説明

面状発熱体の製造方法

【課題】面状発熱体を連続的に効率よく製造する。
【解決手段】複数の導電性繊維が幅方向に配列された導電性繊維シート10を連続的に繰り出しながら、導電性繊維シート10の両面に繊維強化プリプレグ20および絶縁性樹脂フィルム30が順次積層される。導電性繊維シート10には、その両耳部に、導電性繊維シート10の導電性繊維と電気的に接続される導体が設けられる。繊維強化プリプレグ20および絶縁性樹脂フィルム30で覆われる導体の一部が露出するように、繊維強化プリプレグ20および絶縁性樹脂フィルム30に貫通穴が形成され、これによって、導電性繊維シート10への電圧印加用のリード線を接続するための電極部が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性繊維を用いた面状発熱体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房は、輻射を利用した暖房であること、燃焼による空気の汚れが発生しないこと、および風による埃の舞上りがないこと等から、住宅における暖房方式として注目されている。床暖房用の発熱体には、広い面積を加熱する必要があることから、面状発熱体が一般に用いられている。
【0003】
従来の面状発熱体としては、緯糸または経糸の一方が、導電性繊維である炭素繊維を含む織物の片面または両面を樹脂で被覆したもの(特許文献1参照)や、非導電性繊維および導電性繊維の交点を接合した網目状構造体に繊維強化樹脂シートを積層したもの(特許文献2参照)などが知られている。
【特許文献1】特開平7−296959号公報
【特許文献2】特開平8−207191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
面状発熱体は、導電性繊維を含む織物または不織布を樹脂と積層しただけでなく、外部取り出し用の電極等も設ける必要がある。織物または不織布と樹脂との積層については、織物または不織布を連続的に繰り出しながら行うことができるが、電極の設置については一部手作業を伴う場合があった。そのことから、電極の設置も含めて面状発熱体を連続的に効率よく生産する技術が望まれていた。
【0005】
そこで本発明は、面状発熱体を連続的に効率よく製造することができる、面状発熱体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の面状発熱体の製造方法は、複数の導電性繊維が幅方向に配列された導電性繊維シートを連続して繰り出しながら面状発熱体を製造する方法であって、導電性繊維シートの少なくとも片面に繊維強化樹脂層を積層して、導電性繊維シートおよび繊維強化樹脂層を含む積層体を形成する工程と、積層体の両面に絶縁樹脂層を積層する工程と、導電性繊維シートへの電圧印加用のリードを電気的に接続するための電極部を設ける工程と、を有する。
【0007】
本発明の面状発熱体の製造方法では、導電性繊維シートを繰り出しながら、導電性繊維シートに各層を積層し、電極部を設ける。このように、導電性繊維シートを繰り出しながらの一連の工程で面状発熱体が製造される。
【0008】
上記本発明の面状発熱体の製造方法において、電極部を設ける工程は、導電性シートに繊維強化樹脂層を積層する前に、導電性繊維シートの両耳部に、導電性繊維と電気的に接続されて導電性繊維とともに電気回路を構成する導体を設ける工程と、繊維強化樹脂層および絶縁樹脂層で覆われる導体の一部が露出するように、繊維強化樹脂層および絶縁樹脂層に貫通穴を形成する工程と、を含むことができる。
【0009】
この場合、導電性繊維シートは、複数の導電性繊維と、導電性繊維の片面または両面に配された複数の非導電性繊維とを、導電性繊維と非導電性繊維との交点で接合することによって構成された網目状構造体であってもよいし、横糸が導電性繊維および非導電性繊維を含み、縦糸が非導電性繊維を含んでいる織物であってもよい。導電性繊維シートが網目状構造体である場合、導電性繊維シートに導体を設ける工程は、製造中または繰り出されている導電性繊維シートの耳部に沿って導電性部材を設けることを含むことができる。また、導電性繊維シートが織物である場合、導電性繊維シートに導体を設ける工程は、繰り出されている導電性繊維シートの耳部に沿って導電性部材を設けることを含んでいてもよいし、織物の製造工程で、織物の両耳部に前記縦糸として導電性繊維を織り込むことを含んでいてもよい。
【0010】
また、本発明の面状発熱体の製造方法において、積層体の両面に積層される絶縁樹脂層のうち一方の絶縁樹脂層に金属層を積層する工程をさらに有していてもよい。あるいは、積層体の両面に積層される絶縁樹脂層のうち一方を、金属シートを片面に貼り合わせ、または金属薄膜を片面に蒸着した樹脂フィルムとし、この樹脂フィルムを、金属シートが貼り合わせられまたは金属薄膜が蒸着された面を外側にして積層体に積層することを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性繊維シートを繰り出しながら、面状発熱体の構成が順次設けられるので、面状発熱体を連続的に効率よく製造することができる。その結果、面状発熱体の生産性が向上し、面状発熱体を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態による面状発熱体を製造するのに用いられる製造装置の一例の概略図である。
【0014】
図1において、導電性繊維シート10はロールに巻かれており、ロールに巻かれた導電性シート10が矢印A方向に繰り出される。なお、本発明においては、導電性繊維シート10が繰り出される方向を「送り方向」ともいう。また、導電性繊維シート10の面内において送り方向と直交する方向を「幅方向」ともいう。
【0015】
導電性繊維シート10は、図2に示すように、互いに間隔をあけ、かつ導電性繊維シート10の幅方向に配列された複数の導電性繊維11を有する。導電性繊維11としては、カーボンブラックや銅粉などの金属粒子を分散した樹脂等からなる導電性繊維;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリピリジン自体あるいはこれに金属をドープした導電性高分子繊維;鉄、銅、ニッケル、クロム等の金属やステンレス、Ni−Cr、Ni−Cu−Fe、Ni−Cu等の合金を原料とした金属繊維;および炭素繊維等が上げられる。これらの中でも、軽量性、可撓性、耐食性、および引張強度に優れる炭素繊維を好ましく用いることができる。
【0016】
導電性繊維11は、複数の非導電性繊維(不図示)によって互いの位置関係が固定されている。非導電性繊維は、導電性繊維11を導電性繊維シート10の両面または片面に積層されている。複数の非導電性繊維は、ランダムあるいは導電性繊維11とは異なる方向、例えば送り方向に配列されている。非導電性繊維としては、非導電性繊維としては、送り方向と幅方向の導電性繊維を積層したものを用いてもよく、また、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ポリエステル繊維などを用いることができる。
【0017】
導電性繊維11および非導電性繊維の少なくとも一方には、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂繊維が任意の割合で混成されている。この熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂繊維を介しての熱融着によって導電性繊維11と非導電性繊維とがその交点で接合され、これによって網目状構造体が構成される。
【0018】
導電性繊維シート10の両耳部には、導体12が、導電性繊維シート10の送り方向に沿って配置されている。導体12は、例えば導電性繊維11に用いられるのと同じ線材や帯状の金属箔といった導電性部材で構成することができ、導電性繊維11と密着して電気的に接続されている。導体12は、導電性繊維シート10に予め設けられていてもよいし、導電性繊維シート10を繰り出しながら、導電性繊維シート10上に設けてもよい。導体12が設けられるのは、導電性繊維シート10のどちら側の面でもよいが、本実施形態では、後工程を考慮して、金属シート40が積層される側と反対側の面(図1では上面)に設けている。なお、電極部に接して導電性繊維または導電性網目状体からなるアンカー部材を導体12の金属シート40と反対の面に積層してもよい。アンカー部材の詳細については特許第3314867号明細書参照。
【0019】
導体12には、導電性繊維シート10の送り方向について一定の間隔ごとに切れ目13が形成されている。切れ目13は、導電性繊維シート10の両耳部で導電性繊維シート10の送り方向について交互に位置するように設けられている。これによって、導電性繊維シート10は、導電性繊維11を導電性繊維シート10の送り方向に沿って複数のブロックに分け、各ブロックが導体12によって直列に接続された電気回路が構成される。
【0020】
切れ目13は、導電性繊維シート10に導体12を設けるのと同時、または導体12を設けた後に、それとは別工程で設けることができる。導体12と切れ目13とを同時に設ける場合は、導電性繊維シート10の製造工程で、または導電性繊維シート10を繰り出す工程で、導体12自身を、切れ目13を有するパターンで形成する。導体12を設けた後に切れ目13を形成する場合は、導電性繊維シート10の製造工程で、または導電性繊維シート10を繰り出しながら、導電性繊維シート10の送り方向に連続した導体12を形成し、その後、導体12を所定間隔で分断するように、導体12または導電性繊維シート10に切れ目13を形成する。導体12を導電性繊維シート10の製造工程で設ける場合、切れ目13は、導電性繊維シート10の製造工程で形成することもできるし、導電性繊維シート10を繰り出す工程で形成することもできる。
【0021】
再び図1を参照すると、次に、ロールから繰り出されている導電性繊維シート10の両面に、繊維強化樹脂層として繊維強化プリプレグ20が積層される。繊維強化プリプレグ20は、強化繊維に樹脂を含浸したシートである。導電性繊維シート10と繊維強化プリプレグ20との積層には、熱圧着、熱融着、接着剤による接着等、樹脂シートの積層に用いられる任意の積層技術を利用することができる。
【0022】
繊維強化プリプレグ20に含まれる強化繊維は、非導電性繊維で構成されていることが好ましい。また、強化繊維の形態は、一方向材、織物、不織布等、どのような形態でもよい。繊維強化プリプレグ20の厚さは、熱の伝えやすさの観点からは、0.05mm〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.05mm〜0.5mmである。強化繊維には任意の繊維を用いることができ、中でも特に好ましいのは、ガラス繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ナイロン繊維等である。
【0023】
繊維強化プリプレグ20に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。その中でも、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が好ましく用いられる。
【0024】
導電性繊維シート10の両面に積層される繊維強化プリプレグ20のうち、導電性繊維シート10に設けられた導体12(図2参照)と接する側の繊維強化プリプレグ20には貫通穴(不図示)が形成される。貫通穴は、導電性繊維シート10の両耳部に沿って設けられた複数の導体12のうち所定の導体12を、製造された面状発熱体50に対する電圧印加用の電極として利用できるようにするためのものであり、製造すべき面状発熱体50の仕様に応じて適宜導体12と対向する位置に形成される。貫通穴の直径は、5mm〜50mmの範囲であることが好ましい。
【0025】
繊維強化プリプレグ20への貫通穴の形成は、繊維強化プリプレグ20を導電性繊維シート10に積層する前であってもよいし、積層後であってもよい。また、硬化後に削りとって貫通穴を形成してもよい。さらには、貫通穴が予め形成された繊維強化プリプレグ20を用いてもよい。この場合、導電性繊維シート10上への繊維強化プリプレグ20の供給は、導電性繊維シート10の送り方向について導電性繊維シート10と繊維強化プリプレグ20とを位置合わせして行う。また、繊維強化プリプレグ20に含まれる樹脂が熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂を硬化させる前に貫通穴を形成することが好ましい。
【0026】
ここでは導電性繊維シートの10の両面に繊維強化プリプレグ20を積層する例を示したが、繊維強化プリプレグ20の代わりに、導電性繊維シート10の両面に強化繊維層を積層し、さらにその全体に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂層を構成としてもよい。
【0027】
導電性繊維シート10の両面に繊維強化樹脂層が積層された後、ここまでの工程で得られた積層体の両面に、絶縁性樹脂フィルム30を積層する。絶縁性樹脂シート30としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムを用いることができる。絶縁性樹脂フィルム30の積層には、熱圧着、熱融着、接着剤による接着等、樹脂シートの積層に用いられる任意の積層技術を利用することができる。
【0028】
絶縁性樹脂フィルム30を積層することによって、一方の繊維強化プリプレグ20に形成された貫通穴は絶縁性樹脂フィルム30で塞がれてしまう。塞がれた貫通穴は、貫通穴の部分で絶縁性樹脂フィルム30を切除することによって開放される。
【0029】
絶縁性樹脂シート30が積層された後、貫通穴が形成されていない側の絶縁性樹脂シート30上に金属シート40が積層される。金属シート40は、面状発熱体50から発生した熱を面状発熱体50の面内方向に均一に分散させるためのものである。また、金属シート40には、面状発熱体50のアースとしての機能も有する。金属シート40は、両面粘着テープや接着剤などによって絶縁性樹脂シート30に固定することができる。金属シート40としては、アルミニウムや銅といった金属の箔あるいは薄板等を用いることができる。
【0030】
なお、ここでは2つの繊維強化プリプレグ20のうち一方の側に、絶縁性樹脂フィルム30および金属シート40を積層した例を示したが、絶縁性樹脂フィルム30を、アルミニウムなどの金属薄膜を片面に蒸着した樹脂フィルムとし、金属シート40を積層しない構成とすることもできる。この場合は、金属薄膜が蒸着された面を外側にして積層する。金属薄膜を蒸着した樹脂フィルムを用いることで、導電性繊維シート10への各層の積層工程を簡略化することができる。
【0031】
上述した各工程を経て、面状発熱体50が連続して製造される。連続して製造された面状発熱体50は、貫通穴に対応した所定の位置で面状発熱体50の幅方向に切断するか、またはロールに巻き取り、後で切断する。この切断端面には絶縁処理をすることが望ましい。
【0032】
以上のようにして面状発熱体50を製造することで、導電性繊維シート10を繰り出しながら必要な構成が順次設けられるので、連続的に効率よく面状発熱体50を製造することができる。その結果、面状発熱体50の生産性が向上し、面状発熱体50を安価に提供できるようになる。
【0033】
図1に示す製造装置で製造された面状発熱体50の、貫通穴が形成された位置で幅方向に沿って切断した断面図を図3に示す。
【0034】
図3に示すように、面状発熱体50は、片面の両耳部に導体12が設けられた導電性繊維シート10を有する。導電性繊維シート10の両面には繊維強化プリプレグ20および絶縁性樹脂フィルム30がこの順番で積層されている。さらに、一方の絶縁性樹脂フィルム30には金属シート40が積層されている。
【0035】
導電性繊維シート10の両面に積層された繊維強化プリプレグ20および絶縁性樹脂フィルム30のうち、金属シート40が積層された側とは反対側の繊維強化プリプレグ20および絶縁性樹脂フィルム30には、これらを貫通する貫通穴51が形成されている。貫通穴51は、各導体12のうち所定の導体12上に形成されており、貫通穴51が形成された部分では導体12が露出している。露出した導体12には、電圧印加用のリード線52が半田付け等によって接続される。つまり、貫通穴51によって露出した導体12の部分は、この面状発熱体50に電圧を印加するための電極を構成する。
【0036】
以上のように構成された面状発熱体50は、繊維強化層が積層されているので機械的強度に優れている。また、面状発熱体50は金属シート40を有しているので、面状発熱体50の表面全体での温度のばらつきが少ない均一な加熱が可能である。
【0037】
本形態の面状発熱体50は、種々の用途に供することができるが、特に、床暖房の電熱ボードに好ましく用いることができる。面状発熱体50を床暖房の電熱ボードとして用いる場合、電熱ボードは、例えば以下のように構成される。
【0038】
面状発熱体50は、図3に示した状態を上下反転した状態、つまり金属シート40が設けられた面を上向きにして、木材、合板、軽量プラスチック等で構成された枠材(不図示)上に固定される。これによって、リード線52は枠材で囲まれた領域内に位置する。枠材で囲まれた領域内には断熱材(不図示)が配される。
【0039】
上記のように構成された電熱ボードは、面状発熱体50を上向きにして床下地へ固定される。電熱ボードの固定は、枠材の部分での釘打ち、ネジ止めなどによって行うことができる。そして、床下地上に固定された電熱ボードの上にさらに床仕上げ材を設置するとともに、電熱ボードの電気的配線を行い、床暖房の施工が完了する。
【0040】
以上、本発明について代表的な実施形態を例に挙げて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更することができる。
【0041】
例えば、上述した実施形態では、導電性繊維シート10として、導電性繊維と非導電性繊維とを積層した網目状構造体を用いたが、織物からなる導電性繊維シートを用いることもできる。織物からなる導電性繊維シートとしては、例えば、横糸が導電性繊維および非導電性繊維を含み、縦糸が非導電性繊維を含んでいる混繊維織物が挙げられる。
【0042】
導電性繊維および非導電性繊維としては、前述した導電性繊維シート10に用いられるものと同様のものを用いることができる。導電性繊維シート10を織物で構成した場合でも、導体12(図12参照)は、導電性繊維シート10を網目状構造体で構成した場合と同様に設けることができる。また、混繊維織物の両耳部で縦糸を導電性繊維とすれば、その導電性繊維を導体12として利用することができる。縦糸として織り込んだ導電性繊維を導体12に利用する場合、電極は混繊維織物の表裏どちら側の面でも構成できる。
【0043】
ただし、縦糸として織り込んだ導電性繊維を導体12に利用する場合、導電性繊維を送り方向に間欠的に混繊維織物に織り込むのは困難である。そこで、導体12の切れ目13(図2参照)は、混繊維織物自身を両耳部で部分的に切り込むことによって形成するのが好ましい。
【0044】
また、上述した実施形態では導電性繊維シートの両面に繊維強化樹脂層を積層した例を示したが、繊維強化樹脂層は導電性繊維シートの片面のみに積層してもよい。この場合、面状発熱体の敷設後に面状発熱体に荷重が加わることによる導電性繊維シート10の損傷を防止するために、荷重が加わる側に繊維強化樹脂層が積層されるように、面状発熱体を製造するのが好ましい。また、荷重繊維強化樹脂層が積層される側と反対側に電極を構成すれば、電極を構成するための貫通穴の形成工程を簡略化することができる。
【0045】
さらに、上述した実施形態では、面状発熱体を床暖房の電熱ボードに用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明による面状発熱体は、この他にも、畜舎の暖房用、植物栽培用温室の暖房用、乗り物の室内の暖房用、建物の屋根の融雪用、あるいは道路の凍結防止用等、種々の用途のヒータに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態による面状発熱体を製造するのに用いられる製造装置の一例の概略図である。
【図2】図1に示す導電性繊維シートの斜視図である。
【図3】図1に示す製造装置で製造された面状発熱体の幅方向に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 導電性繊維シート
11 導電性繊維
12 導体
13 切れ目
20 繊維強化プリプレグ
30 絶縁性樹脂フィルム
40 金属シート
50 面状発熱体
51 貫通穴
52 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性繊維が幅方向に配列された導電性繊維シートを連続して繰り出しながら、前記導電性繊維シートを備えた面状発熱体を製造する方法であって、
前記導電性繊維シートの少なくとも片面に繊維強化樹脂層を積層して、前記導電性繊維シートおよび前記繊維強化樹脂層を含む積層体を形成する工程と、
前記積層体の両面に絶縁樹脂層を積層する工程と、
前記導電性繊維シートへの電圧印加用のリードを電気的に接続するための電極部を設ける工程と、
を有する面状発熱体の製造方法。
【請求項2】
前記電極部を設ける工程は、
前記導電性繊維シートに前記繊維強化樹脂層を積層する前に、前記導電性繊維シートの両耳部に、前記導電性繊維と電気的に接続されて前記導電性繊維とともに電気回路を構成する導体を設ける工程と、
前記繊維強化樹脂層および前記絶縁樹脂層で覆われる前記導体の一部が露出するように、前記繊維強化樹脂層および前記絶縁樹脂層に貫通穴を形成する工程と、
を含む、請求項1に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項3】
前記導電性繊維シートは、前記複数の導電性繊維と、該導電性繊維の片面または両面に配された複数の非導電性繊維とを、前記導電性繊維と前記非導電性繊維との交点で接合することによって構成された網目状構造体であり、
前記導電性繊維シートに前記導体を設ける工程は、製造中または繰り出されている前記導電性繊維シートの耳部に沿って導電性部材を設けることを含む、請求項2に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項4】
前記導電性繊維シートは、横糸が前記導電性繊維および非導電性繊維を含み、縦糸が非導電性繊維を含んでいる織物であり、
前記導電性繊維シートに前記導体を設ける工程は、繰り出されている前記導電性繊維シートの耳部に沿って導電性部材を設けることを含む、請求項2に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項5】
前記導電性繊維シートは、横糸が前記導電性繊維および非導電性繊維を含み、縦糸が非導電性繊維を含んでいる織物であり、
前記導電性シートに前記導体を設ける工程は、前記織物の製造工程で、前記織物の両耳部に前記縦糸として導電性繊維を織り込むことを含む、請求項2に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁樹脂層のうち一方の絶縁樹脂層に金属層を積層する工程をさらに有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の面状発熱体の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁樹脂層を積層する工程は、前記積層体の両面の絶縁樹脂層のうち一方を、金属シートを片面に貼り合わせ、または金属薄膜を片面に蒸着した樹脂フィルムとし、該樹脂フィルムを、前記金属シートが貼り合わせられまたは前記金属薄膜が蒸着された面を外側にして前記積層体に積層することを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の面状発熱体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−287481(P2007−287481A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113667(P2006−113667)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】