説明

靴用洗浄剤組成物

【課題】 容易に製造することができ、洗浄効果が高く漂白剤特有のにおいを発生させることなく十分な漂白効果が得られる靴用洗浄剤を提供すること。
【解決手段】 次の成分(a)〜(c)
(a)界面活性剤 0.1〜30質量%
(b)ポリオキシエチレン−ポリエチレンテレ
フタレートのブロックポリマー 0.1〜20質量%
(c)ポルフィン誘導体または金属ポルフィリン誘導体
0.0005〜0.1質量%
を含有してなる靴用洗浄剤組成物およびこれをスプレー容器に充填してなるスプレー型靴用洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、靴用洗浄剤組成物に関し、更に詳細には、運動靴に付着した汚れを効果的に洗浄できる靴用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
靴、特に布製の運動靴等の洗浄には、市販の衣料用洗濯洗剤や運動靴専用洗剤が使用されている。しかし、従来のこれら洗剤では、一般に漂白効果が充分でなく、さらに泡切れが悪いという問題点を有している。そこで、漂白効果を高めるために塩素系漂白剤を併用することも試みられているが、塩素系漂白剤を併用すると、特有の臭気が発生し、使用者に不快感を与える問題があった。
【0003】
一方、特許文献1には、界面活性剤、香料、染料等を含む液体洗剤で、水溶性成分を水に溶解した後、これをその1wt%水溶液の25℃における粘度が200センチポイズ以上で、かつエーテル化度が0.8以上のカルボキシメチルセルロース又はこのカルボキシメチルセルロースと非水溶性成分を親水性成分あるいは界面活性剤とともに加え、液の粘度を50〜1000センチポイズに調整してなる運動靴用液体洗浄剤について開示されている。
【0004】
しかし、上記運動靴用洗浄剤は、その製造過程が複雑であり、また洗浄剤自体が高い粘度を有しているため布製の靴への浸透性が悪く、洗浄効果も低く、結局はブラシ等の物理的洗浄力による洗浄に頼るものであった。また、泡立ちも悪く漂白効果も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−41999号
【特許文献2】特開2000−159643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の課題は、容易に製造することができ、洗浄効果が高く漂白剤特有のにおいを発生させることなく十分な漂白効果が得られる靴用洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記事情に鑑み、製造が容易でかつ効果的な洗浄効果、漂白効果を有する洗浄剤について鋭意研究を行ったところ、界面活性剤に加え、特定のポリマーと特定の構造を有する化合物を組み合わせ配合することにより、非常に効果的な靴用洗浄剤となることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(c)
(a)界面活性剤 0.1〜30質量%
(b)ポリオキシエチレン−ポリエチレンテレ
フタレートのブロックポリマー 0.1〜20質量%
(c)ポルフィン誘導体または金属ポルフィリン誘導体
0.0005〜0.1質量%
を含有してなる靴用洗浄剤組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記靴用洗浄剤組成物を、スプレー容器に収納してなるスプレー型靴用洗浄剤を提供するものである。
【0010】
更に、本発明は、上記スプレー型靴用洗浄剤を靴にスプレーする靴の洗浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の靴用洗浄剤組成物は、漂白剤特有のにおいを発生させることなく十分な漂白効果が得られるものである。そしてこのものは、素材が異なった場合であっても、浸透性が変わることなく、付着している皮脂、ドロ、草汁などの汚れを効率よく除去することができるものである。
【0012】
更に、上記洗浄剤組成物をスプレー容器に収納した靴用洗浄剤は、簡単に汚れた靴等に適用しうるため、使用性が優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の洗浄剤組成物において(a)成分として用いられる界面活性剤は、洗浄剤組成物の付着物汚れへの浸透を助け、また運動靴への汚れの再汚染を防止し、付着物汚れの漂白洗浄・除去効果を高めるものである。この界面活性剤としては、従来洗浄剤として使用されている界面活性剤を使用することができるが、好ましくはノニオン界面活性剤、アニオン系界面活性剤又はこれらの組み合わせである。
【0014】
本発明で使用される成分(a)のうち、ノニオン系界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数2〜30の、ポリオキシエチレンアルキルもしくはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルもしくはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアミン;炭素数10〜20のアルキル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数1〜30のメトキシポリオキシエチレンアルカノエート;炭素数10〜20の高級脂肪酸アルカノールアミド;炭素数8〜18のアルキル基を有し、グルコースユニットの平均付加モル数1〜3のアルキルポリグルコシド;炭素数10〜14のアルキル基を有し、グリセリンユニットの平均付加モル数1〜3のアルキルグリセリルエーテル;アルキルジメチルアミンオキシド;アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。これらのうち好ましくは、洗浄力、泡立ち等の点からアルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、特に、ラウリルアミドプロピルジメチルアミンオキシドを用いることが好ましい。本発明の組成物中のノニオン界面活性剤は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0015】
また、本発明で用いるアニオン界面活性剤としては、例えばα−オレフィンスルホネート(AOS)、アルカンスルホン酸、飽和または不飽和の炭素数12〜18の脂肪酸石鹸、炭素数8〜18の脂肪酸メチルエステルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などが好適に使用できる。これらは特に水性汚れやドロ汚れに対する洗浄効果が高いものである。特にアルカンスルホン酸及びポリオキシエチレンアルキル硫酸塩は、洗浄力、可溶化力が高く、すすぎ性も良くアニオン界面活性剤の少なくとも一部として好適に使用できる。本発明の組成物中のアニオン界面活性剤は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0016】
この成分(a)の配合量は、靴用洗浄剤組成物中0.1〜30質量%(以下、単に「%」で示す)の範囲であり、好ましくは0.5〜10%である。配合量が0.1%未満であると、光漂白剤の浸透性を向上させる効果が十分に得られないことがあり、また、10%以上であると、すすぎ性の低下に伴い被洗物の表面がべたつく等、使用後に問題が発生することもある。
【0017】
また、本発明に用いられる成分(b)のポリオキシエチレン−ポリエチレンテレフタレートのブロックポリマーは、分子中にポリオキシエチレン単位とポリエチレンテレフタレート単位を含有するもので、具体的には下記式(I)で表されるものである。
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、RおよびRは、直鎖または分枝鎖の炭素数1ないし18のアルキルであり、L、L及びLは、エチレンであり、Lは、1,4−フェニレンであり、Lは、エチレン、1,2−プロピレンまたはこれらの任意の混合体である。x及びyは、互いに独立して1〜500の数であり、zは、10〜140の数であり、aは、1〜12の数であり、bは、7〜40の数である。ここで、a+bは少なくとも11である)
【0020】
この成分(b)は、特開2000−159643号(特許文献2)等に記載の方法あるいはこれに準じた方法により合成することもできるが、市販品として、Texcare(クラリアントジャパン社製)が上市されているので、これを用いても良い。
【0021】
本発明の靴用洗浄剤における成分(b)の配合量は、0.1〜20%の範囲であり、より好ましくは0.3〜10%である。
【0022】
更に、本発明において成分(c)としては、ポルフィリン誘導体もしくは金属ポルフィリン誘導体が用いられる。このうち、ポルフィリン誘導体は、例えば下式(II)により表されるものである。
【0023】
【化2】

(式中、R〜R10は水素原子、有機基もしくは有機酸塩残基を示すか、互いに隣接する基で閉環構造を形成する)
【0024】
上記式(II)において、有機基としては、アリール、アルキル、アルキルカルボキシ、アルキルヒドロキシ、サルフェート、ビニル等が挙げられ、更に、隣接する基、例えばRとRが形成する閉環構造としては、フェニル骨格等を形成する構造が挙げられる。
【0025】
また、金属ポルフィリン誘導体は、上記式で表されるポルフィリン誘導体の、ピロール環上の窒素原子が金属と配位したものである。配位する金属としては、Zn、Al、Ca、Cd、Mg、Sc、Fe、Co、Mn等が挙げられる。
【0026】
上記成分(c)のうち、好ましいものとしては、前記式において、R〜Rの隣接する基でフェニル骨格を形成し、ピロール環に金属が配位しない構造のテトラベンゾポルフィン(フタロシアニン)である。
【0027】
このポルフィリン誘導体および金属ポルフィリン誘導体の多くは、既に公知のものであり、例えば、上記テトラベンゾポルフィンは、Tinolux BBS(BASF社製)として市販されているので、これを利用することができる。
【0028】
上記成分(c)の配合量は、靴用洗浄剤組成物中0.0005〜1%の範囲であり、好ましくは0.005〜0.1%である。成分(c)の配合量が0.005wt%未満であると、漂白効果が不十分であり、また、1wt%を超えて添加してもその漂白効果は変わらず、不経済である。
【0029】
本発明の靴用洗浄剤組成物には、上記成分(a)ないし(c)の他、必要により他の成分を配合することができる。
【0030】
配合することのできる他の成分としては、ヒドロキシカルボン酸や多価カルボン酸、アミノカルボン酸等のキレート剤、アルコール、多アルコール系、炭化水素系溶剤等の溶剤、平均分子量5000以上のポリエチレングルコール及びナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物等のポリマー等の再汚染防止剤または分散剤、ポリビニルピロリドン等の移染防止剤、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、β−フェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料等の香料、酵素、抗菌防腐剤などを挙げることができる。
【0031】
本発明の靴用洗浄剤組成物の調製は、洗浄剤組成物製造の一般的方法により行うことができる。この製造に当たって特別な加温や攪拌は必要なく、水をはった製造タンク内に各原料を投入し、攪拌するだけの簡便な方法で、短時間で製造することができる。
【0032】
以上のようにして調製される本発明の靴用洗浄剤組成物は、これを液体状態のままで用い、靴の洗浄を行ってもよいが、スプレー容器に収納し、スプレー型靴洗浄剤とすることもできる。スプレー型靴洗浄剤を汚れた靴にスプレーすることで、簡単に汚れた靴等の汚れを落とすことができ、使用性が優れたものである。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0034】
実 施 例 1
靴用洗浄剤組成物:
以下の表1の処方で本発明の靴用洗浄剤組成物(本発明品いおよび2)を作製した。得られた洗浄剤組成物について、以下の洗浄剤試験法、浸透力試験方法およびすすぎ性試験方法により、その性能を評価した。なお、比較品としては、ズックリン(ジョンソン製)(比較品1)、アタック(花王製)(比較品2)およびアリエールジェル(P&G製)(比較品3)を用いた。この結果を表2に示す。
【0035】
( 処 方 )
【表1】

【0036】
( 洗浄力試験方法 )
以下の人工汚染布の初期の明度を、色差計(ミノルタ製 色彩色差計CT−20)を用いて測定した。次いで、各試料(発明品または比較品)の処方液中に各人工汚染布を15分間浸漬した後、汚染布を取り出して水道水で充分にすすいだ。そのあと、フェードメーター(スガ試験機製 低温サイクルキセノンフェードメーター)内にて30分間乾燥させ、洗浄後の色差を測定し、白布の明度を100%として、洗浄率を算出した。
【0037】
『使用人工汚染布』
EMPA#116 (コットン:血液・ミルク・墨汁)
EMPA#164 (コットン:草汁)
EMPA#168 (ポリエステル/コットン(65/35):紅茶)
【0038】
( 浸透力試験方法 )
ぴんと張った白布(コットン/ポリエステル)に半径1cmの円を描いた。各試料(発明品または比較品)をスポイトにとり、白布の15cm上から描いた円の中心に1滴を滴下し、液が広がり円の外を越えるまでの時間を測定し、下記基準により評価した。
【0039】
評価基準:
評 価
○ : 円を越えるまでの時間が15秒以内
△ : 円を越えるまでの時間が16〜60秒
× : 円を越えるまでの時間が60秒以上
【0040】
( すすぎ性試験方法 )
すすぎ性は、各試料(発明品または比較品)を塗布した白布のすすぎ水のpHを測定することにより、評価した。まず、各試料0.1mlを塗布したコットン白布(5×5cm)を200mlのイオン交換水(測定pH5.5)の中に入れ、攪拌しながら1分間すすぎを行う。
【0041】
次に、200mlのイオン交換水を入れた別のビーカーに、上記白布を入れて1分間すすぎを行う。これを5回繰り替えした後のすすぎ水のpHを、pHメーター(東亜電極製;TITRATR AUT-301)を用いて測定した。すすぎ性の評価について、下記の基準で判定を行った。なお、前記の通り発明品1、2のpHは、8.0であり、ズックリン(ジョンソン製)(比較品1)、アタック(花王製)(比較品2)およびアリエールジェル(P&G製)(比較品3)のpHは、それぞれ6.3、10.5、8.3であった。
【0042】
評価基準:
評 価
○ : すすぎ水のpHが5.5未満
△ : すすぎ水のpHが5.5〜6.0
× : すすぎ水のpHが6.0以上
【0043】
( 試験結果 )
【表2】

【0044】
上記の結果より、本発明品は各比較品と比べて種々の汚れに対し優れた洗浄効果を示していることが明らかになった。また、本発明品は各比較品と比べて浸透力が優れていることがわかった。
【0045】
実 施 例 2
発明品1の靴用洗浄剤組成物を、そのまま市販のトリガー式スプレー容器に収納してスプレー型靴用洗浄剤を調製した。この靴用洗浄剤から洗浄剤組成物を、小学生が半年間履いたコットン製白色上履き靴およびコットン/ポリエステル製白色上履き靴に、片足3回ずつ満遍なくスプレー(0.8g/回)した後、3分間放置した。
【0046】
その後流水ですすぎ、上履き靴を日光にあてて充分に乾燥させたところ、いずれの上履き靴もほとんど汚れ残りがなく洗浄されており、洗浄時のすすぎ性も良いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の靴用洗浄剤組成物は、漂白剤特有のにおいを発生させることなく十分な漂白効果が得られるものである。そしてこのものは、素材が異なった場合であっても、浸透性が変わることなく、付着している皮脂、ドロ、草汁などの汚れを効率よく除去することができるものであるため、靴を洗浄するための洗浄剤として広く利用しうるものである。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c)
(a)界面活性剤 0.1〜30質量%
(b)ポリオキシエチレン−ポリエチレンテレ
フタレートのブロックポリマー 0.1〜20質量%
(c)ポルフィン誘導体または金属ポルフィリン誘導体
0.0005〜0.1質量%
を含有してなる靴用洗浄剤組成物。
【請求項2】
界面活性剤がアルカンスルホン酸系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル及びアミンオキシドから選ばれる1種若しくは2種以上の混合物である請求項1項記載の靴用洗浄剤組成物。
【請求項3】
ポリオキシエチレン−ポリエチレンテレフタレートのブロックポリマーが次の式(I)で表されるものである請求項1または2記載の靴用洗浄剤組成物。
【化1】

(式中、RおよびRは、直鎖または分枝鎖の炭素数1ないし18のアルキルであり、L、L及びLは、エチレンであり、Lは、1,4−フェニレンであり、Lは、エチレン、1,2−プロピレンまたはこれらの任意の混合体である。x及びyは、互いに独立して1〜500の数であり、zは、10〜140の数であり、aは、1〜12の数であり、bは、7〜40の数である。ここで、a+bは少なくとも11である)
【請求項4】
ポルフィリン誘導体または金属ポルフィリンが次の式(II)で表されるものである請求項1ないし3のいずれかの項記載の靴用洗浄剤組成物。
【化2】

(式中、R〜R10は水素原子、有機基もしくは互いに隣接する基で閉環構造を形成する)
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの項に記載の靴用洗浄剤組成物を、スプレー容器に収納してなるスプレー型靴用洗浄剤。
【請求項6】
請求項5のスプレー型靴用洗浄剤容器から、靴用洗浄剤組成物を靴にスプレーし、次いで1ないし5分間放置後、水で洗い落とすことを特徴とする靴の洗浄方法。


【公開番号】特開2011−208023(P2011−208023A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77338(P2010−77338)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】