説明

音信号出力制御装置

【課題】入力された音信号をクリップさせることなく出力させる技術を提供する。
【解決手段】マイク10a、マイク10b、マイク10cの各音信号の信号レベルに基づいて、動作状態のマイク本数をマイク検出部103において検出し、検出したマイク本数をコンプレッサ制御部104に出力する。コンプレッサ106は、マイク10a、マイク10b、マイク10cから出力された各音信号を混合した音声信号が入力されると、コンプレッサ制御部104から指示されたマイク本数に応じた圧縮制御情報に基づき、当該音声信号の信号レベルと予め定められた閾値を比較し、当該閾値を超える音声信号に対してマイク本数に応じて定められた圧縮態様に従って圧縮処理を施して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音信号出力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンプレッサは、所定の信号レベルを超える音信号が入力された場合に、信号圧縮処理を行って最大信号レベルに達しないようにするものであり、カラオケ装置等においても用いられている。下記特許文献1には、出力レベルの異なるオーディオデータと音声データの各出力信号を、出力レベルが低い方に合わせるようにゲインダウンさせてミキシングする録音機能を備えたカラオケ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−295934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンプレッサは、コンプレッサに設定された閾値を入力信号が超えると圧縮処理を行うことから音声信号の波形に歪が生じる。カラオケ装置におけるマイクからの音声信号は出来る限り歪みなく出力したいという要望があるため、コンプレッサによる圧縮処理を行わない方が好ましい。一方、使用されるマイクの数が多くなるほど各マイクからの入力信号を混合した音声信号の信号レベルが大きくなり、コンプレッサによる圧縮処理を強く効かせなければクリップが発生するという問題がある。
本発明は、入力された音信号をクリップさせることなく出力させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る音信号出力制御装置は、各マイクから入力される音信号の信号レベルに基づいて、動作状態にあるマイクの数を検出する検出手段と、動作状態にあるマイクの数に応じた前記音信号に対する圧縮の態様を予め定めた圧縮制御情報を記憶する記憶手段と、前記検出手段によって検出されている動作状態にあるマイクの数に対応する前記圧縮制御情報を前記記憶手段から読み出し、前記検出手段が検出した動作状態にあるマイクから出力された全音信号を混合した音声信号の信号レベルが予め定めた閾値を超えると、読み出した前記圧縮制御情報に従って当該音声信号を圧縮する圧縮手段と、前記圧縮手段によって圧縮された前記音声信号を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の請求項2に音信号出力制御装置は、前記音信号出力制御装置において、前記圧縮手段によって圧縮された前記音声信号の前記周波数成分を分析してハウリングを起こしている周波数成分を検出するハウリング検出手段と、動作状態にあるマイクの数に応じた前記音声信号の減衰量を記憶する減衰量記憶手段と、前記検出手段によって検出されている動作状態にあるマイクの数に対応する減衰量を前記減衰量記憶手段から読み出し、前記ハウリング検出手段が検出したハウリングを起こしている周波数成分を、読み出した減衰量に従って減衰させるハウリング抑制手段とを備え、前記出力手段は、前記ハウリング抑制手段による減衰処理が施された前記音声信号を出力することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項3に係る音信号出力制御装置は、前記音信号出力制御装置において、前記閾値は、前記動作状態にあるマイクの数に応じて予め定められた閾値であり、前記圧縮制御情報は、前記音声信号が前記閾値を超えてから圧縮を行うまでの第1時間と、前記音声信号が再び前記閾値以下となってから圧縮を停止するまでの第2時間と、圧縮の割合を示す情報を含み、前記圧縮手段は、前記検出手段が検出したマイクの数に応じた前記圧縮制御情報に基づき、前記音声信号が前記閾値を超えた時点から前記第1時間の経過した後、前記圧縮の割合に従って前記音声信号を圧縮し、前記音声信号が前記閾値以下になった時点から前記第2時間が経過したときに前記音声信号の圧縮を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の構成によれば、マイクから入力された音信号をクリップさせることなく出力することができる。
【0009】
請求項2に記載の構成によれば、マイクから入力された音信号のハウリングを抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の構成によれば、マイクから入力された音信号に対し、マイク本数に応じた圧縮処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るカラオケ装置の構成を表すブロック図である。
【図2】実施形態に係る音声信号処理部の構成を説明する図である。
【図3】(a)は、実施形態に係る圧縮制御情報の構成及びデータ例を示す図である。(b)は、実施形態に係るハウリング制御情報の構成及びデータ例を示す図である。
【図4】(a)及び(b)は、実施形態に係る音声信号の信号レベル波形を例示した図である。
【図5】実施形態におけるハウリング抑制処理を説明する図である。
【図6】(a)〜(c)は、実施形態に係る各マイク信号の波形を例示した図である。
【図7】実施形態に係る各マイク信号を混合した音声信号の波形を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る音信号出力制御装置は、カラオケ装置に組み込まれて使用される場合の例について説明するが、カラオケ装置以外の楽音発生装置と合わせて使用されてもよい。以下、本実施形態に係るカラオケ装置の詳細について説明する。
【0013】
(構成)
図1は、本実施形態に係るカラオケ装置の構成を表すブロック図である。カラオケ装置1には、マイク接続端子に3本のマイク10a、10b、10cが接続されており、制御部11、操作部12、記憶部13、音源部14、表示部15、音声信号処理部16を含んで構成されている。なお、本実施形態では、3本のマイク10a、10b、10cが接続されている例を説明するが、接続されるマイクの数はこれに限らない。
【0014】
マイク10は、例えば、コンデンサマイク等の拡声手段であり、歌唱者が発する歌唱音声を収音した音信号を音声信号処理部16へ送出する。本実施形態において用いられるマイク10a、10b、10cには、音声信号の出力をオン、オフするオン・オフスイッチsa、sb、scがそれぞれ設けられている。この場合、オン・オフスイッチsa、sb、scがオン状態の時には収音した音に対応する音声信号が出力ラインに出力され、オフ状態の時には出力ラインがショートされて、音声信号は出力されないようになっている。以下において、本実施形態では、オン・オフスイッチがオンの状態を動作状態と呼び、マイク10a、10b、10cを各々区別しないときはマイク10と呼ぶ。
【0015】
制御部11は、CPU及びRAMやROMのメモリで構成されており、RAMをワーキングエリアとして、ROMに記憶されている制御プログラムを実行することにより、制御部11と接続されている各部を制御する。
【0016】
操作部12は、利用者からの操作を有線又は無線により受付ける操作手段であり、マイク10の音量を設定する操作を受付けるマイク音量操作摘みや、楽曲の音量の調節操作を受付ける楽曲音量操作摘み、歌唱音と楽曲の各音声信号を合わせた全音量レベルの調節操作を受付ける主音量調節摘みを含むと共に、楽曲の選択操作や楽曲の再生や停止を指示する操作ボタン等の操作子を含んで構成される。操作部12は、利用者によって操作された内容を示す操作信号を制御部11へ送出する。
【0017】
記憶部13は、不揮発性記憶媒体で構成されており、MIDI等の楽曲データや歌詞データ等の他、音声信号処理部16の信号処理の際に参照される音声信号処理制御情報130が記憶されている。なお、音声信号処理制御情報130には、圧縮制御情報及びハウリング制御情報が含まれており、これらの詳細については後述する。
【0018】
音源部14は、制御部11の制御の下、指示された楽曲データを再生して楽音信号を生成し、音声信号処理部16へ送出する。表示部15は、液晶ディスプレイ等で構成され、制御部11の制御の下、指示された楽曲の歌詞データや操作部12において受付けられた操作内容を表示する。
【0019】
音声信号処理部16は、本発明に係る音信号出力制御装置の一例であり、音声信号処理部16は、制御部11の制御の下、マイク10から入力された音信号に対し所定の信号処理を施して出力する。以下、音声信号処理部16の詳細について説明する。
音声信号処理部16は、プリアンプ101、A/D変換部102、マイク検出部103、コンプレッサ制御部104、コンプレッサ106、ハウリング抑制制御部105、ハウリング抑制部107、ミキサ108、D/A変換部109、アンプ110、スピーカ111を含んで構成されている。本実施形態では、マイク検出部103、コンプレッサ制御部104、コンプレッサ106、ハウリング抑制制御部105、ハウリング抑制部107、ミキサ108は、DSP(Digital Signal Processor)により実現される。
【0020】
プリアンプ101は、マイク音量操作摘みで設定されたマイク音量に応じてマイク10からの各出力信号(以下、マイク信号と言う)を各々増幅し、増幅した各マイク信号をA/D変換部102に送出する。A/D変換部102は、プリアンプ101から出力された各マイク10のマイク信号を各々A/D変換し、A/D変換したマイク10の各マイク信号をマイク検出部103に出力すると共に、A/D変換したマイク10の各マイク信号を混合した音声信号をコンプレッサ106に送出する。
【0021】
マイク検出部103は、A/D変換部102から出力された各マイク10のマイク信号と、マイク10が動作状態であるか否かを判断するためのマイク検出閾値(Vm)とに基づいて、動作状態のマイクの数を検出し、検出したマイクの本数をコンプレッサ制御部104及びハウリング抑制制御部105に送出する。
【0022】
コンプレッサ制御部104は、マイク検出部103から出力されたマイク本数に基づいて、動作状態のマイク本数に対応する圧縮制御情報を記憶部13から読み出してコンプレッサ106に送出する。
コンプレッサ106は、本発明に係る圧縮手段であり、A/D変換部102から出力された音声信号の信号レベルと、コンプレッサ制御部104から出力された圧縮制御情報に基づいて音声信号を圧縮する処理を行う。
【0023】
ここで、圧縮制御情報について説明する。図3(a)は、圧縮制御情報の構成及びデータ例を示す図である。この図において、マイク本数は、動作状態にあるマイク10の本数を示している。アタックタイム(ΔT1)は、コンプレッサ106に入力される音声信号が閾値(Vth)を超えてから圧縮処理を開始するまでの時間を示し、リリースタイム(ΔT2)は、音声信号が再び閾値以下になってから圧縮処理を停止するまでの時間を示している。また、レシオは、マイク本数に応じて音声信号を圧縮する圧縮比率である。閾値(Vth)は、圧縮対象となる信号レベルであり、コンプレッサ106における最大信号レベル(Vmax)より小さい値が設定されている。
【0024】
例えば、A/D変換部102から図4(a)に示す波形30の音声信号が出力された場合において、この音声信号がコンプレッサ106に入力されると、図4(b)に示すように、マイク本数に応じた閾値Vthを超えたt1からマイク本数に応じたアタックタイムΔT1が経過した時点から、当該マイク本数に対応するレシオに従って音声信号の圧縮処理が開始される。そして、再び音声信号の信号レベルが閾値Vth以下になるt2からマイク本数に応じたリリースタイムΔT2が経過した時点で圧縮処理が停止される。この圧縮処理によって、波形30は波形31のように圧縮される。
【0025】
なお、本実施形態では、図3(a)に示す圧縮制御情報において、アタックタイム及びリリースタイムは、マイク本数が多いほど短く設定されている(T31<T21<T11<・・・) 、(T12<T22<T32・・・)。また、レシオはマイク本数が多いほど大きい値が設定され(R1<R2<R3・・・)、閾値は、マイク本数が多いほど大きい閾値が設定されている(Vth1<Vth2<Vth3・・・)。
つまり、マイク本数が多いほど各マイク10から入力された音声信号の信号レベルは高くなるため、マイク本数が多くなるほど閾値を高くするように設定し、コンプレッサ106の最大信号レベルでクリップさせないようにレシオを大きく設定すると共に、アタックタイム及びリリースタイムを短めに設定し、閾値を超える音声信号に高圧縮処理を行う。また、マイク本数が少ない場合には、マイク10から入力された音声信号の信号レベルはマイク本数が多い場合より低くなるため、マイク本数が多い場合より閾値を小さく設定し、アタックタイム及びリリースタイムは、マイク本数が多い場合より長めに設定し、閾値を超える信号に対して低圧縮処理を行う。このように、マイク本数に応じた適正な音量のダイナミックレンジを定義して閾値を動的に変化させ、マイク本数に応じた圧縮処理を行うことで、どのようなマイク本数であっても適正なダイナミックレンジとなるように音声信号の信号レベルを自動調整することができるので、ユーザが聴きやすい音量にすることができる。
【0026】
図2に戻り、説明を続ける。ハウリング抑制制御部105は、マイク検出部103から出力されたマイク本数に応じた減衰条件を示すハウリング制御情報を記憶部13から読み出してハウリング抑制部107に指示する。ここで、ハウリング制御情報について説明する。図3(b)は、ハウリング制御情報の構成及びデータ例を示す図である。この図において、マイク本数は、上述した圧縮制御情報と同様、動作状態であるマイク本数を示しており、各マイク本数に対応するゲインは、ハウリングが生じている周波数 (以下、ハウリング周波数と言う)の成分に対する減衰量である。本実施形態では、マイク本数が多いほど各マイク信号が混合された音声信号の信号レベルが高く、ハウリング周波数の振幅レベルが大きくなることから、マイク本数が多いほど減衰量が大きくなるように設定されている(G1<G2<G3・・・)。
【0027】
ハウリング抑制部107は、コンプレッサ106から出力された音声信号に対し、高速フーリエ変換を用いた周波数解析処理を行い、所定の振幅レベルを超えているハウリング周波数成分の音声信号を、ハウリング抑制制御部105から指示されたハウリング制御情報に基づく減衰量に従い、ノッチフィルタを用いて減衰させる処理を行う。具体的には、ハウリング抑制部107において、入力された音声信号を周波数解析した結果、例えば、図5に示すような周波数スペクトルが得られた場合には、所定の振幅レベルAthを超えている周波数f1においてハウリングが生じていることを検知する。ハウリング抑制部107は、ハウリング周波数f1を中心周波数とし、ハウリング周波数f1の振幅レベルに基づいてQ値を決定し、ハウリング抑制制御部105から指示されたハウリング制御情報のゲインを減衰量としてノッチフィルタによりハウリング周波数f1成分を減衰させる。
【0028】
図2に戻り説明を続ける。ミキサ108は、ハウリング抑制部107においてハウリングが抑制されて出力された音声信号と、音源部14において生成された楽音信号とを混合した音声信号をD/A変換部109へ出力する。D/A変換部109は、ミキサ108から出力された音声信号に対してD/A変換処理を施してアンプ110に出力する。そして、アンプ110は、制御部11から指示されたマイク音量操作摘みで設定されている音量と主音量操作摘みで設定されている音量に従って、D/A変換部109から出力された音声信号を増幅してスピーカ111に出力し、スピーカ111から放音する。
【0029】
(動作例)
次に、本実施形態に係るカラオケ装置1の動作について、音声信号処理部16の動作を中心に説明する。以下の説明では、図6(a)〜(c)に示す各波形のマイク信号がマイク10から出力された場合を例に説明を行う。なお、図6(a)は、マイク10aのマイク信号の波形を示し、図6(b)は、マイク10bのマイク信号の波形を示し、図6(c)は、マイク10cのマイク信号の波形を示している。
この例では、各マイク10のオン・オフスイッチsa、sb、scはt1の時点からオンにされ、t1からt2まで間はいずれのマイク10にも歌唱者からの音声は入力されていない動作状態となっている。また、t2からt3までは、3本の各マイク10に各歌唱者の音声が入力され、t3からt4までは、マイク10cはオンの状態で歌唱者からの音声は入力されず、t4の経過後にオフにされている。
マイク10a、マイク10b、マイク10cから出力された各マイク信号は、操作部12で設定されたマイクの音量レベルに応じてプリアンプ101により各々増幅されてA/D変換部102へ出力される。プリアンプ101からA/D変換部102に入力された各マイク信号は、A/D変換部102において各々A/D変換されてマイク検出部103へ出力される。また、A/D変換部102においてA/D変換された各マイク信号が混合された音声信号はコンプレッサ106に出力される。
【0030】
マイク検出部103は、A/D変換部102から出力された各マイク信号の信号レベルとマイク検出閾値(Vm)とを比較し、信号レベルの変動量が一定値以上であるかを検出して、動作状態のマイク本数をコンプレッサ制御部104及びハウリング抑制制御部105に出力する。この例では、マイク信号の信号レベルの変動量が一定値以上であり、各マイク10のマイク信号の信号レベルがマイク検出閾値Vmを超えている期間がt1〜t4となっている。この場合にはマイク本数「3」が検出される。また、t4以降はマイク10aとマイク10bのマイク信号の信号レベルだけが閾値Vmを超えているためマイク本数「2」が検出される。
【0031】
コンプレッサ制御部104は、マイク検出部103からマイク本数「3」が出力されたときは、マイク本数「3」に対応するアタックタイム「T31」、リリースタイム「T32」、レシオ「R3」、閾値「Vth3」を圧縮制御情報として記憶部13から読み出してコンプレッサ106に出力し、マイク検出部103からマイク本数「2」が出力された場合には、マイク本数「2」に対応するアタックタイム「T21」、リリースタイム「T22」、レシオ「R2」、閾値「Vth2」を圧縮制御情報として記憶部13から読み出してコンプレッサ106に出力する。
【0032】
また、ハウリング抑制制御部105は、マイク検出部103からマイク本数「3」が出力された場合には、マイク本数「3」に対応するゲイン「G3」をハウリング制御情報として記憶部13から読み出してハウリング抑制部107に出力し、マイク検出部103からマイク本数「2」が入力された場合には、マイク本数「2」に対応するゲイン「G2」をハウリング制御情報として記憶部13から読み出してハウリング抑制部107に送出する。
【0033】
コンプレッサ106は、A/D変換部102において各マイク信号が混合された音声信号が入力されると、コンプレッサ制御部104から出力された圧縮制御情報に従い、入力された音声信号に対して圧縮処理を行う。
図7は、図6に示す各マイク信号を混合してA/D変換部102から出力された音声信号の波形を例示した図である。この図のt1、t2、t3、t4は、図6のt1、t2、t3、t4と対応しているものとする。
【0034】
コンプレッサ106は、図7のt1〜t4における音声信号が入力されると、コンプレッサ制御部104から出力されたマイク本数「3」に対応する圧縮制御情報に基づいて、閾値Vth3と当該音声信号の信号レベルとを比較する。そして、コンプレッサ106は、音声信号が閾値Vth3を超えると、閾値Vth3を超えた時点からアタックタイム「T31」を経過したときに、レシオ「R3」の圧縮比率で入力される音声信号に対して圧縮処理を行う。そして、再び閾値Vth3以下となる時点からリリースタイム「T32」が経過したときに圧縮処理を停止し、圧縮処理後の音声信号をハウリング抑制部107へ出力する。
【0035】
また、コンプレッサ106において、図7のt4以降の音声信号が入力されると、コンプレッサ制御部104から出力されたマイク本数「2」に対応する圧縮制御情報に基づいて、閾値Vth2と当該音声信号の信号レベルとを比較する。そして、コンプレッサ106は、音声信号が閾値Vth2を超えていれば、閾値Vth2を超えた時点からアタックタイム「T21」を経過したときに、レシオ「R2」の圧縮比率で入力される音声信号に対して圧縮処理を行う。そして、再び閾値Vth2以下となる時点からリリースタイム「T22」が経過したときに圧縮処理を停止し、圧縮処理後の音声信号をハウリング抑制部107へ出力する。
【0036】
この処理により、3本の動作状態のマイク10に音声が入力されて信号レベルが大きいピーク波形が多く現れるt1〜t4の間は、最大信号レベルを超える前に、閾値Vth3を超える音声信号に対して圧縮処理が行われるので、最大信号レベルでクリップされずに出力される。また、動作状態のマイク本数が2本となり信号レベルが低いピーク波形が多くなるt4以降は、マイク本数が3本の場合より音声信号の信号レベルが低いため低圧縮処理を行うことで音質をできるだけ維持して出力することができる。
【0037】
続いて、ハウリング抑制部107は、コンプレッサ106から入力された音声信号に対して周波数解析処理を行ってハウリング周波数を検出し、ハウリング周波数と振幅レベルに基づいてQ値を設定する。ハウリング抑制部107は、図7のt1〜t4における音声信号に対してハウリングが検出された場合には、ハウリング抑制制御部105から出力されたマイク本数「3」に対応するゲイン「G3」だけ減衰させてミキサ108に出力する。また、図7のt4以降の音声信号に対してハウリングが検出された場合には、ハウリング抑制制御部105から出力されたマイク本数「2」に対応するゲイン「G2」だけ減衰させてミキサ108に出力する。
【0038】
上述した実施形態では、コンプレッサ106に入力される音声信号の信号レベルが、マイク本数に応じて適切に設定された閾値を超えた場合に、マイク本数に応じたアタックタイム、リリースタイム、レシオに従って圧縮処理を行うことができる。そのため、コンプレッサ106において入力された音声信号が最大信号レベルでクリップされず、不自然な音質とならないように出力することができる。また、マイク本数に応じて適切に設定された減衰量を用いて、コンプレッサ106から出力された音声信号におけるハウリング周波数成分をハウリング抑制部107において減衰させて出力することができるため、スピーカ111から放音される音声が再び各マイク10で収音されてハウリングが発生するのを抑制することができる。
【0039】
<変形例>
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよく、各変形例を組み合わせて実施してもよい。以下、本発明に係る実施形態の変形例について説明する。
【0040】
(1)上述した実施形態では、動作状態にあるマイク本数に応じて異なる圧縮制御情報及びハウリング制御情報が予め設定されている例であったが、動作状態であって使用されているか否かに応じた圧縮制御情報及びハウリング制御情報を設定するようにしてもよい。即ち、例えば、動作状態であるマイク本数が3本のうち1本がマイク信号の信号レベルが所定の閾値以下であり使用されていない場合にはマイク本数を2.5とし、2本が使用されていない場合にはマイク本数を1.5と定義し、各マイク本数に応じた圧縮制御情報及びハウリング制御情報を予め設定するようにしてもよい。なお、動作状態であって使用されているか否かの判断は、マイク検出閾値(Vm)とは異なる所定の閾値(>Vm)をマイク本数毎に予め設定する。
【0041】
(2)上述した実施形態では、ハウリング抑制部107は、コンプレッサ106で圧縮処理を行ったか否かに関わらず、ハウリングを検知した場合にはマイク本数に応じた減衰量だけハウリング周波数の成分を減衰させる例であったが、コンプレッサ106で圧縮処理がなされた場合には、ハウリング周波数成分の減衰量を、圧縮処理を行わない場合と比べて所定量だけ減らして減衰させる等、圧縮処理が行われたか否かに応じて減衰量を変化させてもよい。なお、この場合には、コンプレッサ106で圧縮処理を行ったか否かの情報をハウリング抑制制御部105又はハウリング抑制部107に通知されるように構成してもよい。
【0042】
(3)上述した実施形態では、動作状態のマイク本数に応じて異なるアタックタイム及びリリースタイムを設定する例であったが、マイク本数に応じて異なるレシオだけを設定してもよいし、マイク本数に応じて異なるアタックタイムだけを設定するようにしてもよい。また、マイク本数に応じて異なるリリースタイムだけを設定するようにしてもよい。また、レシオ、アタックタイム、リリースタイムのうち、任意の2つのパラメータをマイク本数に応じて異なるように設定するように構成してもよい。また、実施形態では、マイク本数に応じて異なる閾値を設定する例であったが、予め定めた固定の閾値を設定するようにしてもよい。
【0043】
(4)また、上述した実施形態では、予め、マイク本数に応じた圧縮制御情報及びハウリング抑制情報が記憶部13に記憶されている例であったが、圧縮制御情報及びハウリング抑制情報の予め定めた各基準値のみを記憶し、マイク本数に応じた圧縮制御情報及びハウリング抑制情報の変化量を各基準値に加算又は乗算するなど、予め定めた演算式を用いて圧縮制御情報及びハウリング抑制情報を求めるようにしてもよい。
【0044】
(5)上述した実施形態では、マイク本数に応じた圧縮制御情報及びハウリング抑制情報を記憶部13に記憶している例であったが、マイク本数に加えて、例えば、カラオケ装置1が設置されている部屋の音響伝達特性に応じた圧縮制御情報及びハウリング抑制情報を記憶するようにしてもよい。この場合には、カラオケ装置1が設けられている部屋毎の音響伝達特性を予め測定し、カラオケ装置1が設けられている部屋に応じた音響伝達特性とマイク本数に対応する圧縮制御情報及びハウリング抑制情報をコンプレッサ106及びハウリング抑制部107に指示するように構成する。
【0045】
(6)上述した実施形態において、ハウリング抑制部107が複数の異なる周波数成分においてハウリングが生じていることを検出した場合、複数のハウリング周波数が一定範囲内の近傍にあれば、当該複数のハウリング周波数を一つのノッチフィルタで減衰させるように構成してもよい。例えば、3つの異なるハウリング周波数f1、f2、f3(f1<f2<f3)の成分のうち、ハウリング周波数f1及びf2が一定範囲内にあれば、Q値を小さくしてハウリング周波数f1及びf2を含む周波数成分をノッチフィルタにより減衰させる。
【0046】
(7)上述した実施形態では、マイク10は、オン・オフスイッチの切替える操作を示す操作信号を音声信号処理部16へ伝達しない構成であったが、オンオフを切替える操作信号を音声信号処理部16へ出力可能な構成を有するマイク10の場合には、マイク検出部103は、マイク10からの操作信号に基づいて、動作状態のマイク本数を検出するように構成してもよい。また、マイク10は電源のオンオフを切替るスイッチが設けられた電源を必要とするマイクであってもよい。
【0047】
(8)上述した実施形態では、楽曲データを記憶部13に記憶している例であったが、カラオケ装置1に通信手段を設け、通信回線を介して接続された外部装置から楽曲データを取得して再生するように構成してもよいし、光ディスク等の記録媒体に記憶されている楽曲データを取得して再生するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1・・・カラオケ装置、10・・・マイク、11・・・制御部、12・・・操作部、13・・・記憶部、14・・・音源部、15・・・表示部、16・・・音声信号処理部、101・・・プリアンプ、102・・・A/D変換部、103・・・マイク検出部、104・・・コンプレッサ制御部、105・・・ハウリング抑制制御部、106・・・コンプレッサ、107・・・ハウリング抑制部、108・・・ミキサ、109・・・D/A変換部、110・・・アンプ、111・・・スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各マイクから入力される音信号の信号レベルに基づいて、動作状態にあるマイクの数を検出する検出手段と、
動作状態にあるマイクの数に応じた前記音信号に対する圧縮の態様を予め定めた圧縮制御情報を記憶する記憶手段と、
前記検出手段によって検出されている動作状態にあるマイクの数に対応する前記圧縮制御情報を前記記憶手段から読み出し、前記検出手段が検出した動作状態にあるマイクから出力された全音信号を混合した音声信号の信号レベルが予め定めた閾値を超えると、読み出した前記圧縮制御情報に従って当該音声信号を圧縮する圧縮手段と、
前記圧縮手段によって圧縮された前記音声信号を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする音信号出力制御装置。
【請求項2】
前記圧縮手段によって圧縮された前記音声信号の前記周波数成分を分析してハウリングを起こしている周波数成分を検出するハウリング検出手段と、
動作状態にあるマイクの数に応じた前記音声信号の減衰量を記憶する減衰量記憶手段と、
前記検出手段によって検出されている動作状態にあるマイクの数に対応する減衰量を前記減衰量記憶手段から読み出し、前記ハウリング検出手段が検出したハウリングを起こしている周波数成分を、読み出した減衰量に従って減衰させるハウリング抑制手段とを備え、
前記出力手段は、前記ハウリング抑制手段による減衰処理が施された前記音声信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の音信号出力制御装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記動作状態にあるマイクの数に応じて予め定められた閾値であり、
前記圧縮制御情報は、前記音声信号が前記閾値を超えてから圧縮を行うまでの第1時間と、前記音声信号が再び前記閾値以下となってから圧縮を停止するまでの第2時間と、圧縮の割合を示す情報を含み、
前記圧縮手段は、前記検出手段が検出したマイクの数に応じた前記圧縮制御情報に基づき、前記音声信号が前記閾値を超えた時点から前記第1時間の経過した後、前記圧縮の割合に従って前記音声信号を圧縮し、前記音声信号が前記閾値以下になった時点から前記第2時間が経過したときに前記音声信号の圧縮を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の音信号出力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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