説明

非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌中での複合多糖の異種発現および分泌による、病原性グラム陽性細菌の莢膜多糖の新規効率的製造方法

本発明は、非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌での複合莢膜多糖の異種発現、産生および/若しくは分泌のための方法および手段を提供する。本発明は、とりわけ、病原性細菌種からの異種複合多糖の発現および/若しくは分泌が可能な非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌を提供する。こうした細菌およびその中で産生される多糖は、本発明により、感染性細菌性疾患の処置および予防のためのワクチン接種のための組成物を提供するのに応用しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学の分野、とりわけ、微生物学、ならびに細菌細胞中でのタンパク質および多糖の異種発現に関する。本発明はまた、医学の分野、とりわけ、感染性疾患の処置および予防、より具体的にはワクチン接種の分野にも関する。
【背景技術】
【0002】
微生物多糖(PS)は、リポ多糖(LPS)中のO−抗原として細胞表面と共有会合した莢膜多糖(CPS)として存在し得るか、若しくは細胞外多糖(EPS)として分泌され得、そして、侵襲性疾患を引き起こし得るグラム陽性および陰性双方の細菌性病原体の重要な病原性因子である。多くの侵襲性細菌は、人体への病原体の侵襲に不可欠の病原性因子である莢膜多糖を産生する。莢膜多糖は細胞表面で見出される主抗原であり、そしてワクチンの製造に頻繁に使用される。しばしばタンパク質担体と複合かつ/若しくは免疫応答を刺激するアジュバントと結合されたCPSを使用するワクチン接種は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)およびヘモフィルス インフルエンザ(Haemophilus influenzae)タイプb(Hib)のような細菌性病原体により引き起こされる感染性疾患に対し人類を保護するための強力な一アプローチである。
【0003】
精製若しくは純粋に有機の合成により容易に得られない、十分な量の安全、純粋かつ十分に定義された多糖は、安全かつ費用効率のよいワクチンの製造に決定的に重要である。従って、非病原性の非侵襲性細菌宿主細胞中での莢膜多糖の異種産生は、天然の供給源からのCPSの精製のための代替の効率的で単純、安全かつ費用効率のよい解決策である。
【0004】
CPSに対するかなりの量の研究が、肺炎球菌ともまた称される肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)で実施された。肺炎球菌は、気道、中耳の感染症および肺炎の共通原因である。最も重大な形態の肺炎球菌疾患は、肺炎、髄膜炎および敗血症である。肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)の疾患を引き起こす能力は、多糖莢膜のその発現と明瞭に関連づけられている。全部の臨床単離物が被包化されており(非特許文献1)、また、自発的な被包化されてない変異株は非毒性である(非特許文献2)からである。現在、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)について既知の最低90種の血清学的に異なる莢膜型が存在し(非特許文献3)、それぞれグリコシド結合の糖組成が異なる(概要については非特許文献4を参照されたい)。
【0005】
肺炎球菌感染症の処置は、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)の薬剤耐性株の蔓延により、より複雑かつ高価になった。これは、莢膜生合成の調節に関与する機構のわれわれの理解を向上させかつ肺炎球菌感染症を予防するための有効なワクチンを開発する必要性を促した。莢膜多糖は免疫原性でありかつワクチン抗原として使用される。精製された多糖若しくはそれらの複合糖質のいずれかに基づく数種のワクチンが現在市販されている(非特許文献4)。有効な肺炎球菌ワクチンの開発は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の抗原の多様性により複雑にされる。今日までに既知の90種以上の肺炎球菌の血清型は、それらのCPS産生および構造が大きく変動する。さらに、莢膜多糖は、若齢小児において、保護的かつ長期間持続する免疫保護を確実には誘導しない。現在の肺炎球菌ワクチンは、従って、20種までの血清型若しくはそれ以上からのCPSを含んでなる数種の血清型からの莢膜多糖を組合せる。こうした多血清型ワクチンは製造するのが高価かつ困難である。それは、多くの異なる病原性かつ危険な肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型の培養、CPSの単離および徹底的
な精製、細菌株およびCPS単離物の品質管理、それらを適切な若しくは所望の量で混合すること、ならびにワクチン接種のための組成物への処方を必要とする。
【0006】
最低数種の血清型特異的cps遺伝子を含有するcps遺伝子集団のDNAフラグメントの相同的組換えを介する、別の血清型の肺炎球菌細胞中での特定の1血清型の肺炎球菌CPSの製造もまた記述されている(特許文献1)。
【0007】
大部分の肺炎球菌莢膜多糖の産生は、グラム陰性細菌中でのO−抗原多糖の生合成について記述された(非特許文献5)と類似の経路を介して起こると期待される。多糖の反復単位が、細胞膜の細胞質側のグリコシルトランスフェラーゼ酵素の連続的作用により、脂質担体上で集成される。完成すれば、反復単位は、反復単位輸送体により細胞膜を横断して輸送され、そして成長する多糖鎖の還元末端に重合され(非特許文献6)、そして細胞壁に共有結合される(非特許文献7)。
【0008】
莢膜生合成をコードする遺伝子座はカセット様構造を有し;特定の莢膜構造を生じるのに必要とされる機能をコードする遺伝子は、全血清型に共通の調節遺伝子により隣接される。該共通領域は該集団の型特異的遺伝子の上流に位置し、そしてCpsA、CpsB、CpsCおよびCpsDをコードする(非特許文献8;非特許文献9)。cpsAの正確な機能はなお未知であるが、しかし、転写活性化因子としての機能が、ストレプトコッカス アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)でCpsAについて示され(非特許文献10)、また、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)におけるcpsAの突然変異は莢膜量の低減をもたらすが、しかし莢膜の大きさ分布を変えなかった(非特許文献11)。CpsB、CpsCおよびCpsDは、最近、CpsDに存在するチロシン残基での可逆的リン酸化事象を介する莢膜産生の調節に関与することが示された(非特許文献12;非特許文献11;非特許文献13)。非病原性のラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)細菌での多糖生合成をコードする遺伝子座(非特許文献14)、しかしまた、ブルガリア菌(Lactobacillus bulgaricus)(非特許文献15)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)(非特許文献16)、ラクトバシラス プランタラム(Lactobacillus plantarum)(非特許文献17)、ストレプトコッカス マセドニカス(Streptococcus macedonicus)(非特許文献18)、ラクトバシラス ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)(非特許文献19)のような他の非病原性のグラム陽性細菌に存在するものは、類似の方法で構成される。
【0009】
病原性かつ侵襲性の肺炎球菌(pneumococ)および非病原性の非侵襲性乳酸球菌は、それぞれ、CPS若しくはEPS遺伝子集団からの多糖生合成のための機構で共通の特徴を共有する。L.ラクティス(L.lactis)が、単一の連続移動的(processive)グリコシルトランスフェラーゼを包含するわずか3種のタイプ3生合成遺伝子の導入に際して、二糖反復単位を含有する比較的単純な肺炎球菌タイプ3多糖を産生することが可能であることが以前に示された(特許文献2、非特許文献20)。単純なタイプ3多糖の生合成は、連続移動的機構を介して、UDP−グルコースとUDP−グルクロン酸の間にグリコシド結合を形成するただ単一のグリコシルトランスフェラーゼを必要とする(非特許文献21)。L.ラクティス(L.lactis)中で発現される場合、肺炎球菌の血清型3CPSはL.ラクティス(L.lactis)細胞と会合したままである。該細胞会合は、細菌細胞および細胞破片からのCPSの迅速な分離を妨げる。徹底的な精製が必要とされ、細菌細胞若しくは細菌物質からのCPSの精製をより困難かつ高価にする。
【0010】
今日までに特徴づけられた肺炎球菌のcps遺伝子座の実験は、肺炎球菌血清型3およ
び37を除き、CPSの生合成が、莢膜多糖の重合の前の脂質結合した前駆体単位の形成を介して起こることを示す。これは、いわゆるプライミンググリコシルトランスフェラーゼ(priming glycosyl transferase)の作用により媒介される(非特許文献22)。タイプ3 CPSと対照的に、これらのより複雑な莢膜多糖の産生は、これまで、例えば乳酸球菌属(Lactococcus)スピーシーズのような非病原性かつ非侵襲性細菌で、いかなる手段によっても生じられ得なかった。乳酸球菌属(Lactococcus)スピーシーズのような非病原性かつ非侵襲性のグラム陽性宿主細菌中で複合肺炎球菌CPSを十分な量で産生することのこの不能は、肺炎球菌および病原性かつ/若しくは侵襲性グラム陽性細菌に対する他のワクチンのより良好、より安全かつより安価な製造方法の開発を妨げる。組換えの非病原性かつ非侵襲性グラム陽性細菌中での肺炎球菌CPSのようなグラム陽性CPSの異種発現は、この問題を克服するとみられる。乳酸細菌に基づく製造方法は、通気を必要としないため、容易にスケールアップ可能、確実、低廉かつ便宜的であるという利点を有する。
【0011】
従って、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)のような、全部のグラム陽性の病原性かつ/若しくは侵襲性細菌からの複合CPSの、非病原性の非侵襲性グラム陽性宿主細菌中での異種発現を提供することが、本発明の一目的である。本発明は、脂質結合した中間体若しくは脂質結合した前駆体単位を介して合成される反復オリゴ糖単位の重合を含んでなる、複合形態のCPSを包含する。
【特許文献1】米国特許第5,948,900号
【特許文献2】第WO98/31786号
【非特許文献1】Whatmoreら、2000
【非特許文献2】Velascoら、1995
【非特許文献3】Henrichsen、1999
【非特許文献4】Weintraub(2003)
【非特許文献5】Whitfield、1995
【非特許文献6】WhitfieldとRoberts、1999
【非特許文献7】Sorensenら、1990
【非特許文献8】Guidolinら、1994
【非特許文献9】Moronaら、1997
【非特許文献10】Cieslewiczら、2001
【非特許文献11】Benderら、2003
【非特許文献12】BenderとYother、2001
【非特許文献13】Moronaら、2003
【非特許文献14】Van Kranenburgら、1997
【非特許文献15】Lamotheら、2002
【非特許文献16】Stingeleら、1996
【非特許文献17】Kleerebezemら、2003
【非特許文献18】Jollyら、2001
【非特許文献19】Jollyら、2002
【非特許文献20】Gilbertら、2000
【非特許文献21】Carteeら、2000
【非特許文献22】Kranenburgら 1999
【発明の開示】
【0012】
[発明の要約]
本発明は、異種複合細菌CPSを発現することが可能なグラム陽性細菌を提供する。本発明はまた、これらの非病原性かつ非侵襲性グラム陽性宿主細菌中での複合CPSをコードする遺伝子集団の発現方法にも関する。本発明は、本発明の方法および用途に適する組換えDNAベクターを開示する。さらなる一局面において、本発明は、複合グラム陽性C
PS、とりわけ肺炎球菌CPSの異種製造および単離方法に関する。本方法において、CPSは本発明の非病原性の非侵襲性グラム陽性宿主細菌により産生され、そして、本発明のDNAベクターを使用する異種発現および合成に際して、グラム陽性CPS、とりわけ肺炎球菌CPSが、細胞外間隙および細菌培地に便宜的に分泌されて、CPSが宿主細菌若しくは培地から容易にかつ便宜的に単離されることを可能にする。なお別の局面において、本発明は、肺炎球菌CPS組成物の製造方法、改変された形態のCPS、およびCPS若しくはその改変された形態を含んでなるワクチンを提供する。これらの組成物は、病原性の侵襲性グラム陽性細菌に対する免疫応答を宿主で導き出すことが可能なワクチンとしてとりわけ有用と判明するであろう。単に制限しない一例として、本発明は、本発明のDNAベクターおよび方法を使用するラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)中での複合肺炎球菌タイプ14 CPSの発現により具体的に説明される。
【0013】
[発明の詳細な記述]
定義
遺伝子集団は、同一若しくは類似のタンパク質をコードしかつ通常は同一の染色体若しくはプラスミド上で一緒にグループ分けされ、ならびにその発現および翻訳が全体として該集団について調節される、一組の緊密に関係した遺伝子を含んでなる一配列(stretch)のDNAである。細菌では、遺伝子集団はオペロン(すなわち主として原核生物中で見出される、プロモーター、オペレーターおよび多数の構造遺伝子よりなる機能単位)ともまた称される。構造遺伝子は、一般に、数種の機能上関係する酵素をコードし、そして、それらは1種の(ポリシストロン性)mRNAとして転写されるとは言え、それぞれは独立に翻訳される。典型的なオペロンでは、オペレーター領域はmRNAの合成のスイッチを入れる若しくは切ることにおける制御要素として作用する。その中で構造遺伝子が調節遺伝子により産生されるリプレッサーの阻害に際してそのメッセージをmRNAの形態に転写する、オペレーター遺伝子の制御下のフィードバック系よりなる遺伝子単位。しばしば、転写終止が調節される細菌オペロンのアテニュエーター(attenuator)部位がここに包含される。
【0014】
本出願で定義されるところのDNAベクターは、分子クローニングの技術分野で既知のいかなるDNAベクター;いかなるウイルス、ファージ、ファージミド、コスミド、BAC、エピソーム若しくはプラスミドでもありうる。
【0015】
配列の同一性は、配列を比較することにより決定されるところの、2種若しくはそれ以上のアミノ酸(ポリペプチド若しくはタンパク質)配列または2種若しくはそれ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係と本明細書で定義する。当該技術分野において、「同一性」は、場合によっては、こうした一連の配列間の一致により決定されるところの、アミノ酸若しくは核酸配列間の配列の関係性の程度もまた意味している。2種のアミノ酸配列間の「類似性」は、1ポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存的アミノ酸置換を第二のポリペプチドの配列と比較することにより決定される。「同一性」および「類似性」は、限定されるものでないが(Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、ニューヨーク、1988;Biocomputing:Imformatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、ニューヨーク、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part I、Griffin,A.M.とGriffin,H.G.編、Humana Press、ニュージャージー、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heine,G.、Academic Press、1987;およびSequence Analysis Primer、Gribskov,M.とDevereux,J.編、M Stockton Press、ニューヨーク、1991;ならびにCarillo,H.とLipman,D.、SIAM J.Applied Math.、48:1073(1988)に記述されるものを挙げることができる既知の方法により容易に計算し得る。
【0016】
同一性の好ましい決定方法は、試験される配列間で最大の一致を与えるよう設計される。同一性および類似性の決定方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに体系化されている。2配列間の同一性および類似性の好ましいコンピュータプログラム決定方法は、例えば、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BestFit、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul,S.F.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)を包含する。BLAST XプログラムはNCBIおよび他の供給源から公的に入手可能である(BLAST Manual、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda,MD 20894;Altschul,S.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)。公知のSmith Watermanのアルゴリズムもまた同一性を決定するのに使用しうる。
【0017】
ポリペプチド配列比較のための好ましいパラメータは以下を包含する。すなわち、アルゴリズム:NeedlemanとWunsch、J.Mol Biol.48:443−453(1970);比較マトリックス(Comparison matrix):HentikoffとHentikoff、Proc.Natl.Acad.Sci,USA.89:10915−10919(1992)からのBLOSSUM62;ギャップペナルティ(Gap Penalty):12;およびギャップ長ペナルティ(Gap Length Penalty):4。これらのパラメータを用いて有用なプログラムは、ウィスコンシン州マディソンにあるGenetics Computer Groupから「Ogap」プログラムとして公的に入手可能である。前述のパラメータは、ペプチド配列比較のためのデフォルトのパラメータである(末端ギャップについてペナルティなしと一緒に)。核酸比較のための好ましいパラメータは以下を包含する。すなわち、アルゴリズム:NeedlemanとWunsch、J.Mol.Biol.48:443−453(1970);比較マトリックス(Comparison matrix):一致(matches)=+10、不一致(mismatch)=0;ギャップペナルティ(Gap Penalty):50;ギャップ長ペナルティ(Gap Length Penalty):3。ウィスコンシン州マディソンにあるGenetics Computer GroupからGapプログラムとして入手可能。核酸比較のためのデフォルトのパラメータが上に示される。
【0018】
所定の(組換え)核酸若しくはポリペプチド分子と、所定の宿主生物体若しくは宿主細胞の間の関係を示すのに使用される場合の「同種の(homologous)」という用語は、天然に、該核酸若しくはポリペプチド分子が、同一の種、好ましくは同一の変種若しくは株の宿主細胞若しくは生物体により産生されることを意味していることが理解される。宿主細胞に相同な場合、ポリペプチドをコードする核酸分子は、別のプロモーター配列、または、該当する場合は、その天然の環境で以外の別の分泌シグナル配列および/若しくは終止配列に作動可能に連結しうる。
【0019】
核酸配列の関係性を示すのに使用される場合、「同種の」という用語は、1種の一本鎖核酸配列が相補的な一本鎖核酸配列にハイブリダイズしうることを意味している。ハイブリダイゼーションの程度は、配列間の同一性の量、ならびに、当業者に公知のところの温度および塩濃度のようなハイブリダイゼーション条件を包含する多数の要因に依存しうる。好ましくは、同一な領域は約5bp以上であり、より好ましくは同一な領域は10bp以上である。
【0020】
本明細書で使用されるところの「プロモーター」という用語は、遺伝子の転写の方向に関して上流に配置される1個若しくはそれ以上の遺伝子の転写を制御するように機能し、かつ、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位の存在により構造的に同定される核酸フラグメント、ならびに、限定されるものでないが転写因子結合部位、リプレッサーおよび活性化タンパク質結合部位を挙げることができるいずれかの他のDNA配列、ならびにプロモーターからの転写の量を調節するように直接若しくは間接的に作用することが当業者に既知のヌクレオチドのいずれかの他の配列を指す。「構成的」プロモーターは、大部分の環境および生理学的条件下で活性であるプロモーターである。「誘導可能な」プロモーターは、特定の環境若しくは生理学的条件下でのみ活性であるプロモーターである。
【0021】
本明細書で使用されるところの「作動可能に連結される」という用語は、機能的関係にあるポリヌクレオチド要素の連結を指す。核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に配置される場合に「作動可能に連結される」。例えば、プロモーター若しくはエンハンサーは、それがコーディング配列の転写に影響を及ぼす場合に、該コーディング配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されるは、連結されているDNA配列が典型的に連続しており、かつ、2種のタンパク質コーディング領域を結合することが必要な場合は連続的かつ読み枠にあることを意味している。
【0022】
ワクチン:免疫系に、腫瘍または細菌若しくはウイルスのような微生物に応答させることを意味している物質若しくは一群の物質。ワクチンは、被験体の免疫系が、感染を認識しかつそれと戦い、ならびに癌細胞若しくは微生物および/またはウイルスに感染した細胞を破壊することを助け得る。ワクチン(接種される場合に痘瘡に対する保護を提供する牛痘の感染性病原体ワクシニアにちなんで名付けられた)は、特定の病原体、通常は細菌、ウイルス若しくは毒素に対し身体を防御するようにヒト若しくは動物の免疫系を準備するのに使用される。準備する対象の感染性病原体に依存して、ワクチンは、その病原性を喪失した弱められた細菌若しくはウイルス、または類毒素(感染性病原体からの改変された弱められた毒素若しくは粒子)であり得る。免疫系はワクチン粒子を外来と認識し、それらを破壊しかつそれらを「記憶する」。該病原体の病原性バージョンが現れる場合に、免疫系は迅速な攻撃のため準備され、該病原体が蔓延しかつ莫大な数まで増殖し得る前にそれを中和する。生しかし弱められた(弱毒)ワクチンは結核、狂犬病および痘瘡に対し使用され;殺された病原体はコレラおよび腸チフスに対し使用され;類毒素はジフテリアおよび破傷風に対し使用される。
【0023】
本発明の態様
第一の態様において、本発明は、
a)グラム陽性細菌種の莢膜多糖(CPS)血清型特異的遺伝子を含んでなる第一の異種DNAフラグメント、
b)共通の調節遺伝子およびa)の細菌と異なるグラム陽性細菌から得られるプライミンググリコシルトランスフェラーゼを含んでなる第二のDNAフラグメント
を含んでなり、
c)ならびに、前記フラグメントの発現に際してa)の細菌種の異種多糖を産生する、
非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌を提供する。とりわけ、本発明は、複合型CPSを産生する病原性かつ/若しくは侵襲性グラム陽性細菌種の異種血清型特異的cps遺伝子を発現する、非病原性かつ/若しくは非侵襲性グラム陽性細菌を提供する。本明細で定義されるところの複合CPSは、脂質結合した中間体を介して合成される反復オリゴ糖単位のポリマーとしてin vivoで産生されるCPSを含んでなる。より詳細には、複合莢膜多糖は、最低4個の糖の反復多成分単位のポリマーを含んでなる。反復単位は、脂質結
合した中間体に単糖単位を連結するグリコシルトランスフェラーゼの連続的作用により、細胞内で脂質担体上で集成される。完成すれば、脂質結合した反復単位は細胞膜を横断して輸送され、そしてポリメラーゼ酵素により重合される。対照的に、単純な型のCPS、例えば肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型3および37のCPSの合成は、脂質結合した中間体の介入を伴わずに、成長する多糖鎖に単糖を直接移動させる(Carteeら、2000)単一のグリコシルトランスフェラーゼを必要とする(Arrecubietaら、1996;Llullら、2001)。加えて、このグリコシルトランスフェラーゼは、成長する多糖鎖を膜を横断して輸送するようである。
【0024】
好ましい一態様において、本発明は、複合多糖(の少なくとも一部)を細胞外間隙、より好ましくは培地中に分泌するグラム陽性細菌を提供する。CPSの一画分は、かように、宿主細胞の細胞エンベロープ中に保持されうるが、しかしながら、好ましくは、CPSの主要な画分は培地中に分泌され、これは(連続)製造若しくは精製方法にとりわけ有利である。
【0025】
好ましくは、異種複合CPSを発現する細菌宿主は、乳酸杆菌属(Lactobacillus)、乳酸球菌属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、オエノコッカス属(Oenococcus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)よりなる非病原性かつ/若しくは非侵襲性のグラム陽性細菌、および、当該技術分野で既知の他の非病原性かつ/若しくは非侵襲性グラム陽性細菌の群から選択される。細菌宿主細胞は、好ましくはグラム陽性細菌、より好ましくは、乳酸杆菌属(Lactobacillus)、乳酸球菌属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、バシラス属(Bacillus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、プロピオン酸菌属(Propionibacterium)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)よりなる群から選択される属に属するグラム陽性細菌である。もっとも好ましくは、細菌宿主細胞は、アシドフィルス菌(L.acidophilus)、L.アミロボラス(L.amylovorus)、L.ババリカス(L.bavaricus)、乳酸短杆菌(L.brevis)、カセイ菌(L.caseii)、L.クリスパツス(L.crispatus)、L.クルバツス(L.curvatus)、デルブリュック菌(L.delbrueckii)、L.デルブリュキイ サブスピーシーズ ブルガリクス(L.delbrueckii subsp.bulgaricus)、醗酵乳酸杆菌(L.fermentum)、L.ガリナールム(L.gallinarum)、L.ガセリ(L.gasseri)、L.ヘルベチカス(L.helveticus)、イエンセン菌(L.jensenii)、L.ジョンソニイ(L.johnsonii)、L.ミヌティス(L.minutis)、L.ムリナス(L.murinus)、L.パラカセイ(L.paracasei)、L.プランタラム(L.plantarum)、L.ポンティス(L.pontis)、L.ロイテリ(L.reuteri)、L.サセイ(L.sacei)、L.サルバリウス(L.salvarius)、L.サンフランシスコ(L.sanfrancisco)、乳酸杆菌属(Lactobacillus)サブスピーシーズ、C.ピシコラ(C.piscicola)、枯草菌(B.subtilis)、ロイコノストック メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック ラクティス(Leuconostoc lactis)、ロイコノストック属(Leuconostoc)サブスピーシーズ、L.ラクティス サブスピーシーズ ラクティス(L.lactis subsp.lactis)、L.ラクティス サブスピーシーズ クレモリス(L.lactis subsp.cremoris)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、B.ビフィダム(B.bifidum)、B.ロンガム(B.longum)、B.インファンティス(B.infantis)、B.ブレベ(B.breve)、B.アドレセンテ(B.adolescente)、B.アニマリス(B.animalis)、B.ガリナールム(B.gallinarum)、B.マグナム(B.magnum)、B.サーモフィラス(B.thermophilus)よりなる群から選択される種に属する細菌である。
【0026】
血清型特異的配列は、好ましくは、本明細書で定義されるところの複合型CPSを産生するグラム陽性細菌から得られる。好ましくは、型特異的遺伝子は、連鎖球菌属(Streptococcus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、バシラス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)内の病原性かつ/若しくは侵襲性グラム陽性CPS産生細菌の群から得られるか、または、獣医学の分野(例えば家畜、愛玩動物)に関する連鎖球菌属(Streptococcus)スピーシーズのようなグラム陽性病原体でありうる。より具体的には、血清型特異的遺伝子は、限定されるものでないが、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、エンテロコッカス フェーカリス(Enterococcus faecalis)、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyrogenes)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcu aureus)、ストレプトコッカス アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、ストレプトコッカス ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス ミティス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス エクイ(Streptococcus equi)、炭疽菌(Bacillus anthracis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcu aureus)を挙げることができる公知のグラム陽性病原体から得られる。
【0027】
本発明の最も好ましい一態様において、かつ、実施例の節で具体的に説明されるとおり、本発明は、複合莢膜多糖を産生する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型から得られる異種血清型特異的遺伝子から複合CPSを産生する、非病原性かつ/若しくは非侵襲性グラム陽性細菌を提供する。これらの血清型は、血清型3、37を除く今日までに既知の全部の肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型、および、潜在的に、より単純な構造を有する異なる型のCPSを産生しかつその生合成が脂質結合した前駆体単位の結合を必要としない他の肺炎球菌血清型を含んでなる。肺炎球菌血清型(デンマーク型命名法)1、2、4、5、6A、6B、7A、7B、7C、7F、8、9A、9L、9N、9V、10A、10B、10C、11A、11B、11C、11F、12B、12F、13、14、15F、15A、15B、15C、16F、16A、17F、17A、18A、18B、18C、19F、19A、19B、19C、20、21、22F、22A、23A、23B、24F、24A、24B、25F、25A、27、28F、28A、29、33F、33A、33B、33C、10F、11D、12A、18F、23F、31、32F、32A、33D、34、35F、35A、35B、35C、36、38、39、40、41F、41A、42、43、44、45、46、47F、47A、48由来の型特異的遺伝子の使用は、本発明のとりわけ好ましい態様である。
【0028】
本発明の非病原性かつ/若しくは非侵襲性グラム陽性宿主細菌は、グラム陽性細菌のEPS若しくはCPS遺伝子集団から得られる共通の調節EPS若しくはCPS遺伝子を含んでなりかつ発現する。好ましくは、前記共通の調節EPS若しくはCPS遺伝子は、最低1種の共通の調節遺伝子epsA(若しくはcpsC)、epsB(若しくはcpsD)、および場合によってはepsC(若しくはcpsB)を含んでなる。好ましくは、共通の調節EPS若しくはCPS遺伝子は、epsD若しくはcpsE遺伝子によりコードされる、グラム陽性EPS若しくはCPS遺伝子集団のプライミンググリコシルトランスフェラーゼ(GTF)もまた含んでなる。
【0029】
EpsA、EpsB、EpsCおよびEpsDホモログについていくつかの特徴的特徴が存在する。EpsCホモログは、一般に、保存されたPHP(ポリメラーゼおよびヒスチジノールホスファターゼ)モチーフを含有する(AravindとKoonin、1998)。EpsAホモログは2個の保存された膜貫通セグメントを含有し、また、EpsBは保存されたヌクレオチド結合モチーフを含有する(FathとKolter、1993)。EpsDのようなホスホグリコシルトランスフェラーゼは、(Wangら、1996;Van Kranenburgら 1999)により以前に記述された、保存されたA、BおよびCブロックの存在により認識され得る。このグリコシルトランスフェラーゼ(GTF)は、第一の糖を脂質担体(最もありそうにはウンデカプレニルリン酸)に連結し、かつ、グラム陽性菌の間で保存され(最低30%の同一性)、そして従ってプライミンググリコシルトランスフェラーゼと呼称される。
【0030】
好ましくは、本発明のグラム陽性宿主細胞により発現される、epsA遺伝子にコードされるタンパク質は、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)EpsAと最低20、30、40、50、60、70、80若しくは90%のアミノ酸同一性を共有し、epsB若しくはepsCにコードされるタンパク質は、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)EpsBと最低20、30、40、50、60、70、80若しくは90%のアミノ酸同一性を共有し、そして、epsDにコードされるタンパク質は、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)EpsDと最低30、40、50、60、70、80若しくは90%のアミノ酸同一性を共有する。L.ラクティス(L.lactis)EpsA、EpsB、EpsCおよびEpsDのアミノ酸配列は、それぞれ配列表の配列番号1ないし4に提供され、かつ、Van Kranenburgら(1997)により公表されている。Swiss−Protデータベース番号は、EpsA、EpsB、EpsCおよびEpsDについてそれぞれO06029、O06030、O06031、O06032である。
【0031】
別の局面において、本発明は、非病原性かつ/若しくは非侵襲性グラム陽性細菌宿主細胞中でのグラム陽性複合CPS血清型特異的遺伝子の異種発現を賦与することが可能なDNAベクターを提供する。該DNAベクターは、グラム陽性複合CPS血清型特異的cps遺伝子をコードするDNAフラグメントを含んでなり、ここで、cps遺伝子の1種若しくはそれ以上は、莢膜多糖遺伝子集団から得られる型特異的遺伝子よりなる群から選択される。
【0032】
前記血清型特異的遺伝子は、多糖生合成遺伝子集団の共通の調節遺伝子のすぐ下流の20kbの領域内に位置する。該血清型特異的領域は、一般に、グリコシルトランスフェラーゼ、すなわち9〜14個の予測される膜貫通セグメントをもつ高度に疎水性のポリメラーゼ、および、一般に12〜14個の膜貫通ドメインを含有する反復単位の輸送に関与するタンパク質をコードする。該型特異的領域によりコードされるグリコシルトランスフェラーゼは、ヌクレオチド二リン酸糖(diphospho−sugar)、ヌクレオチド一リン酸糖および糖リン酸であり得(EC 2.4.1.x)、そして、Campbellら(1997)により最初に記述されたところの別個の配列に基づくファミリーに分類され得る。
【0033】
場合によっては、かつ、好ましくは、血清型特異的cps遺伝子を含んでなるDNA配列の血清型特異的フラグメントは、プライミンググリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含有しない。本発明のベクターは、共通の調節eps/cps遺伝子を含むか若しくは提供しても若しくはしなくてもよい。好ましくは、グラム陽性血清型特異的cps遺伝子を含んでなる本発明のDNAベクターは、機能的な共通の調節eps/cps遺伝子を含まず、かつ、epsA/cpsC、epsB/cpsD、epsC/cpsB、および/若しくはepsD/cpsEの遺伝子発現を提供しない。
【0034】
本発明のベクターで発現される型特異的遺伝子は、cpsE、cpsF、cpsG、cpsH、cpsI、cpsJ、cpsK、cpsL若しくはそれらのホモログよりなる群から選択しうる。好ましくは、CPS産生遺伝子集団の全部の型特異的遺伝子、若しくはその発現がCPS産生に不可欠である全部の型特異的遺伝子を、本発明のDNAベクターにクローン化しかつそれから発現させる。該ベクターは、ファージ若しくはウイルス、ファージミド、コスミドまたはBAC(細菌人工染色体)ベクターのような当該技術分野で既知のいずれのDNAベクターであってもよく、かつ、好ましくはプラスミドである。相同的組換え、遺伝子置換および/若しくはゲノム組込みに適するベクターもまた本発明の範囲内に包含される。型特異的遺伝子は、例えば選ばれたDNAベクターのクローニングサイズの制限を克服するために、1宿主細胞内の数種の異なるベクターからもまた発現させうる。例えば転写制御配列の選択、ベクターのバックボーン、選択可能なマーカーをコードする配列、複製起点、エンハンサー要素などのようなベクター要素の選択は、転写および翻訳が達成されるべきである宿主細胞に依存し、そして当業者により容易に決定される。原則として、宿主細胞中で活性であるいかなる転写調節エレメントも使用することができ、また、それは宿主細胞に対し同種若しくは異種でありうる。グラム陽性細菌のような原核生物細胞中での効率的転写のためには、好ましくは、原核生物転写制御配列を使用すべきである一方、真核生物宿主細胞中での転写および翻訳のためには、好ましくは真核生物起源の要素を使用する。一態様において、好ましくは、宿主細胞に対し同種であるプロモーターを使用する。強力な構成的プロモーターおよび誘導後に強く誘導されるプロモーターがとりわけ好ましい。
【0035】
本発明の高度に好ましい一態様において、型特異的cps遺伝子は、本明細書で以前に定義されたとおり合成される複合CPSを産生する、CPS産生肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型の群から;反復する脂質結合した前駆体オリゴ糖単位の重合により得られる。こうした型特異的遺伝子は、肺炎球菌血清型(デンマーク型命名法)1、2、4、5、6A、6B、7A、7B、7C、7F、8、9A、9L、9N、9V、10A、10B、10C、11A、11B、11C、11F、12B、12F、13、14、15F、15A、15B、15C、16F、16A、17F、17A、18A、18B、18C、19F、19A、19B、19C、20、21、22F、22A、23A、23B、24F、24A、24B、25F、25A、27、28F、28A、29、33F、33A、33B、33C、10F、11D、12A、18F、23F、31、32F、32A、33D、34、35F、35A、35B、35C、36、38、39、40、41F、41A、42、43、44、45、46、47F、47A、48から得ることができ、そしてとりわけ好ましい。
【0036】
本発明の好ましい一態様において、DNAベクター中の血清型特異的cps遺伝子は、EPS若しくはCPS遺伝子集団制御配列の転写制御下にある。前記EPS若しくはCPS遺伝子集団制御配列は、該血清型特異的遺伝子を得た遺伝子集団と異なる遺伝子集団からであることができ、そして、好ましくは、使用される非病原性かつ/若しくは非侵襲性
グラム陽性細菌宿主細胞からのEPS若しくはCPS遺伝子集団制御配列、および/または共通の調節eps若しくはcps遺伝子を得た遺伝子集団である。
【0037】
別の好ましい態様において、血清型特異的cps遺伝子は、グラム陽性EPS若しくはCPS遺伝子集団制御配列の制御下のポリシストロン性転写単位内に含まれ、場合によっては該集団中の血清型特異的cps若しくはeps遺伝子を置換若しくは部分的に置換する。しかしながら、EPS若しくはCPS遺伝子集団制御配列を別にして、当該技術分野で既知のプロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、インスレーター、ターミネーターのような他の細菌、ウイルス、人工、若しくはなお哺乳動物の制御配列もまた有利に適用されうる。クローニングおよび細菌形質転換の方法、DNAベクター、ならびに制御配列の使用は当業者に公知であり、そして、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら、Wiley Interscience、2004(引用することにより本明細書に組み込まれる)に見出されうる。
【0038】
本発明のグラム陽性血清型特異的遺伝子を含んでなるDNAベクターは、好ましくは、それ自体当該技術分野で既知の手段(例えば形質転換若しくは形質導入)により、該DNAベクター中の血清型特異的cps遺伝子と異なる種若しくは血清型の非病原性の非侵襲性グラム陽性宿主細菌に移入される。
【0039】
別の局面において、本発明は、
a)CPS産生に伝導性の条件下で、本発明のベクターおよび/若しくはDNAフラグメントを含んでなる本発明の細菌を培養すること、
b)産生された複合CPSの細菌細胞からの回収
の段階を含んでなる、非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌中での複合莢膜多糖(CPS)の異種製造方法を提供する。好ましい一態様において、非病原性かつ/若しくは非侵襲性グラム陽性細菌宿主細胞により産生されるCPSは細胞外環境に分泌され、そして細胞エンベロープに保持されないか若しくは部分的にのみ保持されて、産生された細胞外多糖が細菌培地から回収されることを可能にする。EPS/CPSの精製方法は当該技術分野で既知であり、そして、例えばLooijesteijnとHugenholtz(1999)若しくはGoncalvesら(2003)に見出しうる。
【0040】
なお別の態様において、本発明は、莢膜多糖、好ましくは、本発明の非病原性かつ/若しくは侵襲性のグラム陽性細菌宿主細胞により産生されかつそれから得られた、病原性かつ/若しくは侵襲性のグラム陽性細菌からの莢膜多糖を含んでなる製薬学的組成物を提供する。
【0041】
第一の態様において、本発明の製薬学的若しくは栄養補給(nutraceutical)組成物は、例えば生きている弱毒化された生存可能な、若しくは例えばホルマリン処理の熱処理により生存不可能な形態の、本発明の非病原性かつ/若しくは非侵襲性細菌細胞を含みうる。細菌を含んでなる製薬学的に許容できる組成物は、1種若しくはそれ以上の当該技術分野で既知の賦形剤若しくは免疫原性アジュバントを含みうる。製薬学的に許容できるアジュバントは当業者に既知であり、そして、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company、1990およびCurrent Protocols in Immunology、John E.Coliganにより編.Wiley Interscience、2004のような教科書に見出しうる。
【0042】
別の態様において、本発明の製薬学的に許容できる組成物は、単離かつ/若しくは精製された複合多糖、好ましくは、本明細書に記述されるところの非病原性の非侵襲性グラム
陽性細菌宿主細胞で産生されかつそれから得られる、肺炎球菌CPSのような病原性かつ/若しくは侵襲性グラム陽性細菌の莢膜多糖を含みうる。本発明の製薬学的組成物は、ワクチン接種若しくは免疫化の技術分野で既知の1種若しくはそれ以上の賦形剤および/若しくは免疫原性アジュバントをさらに含みうる。
【0043】
好ましくは、本発明の製薬学的組成物は、ワクチン接種若しくは免疫化の目的上組成物として適用されるのに適する組成物である。一態様において、こうした組成物若しくはワクチン中で、CPS分子は、例えば、例えば破傷風類毒素、ジフテリア類毒素、髄膜炎菌外膜タンパク質、ジフテリアタンパク質CRM197、および当該技術分野で既知の他の免疫原分子を包含する抗原性タンパク質のような免疫学的分子に共有結合される。本発明の組成物中で適して適用されうる免疫原性タンパク質およびアジュバント分子は、ポリルIC、LPS、リピドA、ポリ−A−ポリ−U、GERBU(R)、RIBI(R)、Pam3(R)、Specol(R)、フロイント、Titermax(R)、および当該技術分野で既知かつ使用される他のアジュバントである。
【0044】
本発明の非病原性かつ/若しくは非侵襲性グラム陽性細菌から得られるグラム陽性CPSを含んでなる組成物およびワクチンは、ワクチン接種の技術分野で既知の方法に従い、経口で若しくは鼻内に若しくは静脈内に投与しうる。本発明の肺炎球菌ワクチンは、例えば米国特許第6,224,880号明細書およびその中の参考文献に記述されるとおり投与しうる。
[実施例]
【実施例1】
【0045】
L.ラクティス(L.lactis)中での肺炎連鎖球菌(Streptococcus
pneumoniae)血清型14のCPSの合成および分泌
【0046】
材料および方法
細菌株および増殖条件
本研究で使用した全部の細胞株およびプラスミドを表1に列挙する。L.ラクティス(L.lactis)は、0.5%(wt/vol)ブドウ糖を補充したM17ブロス(Merck、独国ダルムシュタット)若しくは2%(wt/vol)ブドウ糖を補充した既知組成培地(LooijesteijnとHugenholtz、1999)中、30℃で通気を伴わずに増殖させた。クローニング宿主とした使用した大腸菌(Escherichia coli)は、トリプトン−酵母(TY)ブロス(Sambrookら、1989)中37℃で通気を伴い増殖させた。適切な場合は、培地にエリスロマイシン(5μg/ml)、クロラムフェニコール(5μg/ml)若しくはテトラサイクリン(2.5μg/ml)を補充した。
【0047】
【表1】

【0048】
DNA操作および配列分析
大腸菌(E.coli)プラスミドDNAの小スケール単離および標準的組換えDNA技術を、Sambrookら(1989)により記述されるとおり実施した。
【0049】
大腸菌(E.coli)の大スケールプラスミド単離のため、JetStarカラム(Genomed GmbH、独国バド・オーベルハウゼン)を、製造元の説明書に従って使用した。L.ラクティス(L.lactis)プラスミドDNAの単離および形質転換は以前に記述された(de Vosら、1989)とおり実施した。
【0050】
プラスミドの構築
epsABCD遺伝子のインフレーム欠失を含有する、B40 epsプラスミドpNZ4130の誘導体を構築した。プライマーの組合せEPSRF1/EPSAR1およびEPSDF2/EPSFR2、鋳型としてのpNZ4030、およびPwoポリメラーゼ(Roche Diagnostics GmbH、独国マンハイム)を使用して、1kbアンプリコンをPCRにより得た。2種の得られたPCR産物を、XbaI/BamHI(フラグメント1)若しくはKpnI/BamHI(フラグメント2)で消化し、そして、XbaI/KpnIで消化したpUC18eryに単一ライゲーション段階でクローン化して、pNZ4222をもたらした。プラスミドpNZ4222をL.ラクティス(L.lactis)NZ9000に形質転換し(pNZ4130)、そして、単一交差プラスミド組込み体を、エリスロマイシンおよびテトラサイクリンを含有するプレート上で選択した。epsRA遺伝子座への組込みから生じる1個の単一のEry/Tetコロニーを得た。この組込み体を、テトラサイクリンのみを含有する培地中で培養し、そして、Tetコロニーを、テトラサイクリン若しくはエリスロマイシンおよびテトラサイクリン双方を含有するGM17プレート上でのレプリカプレーティングにより、40世代後にスクリーニングした。エリスロマイシン感受性(Ery)でありかつ粘着性の(ropy)表現型を喪失していた1個の単一コロニーを得た。正しい領域の欠失をPCRおよびサザンブロッティングにより確認し、そして該プラスミドをpNZ4200と呼称した。加えて、0.9kbのフラグメントを、プライマーEPSANCOIおよびEPSFR2を使用してpNZ4200から増幅し、それを配列決定して、欠失がインフレームであったことを確認した。
【0051】
L.ラクティス(L.lactis)中での多糖産生は、多糖生合成遺伝子をコードするプラスミドのコピー数を増大させることにより上昇させ得る(Boelsら、2003)。従って、epsプロモーターを包含するプラスミドpNZ4200からのΔepsABCD遺伝子集団全体を、高コピーベクターpIL253にクローン化した。これは、pNZ4200からの14kbのΔepsABCD遺伝子集団をNcoIフラグメントとして切り出すこと、およびNcoI部位を保有するpIL253中への該フラグメントのその後のクローニングにより達成された(Boelsら、2003)。生じるプラスミドをpNZ4220と呼称した。
【0052】
cps14FGHIJKL遺伝子をコードする6.8kbのフラグメントを、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型14のゲノムDNAから2回の別個のPCR反応で増幅した。cps14JKLをコードする3.1kbのフラグメントを、プライマーcps14Jfおよびrev−cps14L、ならびにPfx Platinumポリメラーゼ(Invitrogen)を使用して、以下のPCR条件、すなわち、94℃で15秒、30秒46℃、68℃で4.5分で増幅した。cps14FGHIJをコードする3.9kbのアンプリコンを、プライマーFWD−CPS14FおよびCPS14Jr、ならびにPCRプログラム:94℃で15秒、40℃で1分、68℃で4.5分を使用して得た。BamHI(プライマーFWD−CPS14FおよびREV−CPS14Lに導入される部位)ならびにHindIII(cps14J遺伝子中に存在する部位)での消化後、2個のPCRフラグメントをpNZ84にサブクローニングして、それぞれpNZ84cpsF−JおよびpNZ84cpsJ−Lをもたらし、そして、該挿入物を配列決定により確認した。該2フラグメントをBamHI/HindIIIフラグメントとして再単離し、そしてBamHIで消化したpNZ84に単一ライゲーション反応でクローン化して、pNZ84cpsF−Lをもたらした。cps14FGHIJKL遺伝子をコードする6.8kbのフラグメントを、BamHIでの消化によりpNZ84cpsF−Lから再単離し、そして、pNZ4230を生じる同様に消化したpNZ4220にクローン化することによりL.ラクティス(L.lactis)に導入した。cps14遺伝子の正しい向きを、PCRおよびpNZ4230の消化の双方により確認した。
【0053】
cps14遺伝子集団のcps14BCDE遺伝子を別個のプラスミドにクローン化した。従って、cps14CD遺伝子、ならびに切断型cps14B(5’端切断)およびcps14E(3’端切断)遺伝子を含有する2.1kbのフラグメントを、SphIおよびXbaIでの消化によりpMK104から切り出し、そして、pNZ8020にクローン化して、pNZ4233をもたらした。cps14Eの3’端を、XbaI(cps14E遺伝子およびpNZ4090のマルチクローニング部位に存在する部位)での消化によりpNZ4090から切り出し、そしてpNZ4233にクローン化した。生じるプラスミドをpNZ4235と呼称した。cps14B遺伝子は、プライマーCPS14BfおよびCPS14Brを使用して、染色体の肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)DNAから増幅した。このPCR産物をEcoRI/KpnIで消化し、そして同様に消化したpNZ8020にクローン化して、pNZ4231をもたらした。cps14Bの5’端を、cps14B遺伝子中に存在する内的SacI制限部位、およびpNZ4231のマルチクローニング部位からのBamHI部位を使用して、0.6kbのフラグメントとしてpNZ4235に導入して、pNZ4237をもたらした。pNZ4238の構築のため、cps14BCDを包含する2.2kbのPCRフラグメントを、プライマーCPS14DecoおよびPEPS054fならびにPwoポリメラーゼを使用してpNZ4237から増幅した。このアンプリコンをその後、切断型cps14E遺伝子を保有するSmaI部位pNZ4090にクローン化し、そして、挿入物の正しい向きをPCRにより確認した。プラスミドpNZ4221を、Ecl136II消化、ならびに、pNZ4206からの415bpのepsDフラグメントのその後の除去、およびEcl136IIで消化したプラスミドへのcps14EのPCRフラグメント(プライマーCPS14EF/CPS14ER)の挿入を介して、構築した。
【0054】
【表2】

【0055】
イムノブロット分析
血清型14の多糖産生を、免疫検出を使用することにより、L.ラクティス(L.lactis)培養物の細胞ペレットおよび上清で分析した。細胞をM17培地(2%ブドウ糖)中で0.15のOD600まで増殖させ、そして2培養物に分注し、その一方を1ng/mlのニシンで誘導した。誘導したおよび誘導しない培養物の双方を一夜増殖させ、そして細胞を遠心分離によりペレットにした。10μlの上清をニトロセルロースフィルター上にピペットで移した。細胞ペレットをリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で1回洗浄し、かつ、OD600=1まで再懸濁し、そして10μlの再懸濁した細胞をニトロセルロースフィルター上にピペットで移した。フィルターを、0.05% Tween 20を含むPBS(PBS−T)中1%ウシ血清アルブミン中、室温で1時間ブロッキングした。PS14の検出のため、フィルターを、一次抗血清としての1000倍希釈の莢膜血清型14多糖に対する抗血清(Statens Serum Institute、デンマーク・コペンハーゲン)とともに室温で一夜インキュベートした。フィルターをPBS−Tで3回洗浄し、そしてその後、2000倍希釈のワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(Pierce、米国ロックフォード)ととともにインキュベートした。フィルターをPBS−Tで2回洗浄し、次いでPBSを使用して1回洗浄した。複合物を、製造元の説明書に従ってSupersignal基質(Pierce)を使用して可視化した。
【0056】
チロシンリン酸化されたCps14DおよびEpsBの分析のため、細胞を、1%ブドウ糖を補充したM17培地中で増殖させた。細胞を、OD600=0.15〜0.20でニシンZの添加により誘導した。細胞を誘導の3〜4時間後に遠心分離により収集し、そしてペレットを10mMトリス[pH8.0]、0.1mM EDTAに再懸濁した。細胞を、ジルコニウムガラスビーズの存在下で機械的に破壊した(van der Meerら、1993)。細胞破片を遠心分離により除去し、そして細胞抽出液(CE)中のタンパク質を、2倍濃縮Laemmli緩衝液(Laemmli、1970)中で10分間沸騰させた。タンパク質をSDS−PAGE(12.5%ゲル)により分離し、そして電気ブロッティング(LKB 2051 Midget Multiblot)によりニトロセルロースメンブレンに転写した。メンブレンを、0.05% Tween 20(TBS−T)および2%BSAを含むトリス緩衝生理的食塩水(100mMトリス[pH7.4]、0.9%NaCl)を使用して室温で1時間ブロッキングした。モノクローナル抗ホスホチロシン抗血清(PT−66、Sigma)を、0.05% Tween 20および0.5% BSAを含むTBS中1000倍希釈で使用し、そして一夜インキュベートした。メンブレンを上述されたとおり洗浄し、そして、2,000倍希釈のワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗マウス免疫グロブリン(Pierce)とともにインキュベートした。二次抗体の結合を、クロロナフトールおよびHを使用して可視化した。
【0057】
多糖の単離および分析
細胞は、2%ブドウ糖を含有するCDM中でOD600=0.15〜0.20まで増殖させた。培養物をその後2本のチューブに分割し、そして一方のチューブを1ng/mlのニシンの添加により誘導した一方、他方のチューブは誘導しなかった。誘導したおよび誘導しない細胞の双方を一夜インキュベートした。多糖を、LooijesteijnとHugenholtz(1999)により記述されたとおり培養物から単離した。タイプ14の多糖を産生する株について、上述された方法、および莢膜多糖の単離についてKarlssonら(1998)により記述されたプロトコルの双方を使用した。
【0058】
NMR分析
多糖を、pNZ4206およびpNZ4230をもつL.ラクティス(L.lactis)NZ9000の1L培養物から単離した。細胞を上述されたとおり誘導し、そして、多糖を遠心分離(10分、15,000×g)により上清から収集した。上清を、10M
NaOHを添加することによりpH7に調節し、そして限外濾過(MWCO 20,000Da)により濃縮した。濃縮した多糖を流水道水に対し透析し、そして、40mMトリス[pH8.0]、10mM MgClおよび10mM CaCl中600μgのプロテイナーゼKの添加、ならびに55℃での一夜インキュベーション段階によりタンパク質を除去した。プロテイナーゼ処理した多糖溶液を流水道水に対し一夜透析し、凍結乾燥し、そして0.1M NaNOに溶解した。該溶液を、TSKゲル6000 PWカラム(Phenomenex)、および溶離液としての0.1M NaNOを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分画した。カラムからの溶離液を、屈折率(RI)および280nmでのUV検出の双方によりオンラインで分析した。EPS含有画分を収集し、Millipore水に対し透析しかつ凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルを99.9原子%のDOに溶解し、そして、L.ラクティス(L.lactis)で産生されたタイプ14多糖および肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)(American Type Culture Collection、米国マナサス)から精製したタイプ14多糖のNMRスペクトルを400MHzで測定した。
【0059】
結果
本発明を具体的に説明するため、その生合成を指図する完全な遺伝子集団が既知である(Kolkmanら、1997)肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型14からのCPSを、本実施例におけるラクトコッカス ラクティス(Lactococcs lactis)のような非病原性の非侵襲性グラム陽性宿主細胞中で産生させた。
【0060】
タイプ14多糖は、各N−アセチルグルコサミン残基のC4に連結されたβ(1→4)−Galp残基を伴う、→6)−β−D−GlcpNAc−(1→3)−β−D−Galp−(1→4)−β−D−Glcp−(1→反復単位の直鎖状バックボーンよりなる。完全な遺伝子集団は、単一の転写単位として転写される12種の遺伝子(cps14Aからcps14L)を包含する(Kolkmanら、1997)。cps14遺伝子集団は、ポリメラーゼおよび反復単位輸送体を包含する型特異的遺伝子により隣接される共通領域をもつ典型的なカセット様構造に構成されている。
【0061】
本発明のL.ラクティス(L.lactis)での複合肺炎球菌CPS産生は、3種の共通の肺炎球菌遺伝子(epsABC)およびグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子epsDを1プラスミド上に、ならびに残存する型特異的遺伝子を第二のプラスミド上にクローン化することにより達成される。興味深いことに、eps B40共通遺伝子とともにのタイプ14特異的遺伝子の発現のみが、タイプ14多糖産生をもたらした。
【0062】
L.ラクティス(L.lactis)での肺炎球菌タイプ14多糖の発現系のクローニング
タイプ14多糖(多糖)の合成のため、糖ヌクレオチドUDP−Gal、UDP−GlcNAc、およびUDP−Glcを構成要素として使用する(Kolkmanら、1997)。これらの活性化糖は、中心炭素代謝の中間体からL.ラクティス(L.lactis)中で形成される(www.kegg.genome.ad.jp)。L.ラクティス(L.lactis)でのタイプ14多糖の発現のため、われわれは、われわれの実験室でeps遺伝子の同種および異種双方の発現にL.ラクティス(L.lactis)で成功することが既に判明した(Nierop Grootら、2004)発現系を改変した。図1は、L.ラクティス(L.lactis)での乳酸球菌および肺炎球菌の多糖産生に使用されるプラスミドの図式的概観を示す。この発現系では、細菌中の多糖生合成遺伝子集団の保存されたカセット様構成を使用する。cps14遺伝子集団を2種の別個のプラスミドに分割する。グリコシルトランスフェラーゼおよびポリメラーゼならびに輸送タンパク質をコードするcps14型特異的遺伝子を、pNZ4220由来のプラスミドにクローン化する。従って、乳酸球菌eps遺伝子集団からのepsEFGHIJKLorfY遺伝子を、隣接するBamHI制限部位を使用してプラスミドpNZ4220から切り出し、epsプロモーター配列およびepsRXを残した。6.8kbのフラグメントを、BamHIでの消化によりプラスミドpNZ84F−L(材料および方法)から切り出し、そして、同様に消化したpNZ4220に連結して、プラスミドpNZ4230をもたらした。pNZ4230中で、cps14型特異的遺伝子の発現は、乳酸球菌eps遺伝子集団の構成的プロモーターの制御下にある。乳酸球菌のepsおよび肺炎球菌のcps14双方の遺伝子集団の調節遺伝子およびプライミンググリコシルトランスフェラーゼをコードする保存された領域を、ニシンで誘導可能なプロモーターの制御下にクローン化して、pNZ4206(epsABCD)およびpNZ4237(cps14BCDE)をもたらした。これゆえに、cps遺伝子集団の転写活性化に関与していることが期待される(Cieslewiczら(2001)cps14Aは、本系に存在しない。本系でのcps14遺伝子の発現は、構成的B40 epsプロモーターおよびニシンで誘導可能なプロモーターにより駆動される。L.ラクティス(L.lactis)のepsD変異体へのcps14E遺伝子の導入がEPS産生を復帰し得ることが以前に示された(Van Kranenburgら、1999)。グリコシルトランスフェラーゼEpsDおよびCps14E双方がブドウ糖に対する特異性を有するためである(van Kranenburgら、1999;Kolkmanら、1997)。プラスミドpNZ4206およびpNZ4237を、pNZ4230をもつL.ラクティス(L.lactis)に形質転換した。
【0063】
L.ラクティス(L.lactis)でのタイプ14多糖産生の免疫検出
pNZ4206(epsABCD)若しくはpNZ4237(cps14BCDE)いずれかとともにpNZ4230をもつL.ラクティス(L.lactis)の誘導したおよび誘導しない培養物を、免疫検出を使用して、タイプ14多糖産生について試験した。加えて、構築物pNZ4209(epsABΔYYYYCD)、pNZ4208(epsABD)、pNZ4235(cps14CDE)、pNZ4238(cps14BCDE’)、およびpNZ4221(epsABC+cps14E)を、pNZ4230とともに試験した。
【0064】
陰性対照として、pNZ4230をもつ株NZ9000、およびpNZ4206とともにpNZ4220をもつNZ9000を使用した。ニシンで誘導したおよび誘導しない細胞の双方を、2%ブドウ糖を補充したM17培地中で一夜増殖させた。細胞を遠心分離し、そして、上清および細胞双方をニトロセルロースメンブレンにスポットし、そして、多糖の存在を、タイプ14特異的抗血清を使用して検出した。強いシグナルが、pNZ4206、pNZ4208およびpNZ4209とともにpNZ4230をもつ誘導したL.ラクティス(L.lactis)株の上清、ならびに、誘導しない細胞でより弱い程度まで検出された。誘導されない細胞でのこのシグナルは、nisAプロモーターのリーク(leakage)から生じる。pNZ4230のみをもつレーン2の陰性対照株についてシグナルが検出されなかったためである。レーン1のB40−EPS産生株ではシグナルは検出されず、該血清がタイプ14多糖を特異的に検出することを示す。驚くべきことに、pNZ2437とともにpNZ4230をもつL.ラクティス(L.lactis)株についてシグナルが検出されなかった(レーン7)。プラスミドpNZ4237は肺炎球菌cps14遺伝子集団からの調節遺伝子を含有するため、これは期待されなかった。レーン5の構築物pNZ4208はepsC遺伝子を欠くが、しかし、この構築物をもつL.ラクティス(L.lactis)はタイプ14多糖を産生する。これは、L.ラクティス(L.lactis)中で、多糖産生が機能的epsC遺伝子の存在に厳密に依存しないことを示す。EpsBのC末端の7アミノ酸の欠失(レーン4の構築物pNZ4209)は、産生される多糖の量を低下させるようである。興味深いことに、タイプ14多糖は主として培養物上清に放出された。弱いシグナルが、pNZ4230/pNZ4206をもつL.ラクティス(L.lactis)の細胞上清で検出され、それは、最もありそうには洗浄段階の間に完全に除去されなかったゆるく会合した多糖であった。プラスミドpNZ4237は完全なcps14E遺伝子を含有する一方、以前の報告は、付加的なリボソーム結合部位がcps14E中に存在して、最初の98アミノ酸を欠く切断型のしかし活性のグリコシルトランスフェラーゼをもたらすことを示す(Kolkmanら、1997)。プライミンググリコシルトランスフェラーゼのN末端半分が、ウンデカプレニル結合した反復単位の放出に関与しうることが示唆されている(Wangら、1996)。乳酸球菌のホモログEpsDはこのドメインを欠き、そして、グリコシルトランスフェラーゼ活性に必要な保存されたドメインのみを含有する。Cps14E中のこの付加的なドメインがL.ラクティス(L.lactis)での多糖産生を妨害していたかどうかを試験するため、pNZ4237中の無傷のcps14E遺伝子を切断型cps14Eにより置換して、pNZ4238をもたらした。しかしながら、pNZ4238とともにpNZ4230をもつ株についてシグナルが検出されなかった。cps14E遺伝子についての構築物pNZ4206中のepsDの置換もまた、タイプ14多糖産生を予防した。Van Kranenburgら(1999)による、および表3のデータは、グリコシルトランスフェラーゼCps14EがL.ラクティス(L.lactis)でのB40多糖生合成において機能的であることを示す。これは、L.ラクティス(L.lactis)でのタイプ14多糖生合成が、EpsA、EpsBおよびEpsDの存在を必要とすること、ならびにEpsCは任意であることを示す。
【0065】
【表3】

【0066】
L.ラクティス(L.lactis)培養物からの多糖の単離
L.ラクティス(L.lactis)株により産生される多糖を、サイズ排除クロマトグラフィー、次いで多角度光散乱(SEC−MALLS)により分析した。pNZ4230およびpNZ4206をもつL.ラクティス(L.lactis)は、1リットルあたり25mgのタイプ14多糖を産生した(表3)。これは、pNZ4220およびpNZ4206をもつL.ラクティス(L.lactis)により産生されるB40多糖の量の23%である。多糖はまた、pNZ4208およびpNZ4209をもつ株でも産生されたとは言え、後者の株での産生は有意により少なかった。誘導しない細胞では多糖は産生されなかったか、若しくは1mg/Lの検出限界より下の量が産生されたかのいずれかであった。免疫検出はより感受性の検出方法であり、そして、図2でのL.ラクティス(L.lactis)の誘導しない細胞(pNZ4230、pNZ4206)について得られたシグナルを説明する。免疫検出実験により既に示唆されたとおり、pNZ4237とともにpNZ4230をもつL.ラクティス(L.lactis)から多糖を単離し得なかった。肺炎球菌莢膜多糖の単離のため開発された異なる方法(Karlssonら、1998)を加えて使用し、そして、多糖が産生されなかったことを確認した。興味深いことに、pNZ4237若しくはpNZ4238とともにpNZ4220をもつL.ラクティス(L.lactis)は、それぞれ31mg/L若しくは37mg/LのB40多糖を産生した。これは、cps14BCDE遺伝子がL.ラクティス(L.lactis)中で機能的であること、ならびに、多糖産生が無傷および切断型のcps14E構築物について比較可能であることを確認する。表3は、cps14Eが、B40多糖産生株(pNZ4220+pNZ4221)でepsABC遺伝子とともに機能的であるが、しかしpNZ4230をもつ株では機能的でないことをさらに示す。肺炎球菌タイプ14多糖は、従って、(epsCの存在下若しくは非存在下のいずれでも)epsABCD遺伝子の制御下でのみ、L.ラクティス(L.lactis)中で産生される。
【0067】
リン酸化されたチロシン残基の免疫検出
CpsDに存在するチロシン残基の可逆的リン酸化が、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)での莢膜産生を調節することが既知である(BenderとYother、2001;Benderら、2003)。図4は、Cps14Dが、cps14BCDE遺伝子(レーン4)、cps14CDE遺伝子(レーン6)、cps14BCDE’遺伝子(レーン8)とともにpNZ4230をもつ株、およびepsABCcps14E構築物(レーン9)でリン酸化されることを示す。興味深いことに、これらの株はタイプ14多糖を産生しなかった。pNZ4220をもつL.ラクティス(L.lactis)で、リン酸化されたチロシンは、多糖産生がCps14BCDE若しくはCps14CDEの制御下にありかつ多糖産生がEpsABCD調節タンパク質に比較して大きく低下された場合にのみ検出された。これは、チロシンリン酸化がL.ラクティス(L.lactis)での多糖生合成を負に遂げることを示す。EpsBタンパク質は、pNZ4230とともにpNZ4221(epsABCcps14E)をもつL.ラクティス(L.lactis)中でリン酸化されたが、しかしpNZ4200と組合せではされなかった。これは、肺炎球菌のプライミンググリコシルトランスフェラーゼが多糖生合成を阻害し得、そして従って、好ましくは乳酸球菌のグリコシルトランスフェラーゼと交換されることを示す。
【0068】
NMR分析
L.ラクティス(L.lactis)が産生した多糖の化学構造は、免疫原性の肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)の多糖に同一であるため、L.ラクティス(L.lactis)が産生した多糖が保護免疫応答を惹起することができることが疑いなしに予期される。これは、L.ラクティス(L.lactis)が産生したタイプ3多糖により導き出されるマウスでの免疫応答が、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)が産生した多糖について観察されたものに同一であることを示すGilbertら(2000)からのデータによりさらに裏付けられる。
【0069】
L.ラクティス(L.lactis)で産生されたタイプ14多糖、および肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)で産生されたタイプ14多糖のプロトンNMRスペクトルを測定し、そして同一スペクトルを示した(図3)。肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型14から単離されたCPSに存在する少量の不純物は、乳酸球菌の単離物中に存在しない3.27ppmの付加的なピークをもたらした。しかしながら、該スペクトルは、L.ラクティス(L.lactis)で産生された多糖の構造が、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)で産生された天然の血清型14多糖に同一であることを
はっきりと示す。
【0070】
要約すれば、本実施例は、非病原性かつ/若しくは非侵襲性グラム陽性宿主細胞中での、肺炎球菌からの複合型グラム陽性多糖の異種発現および産生を初めて示す。
【0071】
L.ラクティス(L.lactis)でのタイプ3肺炎球菌多糖産生について、Gilbertら、2000、第WO98/31786号明細書により達成されたところの産生レベルは120mg/Lであった。これは単純型多糖である。複合型14肺炎球菌多糖は本実施例で25mg/lで産生され、そして、多様な条件下で宿主細菌を培養することによりさらに高められかつ至適化されうる。タイプ14多糖はより複雑であり、そして、大部分の他の肺炎球菌多糖は高度に類似の機構により合成される。産生レベルの改良は、L.ラクティス(L.lactis)でのUDP−GlcNAcレベルの増大を介して達成されうる。UDP−グルコースおよびUDP−ガラクトースは、最もありそうには、(Boelsら、2003)によれば制限しないからである。本実施例は本発明の別の利点もまた具体的に説明し;肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)で産生されるタイプ14多糖は莢膜として産生され、L.ラクティス(L.lactis)では培地に分泌される。本発明の複合多糖の異種製造方法は、非病原性のグラム陽性細菌からの多糖の安全かつ便宜的な製造を可能にすることに関して利点を提供するが、しかしまた、異種産生された多糖型が分泌されかつより少ないタンパク質汚染である、培地からの便宜的な単離も可能にする。
【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】L.ラクティス(L.lactis)中での多糖産生に使用されるプラスミドの図解。図A:プラスミドpNZ4030のB40 eps遺伝子集団;Peps、eps遺伝子集団のプロモーター。図B:pNZ4030からのepsABCDのインフレーム欠失、生じる遺伝子集団のNcoI消化による切り出し、およびNcoI消化したpIL253へのライゲーションがpNZ4220をもたらす。図C:BamHI消化によるepsEFGHIJKLorfY遺伝子の切り出し、およびcps14FGIJKLを包含する6.8kbのフラグメントでの置換がpNZ4230をもたらす。PCR増幅したcps14遺伝子(材料および方法に記述される)のクローニングに使用されるHindIII制限部位が示される。図D:本研究で使用した、B40 eps(pNZ4206)およびcps14(pNZ4237)調節遺伝子を含有しかつニシンで誘導可能なプロモーターの制御下のプラスミド、ならびに数種の派生構築物(より詳細については、材料および方法の節を参照されたい)。
【図2】L.ラクティス(L.lactis)株で産生されるタイプ14 PSの免疫検出。誘導した若しくは誘導しない細胞のいずれかの10μlの培養上清、および10μlの誘導細胞懸濁液を、ニトロセルロースメンブレンにスポットし、そしてタイプ14特異的抗血清で検出した。L.ラクティス(L.lactis)はpNZ4220およびpNZ4206(レーン1);pNZ4230(レーン2);pNZ4230+pNZ4206(レーン3);pNZ4230+pNZ4209(レーン4):pNZ4230+pNZ4208(レーン5);pNZ4230+pNZ4235(レーン6);pNZ4230+pNZ4237(レーン7);pNZ4230+pNZ4238(レーン8);pNZ4230+pNZ4221(レーン9)いずれかをもつ。
【図3】図A.肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型14から精製した多糖のNMRスペクトル図B.pNZ4230およびpNZ4206を発現するL.ラクティス(L.lactis)から精製した多糖のNMRスペクトル。
【図4】B40多糖および肺炎球菌タイプ14多糖を産生するL.ラクティス(L.lactis)株中でのEpsB若しくはCps14Dタンパク質のチロシンリン酸化。図A.pNZ4206(レーン1)、pNZ4209(レーン2)、pNZ4208(レーン3)、pNZ4237(レーン4、5)、pNZ4235(レーン6、7)、pNZ4238(レーン8)、pNZ4221(レーン9)とともにpNZ4230をもつL.ラクティス(L.lactis)の細胞抽出液。細胞は1ng/mlニシンで誘導(レーン1、2、3、4、6、8、9)したか、若しくは誘導しなかった(レーン5、7)かのいずれかであった。図B.pNZ4206(レーン1)、pNZ4209(レーン2)、pNZ4208(レーン3)、pNZ4237(レーン4、5)、pNZ4235(レーン6、7)、pNZ4238(レーン8)、pNZ4221(レーン9)とともにpNZ4220をもつL.ラクティス(L.lactis)の細胞抽出液。細胞は1ng/mlニシンで誘導(レーン1、2、3、4、6、8、9)したか、若しくは誘導しなかった(レーン5、7)かのいずれかであった。 チロシンリン酸化されたタンパク質を、ホスホチロシンに対するマウスモノクローナル抗体を用いるウエスタンイムノブロッティングにより検出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)グラム陽性細菌種の莢膜多糖(CPS)血清型特異的遺伝子を含んでなる第一の異種DNAフラグメント;
b)共通の調節遺伝子およびa)の細菌と異なるグラム陽性細菌から得られるプライミンググリコシルトランスフェラーゼを含んでなる第二のDNAフラグメント
を含んでなり;そして、
c)また、前記フラグメントの発現に際してa)の細菌種の異種多糖を産生する、
非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌。
【請求項2】
病原性かつ/若しくは侵襲性のグラム陽性細菌種の血清型特異的cps遺伝子が、複合型CPSを産生する種からであり、該CPSが脂質結合した中間体を介して合成される反復オリゴ糖単位のポリマーを含んでなる、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
c)で産生される多糖が細胞外間隙に分泌される、請求項1に記載の細菌。
【請求項4】
細菌が、乳酸杆菌属(Lactobacillus)、乳酸球菌属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)およびオエノコッカス属(Oenococcus)からの種、ならびに種枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)よりなる非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌の群から選択される、請求項1に記載の細菌。
【請求項5】
血清型特異的配列が、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、エンテロコッカス フェーカリス(Enterococcus faecalis)、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyrogenes)、ストレプトコッカス アガラクチエ(Streptococcus agalactiae)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、ストレプトコッカス ゴルドニイ(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス ミティス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス エクイ(Streptococcus equi)、炭疽菌(Bacillus anthracis)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcu aureus)よりなる病原性かつ/若しくは侵襲性のグラム陽性複合CPS産生細菌の群から得られる、請求項1に記載の細菌。
【請求項6】
血清型特異的遺伝子が、複合莢膜多糖血清型1、2、4、5、6A、6B、7A、7B、7C、7F、8、9A、9L、9N、9V、10A、10B、10C、11A、11B、11C、11F、12B、12F、13、14、15F、15A、15B、15C、16F、16A、17F、17A、18A、18B、18C、19F、19A、19B、19C、20、21、22F、22A、23A、23B、24F、24A、24B、25F、25A、27、28F、28A、29、33F、33A、33B、33C、10F、11D、12A、18F、23F、31、32F、32A、33D、34、35F、35A、35B、35C、36、38、39、40、41F、41A、42、43、44、45、46、47F、47Aおよび48を産生する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)株由来である、請求項5に記載の細菌。
【請求項7】
前記発現された共通の若しくは調節遺伝子およびプライミンググリコシルトランスフェラーゼが、最低1種の共通の調節遺伝子espA若しくはcpsC、epsB若しくはc
psD、およびepsD若しくはcpsE、ならびに場合によってはepsC若しくはcpsBを含んでなる、請求項1に記載の細菌。
【請求項8】
epsAにコードされるタンパク質が、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)EpsAと最低20%のアミノ酸同一性を共有し、epsBにコードされるタンパク質が、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)epsBと最低20%のアミノ酸同一性を共有し、および、epsDにコードされるタンパク質が、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)EpsDと最低30%のアミノ酸同一性を共有する、請求項7に記載の細菌。
【請求項9】
グラム陽性複合CPS血清型特異的cps遺伝子をコードするDNAフラグメントを含んでなるDNAベクターであって、該血清型特異的遺伝子が、莢膜多糖遺伝子(CPS)集団に存在する血清型特異的遺伝子よりなる群から選択される、上記ベクター。
【請求項10】
1種若しくはそれ以上の血清型特異的遺伝子が、cpsE、cpsF、cpsG、cpsH、cpsI、cpsJ、cpsK、cpsL若しくはそれらのホモログよりなる血清型特異的cps遺伝子の群から選択される、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
血清型特異的cps遺伝子が、血清型1、2、4、5、6A、6B、7A、7B、7C、7F、8、9A、9L、9N、9V、10A、10B、10C、11A、11B、11C、11F、12B、12F、13、14、15F、15A、15B、15C、16F、16A、17F、17A、18A、18B、18C、19F、19A、19B、19C、20、21、22F、22A、23A、23B、24F、24A、24B、25F、25A、27、28F、28A、29、33F、33A、33B、33C、10F、11D、12A、18F、23F、31、32F、32A、33D、34、35F、35A、35B、35C、36、38、39、40、41F、41A、42、43、44、45、46、47F、47Aおよび48の複合CPSを産生する、CPSを産生する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)株の群から得られる、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
血清型特異的cps遺伝子が、グラム陽性細菌からのEPS若しくはCPS遺伝子集団制御配列の転写制御下にあり、前記細菌が、血清型特異的遺伝子が得られたグラム陽性細菌と異なる種である、請求項9ないし11のいずれか1つに記載のDNAベクター。
【請求項13】
血清型特異的遺伝子がポリシストロン性転写単位内に含まれる、請求項12に記載のDNAベクター。
【請求項14】
ベクターが、機能的な共通の調節eps遺伝子espA若しくはcpsC、epsB若しくはcpsD、epsD若しくはcpsD、および場合によってはepsC若しくはcpsBの1種若しくはそれ以上を含まない、請求項12に記載のベクター。
【請求項15】
細菌が、請求項9ないし14のいずれか1つに記載のベクターを含んでなる、請求項1に記載の細菌。
【請求項16】
a)CPS産生に伝導性の条件下で、請求項1ないし8のいずれかに記載の細菌を培養すること、
b)および、場合によっては、産生された複合CPSの回収
の段階を含んでなる、非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌中での複合莢膜多糖(CPS)の異種製造方法。
【請求項17】
細菌細胞および培地が分離され、かつ、CPSが培地中に回収されるか、若しくは、場合によっては培地から単離される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の細菌、および最低1種の賦形剤若しくは免疫原性アジュバントを含んでなる、製薬学的に許容できる組成物。
【請求項19】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の非病原性の非侵襲性グラム陽性細菌から得られる複合CPS、および最低1種の賦形剤若しくは免疫原性アジュバントを含んでなる、製薬学的に許容できる組成物。
【請求項20】
複合CPSが、免疫原性分子に物理的に連結されている、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
免疫原性分子が、破傷風類毒素、ジフテリア類毒素、髄膜炎菌外膜タンパク質およびジフテリアタンパク質CRM197よりなる免疫原性タンパク質の群から選択される、請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2008−523804(P2008−523804A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546588(P2007−546588)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/NL2005/050079
【国際公開番号】WO2006/065137
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507200846)
【Fターム(参考)】