説明

非鉄金属溶湯の浮滓処理装置

【課題】非鉄金属の溶融炉で生じた浮滓を攪拌破砕し、該浮滓に混入している非鉄金属溶融物を浮滓破砕物から比重分離して回収するのに用いる浮滓処理装置として、装置主要部の共通化により、溶融炉の周辺状況の通路状況の違いに広く対応できると共に、量産による製作コストの低減が可能になるものを提供する。
【解決手段】浮滓を収容する浮滓処理槽10と、浮滓処理槽10内に配置する攪拌羽根2と、攪拌羽根2の回転駆動手段3と、比重分離した非鉄金属溶融物を流出させるために浮滓収容槽10を傾かせる傾動手段4A〜4Cとを備え、浮滓処理槽10の上縁部1bに側方へ突出する排出口1cが形成され、回転駆動手段3がフォークリフト用爪挿入部51を有する台座5Ap5Bに取り付けられ、台座5A,5B上に浮滓処理槽10が着脱可能で且つ水平方向の向きを変更可能に設置されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムやその合金等の非鉄金属の溶融炉で生じる浮滓に混入した非鉄金属溶融物を比重分離して回収するのに用いる浮滓処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アルミニウムやその合金等の非鉄金属を鉱石から精錬して製出したり、非鉄金属の屑や非鉄金属を含む廃材から非鉄金属を取り出す場合、高温の炉中で非鉄金属を溶融させるが、その溶融物の表面部に非金属物質(主として酸化物)がドロス、ノロ、スラグ等と称される浮滓として生成する。しかして、この浮滓中には非鉄金属の溶融物が数%から数十%程度混入しているため、資源の有効利用と経済性の両面より、該浮滓から非鉄金属溶融物を回収することが重要になる。
【0003】
このように浮滓から非鉄金属溶融物を回収する手段として、溶融炉から掻き出した浮滓を多孔底板の分離槽に投入して静置し、非鉄金属溶融物を浮滓との比重差で分離して底板の孔から落下させる静置分離方式(例えば特許文献1)、同浮滓を多孔底板の圧搾室に収容し、圧搾して非鉄金属溶融物を絞り取る圧搾抽出方式(例えば特許文献2)、同浮滓を処理槽に収容し、上方に待機していた攪拌羽根を下降させて処理槽内に突入させ、該攪拌羽根の回転によって浮滓を攪拌し、分離沈降した非鉄金属溶融物を処理槽の底孔から流出させる攪拌分離方式(例えば特許文献3)等が採用されていた。
【0004】
しかるに、前記の静置分離方式では、概して浮滓が塊状に固まった状態にあるため、含まれる非鉄金属溶融物を充分に分離できず、回収率が悪いという欠点があった。また、前記の圧搾抽出方式では、装置構成が複雑で且つ大掛かりになり、設備コストが非常に高く付く上、少量ずつしか圧搾を行えず、処理効率に劣るという難点があった。一方、前記従来の攪拌分離方式では、浮滓の破砕によって非鉄金属溶融物が比重分離し易くなるが、攪拌羽根の駆動部が高熱で劣化するのを抑えるため、処理槽の上方側に攪拌操作時以外は攪拌羽根を上方へ退避させる昇降機構を設けることから、設備コストが高く付く上、昇降機構が嵩張るので小型溶融炉用の処理装置には適用困難であった。
【0005】
そこで、近年において、浮滓処理槽内に攪拌羽根を配置し、その回転駆動機構を設置した台座上に該浮滓処理槽を設置すると共に、傾動手段を設けた台車上に該浮滓処理槽を台座ごと傾動可能に枢支し、浮滓処理槽内に投入した浮滓を攪拌羽根で破砕し、比重分離した非鉄金属溶融物を処理槽の傾動操作で抽出回収するようにした浮滓処理装置が提案されている(特許文献4)。この浮滓処理装置では、浮滓処理槽に収容した浮滓の高熱が回転駆動機構に伝わりにくく、装置全体が優れた耐久性を発揮し、また攪拌羽根の昇降機構を要さず、処理槽の上方に嵩張る付属物がないから、設備コストが低減されると共に小型溶融炉用として高い適性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−252547号公報
【特許文献2】特開平10−195553号公報
【特許文献3】特開平9−87764号公報
【特許文献4】特開2009−293080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非鉄金属溶融炉の周辺状況は工場によって様々であり、通路が狭い上に曲がっていたり、浮滓の受入れ位置と回収した非鉄金属溶融物の回収位置とで高低差があったり、両位置間の距離が大きかったり、更には溶融物回収位置の移動や変更を要することも多い。従って、前記提案の浮滓処理装置では、傾動手段を設けた台車幅が大き過ぎて浮滓の受入れ位置へ搬入不能であったり、該受入れ位置と溶融物回収位置との間の移動が困難になる場合が多々あった。一方、これに対処するには、適用する工場毎に浮滓処理装置の構成を溶融炉の周辺状況や通路状況等に応じて設定する必要があるが、この場合には浮滓処理装置全体が適用工場毎の専用仕様になることから、製作コストが非常に高く付くという問題がある。
【0008】
本発明は、上述の情況に鑑み、非鉄金属の溶融炉で生じた浮滓を攪拌破砕し、該浮滓に混入している非鉄金属溶融物を浮滓破砕物から比重分離して回収するのに用いる浮滓処理装置として、浮滓処理槽内に攪拌羽根が配置し、その回転駆動機構を設置した台座上に該浮滓処理槽を設置する構造であって、装置主要部の共通化により、溶融炉の周辺状況の通路状況の違いに広く対応できると共に、量産による製作コストの低減が可能になるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る非鉄金属溶湯の浮滓処理装置は、図面の参照符号を付して示せば、非鉄金属の溶融炉で生じた浮滓を攪拌破砕し、該浮滓に混入している非鉄金属溶融物を浮滓破砕物から比重分離して回収するのに用いる浮滓処理装置であって、上方に開放して浮滓を収容する浮滓処理槽10と、該浮滓処理槽10内に配置する攪拌羽根2と、該攪拌羽根2の回転駆動手段3と、比重分離した非鉄金属溶融物を流出させるために浮滓収容槽10を傾かせる傾動手段4A〜4Cとを備え、浮滓処理槽10の上縁部1bに側方へ突出する排出口1cが形成されると共に、回転駆動手段3がフォークリフト用爪挿入部51を有する台座5A,5Bに取り付けられ、この台座5A,5B上に浮滓処理槽10が着脱可能で且つ水平方向の向きを変更可能に設置されてなることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、上記請求項1の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置において、浮滓処理槽10の槽本体1の底部中央位置に直立する筒状部1aが一体形成されると共に、台座5A,5Bに設けた回転駆動手段3の回転駆動軸30が該筒状部1aの内側に非接触状態で同心状に突入配置し、この筒状部から突出したは該回転駆動軸30の頂部30aに、攪拌羽根2の取付基部20が相対回転不能に連結されてなるものとしている。
【0011】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置において、台座5Aに車輪52,53が取り付けられて台車8Aを構成するものとしている。
【0012】
請求項4の発明は、上記請求項1又は2の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置において、浮滓処理槽10を設置した台座5Bがレール軌道Rを走行する台車8B上に離脱可能に搭載されてなるものとしている。
【0013】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかの非鉄金属溶湯の浮滓処理装置において、溶融物回収位置に傾動手段4Aとしての傾動枠41とその傾動機構(パワーシリンダ42)が設置され、該傾動枠41に浮滓処理槽10を設置した台座5Aをフォークリフトを介して載せ、該傾動枠41の傾動によって浮滓処理槽10を傾けることにより、抽出された非鉄金属溶融物を排出口1cから流出させるように構成されてなる。
【0014】
請求項6の発明は、上記請求項1〜4のいずれかの非鉄金属溶湯の浮滓処理装置において、傾動手段4Bは回動可能な爪保持部を有する回転式フォークリフトからなり、浮滓処理槽10を設置した台座5A,5Bを該回転式フォークリフトで持ち上げた状態で、その爪保持部の回動によって浮滓処理槽10を傾けることにより、抽出された非鉄金属溶融物を排出口1cから流出させるように構成されてなる。
【0015】
請求項7の発明は、上記請求項1又は2の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置において、レール軌道Rを走行する台車8Cに傾動手段4Cの傾動機構(パワーシリンダ42)及び処理槽枢支部(枢軸43,支柱44)が搭載され、該処理槽枢支部にて浮滓処理槽10を台座5Bごと枢支した状態で、傾動機構によって浮滓処理槽10を傾けることにより、抽出された非鉄金属溶融物を排出口1cから流出させるように構成されてなる。
【0016】
請求項8の発明は、上記請求項7の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置において、台車8Cが、浮滓処理槽10を設置した台座5Bを搭載する主台車80と、傾動手段4Cの傾動機構及び処理槽枢支部を搭載した副台車81,82とに分割構成され、該主台車80に対して副台車81,82が連結及び切り離し可能に構成されてなる。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。請求項1の発明に係る浮滓処理装置によれば、攪拌羽根2の回転駆動手段3及びフォークリフト用爪挿入部51を有する台座5A,5B上に、攪拌羽根2を内蔵する浮滓処理槽10が設置される構成であり、台座5A,5B自体は傾動手段がないので幅狭でコンパクト化でき、該台座5Aに車輪を取り付けて台車8Aにしたり、台座5Bをレール軌道を走行する台車8Bに載せたりする形で、非鉄金属溶融炉前の浮滓受入れ位置と移載位置との間を移動させ、該移載位置と非鉄金属溶湯の回収位置との間はフォークリフトによって移動させることができる。従って、溶融炉周辺側の通路が狭い場合や、浮滓受入れ位置から溶融物回収位置までの通路間に段差がある場合でも支障なく対応できる。また、浮滓受入れ位置から溶融物回収位置までの通路幅が広い上に段差のない場合においても、同じ浮滓処理槽10及び台座5Bを用い、両者を組み付けた状態で傾動手段4Cを搭載した大型の台車8C上に載せ、該台車8Cを浮滓受入れ位置と溶融物回収位置との間のレール軌道上を移動させることができる。
【0018】
一方、溶融物回収位置では傾動手段4A〜4Cによって浮滓処理槽10を傾けることで比重分離した非鉄金属溶湯を流出させるが、該浮滓処理槽10の上縁部1bから側方突出する排出口1cが下になるように傾動させる必要があるが、台座5A,5Bにおけるフォークリフト用爪挿入部51が臨む側を後方として、傾動手段4A〜4Cの種類によって傾動が前後方向になる場合と左右方向になる場合とがある。しかるに、浮滓処理槽10は台座5A,5Bに対して水平方向の向きを変更可能に設置できるから、傾動手段4A〜4Cによる傾動方向の違いに応じて、排出口1cの向きを前方や左右一方に設定できる。従って、本発明の浮滓処理装置では、浮滓受入れ位置から溶融物回収位置までの移動方式の違いに加え、傾動手段4A〜4Cの違いがあっても、同じ構成の浮滓処理槽10及び台座5A,5Bを共用でき、量産による製作コストの低減が可能になる。
【0019】
なお、この浮滓処理装置では、浮滓処理槽10内に投入した浮滓が攪拌羽根2で破砕されるため、非鉄金属溶湯が比重分離し易く、それだけ回収効率が向上する。また、台座5A,5B側に該攪拌羽根2の回転駆動手段3が設けられるから、浮滓の高熱が回転駆動機構に伝わりにくく、その熱劣化が抑えられて装置全体の耐久性向上に繋がる。
【0020】
請求項2の発明によれば、浮滓処理槽10の槽本体1の底部中央部位に直立する筒状部1aの内側に、台座5A,5Bに設けた回転駆動手段3の回転駆動軸30が非接触状態で同心状に突入配置し、この筒状部から突出した該回転駆動軸30の頂部30aに、攪拌羽根2の取付基部20が連結されているから、浮滓処理槽10内の浮滓から回転駆動機構への伝熱がより少なくなり、該回転駆動機構の熱劣化がより抑制される。
【0021】
請求項3の発明によれば、台座5Aが車輪52,53付きの台車8Aを構成するから、浮滓受入れ位置と移載位置の間における浮滓処理槽10の移動手段を含む装置構成が簡素になり、それだけ製作コストが低減する。
【0022】
請求項4の発明によれば、浮滓処理槽10を設置した台座5Bは、レール軌道Rを走行する台車8B上に離脱可能に搭載されているから、該台車8Bによって浮滓受入れ位置と移載位置の間を移動させ、移載位置と溶融物回収位置との間をフォークリフトによって移動させることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、溶融物回収位置に傾動手段4Aとしての傾動枠41とその傾動機構(パワーシリンダ42)が設置され、該傾動枠41に浮滓処理槽10を設置した台座5Aをフォークリフトを介して載せ、該傾動枠41の傾動によって浮滓処理槽10を傾けることにより、抽出された非鉄金属溶融物を排出口1cから流出させるようにしているから、抽出回収の操作を機械的に能率よく行える。また、溶融炉が複数基であったり大型である場合に、浮滓処理槽10を載せた台車8Aの複数台を稼働させ、これらによる非鉄金属溶融物の抽出回収を単一の傾動手段4で順次に行うことも可能となる。
【0024】
請求項6の発明によれば、傾動手段4Bとして用いる回転式フォークリフトを、上記移載位置と溶融物回収位置との間の移動手段に兼用できるから、浮滓処理装置全体としての装置構成が極めて簡素になり、設備コストを大きく低減できるという利点がある。
【0025】
請求項7の発明によれば、浮滓受入れ位置で溶融炉から掻き出した浮滓を浮滓処理槽1内に投入後、該処理槽10を載せた台車8Cがレール軌道R上を溶融物回収位置へ移動する間に、攪拌羽根2を回転駆動して非鉄金属溶融物の比重分離を行い、該台車8Cが溶融物回収位置へ到着した際に浮滓処理槽10を傾動させて非鉄金属溶融物の抽出回収できるから、該溶融物の回収を非常に能率よく行えると共に、台車8Cの走行を含めた処理工程全体の完全自動化も容易になる。
【0026】
請求項8の発明によれば、レール軌道R上を移動する台車8Cは、浮滓処理槽10を設置した台座5Bを搭載する主台車80と、傾動手段4Cの傾動機構及び処理槽枢支部を搭載した副台車81,82とに分割構成され、該主台車80に対して副台車81,82が連結及び切り離し可能であるから、その連結状態で浮滓受入れ位置と溶融物回収位置の間を移動して傾動手段4Cによる非鉄金属溶融物の抽出回収を行えると共に、主台車80だけを浮滓受入れ位置と前記移載位置の間の移動に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係る浮滓処理装置の装置本体部の平面図である。
【図2】同装置本体部の側面図である。
【図3】同装置本体部の背面図である。
【図4】同装置本体部の縦断側面図である。
【図5】同装置本体部を構成する浮滓処理槽と攪拌羽根と台車とを分離して示す側面図である。
【図6】同浮滓処理装置の攪拌羽根を示し、(a)は平面図、(b)は一方向から見た側面図、(c)は他方向から見た半側面図である。
【図7】同浮滓処理装置の浮滓処理槽に抽出ガイド部材及び灰排出ガイド板を取り付けた状態を示し、(a)は半部の平面図、(b)は縦断背面図、(c)は(a)のX−X線の断面矢視図である。
【図8】同浮滓処理装置における傾動手段の背面図である。
【図9】同傾動手段による傾動操作を示す側面図である。
【図10】同浮滓処理装置における回転式フォークリフトによる傾動操作を示す背面図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係る浮滓処理装置における装置本体部及び台座をレール軌道を走行する台車に載せた状態を示す側面図である。
【図12】同装置本体部を構成する浮滓処理槽と攪拌羽根と台座とを分離して示す側面図である。
【図13】本発明の第三実施形態に係る浮滓処理装置の平面図である。
【図14】同浮滓処理装置の側面図である。
【図15】同浮滓処理装置の傾動手段による傾動操作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る非鉄金属溶湯の浮滓処理装置の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1〜図10は第一実施形態、図11,図12は第二実施形態、図13〜図15は第三実施形態であり、これら実施形態で共通する構成部分については同一符号を附している。
【0029】
第一実施形態の浮滓処理装置の装置本体部M1は、図1〜図3に示すように、浮滓処理槽10がハンドルバー17を有する手押し式の台車8Aに搭載されている。その浮滓処理槽10は、図4に示すように、縦円筒形の外殻11の内側に、上方に開放して内部に攪拌羽根2を有する平面視略円形の槽本体1が配置し、該槽本体1の外面側と外殻11を構成する外周カバー板11a及び下面カバー板11bとの間に、セラミックファイバーからなる断熱材12が装填されている。また、槽本体1は、FC20の如き鋳鉄製であり、底部中央位置に直立した筒状部1aが一体形成されると共に、周方向外側へ張出する上縁部1bの一カ所に、前方へ突出した樋状の排出口1cが形成されている。そのそして、該槽本体1の底部には、予熱機構13を構成する複数本のシーズヒーター13aが該槽本体1の外周面に接して周回するように配置している。
【0030】
しかして、台車8Aは、型鋼材50aを組み付けてなる略矩形枠状の台座5Aの前部に左右一対の固定車輪52、同後部に左右一対の自在車輪53をそれぞれ取付けたものである。その台座5Aは、図5でも示すように、中央部に攪拌羽根2の回転駆動手段3の原動部である駆動モータ31及びギヤボックス32が固設され、該ギヤボックス32の取付枠部50b上に立設された回転軸保持筒34に、該ギヤボックス32から垂直に立ち上がる回転駆動軸30が上方突出状態で回転自在に抱持されている。また、台座5Aの左右両側には横長の角筒部材54が各々前後2カ所の角環状の取付板55を介して固設され、各筒部材54は内部が上下二段に区割されて前後端で日の字形に開口してフォークリフト用爪挿入部51を構成している。なお、台座5Aの後端左右両側には、パイプ材からなるハンドルバー17の下端部を着脱自在に挿嵌させる縦筒状のハンドル取付部56が形成されている。
【0031】
一方、浮滓処理槽10の槽本体1の筒状部1aは、内側が上下方向に透通しており、台座5A上に浮滓処理槽10を設置した状態で、台座5A側の直立した回転駆動軸30及び回転軸保持筒34とが非接触状態で同心状に突入配置する。そして、筒状部1aは頂端が槽本体1の上縁部1bよりも若干低位に位置するが、回転駆動軸30の上端部30aは筒状部1aから上縁部1bを越える高さに突出し、この上端部30aに攪拌羽根2の短円筒状の取付基部20が外嵌すると共に、該取付基部20が径方向に貫通する連結ピン33によって回転駆動軸30に連結されている。この回転駆動軸30の下端部はギヤボックス32内に位置してギヤ機構(図示省略)に組み込まれており、駆動モータ31の駆動によって攪拌羽根2が回転駆動軸30と一体に回転する。
【0032】
なお、回転軸保持筒34の頂端は筒状部1aの頂端よりも低位にあり、この回転軸保持筒34と該筒状部1aの内周との間、ならびに該回転軸保持筒34から突出した回転駆動軸30の上部側と同筒状部1aの内周との間にも、前記断熱材12が介在している。図4で示すLは槽本体1内に収容する浮滓の最大レベルを示しており、筒状部1aの頂端は該最大レベルLよりも高位になる。
【0033】
攪拌羽根2は、全体がSS−400等の鋼材製であり、図6(a)〜(c)で示すように、短円筒状の取付基部20と、その外周の相互に120°で等配する3カ所に各々上端部を溶接固着して垂下する縦角棒体21a〜21cと、これら縦角棒体21a〜21cに基端側を溶接固着して槽本体1の半径方向に沿って斜め下向きに張出した複数本(図では計5本)の角棒状羽根片22a〜22eと、縦角棒体21a及び21bの各下端部に一体化した三角羽根片23a,23bと、縦角棒体21a〜21cを下部側で連結する補強リング24とで構成されている。そして、図6(c)に示すように、縦角棒体21a〜21cと槽本体1の筒状部1aの外周面との間には間隙t1が設定されると共に、取付基部20の下端面と該筒状部1aの頂端との間にも間隙t2が設定され、もって攪拌羽根2全体が該槽本体1に対して非接触状態に保持されるようになっている。なお、図中の25は取付基部20上に溶接固着されて中心孔20aの上端開口を塞ぐ蓋板、20bは取付基部20に設けたピン挿通孔である。
【0034】
攪拌羽根2の角棒状羽根片22a〜22eは、同じ傾斜角度で回転軸心から3方向に放射状に配置しているが、相互に配置高さが異なると共に、その高位側から順次交互に、角棒状の一稜線を上向きにする姿勢と一側面を上向きにする姿勢とに向きを変えている。また、三角羽根片23a,23bは、上縁が角棒状羽根片22a〜22eと同じ傾斜角度で斜め下向きになると共に、下縁が槽本体1の内底面に沿う円弧状をなすが、相互の上縁高さが異なっている。そして、これら羽根片22a〜22e,23a,23bは、これらの回転軌道を合わせた縦断面がほぼ上下に隙間なく連続するように設定されている。
【0035】
しかして、浮滓処理槽10は、下面側の周辺部で台座5Aに対してねじ止め固定されるが、その固定に際して水平方向の向きを90°単位で変更可能であり、これによって台座5Aのハンドルバー17側のフォークリフト用爪挿入部51を後方として、排出口1cの突出方向を前方と左右一方のいずれにも設定できる。
【0036】
なお、浮滓処理槽10上部には、図7(a)〜(c)で詳細に示すように、左右一対の帯板状のガイド取付金具16が排出口1cの両側位置で相互にハの字形に配置するように固着されており、槽本体1の上縁部1bと各ガイド取付金具16との間に構成される内向きの係止溝16aを利用して、左右一対の垂直な灰排出ガイド板7が装着されると共に、両灰排出ガイド板7を介して更に抽出ガイド部材6が取り付けられている。また、浮滓処理槽10の開口部は、抽出ガイド部材6の天板部61と保温カバー9とでほぼ封鎖されている。図2における符号14はシーズヒーター13の端子ボックス、符号15は外部電源接続用のコンセントボックスである。
【0037】
左右一対の灰排出ガイド板7は、水平連結バー71とその両端近傍より前方へ張出するブラケット板72とを介して、相互にハの字形に配置した状態で一体的に連結されて排出ガイド部材70を構成している。そして、各灰排出ガイド板7の下端部には、ほぼ全長にわたる折り曲げで外向きに張出した係止突縁7aと、内面側に固着した上下2枚の帯板片7b間で構成する係止溝73とが設けてあり、両係止突縁7aを図7(c)の如く槽本体1側の両係止溝13aに挿嵌することで、浮滓処理槽10に前方及び上方へ離脱不能に係止される。また、抽出ガイド部材6は、略台形の天板部61の下面側に、前方へ凸状に湾曲したパンチングメタルからなる多孔プレート61が該天板部61の前縁寄りに位置して垂設されると共に、該天板部61の上面側の中央位置に下向きコ字形の把手62が固着されている。しかして、この抽出ガイド部材6は、浮滓処理槽10に先に装着した排出ガイド部材70の左右の係止溝73に、天板部61の左右側縁部を挿嵌することにより、当該処理槽10に前方及び上方へ離脱不能に取り付けられ、この取付け状態で多孔プレート61が槽本体1の排出口1cの内側に近接して配置する。
【0038】
保温カバー9は、図1〜図3に示すように、槽本体1の開口径より若干大きい外径を有する切欠円形平板部91と、該平板部91の中央で上方へ膨出した六角形の中央膨出部92と、同平板部91の切欠側縁91aに平行する径方向に沿って上方へ膨出した角筒状の径方向膨出部93とで構成され、径方向膨出部93に左右一対の下向きコ字形の把手94が固着されている。しかして、この保温カバー9は、切欠円形平板部91の周縁が槽本体1の上縁部1bに載る形で被せることにより、抽出ガイド部材6の天板部61と合わせて該槽本体1の開口部全体をほぼ遮蔽する。なお、槽本体1の上縁部1bより高く突出した攪拌羽根2の中心側は、該保温カバー9の中央膨出部92内に納まることになる。
【0039】
この浮滓処理装置は、上述した浮滓処理槽10及び台車8Aからなる装置本体部M1と、溶融物回収位置において浮滓処理槽10を傾けて比重分離した非鉄金属溶融物を抽出回収するための傾動手段とで構成される。その傾動手段としては、図8及び図9に例示する傾動手段4Aのように傾動枠41をパワーシリンダ42で傾動させる方式や、図10で例示する傾動手段4Bのように回動可能な爪保持部を有する回転式フォークリフト(車体の図示は省略)を用いる方式等、種々の方式を採用できる。しかして、傾動手段の種類によって傾動が前後方向になる場合と左右方向になる場合とがあるが、既述のように台座5Aに対して浮滓処理槽10の水平方向の向きを変更できるから、傾動方向に応じて排出口1cが傾動時の下方側になるように設定できる。
【0040】
図8及び図9に示す傾動手段4Aの傾動枠41は、チャンネル材やアングル材の組み付けによって上方及び後方に開放した角籠形に構成され、その内側下部の左右両側には段状の台車受け部41aが設けてある。そして、該傾動枠41の上部左右両側が当該傾動枠41側に固定している枢軸43を介して左右の支柱44の頂部に枢支され、もって両支柱44間に前後傾動自在に懸架されている。また、パワーシリンダ42は、モーター40にて駆動する電動ボールねじ方式であり、その枢支基台45に前後揺動自在に枢支されると共に、その伸縮ロッド42aの先端部が片側の枢軸43の外端部に固着されたレバー46の先端にピン42bを介して枢着連結されており、伸縮ロッド42aの伸長状態で傾動枠41を水平姿勢に保持すると共に、該伸縮ロッド42aの収縮状態で傾動枠41を前傾姿勢にするように設定されている。
【0041】
上記構成の浮滓処理装置によってアルミニウムやその合金の如き非鉄金属溶湯の浮滓処理を行うには、まず、図1〜図3の如く浮滓処理槽10上に灰排出ガイド部材70と抽出ガイド部材6及び保温カバー9を装着した状態で、予熱機構13のシーズヒーター13aに通電することにより、槽本体1を所定温度まで予熱しておく。この予熱度合は対象とする非鉄金属の種類によって異なるが、アルミニウムやその合金では一般的に槽本体1の内底部で300〜400℃程度になるように設定するのがよく、その温度計測には放射温度計等を利用できる。
【0042】
上記予熱後にシーズヒーター13aへの通電を停止し、浮滓処理槽10を搭載した台車8Aを対象とする溶融炉(図示省略)まで運び、その掻き出し口の手前に停止させ、保温カバー9を外した上で、適当な掻き出し具で炉内の浮滓を掻き出してシュート等を介して槽本体1内に投入し、回転駆動手段3の作動によって攪拌羽根2を回転させて該浮滓を攪拌破砕する。このとき、槽本体1が予熱で高温になっているため、該槽本体1内に投入直後の浮滓が槽壁面に接触しても熱を奪われず、もって該浮滓中の非鉄金属溶融物が部分的に固化する懸念がないと共に、浮滓全体としても冷えにくくなるので以降の処理を時間的に余裕をもって行える。
【0043】
上記攪拌破砕の過程では、攪拌作用で浮滓と非鉄金属溶融物との比重分離がに進むと共に、浮滓の塊状物が破砕されることで該塊状物中に取り込まれていた溶融物も遊離し易くなり、該溶融物が沈降して槽本体1の底部に溜まってゆく。特に本実施形態では、攪拌羽根2が中心から3方向へ放射状に張出した羽根片22a〜22e,23a,23bを有し、且つこれら羽根片が相互に異なる高さで槽本体1内を回転するから、投入された浮滓を効率よく均一に且つ迅速に破砕でき、それだけ非鉄金属溶融物の比重分離が進み易く、結果として該溶融物の回収率及び処理能率が向上する。なお、アルミニウム溶湯では、アルミニウムの比重が約2.7であるのに対し、浮滓の酸化物の比重は1.37程度で、重力による分離に充分な比重差がある。
【0044】
かくして比重分離した非鉄金属溶融物の抽出回収に傾動手段4Aを利用する場合、台車8Aのハンドルバー81を取り外した状態で、台車8A(台座5A)のフォークリフト用爪挿入部87を利用し、爪保持部が昇降するだけの通常のフォークリフト(図示省略)によって後方側から該台車8Aごと浮滓処理槽10を持ち上げて溶融物回収位置へ運ぶ。そして、図8及び図9の実線で示すように、台車8Aごと水平姿勢の傾動枠41内に持ち込み、排出口1cを前向きにして台座5Aの左右両側の取付板55を台座受け部41a上に載せ、もって車輪52,53を浮かせた状態で傾動枠41に収容する。次いで、パワーシリンダ42を収縮作動させ、図9の仮想線で示すように傾動枠41を前傾させて浮滓処理槽1を台車8Aごと傾けることにより、該処理槽10の排出口1cから流出する非鉄金属溶融物を下方に配置した車輪付き受け槽47へ流し込み、最終的に冷却固化させてインゴットとして回収する。この場合、浮滓処理槽10は、図1,図2,図8,図9で示すように、予め排出口1cが前向きになる姿勢で台座5Aに取り付けておく。
【0045】
一方、抽出回収に傾動手段4Bを利用する場合は、浮滓処理槽10を図10で示すように予め排出口1cが左向きになる姿勢で台座5Aに取り付けておく。そして、収容した浮滓から非鉄金属溶融物を比重分離させたのち、やはり台車8Aのハンドルバー81を取り外した状態で、台車8Aのフォークリフト用爪挿入部51を利用し、前記の回動可能な爪保持部を有する回転式フォークリフトによって該台車8Aごと浮滓処理槽10を持ち上げて溶融物回収位置へ運び、図10の実線で示すように更に高位に持ち上げ、そのまま爪保持部を回動させて図示仮想線のように浮滓処理槽10を台車8Aごと左側へ傾けることにより、該処理槽10の排出口1cから流出する非鉄金属溶融物を下方に配置した車輪付き受け槽47へ流し込めばよい。なお、図中の符号48は、台車8Aのフォークリフト用爪挿入部51に挿入した回転式フォークリフトのフォーク爪を示す。
【0046】
上記の傾動手段4A,4Bによる抽出回収では、浮滓処理槽10を傾けた際、排出口1cの内側に配置した抽出ガイド部材6の多孔プレート61によって浮滓の排出が阻止されるから、該排出口1cより非鉄金属溶融物のみを効率よく流出させて回収できるという利点がある。
【0047】
次に、非鉄金属溶融物の回収後に浮滓処理槽10内に残った浮滓を取り出すには、該浮滓処理槽10を一旦水平姿勢に戻して抽出ガイド部材6を外した上で、再び該浮滓処理槽10を傾けることにより、浮滓を排出して所要の容器、例えば前記の車輪付き受け槽47と同型で容量の大きいものに収容すればよい。なお、この浮滓の排出に際しては、その排出促進のために攪拌羽根2を回転させるのがよい。このとき、排出口1cの両側に灰排出ガイド部材70の灰排出ガイド板7がハの字形に配置しているから、浮滓が排出口1cへ誘導され、飛散することなく能率よく排出口1cから排出される。
【0048】
この第一実施形態の浮滓処理装置では、台座5A(台車8A)には傾動手段がなく、装置本体部M1を幅狭でコンパクトに構成できるため、非鉄金属溶融炉前の浮滓受入れ位置と移載位置との間の通路が狭くても台車8Aによって支障なく移動できると共に、その移載位置の通路間に大きい高低差があってもフォークリフトによって容易に積み下ろしできる。しかも、既述のように溶融物回収位置での傾動方向が異なる場合でも、同じ浮滓処理槽10と台座5A(台車8A)を共用できるから、装置本体部M1の量産による製作コストの低減を図り得る。また、溶融炉が複数基であったり大型である場合に、浮滓処理槽10を設置した台車8Aの複数台を稼働させ、これらによる非鉄金属溶融物の抽出回収を単一の傾動手段で順次に行うことも可能となる。
【0049】
なお、例示した傾動手段4A,4Bでは、そのいずれを採用した場合でも、浮滓処理槽10を台車8Aごと傾動させて非鉄金属溶融物を抽出するから、抽出回収の操作を機械的に能率よく行えるという利点がある。そして、特に傾動手段4Bでは、傾動手段として用いる回転式フォークリフトを、上記移載位置と溶融物回収位置との間の移動手段に兼用できるから、浮滓処理装置全体としての装置構成が極めて簡素になり、設備コストを大きく低減できるという利点がある。
【0050】
一方、この実施形態では、槽本体1の底部中央から立ち上がる筒状部1aの内側に回転駆動軸30が非接触状態で配置し、該筒状部1aの頂端より突出した回転駆動軸30の頂部に攪拌羽根2が連結されているから、槽本体1内に収容した浮滓の高熱が回転駆動軸30に伝わりにくく、回転駆動手段3の各部の高熱による劣化が防止され、もって装置全体が優れた耐久性を発揮する。
【0051】
図11及び図12に示す第二実施形態の浮滓処理装置における装置本体部M2は、前記第一実施形態と同様の攪拌羽根2を内蔵する浮滓処理槽10と台座5Bとで構成され、該台座5Bに対して浮滓処理槽10の設置の向きを第一実施形態と同様に90°単位で変更可能であるが、その浮滓処理槽10を組み付けた台座5Bをレール軌道R上を走行する台車8B上に載せた状態で、浮滓受入れ位置と移載位置の間を移動させるようになっている。
【0052】
そして、台座5Bは、第一実施形態の台座5Aと同様に、中央部に回転駆動手段3の駆動モータ31及びギヤボックス32が固設され、該ギヤボックス32の取付枠部50b上に立設された回転軸保持筒34に、回転駆動軸30が上方突出状態で回転自在に抱持されると共に、左右両側に横長の固設された角筒部材57によって前後端で開口したフォークリフト用爪挿入部51を構成しているが、前部側には左右一対の柱状ブラケット58が立設されると共に、前部側の脚板59aと後部側の左右一対の支脚59bとを備えている。また、台車8Bは、前後に各左右一対の車輪81を有して台座8Bと略同じ平面サイズの平坦な台車本体8aの後方に、コントローラ18を搭載した棚台8bが張出状にねじ止めされており、該棚台8bの側端にハンドルバー17の下端部を着脱自在に挿嵌させる縦筒状のハンドル取付部84が設けてある。
【0053】
この第二実施形態の浮滓処理装置によって非鉄金属溶湯の浮滓処理を行うには、まず装置本体部M2をフォークリフト用爪挿入部51がレール軌道R1の側方に向く姿勢で台車8B上に載せ、該レール軌道R1を移動させて対象とする溶融炉(図示省略)まで運び、第一実施形態と同様に炉内の浮滓を掻き出して槽本体1内に投入する。次いで、攪拌羽根2の回転で該浮滓を攪拌破砕しながら、台車8Bを移載位置まで移動させ、その移載位置において装置本体部M2を台車8Bからフォークリフトに移載し、溶融物回収位置へ運ぶ。そして、溶融物回収位置において、傾動手段によって装置本体部M2を傾倒させることにより、比重分離した非鉄金属溶融物を排出口1cより流下させ、下方に待機する車輪付き受け槽47へ流し込んで回収する。また、この抽出回収後に槽本体1内に残る浮滓は、第一実施形態と同様に装置本体部M2を再度傾倒させて排出すればよい。
【0054】
その傾動手段としては、既述の第一実施形態と同様に、図8及び図9に例示した傾動手段4Aのように傾動枠41をパワーシリンダ42で傾動させる方式や、図10で例示した傾動手段4Bのように回転式フォークリフトを用いる方式等、種々の方式を採用できる。しかして、傾動手段の種類による傾動方向の違いに対しては、第一実施形態と同様に、台座5B上に設置する浮滓処理槽10の水平方向の向きを変更することで、傾動時に排出口1cが下方側になるように設定できる。
【0055】
図13〜図15に示す第三実施形態の浮滓処理装置は、前述した第二実施形態と同様の浮滓処理槽10及び台座5Bよりなる装置本体部M2を用いるが、傾動手段4Cを搭載した大型の台車8C上に該装置本体部M2を載せて、浮滓受入れ位置と溶融物回収位置との間を平行3本のレール軌道Rに沿って移動するようになっている。
【0056】
この場合の台車8Cは、第二実施形態における台車8Bの台車本体8aに相当する主台車80と、その前後に切り離し可能に連結された副台車81,82とに分割構成されている。そして、主台車80には、装置本体部M2が浮滓処理槽10の排出口1cをレール軌道Rの側方へ向ける姿勢で載置されている。また、前部側の副台車81には、装置本体部M2を枢支する一対の支柱44の片方が立設されている。更に、後部側の副台車82には、傾動手段4Cの傾動機構となるパワーシリンダ42とコントローラ18とが搭載されると共に、前記一対の支柱44の残る片方が立設され、後縁に設けた縦筒状のハンドル取付部84にハンドルバー17が着脱自在に取り付けられている。なお、主台車80と前部側の副台車81は左右の車輪83が右側と中間のレール軌道R上に載っているが、パワーシリンダ42を搭載して左右幅の大きい後部側の副台車81は左右の車輪83が右側と左側のレール軌道R上に載っている。
【0057】
主台車80上の装置本体部M2は台座8Bの一対の柱状ブラケット58が排出口1cの両側に配置しており、両柱状ブラケット58の上端部に挿通固着された枢軸43の両端部が両副台車81,82の支柱44の頂部に枢支されるいる。また、枢軸43の一端側にはレバー46が固着され、このレバー46の先端にパワーシリンダ42の伸縮ロッド42aの先端部がピン42bを介して枢着連結されている。しかして、装置本体部M2は、伸縮ロッド42aの伸長状態において、排出口1c側に位置した脚板59aを浮かせ、反対側の左右一対の支脚59aを主台車80上に載せた姿勢で保持される一方、該伸縮ロッド42aの収縮状態において、図15の仮想線で示すように排出口1cを下向きにした傾倒姿勢になる。
【0058】
この第三実施形態の浮滓処理装置によって非鉄金属溶湯の浮滓処理を行うには、まず装置本体部M2を載せた台車8Cを対象とする溶融炉(図示省略)まで運び、第一及び第二実施形態と同様に炉内の浮滓を掻き出して槽本体1内に投入したのち、攪拌羽根2の回転で該浮滓を攪拌破砕しながら台車8Cを溶融物回収位置まで移動させる。そして、この溶融物回収位置において、モーター40の駆動でパワーシリンダ42を収縮作動させて装置本体部M2を傾倒させることにより、比重分離した非鉄金属溶融物を排出口1cから流出させ、下方に待機する車輪付き受け槽47へ流し込んで回収する。また、この抽出回収後に槽本体1内に残る浮滓は、第一及び第二実施形態と同様に装置本体部M2を再度傾倒させて排出すればよい。
【0059】
しかして、台車8Cは、装置本体部M2を搭載する主台車80と、傾動手段4Cの傾動機構及び処理槽枢支部を搭載した副台車81,82とに分割構成され、該主台車80に対して副台車81,82が連結及び切り離し可能であるから、その連結状態で浮滓受入れ位置と溶融物回収位置の間を移動して非鉄金属溶融物の抽出回収を迅速に効率よく行えると共に、主台車80だけを用いて第二実施形態の台車8Bの如く浮滓受入れ位置と前記移載位置の間を移動させることもできる。また、装置本体部M2についても、第三実施形態のような傾動手段4Cを用いる場合と、第一及び第二実施形態で例示した傾動手段4A,4Bを用いる場合とに、同じ構成のものを共用できる。従って、この浮滓処理装置は、装置主要部の共通化により、溶融炉の周辺状況の通路状況の違いに広く対応できると共に、量産による製作コストの低減が可能になる。
【0060】
なお、第二及び第三実施形態では図示していないが、レール走行する台車8B,8Cに搭載する装置本体部M2の浮滓処理槽10についても、第一実施形態で用いたような抽出ガイド部材6、灰排出ガイド板7、保温カバー9等を装着する構成としてもよい。また、本発明で用いる浮滓処理槽10は、例示したシーズヒーター13aからなる予熱機構13を設けていないものでもよい。その他、本発明の浮滓処理装置では、攪拌羽根2の形態、攪拌羽根2と回転駆動軸30との連結構造、傾動手段の傾動機構、回転駆動手段3の回転伝達機構、台車8A〜8Cの形態等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 槽本体
1a 筒状部
1b 上縁部
1c 排出口
10 浮滓処理槽
2 攪拌羽根
20 取付基部
3 回転駆動手段
30 回転駆動軸
30a 頂部
4A〜4C 傾動手段
41 傾動枠
42 パワーシリンダ(傾動機構)
43 枢軸(処理槽枢支部)
44 支柱(処理槽枢支部)
5A,5B 台座
51 フォークリフト用爪挿入部
52,53 車輪
8A〜8C 台車
80 主台車
81,82 副台車
M1,M2 装置本体部
R レール軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉄金属の溶融炉で生じた浮滓を攪拌破砕し、該浮滓に混入している非鉄金属溶融物を浮滓破砕物から比重分離して回収するのに用いる浮滓処理装置であって、
上方に開放して浮滓を収容する浮滓処理槽と、該浮滓処理槽内に配置する攪拌羽根と、該攪拌羽根の回転駆動手段と、前記比重分離した非鉄金属溶融物を流出させるために前記浮滓収容槽を傾かせる傾動手段とを備え、
前記浮滓処理槽の上縁部に側方へ突出する排出口が形成されると共に、前記回転駆動手段がフォークリフト用爪挿入部を有する台座に取り付けられ、この台座上に浮滓処理槽が着脱可能で且つ水平方向の向きを変更可能に設置されてなることを特徴とする非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項2】
前記浮滓処理槽の槽本体の底部中央位置に直立する筒状部が一体形成されると共に、前記台座に設けた回転駆動手段の回転駆動軸が該筒状部の内側に非接触状態で同心状に突入配置し、この筒状部から突出した該回転駆動軸の頂部に、前記攪拌羽根の取付基部が相対回転不能に連結されてなる請求項1に記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項3】
前記台座に車輪が取り付けられて台車を構成する請求項1又は2に記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項4】
前記浮滓処理槽を設置した台座がレール軌道を走行する台車上に離脱可能に搭載されてなる請求項1又は2に記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項5】
溶融物回収位置に前記傾動手段としての傾動枠とその傾動機構が設置され、該傾動枠に前記浮滓処理槽を設置した台座をフォークリフトを介して載せ、該傾動枠の傾動によって浮滓処理槽を傾けることにより、抽出された非鉄金属溶融物を前記排出口から流出させるように構成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項6】
前記傾動手段は回動可能な爪保持部を有する回転式フォークリフトからなり、前記浮滓処理槽を設置した台座を該回転式フォークリフトで持ち上げた状態で、その爪保持部の回動によって浮滓処理槽を傾けることにより、抽出された非鉄金属溶融物を前記排出口から流出させるように構成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項7】
レール軌道を走行する台車に前記傾動手段の傾動機構及び処理槽枢支部が搭載され、該処理槽枢支部にて浮滓処理槽を台座ごと枢支した状態で、傾動機構によって浮滓処理槽を傾けることにより、抽出された非鉄金属溶融物を前記排出口から流出させるように構成されてなる請求項1又は2に記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項8】
前記台車が、前記浮滓処理槽を設置した台座を搭載する主台車と、前記傾動手段の傾動機構及び処理槽枢支部を搭載した副台車とに分割構成され、該主台車に対して副台車が連結及び切り離し可能に構成されてなる請求項7に記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−1771(P2012−1771A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138565(P2010−138565)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(591237825)東進工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】