説明

非鉄製錬設備における排ガス処理装置、及び非鉄製錬設備における排ガス処理方法

【課題】循環液の循環する配管の閉塞を抑制し、除去作業負担を低減することを課題とする。
【解決手段】炉から排出された排ガスへ循環液を噴射することにより、排ガス中から粒子状不純物を取り除き、前記不純物が懸濁した循環液を下部に溜める塔と、前記塔の下部に溜まった循環液が循環する配管と、前記配管が接続して、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過することにより、循環液中から前記不純物を連続的に取り除き、取り除いた前記不純物を容器詰めする濾過装置と、を備えた非鉄製錬設備における排ガス処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄製錬排ガスの洗浄冷却工程で冷却循環液中に取り出される粒子状の不純物の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬設備における硫化鉱の燃焼により排出されるSOガスは、洗浄塔、冷却塔、ミストコットレル等の設備を用いて精製された後、硫酸製造工程へ送られる。洗浄塔及び冷却塔では、循環液スプレーでSOガスに含まれるSe、Pb主体の有価金属を含む不純物を除去し、循環液中に捕集するとともに、SOガスの冷却を行っている。
【0003】
特許文献1には、このような非鉄製錬設備の洗浄冷却塔内壁の劣化を抑制し、塔本体の寿命を延長し、洗浄冷却スプレー装置の着脱手入れが容易な排ガス洗浄冷却塔が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−255573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、循環液中に捕集された不純物はSS(Suspended Solids)となり、このSSの一部が洗浄塔、冷却塔の下部に堆積し、また別の一部がスプレーチップ、循環液クーラ、冷却塔充填物及び循環酸配管などの循環液設備に蓄積する。このように、スプレーチップ、循環液クーラ、冷却塔充填物及び循環酸配管にSSが蓄積することは、循環液通路の閉塞を引き起こし、設備能力の低下の主原因になる。閉塞の除去作業は操業中に都度実施しているが、この除去作業に多大な費用がかかっていた。
【0006】
また、洗浄塔及び冷却塔の下部に蓄積した不純物(SS)は、一年ごとに実施される定期シャットダウン等のプラントの長期停止時に内部から抜き出し、乾燥後ドラム缶に詰められる。このドラム缶に詰めた不純物は脱水銀処理を経て、有価金属回収工程へ送られる。従って、長期停止時まで、不純物泥に含まれる有価金属を眠らせているため、滞留ロスが発生していた。有価金属を長期間洗浄塔や冷却塔に滞留させてしまうと、有価金属としての停滞金利を招き、好ましいことではなく、連続して回収し、定常的に処理することで回収された有価金属を販売できれば、停滞金利を低減できることになる。
【0007】
また、従来の技術では、塔内から不純物を抜き出し、ドラム缶に詰める作業は人力で行うため人件費がかさむうえ、水銀の粉塵飛散防止および作業員の水銀曝露防止のための環境及び安全の設定で多大な労力がかかっていた。
【0008】
そこで、本発明は、循環液の循環する配管の閉塞を抑制し、除去作業負担を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決する本発明の非鉄製錬設備における排ガス処理装置は、炉から排出された排ガスへ循環液を噴射することにより、排ガス中から粒子状不純物を取り除き、前記不純物が懸濁した循環液を下部に溜める塔と、前記塔の下部に溜まった循環液が循環する配管と、前記配管が接続して、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過することにより、循環液中から前記不純物を連続的に取り除き、取り除いた前記不純物を容器詰めする濾過装置と、を備える。
【0010】
このような構成によると、
(1)循環液中の不純物が除去されることにより、循環酸配管や、循環液充填部の詰まりを抑制することができる。これにより、詰まりの除去作業を減らし、作業コストを低減できる。
(2)蓄積した不純物を抜き出しドラム缶詰めする手作業を削減するため、抜き出し作業をしていた作業員の作業負担を軽減するとともに、水銀曝露防止のための環境安全維持費用を削減できる。
(3)不純物として含まれている有価資源を早期に取り出すことができ、停滞金利を低減できる。
【0011】
また、上記の非鉄製錬設備における排ガス処理装置は、排ガス処理の操業中に前記濾過装置へ前記循環液を取り込む構成とすることができる。これにより、排ガス処理にかかる工程を停止することなく、循環液中の不純物を連続的に除去することができる。
【0012】
また、上記の非鉄製錬設備における排ガス処理装置において、前記濾過装置は、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過し、前記不純物を分離する第1濾過器と、前記第1濾過器において分離した前記不純物をスラリー状にして回収した液体を濾過し、前記不純物を分離する第2濾過器とを備え、前記第2濾過器で分離した前記不純物を容器詰めすることができる。また、上記の非鉄製錬設備における排ガス処理装置において、前記第1濾過器において処理された濾液を貯蔵する貯蔵槽を備え、前記貯蔵槽に貯蔵した濾液を前記第1濾過器へ供給し、前記第1濾過器において分離された前記不純物をスラリー化することができる。
【0013】
上記の非鉄製錬設備における排ガス処理装置において、前記濾過装置は、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過し、前記不純物を濾過物として分離する第1濾過器と、前記第1濾過器において発生した濾液は、その大半を洗浄塔や冷却塔の下部に戻し、また前記第1濾液の一部は別途設けられた貯蔵タンクに濾布逆洗浄水として貯蔵し、前記第1濾過器において濾過した濾過物が一定量に達した際に、当該濾過物を前記濾布逆洗浄水によってスラリー状にし、前記スラリーを第2の濾過物として分離する第2濾過器とを備え、前記第2濾過器で分離した前記第2の濾過物を容器詰めする構成とすることができる。このような2段階の濾過工程を有する構成とすることにより、通常1段の濾過工程では濾過工程の進行に応じて濾布の目詰まりが始まり、濾過能力が急激に低下する前に、別途貯蔵した濾布逆洗浄水により1段目の濾過器の濾布を洗浄することで濾過物をスラリーとして取り出し、2段目の濾過器によって、スラリーを固形物として回収することができ、処理設備全体としての濾過処理能力を向上することができる。ここで、2段目の濾過器においてもスラリーを濾過する工程で目詰まりによる濾過能力の低下が心配されるが、洗浄塔、冷却塔への循環水の不純物の除去には影響を与えずに済むため、処理設備全体としての濾過能力が向上することになる。
【0014】
また、上記の非鉄製錬設備における排ガス処理装置において、前記濾過装置における作業は負圧密閉状態で実施する構成とすることができる。これにより、不純物の粒子の飛散を防止し、作業員の水銀曝露を防止することができる。
【0015】
また、上記の非鉄製錬設備における排ガス処理装置は、銅製錬の硫酸工程における排ガス処理ができる。すなわち、前記排ガスは銅製錬の硫酸工程における排ガスとすることができる。
【0016】
また、上記の非鉄製錬設備における排ガス処理装置において、前記粒子状の不純物には有価金属が含まれ、前記容器中に前記有価金属を回収することができる。これにより、銅製錬や廃プラスチック処理などの熱処理時に排出される排ガス中に含まれる有価金属を早期に回収することができる。
【0017】
また、上記課題を解決する非鉄製錬設備における排ガス処理方法は、炉から排出された排ガスへ循環液を噴射することにより、排ガス中から粒子状の不純物を取り除き、前記不純物が懸濁した循環液を溜める第1工程と、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過することにより、循環液中から前記不純物を連続的に取り除く第2工程と、循環液から取り除いた前記不純物を容器詰めする第3工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
上記非鉄製錬設備における排ガス処理方法において、前記第2工程では排ガス処理の操業中に実行することができる。
【0019】
上記非鉄製錬設備における排ガス処理方法において、前記第2工程では、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過し、前記不純物を分離する第4工程と、前記第4工程において分離した前記不純物をスラリー状にして回収した液体を濾過し、前記不純物を分離する第5工程と、を備え、前記第3工程では、前記第5工程で分離した不純物を容器詰めすることができる。
【0020】
上記非鉄製錬設備における排ガス処理方法において、前記第5工程では、前記第4工程において処理された濾液を供給して、前記第4工程で分離した前記不純物をスラリー化することができる。
【0021】
上記非鉄製錬設備における排ガス処理方法において、前記第3工程では、負圧密閉状態で行うことができる。
【0022】
上記非鉄製錬設備における排ガス処理方法において、前記排ガスは銅製錬の硫酸工程における排ガスとすることができる。
【0023】
上記非鉄製錬設備における排ガス処理方法において、前記粒子状の不純物には有価金属が含まれ、前記容器中に前記有価金属を回収することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の非鉄製錬設備における排ガス処理装置は、循環液の循環する配管の閉塞を抑制し、除去作業負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の排ガス処理装置の概略構成を示した説明図である。
【図2】フンダバックの内部構造の概略を示した説明図である。
【図3】実施例2の排ガス処理装置の概略構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
本実施例における装置の構成について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施例の排ガス処理装置1の概略構成を示した説明図である。排ガス処理装置1は、非鉄製錬設備において硫化鉱の燃焼により排出されるSOガスを処理する装置である。排ガス処理装置1は予冷塔2と、洗浄塔3、冷却塔4とを備えている。排ガス処理装置1には、自溶炉(図示しない)からSOガスが流入する。SOガスは、予冷塔2、洗浄塔3、冷却塔4の順に通過し、その間に、冷却、洗浄されて、硫酸製造工場(図示しない)へ送られる。排ガス処理装置1通過前後のSOガスの温度は300℃から40℃へ低下する。
【0028】
予冷塔2には、塔内に流入する排ガスに向けて循環液を噴きかけ、SOガスを洗浄及び冷却するスプレー21が備えられている。また、循環液は、洗浄塔3の下部から循環ポンプ32を介してスプレー21に供給される。自溶炉から排出されたSOガス中にはSe、Pb主体の有価金属を含む粒子状の不純物が含まれている。スプレー21から循環液を噴射することにより、粒子状の不純物が循環液に懸濁してSS(Suspended Solids)となって、洗浄塔3の下部に溜まる。
【0029】
洗浄塔3にも予冷塔2と同様に、塔内に流入する排ガスに向けて循環液を噴きかけ、SOガスを洗浄するスプレー31が備えられている。洗浄塔3のスプレー31から循環液を噴射することにより、予冷塔2内においてSOガス中から除去されなかった粒子状の不純物が、循環液に懸濁してSSとなり、洗浄塔3の下部に溜まる。循環液は、洗浄塔3の下部から循環ポンプ32を介してスプレー31に供給される。なお、循環ポンプ32の圧送により8000(L/min)でスプレー21及びスプレー31へ供給される。
【0030】
冷却塔4にも予冷塔2及び洗浄塔3と同様に、SOガスを洗浄及び冷却するスプレー41が備えられている。冷却塔4には充填部42が備えられており、スプレー41で充填部42上部に噴射された循環液は、充填部42で拡散される。充填部42下部から流入する洗浄塔3を通過した排ガスは、充填部42で拡散され、充填部42では循環液による排ガスの冷却が行われる。
【0031】
また、冷却塔4内の循環液は排ガス中の不純物を補足し、冷却塔4の下部に溜まる。冷却塔4の下部に溜まった循環液は、クーラ44で冷却された後、循環酸配管43を通りスプレー41へ供給される。循環液は、9000(L/min)でスプレー41へ供給される。
【0032】
さらに、本実施例の排ガス処理装置1は、洗浄塔3を循環する循環液を濾過する濾過装置5を備えている。濾過装置5は、フンダバック51とドラム缶詰め設備52とを備えている。フンダバック51には、洗浄塔3の下部に接続し、洗浄塔3の下部に溜まった循環液が循環する配管6が接続している。配管6にはポンプ61が配置されており、ポンプ61により洗浄塔3内の循環液がフンダバック51へ圧送される。ポンプ61は排ガス処理中に運転され、常時、洗浄塔3内の循環液をフンダバック51へ送ることができる。
【0033】
図2はフンダバック51の内部構造の概略を示した説明図である。フンダバック51は、ベッセル511を備え、このベッセル511内に、外周を濾布で覆った複数のフィルタエレメント512と、フィルタエレメント512の上部に接続したパイプ513とが内装されている。濾過する循環液はポンプ61により圧送されてベッセル511下部の入口514から導入され、フィルタエレメント512の濾布を通過する際に濾過される。濾布の材質はポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイドなどの合成繊維を用いることができる。また、濾布のメッシュは5μmとし、通気度1(cc/cm・sec)以下で使用する。濾過後の濾液はパイプ513へ抜けて上部の出口515から配管6へ導出され、洗浄塔3へ戻される。一方、フィルタエレメント512の濾布に付着した濾物は、空気乾燥後にエアを逆流(バックブロー)させて固形状でベッセル511の下部の排出口516から回収できる。また、エアの代わりに水、もしくは、濾液を流し、逆洗してスラリー状で回収することもできる。このようなフンダバック51は、優れた耐蝕性を備え、排ガス処理操業中に循環液を濾過することができる。固形状、またはスラリー状の濾物はフンダバック51下部に配置したドラム缶詰め設備52において、ドラム缶内に回収し、脱水銀工程へ送られる。この濾物のドラム缶詰め作業は、負圧密閉状態で行われる。
【0034】
フンダバック51が濾過する濾物、すなわち、循環液に懸濁した不純物(SS)は粒度50μm以下の粒子であり、Hgを含有し、Hg以外に有価金属がそれぞれ、Se40〜60重量%、Pb5〜30重量%、Au0〜10重量ppm、Ag50〜200重量ppmの組成割合で含有されている。
【0035】
濾過装置5同様の構成の濾過装置7が冷却塔4にも装備されている。濾過装置7は、フンダバック71とドラム缶詰め設備72とを備えている。フンダバック71はフンダバック51と同様である。ドラム缶詰め設備72はドラム缶詰め設備52と同様である。フンダバック71には、冷却塔4の下部に接続し、冷却塔4の下部に溜まった循環液が循環する配管8が接続している。配管8にはポンプ81が配置されており、冷却塔4内の循環液がフンダバック71へ送られる。
【0036】
また、フンダバック71の濾過する濾物、及び濾物の組成割合は、フンダバック51の場合と同様である。
【0037】
次に、排ガス処理装置1の奏する効果について説明する。排ガス処理装置1は濾過装置5、7が組み込まれたことにより、以下の効果を奏する。
【0038】
(1)定期シャットダウン時などの長期停止時に人力で行われていた不純物の抜き出し作業が削減される。これにより、作業員の作業負担を軽減するとともに、水銀曝露防止のための環境安全維持費用を削減できる。
(2)また、従来ではプラントの長期停止時にのみ抜き出し作業が行われていたため、スプレー21、31、41へ供給される循環液には不純物が混合されており、これがスプレー21、31、41、充填部42、循環酸配管43やクーラ44の詰まりの原因となっていた。本実施例では、濾過装置5、7により、常時、不純物が濾過されるため、スプレー21、31、41、充填部42、循環酸配管33、43、クーラ44の詰まりを現状に比べ、削減できることが想定できる。これにより、詰まりの補修作業や補修費用の削減ができる。
(3)さらに、排ガスへ循環液を吹きかけることにより、排ガス中に含まれたSe、Pb、Au、Ag等の有価金属はその他のダストとともに循環液に懸濁し、その後塔内に堆積する。このような有価金属を塔内に堆積させたままでは、停滞金利となり、効率が悪い。本実施例の排ガス処理装置では、塔内に堆積した有価金属を含む不純物を、常時、取り出し濾過するため、従来、塔内に滞留して時間のロスを解消でき、停滞金利を低減できる。なお、不純物の回収量が年間45(t)で、回収した不純物中にSeが40重量%であるとした場合、Seの年間回収量は18(t)となる。Seの販売価格を5000円/kgとし、金利を0.85%とした場合、77万円の停滞金利を低減できることとなる。
(4)また、排ガス処理工程を停止することなく、循環液中の不純物を連続的に除去できる。従来の操業では、排ガス処理設備の不純物の取り出し作業は、自溶炉の操業と連動して稼動していたため、自溶炉の定期修理時に合わせて行なわれていたが、本発明により、自溶炉の操業に左右されることなく、不純物の連続取り出し作業が可能となり、設備の運転状況が著しく改善している。
(5)また、不純物の回収作業において、負圧密閉状態でドラム缶に詰め込むため、水銀を含む不純物粒子の飛散を防止し、作業員の水銀曝露を防止できる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例の排ガス処理装置10における装置の構成について図面を参照しつつ説明する。図3は本実施例の排ガス処理装置10の概略構成を示した説明図である。本実施例の排ガス処理装置10は、循環液の濾過装置の構成が異なる点で、実施例1の排ガス処理装置1と異なる。すなわち、自溶炉から排出されるSOガスが通過する予冷塔、洗浄塔、冷却塔の設備は実施例1の排ガス処理装置1と同様である。従って、実施例1の排ガス処理装置1と同様の構成については、図面中、同一の参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。また、処理する排気ガスも実施例と同様であり、不純物の組成も実施例1と同様である。
【0040】
本実施例の濾過装置9はフンダバック51、71、91、洗浄液を蓄えた濾布逆洗浄水タンク100を備えている。フンダバック51、71、91は実施例1で説明したフンダバック51と同様の構成をしている。フンダバック51には、洗浄塔3の下部に接続し、洗浄塔3の下部に溜まった循環液が循環する配管6が接続している。また、フンダバック51には、濾布逆洗浄水タンク100に接続し、濾布逆洗浄水タンク100内の濾布逆洗浄水をフンダバック51へ供給する配管101が接続している。
【0041】
フンダバック51は、洗浄塔3の下部に溜まった不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過し、不純物を循環液から分離する。濾過後の循環液は配管6を通り洗浄塔3へ戻る。フンダバック51内の濾物を取り除く場合には、ポンプ61を停止し、洗浄塔3からの循環液の取り込みを中断する。そして、濾布逆洗浄水タンク100内の濾布逆洗浄水を配管101に配置された洗浄液ポンプ102の圧送によりフンダバック51内へ送る。濾布逆洗浄水タンク100内の濾布逆洗浄水はフンダバック71により濾過された循環液の一部を溜めたものである。また、フンダバック51により濾過された循環液を濾布逆洗浄水として濾布逆洗浄水タンク100に溜めてもよい。
【0042】
こうしてフンダバック51に供給された洗浄液は、フンダバック51において、出口515からパイプ513へ流しこまれる。洗浄液が通常の濾過時とは逆流することにより、一旦、フィルタエレメント512の濾布に捕集された濾物を液体スラリー状にして濾布から剥がし、濾物(不純物)の懸濁したスラリー状の洗浄液を排出口516から抜き出す。このように、フンダバック51において分離した不純物をスラリー化する際、フンダバック51、71で濾過した濾液を供給することができる。なお、通常の濾過時と濾物回収時との循環液の流れは、三方弁などを用いて流路を切り替えることにより制御できる。
【0043】
排出口516から抜き出された、不純物が懸濁した洗浄液は、濾物タンク92へ送られ、一旦、濾物タンク92内に蓄えられる。濾物タンク92内の不純物が懸濁した洗浄液は適時ポンプ93によりフンダバック91へ圧送され、フンダバック91において、濾過される。濾過した後の濾液は配管94を通り、洗浄塔3へ戻される。一方、フンダバック91で洗浄液から除去した濾物は、空気乾燥後にエアを逆流(バックブロー)させて固形状にした後、フンダバック91下部に配置したドラム缶詰め設備95において、ドラム缶内に回収し、脱水銀工程へ送られる。この濾物のドラム缶詰め作業は、負圧密閉状態で行われる。また、エアの代わりに、濾布逆洗浄水タンク100から濾布逆洗浄水を供給し、逆洗してスラリー状で回収することもできる。
【0044】
フンダバック71には、冷却塔4の下部に接続し、冷却塔4の下部に溜まった循環液が循環する配管8が接続している。また、フンダバック71には、濾布逆洗浄水タンク100に接続し、濾布逆洗浄水を供給する配管101が接続している(図3で100→101への配管がありません。修正ください → 修正しました)。
【0045】
フンダバック71は、冷却塔4の下部に溜まった不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過し、不純物を循環液から分離する。濾過後の循環液は配管8を通り洗浄塔3へ戻る。フンダバック71内の濾物を取り除く場合には、ポンプ81を停止し、冷却塔4からの循環液の取り込みを中断する。そして、濾布逆洗浄水タンク100内の洗浄液を配管101に配置された洗浄液ポンプ102の圧送によりフンダバック71内へ送る。これにより、洗浄液が通常の濾過時とは逆流し、濾物を液体スラリー状にしてフンダバック71から取り出す。フンダバック71から取り出した洗浄液は、フンダバック91へ送られる。なお、フンダバック91における処理は、上記の通りである。
【0046】
以上より、排ガス処理装置10では、洗浄塔3の底部に溜まる不純物がフンダバック51とフンダバック91とを用いて段階的に濾過される。同様に、冷却塔4の底部に溜まる不純物はフンダバック71とフンダバック91とを用いて段階的に濾過される。このような段階的な濾過を実施することにより、1段目の濾過、すなわち、フンダバック51における濾過と、フンダバック71における濾過では、洗浄塔3、及び冷却塔4を循環する循環液、すなわち、配管6及び配管8を循環する循環液中から不純物を除去し、濾過することにより、スプレー21、31、41、充填部42、循環酸配管43やクーラ44の詰まりを抑制する。一方、2段目の濾過、すなわち、フンダバック91における濾過は、排ガス処理装置10から不純物を取り除く。このように、濾過器を直列に繋げて分業することにより、1段目のフンダバックにおける濾布の詰まりを抑制して、濾過処理能力を向上する。
【0047】
上記の構成の排ガス処理装置10のテスト機を用いた濾過試験では、フンダバック51、フンダバック71において310(L/min)の濾過速度が得られた。また、濾過能力について言及すると、フンダバック51では濾過前の不純物濃度150〜270(mg/L)を濾過後0〜50(mg/L)まで低下する。また、フンダバック71では濾過前の不純物濃度60〜80(mg/L)を濾過後0〜50(mg/L)まで低下する。
【0048】
このような排ガス処理装置10は、ポンプ61、81、93の運転と停止とを切り替えることにより、循環液を連続して濾過することもできるし、間欠的に濾過することもできる。フンダバック51、71のスラリー排出タイミングは、濾布に捕集された濾物の厚さにより決定し、スラリー排出を行う時の厚さは5〜20(mm)の範囲で選択する。
【0049】
フンダバック51の運転サイクルは、(1)濾布に付着する濾物が所定の厚さとなるまで濾過を継続(約5h)、(2)スラリー排出(約0.6h)、(3)再度濾過実行、の繰り返しである。フンダバック71の運転サイクルも同様であるが、処理する循環液中の不純物濃度が低いため、フンダバック51の運転と比較して濾過時間が長くなる。
【0050】
一方、フンダバック91の運転サイクルは、(1)濾布に付着する濾物が所定の厚さとなるまで濾過を継続(約0.7h)、(2)濾物排出(約0.7h)、(3)スラリー液の補充(約2h)、(4)再度濾過実行、の繰り返しである。従って、スラリー液の補充時に待機する間欠運転となる。
【0051】
次に、排ガス処理装置10の奏する効果について説明する。排ガス処理装置10は濾過装置9が組み込まれたことにより、以下の効果を奏する。
【0052】
(1)不純物の抜き出し作業が削減されるため、作業員の作業負担を軽減するとともに、水銀曝露防止のための環境安全維持費用を削減できる。
(2)本実施例では、濾過装置9により、常時、不純物が濾過できる。このため、循環液中の不純物濃度が現状60〜270mg/Lのところ50mg/L以下に低減できる。これにより、スプレー21、31、41、充填部42、循環酸配管33、43、クーラ44の詰まりを現状に比べ、1/3程度に削減できることが想定できる。この結果、詰まりの補修作業や補修費用の削減ができる。
(3)さらに、本実施例の排ガス処理装置では、塔内に堆積した有価金属を含む不純物を、常時、取り出し濾過するため、従来、塔内に滞留して時間のロスを解消でき、停滞金利を低減できる。
(4)また、排ガス処理工程を停止することなく、循環液中の不純物を連続的に除去できる。従来の操業では、排ガス処理設備の不純物の取り出し作業は、自溶炉の操業と連動して稼動していたため、自溶炉の定期修理時に合わせて行なわれていたが、本発明により、自溶炉の操業に左右されることなく、不純物の連続取り出し作業が可能となり、設備の運転状況が著しく改善している。
(5)また、不純物の回収作業において、負圧密閉状態でドラム缶に詰め込むため、水銀を含む不純物粒子の飛散を防止し、作業員の水銀曝露を防止できる。
(6)濾物の回収を段階的に実行することにより、1段目のフンダバックで分離した濾物をスラリー化して2段目のフンダバックで濾過し、回収することにより、濾過装置全体としての濾過処理能力を向上できる。例えば、1機のみで濾過する処理能力に対して、10倍ほどの慮離能力が得られる。すなわち、10機のフンダバックを必要とするところ、2機のフンダバックで処理が可能であるため、費用も1/5にすることができる。本発明では、2段目のフンダバックが2系統の処理を担当することから、20機分を3機で処理するため、費用も3/20としてコストを削減できる。
【0053】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0054】
1、10 排ガス処理装置
2 予冷塔
3 洗浄塔
4 冷却塔
5、7、9 濾過装置
51、71、91 フンダバック
52、72、95 ドラム缶詰め設備
92 濾物タンク
100 濾布逆洗浄水タンク
6、8 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉から排出された排ガスへ循環液を噴射することにより、排ガス中から粒子状の不純物を取り除き、前記不純物が懸濁した循環液を下部に溜める塔と、
前記塔の下部に溜まった循環液が循環する配管と、
前記配管が接続して、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過することにより、循環液中から前記不純物を連続的に取り除き、取り除いた前記不純物を容器詰めする濾過装置と、
を備えた非鉄製錬設備における排ガス処理装置。
【請求項2】
排ガス処理の操業中に前記濾過装置へ前記循環液を取り込む請求項1記載の非鉄製錬設備における排ガス処理装置。
【請求項3】
前記濾過装置は、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過し、前記不純物を分離する第1濾過器と、
前記第1濾過器において分離した前記不純物をスラリー状にして回収した液体を濾過し、前記不純物を分離する第2濾過器とを備え、
前記第2濾過器で分離した前記不純物を容器詰めする請求項1または2記載の非鉄製錬設備における排ガス処理装置。
【請求項4】
前記第1濾過器において処理された濾液を貯蔵する貯蔵槽を備え、
前記貯蔵槽に貯蔵した濾液を前記第1濾過器へ供給し、前記第1濾過器において分離された前記不純物をスラリー化する請求項3記載の非鉄製錬設備における排ガス処理装置。
【請求項5】
前記濾過装置における容器詰め作業は負圧密閉状態で行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の非鉄製錬設備における排ガス処理装置。
【請求項6】
前記排ガスは銅製錬の硫酸工程における排ガスである請求項1乃至5のいずれか一項記載の非鉄製錬設備における排ガス処理装置。
【請求項7】
前記粒子状の不純物には有価金属が含まれ、前記容器中に前記有価金属を回収する請求項1乃至6のいずれか一項記載の非鉄製錬設備における排ガス処理装置。
【請求項8】
炉から排出された排ガスへ循環液を噴射することにより、排ガス中から粒子状の不純物を取り除き、前記不純物が懸濁した循環液を溜める第1工程と、
前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過することにより、循環液中から前記不純物を連続的に取り除く第2工程と、
循環液から取り除いた前記不純物を容器詰めする第3工程と、
を備えた非鉄製錬設備における排ガス処理方法。
【請求項9】
前記第2工程は排ガス処理の操業中に実行される請求項8記載の非鉄製錬設備における排ガス処理方法。
【請求項10】
前記第2工程は、前記不純物が懸濁した循環液を取り込み濾過し、前記不純物を分離する第4工程と、
前記第4工程において分離した前記不純物をスラリー状にして回収した液体を濾過し、前記不純物を分離する第5工程と、を備え、
前記第3工程は、前記第5工程で分離した不純物を容器詰めする請求項8または9記載の非鉄製錬設備における排ガス処理方法。
【請求項11】
前記第5工程は、前記第4工程において処理された濾液を供給して、前記第4工程で分離した前記不純物をスラリー化する請求項10記載の非鉄製錬設備における排ガス処理方法。
【請求項12】
前記第3工程は、負圧密閉状態で行われる請求項8乃至11のいずれか一項記載の非鉄製錬設備における排ガス処理方法。
【請求項13】
前記排ガスは銅製錬の硫酸工程における排ガスである請求項8乃至12のいずれか一項記載の非鉄製錬設備における排ガス処理方法。
【請求項14】
前記粒子状の不純物には有価金属が含まれ、前記容器中に前記有価金属を回収する請求項8乃至13のいずれか一項記載の非鉄製錬設備における排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−202934(P2011−202934A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73247(P2010−73247)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(500483219)パンパシフィック・カッパー株式会社 (109)
【Fターム(参考)】