説明

非水電解質二次電池

【課題】高出力電池の釘刺し安全性を高める。
【解決手段】第1電極芯体に第1活物質層が形成されてなる第1電極と、第2電極芯体に第2活物質層が形成されてなる第2電極と、セパレータと、が巻回されてなる巻回電極体を備える非水電解質二次電池において、前記巻回電極体における前記第1電極の最外周には、前記第1活物質層が形成されていない第1電極芯体露出部が配され、前記巻回電極体における前記第2電極の最外周には、前記第2活物質層が形成されていない第2電極芯体露出部が配され、前記第1電極の最外周に位置する前記第1電極芯体露出部の厚みは、前記第1活物質層が形成された部分の前記第1電極芯体の厚みよりも厚いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関し、より詳しくは非水電解質二次電池の安全性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン等の移動情報端末の高機能化・小型化および軽量化が急速に進展しており、その駆動電源として、高いエネルギー密度を有し、高容量である非水電解質二次電池が広く利用されている。また、非水電解質二次電池は、電動工具等の大電流を必要とする用途にも使用されるようになっている。
【0003】
正負電極をセパレータを介して渦巻状に巻回してなる巻回電極体は、正負電極の対向面積が大きいため、大電流を取り出し易い。よって、巻回電極体を用いてなる電池は、高出力機器の駆動電源として使用されている。
【0004】
ところで、非水電解質二次電池は、可燃性の有機溶媒を使用しており、釘刺しのような異常状態に陥った場合においても発火や破裂に至らない高い安全性が求められている。
【0005】
ここで、非水電解質二次電池の安全性向上に関する技術としては、下記特許文献1,2が挙げられる。また、電極体の電池ケースへの挿入性を高める技術としては、特許文献3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-176478号公報
【特許文献2】特開平09-180761号公報
【特許文献3】特開平10-050346号公報
【0007】
特許文献1は、金属箔からなる集電体に活物質膜を形成してなる正負電極を、セパレータを介して巻回した巻回電極体において、巻回電極体における正負電極それぞれの少なくとも最外周部に活物質膜を形成していない集電体のみの部分を設け、上記部分の正負電極をセパレータを介して配置する技術である。この技術によると、釘刺し試験においても充分な安全性が確保できるとされる。
【0008】
特許文献2は、帯状の正負集電体の表面に活物質を塗布してなる正負電極シートがセパレータを介して積層されてスパイラル状に捲回されてなる電極群において、負極シートはその捲回終端部に無塗布部を備え、捲回によって負極シートの無塗布部がセパレータを介して正極シートと相互に対向しながら電極群の外周を周回させる技術である。この技術によると、電池外面に圧力が加わり内部の電極群が潰された場合に、発火や発煙などを防止できるとされる。
【0009】
特許文献3は、金属箔あるいは金属板を基体とする極板を、極性の異なる極板同士が直接接触しないように積層した電池において、積層体の積層方向端部に位置する極板の基体厚みをその他の部分に位置する極板の基体厚みよりも厚くする技術である。この技術によると、電池容器への極板群挿入工程において、極板の折れや切れを大幅に低減できるとされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、上記特許文献1、2にかかる技術について鋭意研究を行った結果、上記特許文献1、2にかかる技術は釘刺し試験時の安全性がいまだ十分ではないことを知った。これを、以下に詳細に説明する。
【0011】
特許文献1、2にかかる技術では、電極体の最外周には、正負電極の活物質層が形成されていない芯体露出部が巻回されており、釘刺し時には芯体露出部相互が最初に接触して短絡する。芯体露出部は活物質層よりも抵抗が低いので、小さい抵抗発熱で最初の短絡電流が流れる。そして、当該最初の短絡電流によって電池出力が下がるので、その後の活物質層間での短絡では大きな電流が流れなくなり、活物質層間での短絡による抵抗発熱も小さくなる。高温条件では活物質と非水電解質とが反応し易くなるが、特許文献1、2にかかる技術によると、電解液と正負活物質とが高温条件で急激に反応することを防止できる。
【0012】
しかしながら、高出力電池においては、特許文献1、2にかかる技術を採用しても、芯体露出部相互間で短絡して最初に流れる電流が大きくなるため、短絡電流による抵抗発熱が大きくなる。このため、電解液と正負活物質とが急激に反応し易くなり、安全性が不十分となる。
【0013】
本発明は、上記に鑑み完成されたものであって、高い安全性と高い出力とを兼ね備えた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、第1電極芯体に第1活物質層が形成されてなる第1電極と、第2電極芯体に第2活物質層が形成されてなる第2電極と、セパレータと、が巻回されてなる巻回電極体を備える非水電解質二次電池において、前記巻回電極体における前記第1電極の最外周には、前記第1活物質層が形成されていない第1電極芯体露出部が配され、前記巻回電極体における前記第2電極の最外周には、前記第2活物質層が形成されていない第2電極芯体露出部が配され、前記第1電極の最外周に位置する前記第1電極芯体露出部の厚みは、前記第1活物質層が形成された部分の前記第1電極芯体の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0015】
この構成では、釘刺し試験時に電極体の最外周に巻回された第1電極及び第2電極の芯体露出部相互が最初に接触して短絡するが、このうち第1電極芯体露出部の厚みが増されているので、第1電極芯体露出部の導電性が高まり(抵抗が小さくなり)、抵抗発熱が減少する。これにより、高温条件で活物質と電解液とが反応することが抑制されるので、電池の安全性が高まる。
【0016】
ここで、第1電極は正極であってもよく、負極であってもよい。
【0017】
上記構成において、前記第1電極芯体露出部は、前記巻回電極体を一周以上覆っており、前記第2電極芯体露出部は、前記巻回電極体を一周以上覆っている構成とすることができる。
【0018】
この構成では、第1電極芯体露出部及び第2電極芯体露出部が巻回電極体を一周以上覆っているため、釘刺し試験時に最初に短絡が生じる場所を、確実に第1電極芯体露出部と第2電極芯体露出部との間とすることができる。
【0019】
なお、芯体露出部は活物質を有しておらず、充放電反応に寄与しないので、芯体露出部の長さを長くしすぎると、エネルギー密度を低下させる。このため、第1電極芯体露出部及び第2電極芯体露出部が巻回電極体を覆う長さは、二周以下であることが好ましい。
【0020】
電池の安全性をより高めるためには、第2電極側もまた、最外周に位置する芯体露出部の厚みを、活物質層が形成された部分の芯体の厚みよりも厚くすることが好ましい。
【0021】
本発明の効果をより効果的に得るためには、第1電極の最外周に位置する第1電極芯体露出部の厚みを、第1活物質層が形成された部分の第1電極芯体の厚みよりも10%以上厚くし、第2電極の最外周に位置する第2電極芯体露出部の厚みを、第2活物質層が形成された部分の第2電極芯体の厚みよりも10%以上厚くする。
【0022】
電極芯体露出部の厚みを増す方法としては、芯体露出部長さを長くして折り重ねる、芯体と同一ないしは同質材料からなる芯体補強部材を芯体露出部に重ね合わせる等の方法を採用できる。なお、同質材料とは、電極芯体と芯体補強部材とが、同一の純金属を主体とする異なる合金である場合や、一方が純金属で他方が当該純金属を主体とする合金である場合を意味する。
【0023】
なお、第1電極芯体露出部、第2電極芯体露出部も過度に厚みを増すと電池のエネルギー密度が低下することに加えて、巻回電極体の直径が外装缶内径に対して大きくなり、巻回電極体を外装缶に挿入しにくくなる。したがって、第1電極芯体露出部や第2電極芯体露出部の厚み増分は、巻回電極体の直径が外装缶内径より小さくなるように設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、釘刺しのような外部衝撃に起因する内部短絡時の安全性を顕著に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明にかかる電池の断面部分解体斜視図である。
【図2】図2は、本発明に用いる正負電極の基本構造を示す図である。
【図3】図3は、実施例1に用いる正負電極を示す図である。
【図4】図4は、実施例4に用いる正負電極を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係る電池に用いる巻回電極体において、巻回外側における正極、負極及びセパレータの重なり合い状態を説明する図である。
【図6】図6は、比較例2に用いる正負電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態)
本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。図1は、本発明にかかる電池の断面部分解体斜視図である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態に係る非水電解質二次電池は、有底円筒状の外装缶1を有しており、この外装缶1内には、正極3と、負極4と、これら両電極3・4を離間するセパレータ5と、が渦巻状に巻回された巻回電極体2が収納されている。さらに、上記外装缶1内には、非水溶媒に、電解質塩が溶解された電解液が注入されている。また、上記外装缶1の開口部には、絶縁性の外部ガスケット13aを介して、封口体6がかしめ固定されて電池が密閉されている。
【0028】
ここで、封口体6は、端子板9と、防爆弁8と、絶縁板14と、端子キャップ7と、を有しており、絶縁性の内部ガスケット13bを介して、上記端子板9と、防爆弁8と、絶縁板14と、端子キャップ7と、がかしめ固定されている。この防爆弁8は、通常状態では、端子板9と電気的に接続されており、内部短絡等の異常時に電池内圧が所定値以上になった場合には、電池内圧により端子板9から離れて、端子キャップ7への通電が遮断される。
【0029】
また、外装缶1には、負極4と電気的に接続された負極集電タブ11が接続され、封口体6の端子板9には正極3と電気的に接続された正極集電タブ10が接続されている。これにより、外装缶1が負極外部端子として機能し、封口体6が正極外部端子として機能する。更に、電極体2の上端部近傍には、電池内でのショートを防止するための絶縁板15が配置されている。
【0030】
また、本発明にかかる電池に用いる巻回電極体2に用いる正極3は、正極芯体に正極活物質層3aが形成されており、且つ正極活物質層3aが形成されておらず正極芯体が露出した正極芯体露出部3b,3cを有している(図2(a)参照)。また、負極4は、負極芯体に負極活物質層4aが形成されており、且つ負極活物質層4aが形成されておらず負極芯体が露出した負極芯体露出部4bを有している(図2(b)参照)。そして、巻回電極体2は、正極芯体露出部3b及び負極芯体露出部4bが最外周(巻回終端)となるように渦巻状に巻回されてなる。また、正極芯体露出部3cには正極集電タブ10が、負極芯体露出部4bには負極集電タブ11が、それぞれ取り付けられている(図2(a),(b)参照)。
【0031】
また、巻回電極体の最外周に巻回された、活物質が塗布されていない正極芯体露出部3b及び負極芯体露出部4bの厚みが、正負活物質層3a,4aが形成された部分の正極芯体及び負極芯体よりも、それぞれ厚くなっている。
【0032】
次に、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0033】
(実施例1)
〈正極の作製〉
正極活物質としての平均粒径が5μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2)85.5質量部と、導電剤としてのアセチレンブラック9.5質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン5質量部と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、を混合して正極活物質スラリーを調製した。
【0034】
このスラリーを、ドクターブレード法により、正極芯体としてのアルミニウム箔(厚み:15μm)の両面であって正極芯体露出部3b、3cとなる部分以外に塗布して正極活物質層3a及び正極芯体露出部3b、3cを形成した。この後、正極活物質層3aを加熱することでNMPを蒸発させて取り除いた。その後圧縮ローラーで圧縮した後裁断し、正極集電タブ10を取り付けて、帯状の正極3を作製した。なお、正極3の幅L1は56mm、正極活物質層3aの長さL3,L5はそれぞれ600mm、200mm、正極芯体露出部3bの長さL2は60mm、正極芯体露出部3cの長さL4は10mmとした(図2(a)参照)。
【0035】
〈負極の作製〉
負極活物質としての天然黒鉛粉末98質量部と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム1質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを1質量部と、水と、を混合して負極活物質スラリーを調製した。
【0036】
このスラリーを、ドクターブレード法により、負極集電タブとしての銅箔(厚み:10μm)の両面であって負極芯体露出部4bとなる部分以外に塗布し、負極活物質層4aを形成した。この後、負極活物質層4aを加熱して水を蒸発させて取り除いた。その後圧縮ローラーで圧縮した後裁断し、負極集電タブ11を取り付けて、帯状の負極4を作製した。なお負極4の幅L6は58mm、負極活物質層4aの長さL8は巻回内側で860mm、巻回外側で810mm、負極芯体露出部4bの長さL7は巻回内側で70mm、巻回外側で120mmとした(図2(b)参照)。
【0037】
〈電極体の作製〉
図3(a),(b)に示すように、アルミニウムからなり正極芯体露出部3bと同サイズの正極芯体補強部材3dと、銅からなり負極芯体露出部4b(巻回内側)と同サイズの負極芯体補強部材4dと、を用意した。そして、正極芯体露出部3bに正極芯体補強部材3dを重ね合わせ、負極芯体露出部4bに負極芯体補強部材4dを重ね合わせた(図3(c),(d)参照)。この正極3及び負極4と、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータ5と、を重ねあわせ、これらを正極芯体露出部3b及び負極芯体露出部4bが最外周となるように渦巻状に巻回し、巻回電極体を作製した。
【0038】
〈非水電解質の調製〉
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、を体積比50:50(25℃、1気圧)で混合した混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットルとなるように溶かして、非水電解質となした。
【0039】
〈電池の組み立て〉
上記巻回電極体を有底円筒状の外装缶1内に収容し、外装缶1の缶底と負極集電タブ11とを接続した。この後、上記非水電解質を減圧雰囲気で注液し、封口体6の端子板9と正極集電タブ10とを接続した。この後、外装缶1の開口を封口体6により封口して、直径18mm、高さ65mmである実施例1に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0040】
なお、本実施例にかかる電池において、負極の巻回外側の負極活物質層の長さは、巻回内側よりも短くなっている。この理由を以下に説明する。図5に、巻回外側近傍の電極体の積層状態を示すが、同図において最も上側の負極芯体4eの内側に巻回された正極芯体3eには正極活物質層3aが形成されているが、外側に巻回された正極芯体3eには正極活物質層3aが形成されていない状態となる。正極活物質層と対向しない面に負極活物質層を設けても、充放電に関与しないので、この面には負極活物質層を設ける必要はない。すなわち、図5において、上側(巻回外側)の負極芯体4eの巻回内側には対向する正極活物質層3aが存在するので負極活物質層4aを形成し、巻回外側には対向する正極活物質層3aが存在しないので負極活物質層4aを形成していない。
【0041】
(実施例2)
正極側のみに芯体補強部材を重ね合わせたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0042】
(実施例3)
負極側のみに芯体補強部材を重ね合わせたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0043】
(実施例4)
正極芯体補強部材及び負極芯体補強部材を用いず、図4(a),(b)に示すように、正極芯体露出部3b、負極芯体露出部4bの長さ(巻回内側)を実施例1の2倍(正極側120mm、負極側の巻回内側140mm)とし、図4(a)〜(d)に示すように正極芯体露出部3b及び負極芯体露出部4bを中心で折り曲げて当該部分での芯体厚みを増したこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例4に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0044】
(比較例1)
正極芯体補強部材及び負極芯体補強部材を用いなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして、比較例1に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0045】
(比較例2)
正極芯体の厚みを16.5μmとし、負極芯体の厚みを11μmとした(正極芯体及び負極芯体厚みをともに実施例1の10%増しとした)こと以外は、上記比較例1と同様にして、比較例2に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0046】
(比較例3)
図6に示すように、巻回外側となる位置に正極芯体露出部3bを形成せず、負極芯体露出部4bの長さ(巻回内側)L9を15mmとしたこと以外は、上記比較例1と同様にして、比較例3に係る非水電解質二次電池を作製した。
【0047】
〔釘刺し試験〕
上記実施例1〜4、比較例1〜3と同一の条件で電池をそれぞれ20個作製した。これらの電池を、定電流1It(1600mA)で電圧が4.2Vとなるまで、その後定電圧4.2Vで電流が0.0625It(100mA)となるまで充電した。この後、電池の中心部に、直径3mm、長さ50mmの釘を突き刺し、電池の破裂や発火の有無を確認し、破裂、発火のないものをOK、破裂又は発火のあるものをNGと判定した。なお、釘刺し試験は、釘を突き刺す速度を下記表1に示すように4段階に変化させ、各速度に電池をそれぞれ5つずつ用いた。この結果(NGの個数)を下記表1に示す。
【0048】
〔電池容量の測定〕
上記実施例1〜4、比較例1〜3と同一の条件で電池をそれぞれ1個作製した。これらの電池を定電流1It(1600mA)で電圧が4.2Vとなるまで、その後定電圧4.2Vで電流が0.0625It(100mA)となるまで充電し、その後定電流0.2It(320mA)で電圧が2.75Vとなるまで放電し、この放電容量を測定した。この結果を下記表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
上記表1から、巻回電極体の最外周を正負両電極の芯体露出部が覆っていない比較例3は、40mm/secの釘刺し試験で5個中2個の電池がNGとなり、30mm/secでは5個中3個、20mm/secでは5個中4個の電池がNGというように、釘を突き刺す速度が遅くなるほどNGとなる電池数が多くなる傾向にある。
【0051】
このことは、次のように考えられる。釘を突き刺す速度が遅いほど電池の発熱が大きくなり、電池はダメージ受けやすくなる。つまり、突き刺し速度が遅い条件で電池のNG数が少ないほど、電池の安全性が高くなると考えられる。
【0052】
そして、芯体露出部の厚みを増加させていない比較例1は、30mm/secの釘刺し試験で5個中3個の電池がNGとなっていることがわかる。また、電極芯体全体の厚みを10%増加させた比較例2は、30mm/sec以上の速度での釘刺し試験でNGは発生していないものの、放電容量が1530mAhと、その他の電池の1603〜1608mAhよりも小さいことがわかる。これらに対し、巻回電極体の最外周を正負両電極の芯体露出部が覆い、且つ最外周に位置する芯体露出部の厚みのみを増加させた実施例1〜4は、30mm/sec以上の速度での釘刺し試験ではNGが発生せず、且つ放電容量が1603〜1606mAhと大きいことがわかる。
【0053】
このことは、次のように考えられる。巻回電極体の最外周を芯体露出部が覆っていない比較例3では、釘刺しによって正負活物質層間で最初に短絡が生じるが、活物質層は電極芯体よりも導電性が低い。このため抵抗発熱が大きくなり、高温となった活物質と電解液とが反応して、電池を破裂や発火に至らせる。
【0054】
また、巻回電極体の最外周を芯体露出部が覆っているが、最外周に位置する芯体露出部の厚みを増加させていない比較例1では、比較例3と異なり最初に芯体露出部相互間で短絡がおきるが、この部分の芯体厚みが小さいために抵抗が十分に低くない。このため、抵抗発熱を十分に小さくできず、30mm/secでの釘刺し試験でNGを発生させてしまう。
【0055】
また、芯体全体において厚みを増加させた比較例2では、芯体厚みが増された分芯体の抵抗が低くなり、抵抗発熱が小さくなるので比較例1よりも安全性が高まる(30mm/secでの釘刺し試験でNGを発生させなくなる)が、充放電反応に寄与しない芯体体積が増加するため、その分充放電反応に寄与する活物質量が減少し、放電容量を低下させる。
【0056】
これらに対し、実施例1〜4では、釘刺しにより最初に短絡が起こる巻回電極体の最外周に位置する芯体露出部のみ厚みを増している。これにより、芯体露出部の導電性を高めて抵抗発熱を減少させて、安全性を高めることができるとともに、芯体体積の大幅な増加を招くことがないので放電容量を大幅に低下させることがない。
【0057】
また、一方電極のみ巻回電極体の最外周に位置する芯体露出部の厚みを増した実施例2,3は、20mm/secの釘刺しにおいてNGが3個又は2個発生しているのに対し、双方電極において巻回電極体の最外周に位置する芯体露出部の厚みを増した実施例1,4では、20mm/secの釘刺しにおいてNGが発生していないことがわかる。このことから、安全性をより高めるためには、双方の電極において巻回電極体の最外周に位置する芯体露出部の厚みを増すことがより好ましい。
【0058】
(追加事項)
なお、芯体を折り重ねたり補強部材を重ね合わせる際に、絶縁テープや接着剤等を用いて折り重ねた芯体や重ね合わせた補強部材を固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明によると、放電容量を犠牲にすることなく電池の安全性を顕著に高めることができる。よって、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0060】
1 外装缶
2 電極体
3 正極
3a 正極活物質層
3b 正極芯体露出部
3c 正極芯体露出部
3d 正極芯体補強部材
3e 正極芯体
4 負極
4a 負極活物質層
4b 負極芯体露出部
4d 負極芯体補強部材
4e 負極芯体
5 セパレータ
6 封口体
7 端子キャップ
8 防爆弁
9 端子板
10 正極集電タブ
11 負極集電タブ
13a 外部ガスケット
13b 内部ガスケット
14 絶縁板
15 絶縁板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極芯体に第1活物質層が形成されてなる第1電極と、第2電極芯体に第2活物質層が形成されてなる第2電極と、セパレータと、が巻回されてなる巻回電極体を備える非水電解質二次電池において、
前記巻回電極体における前記第1電極の最外周には、前記第1活物質層が形成されていない第1電極芯体露出部が配され、
前記巻回電極体における前記第2電極の最外周には、前記第2活物質層が形成されていない第2電極芯体露出部が配され、
前記第1電極の最外周に位置する前記第1電極芯体露出部の厚みは、前記第1活物質層が形成された部分の前記第1電極芯体の厚みよりも厚い、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池において、
前記第1電極芯体露出部は、前記巻回電極体を一周以上覆っており、
前記第2電極芯体露出部は、前記巻回電極体を一周以上覆っている、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池において、
前記第1電極の最外周に位置する前記第1電極芯体露出部の厚みは、前記第1活物質層が形成された部分の前記第1電極芯体の厚みよりも10%以上厚い、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の非水電解質二次電池において、
前記第2電極の最外周に位置する前記第2電極芯体露出部の厚みは、前記第2活物質層が形成された部分の前記第2電極芯体の厚みよりも厚い、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項5】
請求項4に記載の非水電解質二次電池において、
前記第2電極の最外周に位置する前記第2電極芯体露出部の厚みは、前記第2活物質層が形成された部分の前記第2電極芯体の厚みよりも10%以上厚い、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−187241(P2011−187241A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49710(P2010−49710)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】