説明

非水電解質電池ならびに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム

【課題】 巻回電極体を有する非水電解質電池において、電池特性を維持するとともに電極の破断を抑制する。
【解決手段】 巻回電極体が外装缶に収容された非水電解質電池において、巻回電極体の外周部に位置するセパレータの巻回終端部が、正極および負極のうち、より外周側に位置する正極および負極のいずれかの巻回終端部よりも長く形成されるようにし、巻回電極体の最外周部が、セパレータの正極および負極のいずれかの巻回終端部よりも長い部分によって巻回電極体の外周の1周以上4周未満巻回されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池特性を維持するとともに電極の破断を抑制する非水電解質電池に関する。また、本技術は、この非水電解質電池を用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ビデオカメラ、ノート型パーソナルコンピューター等の携帯情報電子機器の普及に伴い、これらの機器の高性能化、小型化および軽量化が図られている。これらの機器の電源には、使い捨ての一次電池や繰り返し使用できる二次電池が用いられているが、高性能化、小型化、軽量化、経済性等の総合的なバランスの良さから、二次電池、特にリチウムイオン二次電池の需要が伸びている。また、これらの機器では、更なる高性能化や小型化等が進められており、リチウムイオン二次電池に関しても、高エネルギー密度化が要求されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される正極活物質および負極活物質は、比較的良好なサイクル特性を維持しながらの高容量化の観点で材料開発が進められている。しかしながら、リチウムを吸蔵、放出の可逆性を安定して維持できる材料は限られており、高容量化の手段は、一定体積に充填する活物質量を増やしていくという選択をせざるを得ない状況になっている。活物質の充填量を増やすことで、充電時の巻回電極体の膨張量も増加する。それにより、電池缶へ掛かる応力が増え、巻回電極体内部に配されている電極端部やリードなどの段差によりセパレータが局所的に引き伸ばされて、正極と負極との間の電極間距離が狭くなる。そして、この狭小部位に金属が析出し、内部短絡を引き起こす問題がある。
【0004】
また、高容量化の観点から、一定体積中に充填する活物質量を最大限まで増やすために、充放電反応に寄与しない電極集電体およびセパレータ等は、より薄層化した設計となっている。セパレータと同様に、電極集電体は、電池充電時に局所的に引き伸ばされ破断に至る場合もある。この場合、電池内部での導通が確保できなくなるだけでなく、破断した電極集電体切断面がセパレータを貫通し、内部短絡を引き起こすことで、発火や破裂などの危険状態に発展するおそれもある。
【0005】
このような問題に対して、例えば下記の特許文献1では、セパレータの厚み方向に存在する電極端部、電極リードなどの段差位置を適切に配置することで、応力を分散させる試みがなされている。
【0006】
一方で、高容量化、高体積効率化を目的として、下記の特許文献2に示すように、セパレータを薄層化するとともに、耐酸化性を改善するためにセパレータ表面に無機物質と樹脂からなる耐熱層を形成する試みがなされている。また、下記の特許文献3のように、炭素系材料を上回る高容量負極として、リチウム合金系活物質も検討されており、リチウムの吸蔵、放出時の膨張収縮量を抑制する材料組成の検討も進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−91076
【特許文献2】特開2007−188777
【特許文献3】特開2006−134758
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の高容量化設計においてセパレータ厚みはより薄くなり、上述の特許文献1のように段差位置を制御するだけでは電極間の内部短絡を完全に抑制することが難しい。また、特許文献2および特許文献3のように、高容量化、高体積効率化等のような近年の要求を満たす電池構成では、特許文献1のような制御のみでは、内部短絡の完全な抑制がより困難となる。特に、特許文献2では、耐熱層を設けることで電極とセパレータとの間での摩擦が増加してしまい、電池膨張時の電極に対する拘束力が強くなり、電極集電体の破断に不利な設計となってしまう。また、特許文献3では、負極活物質として高容量の材料を用いるため、電池内部への負極活物質充填量を減らすことができるものの、負極活物質の膨張量が炭素系負極活物質よりも大きいために、巻回電極体の膨張は同様に起こり、電極集電体の破断等における内部短絡の危険性は回避できていない。
【0009】
本技術は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池特性を維持するとともに電極の破断を抑制する非水電解質電池、ならびに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解消するために、本技術の非水電解質電池は、帯状の正極集電体の少なくとも一方の面に、正極活物質を含有する正極活物質層が形成された正極と、帯状の負極集電体の少なくとも一方の面に、負極活物質を含有する負極活物質層が形成された負極とが、セパレータを介して積層および巻回された巻回電極体と、
非水電解質と、
巻回電極体と非水電解質とを収容する外装体と
を備え、
巻回電極体が、
巻回電極体の外周部に位置するセパレータの巻回終端部が、正極および負極のうち、より外周側に位置する正極および負極のいずれかの巻回終端部よりも長く形成され、
巻回電極体の最外周部が、セパレータによって巻回電極体の外周の1周以上4周未満巻回されている
ことを特徴とする。
【0011】
本技術の非水電解質電池では、巻回電極体の平均素子径をLとした際に、巻回電極体におけるセパレータの巻回終端部から、正極および負極のうち、より外周側に位置する正極および負極のいずれかの巻回終端部までの距離Yが下記の式(1)で示されることが好ましい。
3.1L<Y<12.5L ・・・式(1)
【0012】
さらに、本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の非水電解質電池を備えることを特徴とする。
【0013】
本技術の非水電解質電池は、巻回電極体と外装体との間にクッション性を付与することができるため、巻回電極体が膨張し、外装体の内壁と接触することにより巻回電極体にかかる応力を、巻回電極体最外周部のセパレータによって吸収・分散することができる。また、巻回電極体の最外周部に巻回するセパレータの長さを上述の範囲に調整することにより、クッション性を維持しつつ、充放電時において正極活物質層、負極活物質層等にかかる応力を大きくなりすぎないようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本技術によれば、電池特性を低下させることなく電極の破断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本技術の第1の実施の形態にかかる円筒型非水電解質電池の一構成例を示す断面図である。
【図2】本技術の第1の実施の形態にかかる円筒型非水電解質電池に収容される巻回電極体の一構成例を示す断面図である。
【図3】本技術の第1の実施の形態にかかる円筒型非水電解質電池に収容される巻回電極体の一構成例を示す断面図である。
【図4】本技術の第1の実施の形態にかかる円筒型非水電解質電池に収容される巻回電極体の一構成例を示す断面図である。
【図5】本技術の第1の実施の形態にかかる円筒型非水電解質電池に用いるセパレータの一構成例を示す断面図である。
【図6】本技術の第1の実施の形態にかかる円筒型非水電解質電池に収容される巻回電極体の他の構成例を示す断面図である。
【図7】本技術の第1の実施の形態にかかる円筒型非水電解質電池に収容される巻回電極体の他の構成例を示す断面図である。
【図8】本技術の第2の実施の形態にかかる角型非水電解質電池の一構成例を示す断面図である。
【図9】本技術の非水電解質電池を用いた電池パックの構成例を示すブロック図である。
【図10】本技術の非水電解質電池を住宅用の蓄電システムに適用した例を示す概略図である。
【図11】本技術の非水電解質電池が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下のように行う。
1.第1の実施の形態(本技術の巻回電極体を用いた円筒型非水電解質電池の例)
2.第2の実施の形態(本技術の巻回電極体を用いた角型非水電解質電池の例)
3.第3の実施の形態(非水電解質電池を用いた電池パックの例)
4.第4の実施の形態(非水電解質電池を用いた蓄電システム等の例)
【0017】
1.第1の実施の形態
(1−1)非水電解質電池の構成
図1は、第1の実施の形態にかかる非水電解質電池10の一例を示す断面図である。非水電解質電池10は、例えば充電および放電が可能な非水電解質二次電池である。この非水電解質電池10は、いわゆる円筒型と呼ばれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、図示しない液体状の非水電解質(以下、非水電解液と適宜称する)とともに帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。
【0018】
電池缶11は、例えばニッケルめっきが施された鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12a、12bがそれぞれ配置されている。
【0019】
電池缶11の材料としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等が挙げられる。この電池缶11には、非水電解質電池10の充放電に伴う電気化学的な非水電解液による腐食を防止するために、例えばニッケル等のメッキが施されていても良い。電池缶11の開放端部には、正極リード板である電池蓋13と、この電池蓋13の内側に設けられた安全弁機構および熱感抵抗素子(PTC素子:Positive Temperature Coefficient)17が、絶縁封口のためのガスケット18を介してかしめられることにより取り付けられている。
【0020】
電池蓋13は、例えば電池缶11と同様の材料により構成されており、電池内部で発生したガスを排出するための開口部が設けられている。安全弁機構は、安全弁14とディスクホルダ15と遮断ディスク16とが順に重ねられている。安全弁14の突出部14aは遮断ディスク16の中心部に設けられた孔部16aを覆うように配置されたサブディスク19を介して巻回電極体20から導出された正極リード25と接続されている。サブディスク19を介して安全弁14と正極リード25とが接続されることにより、安全弁14の反転時に正極リード25が孔部16aから引き込まれることを防止する。また、安全弁機構は、熱感抵抗素子17を介して電池蓋13と電気的に接続されている。
【0021】
安全弁機構は、電池内部短絡あるいは電池外部からの加熱等により非水電解質電池10の内圧が一定以上となった場合に、安全弁14が反転し、突出部14aと電池蓋13と巻回電極体20との電気的接続を切断するものである。すなわち、安全弁14が反転した際には遮断ディスク16により正極リード25が押さえられて安全弁14と正極リード25との接続が解除される。ディスクホルダ15は絶縁性材料からなり、安全弁14が反転した場合には安全弁14と遮断ディスク16とが絶縁される。
【0022】
また、電池内部でさらにガスが発生し、電池内圧がさらに上昇した場合には、安全弁14の一部が裂壊してガスを電池蓋13側に排出可能としている。
【0023】
また、遮断ディスク16の孔部16aの周囲には例えば複数のガス抜き孔(図示せず)が設けられており、巻回電極体20からガスが発生した場合にはガスを効果的に電池蓋13側に排出可能な構成としている。
【0024】
熱感抵抗素子17は、温度が上昇した際に抵抗値が増大し、電池蓋13と巻回電極体20との電気的接続を切断することによって電流を遮断し、過大電流による異常な発熱を防止する。ガスケット18は、例えば絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0025】
非水電解質電池10内に収容される巻回電極体20は、中空円筒形状のセンターピン24を中心に巻回されている。センターピン24は、電池内部の圧力異常時に巻回電極体20の潰れを防止または抑制して内部短絡を防止するとともに、電池缶11の底部で発生したガスを上部の安全弁機構側に移動させる機能を有する。センターピン24は、軽くて強度の大きい金属材料、すなわちステンレス(SUS)、ニッケル(Ni)あるいはチタン(Ti)等から構成されることが好ましい。センターピン24は、その外径をできるだけ小さくするとともに、中空部の内径をできるだけ大きくすることが好ましい。これにより、ガス排出能力を保ちつつ、体積効率を向上させることができる。
【0026】
巻回電極体20からは、正極21と電気的に接続された正極リード25と、負極22と電気的に接続された負極リード26とが導出されている。正極リード25は、上述のように、安全弁14に溶接されて電池蓋13と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接されて電気的に接続されている。
【0027】
[巻回電極体]
図2は、巻回電極体20の外観を示す斜視図である。図3は、図2に示した巻回電極体20の横断面図であり、巻回中心部を省略したものである。図4は、図3に示した巻回電極体20の横断面図の一部を拡大して表すものである。
【0028】
図2〜図4に示すように、巻回電極体20は、帯状の正極21と帯状の負極22とをセパレータ23を介して対向するようにして積層した積層電極体を長手方向に巻回し、必要に応じて巻回終端部を固定部材27で固定したものである。正極21および負極22は、2枚のセパレータ23(セパレータ23Aおよび23B)とともに、正極21、セパレータ23A、負極22、セパレータ23Bの順に積層および巻回されている。また、正極21、負極22およびセパレータ23は、長手方向の一端を巻回始端部として、巻回始端部から巻回され、長手方向の他端を巻回終端部として、巻回電極体20の最外周部で巻回を終了する。
【0029】
図2および図3に示すように、本技術の巻回電極体20は、巻回電極体の外周部が、正極21および負極22よりも充分に長く形成されたセパレータ23によって、巻回電極体の外周部の1周以上4周未満の範囲で巻回されたものである。より具体的には、巻回電極体の外周部、すなわち積層電極体の巻回終端部において、正極21および負極22のうち、より外周側に位置する電極の巻回終端部よりも長く形成されたセパレータの巻回終端領域の長さが、巻回電極体20の外周部の1周以上4周未満の長さとされているものである。
【0030】
このように、巻回電極体20の外周部がセパレータ23によって巻回されることにより、巻回電極体20と電池缶11との間にクッション性を付与することができる。これにより、膨張した巻回電極体20が電池缶11の内壁と接触することにより巻回電極体にかかる応力を吸収・分散することができる。そして、巻回電極体20が膨張した際に、巻回電極体20の最外周部から巻回電極体20の中心方向に向かってかかる応力(正極集電体21Aおよび負極集電体22Aに対する剪断応力)を低減することができ、正極集電体21Aおよび負極集電体22Aの破断を抑制することができる。
【0031】
また、巻回電極体20の最外周部に巻回するセパレータ23の長さを上述の範囲に調整することにより、クッション性を維持しつつ、充放電時において正極活物質層21B、負極活物質層22B等にかかる応力を大きくなりすぎないようにすることができる。このため、サイクル特性等の電池特性を低下させることなく維持することもできる。
【0032】
以下の説明および図では、セパレータ23のうち、より外周側に位置する正極21および負極22のいずれかの巻回終端部よりも長い巻回終端領域を余剰セパレータ23L、余剰セパレータ23Lの長さ(余剰領域の長さ)をセパレータ余剰長と適宜称する。また、図3では、正極21の巻回電極体20外周側終端部である正極巻回終端部21Eと、負極22の巻回電極体20外周側終端部である負極巻回終端部22Eとが、ほぼ同位置にあり、かつ負極22がより外周側に位置する巻回電極体20の例を示す。また、図3は、巻回電極体20の外周部が余剰セパレータ23Lによって約2周巻回して覆われている状態を示す。
【0033】
このように、セパレータ余剰長を巻回電極体20の外周部に対して1周以上4周未満の長さとするには、巻回電極体の平均素子径(平均の直径)をLとした場合に、下記の式(1)を満たすようにセパレータ余剰長Yを調整する必要がある。
3.1L<Y<12.5L ・・・式(1)
例えば、電池形状がJIS C8711に準拠したICR18650である場合には、セパレータ余剰長Yが53mm以上220mm以下程度となることが好ましい。
【0034】
また、より好ましくは、巻回電極体20の外周部が、余剰セパレータ23Lによって巻回電極体20の外周の1周以上3周未満巻回された巻回電極体20である。この場合には、巻回電極体の平均素子径(平均の直径)をLとした場合に、下記の式(2)を満たすようにセパレータ余剰長Yを調整する必要がある。
3.1L<Y<9.4L ・・・式(2)
【0035】
上述の範囲外にセパレータ余剰長が短く、余剰セパレータ23Lによって巻回される周回数が1周未満となった場合には、充分なクッション性が得られないため好ましくない。この場合、電極膨張時に電池缶11によって巻回電極体20にかかる応力を余剰セパレータ23Lによって吸収・分散することができにくくなり、電極切れやそれに伴う内部短絡、または電池特性の低下が生じる。
【0036】
一方、上述の範囲外にセパレータ余剰長が長い場合には、巻回電極体20の外周部に巻回される余剰セパレータ23Lの巻回数が多くなりすぎるため、電池缶11内における余剰セパレータ23Lの占有割合が大きくなり好ましくない。この場合、巻回電極体20のサイズが小さくなり、電池容量が低下してしまう。また、電池容量を低減させないために巻回電極体20のサイズを維持する場合には、余剰セパレータ23Lにより巻回電極体20にかかる応力が大きくなり、電極切れやそれに伴う内部短絡、または電池特性の低下が生じる。余剰セパレータ23Lの巻回数が多くなりすぎた場合には、クッション効果が得られにくく、また、余剰セパレータによって付与されるクッション効果以上に巻回電極体20が圧迫されてしまう。
【0037】
以下、正極21、負極22、セパレータ23について、詳細に説明する。
【0038】
[正極]
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔等の金属箔により構成されている。
【0039】
正極活物質層21Bは、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0040】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、(化I)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、(化II)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、(化III)、(化IV)もしくは(化V)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、(化VI)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または(化VII)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)またはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0041】
(化I)
LipNi(1-q-r)MnqM1r(1-y)z
(式中、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0042】
(化II)
LiaM2bPO4
(式中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0043】
(化III)
LifMn(1-g-h)NigM3h(1-j)k
(式中、M3は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0044】
(化IV)
LimNi(1-n)M4n(1-p)q
(式中、M4は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0045】
(化V)
LirCo(1-s)M5s(1-t)u
(式中、M5は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0046】
(化VI)
LivMn(1-w)M6wxy
(式中、M6は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0047】
(化VII)
LizM7PO4
(式中、M7は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0048】
更にまた、より高い電極充填性とサイクル特性が得られるという観点から、上記リチウム含有化合物のいずれかより成る芯粒子の表面を、他のリチウム含有化合物のいずれかより成る微粒子で被覆した複合粒子としてもよい。
【0049】
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子などが挙げられる。酸化物は、例えば、酸化バナジウム(V25)、二酸化チタン(TiO2)または二酸化マンガン(MnO2)などである。二硫化物は、例えば、二硫化鉄(FeS2)、二硫化チタン(TiS2)または二硫化モリブデン(MoS2)などである。カルコゲン化物は、特に層状化合物やスピネル型化合物が好ましく、例えば、セレン化ニオブ(NbSe2)などである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレンあるいはポリピロールなどである。もちろん、正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0050】
また、導電剤としては、例えばカーボンブラックあるいはグラファイトなどの炭素材料等が用いられる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0051】
[負極]
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。
【0052】
負極集電体22Aは、例えば、銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔またはステンレス(SUS)等の金属箔により構成されている。中でも、特に銅箔を用いることが好ましい。本技術における負極集電体22Aは、従来よりも厚さが小さいことが好ましい。例えば、電池形状がJIS C8711に準拠したICR18650である場合には、負極集電体22Aの厚さが8μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。従来、この電池形状の非水電解質電池10においては、負極集電体22Aの厚さが例えば12μm以上20μm以下の範囲で用いられており、充放電に伴う電極の破断の問題は生じにくかった。一方、体積効率の観点から、電池容量に直接寄与しない負極集電体22Aの厚さを小さくすることが求められているが、一般的に薄い集電体は破断しやすい。本技術のように、巻回電極体20の外周部に余剰セパレータ23Lを巻回させた構成は、負極集電体22Aにかかる応力を低減することができるため、電極の破断が生じやすい厚さ8μm以上10μm以下の範囲の負極集電体22Aを用いた場合に特に効果的である。
【0053】
なお、上述の負極集電体22Aの厚み範囲は、上述の電池形状の場合に好適な範囲であり、より電池径、電池高さが大きい非水電解質電池10の場合には、負極集電体22Aについて、上述の厚み範囲よりもやや厚くなる。
【0054】
また、この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。なお、負極集電体22Aの表面粗さは、任意に設定可能である。
【0055】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の導電剤および結着剤を含んで構成されている。
【0056】
なお、この非水電解質電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0057】
また、この非水電解質電池は、完全充電状態における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、例えば4.20V以上6.00V以下の範囲内になるように設計されている。また、例えば、満充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下とされることが好ましい。満充電状態における開回路電圧が4.25V以上とされる場合は、4.20Vの電池と比較して、同じ正極活物質であっても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整される。これにより、高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0058】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0059】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0060】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0061】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0062】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0063】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0064】
中でも、この負極材料としては、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズ(Sn)とコバルト(Co)との合計に対するコバルト(Co)の割合が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
【0065】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)が好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
【0066】
なお、このSnCoC含有材料は、スズと、コバルトと、炭素とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このSnCoC含有材料では、構成元素である炭素(C)の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズ(Sn)等が凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素(C)が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
【0067】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0068】
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0069】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。また、セパレータ23は、正極21および負極22よりも巻回終端部を長く形成し、巻回電極体20の外周部を1周以上4周未満巻回することにより、巻回電極体20と電池缶11との間にクッション性を付与するものである。セパレータ23には、非水電解液が含浸されている。この非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0070】
セパレータ23は、例えば、不織布もしくは樹脂材料を主成分とする微多孔性樹脂膜である。樹脂材料としては、例えばポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィンを主成分とする微多孔膜は、ショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池安全性を図ることができるからである。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)の単体またはこれらの混合体を用いることが好ましい。
【0071】
セパレータ23は、ポリオレフィン以外にもポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂材料のいずれかを含むようにしてもよい。耐酸化性に優れるためである。また、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる微多孔性樹脂膜と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂からなる微多孔性樹脂膜とを積層した構造とされていてもよい。
【0072】
さらに、図5に示すように、基材23aの少なくとも一方の表面に、金属酸化物等の無機粒子を含む樹脂層からなる表面層23bを設けた構成としても良い。なお、図5は、基材23aの両面に表面層23bを設けた構成の断面図を示す。
【0073】
基材23aとしては、一般的にセパレータとして用いることが可能な微多孔性樹脂膜が用いられる。具体的には、上述の様なポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、もしくはその混合樹脂からなる微多孔性樹脂膜、あるいは、ポリオレフィン系樹脂からなる微多孔性樹脂膜とフッ素系樹脂からなる微多孔性樹脂膜との積層樹脂膜等が用いられる。
【0074】
表面層23bを構成する樹脂材料としては、耐熱性樹脂、耐酸化性樹脂等が好ましく、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。耐熱性樹脂としては、融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の樹脂材料が好ましい。
【0075】
表面層23bを構成する無機粒子としては、電気絶縁性の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等を挙げることができる。金属酸化物としては、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)等を好適に用いることができる。これらセラミックスは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。セパレータ23の表面層23bにこれら無機粒子を含む場合には、例えば3次元網目構造を有する樹脂材料に無機粒子が担持されることが好ましい。
【0076】
無機粒子は耐熱性を有し、セパレータ23の収縮を抑制するため好ましい。また、無機粒子は耐酸化性を有し、電極、特に充電時の正極近傍における酸化環境に対して強い耐性を有する。このため、セパレータ23の表面層23bが酸化環境に晒されて劣化し、基材23aの引裂強度を補ってセパレータ23全体としての引裂強度を向上させる効果が低減することを抑制することができる。このため、セラミックスが混合された表面層23bが基材23aの一方の面のみに形成されたセパレータ23を用いる場合、表面層23bは、正極に対向する面に形成されることが好ましい。
【0077】
無機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、繊維状およびランダム形状等の形状を有する無機粒子のいずれも用いることができる。
【0078】
無機粒子は、セパレータ23の強度に与える影響、塗工面の平滑性の観点から、一次粒子の平均粒径を表面層23bの厚さに対して、50%以下とすることが好ましい。特に、一次粒子の平均粒径は1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、特に、1nm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。なお、平均粒径はレーザ回折散乱法により測定される平均粒径(D50)である。このような一次粒子の平均粒径は、電子顕微鏡により得た写真を、粒子径計測器で解析する方法により測定することができる。
【0079】
無機粒子の一次粒子の平均粒径をこの範囲とすることにより、正極21および負極22間の距離を小さくすることができる。このため、限られたスペースで活物質充填量を充分に得ることができ、高い電池容量を得ることができる。また、無機粒子の一次粒子の平均粒径が大きすぎる場合には、セパレータ23が脆くなる、セパレータ23表面(無機粒子含有樹脂の塗工面)が粗くなる、または無機粒子を含む樹脂溶液を基材23a上に塗布して表面層23bを形成する場合に、無機粒子を含む樹脂溶液が塗布されない部分が生じる等の問題が起こるおそれがある。
【0080】
セパレータ23の厚みは、12μm以上20μm以下とすることが好ましい。基材23aと表面層23bとの積層構造を有するセパレータ23についても同様である。上記範囲外にセパレータ23が薄い場合、セパレータとしての機能を充分に得られず、また、本技術の特徴である、巻回電極体20の外周部におけるクッション性に劣る。上述の範囲外にセパレータ23が厚い場合には、電池の体積効率が低下したり、巻回電極体20と電池缶1とのクリアランスが小さくなり、巻回電極体20にかかる応力が大きくなる。
【0081】
なお、一般的に、上述の様な積層構造のセパレータを用いた場合には、正極21および負極22と、セパレータ23との間の摩擦が増加してしまう。このため、活物質層膨張時において、正極21および負極22と、セパレータ23との拘束力が強くなり、集電体の破断には不利な設計となってしまう。しかしながら、本技術の構成を用いることで、巻回電極体20と電池缶11との間で生じる応力を低減することができるため、全体として電極の破断が生じにくくなるため好ましい。
【0082】
なお、表面層23bは、無機粒子を含有しない、耐熱性樹脂および耐酸化性樹脂の少なくとも一方を含む樹脂材料からなる樹脂層としてもよい。
【0083】
[非水電解液]
非水電解液は、電解質塩と、この電解質塩を溶解する非水溶媒とを含む。
【0084】
電解質塩は、例えば、リチウム塩等の軽金属化合物の1種あるいは2種以上を含有している。このリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SiF6)、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)等が挙げられる。中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムからなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。
【0085】
非水溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトン等のラクトン系溶媒、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチル等の炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類等の非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
また、非水溶媒として、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルを混合して用いることが好ましく、環状炭酸エステルまたは鎖状炭酸エステルの水素の一部または全部がフッ素化された化合物を含むことがより好ましい。このフッ素化された化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:FEC)およびジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:DFEC)を用いることが好ましい。負極活物質としてケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)等の化合物を含む負極22を用いた場合であっても、充放電サイクル特性を向上させることができるためである。なかでも、非水溶媒としてジフルオロエチレンカーボネートを用いることが好ましい。サイクル特性改善効果に優れるためである。
【0087】
(1−2)非水電解質電池の製造方法
[正極の製造方法]
正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
【0088】
[負極の製造方法]
負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0089】
[セパレータの製造方法]
基材23aおよび表面層23bが積層した構成としたセパレータ23は、下記の方法により製造することができる。
【0090】
まず、表面層23bを構成する樹脂材料および無機粒子と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の分散溶媒とを、所定の質量比で混合し、樹脂材料をN−メチル−2−ピロリドンに十分に溶解させて、樹脂材料が溶解された樹脂溶液スラリーを作製する。このとき、ビーズミル等の攪拌性の高い装置を用いて攪拌することが好ましい。
【0091】
ここで、分散溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、トルエン等が用いられるが、溶解性および高分散性の観点からN−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
【0092】
続いて、卓上コーター等の塗布装置を用いて、作製した樹脂溶液スラリーを基材23aの表面に塗布する。基材23aは、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を、一軸延伸もしくは二軸延伸により微多孔性樹脂膜としたものである。次に、樹脂溶液スラリーを塗布した基材23aを水浴に所定時間浸漬する。樹脂溶液スラリーを塗布した基材23aを、樹脂材料に対して貧溶媒であり、かつ樹脂材料を溶解させる分散溶媒に対しては良溶媒である水等に接触させることにより、樹脂溶液スラリーを相分離させ、最後に熱風にて乾燥させることにより、基材23aの表面に表面層23bが形成されたセパレータ23を得る。
【0093】
このような方法を用いることにより、急激な貧溶媒誘起相分離現象により表面層23bが形成され、表面層23bは、共重合体による骨格が微細な三次元網目状に連結した構造を有する。すなわち、樹脂材料を溶解した樹脂溶液スラリーを塗布した基材23aを水等の溶媒に接触させることで、溶媒交換が起こる。これにより、樹脂溶液スラリーにおいてスピノーダル分解を伴う急激な(速度の速い)相分離が生じ、樹脂材料が独特の三次元網目構造を有するようになる。
【0094】
このようにして作製した表面層23bは、独特の多孔構造を形成している。そして、無機粒子が樹脂材料の三次元網目構造に担持される。この構造によって、優れた非水電解液含浸性およびイオン導電性を実現可能としている。
【0095】
また、無機粒子を含有する表面層23bの形成方法は、上述の方法に限られない。例えば、溶融された樹脂材料と無機粒子とを混合することにより、樹脂材料と無機粒子との間の相互作用により樹脂材料と無機粒子との間の一部分に空隙が生じる。このような空隙を生じさせた状態で樹脂材料を凝固させることにより、セパレータ23の一部として機能する、多孔性の表面層23bを形成してもよい。
【0096】
なお、表面層23bは、無機粒子を含有しない、耐熱性樹脂および耐酸化性樹脂の少なくとも一方を含む樹脂材料からなる樹脂層としてもよい。
【0097】
[非水電解液の調製]
非水電解液は、非水溶媒に対して電解質塩を溶解させて調製する。
【0098】
[非水電解質電池の組み立て]
正極集電体21Aに正極リード25を溶接等により取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接等により取り付ける。その後、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し巻回電極体20とする。このとき、巻回電極体20の最外周部が、セパレータ23の巻回終端部の余剰部(余剰セパレータ23L)によって巻回電極体の外周の1周以上4周未満巻回されるようにする。
【0099】
続いて、正極リード25の先端部を安全弁機構に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接する。この後、巻回電極体20の巻回面を一対の絶縁板12,13で挟み、電池缶11の内部に収納する。巻回電極体20を電池缶11の内部に収納したのち、非水電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋13、安全弁機構および熱感抵抗素子17をガスケット18を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した非水電解質電池が形成される。
【0100】
この非水電解質電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、非水電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、非水電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
【0101】
(1−3)第1の実施の形態における変形例
図6に、巻回電極体20の第1の変形例を示す。図6では、巻回電極体20の巻回最外周部において、例えば1周にわたって負極集電体22Aの露出部が設けられたものである。
【0102】
すなわち、図6の巻回電極体20では、負極22の巻回終端部において、負極集電体22Aの片面上に負極活物質層22Bを形成しない領域である負極集電体露出部22Cを、巻回電極体20の外周1周分の領域に形成する。負極集電体露出部22Cは、巻回電極体20の外周側面に設けるようにする。これにより、負極22の正極活物質層21Bと対向しない部分に、電池反応に寄与しない負極活物質層22Bが形成されないようにすることができる。
【0103】
また、図7に、巻回電極体20の第2の変形例を示す。図7では、巻回電極体20の巻回外周部において、例えば1周にわたって正極集電体21Aと負極集電体22Aとがセパレータ23を介して対向する集電体対向部が設けられたものである。
【0104】
すなわち、図7の巻回電極体20では、正極21の巻回終端部において、正極集電体21A上に正極活物質層21Bを形成しない領域である正極集電体露出部21Cを形成する。また、同様に負極22の巻回終端部において、負極集電体22A上に負極活物質層22Bを形成しない領域である負極集電体露出部22Cを形成する。正極集電体露出部21Cは、負極集電体露出部22Cと対向する領域に設ける。このとき、例えば正極集電体露出部21Cと負極集電体露出部22Cとの寸法差を2mm以上とすることが好ましい。これにより、正極21および負極22の巻き終わり部分では、正極集電体露出部21Cと負極集電体露出部22Cとが対向する集電体対向部が設けられる。
【0105】
このような集電体対向部を設けることにより、非水電解質電池10が外部から潰される等により変形・圧壊した場合に、正極集電体21Aと負極集電体22Aとが接触し、低抵抗の短絡を生じさせることができる。これにより、非水電解質電池10の変形・圧壊時に、急激な大電流が生じ、異常発熱や発煙等のいわゆる熱暴走を生じさせにくくすることができる。
【0106】
〔効果〕
第1の実施の形態の非水電解質電池は、電池容量および電池特性の維持、ならびに電極切れの抑制効果を得ることができる。
【0107】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、巻回電極体の最外周に余剰セパレータを巻回させてクッション性を付与した角型非水電解質電池について説明する。
【0108】
(2−1)非水電解質電池の構成
図8は、第2の実施の形態にかかる非水電解質電池30の構成を表すものである。この非水電解質電池は、いわゆる角型電池といわれるものであり、巻回電極体40を角型の外装缶31内に収容したものである。
【0109】
非水電解質電池30は、角筒状の外装缶31と、この外装缶31内に収納される発電要素である巻回電極体40と、外装缶31の開口部を閉じる電池蓋32と、電池蓋32の略中央部に設けられた電極ピン33等によって構成されている。
【0110】
外装缶31は、例えば、鉄(Fe)等の導電性を有する金属によって、中空で有底の角筒体として形成されている。この外装缶31の内面は、例えば、ニッケルめっきを施したり導電性塗料を塗布する等して、外装缶31の導電性を高める構成とすることが好ましい。また、外装缶31の外周面は、例えば、プラスチックシートや紙等によって形成される外装ラベルで覆われたり、絶縁性塗料が塗布されて保護されてもよい。電池蓋32は、外装缶31と同じく、例えば、鉄(Fe)等の導電性を有する金属により形成されている。
【0111】
巻回電極体40は、正極および負極をセパレータを介して積層し、小判型に細長く巻回することによって得られる。正極、負極、セパレータおよび非水電解液は、第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。また、正極および負極と、セパレータの間には、非水電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の非水電解質層(ゲル電解質層)が形成されていてもよい。
【0112】
このような構成を有する巻回電極体40には、正極集電体に接続された多数の正極端子41と、負極集電体に接続された多数の負極端子とが設けられている。すべての正極端子41および負極端子は、巻回電極体40の軸方向の一端に導出されている。そして、正極端子41は、電極ピン33の下端に溶接等の固着手段によって接続されている。また、負極端子は外装缶31の内面に溶接等の固着手段によって接続されている。
【0113】
電極ピン33は導電性の軸部材からなり、その頭部を上端に突出させた状態で絶縁体34によって保持されている。この絶縁体34を介して電極ピン33が電池蓋32の略中央部に固定されている。絶縁体34は絶縁性の高い材料で形成されていて、電池蓋32の表面側に設けた貫通孔35に嵌合されている。また、貫通孔35には電極ピン33が貫通され、その下端面に正極端子41の先端部が固定されている。
【0114】
このような電極ピン33等が設けられた電池蓋32が、外装缶31の開口部に嵌合されており、外装缶31と電池蓋32との接触面が溶接等の固着手段で接合されている。これにより、外装缶31の開口部が電池蓋32により密封されて、気密および液密に構成されている。この電池蓋32には、外装缶31内の圧力が所定値以上に上昇したときに当該電池蓋32の一部を破断させて内部圧力を外部に逃がす(放出させる)内圧開放機構36が設けられている。
【0115】
内圧開放機構36は、電池蓋32の内面において長手方向に直線的に延在された2本の第1の開口溝36a(第1の開口溝36aのうちの1本は図示せず)と、同じく電池蓋32の内面において長手方向と直交する幅方向に延在されて両端が2本の第1の開口溝36aに連通される第2の開口溝36bとから構成されている。2本の第1の開口溝36aは、電池蓋32の幅方向に対向するように位置する長辺側2辺の内側近傍において電池蓋32の長辺側外縁に沿うように互いに平行に設けられている。また、第2の開口溝36bは、電極ピン33の長手方向の一側において一方の短辺側外縁と電極ピン33との略中央部に位置するように設けられている。
【0116】
第1の開口溝36aおよび第2の開口溝36bは、例えばともに断面形状が下面側に開口したV字形状とされている。なお、第1の開口溝36aおよび第2の開口溝36bの形状は、この実施の形態に示すV字形に限定されるものではない。例えば、第1の開口溝36aおよび第2の開口溝36bの形状をU字形や半円形としてもよい。
【0117】
[セパレータ]
セパレータは、第2の実施の形態におけるセパレータ23と同様の構成とすることができる。
【0118】
[ゲル電解質層]
ゲル電解質層は、第1の実施の形態に記載された非水電解液を高分子化合物に保持させたものである。ゲル電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。
【0119】
非水電解液を保持する高分子化合物は、非水溶媒を吸収してゲル化するものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)あるいはビニリデンフルオライド(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイド(PEO)あるいはポリエチレンオキサイド(PEO)を含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)あるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)を繰返し単位として含むものなどが挙げられる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0120】
特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましく、中でも、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとを成分として含む共重合体が好ましい。さらに、この共重合体は、マレイン酸モノメチルエステル(MMM)などの不飽和二塩基酸のモノエステル、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)などのハロゲン化エチレン、炭酸ビニレン(VC)などの不飽和化合物の環状炭酸エステル、またはエポキシ基含有アクリルビニルモノマーなどを成分として含んでいてもよい。より高い特性を得ることができるからである。
【0121】
非水電解液としては、第1の実施の形態と同様のものを用いることができる。
【0122】
(2−2)非水電解質電池の製造方法
この非水電解質電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0123】
[正極および負極の製造方法]
正極および負極は、第1の実施の形態と同様の方法により作製することができる。
【0124】
[非水電解質電池の組み立て]
まず、正極および負極のそれぞれに、非水電解液と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させてゲル電解質層を形成する。次に、ゲル電解質層が形成された正極および負極を用いて、第1の実施の形態と同様の方法により小判型に細長く巻回された巻回電極体40を作製する。続いて、巻回電極体40を例えばアルミニウム(Al)、鉄(Fe)などの金属よりなる角型缶である外装缶31内に収容する。
【0125】
そして、電池蓋32に設けられた電極ピン33と、巻回電極体40から導出された正極端子41とを接続した後、電池蓋32にて封口し、電解液注入口37から非水電解液を注入して封止部材38にて封止する。以上によって、この非水電解質電池を得ることができる。
【0126】
〔効果〕
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0127】
3.第3の実施の形態
第3の実施の形態では、第1の実施の形態および第2の実施の形態における非水電解質電池を用いた非水電解質電池が備えられた電池パックについて説明する。
【0128】
図9は、本技術の非水電解質電池を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303aとを備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0129】
また、電池パックは、正極端子321および負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0130】
組電池301は、複数の非水電解質電池301aを直列および/または並列に接続してなる。この非水電解質電池301aは本技術の非水電解質電池である。なお、図9では、6つの非水電解質電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0131】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。なお、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けてもよい。
【0132】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0133】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0134】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各非水電解質電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0135】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、非水電解質電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0136】
ここで、例えば、非水電解質電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0137】
充放電スイッチは、例えばMOSFET等の半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0138】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0139】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や 、製造工程の段階で測定された各非水電解質電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値等が予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。 (また、非水電解質電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0140】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0141】
4.第4の実施の形態
第4の実施の形態では、第1および第2の実施の形態にかかる非水電解質電池および第3の実施の形態にかかる電池パックを搭載した電子機器、電動車両および蓄電装置等の機器について説明する。第2〜第3の実施の形態で説明した非水電解質電池および電池パックは、電子機器や電動車両、蓄電装置等の機器に電力を供給するために使用することができる。
【0142】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、 エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられる。
【0143】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等が挙げられ、これらの駆動用電源または補助用電源として用いられる。
【0144】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用または発電設備用の電力貯蔵用電源等が挙げられる。
【0145】
以下では、上述した適用例のうち、本技術の非水電解質電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0146】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0147】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0148】
(4−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の非水電解質電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図10を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0149】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0150】
蓄電装置103に対して、本技術の非水電解質電池が適用される。本技術の非水電解質電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0151】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種のセンサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0152】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0153】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていてもよい。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信してもよいが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信してもよい。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されてもよい。
【0154】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、発電装置104、電力消費装置105、各種のセンサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていてもよい。
【0155】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0156】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されてもよいし、単独で構成されていてもよい。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0157】
(4−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、図11を参照して説明する。図11に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0158】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本技術の非水電解質電池が適用される。
【0159】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等が含まれる。
【0160】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0161】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両200が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0162】
バッテリー208は、ハイブリッド車両200の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0163】
図示しないが、非水電解質電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行う情報処理装置を備えていてもよい。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置等がある。
【0164】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0165】
以下、実施例により、本技術を詳細に説明する。なお、本技術の構成は下記の実施例に限定されるものではない。
【0166】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)95質量%と、導電剤としてグラファイト2質量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%とを混合して正極合剤とし、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーを得た。次に、この正極合剤スラリーを、正極集電体である厚み15μmの帯状アルミニウム(Al)箔の両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層を形成した。このとき、帯状アルミニウム箔の巻回始端側端部、巻回終端側端部のそれぞれにおいて、正極集電体露出部を形成するようにして正極合剤スラリーを塗布した。最後に、露出した正極集電体の一端にアルミニウム(Al)製の正極リードを溶接して取り付けて正極とした。
【0167】
[負極の作製]
負極活物質として黒鉛粉末96質量%と、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)2質量部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)2質量%とを混合して負極合剤とし、負極合剤をイオン交換水に分散させて負極合剤スラリーを得た。次に、この負極合剤スラリーを、負極集電体である厚み8μmの帯状銅(Cu)箔の両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層を形成した。このとき、帯状銅箔の巻回始端側端部、巻回終端側端部のそれぞれにおいて、負極集電体露出部を形成するようにして負極合剤スラリーを塗布した。最後に、露出した負極集電体の一端にニッケル(Ni)製の負極リードを溶接して取り付けて負極とした。
【0168】
[セパレータの作製]
平均粒径0.5μmのアルミナ(Al23)粒子(住友化学(株)製AKP−3000、アルミナ含有量99.995重量%以上)と質量平均分子量が約100万のポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、質量比9:1で混合し、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させ、ビーズミルを用いて攪拌して樹脂スラリーを得た。
【0169】
次に、樹脂スラリーを、卓上コーターにて基材である厚さ12μmの帯状ポリエチレン微多孔膜(東燃ゼネラル石油(株)製)の一方の面に厚さ30μmで塗布した。続いて樹脂スラリーを塗布したポリエチレン微多孔膜を水浴に15分間浸漬してポリフッ化ビニリデンを相分離させた後、熱風にて乾燥させ、樹脂層を形成した。また、基材のもう一方の面にも同様の方法により耐熱層を形成した。これにより、表面にアルミナが担持された樹脂層を有する厚さ16μmのセパレータを得た。
【0170】
なお、基材であるポリエチレン微多孔膜は、正極および負極とともに積層、巻回して巻回電極体とした際に、セパレータが巻回電極体の最外周を余分に巻回する長さとした。実施例1では、後述するように、巻回電極体において、より外周側に位置する電極が負極であり、セパレータが、巻回電極体において負極の巻回終端部から55mm長くなるような長さとした。
【0171】
[非水電解液の調整]
炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)および炭酸エチルメチル(EMC)を、質量比EC:DMC:EMC=30:40:30で混合して非水溶媒とした後、非水溶媒に電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/kgの濃度で溶解させて非水電解液とした。
【0172】
[電池の組み立て]
正極と、セパレータと、負極とを、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層し、負極が正極よりも外周側となるようにして積層体の長手方向に多数回巻回させた後、巻き終わり部分を粘着テープで固定することにより巻回電極体を形成した。このとき、巻回電極体の平均素子径は17.30mmであり、巻回電極体の最外周においてセパレータの余剰分が約1周巻回する構成となった。
【0173】
なお、巻回電極体の平均素子径は、巻回電極体の中心部外径を360°回転させながら測定し、測定結果の最大径と最小径の平均値から算出した。巻回電極体の中心部外径は、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製、デジマチックハイトゲージHDM−AX)を用いて測定した。
【0174】
次に、正極リードを電池蓋と接合された安全弁に接合すると共に、負極リードを負極缶に接続した。巻回電極体を一対の絶縁板で挟んで電池缶の内部に収納した後、巻回電極体の中心にセンターピンを挿入した。
【0175】
続いて、電池缶の内部に絶縁板の上から非水電解液を注液した。最後に、電池缶の開放部に、安全弁、ディスクホルダ、遮断ディスクからなる安全弁機構、PTC素子ならびに電池蓋を、絶縁封口ガスケットを介してかしめることにより密閉した。これにより、電池形状がJIS C8711に準拠したICR18650、電池容量が2800mAhの円筒型電池を作製した。
【0176】
<実施例2>
セパレータの長さが、巻回電極体において負極の巻回終端部から110mm長くなるような長さとした以外は、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。なお、実施例2において巻回電極体の平均素子径は17.38mmであり、巻回電極体の外周においてセパレータの余剰分が約2周巻回する構成となった。
【0177】
<実施例3>
セパレータの長さが、巻回電極体において負極の巻回終端部から210mm長くなるような長さとした以外は、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。なお、実施例3において巻回電極体の平均素子径は17.46mmであり、巻回電極体の外周においてセパレータの余剰分が4周弱巻回する構成となった。
【0178】
<実施例4>
負極集電体の厚さを10μmとし、セパレータの長さが、巻回電極体において負極の巻回終端部から110mm長くなるような長さとした以外は、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。なお、実施例4において巻回電極体の平均素子径は17.48mmであり、巻回電極体の外周においてセパレータの余剰分が約2周巻回する構成となった。
【0179】
<比較例1>
セパレータの長さが、巻回電極体において負極の巻回終端部から10mm長くなるような長さとした以外は、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。なお、比較例1において巻回電極体の平均素子径は17.22mmであり、巻回電極体の外周においてセパレータの余剰分が約1/5周巻回する構成となった。
【0180】
<比較例2>
セパレータの長さが、巻回電極体において負極の巻回終端部から410mm長くなるような長さとした以外は、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。なお、比較例2において巻回電極体の平均素子径は17.68mmであり、巻回電極体の外周においてセパレータの余剰分が約7.5周巻回する構成となった。
【0181】
<比較例3>
負極集電体の厚さを12μmとし、セパレータの長さが、巻回電極体において負極の巻回終端部から110mm長くなるような長さとした以外は、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した。なお、実施例4において巻回電極体の平均素子径は17.48mmであり、巻回電極体の外周においてセパレータの余剰分が約2周巻回する構成となった。
【0182】
[電池の評価]
(a)サイクル性能評価
各実施例および各比較例の円筒型電池を、23℃雰囲気中、0.7Cの充電電流で電池電圧が4.3Vとなるまで定電流充電を行った後、電池電圧4.3Vにて定電圧充電を行い、充電電流が50mAとなった時点で充電を終了した。この満充電状態の円筒型電池を、45℃雰囲気下で2時間保存した。続いて、電池電圧が3.0Vとなるまで定電流放電を行った。
【0183】
続いて、0.7Cの充電電流で電池電圧が4.3Vとなるまで定電流充電を行った後、電池電圧4.3Vにて定電圧充電を行い、充電電流が50mAとなった時点で充電を終了し、終止電圧3.0Vで定電流放電した際の放電容量を初回放電容量として測定した。続いて、同様の充放電条件での充放電サイクルを500サイクル行い、500サイクル目の放電容量を500サイクル目放電容量として測定した。下記の式から、500サイクル後劣化率を算出した。
500サイクル後劣化率[%]={1−(500サイクル目の放電容量/初回放電容量)}×100
【0184】
(b)電極切れ評価
各実施例および各比較例の円筒型電池を、23℃雰囲気中、0.7Cの充電電流で電池電圧が4.3Vとなるまで定電流充電を行った後、電池電圧4.3Vにて定電圧充電を行い、充電電流が50mAとなった時点で充電を終了した。この満充電状態の円筒型電池を、45℃雰囲気下で2時間保存した。続いて、電池電圧が3.0Vとなるまで定電流放電を行った。
【0185】
続いて、0.7Cの充電電流で電池電圧が4.4V(0.1Vの過充電状態)となるまで定電流充電を行った後、電池電圧4.4Vにて定電圧充電を行い、充電電流が50mAとなった時点で充電を終了し、終止電圧3.0Vで定電流放電する充放電サイクルを20サイクル行った。この後、円筒型電池を解体し、巻回電極体を巻きほぐして電極破断の有無を確認した。電極切れ評価は、各実施例および比較例あたり5本の円筒型電池について電極が破断した本数を確認し、電極切れ発生率を算出した。
【0186】
以下の表1に、評価結果を示す。
【0187】
【表1】

【0188】
表1から分かるように、電極巻回電極体最外周部のセパレータ余剰長を55mm以上210mm以下の範囲、すなわちICR18650サイズの円筒型電池において、巻回電極体の最外周部において余剰セパレータが1周以上4周未満で巻回されるように制御すると、サイクル劣化と電極切れをともに抑制することができた。これは、巻回電極体最外周部と電池缶との間にクッション性が付与されることで、負極活物質層の膨張に伴う巻回電極体の膨張時に、巻回電極体の外周側部分が電池缶によって圧迫されることを抑制できるためであると考えられる。
【0189】
これに対して、比較例1で示したセパレータ余剰長を10mmとした巻回型電池では、電極切れが顕著に発生した。これは、巻回電極体最外周部の全領域が余剰セパレータで覆われていないため、巻回電極体最外周部でのクッション性が十分でなく、巻回電極体に応力がかかったためであると考えられる。
【0190】
一方、比較例2で示したセパレータ余剰長を410mmまで伸ばした巻回型電池では、電極切れは発生しないものの、劣化が顕著に発生した。これは、余剰セパレータにより巻回電極体の平均素子径が太くなりすぎてしまうために、電極膨張時に巻回電極体全体にかかる応力が高くなりすぎてしまうためであると考えられる。本技術の各実施例および比較例では、巻回型電池の電池容量が同じになるように設計されていることから、余剰セパレータが多いほど巻回電極体と電池缶との間のクリアランスが小さくなってしまう。
【0191】
さらに、比較例3で示した負極集電体厚みを12μmとした巻回型電池では、電極切れは発生しないものの、所定の電池容量を設計するために活物質層が厚くなり、サイクル時の劣化率が高くなった。これは、負極集電体が厚くなることにより電極切れは発生しにくくなるものの、巻回電極体の平均素子径が大きくなり、巻回電極体に対する応力が大きくなるためであると考えられる。
【0192】
また、比較例1から、薄い負極集電体を用いた場合は電池切れが顕著であるものの、本技術の巻回電極体を用いた各実施例は、負極集電体厚みを従来の厚みとした比較例3と同等の電池切れ発生率とすることができた。
【0193】
一般的に、集電体は厚い方が切れにくいため好ましい。一方、電池反応そのものに寄与しない集電体は、体積効率の観点からはできるだけ薄くすることが好ましい。本技術のように、体積効率の観点から、一般的には切れやすい薄い集電体を用いた場合に、余剰セパレータにより巻回電極体の外周部にクッション性を付与することで、サイクル特性の維持と電極切れの抑制の双方の効果を得ることができる。また、本技術では、電極にかかる応力を緩和することができるため、薄い集電体を用いることが可能であり、電極膨張時の応力がかかりにくくなる観点から、巻回電極体の平均素子径を小さくできる薄い集電体を用いることが好ましい。
【0194】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例においては、巻回構造を有する二次電池について説明したが、本技術は、正極および負極を折り畳んだり、あるいは積み重ねた構造を有する二次電池に適用して、電極体に対するクッション性を得るようにすることができる。
【0195】
また、上記実施の形態および実施例においては、非水電解液またはゲル電解質を用いる場合について説明したが、本技術は、いかなる形態の非水電解質を用いる場合についても適用することができる。他の形態の非水電解質としては、例えば、非水電解液を含有しない全固体電解質等が挙げられる。
【0196】
更に、上記実施の形態および実施例では、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池について説明したが、本技術は、負極活物質にリチウム金属を用い、負極の容量が、リチウムの析出および溶解による容量成分により表されるいわゆるリチウム金属二次電池、または、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるようにした二次電池についても同様に適用することができる。
【0197】
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)等の他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、またはアルミニウム等の他の軽金属を用いる場合についても、本技術を適用することができる。
【0198】
なお、本技術は、以下の構成をとることもできる。
[1]
帯状の正極集電体の少なくとも一方の面に、正極活物質を含有する正極活物質層が形成された正極と、帯状の負極集電体の少なくとも一方の面に、負極活物質を含有する負極活物質層が形成された負極とが、セパレータを介して積層および巻回された巻回電極体と、
非水電解質と、
上記巻回電極体と上記非水電解質とを収容する外装缶と
を備え、
上記巻回電極体が、
該巻回電極体の外周部に位置する上記セパレータの巻回終端部が、上記正極および上記負極のうち、より外周側に位置する該正極もしくは該負極のいずれかの巻回終端部よりも長く形成され、
上記巻回電極体の最外周部が、上記セパレータによって該巻回電極体の外周の1周以上4周未満巻回されている
非水電解質電池。
[2]
電池形状がJIS C8711に準拠したICR18650であり、
上記負極集電体の厚みが8μm以上10μm以下である
[1]に記載の非水電解質電池。
[3]
上記負極集電体が、銅箔からなる
[2]に記載の非水電解質電池。
[4]
上記巻回電極体の平均素子径をLとした際に、上記巻回電極体における上記セパレータの巻回終端部から、上記正極および上記負極のうち、より外周側に位置する該正極もしくは該負極のいずれかの巻回終端部までの距離Yが下記の式(1)で示される
[1]〜[3]のいずれかに記載の非水電解質電池。
3.1L<Y<12.5L ・・・式(1)
[5]
上記セパレータの厚みが12μm以上20μm以下である
[1]〜[4]のいずれかに記載の非水電解質電池。
[6]
上記セパレータが、
不織布もしくは樹脂材料を主成分とする微多孔性樹脂膜からなる基材と、
上記基材の少なくとも一方の表面に形成された、耐熱性樹脂および耐酸化性樹脂の少なくとも一方を含む3次元網目構造を有する表面層と
からなる
[1]〜[5]のいずれかに記載の非水電解質電池。
[7]
上記表面層が、無機粒子を含有する
[6]に記載の非水電解質電池。
[8]
[1]に記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装とを有する電池パック。
[9]
[1]に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける電子機器。
[10]
[1]に記載の非水電解質電池と、
前記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。
[11]
[1]に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
[12]
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う
[11]に記載の蓄電装置。
[13]
[1]に記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。
【符号の説明】
【0199】
10…非水電解質電池、11…電池缶、12a,12b…絶縁板、13…電池蓋、14…安全弁、14a…突出部、15…ディスクホルダ、16…遮断ディスク、16a…孔部、17…熱感抵抗素子、18…ガスケット、19…サブディスク、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、21C…正極集電体露出部、21E…正極巻回終端部、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、22C…負極集電体露出部、22E…負極巻回終端部、23…セパレータ、23A…セパレータ、23B…セパレータ、23L…余剰セパレータ、23a…基材、23b…表面層、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード、27…固定部材、30…非水電解質電池、31…外装缶、32…電池蓋、33…電極ピン、34…絶縁体、35…貫通孔、36…内圧開放機構、36a…第1の開口溝、36b…第2の開口溝、37…電解液注入口、38…封止部材、40…巻回電極体、41…正極端子、100…蓄電システム、101…住宅、102a…火力発電、102b…原子力発電、102c…水力発電、102…集中型電力系統、103…蓄電装置、104…発電装置、105…電力消費装置、105a…冷蔵庫、105b…空調装置、105c…テレビジョン受信機、105d…風呂、106…電動車両、106a…電気自動車、106b…ハイブリッドカー、106c…電気バイク、107…スマートメータ、108…パワーハブ、109…電力網、110…制御装置、111…センサ、112…情報網、113…サーバ、200…ハイブリッド車両、201…エンジン、202…発電機、203…電力駆動力変換装置、204a、204b…駆動輪、205a、205b…車輪、208…バッテリー、209…車両制御装置、210…各種センサ、211…充電口、301…組電池、301a…二次電池、302a…充電制御スイッチ、302b…ダイオード、303a…放電制御スイッチ、303b…ダイオード、304…スイッチ部、307…電流検出抵抗、308…温度検出素子、310…制御部、311…電圧検出部、313…電流測定部、314…スイッチ制御部、317…メモリ、318…温度検出部、321…正極端子、322…負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極集電体の少なくとも一方の面に、正極活物質を含有する正極活物質層が形成された正極と、帯状の負極集電体の少なくとも一方の面に、負極活物質を含有する負極活物質層が形成された負極とが、セパレータを介して積層および巻回された巻回電極体と、
非水電解質と、
上記巻回電極体と上記非水電解質とを収容する外装体と
を備え、
上記巻回電極体が、
該巻回電極体の外周部に位置する上記セパレータの巻回終端部が、上記正極および上記負極のうち、より外周側に位置する該正極および該負極のいずれかの巻回終端部よりも長く形成され、
上記巻回電極体の最外周部が、上記セパレータによって該巻回電極体の外周の1周以上4周未満巻回されている
非水電解質電池。
【請求項2】
電池形状がJIS C8711に準拠したICR18650であり、
上記負極集電体の厚みが8μm以上10μm以下である
請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
上記負極集電体が、銅箔からなる
請求項2に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
上記巻回電極体の平均素子径をLとした際に、上記巻回電極体における上記セパレータの巻回終端部から、上記正極および上記負極のうち、より外周側に位置する該正極および該負極のいずれかの巻回終端部までの距離Yが下記の式(1)で示される
請求項1に記載の非水電解質電池。
3.1L<Y<12.5L ・・・式(1)
【請求項5】
上記セパレータの厚みが12μm以上20μm以下である
請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項6】
上記セパレータが、
不織布もしくは樹脂材料を主成分とする微多孔性樹脂膜からなる基材と、
上記基材の少なくとも一方の表面に形成された、耐熱性樹脂および耐酸化性樹脂の少なくとも一方を含む3次元網目構造を有する表面層と
からなる
請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項7】
上記表面層が、無機粒子を含有する
請求項6に記載の非水電解質電池。
【請求項8】
請求項1に記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装とを有する電池パック。
【請求項9】
請求項1に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項10】
請求項1に記載の非水電解質電池と、
前記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。
【請求項11】
請求項1に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項12】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う
請求項11に記載の蓄電装置。
【請求項13】
請求項1に記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−26072(P2013−26072A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160876(P2011−160876)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】