説明

非鉄系脱酸素剤包装体

【課題】金属探知器に検知されず、且つ、電子レンジにより加熱されても包装袋の膨らみや破裂を防止することのできる非鉄系脱酸素剤包装体を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、易酸化性の非鉄系材料からなる主剤を含有する非鉄系脱酸素材を空気透気度が20秒/100ml〜3000秒/100mlの包装材により包装したことを特徴とする非鉄系脱酸素剤包装体を採用し、金属探知器に検知されず、且つ、電子レンジにより加熱されても包装袋の膨らみや破裂を防止可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、酸素を吸収することにより雰囲気中から酸素を除去する非鉄系脱酸素剤包装体に関し、詳しくは、金属探知器に検知されず、且つ、電子レンジに対応可能な非鉄系脱酸素剤包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
流通過程において、食品等の酸化等を防止するため、食品等を脱酸素剤と共に包装容器(包装袋含む)内に封入することが行われている。脱酸素剤を用いることにより、包装容器内の酸素を吸収して、食品等を無酸素雰囲気中で保存することが可能になる。このため、食品等の酸化等による品質低下を防止して、長期に渡って良好な状態で食品等を流通することができる。
【0003】
脱酸素剤は、易酸化性酸化物の酸化反応を利用して雰囲気中に存在する酸素を吸収する脱酸素材料を酸素透過性を有する包装材により包装したものである。従来、鉄粉を主成分とする鉄系脱酸素剤が主に使用されていた。鉄系脱酸素剤は、安全性、酸素吸収効率及びコストのいずれの点においても優れており、特に、食品分野において広く使用されていた。
【0004】
ところで、近年、食品、医薬品等の経口品の安全性管理のため、経口品の流通過程において、金属探知器を用いて針等の金属製異物混入の有無を検査する場合がある。このような場合、金属探知器に鉄粉が検知され、検査の妨げになることから、鉄系脱酸素剤を使用することはできない。
【0005】
また、簡易食として、電子レンジ加熱用の調理品等が広く販売されている。さらに、コンビニエンスストア等では、弁当、総菜等を電子レンジで温めてから消費者に提供するサービスが一般に行われている。鉄粉は、マイクロ波を吸収して、極めて短時間で発熱又はスパークし、発火する恐れがある。このため、電子レンジで包装容器ごと加熱される可能性の高い製品に対して、鉄系脱酸素剤を使用することはできない。
【0006】
以上のような観点から、近年では、金属探知器に検知されず、また、電子レンジで加熱しても発火等の恐れのない非鉄系脱酸素剤(非鉄系脱酸素剤包装体)の使用が求められるようになってきている。非鉄系脱酸素剤として、例えば、主剤として、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、クレゾール、ピロガールから選択される低分子フェノール化合物と、活性炭から有機系脱酸素剤が提案されている(例えば、「特許文献1」参照)。また、特許文献2には、多価アルコール化合物、フェノール化合物、不飽和油脂、不飽和脂肪酸、不飽和重合物等からなる有機系易酸化物組成物を主剤として採用した有機系脱酸素剤が開示されている。
【0007】
また、本出願人は、非鉄系脱酸素剤として、例えば、特許文献3、4に示す有機系脱酸素剤を提案してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−50849号公報
【特許文献2】特開2003−38143号公報
【特許文献3】特開2007−74962号公報
【特許文献4】特開2007−268326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の非鉄系脱酸素剤の多くは、雰囲気中の酸素と反応するために、副成分として水分を含有している。また、水酸基が酸化反応に関与する非鉄系脱酸素剤にあっては、酸化反応の副生成物として水が生じる。したがって、非鉄脱酸素剤を電子レンジで加熱すると、非鉄系脱酸素剤に含まれる水分が蒸発し、脱酸素剤の包装袋が水蒸気により膨らむ場合がある。水蒸気の発生量によっては、脱酸素剤の包装袋が破裂して、非鉄系脱酸素剤の内容物が漏出する恐れがある。
【0010】
そこで、本件発明は、金属探知器に検知されず、且つ、電子レンジにより加熱されても包装袋の膨らみや破裂を防止することのできる非鉄系脱酸素剤包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の非鉄系脱酸素剤包装体(非鉄系脱酸素剤)を採用することで上記課題を達成するに到った。
【0012】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、易酸化性の非鉄系材料からなる主剤を含有する非鉄系脱酸素材を空気透気度が20秒/100ml〜3000秒/100mlの包装材により包装したことを特徴とする。ここで、前記空気透気度は20秒/100ml〜2000秒/100mlであることがより好ましく、50秒/100ml〜1000秒/100mlであることが更に好ましい。
【0013】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、前記包装材が、通気性を有する外層材と、微細貫通孔を有する内層材とをドライラミネートにより積層した複合フィルムであることが好ましい。
【0014】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、前記包装材は、通気性を有する外層材と、微細貫通孔を有する内層材とをドライラミネートにより積層した二層フィルムの外層材側に、最外層フィルムが熱圧着された複合フィルムであることも好ましい。
【0015】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、前記複合フィルムが、前記二層フィルムの外層材側に、最外層フィルムがグリッド状に熱圧着されたものであることが好ましい。
【0016】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、前記易酸化性の非鉄系材料が、水酸基を有する易酸化性有機物であることが好ましい。
【0017】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、前記易酸化性有機物が、フェノール性水酸基を1個以上含有するベンゼン環が化学構造式中に2個以上含むポリフェノール化合物、多価アルコール化合物、又は単環の多価フェノール化合物であることが好ましい。
【0018】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、前記易酸化性有機物が、ポリフェノール化合物としてのタンニン、タンニン酸、カテキン、ケルセチン、フラボン、フラバノン、フラボノール、イソフラボン及びアントシアニンと、前記他価アルコール化合物としてのアスコルビン酸、グリセリン及びグリコールと、前記多価フェノール化合物であるカテコール、ヒドロキノン、及び没食子酸との中から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0019】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、前記非鉄系脱酸素材が、前記易酸化性の非鉄系材料、アルカリ剤及び水を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体によれば、易酸化性の非鉄系材料からなる主剤を含有する非鉄系脱酸素材を採用しているので、金属探知器に検知されず、金属製異物混入の有無が検査されるような製品と共に好適に用いることができる。また、本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、空気透気度が20秒/100ml〜3000秒/100mlの包装材で非鉄系脱酸素材を包装している。このため、当該非鉄系脱酸素剤包装体を電子レンジで食品等と共に加熱した場合であっても、脱酸素剤内で発生する水蒸気を包装材を介して速やかに外部に排気して、当該包装材により構成される包装袋の膨れや破裂を防止することができる。よって、非鉄系脱酸素材が外部に漏出するのを防止し、非鉄系脱酸素剤包装体が使用される食品等に漏出した非鉄系脱酸素材が付着するのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体の好ましい実施の形態を説明する。本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、易酸化性の非鉄系材料からなる主剤を含有する非鉄系脱酸素材を包装材により包装したものである。以下、本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体について、非鉄系脱酸素材、包装材について、順次、説明する。
【0022】
[非鉄系脱酸素材]
本件発明に係る非鉄系脱酸素材は、易酸化性の非鉄系材料からなる主剤の他、主剤が雰囲気中の酸素と酸化反応を行う際に要する副成分を適宜含む。本件発明に係る非鉄系脱酸素材は、マイクロ波を吸収せず、適切な酸素吸収能を有する非鉄系の脱酸素材であれば、いかなるものを使用してもよいが、特に、易酸化性有機物質を主剤として含む有機系脱酸素材を好適に用いることができる。以下、本件発明に係る非鉄系脱酸素材として、易酸化性有機物質を主剤とする有機系脱酸素材について述べる。なお、有機系脱酸素材以外の非鉄系脱酸素材として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機酸化物を主剤とする無機系の脱酸素材を挙げることができる。
【0023】
〈主剤〉
易酸化性有機物質: 本件発明でいう易酸化性有機物質とは、雰囲気中の酸素と容易に酸化反応を行う有機物質を指す。このような有機物質として、例えば、雰囲気中の酸素との酸化反応に関与する水酸基を有する水酸基酸化型の易酸化性有機物質の他、不飽和油脂、不飽和脂肪酸、不飽和重合物等の二重結合が雰囲気中の酸素と酸化反応に関与する二重結合酸化型の易酸化性有機物質を挙げることができる。本件発明においては、水酸基酸化型の易酸化性有機物質、二重結合酸化型の易酸化性有機物質のいずれを用いてもよいが、本件発明では、電子レンジ加熱時における脱酸素剤の包装袋の膨らみを防止する点を課題としている。二重結合酸化型の易酸化性有機物質は、雰囲気中の酸素との酸化反応に水分が関与しないため、上述の課題を有していない。従って、本件発明では、主として、雰囲気中の酸素との酸化反応に水分が関与する水酸基酸化型の易酸化性有機物質を例に挙げて以下説明する。
【0024】
水酸基酸化型の易酸化性有機物質として、具体的には、タンニン又はタンニン酸等のフェノール性水酸基を1個以上含有するベンゼン環が化学構造式中に2個以上含む複合化合物(以下、ポリフェノール化合物と称する)、アスコルビン酸、グリセリン又はグリコール等の多価アルコール化合物、カテコール、ヒドロキノン、没食子酸等の短環の多価フェノール化合物等を挙げることができる。これらの中でも特にポリフェノール化合物を好ましく用いることができる。
【0025】
ポリフェノール化合物は、植物の果実、葉や花、樹皮等の成分として含まれるものである。ポリフェノール化合物として、具体的には、タンニン又はタンニン酸、カテキン、ケルセチン、フラボン、フラバノン、フラボノール、イソフラボン、アントシアニン等を主成分とするものが挙げられる。本発明に用いられるポリフェノール化合物は、化学的合成により製造されたもの、植物から抽出されたもの、のいずれを用いてもよい。また、植物から抽出されるポリフェノール化合物として、不純物を含む粗製ポリフェノール化合物、不純物が除去された精製ポリフェノール化合物のいずれを用いてもよい。植物から抽出されるポリフェノール化合物として、例えば、ケブラチョやワットル(ミモザ)等から抽出される縮合型タンニン、チェストナット(栗属の渋)から抽出される加水分解型タンニン、茶カテキン(テアフラビンとエピガロカテキンガレート等の混合物やエピガロカテキンガレート単味抽出物)、葡萄種ポリフェノール(アントシアニン)、リンゴポリフェノール(カテキンやケルセチン等)等を挙げることができる。このようなポリフェノール化合物を用いることによって、安価で安全性が高く、所望の脱酸素性能を有する非鉄系脱酸素材を得ることができる。
【0026】
これらのポリフェノール化合物の中でも、タンニン、タンニン酸、カテキン、ケルセチン、フラボン、フラバノン、フラボノール、イソフラボン、アントシアニンから選択される少なくとも1種を含むものが好ましい。これらの中でも、入手が容易であり、安価であり、さらに、主剤として十分な酸素吸収能を発揮する点から、タンニン又はタンニン酸、特に、縮合型タンニン又はタンニン酸を主成分とするものを主剤として用いることが好ましい。縮合型タンニンは、pH変化等の雰囲気環境の変化に対して,主骨格の化学構造が変化しづらく、同時に脱酸素反応に関与する官能基が保持されるため、環境の変化によらず脱酸素能力を維持する点で好ましく使用される。
【0027】
〈副剤〉
本件発明に係る非鉄系脱酸素材は、上述の主剤と共に、副剤としてアルカリ剤と、水とを含有する。アルカリ剤は、水と作用又は溶解してアルカリ性を示す物質であり、主剤である易酸化性有機物質が雰囲気中の酸素との酸化反応を進める際に必須の物質となる。水は、主剤及びアルカリ剤と作用し、或いは主剤及びアルカリ剤を溶解し、主剤の酸化反応の場を提供するために添加される。以下、それぞれについて説明する。
【0028】
アルカリ剤: 本件発明では、アルカリ剤として、水酸化カルシウムを用いる。水酸化カルシウムは、従来の有機系脱酸素材において使用されてきた他のアルカリ剤と比較して、主剤である易酸化性有機物質に対して加水分解等の反応を引き起こすことも少ない。また、水酸化カルシウムは、水との相互作用により易酸化性有機物質の酸化反応に好適なpHに安定化することもできると考えられる。このため、水酸化カルシウムをアルカリ剤として用いることにより、主剤の脱酸素に関わる官能基(水酸基)を安定に保持することができ、且つ、雰囲気中の酸素濃度が増加した場合は、主剤と雰囲気中の酸素との酸化反応を速やかに進めることができる。但し、易酸化性有機物質の酸化反応に好適なpH領域は、概ねpH9〜pH12の範囲である。
【0029】
ここで、水酸化カルシウムの平均粒径D50は、0.5μm〜200μmであることが好ましく、より好ましくは1μm〜80μmであり、最も好ましくは2μm〜60μmである。このような粉体特性を有する水酸化カルシウムを用いることにより、優れた脱酸素能力、脱酸素速度を実現することができる。これと同時に、本件発明に係る非鉄系脱酸素材の製造時において、混練により、他の組成物と馴染みやすくすることができる。すなわち、水酸化カルシウムの平均粒径D50が0.5μm未満のものは、脱酸素材原料(主剤、副剤)を混練する際に、ブロッキングが生じて粉体流動性が低下する。その結果、脱酸素材原料の混練状態にムラが生じたり、混合容器に水酸化カルシウムが付着するなどの不具合が生じる。また、水酸化カルシウムの平均粒径がD50が0.5μm未満の場合、水酸化カルシウムの粉塵が舞い上がり易く、脱酸素材を包装材へ封入する際にシール部に粉体が噛み込んでシールが不完全となる場合がある。このため、製品としての非鉄系脱酸素剤包装体の外観を損ねたり、シール部から粉漏れが生じる等の不良品が発生する場合がある。一方、水酸化カルシウムの平均粒径D50が200μmを超える場合、水酸化カルシウムの比表面積が小さくなり、脱酸素材の酸化反応における反応速度が低下するので好ましくない。
【0030】
ここで、本件発明においては、アルカリ剤として、上述の水酸化カルシウムと共に炭酸カルシウムを併用することが好ましい。アルカリ剤として水酸化カルシウムの微粉を用いた場合、水酸化カルシウムの比表面積が大きくなり、主剤の脱酸素反応(酸化反応)の反応速度が向上すると考えられる。しかしながら、上述の通り、水酸化カルシウムの平均粒径D50が小さくなればなるほど、粉体が舞い上がり易く、他の組成物との混練性や流動性において問題が生じやすくなる。そこで、本件発明に係る非鉄系脱酸素材において、アルカリ剤として、水酸化カルシウムと共に炭酸カルシウムを併用することが好ましい。炭酸カルシウムは、水に難溶性の弱いアルカリ剤であり、比重が大きく、水酸化カルシウムと共にアルカリ剤として用いると、水酸化カルシウムの粉立ちを抑える効果が得られる。また、炭酸カルシウムは主剤を担持すると共に、反応の場を提供する担持体としての機能も発揮すると考えられる。従って、本件発明において、アルカリ剤として水酸化カルシウムと共に炭酸カルシウムを併用することにより、脱酸素反応の促進に好適な微粒の水酸化カルシウムを用いても、混練時等の粉立ちを抑え、且つ、炭酸カルシウムが主剤を担持すると共にアルカリ剤としての役割を果たす。その結果、従来、二酸化ケイ素等の担持体を別途用いる必要がなくなり、非鉄系脱酸素材全体におけるアルカリ剤の量を増量することができるので、二酸化ケイ素等の担持体を用いる場合と比較すると、脱酸素能力を向上することができる。また、非鉄系脱酸素材において、必要に応じて反応触媒を添加して、官能基の酸化反応速度を向上することができるが、本件発明に係る非鉄系脱酸素材において、アルカリ剤として、水酸化カルシウムと共に炭酸カルシウムを併用することにより、主剤の酸化反応速度を向上することができ、触媒の添加量を低減させることができるので、コストダウンにつながる。
【0031】
アルカリ剤として、炭酸カルシウムを併用する場合、水酸化カルシウム100重量部に対して、炭酸カルシウムを5重量部〜50重量部用いることが好ましい。炭酸カルシウムの含有量が5重量部未満の場合、非鉄系脱酸素材の原料成分を混合する際に、粉立ちが生じると共に、流動性が低下するため、包装材内に充填封入して用いる脱酸素材に適さない。一方、炭酸カルシウムは弱いアルカリ剤であり、炭酸カルシウムのみを脱酸素材のアルカリ剤として用いると、脱酸素材の脱酸素能力が不十分となる。このため、炭酸カルシウムの含有量が、水酸化カルシウム100重量部に対して50重量部を超えると、アルカリ剤における炭酸カルシウムの含有比率が高くなり、脱酸素材の単位重量当たりの脱酸素量が減少するため、好ましくない。
【0032】
但し、水酸化カルシウムと共に炭酸カルシウムを併用しない場合は、担持体として、二酸化ケイ素、アルミニウムシリケート、アルミナ、活性アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪藻土、パーライト、ゼオライト、活性白土等を使用することができる。
【0033】
水: 本件発明に係る非鉄系脱酸素材において、主剤を100重量部としたとき、水を10重量部〜200重量部含むことが好ましい。ここで、非鉄系脱酸素剤包装体の製造工程において、非鉄系脱酸素材の組成物を十分に混練したのち、包装材により形成された袋体(包装袋)に混合物を自動封入し、その後、開口部を熱シールすることにより混合物を包装材により密閉包装する方法を採用している。この際、水の含有量が多くなると、混合物の流動性が低下して、袋体に封入する際の製造効率が低下する。従って、主剤を100重量部としたとき、水を10重量部以下とすることにより、混合物を袋体に封入する際の実用的な流動性を保つことができる。一方、主剤を100重量部としたときの水の含有量が200重量部未満の場合、主剤やアルカリ剤等の非鉄系脱酸素材を構成する各組成物が混ざり難く、脱酸素能が低下する。また、適切な脱酸素能を発揮するには、適度な水分量が必要となる。本件発明に係る非鉄系脱酸素材は、通気性を有する包装材により包装された状態で使用するため、当該非鉄系脱酸素材に含まれる水分が不足である場合には、保存品に含まれる水分を吸収して酸化反応を行うことも可能である。しかしながら、この点を考慮した場合でも、主剤100重量部に対して水分の含有量が10重量部未満となると、脱酸素反応に要する水分量が不足し、保存品から水分を吸収することが困難である場合、所望の脱酸素能力を発揮することが困難になる。
【0034】
また、本件発明に係る非鉄系脱酸素材は、副成分として、主剤の酸化反応速度を高めるための触媒を含む構成としてもよい。触媒として、無機系触媒及び有機系触媒のいずれも使用することができる。無機系触媒として、例えば、鉄、ニッケル、銅、マンガン等の遷移金属の塩酸塩、硝酸塩又は硫酸塩等の遷移金属塩、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。また、有機系触媒として、例えば、ナフトヒドロキノン、フロログリシン、t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキノン、5−メチルレゾルシン等の有機系触媒を使用することができる。特に、本件発明では、金属探知器に検知されない脱酸素剤を提供することを目的の一つとしている。上述の金属化合物から成る無機系触媒を用いた場合でも、主剤と比較すると、触媒の添加量は微量であるため、金属探知器に検知される可能性は低い。また、金属探知器の多くは、食品等において針等の鉄系異物混入の有無を検知する場合が多い。従って、金属探知器の検知対象以外の金属塩を触媒として用いることは可能である。しかしながら、金属探知器に検知される可能性がある点、またマイクロ波の吸収を防止する点を考慮すると、無機系触媒よりも、有機系触媒を用いることがより好ましい。触媒を添加する場合、主剤を100重量部とした場合、触媒の添加量は15重量部以下であることが好ましい。上述のように、アルカリ剤として水酸化カルシウムと共に炭酸カルシウムを併用する場合、非鉄系脱酸素材の全量におけるアルカリ剤の含有量を高めることができる。このため、アルカリ剤により主剤の酸化反応を促進することができるため、触媒の添加量を従来と比して少量であっても、十分な脱酸素能を発揮することができる。ここで、触媒の添加量が少ない方が材料コストを低く抑えることができるが、触媒添加による効果を得るためには、主剤100重量部に対して、0.5重量部以上添加することが好ましい。主剤100重量部に対して、触媒含量が0.5重量部未満の場合、触媒添加に伴う材料コストを要する反面、触媒を添加することにより意図する上述の効果を十分に発揮することができず、好ましくない。
【0035】
また、本件発明に係る非鉄系脱酸素材を構成する組成物として、上述した主剤、アルカリ剤、水、触媒の他に、活性炭を添加する構成としてもよい。組成物として活性炭を添加することにより、主剤の酸化反応後に生じる低分子量物質を捕捉し、当該低分子量物質の揮散を防止することができる。活性炭の含有量は、主剤を100重量部とした場合、50重量部以下であることが好ましい。主剤を100重量部とした場合の活性炭の含有量が50重量部を超えると、主剤の酸化反応速度が低下する場合があるため好ましくない。また、活性炭の添加量は少ない方が、材料コストを低く抑えることができるが、活性炭添加による効果を得るためには、主剤100重量部に対して、5重量部以上添加することが好ましい。主剤100重量部に対して、活性炭含量が5重量部未満の場合、活性炭添加に伴う材料コストを要する反面、活性炭を添加することにより意図する上述の効果を十分に発揮することができないため、好ましくない。
【0036】
〈包装材〉
以上説明した非鉄系脱酸素材は、通気性を有する包装材により包装されて使用される。本件発明に係る非鉄系脱酸素材は、上述の様に水分を副成分として含有する。また、主剤として、水酸基を1個以上有するポリフェノール化合物等の水酸基酸化型の易酸化性有機物質を用いている。このため、主剤と雰囲気中の酸素との酸化反応時に水が生成される。ここで、鉄系脱酸素剤の場合は、包装材の空気透気度が高くなるほど、主剤である鉄粉との空気接触量が増加し、脱酸素速度も速くなる。このため、鉄系脱酸素剤の場合、使用環境において求められる脱酸素速度に応じた空気透気度を有する包装材を採用する必要がある。しかしながら、本発明者らは、非鉄系脱酸素材の場合、包装材の空気透気度が高くなっても、非鉄系脱酸素材、特に有機系脱酸素材の脱酸素速度の大きな増加は認められないという知見を見いだした。そこで、本件発明では、空気透気度が下記の範囲を有する包装材を採用し、当該包装材により非鉄系脱酸素材を包装することで、水蒸気を包装材の外部に速やかに排気させ、包装袋の膨れや破裂を防止している。
【0037】
空気透気度: まず、本件発明に係る包装材の空気透気度について説明する。本件発明に係る包装材として、空気透気度が20秒/100ml〜3000秒/100mlの範囲の包装材を使用する。但し、空気透気度は、JIS P 8117(紙及び板紙の透気度試験方法)規定のガーレー透気度試験機を用いて測定した値を指す。また、包装材はシート状(フィルム状)のものを用い、上述の空気透気度は、包装材の厚み方向における空気透気度を指す。本件発明では、空気透気度が20秒/100ml〜3000秒/100mlの包装材で、非鉄系脱酸素材を包装することにより、非鉄系脱酸素剤包装体内で発生した水分又は非鉄系脱酸素剤包装体に含まれる水分が蒸発した場合でも、当該包装材を介して水蒸気を速やかに包装材の外部に排気することができる。これにより、当該包装材で構成される非鉄系脱酸素剤包装体の包装袋の膨れや、破裂を防止することができる。従って、流通過程等において金属製異物の混入の有無が検査される製品や、電子レンジで包装容器ごと加熱される製品などを無酸素雰囲気下で保存する際に、本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体を好適に用いることができる。
【0038】
ここで、包装材の空気透気度が20秒/100ml未満の場合、副成分として水分を必須の構成材料とする非鉄系脱酸素材においては、包装材の通気性が高いため水分が不必要に蒸散する恐れがある。その結果、副成分としての水分の含有量の低下に伴い当該非鉄系脱酸素材の酸素吸収能が低下や、脱酸素速度の低下を生じる恐れがある。例えば、包装材の空気透気度は50秒/100ml以上であると、包装材内の水分の蒸散を防止し、当該非鉄系脱酸素材の酸素吸収能を最適な状態に保つことができるので、より好ましい。
【0039】
一方、包装材の空気透気度が3000秒/100mlを超える場合、当該非鉄系脱酸素剤包装体内で発生した水蒸気を包装材の外部に速やかに排気することができず、当該包装材で構成される包装袋の膨れや破裂が生じる恐れがある。当該観点から、包装材の空気透気度が高い方が、当該非鉄系脱酸素剤包装体内で発生した水蒸気を包装材の外部に速やかに排気することができるため好ましい。例えば、2000秒/100ml以下であると、仮に、非鉄系脱酸素剤包装体内で大量の水蒸気が発生した場合でも、これを包装材の外部に速やかに排気することができ、より好ましい。また、1000秒/100ml以下であると、更に速やかに包装材の外部に水蒸気を排気することができるため、更に好ましい。
【0040】
包装材材料: ここで、上記包装材としては、空気透気度が上述の範囲のものであればいかなる素材を用いてもよいが、非鉄系脱酸素剤包装体の使用態様を考慮すると、適度な耐湿性及び撥油性を備える素材から成ることが好ましい。非鉄系脱酸素剤包装体は、水分や油分を含有する食品等の保存品と共に包装容器内に封入されるため、食品等から浸出した水分や油分が包装材を介して非鉄系脱酸素材に触れると、非鉄系脱酸素材の酸素吸収能が低下する恐れがあるためである。
【0041】
また、非鉄系脱酸素剤包装体の製造工程を考慮すると、包装材は、ヒートシール性を有するものであることが好ましい。非鉄系脱酸素剤包装体の製造工程では、一般に、所定形状に切断された包装材の内層材側の面同士を当接させて、その周縁部を封入口を残してヒートシールして包装材からなる袋状の包装材(この袋状の包装材を指して本明細書では「袋体」又は「包装袋」という)を形成し、袋体の封入口から内容物である非鉄系脱酸素材を充填し、その後、封入口をヒートシールして封止する工程を採用している。従って、包装材がヒートシール性を備えることにより、非鉄系脱酸素材を包装した状態で周縁部をヒートシールすることにより、非鉄系脱酸素材を簡易に包装することができる。
【0042】
〈複合フィルム〉
包装材としては、上述の性質を備えるものであれば、いかなるものを用いてもよいが、本件発明では、外層材及び内層材をラミネート加工により積層した複合フィルム、又は、外層材及び内層材を積層し、さらに外層材側に最外層フィルムを積層した複合フィルムを好適に用いることができる。このような複合フィルムを用いることにより、外層材及び内層材に用いる素材を適宜選択し、必要に応じて最外層フィルムを外層材の外側に更に積層することにより、上述の包装材に求められる特性、すなわち、空気透気度、耐湿性、撥油性、ヒートシール性を満足することができる。以下、最外層フィルム、外層材及び内層材の順に説明する。
【0043】
最外層フィルム: 本件発明に係る最外層フィルムは、必要に応じて外層材の外側に設けるものである。選択した外層材及び内層材の素材により、上述の包装材に求められる特性を満足することができる場合、最外層フィルムを設けなくともよい。係る最外層フィルムとして、厚さ方向に貫通する微細貫通孔を複数有するシート状素材を用いることが好ましい。特に、最外層フィルムとして、熱可塑性を有する樹脂製フィルムに微細貫通孔を複数設けた有孔樹脂製フィルムを用いることが好ましい。このような有孔樹脂製フィルムとして、具体的には、熱可塑性の樹脂であるポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。この最外層フィルムに設けられる微細貫通孔の数や大きさ等を調整することにより、最外層フィルムの空気透気度を調整することができる。ここで、微細貫通孔は、ラミネート加工の前に形成されたものであってもよいし、ラミネート加工後に形成されたものであってもよい。しかし、より確実な通気性を得るためには、ラミネート加工前に微細貫通孔を形成することが好ましい。また、微細貫通孔の孔の形状は特に限定されるものではなく、円形、楕円形等、適用する有孔加工法によって様々な形状となる。この微細貫通孔の径の大きさや、単位面積当たりの数等を調整することにより、最外層フィルムの空気透気度を調整することができる。
【0044】
外層材: 本件発明に係る外層材として、ラミネート加工により、内層材と接着可能であり、且つ、接着後においても通気性を有することが好ましい。また、最外層フィルムを設ける場合には、外層材は、内層材及び外層材のそれぞれとラミネート加工により接着可能であり、且つ、接着後においても通気性を有することが好ましい。このような外層材として、具体的には、紙、織布、不織布等を挙げることができる。紙の例として、クラフト紙、撥油紙、撥水紙等を挙げることができる。また、織布及び不織布として、ポリエステル、ポリアミド等からなる織布及び不織布を用いることができる。紙、織布、不織布は、有孔加工法等により孔開け加工を施すことなく通気性を有するため、包装材により包装される内容物、すなわち、非鉄系脱酸素材の組成物が包装材の外部に内層材又は最外層フィルムに形成された微細貫通孔を介して漏出するのを防止することができる。
【0045】
内層材: 本件発明に係る内層材として、厚さ方向に貫通する微細貫通孔を複数有するシート状素材を用いることが好ましい。特に、内層材として、ドライラミネートにより外層材と接着可能であり、且つ、当該内層材同士が熱融着可能な素材を用いることが好ましい。内層材同士が熱融着可能な素材を用いることにより、上述の非鉄系脱酸素剤包装体の製造工程において、包装材からなる袋体を形成する作業や、袋体の封入口を封止する作業が容易になるためである。このような性質を有する内層材として、ポリエチレンが好ましく、特に、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンを好ましく用いることができる。ここで、内層材に設けられる微細貫通孔は、ラミネート加工の前に形成されたものであってもよいし、ラミネート加工後に形成されたものであってもよい。しかし、内層材についても、より確実な通気性を得るためには、ラミネート加工前に微細貫通孔を形成することが好ましい。また、微細貫通孔の孔の形状は特に限定されるものではなく、円形、楕円形等、適用する有孔加工法によって様々な形状となる。この微細貫通孔の径の大きさや、単位面積当たりの数等を調整することにより、内層材の空気透気度を調整することができる。
【0046】
上述の最外層フィルム、外層材及び内層材はそれぞれラミネート加工により積層して複合フィルムとして用いる。各層をラミネート加工により積層する際に、熱圧着加工法およびドライラミネート加工法のいずれを使用してもよい。
【0047】
最外層フィルム、外層材及び内層材を積層した三層積層体の複合フィルムを包装材として用いる場合には、特に、内層材と外層材とをドライラミネートして二層フィルムとし、この二層フィルムの外層材側に最外層フィルムを熱圧着することにより、三層積層体としたものを用いることが好ましい。最外層フィルムを設ける場合に、このような方法で三層積層体とすることにより、ドライラミネート加工の際に用いる接着剤が最外層フィルムを介して包装材の外側に滲出するのを防止することができるからである。脱酸素剤は、食品や医薬品等の経口品の包装に同封して使用されることが多いため、上述の通り、二層フィルムと最外層フィルムとを接着剤を用いずにヒートシールにより積層することで、接着剤が経口品に付着するのを防止することができる。なお、本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体の包装材としてする際に用いる接着剤としては、ウレタン系接着剤等を用いることができる。
【0048】
また、包装材として三層積層体の複合フィルムを形成する際に、内層材と外層材とをドライラミネートにより積層した二層フィルムと、最外層フィルムとを熱圧着する際に、二層フィルムの外層材側と最外層フィルムとをグリッド状に熱圧着することが好ましい。ここで、二層フィルムの外層材と最外層フィルムとをグリッド状に熱圧着するとは、外層材と、最外層フィルムとの全面に熱を加えて、外層材と最外層フィルムとをその全面を熱圧着して密着させるのではなく、外層材と、最外層フィルムとを重ね合わせた状態で、点状、或いは、ライン状に、所定の規則性を持って格子(グリッド)を描くように熱を加えることにより、外層材と最外層フィルムとを熱を加えた部分だけグリッド状に部分的に熱圧着することを指す。このとき、内層材と最外層フィルムの空気透気度は同程度であってもよいし、内層材の空気透気度を最外層フィルムの空気透気度より高くしてもよい。
【0049】
外層材は、上述の通り、紙、織布、不織布等からなるため、繊維間の間隙を介して空気を透過する。これに対して、内層材及び最外層フィルムは、それぞれ樹脂製フィルムからなるため、フィルムの幅方向において貫通する微細貫通孔を介して空気を透過する。従って、内層材と外層材とを積層した二層フィルムの空気透気度は、内層材の空気透気度と略等しくなる。また、この二層フィルムに最外層フィルムを積層した際に、包装材全体としての空気透気度は最外層フィルムの空気透気度と略等しくなる。以上のことから、当該包装材から成る包装袋の膨らみや破裂を防止するには、最外層フィルムの空気透気度は上述した包装材の空気透気度の上記範囲内である必要があるが、内層材や外層材の空気透気度は上述した包装材の空気透気度の上限値を超えていてもよい。また、最外層フィルムの空気透気度を脱酸素材の脱酸素速度等に応じて適切な値に設定した上で、内層材の空気透気度を最外層フィルムの空気透気度よりも高くすることもできる。このように、内層材の空気透気度を最外層フィルムの空気透気度よりも高くすると、当該複合フィルムから成る袋体の内側で水蒸気が発生した場合に、この水蒸気を内層材側から外層材を介して、より速やかに最外層フィルム側に排気することができる。このとき、最外層フィルムの空気透気度よりも速い速度で内層材側から水蒸気が排気される場合、最外層フィルムを外層材側にグリッド状に熱圧着させておくことにより、余剰となる水蒸気を最外層フィルムと外層材との間にバッファリングすることができる。また、最外層フィルムを外層材側にグリッド状に熱圧着により付着させることで、最外層フィルム自体が外層材側から大きく膨らむのを防止することができる。更に、最外層フィルムの空気透気度は上述した範囲内であるため、バッファリングされた水蒸気についても速やかに最外層フィルムの外部に排気することができ、包装材の膨らみ及び破裂を防止することができる。
【0050】
以下、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0051】
〈非鉄系脱酸素材の調整〉
まず、主剤としての縮合型タンニン(ケブラチョ抽出タンニン)11gと、水11gとを混合した。この混合物に、反応触媒として、t−ブチルカテコール0.14gを添加し、混合した。続いて、この混合物に、アルカリ剤として、水酸化カルシウム(平均粒径D50=4.7μm)と、炭酸カルシウム13.0gとを、この順に添加し、混練した。その後、活性炭2.0gを添加し、更に混練した後、熟成させて非鉄系脱酸素材(有機系脱酸素材)を得た。
【0052】
〈包装材〉
上述の様に調整した非鉄系脱酸素材を包装する包装材として、厚さ12μmの有孔ポリエステルフィルムから成る最外層フィルムと、50g/mの耐水耐油紙から成る外層材と、厚さ25μmの有孔ポリエステルから成る内層材とを、ヒートラミネート加工により三層積層体とした複合フィルムを用いた。当該複合フィルムのガーレー式空気透気度は、100秒/mlであった。この包装材を用いて、内層材の面同士を当接させて周縁部のうち、三方をシールした外寸65mm×55mmの袋体(包装袋)を用意し、この袋体に上述の非鉄系脱酸素材4gを充填し、開口部を熱ラミネートによりシールして、実施例1の非鉄系脱酸素剤包装体とした。
【実施例2】
【0053】
次に、実施例2の非鉄系脱酸素剤包装体について説明する。実施例2の非鉄系脱酸素剤包装体は、実施例1で用いた包装材に変えて、ガーレ−式空気透気度が110秒/mlのポリエチレン製不織布を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例2の非鉄系脱酸素剤包装体を得た。
【実施例3】
【0054】
次に、実施例3の非鉄系脱酸素剤包装体について説明する。実施例3の非鉄系脱酸素剤包装体は、実施例1で用いた包装材に変えて、50g/mの耐水耐油紙から成る外層材と、厚さ25μmの有孔ポリエステルから成る内層材とを、ドライラミネート加工により積層した二層フィルムに、厚さ12μmの有孔ポリエステルフィルムから成る最外層フィルムをヒートラミネート加工によりグリッド状に熱圧着して三層積層体とした複合フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例3の非鉄系脱酸素剤包装体を得た。このとき、包装材として用いた当該複合フィルムのガーレ−式空気透気度は、180秒/100mlであった。このとき、内層材に形成された微細貫通孔の単位面積当たりの個数は、最外層フィルムに形成された微細貫通孔の単位面積当たりの個数よりも多く、内層材の空気透気度は最外層フィルムの空気透気度よりも高いものを用いた。
【実施例4】
【0055】
次に、実施例4の非鉄系脱酸素剤包装体について説明する。実施例4の非鉄系脱酸素剤包装体は、実施例3で用いたのと同様の最外層フィルム、外層材、内層材を、実施例3と同様の方法で積層した複合フィルムであって、ガーレ−式空気透気度が210秒/100mlのものを用いた以外は、実施例3と同様の方法で実施例4の非鉄系脱酸素剤包装体を得た。
【実施例5】
【0056】
次に、実施例5の非鉄系脱酸素剤包装体について説明する。実施例5の非鉄系脱酸素剤包装体は、実施例1で用いた包装材に代えて、ガーレ−式空気透気度が460秒/100mlのポリエチレン製不織布を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例5の非鉄系脱酸素剤包装体を得た。
【比較例】
【0057】
次に比較例の非鉄系脱酸素剤包装体について説明する。比較例の非鉄系脱酸素剤包装体として、実施例1で用いた包装材に代えて、ガーレ−式空気透気度が7950秒/100mlのものを用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例の非鉄系脱酸素剤包装体を得た。
【0058】
[評価]
以上の様にして得た実施例1〜実施例5の非鉄系脱酸素剤包装体と、比較例の非鉄系脱酸素剤包装体とを、電子レンジ(出力500W)で2分間加熱し、包装袋の膨れ、スパークの有無、臭いの有無を評価した。この、電子レンジ耐性に関する評価を、各包装材の空気透気度及び各非鉄系脱酸素剤包装体の脱酸素速度と共に表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示す様に、実施例1〜実施例5の非鉄系脱酸素剤包装体はいずれの場合も、電子レンジで加熱した際にも包装袋の膨れは認められなかったが、比較例の非鉄系脱酸素剤包装体については包装袋の膨れが認められた。実施例1〜実施例5及び比較例の非鉄系脱酸素剤包装体では、いずれも同じ重量の同一組成の非鉄系脱酸素材を用いている。比較例において、包装袋の膨れが認められることから、当該非鉄系脱酸素材を電子レンジで加熱すると、水蒸気が発生することが確認できる。しかしながら、実施例1〜実施例5で採用した包装材により、当該非鉄系脱酸素材を包装することにより、電子レンジ加熱時の包装袋の膨れを防止することが確認できた。
【0061】
次に、実施例1〜実施例5で採用した包装材のガーレ−式空気透気度と、各非鉄系脱酸素剤包装体の脱酸素速度を比較すると、ガーレ−式空気透気度が高くなった場合でも脱酸素速度が大きく増加することはなかった。従って、実施例1〜実施例5で採用した包装材のように、通気性の高い包装材を採用した場合でも、実用的なレベルの脱酸素速度を維持した状態で、電子レンジで加熱しても包装袋の膨れや破裂等を防止することができることが確認できる。
【0062】
また、非鉄系脱酸素材を採用しているため、金属探知器に検知されず、金属製異物混入の有無が検査されるような製品と共に好適に用いることができる。また、非鉄系脱酸素材を採用しているため、電子レンジで加熱した場合でもスパークは認められず、実施例1〜実施例5の非鉄系脱酸素剤包装体は電子レンジで加熱される可能性の高い製品と共に好適に用いることができることが分かる。また、特に臭い等もなく、実施例1〜実施例5の非鉄液脱酸素剤包装体は食品等と共に好適に用いることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、易酸化性の非鉄系材料からなる主剤を含有する非鉄系脱酸素材を採用しているので、金属探知器に検知されず、金属製異物混入の有無が検査されるような製品と共に好適に用いることができる。また、本件発明に係る非鉄系脱酸素剤包装体は、空気透気度が20秒/100ml〜3000秒/100mlと、通気性の高い包装材で非鉄系脱酸素材を包装している。このため、電子レンジ加熱時等に脱酸素剤内で水蒸気が発生した場合でも、当該水蒸気を包装材を介して速やかに外部に排気して、当該包装材により構成される包装袋の膨れや破裂を防止することができる。よって、当該非鉄系脱酸素剤包装体を電子レンジで加熱される可能性の高い食品等と共に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易酸化性の非鉄系材料からなる主剤を含有する非鉄系脱酸素材を空気透気度が20秒/100ml〜3000秒/100mlの包装材により包装したことを特徴とする非鉄系脱酸素剤包装体。
【請求項2】
前記包装材は、通気性を有する外層材と、微細貫通孔を有する内層材とをラミネート加工により積層した複合フィルムである請求項1に記載の非鉄系脱酸素剤。
【請求項3】
前記包装材は、通気性を有する外層材と、微細貫通孔を有する内層材とをラミネート加工により積層した二層フィルムの外層材側に、最外層フィルムが熱圧着された複合フィルムである請求項1に記載の非鉄系脱酸素剤包装体。
【請求項4】
前記複合フィルムは、前記二層フィルムの外層材側に、最外層フィルムがグリッド状に熱圧着されたものである請求項3に記載の非鉄系脱酸素剤包装体。
【請求項5】
前記易酸化性の非鉄系材料は、水酸基を有する易酸化性有機物である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の非鉄系脱酸素剤包装体。
【請求項6】
前記易酸化性有機物は、フェノール性水酸基を1個以上含有するベンゼン環が化学構造式中に2個以上含むポリフェノール化合物、多価アルコール化合物、又は単環の多価フェノール化合物である請求項5に記載の非鉄系脱酸素剤包装体。
【請求項7】
前記易酸化性有機物は、ポリフェノール化合物としてのタンニン、タンニン酸、カテキン、ケルセチン、フラボン、フラバノン、フラボノール、イソフラボン及びアントシアニンと、前記他価アルコール化合物としてのアスコルビン酸、グリセリン及びグリコールと、前記多価フェノール化合物であるカテコール、ヒドロキノン、及び没食子酸との中から選択される少なくとも一種である請求項6に記載の非鉄系脱酸素剤。
【請求項8】
前記非鉄系脱酸素材は、前記易酸化性の非鉄系材料、アルカリ剤及び水を含む請求項1〜請求項7のいずれかに記載の非鉄系脱酸素剤包装体。

【公開番号】特開2011−195185(P2011−195185A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65483(P2010−65483)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000231970)パウダーテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】