説明

面状発熱体用電極

【課題】特に、表面に凹凸のある面状導電体と平面電極とが良好に接合されて、電流を安定的に流すことができる面状発熱体に使用される面状発熱体用電極を提供する。
【解決手段】平面電極に導電性物質を塗布し、この導電性物質を形成している少なくとも一部の溶媒を加熱除去することを特徴とする面状発熱体用電極の製造方法、および平面電極と、導電性物質を形成している少なくとも一部の溶媒が加熱除去された導電性物質とからなることを特徴とする面状発熱体用電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状発熱体用電極およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、表面に凹凸のある面状導電体と平面電極とが良好に接合され、電流を安定的に流すことができる面状発熱体に使用される面状発熱体用電極およびその製造方法ならびに面状発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
面状発熱体においては、その発熱面に均一に通電して均一な熱を発生させるために、面状導電体の両端に一対の電極を設ける必要がある。この面状導電体への電極の接続には種々の方法が提案されている。
【0003】
たとえば、面状導電体に銀ペーストを含浸させ電極を積層する方法(特開平07−288172号公報)、面状導電体に通電用電極を織り込む方法(特開平06−290860号公報)、導電性テープを通電用電極として使用する方法(特開平07−14665号公報)等がある。
【0004】
一方、和紙糸で製織した織物または編物を炭化して炭とした炭化物が知られており、そして、そのような炭化物シートを織物地または編物地で被覆して接着してなるシート状成形体が提案されている(特開2003−306850号公報)。当該炭化物は導電性を有し、面状導電体と呼べる物質であるが、表面には凹凸があり、柔軟性には富んでいるが基材自身の強度は小さく取り扱いに難点がある。
【特許文献1】特開平07−288172号公報
【特許文献2】特開平06−290860号公報
【特許文献3】特開平07−14665号公報
【特許文献4】特開2003−306850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような面状導電体について、面状導電体に銀ペーストを含浸させ電極を積層する方法、面状導電体に通電用電極を織り込む従来技術の方法を適用することは必ずしも容易ではなかった。また、導電性テープを通電用電極として使用する従来方法では、表面に凹凸があるため、凹凸部に取り込まれた空気が通電による発熱により熱膨張し、接触電気抵抗が大きくなり、電流を安定的に流せない等の問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために種々検討を重ねたところ、特定の導電性物質を、平面電極に塗布し、導電性物質を形成している少なくとも一部の溶媒を加熱除去した面状発熱体用電極を面状導電体に加熱、接合させることにより、電流を安定的に流せる面状発熱体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明のもう一つの利点は、当該面状発熱体用電極は長期の保存が可能で、導電性物質を形成している少なくとも一部の溶媒を加熱除去した後、直ちに面状導電体に加熱、接合させる必要がないことである。
【0008】
したがって、本発明による面状発熱体用電極の製造方法は、平面電極に導電性物質を塗布し、この導電性物質を形成している少なくとも一部の溶媒を加熱除去することを特徴とするものである。
【0009】
このような本発明による面状発熱体用電極の製造方法は、好ましくは、前記の導電性物質が高粘度の導電性ペーストであるもの、を包含する。
【0010】
そして、本発明による面状発熱体用電極は、平面電極と、導電性物質を形成している少なくとも一部の溶媒が加熱除去された導電性物質とからなることを特徴とするもの、である。
【0011】
また、本発明による面状発熱体は、表面に凹凸を有する面状導電体に請求項3に記載の面状発熱体用電極が設けられてなることを特徴とするもの、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、当該面状発熱体用電極を表面に凹凸のある面状導電体に加熱、接合させると、電流を安定的に流すことができる面状発熱体、即ち、高発熱効率の面状発熱体、を得ることができる。
【0013】
このように本発明の用途の一つとして、表面に凹凸があり柔軟性には富んでいるが、従来、基材自身の強度および電極との接合強度が小さくて取り扱いや、高発熱効率化ならびに耐久性等に難点があった面状導電体を、さらに高発熱効率の面状発熱体として利用することを可能にするものである。しかしながら、本発明の用途は前記の面状発熱体に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の平面電極は、導電性を有する金属あるいはその合金であればいずれも用いることができるが、銅、燐青銅、アルミニウム等が好ましい。
【0015】
平面電極の形状についても、何ら制限は無く、本発明では、平板、梨地加工した平板、あるいはメッシュ状形状の平面電極を使用できる。本発明の平面電極の幅に特段の制約はないが、面状導電体の大きさとの相対的な比較で決定されるべきである。平面電極の占める面積が大きすぎれば、面状発熱体としての有効面積が損なわれる。また、本発明の平面電極の厚みが極端に厚いと、面状発熱体の柔軟性が損なわれるため好ましくない。本発明における平面電極の厚みは500μm以下が好ましい。
【0016】
本発明の導電性物質としては、好ましくは、例えば、25℃における粘度が100〜700dPa・s、特に200〜500dPa・s、である、高粘度の導電性ペーストを挙げることができる。
【0017】
導電性ペーストの粘度が低いと、平面電極に塗布しても流れやすい。また、導電性ペーストの粘度が高すぎると平面電極に塗布しにくい。
【0018】
導電性ペーストの粘度は、適当な有機溶媒を添加することにより調整することができる。
【0019】
このような導電性ペーストは、一般的に、導電性を付与するフィラーとバインダーとからなる。フィラーは、導電性が良好な粒子、例えば、銅、銀、カーボンあるいは銀とカーボンの併用系が一般的である。バインダーとしては、好ましくは、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂を挙げることができる。一般に、導電性ペーストは熱硬化型および蒸乾型に分類されているが、本発明では熱硬化型および蒸乾型のいずれの導電性ペーストも使用することができる。
【0020】
導電性ペーストの溶媒成分として適当な有機溶媒は、主として導電性ペーストのバインダーの種類により決まり、たとえば熱硬化型のポリエステル樹脂系の導電性ペーストでは2−ブトキシエチルアセテート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート等があり、また、ポリアミドイミド樹脂系の導電性ペーストではN−メチル−2−ピロリドンがある。
【0021】
平面電極に当該導電性ペーストを塗布後の、含まれている溶媒を除去する加熱温度とその加熱時間は使用している溶媒の種類によって異なるが、通常は温度で80〜150℃、時間は1〜30分が好ましい。
【0022】
本発明が使用される表面に凹凸がある面状導電体としては、任意のそのような面状導電体を用いることができるが、本発明の効果が特に顕著に得ることができる好ましい面状導電体としては、例えば和紙糸で製織した織物または編物の炭化物を挙げることができる。このような炭化物面状導電体は、柔軟性に富んでいるが基材自身の機械的強度が小さく取り扱いに難点があり、また、表面に凹凸があることから平面電極との接合強度が十分でなくて良好な電気的特性を安定して得ることが従来困難とされてきた面状導電体である。本発明において特に好ましい、和紙糸で製織した織物または編物の炭化物としては、例えば特開2003−306850号公報により提案されたものを挙げることができる。
【0023】
導電性ペーストの塗布量については、前記のような面状導電体の表面の凹凸部の空隙部を充填させるのに十分な量であるが、その必要最小量は試行の結果決定できる。
【0024】
本発明の面状発熱体用電極の使用にあたっては、面状導電体に接触させて圧着、加熱硬化させる必要がある。
【0025】
導電性ペーストを硬化させるための硬化温度は80〜230℃、時間は1〜60分が好ましい。圧着に要する圧力は、好ましくは0.5〜1.5MPaである。
【0026】
なお、圧着時間は導電性ペーストを面状導電体の凹凸部に浸透させる目的であるので、必ずしも加熱硬化に要する時間を通して圧着する必要はない。圧着に要する最小時間は5〜60秒で十分である。
【実施例】
【0027】
<実施例1>
ポリエステル系樹脂中に銀フィラーが充填されている熱硬化型導電性ペースト(東洋紡績(株)製、「DW−104H−3」(商品名))を溶媒2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテートにて希釈し、粘度250dPa・sの導電性ペーストを作製した。
【0028】
次に、この導電性ペーストを平面電極(銅製、幅20mm、厚み100μm)の片面に塗布(塗膜厚130μm)した後、100℃で30分間加熱することによって溶媒を除去して、本発明の面状発熱体用電極を得た。
【0029】
ついで、和紙糸で製織した編物を炭化して炭とした炭化物(新日本テックス(株)製、「わし炭」(商品名))からなる面状導電体の両端に、前記面状発熱体用電極を、導電性ペースト塗布面が面状導電体に接するように重ね合わせ、140℃で15秒間の熱圧着(圧力1MPa)した後、再度130℃で30分間加熱硬化させることによって、面状発熱体を得た。
【0030】
<実施例2>
実施例1で得られた面状発熱体用電極を常温で60日間放置した後、和紙糸で製織した編物を炭化して炭とした炭化物(新日本テックス(株)製、「わし炭」(商品名))からなる面状導電体の両端に、前記面状発熱体用電極を、導電性ペースト塗布面が面状導電体に接するように重ね合わせ、140℃で15秒間の熱圧着(圧力1MPa)した後、再度130℃で30分間加熱硬化させることによって、面状発熱体を得た。
【0031】
各実施例で得られた面状発熱体の両電極間に50Vの電圧を2分間通電させる試験を行ったが、いずれの実施例においても面状導電体と電極間の接触電気抵抗変動に起因する電流値変動が生じないことを目視確認した。
【0032】
また、各実施例で得られた面状発熱体の電極に粘着テープを貼り付けた後、テープを剥がすというテープ剥離による密着強度試験を行ったが、電極が面状導電体から剥離することはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面電極に導電性物質を塗布し、この導電性物質を形成している少なくとも一部の溶媒を加熱除去することを特徴とする、面状発熱体用電極の製造方法。
【請求項2】
前記の導電性物質が高粘度の導電性ペーストである、請求項1に記載の面状発熱体用電極の製造方法。
【請求項3】
平面電極と、導電性物質を形成している少なくとも一部の溶媒が加熱除去された導電性物質とからなることを特徴とする、面状発熱体用電極。
【請求項4】
表面に凹凸を有する面状導電体に請求項3に記載の面状発熱体用電極が設けられてなることを特徴とする、面状発熱体。

【公開番号】特開2008−34307(P2008−34307A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208623(P2006−208623)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000243331)本多産業株式会社 (11)
【出願人】(598011503)新日本テックス株式会社 (13)
【Fターム(参考)】