説明

靴底の射出成形用金型装置

【課題】 平坦状の接地面と側面との交差部が角度を成して防滑効果のある接地ブロックでなる靴底意匠を備えた靴底の射出成形用金型として好適な装置を提供する。
【解決手段】 靴底本体の底面に接地ブロックを並設して意匠とした靴底の射出成形用金型装置で、金型本体2と該金型本体2に設けた凹入部1に組み込んだベース金型3Aおよび該ベース金型3A上に積層状に重ねて前記凹入部1に組み込んだ意匠金型4Aを、前記金型本体2側から螺入させたねじ杆9で直接又は間接的に互いに止着する.前記意匠金型4Aには、該意匠金型4Aの載置面である前記ベース金型3Aの上面とほぼ直交する内壁面を備えた、透孔や切欠12などの接地ブロック形成部を並設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概し、長靴などの作業用靴の靴底を射出成形する際に用いる射出成形用金型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長靴などの作業用靴は、靴底接地部(踏み付け部とヒール部)の意匠(凹凸パターン)を、多数の接地ブロックを並設して構成し、該接地ブロックを、その接地(先端)面を平坦状にすると共に側(立)面を前記接地面に対して略直交方向に配するようにして側面と接地面との交差部に角度を持たせるようにして防滑効果を期待するようにしている。
【0003】
そして、前記の角度を備えた靴底接地部を得るためには、金型本体に金型基盤を嵌合し、該金型基盤上に第一嵌合部材と第二嵌合部材を段差を持たせて隣接並設し、その段差の境界において前記角度が生じるような構造の金型装置が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特許第3689886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例は、個々の接地ブロックごとに第一、第二の嵌合部材を組合わせなければならないので、その組合わせ操作が煩雑で、殊に嵌合部材間にガス抜き用としての隙間を形成させつつ当該組合わせ作業をしなければならないので、熟練を要し、嵌合部材そのものの製作にも煩雑さが伴う。
【0006】
本発明は、斯様な従来例の欠点を回避することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
靴底本体の底面に接地ブロックを並設して意匠とした靴底の射出成形用金型装置において、金型本体と該金型本体に設けた凹入部に組み込んだベース金型および該ベース金型上に積層状に重ねて前記凹入部に組み込んだ意匠金型を、前記金型本体側から螺入させたねじ杆で直接又は間接的に互いに止着すると共に、前記意匠金型には、該意匠金型の載置面である前記ベース金型の上面とほぼ直交する内壁面を備えた、透孔や切欠形状の接地ブロック形成部を並設したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金型本体にベース金型と意匠金型を上下に積層状に重ね合わせて組み込むだけで、接地面と側面との交差部が角度の有る防滑用靴底用の金型装置を簡単に得ることができる。
【実施例】
【0009】
図面は本発明に係る靴底の射出成形用金型装置の一実施例を示し、図1は一部を断面で示した分解図、図2は第一意匠金型と第一ベース金型を組付けた状態の側面図、図3は第一意匠金型の平面図、図4は挿通孔を省略して示した第一ベース金型の平面図、図5は図4の側面図、図6は踵部側の金型体の平面図、図7は図6のa−a線断面図、図8は踵部側の使用状態を示す断面図、図9は挿通孔を省略して示した、第二実施例の第一ベース金型の平面図、図10は図9の正面図である。
【0010】
実施例装置は、踏み付け用部1aと踵用部1bを土踏まず用部1cと介して連通させた第一凹入部1を備えた金型本体2の前記踏み付け用部1aに第一ベース金型3Aと第一意匠金型4Aを上下に積層状に重ね合わせて組み込み、また、前記踵用部1bの下側に該踵用部1bと連通させて設けた第二凹部1b´に第二ベース金型3Bを第二意匠金型4Bを上下に重ね合わせて重合し、前記第一凹入部1の上面側を金型本体2上に載置した上金型5で閉塞して構成した該第一凹入部1内に、前記第二ベース金型3Bと第二意匠金型4Bに設けた注入路16を通じて熱可塑性樹脂等の材料を注入して、硬化脱型して靴底を得るようにしたものである。
【0011】
前記第一ベース金型3Aは、上、下両面を平坦状とした平板体で構成し、前記金型本体2に縦設した第一接合ねじ6挿通用の挿通孔7と一致する位置にして下面に設けたねじ穴8と、上面側に重ね合わせる前記第一意匠金型4Aと接続する第一接続ねじ9を挿通する挿通孔10を設けると共に、適所に通気孔18,…を縦設して構成したものである。
【0012】
第一意匠金型4Aは、第一ベース金型3Aと同様に第一凹入部1の前記踏み付け用部1aの平面視輪郭形とほぼ同形の輪郭形を備えた、多孔板体で成り、前記第一ベース金型3Aに設けた前記挿通孔10と一致する位置にして、前記第一接続ねじ9の先端が螺合するねじ穴11を備え、多数の切欠12,…と窓孔13,…を設けた、靴底の接地ブロック形成材としたものである。
【0013】
靴底の接地ブロック形成部を構成する前記切欠12,…と窓孔13,…の内側面12a,…、13a,…は、前記第一ベース金型3Aの平坦状の上面3A´に対しほぼ直交方向に配置させるようにしてあり、該上面3´の交差部が靴底接地ブロックの側面と接地面とで成す角部を構成するようにしてある。
【0014】
第一意匠金型4Aと第一ベース金型3Aは、前者を上側にして、かつ、通気孔18,…上に第一意匠金型4Aが存するようにして挿通孔10を通じて先端をねじ孔11に螺合した第一接続ねじ9によって互いに接続して、第一凹入部1の踏み付け用部1aに組み込み、金型本体2に設けた挿通孔7を通じてねじ孔8に螺合した第一接合ねじ6によって金型本体1に止着、固定してある。
【0015】
前記第二意匠金型4Bは、第一意匠金型4Aと同様、切欠や窓孔15(実施例は窓孔15のみ)を備えた多孔板体で成り、該窓孔15の内側面15aが第二ベース金型3Bの平坦状の上面3B´と直交する方向に配され、止着ねじ9´で第二ベース金型3Bと互いに固着して、第二ベース金型3B上に載置した状態で前記第二凹部1b´内に組み込み、前記金型本体2の下面にねじ20で締付け、第二凹部1b´内に保持されている。
【0016】
しかして、注入口21から注入路16を通じて材料を注入すると、該材料は上金型5と第一、第二の意匠金型4A,4Bおよび金型本体2とが成す空室内に充填され、各意匠金型4A,4Bの切欠12や窓孔13,15に流れ込み、その材料によって押圧された金型内のガスは第一意匠金型4Aと第一ベース金型3Aとが成す隙間、第一ベース金型3Aと金型本体2とが成す隙間を通じて第一接合ねじ6の螺旋溝および通気孔19を通じて外部に放出され、踵部側は、第二意匠金型4Bと第二ベース金型3Bおよび金型本体2とで成す隙間を通じて外部へ放出され、各意匠金型4A,4Bと各ベース金型3A,3Bとで形成する接地ブロックはその先端面(接地面)と側面(立上り面)との交差部が角を持ったものとして脱型され、防滑効果の有る靴底を得られるのである。
【0017】
図9および図10で示す第二実施例の第一ベース金型3A´は第一意匠金型4Aとの対向面すなわち上面に通気溝17を横設したもので、前記空室内に充填された前記材料は、各意匠金型4A,4Bの切欠12や窓孔13,15に流れ込み、該材料によって押圧された金型内のガスは、この通気溝17を通じて第一ベース金型3Aと金型本体2との隙間から本体2の底面に設けた通気孔19を経て外部に放出される。
【0018】
なお、第一実施例は通気孔18、第二実施例は通気溝17を利用してねじ杆(第一接合ねじ6や第一接続ねじ9或いはねじ20)の螺旋溝の利用と共にガスを放出するようにしているが、意匠金型4A,4Bの形状にもよるが、これら通気孔18や通気溝17を省略しても良いし、また、前記螺旋溝を利用したガス抜きを想定しないで通気孔18又は通気溝17のみをガス抜き手段として用いても不都合はない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一部を断面で示した分解図。
【図2】第一意匠金型と第一ベース金型を組付けた状態の側面図。
【図3】第一意匠金型の平面図。
【図4】挿通孔を省略して示した第一ベース金型の平面図。
【図5】図4の側面図。
【図6】踵部側の金型体の平面図。
【図7】図6のa−a線断面図。
【図8】踵部側の使用状態を示す断面図。
【図9】挿通孔を省略して示した、第二実施例の第一ベース金型の平面図。
【図10】図9の正面図。
【符号の説明】
【0020】
1 第一凹入部
2 金型本体
3A ベース金型
4A 意匠金型
9 ねじ杆
12 切欠
13 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底本体の底面に接地ブロックを並設して意匠とした靴底の射出成形用金型装置において、金型本体と該金型本体に設けた凹入部に組み込んだベース金型および該ベース金型上に積層状に重ねて前記凹入部に組み込んだ意匠金型を、前記金型本体側から螺入させたねじ杆で直接又は間接的に互いに止着すると共に、前記意匠金型には、該意匠金型の載置面である前記ベース金型の上面とほぼ直交する内壁面を備えた、透孔や切欠形状の接地ブロック形成部を並設した、靴底の射出成形用金型装置。
【請求項2】
ベース金型の適所に意匠金型と重なり合う通気孔を縦設した、請求項1記載の靴底の射出成形用金型装置。
【請求項3】
ベース金型の上面の適所に意匠金型と重なり合い、しかも、前記ベース金型と金型本体との隙間に連通する通気溝を横設した、請求項1記載の靴底の射出成形用金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−12843(P2008−12843A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187954(P2006−187954)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000167853)弘進ゴム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】