説明

音の監視方法及びシステム

【課題】本発明は音の監視方法及びシステムに関し、装置に取り付けられている音源の異常を速やかに検出することができる音の監視方法及びシステムを提供することを目的としている。
【解決手段】機器の各場所から発生する音に対して、正常時の音の音圧、周波数を基準値として予め記憶する記憶手段22と、使用の実際において、前記機器の各場所から発生する音の音圧、周波数を測定する測定手段3と、この測定手段3により測定された音の音圧と周波数が前記記憶手段22に記憶されている基準値とずれていないかどうかを判定する判定手段13,14と、判定の結果、測定された音と周波数が前記基準値と所定量以上ずれている場合には、警報を発生させる警報発生手段とを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音の監視方法及びシステムに関し、更に詳しくは音の異常により経年劣化などの音でしか判別できない些細な違いによる部品交換タイミングを想定することが可能な音の監視方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等では、電源ボックスやリレーなどのトランスから発生する50Hz/60Hz、若しくはそれらの倍音である低音の騒音が多く発生している。このような騒音に対しては、作業者が騒音発生機器の周囲の音圧分布を騒音計により測定して上記騒音源を特定して騒音対策を行なうようにしているが、騒音源の特定には多くの時間がかかり、効率的ではなかった。
【0003】
そこで、音響的手法を用いて騒音等の音源を推定する方法が検討されてきている。従来提案されている音源探査方法としては、(1)音圧波形の相関を用いる方法や、(2)音響ホログラフィを用いる方法がある。
【0004】
従来のこの種の装置としては、部品等の異常音の情報を予め登録しておき、内部の発生音を監視して異常音を検出した時、対応する部品を特定する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。また、音の発生する位置、音圧、周波数を取得する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−317319号公報(段落0010〜0013、図1)
【特許文献2】特開2002−181913号公報(段落0018〜0020、図1,図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、異常音の情報を登録し、収集音と比較して異常検出し、音源の部品を特定することはできたが、同種の部品で類似する音が異なる場所から出る場合、また本来出るべき場所から音が出ていない場合は検出することができなかった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、装置に取り付けられている音源の異常を速やかに検出することができる音の監視方法及びシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明は以下に示すような構成をとっている。
【0009】
(1)請求項1記載の発明は、機器の各音源から発生する音に対して、正常時の音の音圧、周波数を基準値として予めメモリに記憶しておき、使用の実際において、前記機器の各音源から発生する音の音圧、周波数を測定する測定手段を設け、この測定手段により測定された音の音圧と周波数が前記メモリに記憶されている基準値とずれていないかどうかを判定し、判定の結果、測定された音と周波数が前記基準値と所定量以上ずれている場合には、警報を発生させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
(2)請求項2記載の発明は、機器の各場所から発生する音に対して、正常時の音の音圧、周波数を基準値として予め記憶する記憶手段と、使用の実際において、前記機器の各場所から発生する音の音圧、周波数を測定する測定手段と、この測定手段により測定された音の音圧と周波数が前記記憶手段に記憶されている基準値とずれていないかどうかを判定する判定手段と、判定の結果、測定された音と周波数が前記基準値と所定量以上ずれている場合には、警報を発生させる警報発生手段とを有して構成されることを特徴とする。
【0011】
(3)請求項3記載の発明は、前記音の音圧、周波数に加えて音を発生する音源の位置も予め前記記憶手段に記憶させておき、測定された音の音圧と周波数が前記基準値と所定量以上ずれている場合には、前記警報発生手段は、予め指定された先に音の異常とその異常音を発生する音源の位置を通知するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下のような効果を奏する。
【0013】
(1)請求項1記載の発明によれば、記憶手段に記憶されている基準値の正常時の音圧と周波数の値と、測定時における当該音源の音圧と周波数の値とを判定することにより、当該音源が異常であることを認識することができる。
【0014】
(2)請求項2記載の発明によれば、記憶手段に記憶されている基準値の正常時の音圧と周波数の値と、測定時における当該音源の音圧と周波数の値とを判定手段で判定することにより、当該音源が異常であることを認識することができる。
【0015】
(3)請求項3記載の発明によれば、更に音源の位置まで把握できるようにしておくことにより、音源の故障箇所を速やかに認識して予め指定された先に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】位置データ保存テーブルの構成例を示す図である。
【図3】監視担当者テーブルの構成例を示す図である。
【図4】搭載部品情報テーブルの構成例を示す図である。
【図5】部品位置テーブルの構成例を示す図である。
【図6】部品テーブルの構成例を示す図である。
【図7】設定テーブルの構成例を示す図である。
【図8】測定部の動作の説明図である。
【図9】本発明の動作の一例を示すフローチャートである。
【図10】異常情報例を示す図である。
【図11】異常情報通知メール例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。本発明は、監視対象装置を構成し、一つの機能として動作し、且つ金属等で覆われた物理的にも1個の構成物内の音発生部品(ファン、磁気ディスク、電源等の部品)の発生する音の周波数、音圧の基準値と変動の許容範囲及びその部品位置を予め登録しておき、装置稼働時に装置から発生する音の音圧、周波数とその位置を測定し、保持された情報と比較して、設定された範囲を超えた場合は異常と判断し、予め指定された先にその旨を通報するものである。
【0018】
図1は本発明の一実施例を示す構成図である。図において、1はサーバよりなる装置、2は監視装置、3は装置1内の音源の音圧、周波数と音源の位置情報を収集する測定部、4は測定部3と監視装置2を接続するネットワークである。装置1としては、例えばサーバラックが用いられる。装置1には、図に示すように複数のサーバ1aが取り付けられている。測定部3としては、例えば騒音計、周波数カウンタ、3次元位置測定装置が用いられる。ネットワーク4としては、例えばインターネットが用いられる。
【0019】
監視装2において、10はデータ処理装置であり、管理情報サーバ20と各種のテーブルから構成されている。管理情報サーバ20としては、例えばコンピュータが用いられる。管理情報サーバ20は、位置データ保存部11と、時刻取得部12と、周波数比較部13と、音圧比較部14と、測定間隔設定部15と、メール通知部16と、異常表示部17から構成されている。19は管理情報サーバ20と接続され、各種のデータ、コマンド等を入力する操作部である。該操作部19としては、例えばキーボードとマウスが用いられる。
【0020】
管理情報サーバ20と接続される各種テーブルにおいて、21は位置データ保存テーブル、22は搭載部品情報テーブル、23は部品位置テーブル、24は部品テーブル、25は監視担当者テーブルである。以下、各種テーブルの構成について説明する。
【0021】
図2は位置データ保存テーブル21の構成例を示す図である。通番毎に位置情報と、測定日と、測定時間と、音圧レベル(dB)と、周波数(kHz)が記憶されている。図3は監視担当者テーブル25の構成例を示す図である。監視ID毎にメールアドレスが記憶されている。図4は搭載部品情報テーブル22の構成例を示す図である。図に示すように、部品の位置情報と、音圧上限と音圧下限と、周波数上限と、周波数下限とが記憶されている。
【0022】
図5は部品位置テーブルの構成例を示す図である。部品位置毎に部品IDと、交換回数と、継続監視フラグmが記載されている。継続監視フラグmについては後述する。図6は部品テーブル24の構成例を示す図である。図に示すように、部品ID毎に部品名称が記憶されている。図7は設定テーブルの構成例を示す図である。図に示すように、項目毎にその値が記憶されている。
【0023】
図8は測定部の動作の説明図である。測定部3において、3aは音を検出するマイクである。装置1はサーバ1Aがラック毎に設けられている。ラック内には、×印で示すディスクの発生音と、◇で示すファンの発生音と、1aで示す異常音と、1bで示す電源の発生音とが存在する。ラック内の各サーバ1Aにおいて、ディスクの発生音は、ディスク1がA、ディスク2がBである。Cはファン、Dは電源である。ファンCの発生音が◇、電源Dの発生音が1bである。これらラック内の部品は音源であり、測定部3はこれら音源からの音をマイク3aで検出すると共に、その発生周波数を測定部3で検出する。音圧の測定は、例えば騒音計で測定する。
【0024】
図9は以上説明したように構成された装置の動作の一例を示すフローチャートである。先ず操作部19からスタートボタン(図示せず)を押して、監視システムを起動する(S1)。この後のシーケンスの主体は管理情報サーバ20が行なう。この発明を実施する前提として、搭載部品情報テーブル22には、音源が正常動作と見なせる範囲のデータが予め記憶されている。記憶内容は、図4に示したように、音源毎にその位置情報と、音圧上限と音圧下限と、周波数上限と周波数下限が記憶されている。この情報の入力は、オペレータが操作部19を操作することにより行なう。
【0025】
このシステム起動システムを立ち上げたら、管理情報サーバ20はそのことを認識し、図7に示す設定テーブルから1時間あたりの測定回数iと、異常と判断して通報する異常連続検出回数Iを読み出す(S2)。ここでは、測定回数i=6、異常連続検出回数I=3であったものとする。
【0026】
次に、管理情報サーバ20は監視フラグ等をクリアする(S3)。ここで、監視フラグ等は騒音を発生する音源毎に設けられる。図で、m(1:p)は監視フラグ、nはデータの数を示す。m(1:p)は監視フラグが、音源の数に合わせて、1からpまであることを示している。次に、管理情報サーバ20は、時間をカウントするパラメータkを0に初期値化し、パラメータj=60/iにセットする(S4)。jは測定間隔であり、測定間隔設定部15で演算により求められる。
【0027】
次に、1分経過後、k=K+1を演算する(S5)。1分経過したら、測定間隔をチェックする(S6)。具体的にはk≧jをチェックする。ここで、jはステップS4に示したように測定間隔を示している。k≧jでない場合には、k≧jになるまでk=k+1を繰り返す。k≧jになったら、時刻取得部12より現在時刻を取得する(S7)。
【0028】
次に、監視システム(監視装置)2にて、位置と音圧と周波数とを測定し、現在時刻と共に位置データ保存テーブル21へ保存する(S8)。次に、位置データ保存テーブル21に記憶されているデータと搭載部品情報テーブル22に記憶されているデータとを比較する(S9)。比較は、管理情報サーバ20内の周波数比較部13と音圧比較部14が行なう。
【0029】
次に、通番nの位置の音源情報に対応する搭載部品情報テーブル22のデータがあるかどうかチェックする(S10)。ない場合には、ステップS13に進む。ある場合には、位置データ保存テーブル21に記憶されている通番nの位置の音源情報は、搭載部品情報テーブル22に記憶されている搭載部品情報で示された許容範囲内であるかどうかチェックする(S11)。このチェックは、周波数比較部13と音圧比較部14で行われる。具体的には、位置データ保存テーブル21に記憶されている測定部3で測定された音源の音圧と周波数が、搭載部品情報テーブル22に記憶されている音圧と周波数の許容値以内に収まっているかどうかをチェックする。例えば、図4に示す位置情報11.22.33にある音源の音圧の上限は20、下限は5である。そこで、測定した音源の音圧が例えば15であったものとすると、許容差以内であったことになる。測定した音圧が25であったものとすると、許容差を外れていることになる。
【0030】
また、例えば図10に示すように、部品名称が電源である音源の測定周波数の下限が5kHzであるところ、測定した周波数が2kHzであった場合は、下限を下回っていることになるから、この場合は異常と判断することになる。
【0031】
ステップS11における音源情報が許容差以内であった場合、対応する部品の監視フラグmを0にクリアする(S12)。次に、通番nの位置データ保存テーブル21のデータが最後のデータであるかどうかチェックする(S13)。最後のデータでなかった場合には、nの値に1を加算し(S14)、ステップS9に戻り、次の番号の音源の比較処理を行なう。
【0032】
通番nの位置データ保存テーブル21のデータが最後のデータであった場合、通番を示すパラメータnの値を1に設定する(S15)。次に、異常があったかどうかチェックする(S16)。異常があった場合には、一時保存した異常情報を監視担当者にメールする(S17)。図11は異常情報通知メール例を示す図である。表示には「XX装置に異常が検出されました。速やかにご対応ください。」という表示がなされ、音源が電源である場合の、測定周波数2kHzが下限5kHzを下回っており、異常であることが分かる。ここでは、交換回数は0となっており、今回が初めての異常であることが分かる。異常になった電源は交換し、操作部19から交換回数「1」を入力する。ステップS17で異常情報をメールした場合、又は異常がなかった場合には、ステップS4に戻り、パラメータkとjの設定処理に入る。
【0033】
次に、ステップS11で通番nの位置の音源情報は搭載部品情報で示された許容範囲内であるかどうかチェックし、許容範囲でなかった場合には、対応する部品の監視フラグmを1だけ更新する(S18)。次に、通番nの位置の音源情報は図5に示す部品位置テーブル23の対応するデータの継続監視フラグmが3以上となっているかどうかチェックする(S19)。mを3以上と決めたのは、音圧、周波数等が異常になった回数が3回以上有ったことを示している。
【0034】
そうであった場合には、通番nの部品に対応する部品情報を図6に示す部品テーブル24から取得する(S20)。そして、通番nの部品に関する異常情報を作成して、内部メモリ(図示せず)に一時保存する(S21)。次に部品位置テーブル23の障害検知した部品位置の継続監視フラグmを0にする(S22)。異常状態の検出回数に基づいて、所定の異常処理をしたので、監視フラグmを0にするものである。その後、ステップS13に入り、通番nの位置データ保存テーブル21のデータが最後のデータであるかどうかチェックするシーケンスに進む。ステップS19において、継続監視フラグmが3以上になっていない場合も同様にステップS13に進む。
【0035】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば記憶手段に記憶されている基準値の正常時の音圧と周波数の値と、測定時における当該音源の音圧と周波数の値とを判定することにより、当該音源が異常であることを認識することができる。この結果、音レベルの差異でしか分からなかったサーバ自身も障害として検知しないような摩耗部品の交換タイミングを監視することができるという顕著な作用効果があり、実用上の効果が大きい。
【符号の説明】
【0036】
1 装置
2 監視装置
3 測定部
4 ネットワーク
10 データ処理装置
11 位置データ保存部
12 時刻取得部
13 周波数比較部
14 音圧比較部
15 測定間隔設定部
16 メール通知部
17 異常表示部
18 監視フラグ記憶部
19 操作部
21 位置データ保存テーブル
22 搭載部品情報テーブル
23 部品位置テーブル
24 部品テーブル
25 監視担当者テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の各音源から発生する音に対して、正常時の音の音圧、周波数を基準値として予め記憶手段に記憶しておき、
使用の実際において、前記機器の各音源から発生する音の音圧、周波数を測定する測定手段を設け、
この測定手段により測定された音の音圧と周波数が前記記憶手段に記憶されている基準値とずれていないかどうかを判定し、
判定の結果、測定された音と周波数が前記基準値と所定量以上ずれている場合には、警報を発生させる、
ようにしたことを特徴とする音の監視方法。
【請求項2】
機器の各場所から発生する音に対して、正常時の音の音圧、周波数を基準値として予め記憶する記憶手段と、
使用の実際において、前記機器の各場所から発生する音の音圧、周波数を測定する測定手段と、
この測定手段により測定された音の音圧と周波数が前記記憶手段に記憶されている基準値とずれていないかどうかを判定する判定手段と、
判定の結果、測定された音と周波数が前記基準値と所定量以上ずれている場合には、警報を発生させる警報発生手段、
とを有して構成される音の監視システム。
【請求項3】
前記音の音圧、周波数に加えて音を発生する音源の位置も予め前記記憶手段に記憶させておき、測定された音の音圧と周波数が前記基準値と所定量以上ずれている場合には、前記警報発生手段は、予め指定された先に音の異常とその異常音を発生する音源の位置を通知するようにしたことを特徴とする請求項2記載の音の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−203146(P2011−203146A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71256(P2010−71256)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(598057291)株式会社富士通エフサス (147)
【Fターム(参考)】