説明

非空気圧タイヤの製造方法

【課題】支持構造体のスポーク部分が効果的に繊維で補強された非空気圧タイヤを製造することのできる非空気圧タイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられた外側環状部3と、内側環状部1と外側環状部3とを連結する複数の連結部4,5とから構成され、車両からの荷重を支持するための支持構造体SSを備える非空気圧タイヤの製造方法であって、モールド10内の連結部成型部14,15に正面視で連結部4,5の方向に沿って引張力を付与した状態で補強繊維8を配置する工程と、モールド10内に弾性材料の原料液を注入して、内側環状部1と、外側環状部3と、補強繊維8と一体となって補強された4,5連結部とを成型する工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構造部材として、車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)を製造する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能力は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能力はない。また、非空気圧タイヤでは、弾性を高めてクッション性を改善することも可能であるが、空気入りタイヤが有するような荷重支持能または耐久性が悪くなるという問題がある。
【0005】
そこで、下記の特許文献1には、空気入りタイヤと同様な動作特性を有する非空気圧タイヤを開発する目的で、タイヤに加わる荷重を支持する補強された環状バンドと、この補強された環状バンドとホイールまたはハブとの間で張力によって荷重力を伝達する複数のウェブスポークとを有する非空気圧タイヤが提案されている。
【0006】
特許文献1の非空気圧タイヤは、ウェブスポークにかかる張力によって、縦荷重を支持することを意図しており、ウェブスポークには高い引張モジュラスが要求される。その一方で、ウェブスポークの圧縮モジュラスが高いと、走行時においてウェブスポークの位置が接地する際、ウェブスポーク部分での打撃音によるノイズが生じやすくなるので、ウェブスポークには低い圧縮モジュラスが要求される。このような高引張モジュラス、かつ低圧縮モジュラスの要求に応えるため、ウェブスポークを繊維により補強する方法が考えられる。
【0007】
【特許文献1】特表2005−500932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には、ウェブスポークを繊維補強した非空気圧タイヤの製造方法に関する記載はなく、また、単にモールド(金型)に繊維を配置し弾性材料の原料液を注入することで、繊維補強されたウェブスポークを一体成形すると、繊維が偏って補強の役割を果たさなくなる可能性がある。また、特に粘度の高い弾性材料の原料液を射出成型する場合、繊維の偏りが大きくなる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、支持構造体のスポーク部分が効果的に繊維で補強された非空気圧タイヤを製造することのできる非空気圧タイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤの製造方法は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とから構成され、車両からの荷重を支持するための支持構造体を備える非空気圧タイヤの製造方法であって、モールド内の連結部成型部に正面視で前記連結部の方向に沿って引張力を付与した状態で補強繊維を配置する工程と、モールド内に弾性材料の原料液を注入して、前記内側環状部と、前記外側環状部と、前記補強繊維と一体となって補強された前記連結部とを成型する工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持するための支持構造体を備えており、この支持構造体は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結する複数の連結部とから構成される。本発明の非空気圧タイヤの製造方法では、モールド内に補強繊維を配置した後、モールド内に弾性材料の原料液を注入して支持構造体を成型するが、補強繊維はモールド内の連結部成型部に正面視で連結部の方向に沿って引張力を付与した状態で配置されるので、補強繊維と一体となって補強された連結部は、引張力に対しては補強繊維の働きにより高引張モジュラスとなり、一方で圧縮力に対しては補強繊維が働かないので低圧縮モジュラスとなる。したがって、本発明の非空気圧タイヤの製造方法によると、支持構造体の連結部(スポーク部分)が効果的に繊維で補強された非空気圧タイヤを製造することができる。
【0012】
また、上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤの製造方法は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた中間環状部と、その中間環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記中間環状部とを連結する複数の内側連結部と、前記外側環状部と前記中間環状部とを連結する複数の外側連結部とから構成され、車両からの荷重を支持するための支持構造体を備える非空気圧タイヤの製造方法であって、モールド内の内側連結部成型部および外側連結部成型部に正面視で前記内側連結部および前記外側連結部の方向に沿って引張力を付与した状態で補強繊維を配置する工程と、モールド内に弾性材料の原料液を注入して、前記内側環状部と、前記中間環状部と、前記外側環状部と、前記補強繊維と一体となって補強された前記内側連結部と、前記補強繊維と一体となって補強された前記外側連結部とを成型する工程とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持するための支持構造体を備えており、この支持構造体は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた中間環状部と、その中間環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記中間環状部とを連結する複数の内側連結部と、前記外側環状部と前記中間環状部とを連結する複数の外側連結部とから構成される。本発明の非空気圧タイヤの製造方法では、モールド内に補強繊維を配置した後、モールド内に弾性材料の原料液を注入して支持構造体を成型するが、補強繊維はモールド内の内側連結部成型部および外側連結部成型部に正面視で内側連結部および外側連結部の方向に沿って引張力を付与した状態で配置されるので、補強繊維と一体となって補強された内側連結部と、補強繊維と一体となって補強された外側連結部は、引張力に対しては補強繊維の働きにより高引張モジュラスとなり、一方で圧縮力に対しては補強繊維が働かないので低圧縮モジュラスとなる。したがって、本発明の非空気圧タイヤの製造方法によると、支持構造体の内側連結部および外側連結部(スポーク部分)が効果的に繊維で補強された非空気圧タイヤを製造することができる。
【0014】
本発明にかかる非空気圧タイヤの製造方法において、前記補強繊維の一端部を、前記内側環状部の内側の前記モールドに設けた係止部に係止し、他端部を引っ張ることで、前記補強繊維に引張力を付与することが好ましい。
【0015】
補強繊維の一端部を、内側環状部の内側のモールドに設けた係止部に係止し、他端部を引っ張るので、確実に補強繊維に引張力を付与することができ、支持構造体の連結部が効果的に繊維で補強された非空気圧タイヤを製造することができる。
【0016】
本発明にかかる非空気圧タイヤの製造方法において、前記補強繊維を前記外側環状部の外側に設けたプーリーにかけ、前記他端部に取り付けた錘により前記補強繊維に引張力を付与することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、補強繊維をプーリーにかけ、他端部に取り付けた錘により、補強繊維に引張力を付与するので、補強繊維に容易に、かつ、一本一本確実に引張力を付与することができ、支持構造体の連結部が効果的に繊維で補強された非空気圧タイヤを製造することができる。また、錘により引張力を付与するので、複数の補強繊維に対してそれぞれ錘を取り付けることにより、それぞれの補強繊維に付与する引張力を全て同じにすることも、それぞれ変えることも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<非空気圧タイヤの構造>
図1は本発明の製造方法により製造される非空気圧タイヤの一例を示す正面図であり、(a)は全体を示す正面図、(b)は要部を示す正面図である。ここで、Oは軸芯を、H1はタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0020】
本発明の製造方法による非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持する支持構造体を備えるものである。非空気圧タイヤは、このような支持構造体を備えるものであればよく、その支持構造体の外側(外周側)や内側(内周側)に、トレッドに相当する部材、補強層、車軸やリムとの適合用部材などを備えていてもよい。
【0021】
本発明の製造方法による非空気圧タイヤは、図1に示すように、支持構造体SSが、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた中間環状部2と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部3と、内側環状部1と中間環状部2とを連結する複数の内側連結部4(連結部に相当)と、外側環状部3と中間環状部2とを連結する複数の外側連結部5(これも連結部に相当)とを備えている。
【0022】
内側環状部1は、ユニフォーミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0023】
内側環状部1の厚みは、内側連結部4に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さH1の2〜7%が好ましく、3〜6%がより好ましい。
【0024】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定されるが、本実施形態では中間環状部2を備えるために、内側環状部1の内径を従来より大幅に小さくすることが可能である。但し、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、250〜500mmが好ましく、330〜440mmがより好ましい。
【0025】
内側環状部1の軸方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0026】
内側環状部1の引張モジュラスは、内側連結部4に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した値である。
【0027】
内側環状部1の材質としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料、又はこれらを繊維等の補強材で補強した繊維補強材料、金属等が使用できる。但し、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1の材質としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料、又はこれらを繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。
【0028】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0029】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。なお、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたものも使用可能である。
【0030】
補強材としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維、粒状フィラー等が挙げられるが、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維を用いるのが好ましく、長繊維、又は長繊維を用いた織布(スダレ状織物、メッシュ状織物を含む)がより好ましい。補強繊維としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0031】
中間環状部2の形状は、円筒形状に限られず、多角形筒状、などでもよい。
【0032】
中間環状部2の厚みは、内側連結部4と外側連結部5とを十分補強しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さH1の3〜10%が好ましく、4〜9%がより好ましい。
【0033】
中間環状部2の内径は、内側環状部1の内径を超えて、外側環状部3の内径未満となる。但し、中間環状部2の内径としては、前述したような内側連結部4と外側連結部5との補強効果を向上させる観点から、外側環状部3の内径から内側環状部1の内径を差し引いた値の20〜80%の値を、内側環状部1の内径に加えた内径とすることが好ましく、30〜60%の値を、内側環状部1の内径に加えた内径とすることがより好ましい。
【0034】
中間環状部2の軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0035】
中間環状部2の引張モジュラスは、内側連結部4と外側連結部5とを十分補強して、耐久性の向上、負荷能力の向上を図る観点から、8000〜180000MPaが好ましく、10000〜50000MPaがより好ましい。
【0036】
中間環状部2の材質としては、内側環状部1と同様のものが使用でき、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料、又はこれらを繊維等の補強材で補強した繊維補強材料、金属等が使用できる。但し、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1の材質と同じ材料又は母材を使用することが好ましい。
【0037】
中間環状部2の引張モジュラスは、内側環状部1のそれより高いことが好ましいため、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。つまり、図1(b)に示すように、中間環状部2は補強繊維により補強されていることが好ましい。補強繊維は、単数又は複数の層として設けることが可能である。
【0038】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布など形態が挙げられるが、長繊維、又は長繊維を用いた織布(スダレ状織物を含む)がより好ましい。その際の補強繊維としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が好ましい。
【0039】
外側環状部3の形状は、ユニフォーミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。外側環状部3の厚みは、外側連結部5からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さH1の2〜7%が好ましく、2〜5%がより好ましい。
【0040】
外側環状部3の内径は、その用途等応じて適宜決定されるが、本発明では中間環状部2を備えるために、外側環状部3の内径を従来より大きくすることが可能である。但し、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、420〜750mmが好ましく、480〜680mmがより好ましい。
【0041】
外側環状部3の軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0042】
外側環状部3の引張モジュラスは、図1に示すように外側環状部3の外周に補強層6が設けられている場合には、内側環状部1と同程度に設定できる。このような補強層6を設けない場合には、外側連結部5からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。
【0043】
外側環状部3の材質としては、内側環状部1と同様のものが使用でき、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料、又はこれらを繊維等の補強材で補強した繊維補強材料、金属等が使用できる。但し、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1の材質と同じ材料又は母材を使用することが好ましい。
【0044】
補強層6を設けずに、外側環状部3の引張モジュラスを高める場合、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。つまり、補強層6を設けない場合、外側環状部3は補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0045】
内側連結部4は、内側環状部1と中間環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を開けるなどして、複数設けられる。内側連結部4は、ユニフォーミティを向上させる観点から、一定の間隔を置いて設けることが好ましい。内側連結部4を全周に渡って設ける際の数(軸方向に複数設ける場合は1個として数える)としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、10〜80個が好ましく、40〜60個がより好ましい。
【0046】
個々の内側連結部4の形状としては、板状体、柱状体などが挙げられ、これらの内側連結部4は、正面視断面において、半径方向又は半径方向から傾斜した方向に延びている。非空気圧タイヤの剛性変動を生じにくくすると共に、耐久性を向上させる観点から、正面視断面において、内側連結部4の延設方向が、半径方向±25°以内が好ましく、半径方向±15°以内がより好ましく、半径方向が最も好ましい。
【0047】
内側連結部4の厚みは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さH1の4〜12%が好ましく、6〜10%がより好ましい。
【0048】
内側連結部4を軸方向に単数設ける場合、内側連結部4の軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0049】
内側連結部4の材質としては、内側環状部1と同様のものが使用でき、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料、又はこれらを繊維等の補強材で補強した繊維補強材料、金属等が使用できる。但し、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1の材質と同じ材料又は母材を使用することが好ましい。
【0050】
内側連結部4の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、内側連結部4が弾性材料のみから構成される場合には、5〜50MPaが好ましく、7〜20MPaがより好ましい。
【0051】
内側連結部4の引張モジュラスを高めるため、内側連結部4の材質としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。つまり、図1(b)に示すように、内側連結部4は補強繊維8により補強されていることが好ましい。なお、内側連結部4が繊維補強材料により構成される場合、内側連結部4の引張モジュラスは、1200〜280000MPaが好ましく、10000〜50000MPaがより好ましい。
【0052】
外側連結部5は、外側環状部3と中間環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を開けるなどして、複数設けられる。外側連結部5は、ユニフォーミティを向上させる観点から、一定の間隔を置いて設けることが好ましい。中間環状部2による補強効果を向上させる観点から、外側連結部5と内側連結部4とは全周の同じ位置に設けている。
【0053】
外側連結部5を全周に渡って設ける際の数(軸方向に複数設ける場合は1個として数える)としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、10〜80個が好ましく、40〜60個がより好ましい。
【0054】
個々の外側連結部5の形状としては、板状体、柱状体などが挙げられ、これらの外側連結部5は、正面視断面において、半径方向又は半径方向から傾斜した方向に延びている。非空気圧タイヤの剛性変動を生じにくくすると共に、耐久性を向上させる観点から、正面視断面において、外側連結部5の延設方向が、半径方向±25°以内が好ましく、半径方向±15°以内がより好ましく、半径方向が最も好ましい。
【0055】
外側連結部5の厚みは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さH1の4〜12%が好ましく、6〜10%がより好ましい。
【0056】
外側連結部5を軸方向に単数設ける場合、外側連結部5の軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0057】
外側連結部5の材質としては、内側環状部1と同様のものが使用でき、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料、又はこれらを繊維等の補強材で補強した繊維補強材料、金属等が使用できる。但し、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1の材質と同じ材料又は母材を使用することが好ましい。
【0058】
外側連結部5の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、外側連結部5が弾性材料のみから構成される場合には、5〜50MPaが好ましく、7〜20MPaがより好ましい。
【0059】
外側連結部5の引張モジュラスを高めるため、外側連結部5の材質としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂等の弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。つまり、図1(b)に示すように、外側連結部5は補強繊維8により補強されていることが好ましい。なお、外側連結部5が繊維補強材料により構成される場合、外側連結部5の引張モジュラスは、1200〜280000MPaが好ましく、10000〜50000MPaがより好ましい。補強繊維8は、内側環状部1から外側環状部3まで連続して延びており、内側連結部4と外側連結部5を補強している。
【0060】
本実施形態では、図1に示すように、支持構造体SSの外側環状部3の外側に、その外側環状部3の曲げ変形を補強する補強層6が設けられている例を示す。補強層6としては、従来の空気入りタイヤのベルト層と同様のものを設けることが可能である。
【0061】
補強層6は、単数又は複数の層から構成され、例えば、タイヤ周方向に対して約20°の傾斜角度で平行配列したスチールコード、アラミドコード、レーヨンコード等をゴム引きした層を、スチールコード等が逆方向に交差するように積層して、形成することができる。また、両層の上層に、タイヤ周方向に平行配列した各種コードからなる層を設けてもよい。
【0062】
本実施形態では、図1に示すように、補強層6の更に外側にトレッド層7が設けられている例を示すが、本発明では、このように外側環状部3の外側の最外層に、トレッド層7が設けられているのが好ましい。トレッド層7としては、従来の空気入りタイヤのトレッド層と同様のものを設けることが可能である。また、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0063】
例えば、トレッド層7を形成するトレッドゴムの原料としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。これらのゴムはカーボンブラックやシリカ等の充填材で補強されると共に、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等が適宜配合される。
【0064】
本実施形態では、外側環状部3の外側に補強層6を介してトレッド層7を設ける例を示したが、本発明では、外側環状部3に直接トレッド層を設けることも可能である。また、用途によっては、トレッド層を省略することも可能である。
【0065】
本発明の製造方法により製造される非空気圧タイヤは、耐久性に優れると共に、スポーク位置と接地面中央位置との位置関係によって剛性変動が生じにくいため、従来の空気入りタイヤの代替が可能となると共に、ソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等の非空気圧タイヤの代替として使用することが可能となる。一般の空気入りタイヤ以外の具体的な用途としては、例えば車椅子用タイヤ、建設車両用タイヤ等が挙げられる。
【0066】
<非空気圧タイヤの製造方法>
本発明にかかる非空気圧タイヤの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図2は、支持構造体SSの製造に用いられる製造装置の構成を示す。(a)は装置を上方から見た上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0067】
本発明の非空気圧タイヤは、モールド成型、射出成型などにより支持構造体SSを製造した後、必要に応じて、補強層6、トレッド層7などを形成して製造することができる。図2(a)の破線で示すように、モールド10内には、内側環状部1、中間環状部2、外側環状部3、内側連結部4、外側連結部5を成型するために、それぞれ内側環状部成型部11、中間環状部成型部12、外側環状部成型部13、内側連結部成型部14、外側連結部成型部15を備えている。また、モールド10の内周部10aであって、隣接する内側連結部成型部14の間には、内側環状部成型部11へ弾性材料の原料液を注入するための注入口10cが設けられている。この注入口10cから弾性材料の原料液を高圧で注入することにより、内側環状部成型部11、中間環状部成型部12、外側環状部成型部13、内側連結部成型部14、外側連結部成型部15に弾性材料の原料液を充填することができる。内側連結部成型部14と外側連結部成型部15はともに連結部成型部に相当する。なお、注入口10cは、図示していないが、周方向に複数設けられている。
【0068】
図2(a)に示すように、モールド10の内周部10aには、軸芯Oから内側連結部成型部14に向かう貫通孔10dが設けられており、補強繊維8が貫通可能である。また、モールド10の外周部10bにも、外側連結部成型部15から半径方向外側に向かう貫通孔10eが設けられており、補強繊維8が貫通可能である。すなわち、一本の補強繊維8は、貫通孔10d、内側連結部成型部14、外側連結部成型部15、貫通孔10eを通過することができるようになっている。なお、貫通孔10d,10eは、使用する補強繊維8の本数に相当する個数が軸芯O方向に並設される。
【0069】
図2(b)に示すように、補強繊維8の一端部8aは、貫通孔10dを貫通し、先端に設けたループにピン16を通すことにより、モールド10の内周部10aに係止される。ピン16は補強繊維8ごとに係止してもよいし、複数の補強繊維8を同時に係止してもよい。なお、本実施形態では、貫通孔10dが係止部に相当し、ピン16により補強繊維8の一端部8aを係止しているが、補強繊維8の一端部8aを係止する方法としては、これに限定されず、適宜の方法を用いることができる。
【0070】
モールド10の外周部10bの外側には、プーリー17が複数設けられている。プーリー17は、不図示の支持手段により回動自在に設けられる。また、図2(b)のように、複数のプーリー17は、半径方向および軸芯O方向にそれぞれずらして設けられている。補強繊維8をプーリー17にかけ、補強繊維8の他端部8bに錘18を取り付けることで、錘18の自重により補強繊維8に引張力を付与することができる。
【0071】
このようにして、補強繊維8に半径方向の引張力を付与した状態において、モールド10内に注入口10cから弾性材料の原料液を高圧で注入する。これにより、支持構造体SS、すなわち、内側環状部1、中間環状部2、外側環状部3、内側連結部4、外側連結部5を一体成型することができる。なお、内側環状部1の内側、および外側環状部3の外側の余分な補強繊維8は切断する。その後、必要に応じて、補強層6、トレッド層7などを形成して非空気圧タイヤを製造することができる。
【0072】
支持構造体SSを成型する際、補強繊維8は半径方向に引張力を付与した状態で内側連結部4および外側連結部5と一体となるので、内側連結部4および外側連結部5は、引張力に対しては補強繊維8の働きにより高引張モジュラスとなり、一方で圧縮力に対しては補強繊維8が働かないので低圧縮モジュラスとなる。また、補強繊維8を半径方向に引張力を付与した状態で弾性材料の原料液を注入するので、高圧の弾性材料の原料液によって補強繊維8が偏ってしまい、補強の役割を果たさなくなる不都合も生じない。したがって、本発明の非空気圧タイヤの製造方法によれば、支持構造体SSの内側連結部4および外側連結部5(スポーク部分)が効果的に繊維で補強された非空気圧タイヤを製造することができる。
【0073】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、内側環状部1と外側環状部3を連結するために、内側環状部1と外側環状部3との間に中間環状部2を設け、連結部として、内側連結部4と外側連結部5とを備えている。しかし、中間環状部2を設けず、内側環状部1と外側環状部3をひとつの連結部で連結してもよい。また、中間環状部2を複数設けることも可能である。
【0074】
(2)前述の実施形態では、内側連結部4および外側連結部5は、正面視断面においてほぼ半径方向に延びているが、半径方向から大きく傾斜した方向に延びていてもよい。すなわち、周方向に隣接する連結部(内側連結部4または外側連結部5)を互いに半径方向に対して反対方向に傾斜させてV字型を構成するように成型してもよい。このように隣接する連結部をV字型に成型すると、タイヤ前後方向の力に対して有効となる。
【0075】
(3)前述の実施形態では、補強繊維8の一端部8aをモールド10に係止するようにしたが、補強繊維8の一端部8aを、内側環状部1を補強するためのネット状補強繊維に係止するようにして、他端部8bを引っ張るようにしてもよい。
【0076】
(4)また、補強繊維8に引張力を付与する方法としては、前述の実施形態のほか図3に示すような方法も例示される。図3(a)のように、ボビン20に巻回された補強繊維8の一端部にループ8cを設け、このループ8cを針21の後端に掛ける(破線で囲んだ円内の拡大図を図3(a)下部に示す)。次いで、図3(b)のように、ボビン20から補強繊維8を繰り出しながら、針21をモールド10の内周部10aの貫通孔10dと外周部10bの貫通孔10eにボビン20に近い位置から交互に通していく。このとき、モールド10の内周部10aと外周部10bには、補強繊維8をガイドするローラ22が複数設けられており、補強繊維8は、貫通孔10d,10eをスムースに通過することができる。最後に、図3(c)に示すように、補強繊維8のループ8cを、針21の後端から外してモールド10の外周部10bに設けたフック23に掛け、ボビン20を補強繊維8に引張力が付与される方向(図の時計周り方向)に回転させる。この方法によれば、一本一本の補強繊維8の他端部8bに錘18を設けて引張力を付与する方法に比べて、製造装置は省スペースとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の製造方法により製造される非空気圧タイヤの一例を示す正面図
【図2】本発明の非空気圧タイヤの製造方法の一例を説明するための説明図
【図3】本発明の非空気圧タイヤの製造方法の他の例を説明するための説明図
【符号の説明】
【0078】
1 内側環状部
2 中間環状部
3 外側環状部
4 内側連結部
5 外側連結部
8 補強繊維
8a 一端部
8b 他端部
10 モールド
11 内側環状部成型部
12 中間環状部成型部
13 外側環状部成型部
14 内側連結部成型部
15 外側連結部成型部
16 ピン
17 プーリー
18 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とから構成され、車両からの荷重を支持するための支持構造体を備える非空気圧タイヤの製造方法であって、
モールド内の連結部成型部に正面視で前記連結部の方向に沿って引張力を付与した状態で補強繊維を配置する工程と、
モールド内に弾性材料の原料液を注入して、前記内側環状部と、前記外側環状部と、前記補強繊維と一体となって補強された前記連結部とを成型する工程とを備えたことを特徴とする非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項2】
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた中間環状部と、その中間環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記中間環状部とを連結する複数の内側連結部と、前記外側環状部と前記中間環状部とを連結する複数の外側連結部とから構成され、車両からの荷重を支持するための支持構造体を備える非空気圧タイヤの製造方法であって、
モールド内の内側連結部成型部および外側連結部成型部に正面視で前記内側連結部および前記外側連結部の方向に沿って引張力を付与した状態で補強繊維を配置する工程と、
モールド内に弾性材料の原料液を注入して、前記内側環状部と、前記中間環状部と、前記外側環状部と、前記補強繊維と一体となって補強された前記内側連結部と、前記補強繊維と一体となって補強された前記外側連結部とを成型する工程とを備えたことを特徴とする非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項3】
前記補強繊維の一端部を、前記内側環状部の内側の前記モールドに設けた係止部に係止し、他端部を引っ張ることで、前記補強繊維に引張力を付与することを特徴とする請求項1又は2に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項4】
前記補強繊維を前記外側環状部の外側に設けたプーリーにかけ、前記他端部に取り付けた錘により前記補強繊維に引張力を付与することを特徴とする請求項3に記載の非空気圧タイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−761(P2010−761A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163487(P2008−163487)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】