説明

非破壊検査方法およびその装置

【課題】被検査物の特性を容易に非破壊検査できる非破壊検査方法を提供する。
【解決手段】交流電流の供給により励磁して磁場を形成する励磁コイルと、この励磁コイルと同軸上で一部が接触し励磁コイルの励磁によって起電力を発生する誘導コイルとを備えたセンサ部110の励磁コイルへ、制御部120の交流電源部から周波数が100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHzの交流電流を供給させ、被検査物に対して励磁コイルによる磁場を作用させ、誘導コイルから出力する起電力を制御部120の検出回路部で読み取って被検査物における磁場の変化を検出させ、被検査物を非破壊検査する。稼働する設備で加温する被検査物でも内部深くまで微細な損傷や組成の違いなどの特性の違いを検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電流により生成する磁場の変化により被検査物の特性を検査する非破壊検査方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば石油プラントなどにおいて、外周面が保温材にて保温されたオーステナイト系ステンレス鋼の配管や容器などが使用されている。これら配管や容器において、応力腐食割れ(External Stress Corrosion Cracking;ESCC)を検査する方法として、浸透深傷試験(Penetrant Test;PT)が利用されている。
ところで、オーステナイト系ステンレス鋼のESCCは、金属温度が50〜150℃の範囲で発生しやすく、このESCCは設備停止後にPTを実施することとなる。このため、設備の稼働中では検査できないことから、稼働サイクルが長期間となる場合にはESCCの進行を認識できない。特に保温材にて被覆されている場合には、これら保温材を除去して検査する必要があり、保温材を介在してもESCCを検査できる方法が望まれている。
【0003】
一方、非破壊検査として、過流深傷試験(Eddy Current Test;ECT)が知られている。特に、非磁性材料でも被検査物の特性の判定が可能な構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来のECTでは、ノイズの抑制やリフトオフの影響などで検出信号の処理が煩雑であるとともに、現場への携帯性など操作性に課題があり、特にオーステナイト系ステンレス鋼などの非磁性材料では、微細なESCCなどを良好に検査することが困難であるなどの不都合がある。
【0004】
【特許文献1】特開平5−2082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、PTでは汎用性が限られ、ETCでは特許文献1に記載のような構成を利用しても稼働する設備におけるESCCや非磁性材料では良好なESCCの検査が得られにくく、検査に熟練を要するなどの不都合がある。
【0006】
本発明の目的は、このような実情に鑑み、被検査物の特性を容易に非破壊検査できる非破壊検査方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非破壊検査方法は、交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイル、および、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ前記励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルを備え、被検査物に対して前記励磁コイルによる磁場を作用させて前記誘導コイルから起電力を出力させるセンサ部と、前記起電力を読み取り前記被検査物における磁場の変化を検出する検出装置と、入力操作可能に設けられこの入力操作に応じた出力で、前記交流電流を前記励磁コイルへ供給する電力供給装置と、を具備した非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法であって、前記被検査物は、オーステナイト系鋼材またはニッケル系材料にて形成されたものであることを特徴とする。
この発明では、交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイルと、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルとを備えたセンサ部の励磁コイルへ電力供給装置から交流電流を供給し、被検査物に対して励磁コイルによる磁場を作用させ、誘導コイルから出力する起電力を検出装置で読み取って被検査物における磁場の変化を検出させる非破壊検査装置を、非磁性材料であるオーステナイト系鋼材またはニッケル系材料にて形成されたものを被検査物として非破壊検査する。
このため、例えばオーステナイト系ステンレス鋼など、非磁性物でも長期使用などによる材質変化などで磁性が生じることで材質変化部分を検査したり、腐食によりオーステナイト系鋼材やニッケル系材料が応力により割れたりするなどの損傷を検査したり、炭素などの腐食性物質が侵入した状況を検査したり、内部や内面に生じる傷や亀裂あるいは組成変化などを検査したり、石油精製プラントや石油化学プラントなどの熱が加わる部位で保温材にて覆われた被検査物の腐食状態を検査したり、オーステナイト系鋼材またはニッケル系材料では各種特性が詳細で適切な検出が容易にできることが見出された。
【0008】
そして、本発明では、請求項1に記載の非破壊検査方法であって、周波数が100Hz以上50kHz以下の前記交流電流を前記電力供給装置から供給させる構成とすることが好ましい。
この発明では、周波数が100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHz程度の交流電流を電力供給装置からセンサ部の励磁コイルへ供給させる。
このため、オーステナイト系鋼材の被検査物の内部深くまで磁場を作用させることができるとともに、微細な損傷や組成の違いなどの特性の違いでも検出でき、各種利用形態での被検査物の詳細で適切な特性の検出が容易に得られる。
【0009】
本発明の非破壊検査方法は、交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイル、および、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ前記励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルを備え、被検査物に対して前記励磁コイルによる磁場を作用させて前記誘導コイルから起電力を出力させるセンサ部と、前記起電力を読み取り前記被検査物における磁場の変化を検出する検出装置と、入力操作可能に設けられこの入力操作に応じた出力で、前記交流電流を前記励磁コイルへ供給する電力供給装置と、を具備した非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法であって、周波数が100Hz以上50kHz以下の前記交流電流を前記電力供給装置から供給させることを特徴とする。
この発明では、交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイルと、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルとを備えたセンサ部の励磁コイルへ、電力供給装置から周波数が100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHz程度の交流電流を供給させ、被検査物に対して励磁コイルによる磁場を作用させ、誘導コイルから出力する起電力を検出装置で読み取って被検査物における磁場の変化を検出させ、被検査物を非破壊検査する。
このため、例えば非磁性材料のオーステナイト系鋼材やニッケル系材料などでも長期使用などによる材質変化により磁性が生じることで材質変化部分を検査したり、腐食によりオーステナイト系鋼材やニッケル系材料などが応力により割れたりするなどの損傷を検査したり、炭素などの腐食性物質が侵入した状況を検査したり、内部や内面に生じる傷や亀裂あるいは組成変化などを検査したり、石油精製プラントや石油化学プラントなどの熱が加わる部位で保温材にて覆われた被検査物の腐食状態を検査したり、同一組成か否かの判別のために検査したりするなど、周波数が100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHz程度の交流電流により、被検査物の内部深くまで磁場を作用させることができるとともに、微細な損傷や組成の違いなどの特性の違いでも検出でき、各種利用形態での被検査物の特性の詳細で適切な検出が容易に得られる。
ここで、供給する交流電流は、周波数が100Hzよりも低い周波数では、被検査物のより内部深くまで磁場を作用させることができるものの検出感度が低下し、特性の違いを適切に検出できなくなる。一方、周波数が50kHzよりも高い周波数では、被検査物の表面に存在する特性の違いを感度よく検出できるものの磁場を内部深くまで作用させることができなくなり、被検査物の内部や内面の検査ができなくなる。これらのことにより、周波数が100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHz程度の交流電流を供給して磁場を形成させる。
特に、30kHzでは、実機で生じる微細な表面傷である応力腐食割れの検査で検出装置による磁場の変化感度が高い。したがって、周波数が30kHzを基準として周波数を長短に変更することで、現場での検査の効率化が図れる。
【0010】
そして、この発明では、請求項3または請求項4に記載の非破壊検査方法であって、前記被検査物は、オーステナイト系鋼材またはニッケル系材料で形成されたものである構成とすることが好ましい。
この発明では、オーステナイト系鋼材またはニッケル系材料にて形成されたものを被検査物の対象としている。
このため、オーステナイト系鋼材やニッケル系材料では、加熱雰囲気で使用される場合が多く加熱雰囲気での使用により応力腐食割れが生じやすくなる場合があることから、特に稼働期間が長い設備に用いられる際に、応力腐食割れが進行して設備を停止するなどの不都合を防止するために稼働中の設備で加熱雰囲気でも、オーステナイト系鋼材やニッケル系材料の特性を良好に検査できる。
【0011】
さらに、本発明では、請求項1または請求項5に記載の非破壊検査方法であって、前記被検査物は、オーステナイト系ステンレス鋼にて形成されたものである構成とすることが好ましい。
この発明では、オーステナイト系ステンレス鋼にて形成されたものを被検査物の対象としている。
このため、石油精製プラントや石油化学プラントなどの稼働期間が比較的に長い設備に用いられるオーステナイト系ステンレス鋼では、特に加熱雰囲気で応力腐食割れが生じ易くなることから、応力腐食割れによる設備の停止などを防止するために稼働中の設備で加熱雰囲気でも、オーステナイト系ステンレス鋼の特性を良好に検査できる。
【0012】
また、本発明では、請求項5または請求項6に記載の非破壊検査方法であって、前記被検査物は、腐食性物質を含有する流体と接触する部材である構成とすることが好ましい。
この発明では、腐食性物質を含有する流体と接触する部材を被検査物の対象としている。
このため、例えば石油精製プラントや石油化学プラントにおけるエチレン製造装置などに利用されるオーステナイト系鋼材では、加熱雰囲気で使用されることから、流体中の例えば高温侵炭腐食を起こす炭素などの腐食性物質が侵入して割れなどを生じるおそれがあり、非磁性体のオーステナイト系鋼材やニッケル系材料に炭素などの腐食性物質の含浸により磁性化した状況を良好に検査できる。
【0013】
さらに、本発明では、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の非破壊検査方法であって、前記被検査物は、石油精製プラントまたは石油化学プラントにおける50℃以上200℃以下に加熱される構造物を構成するものである構成とすることが好ましい。
この発明では、石油精製プラントまたは石油化学プラントにおける50℃以上200℃以下に加熱される構造物を構成するものを被検査物の対象としている。
このため、稼働期間が長い石油精製プラントまたは石油化学プラントにおける50℃以上200℃以下に加熱される構造物に利用される例えばオーステナイト系鋼材やニッケル系材料などでは、応力腐食割れが生じ易くなることから、応力腐食割れなどの損傷による石油精製プラントまたは石油化学プラントの停止などを防止するために稼働中の加熱された状態でも、特性を良好に検査できる。
【0014】
そして、本発明では、請求項8に記載の非破壊検査方法であって、前記励磁コイルおよび前記誘導コイルを耐熱性部材にて覆った前記センサ部を用いる構成とすることが好ましい。
この発明では、励磁コイルおよび誘導コイルを耐熱部材で覆ったセンサ部を用いて、石油精製プラントや石油化学プラントの構造物の特性を検査する。
このため、稼働中で50℃以上200℃以下に加熱する構造物でも、適切で良好に特性の違いを検査できる。
【0015】
本発明の非破壊検査装置は、交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイル、および、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ前記励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルを備え、被検査物に対して前記励磁コイルによる磁場を作用させて前記誘導コイルから起電力を出力させるセンサ部と、前記起電力を読み取り前記被検査物における磁場の変化を検出する検出装置と、入力操作可能に設けられこの入力操作に応じた出力で、周波数が100Hz以上50kHz以下の前記交流電流を前記励磁コイルへ供給する電力供給装置と、を具備したことを特徴とする。
【0016】
この発明では、交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイルと、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルを備えたセンサ部の励磁コイルへ、電力供給装置から周波数が100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHzの交流電流を供給させ、被検査物に対して励磁コイルによる磁場を作用させ、誘導コイルから出力する起電力を検出装置で読み取って被検査物における磁場の変化を検出させ、被検査物を非破壊検査する。
このため、例えば非磁性材料のオーステナイト系鋼材やニッケル系材料などでも長期使用などによる材質変化により磁性が生じることで材質変化部分を検査したり、腐食によりオーステナイト系鋼材やニッケル系材料などが応力により割れたりするなどの損傷を検査したり、炭素などの腐食性物質が侵入した状況を検査したり、内部や内面に生じる傷や亀裂あるいは組成変化などを検査したり、石油精製プラントや石油化学プラントなどの熱が加わる部位で保温材にて覆われた被検査物の腐食状態を検査したり、同一組成か否かの判別のために検査したりするなど、周波数が100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHzの交流電流により、被検査物の内部深くまで磁場を作用させることができるとともに、微細な損傷や組成の違いなどの特性の違いでも検出でき、各種利用形態での被検査物の特性の詳細で適切な検出が容易に得られる。
【0017】
そして、この発明では、請求項10に記載の非破壊検査装置であって、前記センサ部は、耐熱性部材にて前記励磁コイルおよび前記誘導コイルが覆われた構成とすることが好ましい。
この発明では、励磁コイルおよび誘導コイルを耐熱部材で覆ったセンサ部を用いて被検査物の特性を検査する。
このため、例えば稼働中で加熱する被検査物でも適切で良好に特性の違いを検査できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態における非破壊検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【0019】
〔非破壊検査装置の構成〕
図1において、100は非破壊検査装置で、この非破壊検査装置100は、交流電流により励起して発生する磁場中に被検査物を存在せしめて磁場の変動状況に基づいて被検査物の特性、例えば傷や亀裂、異物の混入などを検査するものである。
この非破壊検査装置100は、センサ部110と、制御部120と、表示記録装置130と、を備えている。
【0020】
センサ部110は、制御部120に接続され、制御部120から供給される交流電流により励磁して交流磁界を発生するとともに、交流磁界による電磁誘導により起電力を出力する。このセンサ部110は、図示しない、励磁コイルと、誘導コイルと、を備えている。
励磁コイルは、導線が略円筒状に巻回され導線の両端に交流電流が供給されることで励磁して交流磁界を発生するコイルである。具体的には、内周側から外周側に磁界を形成する状態となっている。
誘導コイルは、例えば励磁コイルの外周側に巻装され、励磁コイルにて発生する交流磁界による電磁誘導にて巻線の両端間に起電力が発生する。
そして、センサ部110は、励磁コイルおよび誘導コイルが一体的に耐熱性部材である耐熱性樹脂などにて一体的に被覆されて一体形成されている。
このセンサ部110には、励磁コイルの内周側の磁束が通過する領域に対応する面が被検査物の被検査面に対向する状態に位置させる治具などが着脱可能となっている。すなわち、治具に取り付けられたセンサ部110は、被検査物の被検査面上で、検査面が被検査面に一定の間隔で移動される。
なお、センサ部110は、励磁コイルおよび誘導コイルが一対の構成に限らず、一方に他方が複数巻装する構成や、複数対の構成、略同径で隣接する状態に配置する構成など、同軸上に位置し一部が接触する位置関係であればいずれの形態でもよい。さらには円筒状に限らず多角筒状など、いずれの形状に形成できる。具体的には、比較的に広い面で検査する場合や、溶接部分や角部分などの比較的に狭い範囲などを検査する場合など、被測定物その測定領域に応じた形状に形成されたセンサ部110を適宜選択すればよい。
【0021】
制御部120は、センサ部110へ交流電流を供給するとともに、センサ部110から出力される起電力を読み取り、被検査物による磁場の変化を検出する装置である。この制御部120は、図示しない、操作部と、電力供給装置としての交流電源部と、検出装置としての検出回路部と、を備えている。
操作部は、検査者である利用者が操作可能な操作つまみや操作ボタンなどを有している。そして、操作部は、これら操作つまみや操作ボタンの入力操作に応じた操作信号を出力する。
交流電源部は、センサ部110の励磁コイルに接続され、商用交流電源を操作部からの操作信号に応じて所定の周波数、例えば100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHz程度の交流電流に変換し、励磁コイルに供給する。この交流電流の供給により励磁コイルが励磁して交流磁界を発生する。
検出回路部は、センサ部110の誘導コイルに接続され、誘導コイルから出力される起電力が印加され、起電力の大きさを検出する例えばロックインアンプなどである。この検出回路部は、例えば、励磁コイルに交流電流を供給し、交流磁界に被検出物が存在しない状態で生じる起電力を基準として、起電力の変動状態を検出する。具体的には、被検査物に傷や亀裂あるいは異物などが存在する場合、それらに対応する位相成分の信号と、振幅成分の信号とに変換し、それら以外についてはフィルタ処理をする。なお、この構成に限らず、単に起電力の大きさを検出する構成とするなどしてもよい。
【0022】
表示記録装置130は、画面表示のための表示パネルおよび記録のためのHD(Hard Disk)ドライブやメモリなどの記録部を有したパーソナルコンピュータなどで、制御部120の検出回路部で検出したセンサ部110からの起電力を、利用者が視認可能に表示パネルにグラフなどにより画面表示させるとともに、記録部に記録させる。
なお、パーソナルコンピュータに限らず、検出結果を画面表示により報知でき、記録できるいずれの構成が利用できる。また、画面表示と記録との構成が別体のものでも適用できる。さらに、記録する構成としては、記録媒体に記録する構成に限らず、例えば印刷出力により記録する構成などとしてもよい。
【0023】
〔非破壊検査装置の動作〕
次に、上記非破壊検査装置100の動作として、被検査物の特性が異なる状態を検査する検査動作について、図面を参照して説明する。
【0024】
まず、検査する被検査物の検査する領域に対応するセンサ部110を制御部120に接続するとともに、制御部120に表示記録装置130を接続する。そして、センサ部110に治具を適宜装着し、センサ部110の検査面が被検査物の被検査面に所定の距離で被検査面上を移動可能とする。なお、検査部位が細かい所など、あるいはセンサ部110の検査面が比較的に広く被検査面の表面が比較的に平滑である場合などでは、センサ部110に治具を装着せず、検査面を被検査面に直接接触させて検査してもよい。
そして、制御部120からセンサ部110の励磁コイルに供給する交流電流の周波数を、操作部で設定する。具体的には、比較的内部や内面側の状態を検査する目的であれば、比較的に低い周波数、例えば100Hz〜数kHz程度、また、被検査物が肉薄で表面あるいは表面に近い位置の状態を検査する場合には数kHz〜50kHz、特に微細な傷や異物などを検査する場合には50kHzに近い周波数に設定する。
【0025】
そして、設定した周波数の交流電流をセンサ部110に供給し、被検査物の表面上を治具により移動させる。センサ部110への交流電流の供給により、励磁コイルが励磁して交流磁場が生じる。この際、被検査物がオーステナイト系ステンレス鋼などのオーステナイト系鋼材のような非磁性体でも、傷や亀裂、へこみなどの損傷や異物の混入や組成変化などが生じる位置では、これらの異なる特性の位置とで、誘導コイルにおけるインダクタンスが異なる状態となる。このことにより、誘導コイルで発生する起電力の大きさが異なる状態となる。したがって、交流電流が供給されたセンサ部110の移動により、傷や亀裂、へこみなどの損傷や異物の混入や組成変化などの特性が異なる位置で異なる起電力の大きさが制御部120の検出回路部にて検出され、表示記録装置130にて画面表示されるとともに記録される。
【0026】
(実験1)
ここで、上述した非破壊検査装置100による検出状況を確認する実験について説明する。
図2は、実験室におけるオーステナイト系ステンレス鋼の亀裂の検出状況を確認する実験で検出した波形図である。
【0027】
非破壊検査装置100として、センサ部110に偕成エンジニアリング株式会社製のペン型センサ、リング型センサ、およびボタン型のブロック型センサを用いた。制御部120としては、偕成エンジニアリング株式会社製のロックインアンプ(型番:KE−9000T)を用いた。
被検査物としての試験体としては、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304を用い、米国規格ASTM−G83に準拠してCリング試験片を作製した。このCリング試験片は、一辺が97mmで厚さ寸法が4mmのSUS304を径寸法が203mm(8インチ)に湾曲させたものである。また、実機である石油化学プラントに使用される配管材から切り出した4つの試験片も合わせて測定した。これら実機の試験片は、SUS304とSUS316Lのもので、外径寸法が19mm(3/4インチ)、152mm(6インチ)、203mm(8インチ)のものである。
そして、Cリング試験片および実機の試験片については、浸透深傷試験(PT)にて検査し、亀裂の状態を検査した。Cリング試験片では、10mmと5mmの応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking;SCC)が認められた。また、実機の試験片には、3〜50mmの単独割れや密集した多数の割れが認められた。
これらCリング試験片および実機の試験片を、上述した非破壊検査装置100にて亀裂を検査した。なお、Cリング試験体や実機の試験体がオーステナイト系ステンレス鋼であることから、周波数を25kHzに設定して30mAの交流電流を供給して検査した。Cリング試験片の結果を図2に示す。また、Cリング試験片をESCCが発生しやすい運転温度での起用性も確認するため、100℃以上に加温した状態でも検査した。さらには、Cリング試験片の亀裂がある面の裏面からもセンサ部110を操作させ、内面側からのSCCの検出も行った。
【0028】
この図2に示すように、2つのSCCに対応した検出ピークが認められた。SCC以外の部位はフラットな検出波形であり、容易にSCCを判別できた。
また、120℃に加温した状態でも室温とほぼ同等の検出制度で亀裂を検出でき、稼働中の設備における応力腐食割れ(External Stress Corrosion Cracking;ESCC)の検査にも適用できることが認められた。
さらに、裏面からの検査でも、検出ピークが認められ、被検査物の外面側から内面側SCCを検出できることが認められた。
【0029】
(実験2)
次に、上述した非破壊検査装置100により実機である稼働中の石油化学プラントでのESCCの検査を実施した結果について説明する。
図3は、稼働中の石油化学プラントのオーステナイト系ステンレス鋼にて形成されたノズル周りの応力腐食割れの検査を実施した際の割れの分布状態を示す説明図である。
図4は、タンクのノズル周りの補強板部の応力腐食割れの検査を実施した際の波形図である。
【0030】
検査対象は、稼働中の石油化学プラントで、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304TP製で、径寸法が19mm(3/4インチ)、102mm(4インチ)の配管と、SUS304製で径寸法が76mm(3インチ)と508mm(20インチ)とのタンクのノズル周りの部位とした。ESCCの検査の前処理として、保温材を撤去し、検査対象部位の表面付着物をブラシやヤスリにて除去した。各検査部位での温度は、40℃〜105℃であった。また、検査後に浸透深傷試験(PT)によりESCCを測定し、非破壊検査装置100による検査結果と比較した。タンクのノズル周りの部位におけるPTの指示模様検出部の状況を図3に示す。なお、図3において、201はタンクで、202はノズル、203はノズル周りの補強板部であり、204は割れの指示模様である。非破壊検査装置100の検査結果を図4に示す。なお、図4は、タンク201のノズル202周りの補強板部203における一領域の検査結果である。
【0031】
図4に示す結果および図3に示す浸透深傷試験結果とを比較すると、PTの指示模様で検出された全ての損傷を、非破壊検査装置100で検出できた。さらに、非破壊検査装置100では、溶接治具の研磨装置であるグラインダの跡や浅い表面傷、さらには材質変化と考えられる部位についても検出できた。
【0032】
(実験3)
次に、上述した非破壊検査装置100を用いて、石油化学プラントのエチレン製造装置で使用されるオーステナイト系加熱炉管でプロセス流体中の腐食性物質である炭素の侵入状況を確認する実験をした。
被検査物の試験体としては、材質がKHR35CW(Ni;25%,Cr;25%,C;0.45%、微量成分としてNb,Mo,W,Fe;残)で外径が110mm、厚さ寸法が10mmの管材に、浸炭熱処理したものを用いた。この内面からの強制浸炭により、内面側が強磁性となり外面側が非磁性となる。なお、比較として、浸炭熱処理していない新管を用いた。また、試験体を切断し、切断面を研磨後にエッチングし、EPMA(Electron Probe Micro-Analysis)により内面から1mm間隔で定量分析を実施した。なお、新管の炭素量の規格値は、0.45%である。そして、EPMAの結果、内表面0.2mmの位置では炭素量が1.5%、1mmの位置では0.75%、7mmの位置では0.46%であった。
【0033】
非破壊検査装置100にて試験体と新管とをそれぞれ周方向で検査した結果、新管ではピーク変化は認められなかったが、試験体では、部分的に検出値が異なっていた。すなわち、部分的に浸炭状況が異なり、組成変化を適切に検出できることが分かった。
【0034】
(実験4)
次に、上述した非破壊検査装置100を用いて保温材を介して配管の特性を確認する実験をした。なお、交流電流の周波数は8kHzとして検査した。
被検査物としての試験体としては、材質がSGPで外径が140mm、厚さ寸法が4.5mmの管材の外周面に、径寸法が40mmで深さ寸法が2.0mmの孔、径寸法が25mmで深さ寸法が2.0mmの孔、径寸法が20mmで深さ寸法が2.0mmの孔、径寸法が10mmで深さ寸法が1.5mmの孔を設け、人工欠陥を形成した。この人工欠陥を形成した管材の外周面に、厚さ50mmで珪酸カルシウムの保温材を設け、さらに0.5mmの板金で被覆した保温管とした。
【0035】
検査の結果、保温材および表皮の板金を介しても、すべての孔を検出でき、孔の大きさに応じて検出ピークが大きくなることが認められた。さらに、保温管における孔の真上から検査した場合、真横となる90°の位置、真下となる180°の位置でも検出できた。
【0036】
(実験5)
次に、上述した非破壊検査装置100を用いて保温材を介して鋼板の特性を確認する実験をした。なお、交流電流の周波数は、実験4と同様に、8kHzとして検査した。
被検査物としての試験体としては、材質がSS400で1辺が500mm、厚さ寸法が4.5mmの鋼板の一面に、深さ寸法が0.4mm〜1.1mmで、径寸法が40mm、20mm、12mm、10mm、8mm、6mm、4mm、2mmでそれぞれ孔を設け、人工欠陥を形成した。この人工欠陥を形成した鋼板の面に、厚さ75mmで珪酸カルシウムの保温材を設け、さらに0.2mmの板金で被覆した。そして、板金の表面から非破壊検査装置100にて検査した。
【0037】
検査の結果、最も小さい径寸法が2mmで深さ寸法が0.4mmの孔も検出でき、実験4と同様に、孔の大きさに応じて検出ピークが大きくなることが認められた。
【0038】
(実験6)
次に、上述した非破壊検査装置100を用いて、厚板ステンレス鋼の内面状況を確認する実験をした。
図5は、被検査物である試験体を示す斜視図である。
図6は、板厚10mmの鋼板における傷の検出状況を確認する実験で検出した波形図である。図7は、板厚25mmの鋼板積層体における傷の検出状況を確認する実験で検出した波形図である。図8は、板厚30mmの鋼板積層体における傷の検出状況を確認する実験で検出した波形図である。図9は、板厚45mmの鋼板積層体における傷の検出状況を確認する実験で検出した波形図である。
【0039】
被検査物としての試験体としては、材質がSUS304で、図5に示すように、1辺が500mm、厚さ寸法が10mm、15mm、20mmの3種類の鋼板211を用い、10mmの鋼板211の一面略中央に長さ寸法が38mm、幅寸法が2mm、深さ寸法が2mmのグラインダ加工による鋼板211の特性に対応する人工欠陥である傷221を設けた。そして、図5に示すように、10mmの鋼板211に、傷221が設けられた面と反対側に他の鋼板を適宜積層させ、総厚さ寸法が、10mm、25mm、30mm、45mmの4種類とした。この状態で、傷221が設けられた面と反対側に、鋼板211の表面のがたなどによるノイズを防止するために、表面研磨した厚さ寸法が1.26mmのSUS304の鋼板を介在させて各種センサを走査させて検査した。
そして、ロックインアンプの設定条件を適宜調整し、最も感度よく傷221を検出できるセンサの種類およびロックインアンプの設定条件を観測した。その結果を、表1および図6ないし図9に示す。なお、表1には、検査時の設定条件も併せて記述する。
【0040】
【表1】

【0041】
これら表1および図6ないし図9に示す結果から、従来では検査限界とされていた板厚が15mmよりはるかに厚い45mmでも内面側に相当する反対側の面の傷211を検出できた。
そして、センサの種類については、ボビン型センサが最適で、他のものは板厚寸法が厚くなると傷221を検出できなかった。
周波数としては、1.7kHzと1.8kHzで実施したが、0.1kHz単位の変更でも、検出感度に対する影響は大きかった。鋼板の傷221が設けられた側に磁性体を設置して確認したところ、特に周波数が短い1.7kHzの方が励磁信号の浸透深さが大きくなることが認められた。一方、周波数が短くなると、検出信号も小さくなる傾向が認められた。すなわち、板厚45mmの場合、周波数が1.7kHzでは他の各種設定条件を変更しても判別できる検出ピークが認められなかったが、周波数を1.8kHzとして測定することで、表1および図9に示すように、傷221に対応する検出ピークを判別できることがわかる。
【0042】
(実験7)
次に、上述した非破壊検査装置100を用いて、実機である石油化学プラントから切り出した配管での保温材上からのESCCにおける検査を実施した結果について説明する。
図10は、板金なしの場合における応力腐食割れの検査を実施した際の波形図である。図11は、板金を設けた場合における応力腐食割れの検査を実施した際の波形図である。
【0043】
被検査物としての試験体は、石油化学プラントの配管から切り出した配管材で、材質がSUS316Lで、径寸法が約152.4mm(呼び径6インチ)で肉厚寸法が3.4mmの配管を半割状に切断した。なお、浸透深傷試験(PT)により測定した結果、SCCは、30×40mmの範囲の領域に5〜25mmのものが混在し、55×20mmの範囲の別の領域に3〜12mmのものが混在していることが認められた。
そして、半割状に切断した配管材の外周面側に実機と同材質で厚さ寸法が30mmの保温材(無機ファイバ)を被せた。そして、この保温材の表面で各種センサを各種設定条件で走査させて検査した。さらに、保温材の表面に鋼製板金をさらに被せ、鋼製板金の表面で各種センサを各種設定条件で走査させて検査した。これら検査結果を、表2、図10および図11に示す。なお、表2には、検査時の設定条件も併せて標記する。
【0044】
【表2】

【0045】
これら表2、図10および図11に示す結果から、ドーナツ型センサを用いて表2に示す設定条件で検査することにより、保温材および鋼製板金を介在させてもESCCに対応した検出ピークが認められた。なお、ゲインの値を10、30に設定した場合、検出感度は増大したが、ESCCとそれ以外との検出信号の判別が困難であった。
【0046】
(実験8)
次に、上述した非破壊検査装置100を用いて、実機である石油化学プラントにおける使用済みのドレンタンク廃材でのESCCにおける検査を実施した結果について説明する。
図12は、オーステナイト系ステンレス鋼にて形成された石油化学プラントのドレンタンクの応力腐食割れの検査を実施した際の割れの分布状態を示す説明図である。
【0047】
被検査物としての試験体は、図12に示すように石油化学プラントの使用済みのドレンタンク廃材(保温材を撤去して表面付着物を除去したもの)で、材質がSUS316、径寸法が600mm、肉厚寸法が4.0mmのものを用いた。なお、浸透深傷試験(PT)により測定した結果、SCCは図12に示すように、多数認められた。なお、図12は、説明の都合上、ドレンタンク廃材230の展開図として示す。そして、ドレンタンク廃材230の表面で各種センサを走査させ、検出ピークが得られた部分で繰り返し走査させ、検出ピークが確実に認められることを確認後、検出ピークの形状と検査時の設定条件とを記録した。
【0048】
この検査結果から、以下の表3に示すように、周波数が30kHzでESCCの検出感度が最大であることが認められた。したがって、例えば実機の現場での検査では、周波数30kHzを基準として周波数を長短に変更することで効率化が図れることがわかる。また、センサの走査速度は、がたつきが生じない範囲で早くなるにしたがってESCCの高い検出ピークが得られた。このことにより、例えば、図13や図14に示すように、被検査物240上でセンサ部110をがたつきが生じないように安定して操作させるための治具250,260を用いることで、走査速度を速くすることができ、より良好な検査ができることがわかる。特に、図13に示す治具250のように、円滑に走査可能に走行ローラ251などを有する構成としたり、図14に示す治具260のように例えば摩擦抵抗の少ない材料にて治具260を構成して小径管の周方向に直接的に摺接させたりするなど、がたつきを抑制する構成とすることが好ましい。
【0049】
【表3】

【0050】
〔非破壊検査装置の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態によれば、交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイルと、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルとを備えたセンサ部110の励磁コイルへ、制御部120の交流電源部から周波数が100Hz以上50kHz以下の交流電流を供給させ、被検査物に対して励磁コイルによる磁場を作用させ、誘導コイルから出力する起電力を制御部120の検出回路部で読み取って被検査物における磁場の変化を検出させ、被検査物を非破壊検査しているので、例えば非磁性材料のオーステナイト系ステンレス鋼やニッケル系材料などでも長期使用などによる材質変化により磁性が生じることで材質変化部分を検査したり、腐食によりオーステナイト系鋼材やニッケル系材料などが応力により割れたりするESCCなどの損傷を検査したり、炭素や塩素などの腐食性物質が侵入した状況を検査したり、内部や内面に生じる傷や亀裂あるいは組成変化などを検査したり、石油精製プラントや石油化学プラントなどの熱が加わる部位で保温材にて覆われた被検査物の腐食状態を検査したり、同一組成か否かの判別のために検査したりするなど、周波数が100Hz以上50kHz以下、好ましくは30kHzの交流電流により、非磁性材料でさらには稼働する石油精製プラントや石油化学プラントなどの加温する被検査物の内部深くまで磁場を作用させることができるとともに、微細な損傷や組成の違いなどの特性の違いでも検出でき、各種利用形態での被検査物の特性の詳細で適切な検出が容易に得られる。
【0051】
そして、オーステナイト系鋼材、特にオーステナイト系ステンレス鋼にて形成されたものを被検査物の対象としている。このため、石油精製プラントや石油化学プラントなどの稼働期間が比較的に長い設備に用いられるオーステナイト系ステンレス鋼では、特に加熱雰囲気である50℃以上200℃以下に加温された状態で応力腐食割れが生じ易くなることから、応力腐食割れによる設備の停止などを防止するために稼働中の設備で加温した状態でも、オーステナイト系ステンレス鋼の傷や材質変化などの特性を良好に検査できる。
【0052】
また、センサ部110として、耐熱性樹脂にて一体形成した構成としていることから、50℃以上200℃以下に加温された状態でもセンサ部110が損傷することなく、詳細な被検査物の検査結果が得られる。
【0053】
〔実施の形態の変形〕
なお、本発明は、好適な実施の形態を挙げて説明したが、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示されるような変形をも含むものである。
【0054】
すなわち、石油化学プラントの配管やタンクのノズル周りを検査して実証したが、石油化学プラントに限らず、各種装置やプラントにおける各種構造物を検査対象とすることができる。
【0055】
また、被検査物としては、オーステナイト系ステンレス鋼などのオーステナイト系鋼材に限らず、各種磁性材料や非磁性材料、さらには金属材料の他、いずれの材料を対象とすることができる。
【0056】
さらに、1つの材質における特性の変化を検査する方法に利用する他、異なる部材を検査して検査結果を比較することで、組成の違いを判別する検査などにも利用できる。
【0057】
また、例えば非磁性材料の肉厚を検査する方法にも適用できる。
この場合には、センサ部110の反対側に磁性材料を配置することで精度よく肉厚を適切に検査できる。
【0058】
そして、センサ部110に交流電流を供給する電力供給装置としての電流電源部と、センサ部110から出力される起電力を読み取る検出装置としての検出回路部を備えた一体型の制御部120を用いて説明したが、電力供給装置と、検出装置とを別体の構成としてもよい。
【0059】
その他、本発明は上述の実施の形態における具体的な構造および手順に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、設計の変更などは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態における非破壊検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施の形態における実験室でのオーステナイト系ステンレス鋼の亀裂の検出状況を確認する実験で検出した波形図である。
【図3】前記実施の形態における稼働中の石油化学プラントのオーステナイト系ステンレス鋼にて形成されたタンクのノズル周りの応力腐食割れの検査を実施した際の割れの分布状態を示す説明図である。
【図4】前記実施の形態におけるタンクのノズル周りの補強板部での応力腐食割れの検査を実施した際の波形図である。
【図5】前記実施の形態における亀裂の検出状況を確認する実験に用いる試験体を示す斜視図である。
【図6】前記実施の形態における傷の検出状況を確認する実験の板厚10mmの鋼板での実験結果を示す波形図である。
【図7】前記実施の形態における傷の検出状況を確認する実験の板厚25mmの鋼板積層体での実験結果を示す波形図である。
【図8】前記実施の形態における傷の検出状況を確認する実験の板厚30mmの鋼板積層体での実験結果を示す波形図である。
【図9】前記実施の形態における傷の検出状況を確認する実験の板厚45mmの鋼板積層体での実験結果を示す波形図である。
【図10】前記実施の形態における板金なしの場合での応力腐食割れの検査結果を示す波形図である。
【図11】前記実施の形態における板金ありの場合での応力腐食割れの検査結果を示す波形図である。
【図12】前記実施の形態におけるドレンタンク廃材のSCC分布状態を示す説明図である。
【図13】前記実施の形態における治具を用いた検査実施状況を示す説明図である。
【図14】前記実施の形態における他の治具を用いた検査実施状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
100……非破壊検査装置
110……センサ部
120……電力供給装置および検出装置として機能する制御部
130……表示記録装置
201……被検査物であるタンク
202……被検査物である配管
203……被検査物である補強板部
204……特性である応力腐食割れ
211……被検査物である試験体としての鋼板
221……特性としての人工欠陥である傷
230……被検査物であるドレンタンク
240……被検査物
250,260……治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイル、および、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ前記励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルを備え、被検査物に対して前記励磁コイルによる磁場を作用させて前記誘導コイルから起電力を出力させるセンサ部と、
前記起電力を読み取り前記被検査物における磁場の変化を検出する検出装置と、
入力操作可能に設けられこの入力操作に応じた出力で、前記交流電流を前記励磁コイルへ供給する電力供給装置と、を具備した非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法であって、
前記被検査物は、オーステナイト系鋼材またはニッケル系材料にて形成されたものである
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の非破壊検査方法であって、
周波数が100Hz以上50kHz以下の前記交流電流を前記電力供給装置から供給させる
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項3】
交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイル、および、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ前記励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルを備え、被検査物に対して前記励磁コイルによる磁場を作用させて前記誘導コイルから起電力を出力させるセンサ部と、
前記起電力を読み取り前記被検査物における磁場の変化を検出する検出装置と、
入力操作可能に設けられこの入力操作に応じた出力で、前記交流電流を前記励磁コイルへ供給する電力供給装置と、を具備した非破壊検査装置を用いた非破壊検査方法であって、
周波数が100Hz以上50kHz以下の前記交流電流を前記電力供給装置から供給させる
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の非破壊検査方法であって、
周波数が30kHzの交流電流を供給させてセンサ部を前記被検査物上で走査させ、前記検出装置で検出する磁場の変化状況に応じて、前記交流電流の周波数を30kHzから長短させて供給させる
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の非破壊検査方法であって、
前記被検査物は、オーステナイト系鋼材またはニッケル系材料で形成されたものである
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項6】
請求項1または請求項5に記載の非破壊検査方法であって、
前記被検査物は、オーステナイト系ステンレス鋼にて形成されたものである
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の非破壊検査方法であって、
前記被検査物は、腐食性物質を含有する流体と接触する部材である
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の非破壊検査方法であって、
前記被検査物は、石油精製プラントまたは石油化学プラントにおける50℃以上200℃以下に加熱される構造物を構成するものである
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の非破壊検査方法であって、
前記励磁コイルおよび前記誘導コイルを耐熱性部材にて覆った前記センサ部を用いる
ことを特徴とする非破壊検査方法。
【請求項10】
交流電流が供給されることで励磁して磁場を形成する励磁コイル、および、この励磁コイルと同軸上で一部が接触して設けられ前記励磁コイルの励磁によって電磁誘導により起電力を発生させる誘導コイルを備え、被検査物に対して前記励磁コイルによる磁場を作用させて前記誘導コイルから起電力を出力させるセンサ部と、
前記起電力を読み取り前記被検査物における磁場の変化を検出する検出装置と、
入力操作可能に設けられこの入力操作に応じた出力で、周波数が100Hz以上50kHz以下の前記交流電流を前記励磁コイルへ供給する電力供給装置と、
を具備したことを特徴とした非破壊検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の非破壊検査装置であって、
前記センサ部は、耐熱性部材にて前記励磁コイルおよび前記誘導コイルが覆われた
ことを特徴とした非破壊検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−206057(P2007−206057A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303573(P2006−303573)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000183624)出光エンジニアリング株式会社 (18)
【出願人】(000211064)中外テクノス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】