説明

鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置

【課題】電動パワーステアリング装置におけるトルクセンサへの曲げ荷重の影響を抑える。
【解決手段】ステアリングハンドル21の操舵力を車輪に伝達するステアリングシャフト22と、車体フレーム2の上部に設けられステアリングシャフト22の上部を回動可能に支持する上部軸受け24と、車体フレーム2の下部に設けられステアリングシャフト22の下部を回動可能に支持する下部軸受け25と、ステアリングシャフト22にかかる捻りトルクを検出するトルクセンサ26と、トルクセンサ26が検出した捻りトルクに基づきステアリングシャフト22に操舵力を付与する電動モータ27と、を備える電動パワーステアリング装置において、電動モータ27を上部軸受け24と下部軸受け25との間のステアリングシャフト22に設け、トルクセンサ26を上部軸受け24より上方のステアリングシャフト22に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の電動パーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングシャフトに生じる捻りトルクを検出し、捻りトルクに応じてステアリングの操舵をアシストする電動パワーステアリング装置が従来から知られている。
【0003】
この種の電動パワーステアリング装置には、トルクセンサとして磁歪式センサを用いるものがあり(特許文献1参照)、この磁歪式センサは、ステアリングシャフト表面に磁歪膜を形成し、この磁歪膜の周囲に検出コイルを設けることで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−303996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁歪式センサは、捩れトルク以外に曲げ荷重にも反応してしまうため、ステアリングシャフトへの曲げ荷重が大きい車両への適用には制約がある。しかし、これに対して、ステアリングシャフトが曲がらないようベアリングを多用したり、曲げ荷重が入力しないようにリンク機構を設けたりすると装置が大型化してしまう。このため、小型でステアリングシャフトへの曲げ荷重の入力も大きい不整地走行車両等の車両への磁歪式センサの適用には制約があった。
【0006】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、トルクセンサへの曲げ荷重の影響を簡易に抑えることができる鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載の発明は、ステアリングハンドル(例えば実施形態におけるステアリングハンドル21)と、前記ステアリングハンドルの操舵力を車輪に伝達するステアリングシャフト(例えば実施形態におけるステアリングシャフト22)と、車体を構成する車体フレーム(例えば実施の形態における車体フレーム2)の上部に設けられ前記ステアリングシャフトの上部を回動可能に支持する上部軸受け(例えば実施形態における上部軸受け24)と、前記車体フレームの下部に設けられ前記ステアリングシャフトの下部を回動可能に支持する下部軸受け(例えば実施形態における下部軸受け25)と、前記ステアリングシャフトにかかる捻りトルクを検出するトルクセンサ(例えば実施形態における磁歪式トルクセンサユニット26)と、前記トルクセンサが検出した捻りトルクに基づき前記ステアリングシャフトに操舵力を付与する電動モータ(例えば実施形態における電動モータユニット27)と、を備える鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置において、前記電動モータを前記上部軸受けと前記下部軸受けとの間の前記ステアリングシャフトに設け、前記トルクセンサを前記上部軸受けより上方の前記ステアリングシャフトに設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記トルクセンサは、前記ステアリングシャフト側に磁歪膜(例えば実施形態における第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31)を設けるとともに、この磁歪膜周りに検出コイル(例えば実施形態における第1検出コイル32及び第2検出コイル33)を設けた磁歪式トルクセンサであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記ステアリングシャフトの下端にタイロッド取付けプレート(例えば実施形態におけるピットマンアーム54)を設け、前記タイロッド取り付けプレートに前記ステアリングシャフトの操舵力を車輪に伝えるタイロッド(例えば実施形態におけるタイロッド55,55)を設け、前記タイロッド取付けプレートを、前記下部軸受けよりも下方の前記ステアリングシャフトに設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記車体フレームに前記下部軸受けを支持する下部軸受け支持ブラケット(例えば実施形態における下部軸受け支持ブラケット47)が設けられ、前記電動モータを前記下部軸受け支持ブラケットに取付けたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記トルクセンサの外周を覆い前記ステアリングシャフトの軸方向に長さをもった筒状の補強ケース(例えば実施形態におけるハウジング37)を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記補強ケースは、前記ステアリングシャフトに固着されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記補強ケースの上部に、前記ステアリングハンドルの取付け部(例えば実施形態における取付け部44)を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、前記補強ケースは、前記車体フレームに固着され、前記上部軸受けの上方の前記ステアリングシャフトをベアリング(例えば実施形態におけるベアリング72,73)を介して軸支することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、トルクセンサへの曲げ荷重の影響を簡易に抑えることができる。すなわち、上部軸受けと下部軸受け間のステアリングシャフトには、モータ荷重による曲げ及び車輪からの路面反力を受けた撓みが発生しやすいが、トルクセンサを上部軸受けより上方に配置するので、これらの曲がりがトルクセンサに伝達するのを低減できる。また、鞍乗り型車両では通常、上部軸受けと下部軸受け間のステアリングシャフトの長さよりも、上部軸受けよりも上方のステアリングシャフトの長さの方が短く設定されるが、この場合、上部軸受けより上方のステアリングシャフトは撓みによる曲がりが少なくなるため、トルクセンサへの曲がりの影響を抑えることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、磁歪式センサへの曲げ荷重の影響を抑えることができ、従来の機械式トルクセンサを用いる場合に比べて電動パワーステアリング装置の構造を簡易化及び小型にできる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、路面反力によりステアリングシャフトに最も大きな曲げ荷重がかかり易い部分を下部軸受けより下方にすることで、トルクセンサ取付け部間に二つの軸受けを介することとなり、トルクセンサの取付け部への曲げ荷重の伝達をより低減できる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、下部軸受け上方のステアリングシャフトを、電動モータのケースで覆うことが可能であり、該ケースがステアリングシャフト軸方向長さを有し、かつ、ステアリングシャフトを支持するベアリングを有していれば、このケースによりステアリングシャフトの曲げを抑制できる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、補強ケースにより、上部軸受け上方のステアリングシャフトの曲げを抑制することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、ステアリングシャフトと補強ケースが一体に捻れるので、上部軸受け上方のステアリングシャフトの曲げを抑制できる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、補強ケースを活用することで部品点数を削減することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、上部軸受け上方のステアリングシャフトの曲げを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【図2】第1の実施形態に係る鞍乗り型車両のステアリング系上部の断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る鞍乗り型車両のステアリング系下部の断面図である。
【図4】ステアリング系の上部軸受け、下部軸受け、及びタイロッドの取付け部位に注目した場合のステアリングシャフトの曲げモーメント図である。
【図5】ステアリング系の上部軸受け、下部軸受け、減速機ケース内ベアリング、及びタイロッドの取付け部位に注目した場合のステアリングシャフトの曲げモーメント図である。
【図6】第1の実施形態の変形例を説明するステアリング系上部の断面図である。
【図7】第1の実施形態の変形例を説明するステアリング系上部の断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るステアリング系上部の断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るステアリング系上部の断面図である。
【図10】本発明の実施形態の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態について添付の図面を参照し説明する。
<第1の実施形態>
図1に本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置20を備える鞍乗り型車両1の側面図が示されている。鞍乗り型車両1は、不整地走行を主目的とした所謂ATV(All Terrain Vehicle)であり、車体フレーム2の前後に比較的大径の低圧バルーンタイヤである左右の前輪WF及び後輪WRを設けられ、車体フレーム2において前輪WR及び後輪WFの間にエンジンユニットEを設けられている。図中矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示している。
【0025】
車体フレーム2は、複数種類の鋼材を溶接等によって結合して構成されており、車体前部から後部にかけて前後方向に沿って延出するメインフレーム5,5を備え、さらに、このメインフレーム5,5の中央部を上辺にして側面視で平行四辺形の枠組みをなすセンターフレーム部6と、前輪WFを懸架するようにしてセンターフレーム部6の前部に連設されるフロントフレーム部7と、センターフレーム部6の後部に連設され図示しない乗車用シート等を支持するリヤフレーム部8とを備えている。
【0026】
センターフレーム部6は、車両前後方向に沿って延び、その後、上方に湾曲してメインフレーム5,5に結合する左右一対のロアパイプ10,10と、ロアパイプ10,10の前部に一端を結合して上方に延び、他端をメインフレーム5,5の前部に結合する左右一対の傾斜パイプ11,11とからなり、フロントフレーム部7は、前半部が前上がりに傾斜するとともに後半部が略水平に延びるようにして後端部がロアパイプ10,10の前端に結合されるフロントロアパイプ12,12と、メインフレーム5,5の前端部とフロントロアパイプ12,12の前端部間を連結する左右一対のフロントクッションパイプ13,13と、フロントクッションパイプ13,13の中間部と傾斜パイプ11,11の中間部間に連結される左右一対のフロントサブパイプ14,14とからなる。
【0027】
エンジンユニットEは水冷式エンジンであり、図示しないクランク軸を車両前後方向に指向させた縦置き状態でセンターフレーム部6に搭載されている。また、リヤフレーム部8は、メインフレーム5,5の後部一部を主としてなり、さらに、メインフレーム5,5とロアパイプ10,10の湾曲部間を連結する左右一対のロアサブパイプ15,15と、ロアサブパイプ15,15の下部とメインフレーム5,5の後端部間を連結するロアサブパイプ16,16とを備えている。このリヤフレーム部8には図示しない乗員用シート等が配設される。
【0028】
フロントフレーム部7のフロントクッションパイプ13,13は、メインフレーム5,5との結合部から上方に突出しており、その上端に左右一対のL字パイプ17,17の一端が結合され、このL字パイプ17,17の他端はメインフレーム5,5に結合されている。左右のL字パイプ17,17の屈曲部近傍にはそれぞれ上方に突出する金属製のプレート部材18,18が溶着されており、このプレート部材18,18間にはクロスメンバ19が架設されている(図中、破線にて示す。紙面垂直方向に延びる)。これらプレート部材18,18及びクロスメンバ19も、車体フレーム2の一構成部材として含まれる。
【0029】
本実施形態に係る電動パワーステアリング装置20は車両前部に構成されており、ステアリングハンドル21と、ステアリングハンドル21の操舵力を伝達するステアリングシャフト22と、磁歪式トルクセンサユニット26と、電動モータユニット27とを備えている。この電動パワーステアリング装置20では、ステアリングシャフト22にかかる捻りトルクを磁歪式トルクセンサユニット26により検出し、この検出した捻りトルクに基づき電動モータユニット27によりステアリングシャフト22に操舵力を付与する。電動モータユニット27によるステアリングシャフト22に対する操舵力の付与は制御装置であるECU28の制御により行われ、ECU28には磁歪式トルクセンサユニット26と電動モータユニット27とが電気的に接続されている。
【0030】
ステアリングシャフト22は、クロスメンバ19の車幅方向中央に設けられたブラケット23内に収容された上部軸受け24によりその上部を回動可能に支持され、フロントフレーム部7の下部に設けられた下部軸受け25によりその下部を回動可能に支持されている。これら上部軸受け24及び下部軸受け25も電動パワーステアリング装置20の構成部材に含まれる。
【0031】
磁歪式トルクセンサユニット26は、上部軸受け24より上方のステアリングシャフト22に設けられており、図2に示すようにステアリングシャフト22に形成され上下に並ぶ第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31と、この第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31周りに設けられた第1検出コイル32及び第2検出コイル33とを備えている。第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31は、ステアリングシャフト22の外周面に周方向全周にわたって環状に形成され、トルクに応じて磁歪特性が変化する磁歪膜からなり、例えば気相メッキ法で形成したNi−Fe系の合金膜からなる。この第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31は互いに逆方向の磁気異方特性を有しており、第1磁歪膜30の磁歪方向に対して、第2磁歪膜31の磁歪方向は異なっている。
【0032】
第1検出コイル32及び第2検出コイル33はそれぞれ、ステアリングシャフト22を通された上下一対の筒状のコイルボビン34,34と、コイルボビン34,34にそれぞれ巻かれたコイル35,35と、コイルボビン34,34及びコイル35,35を収納する磁性を有したヨーク36,36とからなり、ステアリングシャフト22の上部を囲うように円筒形状に形成されステアリングシャフト22の軸方向に長さをもったハウジング37内に収容されている。ハウジング37は上部軸受け24及びこれを収容するブラケット23の上方に配置され、下部を開放してステアリングシャフト22を通し、下部周域に形成したフランジ38を介してプレート39を締結し下部開放域を閉じている。ハウジング37はその上部内周壁40とプレート39との間でヨーク36,36を保持しており、コイル35,35を第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31の周囲に位置付けている。なお、図示しないがコイル35,35にはカプラが設けられ、このカプラによりコイル35,35の検出信号が外部へ取り出される。
【0033】
ハウジング37は、ステアリングシャフト22と一体化されており、ハウジング37の上部内周壁40の中央には周方向に複数の溝を有する嵌合孔41Aが形成され、プレート39の中央には周方向に複数の溝を有する嵌合孔41Bが形成され、嵌合孔41Aにステアリングシャフト22の上端に形成されたスプライン溝42Aがスプライン圧入されるとともに、嵌合孔41Bにステアリングシャフト22の第2磁歪膜31の下方に形成されたスプライン溝42Bがスプライン圧入されている。これによりハウジング37とステアリングシャフト22とが一体化されており、ステアリングシャフト22の回動に伴いハウジング37が回動し、また、第1検出コイル32及び第2検出コイル33もハウジング37に伴い回動するようになっている。また、ハウジング37の上部にはステアリングシャフト22の上端を通す孔を有するプレート部材43が設けられ、このプレート部材43にはステアリングハンドル21の取付け部44が設けられている。この取付け部44にステアリングハンドル21が取り付けられている。なお、プレート部材43はハウジング37の上部に溶着固定されている。
【0034】
図1を参照し、電動モータユニット27は上部軸受け24と下部軸受け25との間のステアリングシャフト22に設けられており、電動モータ本体45と、電動モータ本体45と結合する減速機ケース46とを備えている。ここで図3に示すようにフロントサブパイプ14,14には、ステアリングシャフト22を通す一部開口を有する金属製板材からなる下部軸受け支持ブラケット47が溶着され、この下部軸受け支持ブラケット47の下面には下部軸受け25を収容する軸受け取付け部48が溶着されており、その上面には減速機ケース46の座面49が形成されている。減速機ケース46は座面49に載置されるようにして図示しないボルトによって取付けられている。
【0035】
減速機ケース46は、ステアリングシャフト22の下部一部を覆うと共に、ステアリングシャフト22に設けられたウォームホイール50を覆う箱形状を呈し、その上部及び下部にステアリングシャフト22を挿通させるとともに回動可能に支持するベアリング51,52を備えている。減速機ケース46の後部には電動モータ本体45の軸部53を通す孔が形成され、電動モータ本体45はその軸部53を減速機ケース46内の延ばすようにして減速機ケース46に固定されている。ウォームホイール50に電動モータ本体45の軸部53の先端側に設けられたウォームギヤ(図示せず)が噛み合う。これにより、電動モータ本体45の駆動力がステアリングシャフト22に伝達される。
【0036】
下部軸受け25から下方に突出するステアリングシャフト22の下端部にはスプライン嵌合によりピットマンアーム54が固定されている。このピットマンアーム54はステアリングシャフト22の車両後方斜めにその両端部を延出しており、この両端部それぞれには、タイロッド55,55が取付けられている。タイロッド55,55はそれぞれ左右に延出し前輪WFに連結されている。これにより、ステアリングシャフト22からの操舵力が前輪WFに伝達される。また、ピットマンアーム54から突出するステアリングシャフト22の下端にはボルト56が締結され、ピットマンアーム54はステアリングシャフト22上に固定保持されている。
【0037】
以上に記載した本発明の第1の実施形態によれば、磁歪式トルクセンサユニット26への曲げ荷重の影響を、ステアリングシャフト22の支持のためのベアリングを多用することなく簡易に抑えることができる。すなわち、磁歪式トルクセンサユニット26が上部軸受け24より上方に配置されているので、これらの曲がりが磁歪式トルクセンサユニット26に伝達するのを低減できる。つまり、図4に示すように、図中P1によってステアリングシャフト22の支持位置が示される上部軸受け24と、図中P2によってステアリングシャフト22の支持位置が示される下部軸受け25との間のステアリングシャフト22には、電動モータユニット27のモータ荷重による曲げ或いは撓み(図中、領域M1)、及び、タイロッド55,55及びピットマンアーム54を介して伝達される路面反力による曲げ或いは撓み(図中、領域M2)或いは走行揺動によるステアリングシャフト22の撓みが発生しやすいが、磁歪式トルクセンサユニット26が上部軸受け24より上方に配置されているので、これらの曲げの影響を抑えることができる。なお、図中M3はステアリングハンドル21の操舵による曲げ荷重を示し、また、図中S1は上部軸受け24上方の磁歪式トルクセンサユニット26内のステアリングシャフト22の長さ領域を示し、図中S2は磁歪式トルクセンサユニット26上方のステアリングシャフト22の長さ領域を示している。
【0038】
また、本実施形態では、図1から明らかなように、車体フレーム2の上方に延びるL字パイプ17,17の位置よりも上方に上部軸受け24があるため、上部軸受け24と下部軸受け25間の長さが比較的長くなる。これにより、必然的に、上部軸受け24と下部軸受け25間のステアリングシャフト22の長さよりも、上部軸受け24よりも上方のステアリングシャフト22の長さの方が短く設定され、上部軸受け24より上方のステアリングシャフト22は撓みによる曲がりが少なくなるため、上部軸受け24より上方に配置された磁歪式トルクセンサユニット26への曲がりの影響を抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態では、図3に示すように、ステアリングシャフト22の下端にピットマンアーム54が設けられ、ピットマンアーム54にステアリングシャフト22の操舵力を前輪WFに伝えるタイロッド55,55が設けられ、ピットマンアーム54は、下部軸受け25よりも下方のステアリングシャフト22に設けられている。これによれば、路面反力によりステアリングシャフト22に最も大きな曲げ荷重がかかりピットマンアーム54を下部軸受け25より下方に配置しているので、磁歪式トルクセンサユニット26の取付け部との間に二つの軸受けを介することとなり、磁歪式トルクセンサユニット26への曲げ荷重の伝達をより低減できる。
【0040】
また、本実施形態では、図3に示すように、車体フレーム2のフロントサブパイプ14,14に下部軸受け25を支持する下部軸受け支持ブラケット47を設け、電動モータユニット27を下部軸受け支持ブラケット47に取付け、下部軸受け25上方のステアリングシャフト22を、電動モータユニット27の減速機ケース46で覆っており、ステアリングシャフト22の軸方向に長さをもった減速機ケース46のベアリング51,52によりステアリングシャフト22を支持しているので、特に電動モータユニット27及び路面反力の荷重によるステアリングシャフト22の曲げを抑制できる。
つまり、図5に示すように、図中P3によってステアリングシャフト22の支持位置が示されるベアリング51と、図中P4によってステアリングシャフト22の支持位置が示されるベアリング52とによりステアリングシャフト22が支持されることで、とりわけM1’で示される電動モータユニット27のモータ荷重による曲げ或いは撓み、及び、M2’で示されるタイロッド55,55及びピットマンアーム54を介して伝達される路面反力による曲げ或いは撓みが分散(荷重分担)されるため、ステアリングシャフト22の曲げを抑制できる。なお、図5においてM3’は、ステアリングハンドル21の操舵による曲げ荷重(曲げモーメント)を示し、図5においてP1,P2は、図4と同様であり、それぞれ上部軸受け24のステアリングシャフト22の支持位置、下部軸受け25のステアリングシャフト22の支持位置を示している。また、S1も図4と同様であり、上部軸受け24上方の磁歪式トルクセンサユニット26内のステアリングシャフト22の長さ領域を示している。
【0041】
また、本実施形態では磁歪式トルクセンサユニット26において、第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31と第1検出コイル32及び第2検出コイル33とを覆いステアリングシャフト22の軸方向に長さをもったハウジング37が備えられているので、上部軸受け24上方のステアリングシャフト22の曲げを抑制することができる。そして、このハウジング37はステアリングシャフト22に固着され、ステアリングシャフト22と一体に捻れるので、上部軸受け24上方のステアリングシャフト22の曲げを抑制でき、また、ハウジング37の上部には、ステアリングハンドル21の取付け部44が設けられ、この取付け部44にはステアリングハンドル21が取り付けられているので部品点数の削減が図られている。
【0042】
なお、ステアリングハンドル21の取り付けの別の態様として、図6、図7に示すようなものであってもよい。
図6においては、ハウジング37の上部内周壁40の中央に周方向に複数の溝を有する嵌合孔41Aが形成され、嵌合孔41Aにステアリングシャフト22の上端に形成されたスプライン溝42Aがスプライン嵌合されている。ステアリングシャフト22のスプライン溝42Aの直近下方にはフランジ部57が形成され、このフランジ部57はハウジング37の上部内周壁40に当接されている。ステアリングシャフト22の上端にはハウジング37上部から上方に突出するネジ部58Aが形成され、ハウジング37の上部にはネジ部58Aを通す孔を有する板材からなるトップブリッジ58Bが配置されている。ネジ部58Aにはナット58Cが螺合され、このナット58Cは、トップブリッジ58Bとフランジ部57との間でハウジング37の上部を挟み込んでいる。トップブリッジ58Bの左右側部にはボルト58D,58Dが挿通され、ボルト58D,58Dはハウジング37に締結されている。ボルト58D,58Dはステアリングハンドル21の取付け部44下部にも挿通されており、取付け部44をハウジング37に固定している。すなわち、ボルト58D,58Dはトップブリッジ58B及び取付け部44をハウジング37に対して共締めしている。そして、取付け部44にステアリングハンドル21が取り付けられている。
また、図7においては、ステアリングシャフト22の上端にハウジング37上部から上方に突出するセレーション加工部59Aが形成され、セレーション加工部59Aに割り締めによって固定されたハンドルブラケット59Bが設けられている。そして、ハンドルブラケット59Bにステアリングハンドル21が溶着固定されている。
【0043】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、磁歪式トルクセンサユニット60の構成が第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態と同様の構成要素については同一符号で示し、詳細な説明は一部省略する。
【0044】
図8に示すように、本実施形態の磁歪式トルクセンサユニット60は、第1の実施形態と同様に、ステアリングシャフト22形成され上下に並ぶ第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31と、この第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31周りに設けられた第1検出コイル32及び第2検出コイル33とを備えている。第1検出コイル32及び第2検出コイル33はそれぞれ、ステアリングシャフト22を通された上下一対の筒状のコイルボビン34,34と、コイルボビン34,34にそれぞれ巻かれたコイル35,35と、コイルボビン34,34及びコイル35,35を収納する磁性を有したヨーク36,36とからなり、ステアリングシャフト22の上部を囲うように円筒形状に形成されステアリングシャフト22の軸方向に長さをもったハウジング61内に収容されている。
【0045】
ハウジング61は、下部を開放してステアリングシャフト22を通し、上部中央に形成された周方向に複数の溝を有する嵌合孔41にステアリングシャフト22の上端が嵌合され、これらの連結部位は溶接されている。また、ハウジング61の下部内周壁62には周方向に複数の溝を有するスプライン嵌合用の嵌合溝63が形成されており、この嵌合溝63には、ステアリングシャフト22に圧入等で設けられた円板状のスプライン嵌合部64が嵌合されている。これら嵌合溝63とスプライン嵌合部64との連結部位も溶接されている。そして、ハウジング61は、その上部内周壁65とスプライン嵌合部64との間でヨーク36,36を保持しており、コイル35,35を第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31の周囲に位置付けている。
【0046】
以上に記載した本発明の第2の実施形態によれば上下二点でステアリングシャフト22とハウジング61とが固着されるので、上部軸受け24上方のステアリングシャフト22の曲げをより抑制できる。
【0047】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、磁歪式トルクセンサユニット70の構成が第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態と同様の構成要素については同一符号で示し、詳細な説明は一部省略する。
【0048】
図9に示すように、本実施形態の磁歪式トルクセンサユニット70は、第1の実施形態と同様に、ステアリングシャフト22形成され上下に並ぶ第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31と、この第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31周りに設けられた第1検出コイル32及び第2検出コイル33とを備えている。第1検出コイル32及び第2検出コイル33はそれぞれ、ステアリングシャフト22を通された上下一対の筒状のコイルボビン34,34と、コイルボビン34,34にそれぞれ巻かれたコイル35,35と、コイルボビン34,34及びコイル35,35を収納する磁性を有したヨーク36,36とからなり、ステアリングシャフト22の上部を囲うように円筒形状に形成されステアリングシャフト22の軸方向に長さをもったハウジング71内に収容されている。
【0049】
ハウジング71は、上部及び下部内側にベアリング72,73を収容し、これらベアリング72とベアリング73との間に、一部スペーサ74を介在させて、ヨーク36,36を保持しており、コイル35,35を第1磁歪膜30及び第2磁歪膜31の周囲に位置付けている。ステアリングシャフト22はハウジング71の上下に形成された開口75,76を通され、ベアリング72,73により回動可能に支持されている。ハウジング71の外周面にはステー76が突出形成され、このステー76はリンク77を介して図1を参照し、クロスメンバ19に固着されるようになっている。なお、ここでリンク77を設けずクロスメンバ19に直接ステー76を固着しても構わない。また、この実施形態では、ステアリングシャフト22に上記図7に示したセレーション加工部59Aが形成されハンドルブラケット59Bによってステアリングハンドル21が取り付けられている。
【0050】
以上に記載した本発明の第3の実施形態によれば、ステアリングシャフト22がハウジング71内のベアリング72,73に支持されることで、上部軸受け24上方のステアリングシャフト22の曲げを抑制できる。
【0051】
なお、本発明は上記で説明した第1〜第3の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態の変形例として、例えば図10(a)に示すような断面形状が六角形であるハウジング80や、図10(b)に示すような断面形状が円形のハウジング81に、放射状に延びるリブ82・・・を形成したもの等を用いてもよい。また、上記第1、第2の実施形態では、ステアリングシャフト22とハウジング37又はハウジング61をスプライン嵌合した上で溶接することで、これらを一体にした態様を説明したが、圧入や割りしめ等でこれらを一体化する等しても構わない。
【符号の説明】
【0052】
1 鞍乗り型車両
2 車体フレーム
21 ステアリングハンドル
22 ステアリングシャフト
24 上部軸受け
25 下部軸受け
26 磁歪式トルクセンサユニット(トルクセンサ)
27 電動モータユニット(電動モータ)
30 第1磁歪膜(磁歪膜)
31 第2磁歪膜(磁歪膜)
32 第1検出コイル(コイル)
33 第2検出コイル(コイル)
37 ハウジング(補強ケース)
44 取付け部
47 下部軸受け支持ブラケット
54 ピットマンアーム(タイロッド取付けプレート)
55 タイロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドル(21)と、前記ステアリングハンドル(21)の操舵力を車輪に伝達するステアリングシャフト(22)と、車体を構成する車体フレーム(2)の上部に設けられ前記ステアリングシャフト(22)の上部を回動可能に支持する上部軸受け(24)と、前記車体フレーム(2)の下部に設けられ前記ステアリングシャフト(22)の下部を回動可能に支持する下部軸受け(25)と、前記ステアリングシャフト(22)にかかる捻りトルクを検出するトルクセンサ(26)と、前記トルクセンサ(26)が検出した捻りトルクに基づき前記ステアリングシャフト(22)に操舵力を付与する電動モータ(27)と、を備える鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置において、
前記電動モータ(27)を前記上部軸受け(24)と前記下部軸受け(25)との間の前記ステアリングシャフト(22)に設け、前記トルクセンサ(26)を前記上部軸受け(24)より上方の前記ステアリングシャフト(22)に設けたことを特徴とする鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記トルクセンサ(26)は、前記ステアリングシャフト側に磁歪膜(30,31)を設けるとともに、この磁歪膜(30,31)周りに検出コイル(32,33)を設けた磁歪式トルクセンサであることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記ステアリングシャフト(22)の下端にタイロッド取付けプレート(54)を設け、前記タイロッド取り付けプレート(54)に前記ステアリングシャフト(22)の操舵力を車輪に伝えるタイロッド(55)を設け、前記タイロッド取付けプレート(54)を、前記下部軸受け(25)よりも下方の前記ステアリングシャフト(22)に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記車体フレーム(2)に前記下部軸受け(25)を支持する下部軸受け支持ブラケット(47)が設けられ、前記電動モータ(27)を前記下部軸受け支持ブラケット(47)に取付けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記トルクセンサ(26)の外周を覆い前記ステアリングシャフト(22)の軸方向に長さをもった筒状の補強ケース(37)を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記補強ケース(37)は、前記ステアリングシャフト(22)に固着されることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記補強ケース(37)の上部に、前記ステアリングハンドル(22)の取付け部(44)を設けたことを特徴とする請求項5又は6に記載の鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記補強ケース(71)は、前記車体フレーム(2)に固着され、前記上部軸受け(24)の上方の前記ステアリングシャフト(22)をベアリング(72,73)を介して軸支することを特徴とする請求項5に記載の鞍乗り型車両の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−213155(P2011−213155A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80927(P2010−80927)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】