説明

非水電解質及び非水電解質電池

充放電効率が高く、ハイレート性能に優れた非水電解質電池を提供することを目的とする。リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、四級アンモニウム塩を0.06mol/l以上0.5mol/l以下含有していることを特徴とする非水電解質を用いることにより、上記課題を解決できる。この効果は、初充電工程における比較的早い段階(負極電位の比較的貴な段階)で四級アンモニウム塩の作用により負極に良好な保護被膜が形成されるため、非水電解質に用いられている有機溶媒の分解が抑制されることによると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は非水電解質及び非水電解質電池に関し、特に、非水電解質の改良に関する。
【背景技術】
近年、非水電解質電池、特にリチウム二次電池は、携帯電話,PHS(簡易携帯電話),小型コンピューター等の携帯機器類用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として注目されている。リチウム二次電池は、一般に、正極活物質を主要構成成分とする正極と、負極材料を主要構成成分とする負極と、非水電解質とから構成され、前記正極及び負極を少なくとも有する発電要素を外装体で覆って作製される。リチウム二次電池を構成する正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物が、負極材料としては、炭素質材料が主に用いられている。なかでも、グラファイトは電位特性が平坦であるため、高エネルギー密度の電池とするために好適な材料である。非水電解質としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質がエチレンカーボネートを主構成成分とする有機溶媒に溶解されたものが広く知られている。
ここで、エチレンカーボネートは融点が高く、低温で電解質が凝固し易いため、低温特性等の諸特性を向上させるため、誘電率が高く、より融点の低い有機溶媒(プロピレンカーボネート等)を用いる方法が知られているが、特に負極にグラファイトを用いた場合には、プロピレンカーボネート等の有機溶媒がグラファイト負極上で分解するため、充放電を高い効率で行うことができない、という問題があった。
この問題を解決する手段として、非水電解質中にビニレンカーボネート等を添加して有機溶媒の上記分解を抑制する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。すなわち、電池組み立て後最初に行う充電(以下「初充電」という)時にビニレンカーボネート等をグラファイト負極上で選択的に分解させることにより、グラファイト負極表面にリチウムイオン透過性の保護被膜が形成され、プロピレンカーボネート等の有機溶媒の分解が抑制されるとされている。しかしながら、この方法によっても、初充電時における有機溶媒の分解を抑制する効果は充分ではなかった。さらに、ビニレンカーボネートは耐酸化性に劣り、正極側で分解するため、多量に添加すると電池性能を低下させるという問題があった。
一方、四級アンモニウム塩は、電気二重層キャパシタ用の電解質材料として古くから多用されているが、電池の用途としては、導電性高分子(ポリアセン)を電極材料とし、リチウムイオンが電極反応に関与しない非水電解質電池に用いることが報告されている(特許文献2,3参照)のみであり、リチウムイオンが電極反応に関与する非水電解質電池用の電解質に用いることによる利点は見いだされていない。他方、四級アンモニウム塩の一種であるイミダゾリウム塩などに、常温で液状を呈する常温溶融塩としての性質を有するものがあることから、一般の非水電解質電池に用いられるような有機溶媒を不要とした電解質に主要構成成分として用いることが提案されている。(特許文献4参照)。
〔特許文献1〕 特開平11−67266号公報
〔特許文献2〕 特開昭62−31958号公報
〔特許文献3〕 特開平2−177271号公報
〔特許文献4〕 特開2002−110230号公報
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電効率が高く、高率放電特性に優れた非水電解質電池を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは、鋭意検討の結果、非水電解質を特定のものとすることにより、驚くべきことに、充放電効率が高く、高率放電特性に優れた非水電解質電池が得られることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の技術的構成及びその作用効果は以下の通りである。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態若しくは実験例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
本発明者らは、四級アンモニウム塩を主構成成分として用いる上記従来技術のアプローチとは逆に、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解質中に、四級アンモニウム塩を少量添加した系を用い、非水電解質電池の挙動に与える影響について詳細に検討を進めたところ、実に驚くべきことに、四級アンモニウム塩の特定の濃度範囲において、非水電解質電池の充放電挙動に顕著な効果が現れることを見いだした。
即ち、本発明によれば、非水電解質電池の負極にグラファイトを用いる場合においても、また、非水電解質の有機溶媒にプロピレンカーボネート等が含まれている場合においても、電池の組み立て後最初に行う充放電に係る効率(以下「初期効率」という)が飛躍的に向上することを見いだした。さらに、本発明に係る非水電解質電池は、従来の電池に比べ、高率放電特性においても、飛躍的に向上することが明らかになった。
即ち、本発明の非水電解質は、リチウム塩を溶解してなる非水電解質であって、四級アンモニウム塩を0.06mol/l以上0.5mol/l以下含有していることを特徴とするものである。又、本発明の非水電解質電池は、該非水電解質を適用して電池を組み立てることにより、得られる。このような構成により、本発明の非水電解質電池に上記した顕著な効果が現れる作用機構については必ずしも明らかではないが、本発明の非水電解質を用いることで、主に初充電時に、負極表面にリチウムイオン透過性の保護被膜が形成されるため、非水電解質を構成する有機溶媒の分解が確実に抑制されるものと考えられ、従って、充放電を高い効率で行うことができるものと考えられる。
また、四級アンモニウム塩の還元電位は、ビニレンカーボネートの還元電位よりも貴である場合が多いため、本発明に係る非水電解質電池においては、ビニレンカーボネートを用いた従来技術に係る非水電解質電池に比べ、初充電のより早い段階で、確実に保護被膜が形成されると考えられる。さらに、四級アンモニウム塩の分解により負極表面に形成される保護被膜は、緻密で、且つ、リチウムイオン透過性に優れたものとなる。これらのことから、四級アンモニウム塩をごく少量添加するだけで非水電解質を構成するその他の有機溶媒の分解をより効果的に抑制できる。従って、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池とすることができる。ところで、四級アンモニウム塩は、塩であるためそれ自身の揮発性が実質的になく、熱安定性も高いため、添加することによって何ら電池の安全性を損ねることはない。
即ち、本発明の非水電解質は、請求の範囲第1項に記載したように、リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、四級アンモニウム塩を0.06mol/l以上0.5mol/l以下含有していることを特徴としている。このような構成によれば、充放電効率が高く、高率放電特性に優れた電池とすることのできる非水電解質を提供できる。
また、本発明の非水電解質は、請求の範囲第2項に記載したように、前記四級アンモニウム塩は、(化学式1)、(化学式2)または(化学式3)のいずれかで示される構造を有することを特徴としている。

(ただし、R1、R2、R3、R4は、炭素数1〜6のアルキル基、または少なくとも水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基のいずれかであり、かつ、Xは、含フッ素アニオンである。)

(ただし、Rは、主鎖が炭素、酸素、窒素、硫黄、リンの少なくともいずれかからなる主鎖原子数4〜5の2価の有機結合基であり、R1、R2は、炭素数1〜6のアルキル基、または少なくとも水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基のいずれかである。また、Xは、含フッ素アニオンである。)

(ただし、Rは、主鎖が炭素、酸素、窒素、硫黄、リンの少なくともいずれかからなる主鎖原子数4〜5の単結合の末端を1つと二重結合の末端を1つ有する有機結合基または芳香族性環を形成する有機結合基であり、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、または少なくとも水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。また、Xは、含フッ素アニオンである。)
このような構成によれば、これを適用した電池において、初充電時に負極表面に形成されるリチウムイオン透過性の保護被膜を、より緻密で、且つ、リチウムイオン透過性の点でより優れたものとし、非水電解質を構成するその他の有機溶媒の分解を効果的に抑制し、2サイクル目以降の充放電を充分に行わせ、充放電効率を向上させることのできる非水電解質を提供できる。
また、本発明の非水電解質は、請求の範囲第3項に記載したように、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンからなる群から選ばれる1種以上の有機溶媒を含有していることを特徴としている。
このような構成によれば、これを適用した電池において、これらの有機溶媒を用いながらも初期効率を飛躍的に向上させることができるため、沸点および引火点が高く、高誘電率を有し、耐酸化性に優れたこれらの溶媒の特性を充分に引き出した非水電解質電池用の非水電解質を提供できる。
また、本発明の非水電解質は、請求の範囲第4項に記載したように、前記非水電解質が含有しているアニオン種が、BF、PF、CFSO、N(CFSO、N(CSO、N(CFSO)(CSO、C(CFSO及びC(CSOからなる群の中から選択された1種以上であることを特徴としている。
このような構成によれば、リチウム塩や四級アンモニウム塩のアニオン種をフッ素原子を含有したものとすることにより、非水電解質中に容易に溶解するため、上記効果が効果的に得られる。なかでも、アニオン種を上記群から選択することにより、これらの含フッ素アニオンが広電位領域に亘って安定であるため、高性能と優れた安全性とを兼ね備えた非水電解質電池を得ることができる。なお、これらのアニオン種は単独で含有していてもよく、2種以上を同時に含有していてもよい。
また、本発明の非水電解質電池は、請求の範囲第5項に記載したように、正極、負極及び非水電解質を具備し、前記非水電解質を適用して組み立てたことを特徴としている。このような構成によれば、上記した本発明の効果を発揮させた非水電解質電池を提供することができる。
また、本発明の非水電解質電池は、請求の範囲第6項に記載したように、前記負極は、グラファイトが用いられていることを特徴としている。このような構成によれば、負極材料にグラファイトを用いる場合においても、非水電解質を構成する有機溶媒の分解を効果的に抑えながら初充電を行うことが可能となり、高率放電特性についても向上するので、グラファイトを負極に用いることにより、電位変化が平坦で、エネルギー密度を高いものとできるグラファイト負極材料の特性を充分に引き出した非水電解質電池を提供できる。
また、本発明の非水電解質電池は、請求の範囲第7項に記載したように、外装体に金属樹脂複合材料を用いたことを特徴としている。このような構成によれば、本発明の電池系は上記した作用により充電時に非水電解質の分解を効果的に抑えることができ充電時のガス発生がほとんどないので、外装体に柔軟な材料を用いても電池の膨れを生じる虞がない。従って、外装体に軽量な金属樹脂複合材料を用いることが可能となり、これにより、エネルギー密度がさらに向上した非水電解質電池を提供できる。
なお、本発明に係る非水電解質電池においては、初充電工程中に四級アンモニウム塩の一部が保護被膜の形成反応によって消費されると考えられることから、初充電工程後の本発明に係る非水電解質電池内の非水電解質に含まれる四級アンモニウム塩の濃度は、該電池に用いた本発明の非水電解質に含まれる四級アンモニウム塩の濃度を下回ることがある。
以下に、本発明の実施の形態を例示するが、本発明は、これらの記述に限定されるものではない。
本発明に用いる四級アンモニウム塩は、(化学式1)、(化学式2)、(化学式3)のいずれかで示される構造を有することが、より好ましい。(化学式1)で示される四級アンモニウム塩としては、例えば、(CHNBF,(CHNBr,(CHN(CFSON,(CHN(CSON,(CNBF,(CNClO,(CNI,(CN(CFSON,(CN(CSON,(CNBr,(n−CNBF,(n−CN(CFSON,(n−CN(CSON,(n−CNClO,(n−CNI,(CN−maleate,(CN−benzoate,(CN−phtalateなどの四級アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、(化学式2)で示される四級アンモニウム塩としては、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリウムカチオンなどとアニオンとの組み合わせからなる四級アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、ピロリジニウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピロリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ピペリジニウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピペリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピペリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ピロリウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピロリウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、(化学式3)で示される四級アンモニウム塩としては、イミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピリジニウムカチオンなどとアニオンとの組み合わせからなる四級アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、前記イミダゾリウムカチオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ピラゾリウムカチオンとしては、1,2−ジメチルピラゾリウムイオン、1−エチル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ピロリニウムカチオンとしては、1,2−ジメチルピロリニウムイオン、1−エチル−2−メチルピロリニウムイオン、1−プロピル−2−メチルピロリニウムイオン、1−ブチル−2−メチルピロリニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ピリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチルピリジニウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、前記アニオンとしては、Clアニオン、Brアニオン、ClOアニオン、BFアニオン、PFアニオン、CFSOアニオン、N(CFSOアニオン、N(CSOアニオン、N(CFSO)(CSO)アニオン、C(CFSOアニオン、C(CSOアニオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの四級アンモニウム塩は、単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
本発明の非水電解質中に含有させる四級アンモニウム塩の量は、非水電解質の全重量に対して0.06mol/l以上0.5mol/l以下であり、好ましくは0.1〜0.35mol/lである。四級アンモニウム塩の含有量が、非水電解質の全重量に対して0.06mol/l未満であると、初充電時における非水電解質を構成するその他の有機溶媒の分解を充分に抑制することができないので、充電を確実に行うことが困難となる。また、四級アンモニウム塩の含有量が0.5mol/lを超えると、充電効率や高率放電特性を充分に高いものとすることができない。この原因については推定を含むが、非水電解質の粘度が上昇することや、保護被膜の抵抗が上昇することが原因ではないかと考えられる。
非水電解質を構成する有機溶媒は、一般に非水電解質電池用非水電解質に使用される有機溶媒が使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等の環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状エステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート;酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル;テトラヒドロフラン又はその誘導体、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソラン又はその誘導体;スルホラン、スルトン又はその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
なお、本発明においては、非水電解質中に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンから選ばれる少なくとも1種を含有することが、本発明の効果が充分に発揮できるため特に好ましい。
電解質塩としては、例えば、LiClO,LiBF,LiAsF,LiPF,LiSCN,LiBr,LiI,LiSO,Li10Cl10,NaClO,NaI,NaSCN,NaBr,KClO,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)又はカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO),LiC(CFSO,LiC(CSO,ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
なお、本発明においては、電解質塩として、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSOまたはLiC(CSOのいずれかから選択されるリチウム塩を含有することが特に好ましい。なかでも、LiPF及びLiBFからなる群から選ばれる一種以上の塩と、LiN(CFSOやLiN(CSOのようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩類からなる群から選ばれる一種以上の塩とを混合して用いると、非水電解質電池の保存特性を向上させる効果がある点で好ましい。
非水電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する非水電解質電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5mol/lが好ましく、さらに好ましくは、1mol/l〜2.5mol/lである。また、電解質塩と四級アンモニウム塩の混合比は、モル比で電解質塩:四級アンモニウム塩=50:50以上であることが好ましく、さらに好ましくは70:30以上であることが好ましい。
正極の主要構成成分である正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩などを単独あるいは混合して用いることが望ましい。リチウム含有遷移金属酸化物としては、Li−Co系複合酸化物やLi−Mn系複合酸化物等が挙げられる。ここで、前記CoやMnの一部が周期律表I族〜VIII族の金属(例えば、Li,Ca,Cr,Ni,Mn,Fe及びCoからなる群から選ばれる1種類以上の元素が好ましい)で置換されたものも好適に使用できる。前記Li−Mn系複合酸化物としては、スピネル型結晶構造を有するものやα−NaFeO型結晶構造を有するものがあり、いずれも好適に用いられる。これらのリチウム含有遷移金属酸化物は、電池設計に応じて適宜選択し、又は混合して用いることができる。
また、前記リチウム含有化合物に他の正極活物質を混合して用いてもよく、他の正極活物質としては、CuO,CuO,AgO,CuS,CuSO等のI族金属化合物、TiS,SiO,SnO等のIV族金属化合物、V,V12,VO,Nb,Bi,Sb等のV族金属化合物、CrO,Cr,MoO,MoS,WO,SeO等のVI族金属化合物、MnO,Mn等のVII族金属化合物、Fe,FeO,Fe,Ni,NiO,CoO,CoO等のVIII族金属化合物、又は、一般式LiMX,LiMN(M、NはIからVIII族の金属、Xは酸素、硫黄などのカルコゲン化合物を示す。)等で表される、例えばリチウム−コバルト系複合酸化物やリチウム−マンガン系複合酸化物等の金属化合物、さらに、ジスルフィド,ポリピロール,ポリアニリン,ポリパラフェニレン,ポリアセチレン,ポリアセン系材料等の導電性高分子化合物、擬グラファイト構造炭素質材料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
負極の主要構成成分である負極材料としては、炭素質材料、スズ酸化物,珪素酸化物等の金属酸化物、さらにこれらの物質に負極特性を向上させる目的でリンやホウ素を添加し改質を行った材料等が挙げられる。炭素質材料の中でもグラファイトは、金属リチウムに極めて近い作動電位を有するので電解質塩としてリチウム塩を採用した場合に自己放電を少なくでき、かつ充放電における不可逆容量を少なくできるので、負極材料として好ましい。さらに本発明においては、四級アンモニウム塩を含有する非水電解質が使用されるので、充電時にグラファイトを主成分とする負極上で非水電解質を構成するその他の有機溶媒の分解を確実に抑制でき、グラファイトの上記有利な特性を確実に発現させることができる。
以下に、好適に用いることのできるグラファイトのX線回折等による分析結果を示す;
格子面間隔(d002) 0.333〜0.350ナノメートル
a軸方向の結晶子の大きさLa 20ナノメートル以上
c軸方向の結晶子の大きさLc 20ナノメートル以上
真密度 2.00〜2.25g/cm
また、グラファイトに、スズ酸化物,ケイ素酸化物等の金属酸化物、リン、ホウ素、アモルファスカーボン等を添加して改質を行うことも可能である。特に、グラファイトの表面を上記の方法によって改質することで、電解質の分解を抑制し電池特性を高めることが可能であり望ましい。さらに、グラファイトに対して、リチウム金属、リチウム−アルミニウム,リチウム−鉛,リチウム−スズ,リチウム−アルミニウム−スズ,リチウム−ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金等を併用することや、あらかじめ電気化学的に還元することによってリチウムが挿入されたグラファイト等も負極材料として使用可能である。
また、正極活物質の粉体及び負極材料の粉体の少なくとも表面層部分を電子伝導性やイオン伝導性の良いもの、あるいは疎水基を有する化合物で修飾することも可能である。例えば、金,銀,カーボン,ニッケル,銅等の電子伝導性のよい物質や、炭酸リチウム,ホウ素ガラス,固体電解質等のイオン伝導性のよい物質、あるいはシリコーンオイル等の疎水基を有する物質をメッキ,焼結,メカノフュージョン,蒸着,焼き付け等の技術を応用して被覆することが挙げられる。
正極活物質の粉体及び負極材料の粉体は、平均粒子サイズ100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが望ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
以上、正極活物質及び負極材料について詳述したが、正極及び負極には、主要構成成分である前記活物質の他に、導電剤、結着剤及びフィラーが、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種又はそれらの混合物として含ませることができる。
これらの中で、導電剤としては、導電性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極又は負極の総重量に対して1重量%〜50重量%が好ましく、特に2重量%〜30重量%が好ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニリデン,ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレンジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類等を1種又は2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する結着剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。結着剤の添加量は、正極又は負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極又は負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
正極及び負極は、前記活物質、導電剤及び結着剤をN−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコーター等の手段を用いて任意の厚み及び任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、正極用集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。負極用集電体としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
集電体の形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みの限定は特にないが、1〜500μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、正極としては、耐酸化性に優れているアルミニウム箔が、負極としては、還元場において安定であり、且つ電導性に優れ、安価な銅箔、ニッケル箔、鉄箔、及びそれらの一部を含む合金箔を使用することが好ましい。さらに、粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが好ましく、これにより正極活物質又は負極材料と集電体との密着性は優れたものとなる。よって、このような粗面を有することから、電解箔を使用するのが好ましい。特に、ハナ付き処理を施した電解箔は最も好ましい。
非水電解質電池用セパレータとしては、優れたレート特性を示す微多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
非水電解質電池用セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
また、非水電解質電池用セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。
さらに、非水電解質電池用セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解質の保液性が向上するため望ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、該フィルムの微孔内に電解質を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
該親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアネート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。架橋にあたっては、熱、紫外線(UV)や電子線(EB)等の活性光線等を用いることができる。
該親溶媒性ポリマーには、強度や物性制御の目的で、架橋体の形成を妨害しない範囲の物性調整剤を配合して使用することができる。該物性調整剤の例としては、無機フィラー類{酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩}、ポリマー類{ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート等}等が挙げられる。該物性調整剤の添加量は、架橋性モノマーに対して通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
前記アクリレートモノマーについて例示すると、二官能以上の不飽和モノマーが好適に挙げられ、より具体例には、2官能(メタ)アクリレート{エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸・ジネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、重合度2以上のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、重合度2以上のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体のジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等}、3官能(メタ)アクリレート{トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのプロピレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート等}、4官能以上の多官能(メタ)アクリレート{ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンヘキサ(メタ)アクリレート等}が挙げられる。これらのモノマーを単独もしくは、併用して用いることができる。
前記アクリレートモノマーには、物性調整等の目的で1官能モノマーを添加することもできる。該一官能モノマーの例としては、不飽和カルボン酸{アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、メチレンマロン酸、アコニット酸等}、不飽和スルホン酸{スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等}又はそれらの塩(Li塩、Na塩、K塩、アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩等)、またこれらの不飽和カルボン酸をC1〜C18の脂肪族又は脂環式アルコール、アルキレン(C2〜C4)グリコール、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコール等で部分的にエステル化したもの(メチルマレート、モノヒドロキシエチルマレート、など)、及びアンモニア、1級又は2級アミンで部分的にアミド化したもの(マレイン酸モノアミド、N−メチルマレイン酸モノアミド、N,N−ジエチルマレイン酸モノアミドなど)、(メタ)アクリル酸エステル[C1〜C18の脂肪族(メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシル、ステアリル等)アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、又はアルキレン(C2〜C4)グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等)及びポリアルキレン(C2〜C4)グリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)と(メタ)アクリル酸とのエステル];(メタ)アクリルアミド又はN−置換(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等];ビニルエステル又はアリルエステル[酢酸ビニル、酢酸アリル等];ビニルエーテル又はアリルエーテル[ブチルビニルエーテル、ドデシルアリルエーテル等];不飽和ニトリル化合物[(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル等];不飽和アルコール[(メタ)アリルアルコール等];不飽和アミン[(メタ)アリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等];複素環含有モノマー[N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン等];オレフィン系脂肪族炭化水素[エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、(C6〜C50)α−オレフィン等];オレフィン系脂環式炭化水素[シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン等];オレフィン系芳香族炭化水素[スチレン、α−メチルスチレン、スチルベン等];不飽和イミド[マレイミド等];ハロゲン含有モノマー[塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン等]等が挙げられる。
前記エポキシモノマーについて例示すると、グリシジルエーテル類{ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル等}、グリシジルエステル類{ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等}、グリシジルアミン類{トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノフェニルメタン等}、線状脂肪族エポキサイド類{エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等}、脂環族エポキサイド類{3,4エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート等}等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独もしくは硬化剤を添加して硬化させて使用することができる。該硬化剤の例としては、脂肪族ポリアミン類{ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、3,9−(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトロオキサスピロ[5,5]ウンデカン等}、芳香族ポリアミン類{メタキシレンジアミン、ジアミノフェニルメタン等}、ポリアミド類{ダイマー酸ポリアミド等}、酸無水物類{無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸}、フェノール類{フェノールノボラック等}、ポリメルカプタン{ポリサルファイド等}、第三アミン類{トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等}、ルイス酸錯体{三フッ化ホウ素・エチルアミン錯体等}等が挙げられる。
前記イソシアネート基を有するモノマーについて例示すると、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,2,4)−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、トリメチルキシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、trans−1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
前記イソシアネート基を有するモノマーを架橋するにあたって、ポリオール類及びポリアミン類[2官能化合物{水、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等}、3官能化合物{グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリエタノールアミン等}、4官能化合物{ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド等}、5官能化合物{2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエチレントリアミンなど}、6官能化合物{ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等}、8官能化合物{スークロース等}]、及びポリエーテルポリオール類{前記ポリオール又はポリアミンのプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイド付加物}、ポリエステルポリオール[前記ポリオールと多塩基酸{アジピン酸、o,m,p−フタル酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、リシノール酸}との縮合物、ポリカプロラクトンポリオール{ポリε−カプロラクトン等}、ヒドロキシカルボン酸の重縮合物等]等、活性水素を有する化合物を併用することができる。
該架橋反応にあたって、触媒を併用することができる。該触媒について例示すると、有機スズ化合物類、トリアルキルホスフィン類、アミン類[モノアミン類{N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等}、環状モノアミン類{ピリジン、N−メチルモルホリン等}、ジアミン類{N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル1,3−ブタンジアミン等}、トリアミン類{N,N,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン等}、ヘキサミン類{N,N,N’N’−テトラ(3−ジメチルアミノプロピル)−メタンジアミン等}、環状ポリアミン類{ジアザビシクロオクタン(DABCO)、N,N’−ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等}等、及びそれらの塩類等が挙げられる。
電池の組み立て工程において本発明の非水電解質を適用する方法や手順については限定されるものではなく、正極、負極及びセパレータからなる発電要素をまず組み立て、液状の非水電解質を注液して含浸させ、場合によっては含浸後ゲル化させる方法であってもよく、正極または負極に非水電解質を含浸(場合によっては含浸後ゲル化)後発電要素を組み立てても良い。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法も使用可能である。あるいは、非水電解質材料を電極材料と共に混練し、塗布することによって正極又は負極を形成させてもよい。この方法は、非水電解質が特に高分子固体電解質である場合等に用いることができる。
外装体としては、非水電解質電池の軽量化の観点から、薄い材料が好ましく、例えば、金属箔を樹脂フィルムで挟み込んだ構成の金属樹脂複合材料が好ましい。金属箔の具体例としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、ステンレス鋼、チタン、金、銀等、ピンホールのない箔であれば限定されないが、好ましくは軽量且つ安価なアルミニウム箔が好ましい。また、電池外部側の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム,ナイロンフィルム等の突き刺し強度に優れた樹脂フィルムを、電池内部側の樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム,ナイロンフィルム等の、熱融着可能であり、かつ耐溶剤性を有するフィルムが好ましい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本実施例に係る非水電解質電池の断面図であり、第2図は、本発明電池及び比較電池の性能を示した図であり、符号の1は正極、11は正極合剤、12は正極集電体、2は負極合剤、21は負極合剤、22は負極集電体、3はセパレータ、4は発電要素、5は金属樹脂複合フィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明のさらなる詳細を実施例により説明するが、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
【実施例1】
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比6:2:2の割合で混合した混合溶媒1リットルに、1モルのLiPFを溶解させ、さらにテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボラート((CNBF)を0.06mol/l混合し、非水電解質を得た。
【実施例2】
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比6:2:2の割合で混合した混合溶媒1リットルに、1モルのLiPFを溶解させ、さらにトリメチル−n−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド((CH(n−C)N(CFSON)を0.1mol/l混合し、非水電解質を得た。
【実施例3】
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比6:2:2の割合で混合した混合溶媒1リットルに、1モルのLiPFを溶解させ、さらに1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(パーフルオロエチルスルフォニル)イミドを0.3mol/l混合し、非水電解質を得た。
【実施例4】
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比6:2:2の割合で混合した混合溶媒1リットルに、1モルのLiPFを溶解させ、さらに1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスファートを0.5mol/l混合し、非水電解質を得た。
(比較例1)
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比6:2:2の割合で混合した混合溶媒1リットルに、1モルのLiPFを溶解させ、さらに(CNBFを0.7mol/l混合し、非水電解質を得た。
(比較例2)
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比6:2:2の割合で混合した混合溶媒1リットルに、1モルのLiPFを溶解させ、非水電解質を得た。
(本発明電池及び比較電池)
上記した実施例1〜4及び比較例1,2の非水電解質を用いて、非水電解質電池としてリチウム電池を作製した。
本実施例に係るリチウム電池は、正極1、負極2及びセパレータ3からなる発電要素4と、非水電解質と、外装体である金属樹脂複合フィルム5から構成されている。正極1は、正極合剤11が正極集電体12上に塗布されてなる。また、負極2は、負極合剤21が負極集電体22上に塗布されてなる。非水電解質は発電要素4に含浸されている。金属樹脂複合フィルム5は、発電要素4を覆い、その四方を熱溶着により封止されている。本実施例に係るリチウム電池の断面図を図1に示す。上記構成の電池の製造方法を次に説明する。
正極1は次のようにして得た。まず、正極活物質であるLiCoOと、導電剤であるアセチレンブラックを混合し、さらに結着剤としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物をアルミ箔からなる正極集電体12の片面に塗布した後、乾燥し、正極合剤11の厚みが0.1mmとなるようにプレスした。以上の工程により正極1を得た。
負極2は、次のようにして得た。まず、負極材料であるグラファイトと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物を銅箔からなる負極集電体22の片面に塗布した後、乾燥し、負極合剤21厚みが0.1mmとなるようにプレスした。以上の工程により負極2を得た。
セパレータ3にはポリエチレン製微多孔膜(厚さ25μm、開孔率50%)を用いた。
発電要素4は、正極合剤11と負極合剤21とを対向させ、その間にセパレータ3を配し、正極1、セパレータ3、負極2の順に積層することにより、構成した。
次に、非水電解質中に発電要素4を浸漬させることにより、発電要素4に非水電解質を含浸させた。さらに、金属樹脂複合フィルム5で発電要素4を覆い、その四方を熱溶着により封止することにより、外装体とした。
ここで、非水電解質として実施例1〜4及び比較例1,2の非水電解質をそれぞれ用い、それぞれ本発明電池1〜4及び比較電池1,2とした。なお、これら本実施例に係るリチウム電池の設計容量は、全て10mAhである。
(初期充放電試験)
次に、これらの本発明電池1〜4及び比較電池1,2について、初充電容量及び初放電容量を測定した。初充電として、20℃において、電流2mA、終止電圧4.2Vの定電流定電圧充電を行い、得られた充電容量を初充電容量とした。続いて初放電として、前記初充電後、20℃において、電流2mA、終止電圧2.7Vの定電流放電を行い、得られた放電容量を初放電容量とした。そして、各々の電池について初充電容量に対する初放電容量の比を百分率で求め、初期効率とした。
(高率放電試験)
続いて、本発明電池1〜4及び比較電池1,2について、高率放電試験を行った。
試験温度は20℃とし、充電は、電流2mA、終止電圧4.2Vの定電流定電圧充電とした。放電は、電流5mA、終止電圧2.7Vで、定電流放電とした。得られた電池容量を、高率放電容量とした。
以上の結果を表1及び図2に示す。

表1及び図2から明らかなように、四級アンモニウム塩を添加しなかった比較電池2は、初充電容量が設計容量の約2倍と非常に大きくなり、かつ、初放電容量は非常に小さいものであった。すなわち、初期効率が非常に低くなった。これは、初充電中に非水電解質中のプロピレンカーボネートがグラファイト負極上で分解したため、可逆容量が低くなったものであると考えられる。
これに対し、四級アンモニウム塩を0.06〜0.5mol/l添加した本発明電池1〜4は、初充電容量及び初放電容量がともに優れ、初期効率に顕著な向上が見られるだけでなく、高率放電特性についても顕著な向上が見られた。これは、初充電中に四級アンモニウム塩がグラファイト負極上で分解し、グラファイト負極表面に緻密で、且つ、リチウムイオン透過性に優れたリチウムイオン透過性の保護被膜が形成されるため、非水電解質に用いた有機溶媒の分解を確実に抑制できたためと考えられる。
一方、四級アンモニウム塩を0.7mol/l添加した比較電池1は、初充電容量及び初放電容量は比較的良好であるが、高率放電容量が初放電容量の約30%と非常に小さいものであった。この理由については、必ずしも明らかではないが、非水電解質の粘度の上昇や、保護被膜の抵抗の上昇によるためと考えられる。
上記した実施例では、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートを用いた非水電解質について述べたが、ブチレンカーボネートやγ−ブチロラクトンやγ−バレロラクトンを用いた非水電解質についても、本発明の効果が同様に確認された。
特に、プロピレンカーボネートまたはブチレンカーボネートのいずれかを用いている非水電解質においては、それぞれの系において四級アンモニウム塩を添加しない場合と比較した本発明の効果は、上記実施例と同様、とりわけ顕著に観察された。
なお、図2からも示唆されるように、四級アンモニウム塩の含有量が初期効率や高率放電特性に与える効果は、四級アンモニウム塩の種類によらず、同様に確認された。
【産業上の利用可能性】
以上、説明したように、本発明によれば、安全性に優れ、且つ、充放電効率が高く、高いエネルギー密度を有する非水電解質電池を容易に提供することができるため、その工業的価値は大である。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩が有機溶媒に溶解してなる非水電解質が、四級アンモニウム塩を0.06mol/l以上0.5mol/l以下含有していることを特徴とする非水電解質。
【請求項2】
前記四級アンモニウム塩は、(化学式1)、(化学式2)、(化学式3)のいずれかで示される構造を有することを特徴とする請求の範囲第1項記載の非水電解質。

(ただし、R1、R2、R3、R4は、炭素数1〜6のアルキル基、または少なくとも水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基のいずれかであり、かつ、Xは、含フッ素アニオンである。)

(ただし、Rは、主鎖が炭素、酸素、窒素、硫黄、リンの少なくともいずれかからなる主鎖原子数4〜5の2価の有機結合基であり、R1、R2は、炭素数1〜6のアルキル基、または少なくとも水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基のいずれかである。また、Xは、含フッ素アニオンである。)

(ただし、Rは、主鎖が炭素、酸素、窒素、硫黄、リンの少なくともいずれかからなる主鎖原子数4〜5の単結合の末端を1つと二重結合の末端を1つ有する有機結合基または芳香族性環を形成する有機結合基であり、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、または少なくとも水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。また、Xは、含フッ素アニオンである。)
【請求項3】
前記非水電解質は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンからなる群から選ばれる1種以上の有機溶媒を含有していることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の非水電解質。
【請求項4】
前記非水電解質が含有しているアニオン種が、BF、PF、CFSO、N(CFSO、N(CSO、N(CFSO)(CSO、C(CFSO及びC(CSOからなる群の中から選択された1種以上であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の非水電解質。
【請求項5】
正極、負極及び非水電解質を具備し、請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の非水電解質を適用して組み立てた非水電解質電池。
【請求項6】
前記負極は、グラファイトが用いられていることを特徴とする請求の範囲第5項記載の非水電解質電池。
【請求項7】
外装体に金属樹脂複合材料を用いたことを特徴とする請求の範囲第5項または第6項に記載の非水電解質電池。

【国際公開番号】WO2004/051784
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【発行日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556836(P2004−556836)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014896
【国際出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(000006688)株式会社ユアサコーポレーション (21)
【Fターム(参考)】