説明

非水電解質二次電池用セパレータおよび非水電解質二次電池

【課題】薄くても耐久性に優れ、電池の出力特性を低下させず、電池の安全性も確保できる非水電解質二次電池用セパレータを提供する。
【解決手段】高温時に実質的に無孔性の層となるシャットダウン特性を有する第1多孔質層(A層)と、アラミド樹脂と無機材料とを含む第2多孔質層(B層)とを有し、B層の厚み(TB)に対するA層の厚み(TA)の比率(TA/TB)が、2.5以上、13以下である非水電解質二次電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用セパレータおよび非水電解質二次電池に関し、詳しくは、安全性および出力特性に優れた非水電解質二次電池を与えるセパレータおよびこれを含む非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、従来の二次電池に比べて、高容量でエネルギー密度が高いため、小型電子機器、例えば、携帯電話、ノートパソコンなどに積極的に用いられている。
【0003】
非水電解質二次電池は、非水電解質と、正極と、負極とを含んでいる。非水電解質は、一般に、非水溶媒およびこれに溶解したリチウム塩からなる。正極は、正極活物質およびこれを担持する正極集電体を含む。正極活物質には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能であり、かつ安定な電位を示す材料が好ましく用いられる。負極は、負極活物質およびこれを担持する負極集電体を含む。負極活物質には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能であり、かつ安定な電位を示す材料が好ましく用いられる。正極および負極は、例えばシート状または短冊状である。
【0004】
正極と負極との間には、絶縁性の多孔質材料からなるセパレータが介在している。例えば、正極と負極とを、これらの間に介在するセパレータとともに捲回したり、正極と負極とをセパレータを介して積層したりすることにより、電極群が作製される。電極群を非水電解質とともに各種形状(角型、円筒形など)の電池ケースに収容することにより、非水電解質二次電池が作製される。
【0005】
最近、電子機器の小型化および軽量化が急速に進みつつある。このような流れの中で、電源として用いる非水電解質二次電池に対しても、一層の小型化および高出力化が求められている。そこで、電池ケース内における電極群の収納効率を向上させる観点から、セパレータを薄型化することが求められている。
【0006】
また、正極と負極とが短絡した際には、電池温度が上昇するため、セパレータには安全性を確保する機能も要求される。セパレータの耐熱性は、その材質に強く依存する。そこで、耐熱性の高いアラミド樹脂からなる層と、シャットダウン機能を有する多孔質層とを積層したセパレータなどが検討されている。なお、シャットダウン機能とは、電池の発熱時に溶融して孔を閉鎖し、リチウムイオンの移動を阻止する機能のことである。シャットダウン機能を有する多孔質層は、高温時に実質的に無孔性の層となる。
【0007】
更に、非水電解質二次電池の出力特性を維持する観点からは、セパレータのリチウムイオン透過性を確保することも重要となる。
【0008】
以上のように、非水電解質二次電池用セパレータは、薄型化、リチウムイオン透過性の確保、高温時に安全性を確保する機能などを満足することが求められる。
【0009】
ところで、近年、耐熱性樹脂であるアラミド樹脂を含むセパレータの開発が活発になっている。
例えば、耐熱性樹脂である含窒素芳香族重合体とセラミックス粉末とを含む耐熱層を有するセパレータが提案されている。耐熱層は、繊維、不織布、紙または多孔質フィルムからなる基材の表面に設けられている。提案されている基材の単位面積当たりの重量は、40g/m2以下であり、基材の厚みは70μm以下である(特許文献1参照)。特許文献1では、ポリエチレン製の多孔質フィルムが、基材の一例として開示されている。
【0010】
また、シャットダウン機能を有するセパレータの表面にアラミド樹脂膜を形成することも提案されている(特許文献2参照)。特許文献2には、ポリエチレン製の多孔質フィルム(厚み16μm)と、アラミド樹脂膜(厚み5μm)とを具備するセパレータが開示されている。
【特許文献1】特許第3175730号公報
【特許文献2】特開2004−349146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1および2の提案は、セパレータにシャットダウン機能および耐熱性を付与することにより、優れた安全性を確保できた点で有益である。一方、セパレータの薄型化と、リチウムイオン透過性と、安全性との相関性に関しては、具体的な記載はない。
【0012】
以上を鑑み、本発明は、安全性を損なうことなく、薄くて、耐久性に優れ、非水電解質二次電池の出力特性を低下させないセパレータを提供することを目的とする。また、本発明は、セパレータの構成を最適化することにより、小型化が可能であり、出力特性に優れ、安全性にも優れた、非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、高温時に実質的に無孔性の層となるシャットダウン特性を有する第1多孔質層(A層)と、アラミド樹脂と無機材料とを含む第2多孔質層(B層)とを積層した非水電解質二次電池用セパレータであって、B層の厚み(TB)に対する、A層の厚み(TA)の比率(TA/TB)が、2.5以上、13以下である非水電解質二次電池用セパレータに関する。
【0014】
本発明は、また、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する正極と、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、非水電解質とを具備し、セパレータが、上記の非水電解質二次電池用セパレータである非水電解質二次電池に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薄くても耐久性に優れ、電池の出力特性を低下させず、電池の安全性も確保できるセパレータを提供することができる。本発明によれば、小型化が可能であり、出力特性に優れ、安全性にも優れた、非水電解質二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の非水電解質二次電池用セパレータは、高温時に実質的に無孔性の層となるシャットダウン特性を有する第1多孔質層(A層)と、アラミド樹脂と無機材料を含む第2多孔質層(B層)とを含む。シャットダウン効果を有する多孔質層(A層)と、耐熱性に優れたアラミド樹脂と無機材料とを含む多孔質層(B層)とを積層することにより、耐熱性を含む信頼性に優れたセパレータが得られる。
【0017】
B層の厚み(TB)に対する、A層の厚み(TA)の比率(TA/TB)は、2.5以上、13以下であり、3以上、8以下であることが好ましい。TA/TBを最適化することにより、セパレータを薄型化することができ、リチウムイオンの透過性が確保され、高い出力特性を維持できる。その結果、小型の電池ケースに、正極、負極およびセパレータからなる電極群を、効率よく収納することができる。よって、高容量の非水電解質二次電池が得られる。
【0018】
A層は、熱可塑性樹脂からなる多孔質層であることが好ましい。この場合、A層は、80℃以上、180℃以下の温度、好ましくは110〜140℃の温度で、実質的に無孔性の層となることが好ましい。このようなA層は、優れたシャットダウン特性を有する。なお、実質的に無孔性の層は、5000秒/100ml以上のガーレー値(透気度)を有する。熱可塑性樹脂からなる多孔質層は、例えば、融点が110〜140℃のポリエチレン系樹脂からなる多孔質層であることが好ましい。熱可塑性樹脂にポリエチレンを用いることで、信頼性および安定性に優れたセパレータが得られる。
【0019】
A層の厚みとB層の厚みとの合計(TA+TB)は、11μm以上、22μm以下であることが好ましく、14〜20μmであることが更に好ましい。一般に、セパレータの厚さを大きくすると、安全性などの信頼性は向上する。しかし、非水電解質二次電池の電極群は、一般に、正極と負極とを、これらの間に介在するセパレータとともに捲回して構成される。よって、セパレータの厚さが大き過ぎると、電極群の体積が大きくなり、電池ケースへの収納効率が低下する。また、B層の厚みが大き過ぎると、サイクル特性が低下する場合がある。TA+TBを11〜22μmとすることにより、電極群の収納効率を高く維持でき、充放電サイクルおよび出力特性も良好となる。
【0020】
B層に含まれるアラミド樹脂の含有率は、20重量%以上、45重量%以下であることが好ましく、25〜40重量%であることが更に好ましい。アラミド樹脂の含有率を大きくすれば、セパレータの耐熱性は向上する。しかし、アラミド樹脂の含有率が大き過ぎると、B層におけるリチウムイオンの透過性が低下し、リチウムイオンの移動に対する抵抗が上昇し、出力特性が低下する。一方、アラミド樹脂の含有率を少なくすれば、出力特性は向上する。しかし、アラミド樹脂の含有率が少な過ぎると、セパレータの耐熱性や機械的強度が低下する。B層に含まれるアラミド樹脂の含有率を、20〜45重量%とすることにより、B層におけるリチウムイオンの透過性を低下させることなく、耐熱性に優れたセパレータが得られる。
【0021】
A層の空隙率は、37%以上、48%以下であることが好ましく、39〜47%であることが更に好ましい。空隙率が37%未満になると、A層におけるリチウムイオンの透過性が低下し、出力特性が低下する場合がある。一方、空隙率が48%を超えると、セパレータの機械的強度が低下し、A層内の孔が部分的に変形しやすい。よって、リチウムイオンの透過性が不均一になり、サイクル特性が低下する場合がある。また、空隙率が48%を超えると、シャットダウン特性が低下し、非水電解質二次電池の信頼性などが低下する場合がある。A層の空隙率を37〜48%とすることにより、出力特性を維持しつつ、安全性に優れた信頼性の高い非水電解質二次電池が得られる。
【0022】
本発明の非水電解質二次電池用セパレータは、透気度が、150秒/100ml以上、400秒/100ml以下であることが好ましく、160〜350秒/100mlであることが更に好ましい。セパレータがこのような透気度を有する場合、セパレータにおけるリチウムイオンの透過性を維持しやすく、耐熱性などの信頼性を確保しやすい。
【0023】
本発明の非水電解質二次電池用セパレータは、突刺し強度が、250gf以上であることが好ましく、300gf以上であることが更に好ましい。突刺し強度が250gf以上であるセパレータは、特に機械的強度が高く、信頼性に優れている。
【0024】
本発明は、上記のセパレータを含む非水電解質二次電池を包含する。上記のセパレータを含む非水電解質二次電池は、出力特性に優れ、安全性などの信頼性に優れ、小型化に適している。
【0025】
本発明の非水電解質二次電池は、非水電解質と、正極と、負極と、上記のセパレータとを含んでいる。正極および負極は、例えばシート状または短冊状である。例えばシート状の正極と負極とを、これらの間に介在するセパレータとともに捲回することにより、捲回式の電極群が作製される。また、短冊状の正極と負極とをセパレータを介して積層することにより、積層式の電極群が得られる。電極群を非水電解質とともに各種形状(角型、円筒形など)の電池ケースに収容することにより、非水電解質二次電池が作製される。
【0026】
以下、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、図面の内容に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る角型の非水電解質二次電池の一部を分解した斜視図である。非水電解質二次電池は、正極と負極とを、これらの間に介在するセパレータとともに捲回してなる電極群1を有する。電極群1は、非水電解質(図示せず)とともに角型の電池ケース4に収納されている。電極群1の上部には、電極群1と封口板5とを隔離するとともに、正極リード2または負極リード3と電池ケース4との接触を防止する樹脂製の枠体(図示せず)が配置されている。封口板5には、外部負極端子6と、非水電解質の注液孔とが設けられており、注液孔は封栓8で塞がれている。正極リード2は、封口板5の下面に接続され、負極リード3は、外部負極端子6に接続されている。外部負極端子6は、ガスケット7により封口板5から絶縁されている。
【0027】
次に、本発明の非水電解質二次電池用セパレータの一例に関し、その構造および製造方法について説明する。
図2は、非水電解質二次電池用セパレータの部分断面図である。セパレータ9は、高温時に実質的に無孔性の層となるシャットダウン特性を有する第1多孔質層10(A層)と、A層の表面に設けられた、アラミド樹脂と無機材料とを含む第2多孔質層11(B層)から構成されている。ここで、B層11の厚み(TB)に対するA層10の厚み(TA)の比率(TA/TB)は、2.5以上、13以下に設定されている。
【0028】
A層は、80℃以上、180℃以下の温度で、実質的に無孔性の層となる。A層は、熱可塑性樹脂からなることが好ましく、例えばポリオレフィン系樹脂からなることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)およびエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
ポリオレフィンの中でも、特にポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。ポリエチレン系樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂中のポリエチレン系樹脂の含有率は、60重量%以上、100重量%以下であることが好ましい。
【0029】
A層は、シャットダウン特性を損なわない範囲で、必要に応じて、添加剤を含むことができる。添加剤としては、補強の目的で用いられる無機もしくは有機充填剤、非イオン性の界面活性剤などが挙げられる。A層に含ませる充填剤の量は、熱可塑性樹脂100体積部あたり、例えば15〜85体積部(熱可塑性樹脂100重量部あたり、例えば40〜230重量部)が好適である。
【0030】
例えばポリオレフィンからなるA層には、その熱安定性および加工性を高めるために、延伸助剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、非イオン性界面活性剤などを添加することができる。例えば、脂肪酸エステルや低分子量のポリオレフィン樹脂などが添加剤として用いられる。A層に含ませる添加剤の量は、1重量%以下が好ましい。
【0031】
A層に含ませる無機充填剤としては、電気絶縁性を有する無機材料を広く用いることができる。例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイド、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、ゼオライト、ガラス粉などが好ましい。特に、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、アルミナなどが、粒径の細かいものを得やすく、水分が少ない点で好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
A層に含ませる有機充填剤としては、例えばビニルモノマーの単独重合体や共重合体の粒子もしくは繊維;メラミン樹脂や尿素樹脂などの重縮合樹脂の粒子もしくは繊維などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ビニルモノマーとしては、例えばスチレン、ビニルケトン、アクリルニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0033】
B層は、アラミド樹脂と無機材料とを含む。
アラミド樹脂としては、例えばパラ配向性の芳香族ポリアミド(以下、「パラアラミド」と記す)、メタ配向性の芳香族ポリアミド(以下、「メタアラミド」と記す)などが挙げられる。特に、機械的強度が高く、多孔質になりやすい点で、パラアラミドが好ましい。パラアラミドは、例えばパラ位にアミノ基を有する芳香族ジアミンと、パラ位にアシル基を有する芳香族ジカルボン酸ハライドとの縮合重合により得られる。よって、パラアラミドにおいては、芳香環のパラ位またはそれに準じた位置にアミド結合が存在する。パラアラミドは、例えば4、4’−ビフェニレン基、1,5−ナフタレン基、2、6−ナフタレン基などの繰り返し単位を有する。
【0034】
パラアラミドの具体的としては、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレンー4、4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2、6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
無機材料としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、酸化ジルコニウムなどが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機材料の平均粒径は、例えば0.01〜1μmが好適である。
B層に含ませる無機材料の量は、アラミド樹脂100重量部あたり、120〜400重量部が好ましく、150〜300重量部が特に好ましい。
【0036】
A層およびB層の作製時には、多孔質な構造を得るために、造孔剤を用いることができる。造孔剤は、A層またはB層の原料シートを延伸した後、水洗などで除去できるものが好ましい。造孔剤は、中性、酸性またはアルカリ性の水溶液で除去できるように、水溶性であることが好ましい。
【0037】
次に、A層およびB層の製造方法の一例について説明する。
(i)第1多孔質層(A層)
ポリエチレン、充填剤、必要な添加剤(例えば非イオン性の界面活性剤)などを、双ロール、バンバリーミキサ、1軸押出し機など、既存の混合装置を用いて混合する。得られた混合物をインフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ押出し加工など、既存のフィルム形成法によって所望の厚みのシートに成形する。得られたシートは、一軸または二軸延伸などで延伸することが好ましい。
【0038】
(ii)第2多孔質層(B層)
パラアラミド樹脂は、極性有機溶媒に溶解する。そこで、パラアラミド樹脂を溶媒に溶解し、塗布に好適な低粘度のパラアラミド溶液を調製する。次に、得られた樹脂溶液を、無機材料と混合し、B層の原料スラリーを調製する。
【0039】
B層の原料スラリーは、A層の表面に塗布するのに適した粘度に制御することが好ましい。B層のパラアラミド樹脂の固有粘度は、例えば1.0dl/g〜2.8dl/gが好ましく、1.7dl/g〜2.5dl/gが更に好ましい。固有粘度が1.0dl/g未満になると、十分な強度のB層が得られない場合がある。一方、固有粘度が2.8dl/gを超えると、パラアラミド溶液が不安定になり、フィルム形成が困難になる場合がある。
本発明において、パラアラミドの固有粘度は、次の方法で測定する。まず、濃度96〜98重量%の濃硫酸100mlに、パラアラミド樹脂0.5gを溶解し、パラアラミド樹脂と濃硫酸との混合溶液を調製する。得られた混合溶液と、濃度96〜98重量%の濃硫酸について、それぞれウベローデ型毛細管粘度計により、30℃で流動時間を測定する。求められた流動時間の比から、次式により、固有粘度が求められる。
固有粘度=ln(T/T0)/C 〔単位:dl/g〕
ここで、Tはパラアラミド樹脂と濃硫酸との混合溶液の流動時間であり、T0は濃度96〜98重量%の濃硫酸の流動時間であり、Cはパラアラミド樹脂と濃硫酸との混合溶液中のパラアラミド樹脂の濃度(g/dl)を示す。
【0040】
パラアラミド樹脂を溶解させる極性有機溶媒としては、極性アミド系溶媒もしくは極性尿素系溶媒が挙げられる。具体的には、N、N−ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル2−ピロリドン、テトラメチルウレアなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
B層の原料スラリーは、A層の表面に、所望の厚みで塗布する。このとき、無機材料がアラミド樹脂と絡まり合い、無機材料はアラミド樹脂中に均一に分散される。原料スラリーに含まれるアラミド樹脂と無機材料との合計に占めるアラミド樹脂の含有率は、20重量%以上、45重量%以下が好ましく、30重量%以上、40重量%以下が更に好ましい。アラミド樹脂の含有率が50重量%を超えると、B層におけるリチウムイオンの透過率が低下する場合がある。その結果、必要な電池の出力特性が得られない場合がある。アラミド樹脂の含有率が20重量%未満になると、B層の強度が低下する場合がある。
【0042】
正極は、正極活物質およびこれを担持する正極集電体を含む。シート状の正極は、帯状の正極集電体およびその両面に担持された正極合剤層からなる。正極活物質には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能であり、かつ安定な電位を示す材料が好ましく用いられる。
【0043】
正極集電体には、アルミニウム(Al)などからなる金属箔、炭素薄膜、導電性樹脂の薄膜などが利用可能である。正極集電体は、カーボンなどで表面処理してもよい。
【0044】
正極合剤層は、正極活物質を必須成分として含む。正極活物質には、例えばLiCoO2、LiNiO2、Li2MnO4、LiMn24などのリチウム含有複合酸化物が用いられる。これらリチウム含有複合酸化物の遷移金属の一部を異種元素で置換してもよい。また、一般式:LiMPO4(M=V、Fe、Ni、Mn)で表されるオリビン型リン酸リチウム、一般式:Li2MPO4F(M=V、Fe、Ni、Mn)で表されるフルオロリン酸リチウムなども利用可能である。正極活物質は、金属酸化物、リチウム酸化物、導電剤などで表面処理してもよく、表面を疎水化処理してもよい。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
正極合剤層は、様々な任意成分を含むことができる。正極合剤層は、例えば導電剤と正極結着剤とを含む。
導電剤としては、各種天然黒鉛および各種人造黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;アルミニウムなどの金属粉末類;酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;フェニレン誘導体などの有機導電性材料などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
正極結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFの変性体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、SBRの変性体、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンなどから選択される2種以上の共重合体を用いてもよい。正極結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
負極は、負極活物質およびこれを担持する負極集電体を含む。例えば、シート状の負極は、帯状の負極集電体およびその両面に担持された負極合剤層からなる。負極活物質には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能であり、かつ安定な電位を示す材料が好ましく用いられる。
【0048】
負極集電体には、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタンなどからなる金属箔、炭素薄膜、導電性樹脂の薄膜などが利用可能である。負極集電体は、カーボン、ニッケル、チタンなどで表面処理を施してもよい。
【0049】
負極合剤層は、負極活物質を必須成分として含む。負極活物質には、各種天然黒鉛および各種人造黒鉛;シリコン系複合材料(シリサイドなど);スズ、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムなどから選ばれる少なくとも1種を含むリチウム合金;リチウムと反応する各種合金材料などを用いることができる。
【0050】
負極合剤層は、様々な任意成分を含むことができる。例えば、負極結着剤として、正極結着剤として例示したものを任意に選択して用いることができる。特に、過充電時の電池の安全性を向上させる観点から、SBRの変性体を負極結着剤に用いることが好ましい。なお、SBRおよびSBRの変性体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース系樹脂と併用することが好ましい。
【0051】
非水電解質は、非水溶媒およびこれに溶解したリチウム塩からなることが好ましい。非水電解質の材料は、活物質の酸化還元電位などを考慮して選択される。
【0052】
好ましいリチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiN(CF3CO2)、LiN(CF3SO22、LiAsF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム、(CF3SO22NLi、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、(C25SO22NLi、テトラフェニルホウ酸リチウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
リチウム塩を溶解させる非水溶媒には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシメタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、トリメトキシメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのテトラヒドロフラン誘導体、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどのジオキソラン誘導体、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、スルホラン、3−メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、エチルエーテル、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、フルオロベンゼンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
非水電解質は、更に、ビニレンカーボネート(VC)、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、ジアリルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、酢酸ビニル、エチレンサルファイト、プロパンサルトン、トリフルオロプロピレンカーボネート、ジベニゾフラン、2,4−ジフルオロアニソール、0−ターフェニル、m−ターフェニルなどの添加剤を含んでもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
非水電解質を高分子に保持させることにより非流動化させたポリマー電解質も適用可能である。非水電解質を保持させる高分子には、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
また、リチウム窒化物、リチウムハロゲン化物、リチウム酸素酸塩、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、Li3PO4−Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4−Li2S−SiS2、硫化リン化合物など、無機材料を固体電解質として用いてもよい。
【0057】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されない。
[実施例]
(i)正極の作製
硫酸コバルトを0.20mol/Lの濃度で含み、かつ硫酸ニッケルを0.80mol/Lの濃度で含む水溶液を反応槽に連続供給した。その水溶液のpHが10〜13になるように、反応槽に水酸化ナトリウムを滴下することにより、Ni0.80Co0.20(OH)2を合成した。その後、この水酸化物を十分に水洗し、乾燥させて、正極活物質の前駆体とした。得られた前駆体と、炭酸リチウムとを、リチウムとニッケルとコバルトとのモル比が1.02:0.80:0.20になるように混合した。その混合物を、600℃で10時間、仮焼成し、粉砕した。粉砕された焼成物を、900℃で再度10時間焼成した後、粉砕して分級し、式:Li1.02Ni0.80Co0.202で表されるリチウム含有複合酸化物を得た。
【0058】
得られたリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質(平均粒径12μm)1kgを、呉羽化学(株)製の#1320(PVDFを12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液)0.5kg、アセチレンブラック40g、および適量のNMPとともに双腕式練合機を用いて、30℃で30分間攪拌し、正極合剤ペーストを調製した。
【0059】
得られた正極合剤ペーストを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、120℃で15分間乾燥させた。その後、総厚が160μmとなるように、正極合剤を担持した正極集電体を圧延した。得られた極板を、高さ50mm、幅34mm、厚み5mmの角型の電池ケースに挿入可能な幅に切断して正極を得た。正極には、所定の正極リードを接続した。
【0060】
(ii)負極の作製
人造黒鉛3kgを、日本ゼオン(株)製のBM−400B(変性スチレン−ブタジエンゴムを40重量%含む水性分散液)200g、カルボキシメチルセルロース(CMC)50g、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤ペーストを調製した。
【0061】
得られた負極合剤ペーストを、負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥させた。その後、総厚が160μmとなるように、負極合剤を担持した負極集電体を圧延した。得られた極板を、高さ50mm、幅34mm、厚み5mmの角形の電池ケースに挿入可能な幅に切断して負極を得た。負極には、所定の負極リードを接続した。
【0062】
(iii)セパレータの作製
(A層の作製)
熱可塑性樹脂である超高分子量ポリエチレン樹脂(重量平均分子量300万、融点136℃)100重量部と、熱可塑性樹脂であるオレフィン系ワックス粉末44重量部(重量平均分子量1000、融点110℃)と、炭酸カルシウム(平均粒径0.20μm)256重量部とを、ヘンシェルミキサで混合した。その後、2軸混練機で混練してポリオレフィン系樹脂組成物を得た。
【0063】
得られたポリオレフィン系樹脂組成物を、ロールで圧延し、シート状に成形した。次に、得られたポリエチレン製シート(PEシート)を、塩酸水溶液の入った浴槽に浸漬して、炭酸カルシウムを溶解させて除去した。その後、PEシートを水洗し、乾燥させた。乾燥したPEシートをテンター延伸機で延伸して、多孔質なポリエチレンフィルム(A層)を得た。
【0064】
ポリオレフィン系樹脂組成物のロール圧延時におけるロール温度を149℃〜152℃、圧延後の厚みを70μm〜80μmの範囲に設定し、さらにテンター延伸時の温度を100℃〜110℃の範囲に設定し、表1A、2A、3A、4Aおよび5Aに示すような、厚み、空隙率、透気度および突刺し強度を有する様々なA層を得た。
なお、一辺の長さが10cmである正方形のA層のサンプルを2枚切り取り、80℃および180℃の恒温槽にそれぞれ1分間投入した。その後、ガーレー値を測定したところ、80℃の恒温槽に投入したサンプルでは、ガーレー値に変化はほとんどなかった。一方、180℃の恒温槽に投入したサンプルでは、ガーレー値が5000(秒/100ml)以上に変化した。これより、A層は80〜180℃で実質的に無孔性になることを確認した。
【0065】
(B層の作製)
NMP4200gに塩化カルシウム272.65gを溶解した後、パラフェニレンジアミン132.91gを添加して完全に溶解させた。得られた溶液に、テレフタル酸ジクロライド(以下、TPCと略す)243.32gを徐々に添加してパラアラミドを重合させ、さらにNMPで希釈して、濃度2.0重量%のパラアラミド溶液を得た。なお、得られたパラアラミド溶液からパラアラミド樹脂を分離し、その固有粘度を求めたところ、2.01dl/gであった。
【0066】
得られたパラアラミド溶液に、アルミナ粉末(平均粒子径0.16μm)を添加し、分散させ、様々なアラミド樹脂の含有率を有するB層の原料スラリーを調製した。ここでは、アラミド樹脂とアルミナ粉末との合計に占めるアラミド樹脂の含有率を16重量%、20重量%、33重量%、45重量%または50重量%となるように変化させた。
【0067】
次に、ポリエチレンフィルム(A層)の片面に、所定量のB層の原料スラリーを塗布し、温度60℃、湿度70%の雰囲気で、アラミド樹脂を析出させた。その後、析出したアラミド樹脂を水洗し、乾燥させた。その結果、A層およびA層の片面に形成されたB層からなり、B層がアラミド樹脂とアルミナ粉末とを含むセパレータが得られた。
【0068】
アラミド樹脂の含有率が異なるB層の原料スラリーを用いるとともに、A層への塗布量を調整することにより、表1A、2A、3A、4Aおよび5Aに示すような、アラミド含有率および厚みを有する様々なB層を形成し、様々なセパレータを得た。
【0069】
(iv)電池の作製
上記のようにして作製した正極、負極およびセパレータを用いて、図1に示すような角型の非水電解質二次電池を作製した。
まず、負極1と正極2とを、これらの間にセパレータ3を介在させて捲回し、断面が略楕円形の電極群4を構成した。なお、同じ電極群をそれぞれ30個ずつ作製した。次に、封口板6と正極リード7とを導通させ、ガスケットで囲まれた状態で封口板6に設けられた外部負極端子10と負極リードとを導通させた。その後、封口板6と電池ケース5の開口端とを溶接した。その後、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒にLiPF6を1モル/Lの濃度で溶解させた非水電解質を、封口板6に設けられた注液孔から注液した。最後に、注液孔に封栓8を差し込み、溶接により注液孔を塞いだ。このようにして、高さ50mm、幅34mm、厚み5mmの角型電池を作製した。電池の設計容量は1000mAhとした。
【0070】
(v)評価
上記のように作製したセパレータおよび角型の非水電解質二次電池に対し、以下の評価を行った。
(セパレータの評価)
(1)A層およびB層の厚み
厚みは、JIS規格K7130−1992による方法に準じて測定した。
【0071】
(2)A層の空隙率
A層を、一辺の長さが10cmの正方形に切り取り、重量W(g)と厚みT(cm)とを測定した。次に、A層の真比重D(g/cm3)の値を用いて、次式より、空隙率(%)を求めた。
空隙率(%)=100×{1−(W/D)/(100×T)}
【0072】
(3)透気度
セパレータのガーレー値(秒/100ml)を、JIS規格P8117による方法に準じて、B型デンソメーター((株)東洋精機製作所)を用いて測定した。
【0073】
(4)突刺し強度
セパレータをφ12mmのワッシャで固定し、固定されたセパレータに、ピンを200mm/分の速度で突刺し、その際の最大応力(gf)を突刺し強度として求めた。ピンの形状は、ピン径φ1mm、先端0.5Rとした。
【0074】
(電池の評価)
(1)初期容量
以下の評価を行う前に、作製された電池を20℃の環境に置き、設計容量を基準にして0.1Cの定電流で4.2Vに到達するまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で5時間充電した。その後、0.1Cの定電流で放電し、常温における初期容量(C0)を測定した。
得られた初期容量を基準にして、下記の要領で、低温レート特性、サイクル特性、加熱試験およびリーク不良を評価した。
【0075】
(2)低温レート特性
電池を20℃の環境に置き、設計容量を基準にして0.1Cの定電流で4.2Vに到達するまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で5時間充電した。次に、充電状態の電池を−10℃の環境に60分間放置後、1C(1000mA)の電流で放電を行った。得られた放電容量の、初期容量(C0)に対する割合を、容量維持率(%)として求めた。
【0076】
(3)サイクル特性
20℃環境温度で、以下の条件で電池の充放電を繰り返した。
まず、1.0Aの定電流で、電池電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、4.2Vの定電圧で、50mAの電流値に低下するまで充電した。充電後の電池は30分間休止させた。その後、0.2Aの電流値で、電池電圧が3.0Vに低下するまで定電流で放電した。放電後の電池は30分間休止させた。この充放電を1サイクルとして、放電容量が初期容量(C0)の50%になるまで、充放電サイクルを繰り返した。その時のサイクル数を50%維持サイクル数として求めた。
【0077】
(4)加熱試験
電池を加熱槽に設置し、加熱槽を5℃/分の昇温速度で140℃まで上昇させ、その状態で10分間放置した。その後、電池の温度をモニタし、電池温度が到達した最高温度を測定した。
【0078】
(5)リーク不良
電極群に対して、直流電圧250Vを印加した際、10mA以上の電流量が通電した場合をリークセルと見なした。30個中、3個以上のリークセルが発生した場合をリーク不良発生と判断した。
【0079】
(vi)評価結果
[評価1]
表1Aに示すように、セパレータの厚みを16μmで固定し、B層の厚みに対するA層の厚みの比率を変えたときの評価結果を表1Bに示す。なお、サンプル1〜3は実施例、サンプルC1およびC2は比較例である。
【0080】
【表1A】

【0081】
【表1B】

【0082】
表1Aおよび1Bに示すように、セパレータの厚みが16μmの場合、B層の厚みに対するA層の厚みの比率が、2.5以上、13以下の範囲で、低温レート特性、50%維持サイクル数および加熱試験で、良好な結果が得られた。また、リーク不良も観測されなかった。
【0083】
サンプルC1(B層の厚みに対するA層の厚みの比率が2.0)では、低温レート特性が低く、50%維持サイクル数が少なかった。これは、B層が相対的に厚くなるため、リチウムイオンの透過性が低下し、抵抗が増加したためと考えられる。
【0084】
サンプルC2(B層の厚みに対するA層の厚みの比率が13.5)では、低温レート特性および50%維持サイクル数は、サンプル4と同程度であった。しかし、サンプルC4の加熱試験における最高温度は、サンプル1〜4に比べて、20℃程度も高かった。B層が薄いため、耐熱性が低下したと考えられる。
【0085】
[評価2]
表2Aに示すように、B層の厚みに対するA層の厚みの比率を4.3で固定し、A層の厚みとB層の厚みとの合計を変えたときの評価結果を表2Bに示す。
【0086】
【表2A】

【0087】
【表2B】

【0088】
表2Aおよび2Bに示すように、B層の厚みに対するA層の厚みの比率が4.3であり、B層に含まれるアラミド樹脂の含有率が33重量%の場合、A層の厚みとB層の厚みとの合計が11〜22μmであるサンプル2、5および6では、低温レート特性、50%維持サイクル数および加熱試験で、良好な結果が得られた。また、リーク不良も観測されなかった。なお、サンプル2、5および6を比較すると、A層の厚みとB層の厚みとの合計が大きくなるにしたがい、若干低温レート特性および50%維持サイクル数が低下する傾向があった。これは、セパレータが厚くなるにしたがって、リチウムイオンの透過性が低下し、抵抗が増加したためである。
【0089】
サンプルC3(セパレータの厚みが8μm)の場合、低温レート特性および50%維持サイクル数は、サンプル5と同程度であった。しかし、加熱試験では、耐熱性の低下が見られ、リーク不良も観測された。これは、セパレータが薄いため、絶縁性、耐圧および耐熱性が低下したためである。
【0090】
サンプルC4(セパレータの厚みが23μm)の場合、加熱試験およびリーク不良の結果は、サンプル6と同程度であった。しかし、低温レート特性が低下し、50%維持サイクル数も減少した。これは、セパレータのリチウムイオンの透過性が低下し、抵抗が増加したためである。
【0091】
[評価3]
表3Aに示すように、A層の厚みとB層の厚みを固定し、B層に含まれるアラミド樹脂の含有率を変えたときの評価結果を表3Bに示す。
【0092】
【表3A】

【0093】
【表3B】

【0094】
表3Aおよび3Bに示すように、B層の厚みに対するA層の厚みの比率が4.3であり、セパレータの厚みが16μmであり、アラミド樹脂の含有率が20〜45重量%であるサンプル2、7および8では、低温レート特性、50%維持サイクル数および加熱試験で、良好な結果が得られた。また、リーク不良も観測されなかった。なお、サンプル2、7および8を比較すると、アラミド樹脂の含有率が増加するにしたがい、若干低温レート特性が低下し、50%維持サイクル数が減少する傾向があった。これは、アラミド樹脂の含有率が増加するにしたがい、B層におけるリチウムイオンの透過性が低下し、抵抗が増加したためである。
【0095】
サンプルC5(アラミド樹脂の含有率が16重量%)の場合、低温レート特性および50%維持サイクル数は、サンプル7と同程度であった。しかし、加熱試験では最高温度の上昇が観測された。これは、B層に含まれるアラミド樹脂の含有率が少ないため、B層の耐熱性が低下したためである。
【0096】
サンプルC6(アラミド樹脂の含有率が50重量%)の場合、加熱試験の結果は、サンプル8と同程度であり、リーク不良も観測されなかった。しかし、低温レート特性が低下し、50%維持サイクル数も減少した。これは、B層におけるリチウムイオンの透過性が低下し、抵抗が増加したためである。
【0097】
[評価4]
表4Aに示すように、A層の厚みとB層の厚みを固定し、B層に含まれるアラミド樹脂の含有率を固定し、A層の空隙率およびセパレータの透気度を変えたときの評価結果を表4Bに示す。
【0098】
【表4A】

【0099】
【表4B】

【0100】
表4Aおよび4Bに示すように、B層の厚みに対するA層の厚みの比率が4.3であり、セパレータの厚みが16μmであり、B層に含まれるアラミド樹脂の含有率が33重量%であり、A層の空隙率が37〜48%(セパレータの透気度が150秒/100ml〜400秒/100ml)であるサンプル2、9および10では、低温レート特性、50%維持サイクル数および加熱試験で、良好な結果が得られた。また、リーク不良も観測されなかった。なお、サンプル2、9および10を比較すると、A層の空隙率が増加する(セパレータの透気度の値が小さくなる)にしたがい、若干低温レート特性が向上し、50%維持サイクル数が増加する傾向があった。これは、A層の空隙率が増加するにしたがい、A層におけるリチウムイオンの透過性が増加し、抵抗が減少したためである。
【0101】
サンプルC7(A層の空隙率が35%、セパレータの透気度が450秒/100ml)の場合、加熱試験の結果は、サンプル9と同程度であり、リーク不良も観測されなかった。しかし、低温レート特性が低下し、50%維持サイクル数は減少した。これは、A層におけるリチウムイオンの透過性が低下し、抵抗が増加したためである。
【0102】
サンプルC8(A層の空隙率が50%、セパレータの透気度が120秒/100ml)の場合、低温レート特性および50%維持サイクル数は、サンプル10と同程度であった。しかし、リーク不良が観測された。これは、A層の空隙率が高いため、セパレータの絶縁性および耐圧が低下したためである。
【0103】
[評価5]
表5Aに示すように、A層の厚みとB層の厚みを固定し、B層に含まれるアラミド樹脂の含有率を固定し、セパレータの突刺し強度を変えたときの評価結果を表5Bに示す。なお、突刺し強度は、A層の作製時におけるロール温度および延伸時の温度を制御することにより変化させた。
【0104】
【表5A】

【0105】
【表5B】

【0106】
表5Aおよび5Bに示すように、B層の厚みに対するA層の厚みの比率が4.3であり、セパレータの厚みが16μmであり、B層に含まれるアラミド樹脂の含有率が33重量%であり、セパレータの突刺し強度が250gf以上であるサンプル2、11、12および13では、低温レート特性、50%維持サイクル数および加熱試験で、良好な結果が得られた。また、リーク不良も観測されなかった。
【0107】
サンプルC9(セパレータの突刺し強度が200gf)の場合、低温レート特性および50%維持サイクル数は、サンプル11と同程度であった。しかし、リーク不良が観測された。これは、セパレータの絶縁性および耐圧が低下したためである。
【0108】
上記実施例では、電極を捲回した電極群を有する角型の非水電解質二次電池について説明したが、本発明を適用できる電池の形状は、角型に限定されない。例えば、円筒電池、平型電池、コイン型電池、ラミネート型電池にも本発明を適用することができる。また、上記実施例では、小型機器用の電池について検討したが、本発明は、電気自動車用電源、電力貯蔵など、大型の大容量電池にも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、様々な非水電解質二次電池に利用可能であり、特に、優れた出力特性と安全性が要求される小型機器用の非水電解質二次電池において有用である。例えば角型電池、円筒電池、平型電池、コイン型電池、ラミネート型電池などに、本発明を適用することができる。ただし、本発明は、電気自動車用電源、大型の電力貯蔵装置などにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の非水電解質二次電池の一例の一部を切り欠いた斜視図である。
【図2】本発明の非水電解質二次電池用セパレータの部分断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1 電極群
4 電池ケース
5 封口板
2 正極リード
3 負極リード
6 外部負極端子
8 封栓
7 ガスケット
9 セパレータ
10 第1多孔質層(A層)
11 第2多孔質層(B層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温時に実質的に無孔性の層となるシャットダウン特性を有する第1多孔質層(A層)と、アラミド樹脂と無機材料とを含む第2多孔質層(B層)とを積層した非水電解質二次電池用セパレータであって、
前記B層の厚み(TB)に対する、前記A層の厚み(TA)の比率(TA/TB)が、2.5以上、13以下である、非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記A層が、熱可塑性樹脂からなる多孔質層であり、80℃以上、180℃以下の温度で実質的に無孔性の層となる、請求項1記載の非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記A層が、ポリエチレンからなる多孔質層である、請求項1または2記載の非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記A層の厚みと前記B層の厚みとの合計(TA+TB)が、11μm以上、22μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記B層に含まれる前記アラミド樹脂の含有率が、20重量%以上、45重量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記A層の空隙率が、37%以上、48%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項7】
透気度が、150秒/100ml以上、400秒/100ml以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項8】
突刺し強度が、250gf以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解質二次電池用セパレータ。
【請求項9】
リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する正極と、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出する負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、非水電解質とを具備し、前記セパレータが、請求項1〜8のいずれかに記載の非水電解質二次電池用セパレータである、非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−299612(P2007−299612A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126211(P2006−126211)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】