説明

非重合体カテキン類含有容器詰飲料の製造方法

【課題】苦味を抑制した非重合体カテキン類含有容器詰飲料の製造方法を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類、及び
(B)環状オリゴ糖
を含有する混合物に、成分(C)としてルイボス抽出物を配合する工程を含む、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高揚や消費者の嗜好の多様化により茶飲料の需要が拡大し、多種多様の商品が上市されている。中でも、緑茶、烏龍茶、紅茶等の茶飲料が注目されている。これら茶飲料には、苦味成分として非重合体カテキン類等が含まれているが、苦味が強過ぎると不快感ないし嫌悪感を伴うようになる。
【0003】
不快な苦味を抑制した茶飲料の製造方法として、例えば、茶抽出液に糖アルコール類を一定量添加する方法(特許文献1)、カテキン類を含有する茶抽出液を、β−サイクロデキストリンの存在下に活性炭と接触させる方法(特許文献2)、緑茶抽出物の濃縮物に水を加え、甘蔗由来の抽出物を添加する方法(特許文献3)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−274829号公報
【特許文献2】特開平10−4919号公報
【特許文献3】特開2002−34471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非重合体カテキン類を含有する茶抽出液に、糖アルコール類、β−サイクロデキストリン又は甘蔗由来の抽出物を少量配合しただけでは苦味抑制効果を十分発現することが困難であり、また苦味抑制効果を増強すべく配合量を増量すると茶本来の風味や香りを損なうことがあった。更に、容器詰飲料においては、加熱殺菌をすることにより、より苦味が増強されてしまうことがあり、製造上における風味劣化の課題が顕在化しやすい傾向にあった。
したがって、本発明の課題は、苦味を抑制した非重合体カテキン類含有容器詰飲料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために種々検討した結果、特定の植物抽出物が苦味の抑制に有効であるとの知見を得た。そして、この植物抽出物を、非重合体カテキン類と特定物質とが共存した状態で配合することにより、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の苦味がより一層有効に抑制されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類、及び
(B)環状オリゴ糖
を含有する混合物に、成分(C)としてルイボス抽出物を配合する工程を含む、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明はまた、次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類、及び
(B)環状オリゴ糖
を含有する混合物に、成分(C)としてルイボス抽出物を配合する工程を含む、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の苦味抑制方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非重合体カテキン類由来の苦味を十分抑制することが可能であり、このような飲み易い非重合体カテキン類含有容器詰飲料を簡便に製造することができる。したがって、本発明の方法により得られた非重合体カテキン類含有容器詰飲料は、非重合体カテキン類を継続摂取することが可能であるから、非重合体カテキン類による生理効果を十分に期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の非重合体カテキン類含有容器詰飲料の製造方法は、(A)非重合体カテキン類と、(B)環状オリゴ糖を含有する混合物に、(C)ルイボス抽出物を配合する工程(以下、「工程(1)」とも称する)を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、上記工程(1)を行う前に、先ず成分(A)〜(C)を準備する。
【0012】
成分(A)である非重合体カテキン類は、Camellia属、例えば、C.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶樹(Camellia sinensis)より得られる茶抽出物に含まれている。ここで、本明細書において「(A)非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0013】
茶抽出物としては、茶抽出液、その濃縮物及びそれらの精製物から選択される少なくとも1種を使用することができる。
ここで、「茶抽出液」とは、茶樹から熱水又は水溶性有機溶媒を用いて抽出された抽出液であって、濃縮や精製操作が行われていないものをいう。なお、水溶性有機溶媒として、例えば、エタノール等のアルコールを使用することができる。また、抽出方法としては、ニーダー抽出、攪拌抽出(バッチ抽出)、向流抽出(ドリップ抽出)、カラム抽出等の公知の方法を採用できる。
抽出に使用する茶樹は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に大別することができる。不発酵茶としては、例えば、煎茶、番茶、玉露、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が例示される。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が例示される。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、非重合体カテキン類の含有量の点から、緑茶が好ましい。
【0014】
また、「茶抽出液の濃縮物」とは、不発酵茶、半発酵茶及び発酵茶から選択される茶樹から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された溶液の水分の一部を除去して非重合体カテキン類濃度を高めたものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法により調製することができる。その形態としては、固体、水溶液、スラリー状等の種々のものが挙げられる。茶抽出液の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」などの緑茶抽出液の濃縮物がある。
【0015】
更に、「茶抽出液又はその濃縮物の精製物」は、例えば、下記(i)〜(iv)のうちのいずれかの方法、あるいは2以上の組み合わせにより得ることができる。
(i)茶抽出液又はその濃縮物(以下、「茶抽出液等」という)を水、又は水と水溶性有機溶媒との混合物(以下、「有機溶媒水溶液」という)に懸濁して生じた沈殿を除去する方法。
(ii)茶抽出液等をタンナーゼ処理し、更に活性炭、酸性白土及び活性白土から選択される少なくとも1種の吸着剤と接触させる方法(例えば、特開2007−282568号公報)。
(iii)茶抽出液等を合成吸着剤に吸着させた後、該合成吸着剤に有機溶媒水溶液を接触させて非重合体カテキン類を脱離させる方法(例えば、特開2006−160656号公報)。
(iv)茶抽出液等を合成吸着剤に吸着させた後、該合成吸着剤に有機溶媒水溶液又は塩基性水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を接触させて非重合体カテキン類を脱離させ、次いで得られた脱離液を活性炭と接触させる方法(例えば、特開2008−079609号公報)。
【0016】
なお、上記(i)、(iii)及び(iv)の方法においても、精製すべき茶抽出液等として、タンナーゼ処理したものを使用してもよい。これにより、非重合体カテキン類由来の苦味を低減することができる。ここで、「タンナーゼ処理」とは、茶抽出液等を、タンナーゼ活性を有する酵素と接触させることをいい、例えば、特開2004−321105号公報に記載の方法を採用することができる。
【0017】
本発明で使用する茶抽出物としては、苦味及び渋味の抑制の観点から、茶抽出液又はその濃縮物の精製物が好ましく、中でも、非重合体カテキン類濃度の観点から、緑茶抽出液又はその濃縮物の精製物が好ましい。
【0018】
本発明で使用する(B)環状オリゴ糖としては、グルコースを単位として6〜8分子が環状に結合した、一般的にサイクロデキストリンと称されるオリゴ糖、あるいは上記環状物に1〜3糖類が分枝結合し、かつグルコースの総結合数が10以下である、一般的に分枝サイクロデキストリンと称されるオリゴ糖が挙げられる。このような環状オリゴ糖として、具体的には、6個のグルコースが結合したα−サイクロデキストリン(シクロヘキサアミロース)、7個のグルコースが結合したβ−サイクロデキストリン(シクロヘプタアミロース)、8個のグルコースが結合したγ−サイクロデキストリン(シクロオクタアミロース)が例示される。本発明においては(B)環状オリゴ糖を単独で又は2種以上組み合わせて使用することが可能であり、市販品を使用してもよい。
本発明で使用する(B)環状オリゴ糖としては、苦味抑制の観点から、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン及びγ−サイクロデキストリンの混合物が好適である。
【0019】
本発明で使用する(C)ルイボス抽出物は、ルイボス(Aspalathus linearis)を水又は熱水で抽出することにより得ることができる。抽出方法としては、上記茶抽出液と同様の方法を採用することができるが、例えば、ルイボスの質量に対して2〜1000倍量の水又は熱水中で1〜60分間攪拌する方法が挙げられる。
ルイボスは、マメ科の植物であり、南アフリカのセダルバーグ山脈一帯に生息しており、古くから健康茶として飲用されている。本発明においては、ルイボスの葉、茎及び枝のいずれの部位も原料として使用することが可能であり、特に限定されない。また、ルイボスの各部位はそのまま用いても、また発酵、焙煎又は殺菌等の処理を施したものを使用してもよい。
本発明においては、抽出により得られたルイボス抽出物を、そのまま、希釈、濃縮又は乾燥して使用することができる。
【0020】
次に、(A)非重合体カテキン類を含有する茶抽出物と、(B)環状オリゴ糖とを混合して混合物を調製する。(A)非重合体カテキン類を含有する茶抽出物と、(B)環状オリゴ糖の混合順序は特に限定されず、順次又は同時に混合することが可能であり、また必要によりイオン交換水等で水希釈してもよい。
【0021】
混合する際には、容器詰飲料中の(A)非重合体カテキン類濃度が0.05〜0.6質量%、更に0.06〜0.5質量%、更に0.08〜0.4質量%、特に0.1〜0.2質量%となるように(A)非重合体カテキン類を含有する茶抽出物を配合することが好ましい。また、容器詰飲料中の非重合体カテキン類のガレート体の割合(非重合体カテキン類中のガレート体率)は、苦味抑制の観点から、10〜60質量%、更に15〜56質量%、更に20〜54質量%、特に20〜44質量%、殊更20〜40質量%であることが好ましい。ここで、「非重合体カテキン類のガレート体」とは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートを併せての総称である。また、「非重合体カテキン類のガレート体の割合」とは、これら4種の非重合体カテキン類のガレート体の総和質量を、非重合体カテキン類8種の総和質量に対する百分率で表した数値である。
【0022】
一方、(B)環状オリゴ糖は、苦味抑制の観点から、容器詰飲料中の(A)非重合体カテキン類と、(B)環状オリゴ糖との質量比[(B)/(A)]が0.24〜4.8、更に0.5〜4、更に1〜3.5、特に2〜3となるように配合することが好ましい。
【0023】
次に、上記混合物に(C)ルイボス抽出物を配合するが、(C)ルイボス抽出物は、容器詰飲料中の(A)非重合体カテキン類の濃度と、(C)ルイボス抽出物の固形分濃度との比[(C)/(A)]が0.0005〜0.1、更に0.001〜0.05、特に0.005〜0.01となるように配合することが好ましい。これにより、非重合体カテキン類由来の苦味をより一層抑制することができる。ここで、容器詰飲料中のルイボス抽出物の固形分濃度とは下記式(I)より求められる値をいい、ルイボス抽出物のBrixは後掲の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
【数1】

【0025】
このように、本工程においては、成分(A)と成分(B)とが共存する状態で成分(C)を配合することにより、非重合体カテキン類由来の苦味を十分に抑制することができる。なお、成分(A)又は成分(B)が単独で存在する状態で成分(C)を配合した場合、あるいは成分(A)、(B)及び(C)を同時に配合した場合には、非重合体カテキン類由来の苦味抑制効果が不十分となる(比較例参照)。
【0026】
また、本発明においては、上記工程(1)前、又は上記工程(1)後に、ヒドロキシカルボン酸を添加する工程(以下、「工程(2)」とも称する)を有していてもよい。なお、上記工程(1)前に、ヒドロキシカルボン酸を添加する場合には、ヒドロキシカルボン酸をイオン交換水等に溶解すればよい。
【0027】
ヒドロキシカルボン酸としては、炭素数3〜6のものが好ましく、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、苦味抑制及び外観安定性の観点から、アスコルビン酸が好適である。
ヒドロキシカルボン酸の配合量は、苦味抑制及び外観安定性の観点から、容器詰飲料中に0.001〜0.1質量%、更に0.005〜0.08質量%、特に0.01〜0.06質量%であることが好ましい。
【0028】
更に、本発明においては、上記工程(1)及び(2)の終了後に、容器詰飲料のpH(20℃、以下同じ)を3〜7に調整する工程(以下、「工程(3)」とも称する)を有することができる。容器詰飲料のpHは、風味及び安定性の観点から、4〜7、更に5〜7、特に5〜6.5であることが好ましい。
【0029】
pH調整には、pH調整剤を使用することができる。pH調整剤としては、例えば、炭酸塩等の無機塩類が例示される。炭酸塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩が例示される。中でも、pH調整のしやすさ、苦味抑制の観点から、アルカリ金属の炭酸塩が好ましく、炭酸水素アルカリ金属塩がより好ましく、炭酸水素ナトリウムが特に好ましい。なお、pH調整剤の添加量は、その種類に応じて所望のpHになるように適宜決定することが可能である。
【0030】
本発明においては、工程(1)〜(3)のうちのいずれか、あるいは工程(1)〜(3)の終了後において、香料、エステル類、無機酸類、無機酸塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、穀物(例えば、麦類、米類、雑穀類、大豆)抽出物、品質安定剤等の添加剤を単独で又は2種以上組み合わせて添加してもよい。これら添加物の添加時期は、工程(1)〜(3)が終了後であることが好ましく、またこれら添加剤の配合量は、添加剤の種類により適宜決定することが可能である。
【0031】
容器詰飲料の種類としては、茶系飲料、非茶系飲料が例示される。茶系飲料としては、例えば、緑茶飲料、紅茶飲料、烏龍茶飲料、ブレンド茶(混合茶)飲料が例示される。また、非茶系飲料としては、例えば、エンハンスドウォーター、スポーツドリンク、ニアウォーター、栄養サポートドリンク等の機能性飲料が例示される。ここで、機能性飲料とは保健機能食品をいい、この保健機能食品には日本国が定める特定保健用食品及び栄養機能食品などが包含される。なお、飲料の形態は、流動性でも、半流動性であってもよい。
【0032】
上記工程終了後、得られた飲料をそのまま容器に充填しても、また必要により希釈又は濃縮して容器に充填してもよい。容器としては、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合化した紙容器、瓶等の通常の包装容器が例示される。
【0033】
また、容器に充填後においては、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で殺菌することができる。一方、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法を採用できる。その際の充填は、無菌容器に無菌下で行ってもよい。また、無菌下で、飲料が充填された容器に別の成分を配合してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【実施例】
【0034】
(1)非重合体カテキン類の測定
試料をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により分析した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0035】
(2)Brixの測定
Brix値は、20℃で屈折率計により測定した値を用いることとする。屈折率計としてはRX−5000α(ATAGO社製)を使用した。
【0036】
(3)官能試験
苦味の評価
各容器詰飲料について、4名の専門パネラーが下記表1記載の苦味標準溶液濃度を指標とする苦味低減レベルを官能試験し、その後パネラー4名で協議しスコアを決定した。なお、表1に示す苦味強度は数値が大きいほど、苦味が強くなることを意味する。
【0037】
【表1】

【0038】
製造例1
緑茶抽出物の製造
熱水を用いて緑茶葉(大葉種)を浴比20:1で抽出した後、水不溶分を100メッシュ金網で濾過して「緑茶抽出液」を得た。次に、タンナーゼ(キッコーマン社製、タンナーゼKTFH、500U/g)を「緑茶抽出液」に対して430ppmとなる濃度で添加した。次に、25℃で60分間反応させた後、加熱して酵素を失活させて「緑茶抽出基剤」を得た。「緑茶抽出物基剤」は、(A)非重合体カテキン類濃度と(B)カフェイン濃度との含有質量比(B)/(A)が0.16、(C)非重合体カテキン類中のガレート体率が35.0質量%であった。
「緑茶抽出基剤」2400gを、円筒状のカラムに充填した合成吸着剤(SP−70、三菱化学(株)製)600mL(非重合体カテキン類の質量に対して40g/L)にSV=1(h-1)の条件で吸着させた。次に、純水900gをSV=1(h-1)の条件で通液して合成吸着剤を洗浄した。次に、非重合体カテキン類を脱離させるために、30質量%エタノール水溶液750gをSV=1(h-1)の条件で通液して脱離液を得た。次に、脱離液中の非重合体カテキン類に対して30質量%の量の粒状活性炭(太閤SGP、フタムラ化学(株)製)をカラムに充填した。次に、そのカラムに脱離液を通液して処理液を回収し、エタノールを留去して「緑茶抽出物」を得た。
「緑茶抽出物」は、(A)非重合体カテキン類濃度が5.72質量%、(B)カフェイン濃度が0.040質量%、(A)非重合体カテキン類と(B)カフェインとの含有質量比(B)/(A)が0.007、(C)非重合体カテキン類中のガレート体率が31.2質量%であった。
【0039】
製造例2
ルイボス抽出物の製造
ルイボス2gを、90℃のイオン交換水500gにて10分間攪拌して抽出し、冷却後2号ろ紙にてろ過してBrix0.08%のルイボス抽出物469gを得た。
【0040】
実施例1
イオン交換水200gに環状オリゴ糖含有製剤(α−、β−及びγ−サイクロデキストリン並びに食品素材(粉飴)の混合物、環状オリゴ糖50.8質量%、日本食品化工(株)製、以下同じ)3.12gを配合し、環状オリゴ糖含有製剤を完全に溶解させた後、製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合して2分間攪拌した。次いで、この溶液に製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合し2分間攪拌した後、アルコルビン酸0.2gを配合して2分間攪拌した。そして、この溶液にイオン交換水を配合し全量を500gとした後、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0041】
実施例2
イオン交換水200gにアスコルビン酸0.2gを配合し、アスコルビン酸を完全に溶解させた後、環状オリゴ糖含有製剤3.12gを配合し環状オリゴ糖含有製剤を完全に溶解させた。次いで、製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合し2分間攪拌した後、製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合して2分間攪拌した。そして、この溶液にイオン交換水を配合して全量を500gとした後、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0042】
実施例3
イオン交換水200gに環状オリゴ糖含有製剤3.12gを配合し、環状オリゴ糖含有製剤を完全に溶解させた後、製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合して2分間攪拌した。次いで、この溶液に製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合し2分間攪拌した後、アルコルビン酸0.2gを配合して2分間攪拌した。次いで、この溶液に5質量%重曹水2.48gを配合した後、イオン交換水を配合して全量を500gとした。そして、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0043】
実施例4
イオン交換水200gにアスコルビン酸0.2gを配合しアスコルビン酸を完全に溶解させた後、環状オリゴ糖含有製剤3.12gを配合し環状オリゴ糖含有製剤を完全に溶解させた。次いで、この溶液に製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合し2分間攪拌した後、製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合し2分間攪拌した。次いで、この溶液に5質量%重曹水2.48gを配合した後、イオン交換水を配合して全量を500gとした。そして、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0044】
比較例1
イオン交換水200gに環状オリゴ糖含有製剤3.12gを配合し、環状オリゴ糖含有製剤を完全に溶解させた後、製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合して2分間攪拌した。次いで、この溶液に製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合し2分間攪拌した後、アルコルビン酸0.2gを配合して2分間攪拌した。そして、この溶液にイオン交換水を配合し全量を500gとした後、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0045】
比較例2
イオン交換水200gに、製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合して2分間攪拌した後、この溶液に製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合し2分間攪拌した。次いで、この溶液に環状オリゴ糖含有製剤3.12gを配合し、環状オリゴ糖含有製剤を完全に溶解させた後、アルコルビン酸0.2gを配合した。そして、この溶液にイオン交換水を配合し全量を500gとした後、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0046】
比較例3
イオン交換水200gにアスコルビン酸0.2gを配合し、アスコルビン酸を完全に溶解させた後、環状オリゴ糖含有製剤3.12gを配合し環状オリゴ糖含有製剤を完全に溶解させた。次いで、製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合して2分間攪拌した後、製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合した。そして、この溶液にイオン交換水を配合して全量を500gとした後、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0047】
比較例4
イオン交換水200gにアスコルビン酸0.2gを配合し、アスコルビン酸を完全に溶解させた後、製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合して2分間攪拌した。次いで、この溶液に製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合し2分間攪拌した後、環状オリゴ糖含有製剤3.12gを配合し環状オリゴ糖含有製剤を完全に溶解させた。そして、この溶液にイオン交換水を配合して全量を500gとした後、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0048】
比較例5
イオン交換水200gに、環状オリゴ糖含有製剤3.12g、製造例1で得た緑茶抽出物11.4g、製造例2で得たルイボス抽出物6g及びアルコルビン酸0.2gを同時に配合し完全に溶解させた。そして、この溶液にイオン交換水を配合して全量を500gとした後、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
比較例6
イオン交換水200gに、製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合して2分間攪拌した後、この溶液に製造例2で得たルイボス抽出物6gを配合し2分間攪拌した。次いで、この溶液にアルコルビン酸0.2gを配合して2分間攪拌した後、5質量%重曹水2.48gを配合した。そして、この溶液をイオン交換水を配合して全量を500gとした後、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0050】
比較例7
イオン交換水200gに、製造例1で得た緑茶抽出物11.4gを配合して2分間攪拌した後、アルコルビン酸0.2gを配合して2分間攪拌した。次いで、この溶液に5質量%重曹水2.48gを配合した後、イオン交換水を配合して全量を500gとした。そして、この溶液を充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料について、成分分析及び官能試験を行った。その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2から、非重合体カテキン類及び環状オリゴ糖を含有する混合物に、ルイボス抽出物を配合するという順序で製造することで、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の苦味が有効に抑制されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類、及び
(B)環状オリゴ糖
を含有する混合物に、成分(C)としてルイボス抽出物を配合する工程を含む、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の製造方法。
【請求項2】
前記成分(C)を、当該容器詰飲料中の成分(A)の濃度と成分(C)の固形分濃度との比[(C)/(A)]が0.0005〜0.1となるように配合する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記成分(B)を、当該容器詰飲料中の成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が0.24〜4.8となるように配合する、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程前又は工程後において、ヒドロキシカルボン酸を添加する工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシカルボン酸がアスコルビン酸である、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
当該容器詰飲料中の非重合体カテキン類の含有量が0.05〜0.6質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
非重合体カテキン類中のガレート体の割合が10〜60質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
次の成分(A)及び(B):
(A)非重合体カテキン類、及び
(B)環状オリゴ糖
を含有する混合物に、成分(C)としてルイボス抽出物を配合する工程を含む、非重合体カテキン類含有容器詰飲料の苦味抑制方法。

【公開番号】特開2011−125237(P2011−125237A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284948(P2009−284948)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】