説明

面状発光装置およびシートスイッチモジュールならびにキースイッチモジュール。

【課題】光の損失を抑えることができ、かつ光の取り出しに有利な面状発光装置の提供。
【解決手段】光源2からの光が面方向に導かれるシート状の導光体3と、導光体3の下面3aに形成された低屈折率層4と、低屈折率層4の下面4aに形成された粘着層5とを備えた面状発光装置1。低屈折率層4は、光が導かれる方向Xに間隔をおいて形成された複数の帯状部7からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ等に好適に用いられる面状発光装置およびシートスイッチモジュールならびにキースイッチモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等の電子機器には、操作キー等を明るく表示する照明機能を有するシートスイッチモジュールが用いられている(例えば特許文献1を参照)。
図15および図16は、シートスイッチモジュールの一例を用いたキースイッチモジュール示すもので、このキースイッチモジュールは、キーマット10と、シートスイッチモジュール130とを備えている。
シートスイッチモジュール130は、面状発光装置101と、シートスイッチ120とを備えている。
【0003】
面状発光装置101は、光源102と、シート状の導光体103と、導光体103の下面全体に形成された低屈折率層104と、低屈折率膜104の下面に形成された粘着層105とを備えている。導光体103には凹凸等からなる光取出部106が形成されている。
シートスイッチ120は、基板121上に設けられた固定接点122、123と、その上に設けられたドーム状の可動接点124とを備えている。固定接点122、123と可動接点124とは、感圧型のスイッチ素子125を構成している。
【0004】
このキースイッチモジュールでは、操作キー11により導光体103を押圧し、スイッチ素子125の可動接点124を下方に変形させることによって、可動接点124を固定接点122に接触させ、固定接点122、123間を導通させることができる。
光源102からの光は、導光体103内を面方向に伝搬し、その一部は光取出部106から外部に取り出される。これによって、キーマット10の操作キー11等を明るく表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−164114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記キースイッチモジュールでは、導光体103内を面方向に伝搬する光の一部が低屈折率層104に入り、その一部が粘着層105によって吸収されたり散乱することによって損失が大きくなることがある。
また、キースイッチモジュールでは、光取出部で外部に取り出される光を多くし、操作キーを見やすく表示できることが要望されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、光の損失を抑えることができ、しかも光取り出しに有利な面状発光装置およびシートスイッチモジュールならびにキースイッチモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の面状発光装置は、光源からの光が面方向に導かれるシート状の導光体と、前記導光体の一方の面に形成され、前記導光体より屈折率が低い低屈折率層と、前記低屈折率層の前記導光体側とは反対の面に形成された粘着層とを備え、前記低屈折率層は、前記光が導かれる方向に対し交差する方向に延在する複数の帯状部からなり、前記複数の帯状部が、前記光が導かれる方向に間隔をおいて形成されている面状発光装置である。
隣り合う前記帯状部の間隔は、すべての隣り合う前記帯状部について均等であることが望ましい。
前記帯状部の幅は、すべての前記帯状部について均等であることが望ましい。
前記帯状部の幅に対する、隣り合う前記帯状部の間隔の比率は、2.6以上であることが好ましい。
前記帯状部には、前記導光体の他方の面側に設けられるキーマットの操作キーに相当する位置に、他の部分より幅が広い幅広部を形成することができる。
前記低屈折率層は、前記導光体の周縁部に沿って全周にわたって形成された周設部を有する形状とすることができる。
前記粘着層は、前記低屈折率層と同じ形状であり、前記低屈折率層に重ねて形成されている構成とすることができる。
【0008】
本発明のシートスイッチモジュールは、前記面状発光装置と、前記面状発光装置の前記粘着層の前記低屈折率層側とは反対の面側に設けられたシートスイッチとを備えている。
本発明のキースイッチモジュールは、前記シートスイッチモジュールの前記導光体の他方の面側に、操作キーを有するキーマットが設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低屈折率層が導光方向に不連続に形成されており、低屈折率層が形成されていない導光体の領域の一方の面は空気との界面となるため、伝搬角が大きい光でも外部に出射しにくい。このため、導光体内を伝搬する光が外部に漏れ出る割合は少なくなる。従って、導光体内の伝搬に伴う光の減衰を最小限に抑えることができる。
また、低屈折率層が形成されていない領域では伝搬角が大きい光でも漏れにくいことから、導光体内を伝搬する光には、光の取り出しに有利な高次モード光(伝搬角が大きい光)が多く含まれる。このため、本発明は、光取出し量の増加について特に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態の面状発光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の面状発光装置を用いたキースイッチモジュールの構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1の面状発光装置の要部およびシートスイッチの平面図である。
【図4】図1の面状発光装置およびシートスイッチの側面図である。
【図5】図1の面状発光装置を用いたシートスイッチモジュールの一例を示す断面図である。
【図6】(a)試験例で用いた面状発光装置の要部の側面図である。(b)(a)の面状発光装置の要部の下面図である。
【図7】試験例における導光体内の光の挙動を説明する図である。
【図8】試験例における導光体内の光の挙動を説明する図である。
【図9】試験例における導光体内の光の挙動を説明する図である。
【図10】(a)試験例で用いた面状発光装置の要部の側面図である。(b)(a)の面状発光装置の要部の下面図である。(c)(a)の面状発光装置の要部を拡大した側面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の面状発光装置の要部およびシートスイッチを示す平面図である。
【図12】前図の面状発光装置およびシートスイッチの側面図である。
【図13】本発明の第3実施形態の面状発光装置の要部およびシートスイッチの平面図である。
【図14】本発明の第4実施形態の面状発光装置の要部およびシートスイッチの平面図である。
【図15】従来のシートスイッチモジュールの一例の要部を示す断面図である。
【図16】前図のシートスイッチモジュールを用いたキースイッチモジュールの構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の面状発光装置の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である面状発光装置1の概略構成を示す図である。図2は、面状発光装置1を用いたキースイッチモジュールの構成を示す分解斜視図である。図3は、面状発光装置1の要部(導光体3は図示略)およびシートスイッチ20の平面図である。図4は、面状発光装置1およびシートスイッチ20の側面図である。図5は、面状発光装置1を用いたシートスイッチモジュール30を示す断面図である。
【0012】
図2に示すように、このキースイッチモジュールは、シートスイッチモジュール30と、その上面側(導光体3の上面3b側)に設けられたキーマット10とを備えている。
シートスイッチモジュール30は、面状発光装置1と、面状発光装置1の下面側に設けられたシートスイッチ20とを備えている。
【0013】
図1および図2に示すように、面状発光装置1は、光源2と、シート状の導光体3と、導光体3の下面3a(一方の面)に形成された低屈折率層4と、低屈折率層4の下面4a(導光体3側とは反対の面)に形成された粘着層5とを備えている。
【0014】
導光体3は、シート状(または板状)に形成することができる。図示例の導光体3は平面視矩形状(長方形状)とされている。
導光体3は、透明な光透過性樹脂からなり、可撓性を有することが好ましい。
光透過性樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のエラストマー、ウレタンアクリレート等を用いることができる。
導光体3の厚さは、例えば0.1〜1mm(好ましくは0.1〜0.2mm)とすることができる。
【0015】
導光体3には、入射光を導光体3の上面3b(他方の面)側に取り出す(出射させる)光取出部(図示略)を形成することができる。
光取出部としては、例えば白色インクを用いて印刷により形成された複数の微小ドット状のインク層からなるパターン、導光体表面に形成された切り欠き、サンドブラスト等によって形成した粗面化部などを採用できる。光取出部は下面3aに形成してもよいし、上面3bに形成してもよい。
光取出部によって、キーマット10の目的とする部分(例えば操作キー11)を明るく表示することが可能となる。
【0016】
光源2としては、発光ダイオード(以下、LEDという)(発光素子)を使用できる。
光源2は、発光面を導光体3の一端部3cの端面に対面させて設置され、光をこの端面から導光体3に入射させることができる。光源2からの光は、導光体3の一端部3cから他端部3dに向けて、導光体3の上面3b、下面3a、側縁部3e(図2参照)等に反射しつつ伝搬する。
以下、一端部3cから他端部3dに向かう方向(図1においては右方)を、導光方向Xということがある。
なお、光源2として使用される発光素子は、LEDに限らず、冷陰極管などでもよい。
【0017】
図1〜図4に示すように、低屈折率層4は、導光体3より屈折率が低い材料からなる層であり、例えばフッ素樹脂が使用できる。
低屈折率層4の屈折率は、導光体3の屈折率に応じて設定することができる。この屈折率は低いほど好ましく、例えば1.4以下(例えば1〜1.4)とすることができる。
低屈折率層4の厚さは、例えば0.01〜0.03mmとすることができる。
【0018】
低屈折率層4は、複数の帯状部7からなる。各帯状部7は、導光体3の長手方向に対し垂直な方向(図2におけるY方向)に延在する。
帯状部7は、導光体3の長手方向に間隔をおいて並列して形成されている。図示例では、帯状部7は、一定幅とされ、導光体3の長手方向に一定の間隔ごとに形成されている。
低屈折率層4は、上記構成であるため、導光方向Xに不連続に形成されているといえる。この例では、導光体3の長手方向(図1における左右方向)に断続的に形成されているということができる。
【0019】
なお、帯状部7の延在方向は、図示例のように導光体3の短手方向が好ましいが、導光体3の長手方向に対し交差する方向であれば図示例に限定されない。導光体3の長手方向に対して帯状部7がなす角度は、0度を越え、180度未満の範囲で任意に設定できる。帯状部7は互いに平行であることが好ましいが、互いに平行でなくてもよい。
また、図示例では低屈折率層4は4つの帯状部7からなるが、帯状部7の数はこれに限らず、2または3でもよいし、5以上の任意の数でもよい。
【0020】
図1に示すように、隣り合う帯状部7、7の間隔W2は、小さすぎれば低屈折率層4が導光体3に接する面積が大きくなって光の閉じ込め効果が低くなるため、できるだけ大きくするのが好ましく、例えば1mm以上とすることができる。
間隔W2は、導光体3の剛性等に応じて、導光体3が下方に撓んで粘着層5に接することがないように設定するのが好ましく、例えば10mm以下とすることができる。
【0021】
間隔W2は、すべての隣り合う帯状部7について均等であることが望ましい。間隔W2を均等にすることによって、導光体3に撓みを生じさせることなく、低屈折率層4に接していない部分の導光体3の面積を広く確保することができる。
なお、本発明には、隣り合う帯状部間の間隔が均等ではない構成も含まれる。
【0022】
帯状部7の幅W1は、広すぎれば低屈折率層4が導光体3に接する面積が大きくなって光の閉じ込め効果が低くなるため、できるだけ狭くするのが好ましく、例えば5mm以下とすることができる。幅W1は、間隔W2より小さいことが好ましい。
幅W1は、すべての帯状部7について均等であることが望ましい。なお、本発明では、帯状部の幅はすべての帯状部について均等でなくてもよい。
帯状部7の幅W1に対する間隔W2の比率(W2/W1)は、大きいほど光の損失を低く、かつ光取出量を多くできる。例えばW2/W1を2.6以上とすることによって、光の損失を低く、かつ光取出量を多くできる。
【0023】
図2に示すように、帯状部7の導光体3長手方向位置(図1における左右方向位置)は、キーマット10の操作キー11に相当する位置(操作キー11への押圧力が作用する位置)とするのが好ましい。
図5に示すように、この例では、帯状部7の導光体3長手方向位置は、スイッチ素子25に重なる位置とされている。
【0024】
粘着層5は、導光体3および低屈折率層4をシートスイッチ20に接着するもので、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム系粘着材、合成ゴム系粘着材などの粘着材を用いることができる。
粘着材としては、シート状基材の両面に、粘着材料を塗布した粘着材層が形成された、いわゆる両面テープ状とされたものも使用可能である。
本実施形態では、粘着層5は、導光体3の全域にわたる大きさとされている(図2参照)。
【0025】
図5に示すように、シートスイッチ20は、基板21の上面21a(一方の面)に、複数の中央接点部22と、各中央接点部22を囲む環状接点部23と、接点部22、23を覆うドーム形状のメタルプレート24(可動接点部)とが設けられている。シートスイッチ20は、面状発光装置1の粘着層5の下面5a側(低屈折率層4側とは反対の面側)に設けられている。
基板21としては、PCB(Printed Circuit Board)、FPC(Flexible Printed Circuit)などのプリント配線基板を使用できる。
メタルプレート24は、操作者による押圧によって中央部が下方に変形して中央接点部22に当接し、中央接点部22と環状接点部23とを導通させることができる。メタルプレート24は、押圧を外すと弾性により原状に回復し、中央接点部22と環状接点部23とは非導通状態となる。
中央接点部22と、これを囲む環状接点部23と、メタルプレート24とは、感圧型のスイッチ素子25を構成している。
【0026】
面状発光装置1では、低屈折率層4が導光方向Xに不連続に形成されているので、導光体3の下面3aには低屈折率層4が形成されていない領域がある。
低屈折率層4が形成されていない領域の下面3aは空気との界面となるため、伝搬角が大きい光でも外部に出射しにくい。このため、導光体3内を伝搬する光が外部に漏れ出る割合は少なくなる。
従って、導光体3内の伝搬に伴う光の減衰を最小限に抑えることができる。
また、低屈折率層4が形成されていない領域では伝搬角が大きい光でも漏れにくいことから、導光体3内を伝搬する光には、光の取り出しに有利な高次モード光(伝搬角が大きい光)が多く含まれる。
このため、面状発光装置1は、光取出し量の増加について特に優れた効果を発揮する。
【0027】
以下、面状発光装置1の効果について、図1、図6〜図10を参照して詳しく説明する。
図6は、試験例で用いた面状発光装置の要部を示す図であって、(a)は側面図であり、(b)は下面図である。図7〜図9は、導光体内の光の挙動を説明する図である。図10は試験例で用いた面状発光装置の要部を示す図であって、(a)は側面図であり、(b)は下面図であり、(c)は(a)に環状の2点鎖線で囲んだ部分を拡大した側面図である。
【0028】
(試験例1)
図6および図7に示すように、導光体3(屈折率1.49)のみからなる面状発光装置1Dを想定した。導光体3は長さ50mm、幅4mm、厚さ0.4mmとした。
光源2からの光を、一端部3cの端面から導光体3に入射させ、他端部3dに到達した光量(透過量)を求めるシミュレーションを行った。
面状発光装置1Dは、導光体3の下面3aに何も形成されていないため、下面3aおよび上面3bは全面が空気との界面であり、下面3aおよび上面3bにおける臨界角は47.9degである。
図7に示す符号Lは導光体3内で上面3b、下面3a等に反射しつつ他端部3dに向けて伝搬する光を示す。
試験例1〜6で用いた導光体3には図6および図10に仮想線で示す光取出部6は形成されていない。
この例における光の透過量を基準値(100%)として、試験例2〜6における光の透過量を評価する。
【0029】
(試験例2)
図8に示すように、導光体3の下面3aに全面にわたり粘着層5を形成した面状発光装置1Eを想定し、試験例1と同様のシミュレーションを行った。粘着層5は黒色の粘着材からなる。
この例では、試験例1と同様に、上面3bにおける臨界角は47.9degであるが、下面3aにおいては、光が粘着層5に吸収されるため、下面3aでの反射はほとんど起こらない。このため、光の透過量は基準値に対してわずか1.54%となった。
【0030】
(試験例3)
図9に示すように、導光体3の下面3aに、全面にわたり低屈折率層4(屈折率1.4)(厚さ0.03mm)が形成され、低屈折率層4の下面4a全面に粘着層5が形成された面状発光装置1Fを想定し、試験例1と同様のシミュレーションを行った。
この例では、低屈折率層4との界面である下面3aにおける臨界角は20.0degとなる。このため、伝搬角が20.0degを上回る光L1は低屈折率層4に入射し、下面4aから粘着層5に吸収される。
しかし、伝搬角が20.0deg以下となる光L2は下面3aで反射するため、粘着層5に吸収されることはない。このため、光の透過量は試験例2より多くなった(基準値に対し80.1%)。
【0031】
(試験例4)
図1および図10に示すように、この例では、導光体3の下面3aに、導光体3の長手方向(図10における左右方向)に間隔をおいて形成された複数の帯状部7からなる低屈折率層4(厚さ0.03mm)が形成された面状発光装置1Gを想定し、試験例1と同様のシミュレーションを行った。低屈折率層4の下面4a側には粘着層5が形成される。
図10に示すように、帯状部7の幅W1は2mmとし、隣り合う帯状部7、7の間隔W2は8mmとした(W2/W1=4)。この例では、光の透過量は基準値に対し89.3%となった。
【0032】
(試験例5)
帯状部7の幅W1を2mmとし、間隔W2を0.5mmとする(W2/W1=0.25)こと以外は試験例4と同様にしてシミュレーションを行った結果、光の透過量は基準値に対して82.8%となった。
【0033】
(試験例6)
帯状部7の幅W1を2mmとし、間隔W2を5.2mmとする(W2/W1=2.6)こと以外は試験例4と同様にしてシミュレーションを行った結果、光の透過量は基準値に対して85.3%となった。
試験例1〜6の結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1より、低屈折率層4を不連続に形成した試験例4では、低屈折率層4を導光体3の全域に形成した試験例3に比べて透過量が高められたことがわかる。具体的には、試験例3に比べて透過量は9.2%増加した。
試験例4で高い透過量が得られる理由は以下の通りである。
図1に示すように、伝搬角が20.0degを上回る光L1のうち、低屈折率層4(帯状部7)が形成された領域A1の下面3aに達した光は、低屈折率層4内に入射し、下面4aから粘着層5に吸収される。
しかし、領域A1は下面3aの一部領域であるため、光L1の一部は領域A1には達しないで導光体3内を伝搬することから、光の損失は小さくなる。このため、前述の高い光の透過量が得られた。
また、試験例4〜6の比較より、帯状部7の幅W1に対する間隔W2の比率(W2/W1)が大きいほど光透過量が高くなることが確認された。
【0036】
(試験例7)
図6に仮想線で示すように、導光体3の他端部3d近傍の下面3aの一部領域に、多数の微小ドット状のインク層からなる光取出部6を印刷により形成すること以外は試験例1で用いたものと同様の面状発光装置1Dを使用し、光を一端部3cから導光体3に入射させ、光取出部6で上面3b方向に取り出される光量を求めるシミュレーションを行った。
この例における光取出し量を基準値(100%)として、試験例8〜12における光取出し量を評価する。
【0037】
(試験例8)
光取出部6を形成すること以外は試験例2で用いたものと同様の面状発光装置1E(図8参照)を使用して、試験例7と同様のシミュレーションを行った結果、光取出し量は基準値に対して0.02%となった。
【0038】
(試験例9)
光取出部6を形成すること以外は試験例3で用いたものと同様の面状発光装置1F(図9参照)を使用して、試験例7と同様のシミュレーションを行った結果、光取出し量は基準値に対して64.6%となった。
【0039】
(試験例10)
光取出部6を形成すること以外は試験例4で用いたものと同様の面状発光装置1G(図1および図10参照)(幅W1=2mm、間隔W2=8mm、W2/W1=4)を使用して、試験例7と同様のシミュレーションを行った結果、光取出し量は基準値に対して82.1%となった。
【0040】
(試験例11)
帯状部7の幅W1を2mmとし、間隔W2を0.5mmとする(W2/W1=0.25)こと以外は試験例10と同様の面状発光装置1Gを使用して、試験例7と同様のシミュレーションを行った結果、光取出し量は基準値に対して70.0%となった。
【0041】
(試験例12)
帯状部7の幅W1を2mmとし、間隔W2を5.2mmとする(W2/W1=2.6)こと以外は試験例10と同様の面状発光装置1Gを使用して、試験例7と同様のシミュレーションを行った結果、光取出し量は基準値に対して75.3%となった。
試験結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
表2より、低屈折率層4を不連続に形成した試験例10では、低屈折率層4を導光体3の全域に形成した試験例9に比べて光取出し量が大幅に高められたことがわかる。具体的には、試験例10では、試験例9に比べて光取出し量は17.5%増加した。
この光取出し量の増加分(17.5%)は、光透過量の増加分(9.2%)(表1参照)に比べ大幅に大きい。
このことから、本発明は、光取出し量の増加について特に優れた効果があるといえる。
また、試験例10〜12の比較より、帯状部7の幅W1に対する間隔W2の比率(W2/W1)が大きいほど光取出量が多くなることが確認された。
【0044】
本発明が光取出し量の増加について特に優れた効果を発揮する理由については、以下の推測が可能である。
一般に、光取出部に到達した光は、透過する成分と反射する成分とに分かれる。このうちの反射成分の一部は外部に出射し、面発光が実現される。反射成分は伝搬角が大きいほど多くなる。
図9に示すように、低屈折率層4を導光体3の全域に形成した試験例9では、伝搬角が20.0degを上回る光L1はほとんどが低屈折率層4に入射し、粘着層5に吸収される。
これに対し、図1に示すように、低屈折率層4を不連続に形成した試験例10では、伝搬角が20.0degを上回る光L1の一部は、低屈折率層4が形成された領域A1には達しないで導光体3内を伝搬する。領域A1以外の領域の下面は空気との界面となるため、伝搬角が大きい光でも反射する。
このため、試験例10では、試験例9に比べて高次モード光(伝搬角が大きい光)が多く存在する。これによって、試験例10では光取出し量について特に優れた結果が得られたと考えられる。
【0045】
図11は、本発明の第2実施形態の面状発光装置1Aの要部(導光体3は図示略)およびシートスイッチ20を示す平面図である。図12は、面状発光装置1Aおよびシートスイッチ20の側面図である。
以下の説明において、既出の構成については同一符号を付して説明を省略することがある。
【0046】
この面状発光装置1Aでは、粘着層5が、導光体3の長手方向に対し垂直に延在する複数の帯状部8からなり、これら帯状部8が、導光体3の長手方向に間隔をおいて並列して形成されている。
粘着層5(帯状部8)は、低屈折率層4(帯状部7)と同じ形状であり、低屈折率層4(帯状部7)に重ねて形成されている。
面状発光装置1Aは、粘着層5以外の構成については、第1実施形態の面状発光装置1と同じとすることができる。
【0047】
面状発光装置1Aでは、第1実施形態の面状発光装置1と同じ構成の低屈折率層4を有するので、同様に、導光体3内の伝搬に伴う光の減衰を最小限に抑えることができる。
また、低屈折率層4がない領域では粘着層5もないため、低屈折率層4がない領域では導光体3の下方の空間が大きく確保され、導光体3の撓みが許容される。
【0048】
図13は、本発明の第3実施形態の面状発光装置1Bの要部(導光体3は図示略)およびシートスイッチ20を示す平面図である。
この面状発光装置1Bでは、帯状部17に、他の部分(細幅部17b)より幅が広い複数の幅広部17aが形成されている。これら複数の幅広部17aは、帯状部17の長さ方向(Y方向)に間隔をおいて形成されている。
幅広部17aは、導光体3の上面側に設けられたキーマット10の操作キー11に相当する位置に形成することができる。
図示例の幅広部17aは全体として略円形をなす形状であるが、他の部分(細幅部17b)より幅広であればその形状は任意とすることができる。
粘着層5の形状は、低屈折率層4(帯状部17)と同じとすることができる。
面状発光装置1Bは、低屈折率層4および粘着層5以外の構成については、第2実施形態の面状発光装置1Aと同じとすることができる。
【0049】
面状発光装置1Bでは、外力が加えられる操作キー11に相当する部分で低屈折率層4が広く形成されているので、操作キー11に対する押圧力により導光体3が変形して基板21に接触するという不都合を防止できる。
また、他の部分(細幅部17b)の幅が狭いため、低屈折率層4に接していない導光体3の下面3aの面積を広く確保できることから、導光体3における光の減衰を抑える効果を高めることができる。
【0050】
図14は、本発明の第4実施形態の面状発光装置1Cの要部(導光体3は図示略)およびシートスイッチ20を示す平面図である。
この面状発光装置1Cでは、導光体3の周縁部3f(図2参照)に沿って全周にわたって形成された周設部9を有すること以外は、第3実施形態の面状発光装置1Bと同じ構成とすることができる。
周設部9は、低屈折率層4(帯状部17)と一体に形成することができる。図示例の周設部9は、帯状部17の両端部に一体に形成されている。
【0051】
面状発光装置1Cでは、周設部9が設けられているので、低屈折率層4の構造的な強度を高めることができる。また、帯状部17と一体に形成することによって、低屈折率層4の全体を一括して取り扱うことができるようになり、取り扱い性を高めることができる。
【符号の説明】
【0052】
1、1A〜1C・・・面状発光装置、2・・・光源、3・・・導光体、3a・・・下面(一方の面)、3b・・・上面(他方の面)、3f・・・周縁部、4・・・低屈折率層、5・・・粘着層、5a・・・粘着層の下面(低屈折率層側とは反対の面)、7、17・・・帯状部、9・・・周設部、10・・・キーマット、11・・・操作キー、17a・・・幅広部、17b・・・細幅部、20・・・シートスイッチ、30・・・シートスイッチモジュール、X・・・光が導かれる方向、Y・・・光が導かれる方向に対し交差する方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(2)からの光が面方向に導かれるシート状の導光体(3)と、
前記導光体の一方の面(3a)に形成され、前記導光体より屈折率が低い低屈折率層(4)と、
前記低屈折率層の前記導光体側とは反対の面(4a)に形成された粘着層(5)とを備え、
前記低屈折率層は、前記光が導かれる方向(X)に対し交差する方向(Y)に延在する複数の帯状部(7)からなり、
前記複数の帯状部が、前記光が導かれる方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする面状発光装置(1)。
【請求項2】
隣り合う前記帯状部の間隔(W2)は、すべての隣り合う前記帯状部について均等であることを特徴とする請求項1に記載の面状発光装置。
【請求項3】
前記帯状部の幅(W1)は、すべての前記帯状部について均等であることを特徴とする請求項1または2に記載の面状発光装置。
【請求項4】
前記帯状部の幅に対する、隣り合う前記帯状部の間隔の比率(W2/W1)が2.6以上であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の面状発光装置。
【請求項5】
前記帯状部(17)には、前記導光体の他方の面(3b)側に設けられるキーマット(10)の操作キー(11)に相当する位置に、他の部分(17b)より幅が広い幅広部(17a)が形成されている請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の面状発光装置(1B)。
【請求項6】
前記低屈折率層は、前記導光体の周縁部(3f)に沿って全周にわたって形成された周設部(9)を有することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の面状発光装置(1C)。
【請求項7】
前記粘着層は、前記低屈折率層と同じ形状であり、前記低屈折率層に重ねて形成されていることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の面状発光装置(1A)。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の面状発光装置と、
前記面状発光装置の前記粘着層の前記低屈折率層側とは反対の面(5a)側に設けられたシートスイッチ(20)とを備えたことを特徴とするシートスイッチモジュール(30)。
【請求項9】
請求項8に記載のシートスイッチモジュールの前記導光体の他方の面(3b)側に、
操作キー(11)を有するキーマット(10)が設けられていることを特徴とするキースイッチモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−84477(P2012−84477A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231556(P2010−231556)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】