からなる負極活物質と、結着剤のポリアクリロニトリル変性体(PAN)をN−メチル−2−ピロリドン溶液に溶解させた溶液とを、負極活物質と結着剤の重量比が95:5になるように調製した。この調製されたものを混練して負極合剤スラリーを作製した。この負極合剤スラリーを銅箔からなる負極集電体121の上に塗布したものを温度120℃で乾燥した。
【0039】
このときの単位面積あたりの負極合材の目付け量を4mg/cm、充填密度を1.5g/ccとした。負極12の寸法を52mm×52mmとした。この負極12の単位容量は、電解液の電解質として1mol/LのLiPF、溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の体積比で混合した混合溶媒を用い、対極にリチウム金属を用いて、充電10mA−0.01V、放電10mA−1.0Vにて測定した。その結果、1g当たり350mAhの単位容量を得た。
【0040】
[リチウム含有チタン酸化物層の作製]
リチウム含有チタン酸化物として平均粒径が5μmのチタン酸リチウム(LiTi12)と、結着剤としてのポリアクリロニトリル変性体とを重量比率が97.5:2.5になるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて、固形分濃度が30重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドン溶液を作製した。その後、上記で作製した負極12の負極活物質層122の表面上に、ドクターブレード法により、付加層14としてのチタン酸リチウム層の乾燥後厚みが10μmとなるように上記の溶液を塗布した後、温度120℃で乾燥したものをロールプレス機により圧延し、これに集電リードを取り付けて、両面に付加層14が形成された負極12を作製した。
【0041】
[非水電解液の作製]
非水系溶媒として、エチレンカーボネート(EC)と鎖状カーボネートであるジエチルカーボネート(DEC)とを1:2の体積比で混合した混合溶媒を用い、この混合溶媒に電解質のLiPFを1mol/Lの濃度になるように溶解させて、非水電解液を作製した。
【0042】
[電池の作製]
電池を作製するにあたっては、図1に示すように、上記のようにして作製した正極11と負極12との間に、セパレータ13としてリチウムイオン透過性のポリエチレン製の微多孔膜を介在させ、これらを重ね合わせて、電池要素10を形成した。この電池要素10を、長方形のアルミニウムラミネートフィルムに封入し、三方辺を温度80℃で熱融着した後、上記で作製した0.3gの非水電解液をアルミニウムラミネートフィルムの開口部から注入して、アルミニウムラミネートフィルムの開口部を熱融着することにより、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0043】
[電池容量測定]
上記で作製したリチウムイオン二次電池に、充電電流を10mAとして電圧が4.2Vになるまで充電して、10分間放置した後、放電電流を10mAとして電圧が3.0Vになるまで放電した。このときに得られた放電容量を電池容量とした。
【0044】
[出力特性測定]
上記の電池容量の測定を5回繰り返した後、リチウムイオン二次電池に、電圧が4.2Vになるまで充電し、10分間放置した。その後、放電電流を10mA、20mA、30mAとして、各放電電流にて10秒間放電した際の到達電圧を電流値に対してプロットしたときの傾きから直流抵抗(DCR)を算出した。
【0045】
(実施例2)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムの平均粒径を10μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0046】
(実施例3)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムの平均粒径を1μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0047】
(実施例4)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムの平均粒径を0.5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0048】
(実施例5)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムを含む上記の溶液を塗布するときに、チタン酸リチウム層の乾燥後厚みを30μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0049】
(実施例6)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムを含む上記の溶液を塗布するときに、チタン酸リチウム層の乾燥後厚みを50μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0050】
(実施例7)
チタン酸リチウムを含む上記の溶液を塗布するときに乾燥後厚みが10μmとなるように、付加層14としてのチタン酸リチウム層を、セパレータ13としてのポリエチレン製の微多孔膜の片面に形成したものを作製し、このチタン酸リチウム層が負極12と対向するようにリチウムイオン二次電池を組み立てたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0051】
(実施例8)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムの平均粒径を20μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0052】
(実施例9)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムの平均粒径を0.1μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0053】
(実施例10)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムを含む上記の溶液を塗布するときに、チタン酸リチウム層の乾燥後厚みを5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0054】
(実施例11)
付加層14の形成において、チタン酸リチウムを含む上記の溶液を塗布するときに、チタン酸リチウム層の乾燥後厚みを100μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0055】
(実施例12)
負極12の作製において、負極活物質として、低結晶性炭素で被覆していない黒鉛材料を用いたこと以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0056】
(比較例1)
負極12の作製において、付加層14を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0057】
(比較例2)
負極12の作製において、実施例1で用いた低結晶性炭素で被覆された黒鉛と平均粒径が5μmのチタン酸リチウム粒子とを重量比2:1で混合したものと、結着剤としてのポリアクリロニトリル(PAN)とをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させたものを、低結晶性炭素で被覆された黒鉛およびチタン酸リチウムを含有する溶液とした。この溶液においては、低結晶性炭素で被覆された黒鉛とチタン酸リチウムの混合物と結着剤との重量比が95:5になるように調製されている。この調製されたものを混練して負極合剤スラリーを作製したこと以外は、比較例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製し、DCRを算出した。
【0058】
以上の実施例1〜12と比較例1〜2で算出したDCRを表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、付加層14中のチタン酸リチウムの平均粒径が0.5μm〜10μm(実施例1〜実施例4)、チタン酸リチウム層の乾燥後厚みが10μm〜50μm(実施例1、実施例5、実施例6)の範囲において、比較例1に示すように付加層14が形成されない負極12を用いたリチウムイオン二次電池と比べて、飛躍的にDCRが低減され、出力特性が向上することがわかる。
【0061】
実施例9では、チタン酸リチウムの平均粒径が小さすぎると、チタン酸リチウムと負極12の表面との接触点が増加し、バインダ量が不足するため、十分な密着ができず、出力特性が低下していることが考えられ、実施例8では、チタン酸リチウムの平均粒径が大きすぎると、負極12の表面への電解液の拡散をチタン酸リチウムが阻害し、出力特性が低下するものと考えられる。また、実施例7では、付加層14としてのチタン酸リチウム層を負極活物質層側ではなく、セパレータに形成した場合でも実施例1と遜色のない結果が得られた。
【0062】
また、実施例10では、チタン酸リチウム層の乾燥後厚みが薄いと、負極界面抵抗を低減する効果が得られがたく、実施例11では、チタン酸リチウム層の乾燥後厚みが厚いと、正負極の極間距離が大きくなり、出力特性が低下するものと考えられる。
【0063】
さらに、実施例12では、負極活物質として黒鉛の表面を低結晶性炭素で被覆していない材料を用いた場合、出力特性が低減しなかった理由は不明であるが、結晶性の高い黒鉛とチタン酸リチウムが直接接触することによって、チタン酸リチウムが黒鉛の電位と平均化されていることが要因であると推測される。
【0064】
なお、比較例2に示すように、黒鉛とチタン酸リチウムを混合した材料からなる負極12を用いたリチウムイオン二次電池では、黒鉛が正極11に対向する負極12の面に露出してしまうために、チタン酸リチウムによる電位降下抑制の効果が得られないので、出力特性が低下するものと考えられる。
【0065】
以上のように、表1に示す結果から、本発明の構成を採用することにより、出力特性が飛躍的に向上したリチウムイオン二次電池を作製することが可能となることがわかる。
【0066】
今回開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものであることが意図される。
【0067】
例えば、電池要素10として短冊状の正極、負極、セパレータが積層されて構成されたものに代えて、長尺状の正極、負極、セパレータを巻回した構造としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10:電池要素、11:正極、12:負極、13:セパレータ、14:付加層、111:正極集電体、112:正極活物質層、113:正極集端部、121:負極集電体、122:負極活物質層、123:負極集端部。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系溶媒に電解質を溶解させた非水系電解液を含む非水電解液二次電池であって、
負極集電体の表面上に配置された負極活物質層と、
前記負極活物質層の表面上に配置され、リチウム含有チタン酸化物を含む付加層とを備えた、非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記付加層の厚みが、10μm以上50μm以下である、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記リチウム含有チタン酸化物の平均粒径が、0.5μm以上10μm以下である、請求項1または請求項2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記負極活物質層は炭素材料を含む、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記炭素材料は、結晶化度の高い炭素からなる芯材と、前記芯材の表面の少なくとも一部を被覆し、結晶化度の低い炭素からなる表面層とを含む、請求項4に記載の非水電解液二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2010−192230(P2010−192230A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34852(P2009−34852)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】