説明

非神経障害性疼痛を処置するための方法

【課題】非神経障害性疼痛を処置するために痛覚脱失を誘導するために有効な方法を提供する。
【解決手段】有効量の局所麻酔剤を患者に対して表面に投与する工程を包含する。本発明による処置に適切な非神経障害性疼痛としては、スポーツ損傷に関連した疼痛;捻挫に関連した疼痛;挫傷に関連した疼痛;軟組織損傷に関連した疼痛;反復運動損傷に関連した疼痛;手根管症候群に関連した疼痛;腱への損傷、靭帯への損傷に関連した疼痛および筋肉への損傷に関連した疼痛;状態に関連した疼痛(例えば、線維筋肉痛、滑液包炎、肋軟骨炎、筋筋膜疼痛、および関節炎に関連した疼痛、炎症に関連した疼痛、打撲傷に関連した疼痛、手術後疼痛、ならびに侵害受容疼痛)が挙げられる。好ましくは、リドカインは、疼痛部位付近に適用される経皮パッチを介して適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非神経障害性疼痛を処置する方法に関する。詳細には、本発明は、有効量の局所麻酔剤(例えば、リドカイン)を疼痛部位付近に表面に投与することによって非神経障害性疼痛を処置する方法に関する。最も詳細には、本発明は、局所リドカインパッチを患者に施すことによって非神経障害性疼痛を処置する方法に関し、ここで、この経皮薬物送達は、臨床的に意味のある血清薬物レベルをもたらさず、送達部位での感覚脱失も生じない、すなわち、感覚脱失なしの痛覚脱失をもたらす。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、鎮痛剤または麻酔剤のいずれかを用いて処置され得る。鎮痛剤の顕著な特徴は、これらが、麻酔剤に関連した麻痺も感覚の完全喪失も引き起こすことなく、疼痛の知覚を低減することである。
【0003】
現在、米国食品医薬品局(FDA)によって認可されている処方箋鎮痛剤は、たった2つの分類の薬物に分けられる:オピオイドおよび抗炎症剤。麻酔剤は、異なる分類に分けられる。オピオイドは、身体の天然のオピオイド様物質(すなわち、エンドルフィンおよびエンケファリン(enkaphalin)を模倣することによって作用する。エンドルフィンおよびエンケファリンは、疼痛緩和を助けるために、身体によって産生される。これらの物質およびオピオイドは、中枢神経系および末梢神経系全体に見出されるオピオイドレセプターに結合することによって、疼痛をブロックする。抗炎症剤(NSAIDおよびCOX−2インヒビターを含む)は、身体損傷からもたらされるプロスタグランジンの化学的カスケードによって産生される炎症を低減しようとする。FDAは、これらの2つの分類のみを「全身鎮痛剤」として認めている。
【0004】
この分類、ならびに既知の薬物およびそれらの作用機構に起因して、従来麻酔剤と分類されていた製品が、全身鎮痛剤としても有用であることがわかることは驚くべきである。
【0005】
本明細書中で考察される場合、疼痛は、2つの広範な範疇に分類される:神経障害性疼痛および非神経障害性疼痛。一方の型の疼痛を処置することに関連した方法は、他方を処置する際には必ずしも有効ではない。
【0006】
神経障害性疼痛は、複雑かつ可変の病因を有し、侵害受容性疼痛とも炎症性疼痛とも異なる、特定の型の疼痛である。これは一般に、神経の完全離断もしくは部分的離断、または神経叢に対する外傷に起因し得る慢性状態であり、一方、非神経障害性疼痛(すなわち、侵害受容性疼痛または炎症性疼痛)は、正常な非損傷神経系状況において生じる。神経障害性疼痛は、知覚過敏(自然な刺激に対する感度増強)、痛覚過敏(疼痛に対する異常な感受性)、異痛症(無害な触覚刺激に対する過敏症によって特徴付けられる、広範な圧痛)、および/または自発性の灼熱感のある疼痛によって特徴付けられる。ヒトでは、神経障害性疼痛は、慢性である傾向があり、そして消耗性であり得る。
【0007】
非神経障害性疼痛は、まさに複雑かつ可変である。非神経障害性疼痛としては、一般的状態(例えば、関節炎疼痛、筋骨格疼痛、手術後疼痛、および線維筋肉痛(fibromyalgia))が挙げられる。これらの疼痛のほとんど(例えば、関節炎疼痛、筋骨格疼痛、および手術後疼痛)は、軟組織および骨に対する損傷によって引き起こされて、正常に機能している神経系にもかかわらず自然炎症応答をもたらすと考えられる。しかし、いくつかの非神経障害性疼痛は、あまりよく理解されていない。神経系がインタクトなままであり損傷されていないままであるとの考えにもかかわらず、非神経障害性疼痛となる状態(例えば、線維筋肉痛)は、それ自体、充分には理解されていない。このような状態および関連の疼痛を処置することは、この理解の不足に起因して、しばしば困難である。本発明の目的は、この非神経障害性疼痛および他の非神経障害性疼痛を処置することである。
【0008】
本発明は、神経原性であろうが他のものであろうが、全ての疼痛が、「侵害受容器」と呼ばれる特化した神経線維によって伝達されるという提唱に関する。損傷を受けていない正常な侵害受容器神経は、それが神経支配する皮膚領域が、熱傷、切断、または挫傷によって損傷を受けた場合にのみ、生理学的に活性であり、正常な放出を生じる(疼痛の知覚をもたらす)。この放出は、神経の正常な機能である。さもなければ、この神経は無症候性のままであり、疼痛は、身体のこの領域において知覚されない。
【0009】
しかし、この侵害受容器の末梢神経自体が損傷を受けた場合(すなわち、神経障害性疼痛)、異常なナトリウムチャネルが、神経損傷部位で発達し、(1)通常は無症候性の侵害受容器神経における異所性異常放出となり、これは、(2)皮膚の損傷が起きていないにもかかわらず、侵害受容器における疼痛シグナルの発達を引き起こし、それゆえ、(3)それが神経支配する皮膚領域における、異常な自然神経障害性疼痛およびその付随の痛覚過敏、知覚過敏(hyperasthesia)、および異痛症の知覚を引き起こす。これは、正常な機能でも正常な放出でもない。さらに、損傷した侵害受容器神経上のこれらの異常なナトリウムチャネルは、ナトリウムおよびナトリウムチャネルアンタゴニスト薬物に対する極めて高い親和性を有するので、静脈内経路、経口経路、または局所経路によって送達される、極めて低い用量のナトリウムチャネル遮断薬物は、これらの異常なナトリウムチャネルに結合し得、これらの異常放出の頻度を低減し得、従って、神経伝達の完全遮断を伴うことなく、そして感覚喪失も運動遮断を伴わずに、神経障害性疼痛の改善をもたらし得る。
【0010】
しかし、これまで、非神経障害性疼痛では、神経系(侵害受容器神経を含む)が損傷を受けていないので、これらの異常なナトリウムチャネルは発達せず、そして疼痛は炎症プロセスの単なる結果であると考えられてきた。これまでのところ、このような低用量のナトリウムチャネル遮断薬物による、通常に興奮している、損傷を受けていない神経の処置は、使用されておらず、意図されてすらいない。非神経障害性疼痛は、どのような経路によって送達された非常に低用量のナトリウムチャネル遮断剤を用いても処置されていない。従って、非神経障害性疼痛は、通常、NSAIDおよびCOX−2薬物によって処置されており、これは、炎症プロセスを直接的に妨害する。このような疼痛を処置する際に、麻酔剤は、通常、その領域の皮膚または神経のいずれかに直接的に注射される。非神経障害性疼痛を処置する際の麻酔剤の役割は、完全な感覚遮断(麻痺)および/または完全な運動遮断をもたらし、それによって、神経伝達を完全に停止させること、すなわち、感覚脱失(感覚喪失)を用いた痛覚脱失(疼痛軽減)である。感覚脱失は、患者に、麻痺した身体部分をもたらし、そして時々、関連する身体領域の完全麻痺をもたらすので、臨床的に、感覚脱失は、通常は、最適な疼痛処置ではない。
【0011】
リドカインは周知の局所麻酔剤であり、神経損傷に関連した疼痛(すなわち、神経障害性疼痛)を処置するために成功裏に用いられている。リドカインは、唯一の作用機構が末梢ナトリウムチャネル拮抗作用である麻酔剤であるので、非神経障害性疼痛を処置する際の、感覚脱失なしでの鎮痛剤としてのその使用は、これまで開発されていない。神経障害性疼痛を処置する際に有用なこのような強力な麻酔剤が、神経損傷が生じていないことが既知の疼痛を処置する場合に、痛覚脱失を生じる際に有効であることは、驚くべきことであり、かつ予想外のことである。従って、非神経障害性疼痛に関連した病態生理学的事象もまた、神経障害性疼痛と同様に、有痛性領域の、傷害を受けていない侵害受容器神経における高親和性ナトリウムチャネルの産生に関与しなければならない。これはまた、現時点では、炎症性ペプチド、ヒスタミンまたは非神経障害性疼痛損傷部位において生じることが公知の他のペプチドおよび化学物質の正常な放出が、損傷を受けていない隣接する侵害受容器神経部位における高親和性ナトリウムチャネルの発達をもたらすと推測されるのみであり得る。
【0012】
極めて多数の損傷および疼痛が、発生数の大部分ではないにしても、起源が非神経障害性であるので、非神経障害性疼痛を処置するより多くの、そしてより良好な方法が必要とされている。従って、従来の鎮痛剤および麻酔剤が他の場合には用いられ得る非神経障害性疼痛を処置する際の、感覚脱失を伴わない鎮痛剤としてのリドカインの使用は、有用な処置であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
有効量の局所麻酔剤(例えば、リドカインであるがこれに限定されない)を患者に表面的に投与する工程を包含する方法が開示される。この方法は、非神経障害性疼痛を処置するために、感覚脱失を伴わずに痛覚脱失を誘導するために有効である。本発明による処置に適切な非神経障害性疼痛としては、以下が挙げられる:捻挫に関連した疼痛;挫傷に関連した疼痛;軟組織損傷(挫傷など)に関連した疼痛;反復運動損傷;手根管症候群;腱、靭帯、および/または筋肉に対する損傷;状態(例えば、線維筋肉痛、滑液包炎、肋軟骨炎(castrochondritis)、筋筋膜疼痛、および関節炎に関連した疼痛、炎症に関連した疼痛、打撲傷に関連した疼痛、手術後疼痛、ならびに侵害受容疼痛。好ましくは、この局所麻酔剤(例えば、リドカイン)は、疼痛部位に適用されるかまたは疼痛部位に隣接して適用される経皮パッチを介して適用される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中に開示される方法は、元来単なる例示であり、特許請求の範囲に示される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0015】
表面局所麻酔薬物(例えば、リドカインであるがこれに限定されない)が、軟組織損傷、関節炎、手術手順および状態(例えば、線維筋肉痛)に関連した広範な種々の非神経障害性疼痛に関連した疼痛を緩和する能力を有することが見出された。この驚くべき、かつ予想外の知見は、病態生理学的疼痛機構の臨床状態および理解において意義を有する。用いられ得る表面麻酔剤の他の非限定的な例としては、ベンゾカイン、プリロカイン、リドカイン、ジブカイン(dubicaine)、メピバカイン、ブピバカインなどが挙げられる。
【0016】
この知見は、これらの型の損傷および状態に関連する疼痛が、疼痛部位での損傷を受けていない末梢感覚神経における機能不全のナトリウムチャネルの存在によって少なくともある程度まで、引き起こされることを強力に示唆する。従って、認知される疼痛の成分(これは、非神経系末梢組織への損傷に関連する)は、異常なナトリウムチャネルによって生成される異常な異所性侵害受容インパルスによって引き起こされる。
【0017】
末梢感覚神経に対する損傷が、異常な異所性侵害受容インパルスおよび疼痛(すなわち、神経障害性疼痛)を生成することが公知である。ここで、上記の知見に基づいて、軟組織に対する損傷が、損傷を受けていない局所的な感覚神経における異常なナトリウムチャネルの生成をまた引き起こす、炎症性の化学物質およびペプチドならびに他の化学物質およびペプチドの放出をもたらすことが仮定される。次いで、これは、軟組織損傷部位での疼痛の感覚/知覚をもたらす、異常な異所性侵害受容インパルスを生成する。
【0018】
炎症に関連して産生されるこれらの正常な侵害受容インパルスの生成に起因して、ナトリウムチャネルアンタゴニスト薬物(例えば、リドカイン)の局所的存在は、異常なナトリウムチャネルに結合し、異常な異所性侵害受容インパルスの頻度を低減または無くし、それによって、非神経障害性疼痛の軽減をもたらす。重要なことには、そして本発明に対して新規なことは、感覚脱失も皮膚のしびれも発生させない、損傷部位での非神経障害性疼痛の軽減である。
【0019】
軟組織損傷の非限定的な例としては、腱に対する損傷、靭帯に対する損傷、筋肉または包に対する損傷、ならびに捻挫および挫傷などが挙げられる。これらの損傷および他の損傷は、スポーツに参加している間に生じる場合、スポーツ損傷と呼ばれ得る。しかし、この損傷をどのようにして受けたかは重要ではない。本明細書中に記載される方法は、広範囲のこのような損傷を処置する際に有効である。打撲傷、炎症、滑液包炎、肋軟骨炎(costrochondritis)、および筋筋膜疼痛から生じる他の型の疼痛もまた処置され得る。侵害受容疼痛をもたらす他の状態(例えば、変形性関節症、慢性関節リウマチ、線維筋肉痛および手根管症候群)もまた、本発明に従って処置され得る。
【0020】
線維筋肉痛は、容易に診断も処置もされない状態である。これは、ほとんど理解されておらず、根底の原因についても病態生理学的機構についての一致しもない。多くの専門家は、これは神経系における障害によって引き起こされると考えている。線維筋肉痛はしばしば、感受点(「圧痛点」)に結びついたフルー様症状(全身の身体疼痛を含む)および身体の特定の位置での疼痛に関連する。この状態を処置することの困難性にもかかわらず、本発明の方法に従った処置は、疼痛軽減部位での感覚脱失の発生を伴わずに、その状態に関連した疼痛の感覚/知覚を低減し得る。
【0021】
1つの実施形態によれば、5%リドカインを含有する経皮パッチを、疼痛部位またはその付近の皮膚に適用する。このパッチは、当該分野で公知のような、他の薬学的に有効な成分または有効成分の経皮移動、パッチの安定性、接着および他の懸念を補助する他の成分を含み得る。現在好ましいのは、Endo Pharmaceuticals, Inc.から入手可能な、LIDODERMリドカインパッチとして市販されるパッチである。用いられるパッチのサイズを変化させることによって、投薬量が変化する。しばしば、パッチは切断され、ごく一部しか用いられない。いくつかの場合、1より多くのパッチの使用が賢明であり得る。最適疼痛軽減はしばしば、リドカインパッチが、有痛性身体領域全体を覆う皮膚に直接的に適用される場合に生じる。
【0022】
LIDODERM(リドカインパッチ5%)は、不織性ポリエステルフェルト裏打ち材に塗布され、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム剥離ライナーで覆われた、5%リドカイン含有接着材料から構成される。この剥離ライナーは、皮膚への適用前に除去される。このパッチのサイズは、10cm×14cmである。
【0023】
リドカインは、アセトアミド,2−(ジエチルアミノ)−N−(2,6−ジメチルフェニル)と化学的に命名され、pH7.4にて43のオクタノール:水分配比を有し、そして以下の構造を有する。
【化1】

【0024】
各接着パッチは、700mgのリドカイン(1gの接着剤あたり50mg)を水性基剤中に含む。これはまた、以下の不活性成分を含む:アミノ酢酸ジヒドロキシアルミニウム、エデト酸二ナトリウム、ゼラチン、グリセリン、カオリン、メチルパラベン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、プロピルパラベン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、D−ソルビトール、酒石酸、および尿素。
【0025】
別の実施形態は、経皮パッチを患者に、疼痛部位に施すことを含み、ここで、このパッチは、約5%のリドカインを唯一の有効成分として含む。このパッチの残部は、不活性な薬学的に受容可能な薬剤からなる。不活性薬剤は、それら自体が、そしてそれらが自発的に疼痛を軽減することはない。当業者は、パッチおよび皮膚を通してのリドカイン輸送を容易にするか、このパッチ自体の形成を補助するか、または他の懸念および必要性に取り組む、これらの不活性薬剤の重要性を認識する。さらに、投薬量は、パッチのサイズを変化させることによって変動させ得る。
【0026】
経皮パッチを介した投与が好ましい。なぜなら、リドカインの適用および放出が、既知の技術によって制御され得るからである。この経皮パッチが好ましいとはいえ、ゲル剤、軟膏剤(salve)および軟膏剤(ointment)を含め、リドカインを含む組成物の表面適用も十分である。このような組成物の有効量での表面適用は、局所領域における疼痛の感覚/知覚を低減する。現行のLIDODERMパッチ送達系を用いた場合、約95%のリドカインが未使用のままであることに留意されたい。従って、使用されるリドカインまたは他の麻酔剤の量は、送達系の効率に非常に依存して変化する。直接的に適用されるゲル剤、軟膏剤(salve)、軟膏剤(ointment)などは、より少ない量の局所麻酔剤を必要とし得る。
【0027】
重要なことには、これらの損傷および状態の多くに関連する疼痛は、ほぼ持続しており、そして長期にわたり得るので、この患者は、それらの状態および損傷に関連した疼痛にもかかわらず、動き回り得、そして毎日の活動を続け得るという利益を大いに得る。上記のようなリドカインの適用は、麻痺も感覚の完全喪失(感覚脱失)も完全麻痺も伴わずに、疼痛の軽減(痛覚脱失)をもたらす。麻痺も完全麻痺も伴わずに疼痛を緩和する能力は、患者が多くの場合、疼痛またはしびれに苦しむことなく、多くの毎日の活動に関与することを可能にする。
【0028】
表面リドカイン投与によるさらなる利益は、患者間の処置均一性である。なぜなら、この薬物は、消化管を通した吸収に供されないからである。これはまた、薬物相互作用の可能性を低減し、そしてNSAIDおよびオピオイドに関連した胃腸窮迫の可能性を実質的になくす。この処置は、挫傷、捻挫、関節炎疼痛、および手術後の局所手術疼痛に特に有効である。なぜなら、この鎮痛剤は、局所的に作用するからである。
【0029】
さらなる利益としては、長期に使用してさえも、臨床的に意味のある血漿レベルが発達しないので、薬物−薬物相互作用の欠如が挙げられる。
【0030】
さらなる利点としては、他の鎮痛剤(例えば、NSAID、COX−2、およびオピオイド)については通常必要とされる、用量の力価測定の必要性の欠如が挙げられる。従って、有効な投薬量は、第一用量で送達される。さらに、これは、投薬量の力価測定に関連した、医師の訪問および電話についての必要性を低減し得る。
【実施例】
【0031】
(症例研究)
以下の症例研究は、種々の非神経障害性疼痛を処置する際のリドカインパッチの有効性の例示である。これらは、処置例としてのみ意図され、本願発明の範囲を限定することを意味しない。
【0032】
症例研究では、多くの非神経障害性疼痛を、表面リドカインパッチを用いて好首尾に処置した。これらの研究から、表面リドカインパッチが、臨床的に意味のある血漿リドカインレベルも皮膚の感覚脱失も運動遮断ももたらさないことがわかる。
【0033】
(外側上顆炎;「テニス肘」:)
39歳の男性は、外側上顆炎(「テニス肘」)を発達させ、右肘に局在した疼痛および圧痛を有した。この疼痛は不断であり、そして何らかの物体を右手で保持すること、および/または関与する肘の何らかの動きによって悪化した。この男性は、1枚の表面リドカインパッチ(Lidoderm)を、有痛性の肘を覆って皮膚に直接配置した。約数時間後、この男性は、疼痛の軽減に気づいた。この患者は、リドカインパッチを、このパッチを24時間毎に新たなものと取り替えながら、連続3日間にわたってこの患者の肘に保持し続けた。優れた疼痛軽減が見られ、そして副作用はなかった。このパッチを配置したところには、認知し得る皮膚の麻痺は存在しなかった。3日間の処置後、この男性の疼痛は完全に軽減し、そしてこの男性は、疼痛を伴わずに、物体を持ち上げることができ、そして肘関節を動かすことができた。
【0034】
(関節炎:)
(症例1)
89歳の女性は、膝の重篤な変形性関節症疼痛に罹患していた。この女性を、慢性コルチコステロイド(経口プレドニゾン)を用いて5年間にわたって処置した。最初、このステロイドは、良好な疼痛軽減を提供したが、この疼痛は、その年に徐々に戻ってきた。非ステロイド性の抗炎症薬物は、この女性の潰瘍の病歴および経口コルチコステロイドの同時使用に起因して禁忌であった。この女性は、表面リドカインパッチの試験に同意し、1枚のパッチを、1日あたり12時間の適用にわたって各々の膝の上に配置した。1週間の処置後、この女性は、関節膝における良好な疼痛軽減および副作用がないことを報告した。この女性は、リドカインパッチ下で感じる「しびれ」も感覚の変化もないことを述べた。
【0035】
(症例2)
肘が慢性関節リウマチに罹患している59歳の女性。この女性は、薬物適用を必要とする間欠的な重篤な疼痛を経験する。この女性は、副作用に起因して、むしろ抗炎症薬物適用をしないことを好んだ。この女性には、これらの重篤な疼痛の症状発現の間にこの女性の有痛性肘に適用するようにリドカインパッチが与えられた。この女性は、表面リドカインパッチを24時間にわたって関節炎肘に直接的に適用した場合の、副作用も皮膚の感覚変化もなしでの、大いなる疼痛軽減を報告する。
【0036】
(手術後軟組織疼痛:)
46歳男性は、断裂したアキレス腱の外科的修復を行った。ギプス包帯中で6週間後、この男性は、手術で修復したアキレス腱の(特に、歩きに関連した)動きに関連した、および激しくない毎日の活動をした後にその日の遅くに、中程度から中程度に重篤な疼痛を経験した。夕方には、この男性は、1枚のパッチを、アキレス腱を覆う皮膚に直接的に適用した。30〜45分以内に、この男性は、疼痛の軽減を経験し始めた。歩きながら、この患者は、最小の疼痛を報告し、そして改善された動きを認めた;リドカインパッチの使用を伴わない同様の時間の間のこの正確な動きは、中程度〜中程度に重篤な疼痛およびより重い足取りをもたらした。最も認められるのは、能動的な歩きに起因した疼痛が顕著に低減されるが、また、一日中歩くことに起因した低い程度の苦痛もまた顕著に低減することであった。この男性は、眠りながらもこのパッチを適所に保持し、夜間の動きに関連した疼痛に起因した最小の睡眠中断をもたらした。
【0037】
(足根関節捻挫および痙攣疼痛:)
39歳の男性は、ある夕方に左足根関節に重篤な痙攣疼痛を突然経験し、それゆえ、眠ることができなかった。この疼痛は極めて重篤であるので、この男性は、足根関節に体重を乗せることができず、足根関節の屈曲/伸長に関連して重篤な疼痛を有した。この男性は、1枚の表面リドカインパッチをこの足根関節に適用し、そして疼痛軽減を15分以内に経験し始めた。1時間以内に、この男性の疼痛は最小になり、そしてこの男性は、眠ることができた。この男性は、翌朝、何の疼痛もなく目覚め、そして疼痛なくこの足根関節で歩くことができた。しかし、パッチ適用の約12時間後、この疼痛は徐々に戻り始めた。別のパッチを12時間にわたって適用し、そしてこの疼痛は再度消散した。第2のパッチを12時間後に除去した場合、この男性の疼痛は完全に消散し、そしてこの男性は、疼痛なしで歩くことができた。パッチを適用した場所の皮膚の感覚の喪失には気づかなかった。
【0038】
(有害オーク疼痛/かゆみ:)
39歳の女性は、有害オークに起因して腕に疼痛およびかゆみによる重篤な不快感を被った。この女性は、疼痛およびかゆみのある皮膚領域にリドカインパッチを適用した。30分以内に、この女性は、パッチ適用部位の直接下にある疼痛およびかゆみの軽減を報告し始めた。1.5時間以内に、この女性は、ほぼ完全な疼痛およびかゆみの軽減を報告した。
【0039】
当業者は、本明細書中に開示され、特許請求される方法に対する他のバリエーションおよび改善を認識する。このような明らかな改変体は全て、特許請求の範囲の趣旨および範囲内にあるものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非神経障害性疼痛を処置するための方法であって、局所麻酔剤を含む組成物を、感覚脱失を引き起こさずに痛覚脱失を生じるに充分な量で、患者に対して疼痛部位付近に表面に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記局所麻酔剤が、リドカインである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記局所麻酔剤が、経皮パッチから適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パッチが、1〜10%の局所麻酔剤を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パッチが、1〜10%のリドカインを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記パッチが、4〜6%のリドカインを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記局所麻酔剤が、5%のリドカインを含む経皮パッチから適用される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記処置されるべき非神経障害性疼痛が、軟組織損傷から生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記軟組織損傷が、靭帯に関連した疼痛、腱に関連した疼痛、筋肉に関連した疼痛、包に関連した疼痛、捻挫に関連した疼痛、挫傷に関連した疼痛、炎症に関連した疼痛、打撲傷に関連した疼痛、関節炎に関連した疼痛、および手術後疼痛からなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非神経障害性疼痛が、筋筋膜疼痛、線維筋肉痛、滑液包炎、肋軟骨炎、反復運動損傷、手根管症候群、および侵害受容疼痛からなる群より選択される1以上の状態に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
非神経障害性疼痛を処置するための方法であって、該方法は、有効成分が5%のリドカインからなっていて、残りが薬学的に受容可能な不活性物質からなる薬学的組成物を含む経皮パッチを表面に投与する工程を包含する、方法。

【公開番号】特開2010−202663(P2010−202663A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−122735(P2010−122735)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【分割の表示】特願2003−537569(P2003−537569)の分割
【原出願日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【出願人】(503407443)エンドー ファーマシューティカルズ, インコーポレイティド (9)
【Fターム(参考)】