説明

音声再生装置、音声再生方法およびプログラム

【課題】聞き取りが困難な音声であっても、明確に音声を聞き取ることができる音声再生装置を提供する。
【解決手段】制御部11は、音声再生手段として音声を再生するとともに、区間変更手段として、再生される音声に対して、操作部12による操作に基づき、所定の再生区間を設定する。制御部11は、音程変更手段として、前記音声再生手段により再生される音声の音程を変更する。制御部11は、制御手段として、前記区間設定手段により設定された再生区間を前記音声再生手段により再生する際に、前記音程変更手段により再生される音声の音程を変更して再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声の指定区間を繰り返し再生する音声再生装置、音声再生方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
音声再生装置において、ユーザが指定した指定区間を繰り返し再生する繰り返し再生機能が一般的に知られている。このような音声再生装置は、楽曲などのコンテンツや語学学習等の音声に対して指定区間を繰り返し再生することにより、楽曲の練習、語学の習得、音声の聞き取り等に用いられている。このような音声再生装置における繰り返し再生機能は、音声再生中に所望の開始位置および終了位置を指定することにより、指定した開始位置と終了位置が記憶されることによって、開始位置から終了位置までの指定区間を繰り返し再生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−115349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、繰り返し再生区間を変更可能な音声再生装置が記載されている。上述したような従来の音声再生装置は、繰り返し再生の繰り返し区間設定前に聴取していた音声データの再生音声と、その音声データ中に指定した繰り返し再生による再生音声との音質は同一であるために、繰り返し区間にユーザによる聞き取りが困難な音声が含まれている場合があっても、ユーザが変更可能な音量以外は同一条件で繰返し聞き取るのみであった。例えば、基本周波数の低い声による音声の場合は、聞き取りが困難となることが多いため、繰り返し再生により複数回繰り返し聴取しても、聞き取ることができない場合もある。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、聞き取りが困難な音声であっても、聞き取りたい区間の繰り返し再生を行うことにより聞き取りを容易にすることができる音声再生装置、音声再生方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明に係る音声再生装置は、音声を再生する音声再生手段、前記音声再生手段により再生される音声に対して、所定の再生区間を設定する区間設定手段、前記音声再生手段により再生される音声の音程を変更する音程変更手段、前記区間設定手段により設定された再生区間を前記音声再生手段により再生する際に、前記音程変更手段により再生される音声の音程を変更して再生する制御を行なう制御手段、を備えることを特徴とする。
【0007】
第2の発明に係る音声再生装置は、第1の発明において、前記音程変更手段は、前記区間設定手段により設定した区間の音声を再生する回数に応じた音程に音程を変更する、ことを特徴とする。
【0008】
第3の発明に係る音声再生装置は、第1または第2の発明において、前記音程変更手段は、前記音程の変更をオクターブ単位で変更することを特徴とする。
【0009】
第4の発明に係る音声再生方法は、音声を再生する音声再生ステップ、前記音声再生ステップにより再生される音声に対して、所定の再生区間を設定する区間設定ステップ、前記音声再生ステップにより再生される音声の音程を変更する音程変更ステップ、前記区間設定ステップにより設定された再生区間を再生する際に、再生される音声の音程を変更して再生する制御を行なう制御ステップ、を備えることを特徴とする。
【0010】
第5の発明に係るプログラムは、第4の発明における各ステップをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の音声再生装置は、聞き取りが困難な音声であっても、聞き取りたい区間の繰り返し再生を行うことにより、繰り返し区間の音声の音程(キー)を変更して再生するため、明確に音声を聞き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における音声再生装置のブロック図である。
【図2】本発明におけるキーコントロール部のブロック図である。
【図3】本発明におけるキーコントロール部に係る処理の例を説明した図である。
【図4】本発明におけるキーコントロール部に係る処理の他の例を説明した図である。
【図5】本発明における第1の実施例に係る音声再生装置の動作を表すフローチャートである。
【図6】本発明における第2の実施例に係る音声再生装置の動作を表すフローチャートである。
【図7】本発明における第2の実施例に係る音声再生装置において、繰り返し再生回数と変更する音程との関連を示す表である。
【図8】本発明における第2の実施例に係る音声再生装置において、繰り返し再生回数と変更する音程との他の関連を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施例における音声再生装置について、図1を参照して説明する。図1は音声再生装置のブロック図であり、音声再生装置は、携帯型や据置型の音声再生装置、携帯電話装置、PDA(Personal Digital Assistants)、各種メディアプレイヤ等の機能として、実施されるものであり、録音機能を有していてもよい。
【0014】
図1に示す音声再生装置10は、制御部11、制御部11による処理で実現されるキーコントロール部100、操作部12、表示部13、記憶部14、DAC(Digital Analog Converter)15、出力部16、ADC(Analog Digital Convertor)17、入力部18とを備える。
【0015】
制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DSP(Digital Signal Processor)等を備えて構成され、制御手段として再生装置10の各部を制御する。
【0016】
制御部11におけるCPUは、音声再生装置10の各部からの操作信号やデータに基づき、ROMに記憶された各種プログラムをRAM上で実行することによって、各部の制御を行い、音声再生手段として、記憶部14等に記憶された音声データの再生や、停止、繰返し再生等の各種制御、入力部18より入力される音声信号の録音制御等を行う。さらに制御部11は、再生する音声データにおける指定された区間のアドレス等を記憶する区間設定手段としての役割も担う。
【0017】
制御部11におけるDSPは、再生する音声データの各種処理、例えば音質補正や音場補正、ADC17によりデジタル信号に変換された音声データを各種フォーマットの圧縮音声データに変換するエンコード処理、各種フォーマットの圧縮音声データをDAC15へ出力する音声データに変換するデコード処理等を行う。
【0018】
キーコントロール部100は、制御部11としてのCPU等による処理により実現され、音程変更手段として、再生する音声データの音程を可変させる。音程の可変は音声データの再生速度の変化を伴わない処理が望ましい。
【0019】
操作部12は、ユーザが音声再生装置10を操作するユーザインターフェースであり、押しボタンスイッチや表示部13上に設けられたタッチパネルにより構成される。さらには音声再生装置10と有線または無線で接続されるリモコンであってもよい。
【0020】
表示部13は、操作部12による操作の状態や、音声再生装置10の動作状態、音声再生装置10で再生する音声データに関する各種情報を表示し、例えば液晶表示素子や有機EL(Electro Luminescence)表示素子などにより構成される。
【0021】
記憶部14は、音声データや、例えば音声データに対応するジャケット写真データや、音声データのデータベース等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリより構成される。HDDやフラッシュメモリは音声再生装置10に内蔵されるが、所定のインターフェースにより音声再生装置10に接続される外部のデバイスであってもよい。具体的には、USB(Universal Serial Bus)により接続される外付けHDDやUSBメモリ、所定のメモリカードスロットにより接続されるメモリカードなどである。
【0022】
DAC15は、制御部11を介して出力されるデジタル音声データをアナログ音声信号に変換し、後述する出力部16に出力する。
【0023】
出力部16は、DAC15によりアナログ信号に変換された音声信号を、図示しないオペアンプ等の増幅部により増幅することにより、図示しないヘッドホンやスピーカ、外部装置等へ出力する出力端子、または音声再生装置10に内蔵さるスピーカ等である。
【0024】
ADC17は、後述する入力部18から入力されるアナログ音声信号をデジタル音声データに変換し、制御部11に出力する。
【0025】
入力部18は、外部からのアナログ音声信号が入力される入力端子や、音声再生装置10に内蔵されるマイクロホン等である。
【0026】
次に、本発明において音声データの音程を変更するキーコントロール部100について図2を参照して説明する。キーコントロール部100は、制御部11における処理により実現され、処理機能別に、サンプリングレート変換部101、フレーム合成/分割部102、クロスフェード部103より構成される。
【0027】
サンプリングレート変換部101は、変換対象の音声データにおける任意のフレームに対して、サンプリング周波数を、変更する音程に合わせて変換する。
【0028】
フレーム合成/分割部102は、サンプリングレート変換部101でサンプリング周波数が変換された音声データのフレームに対して、音程を上げる場合は前後のフレームを合成し、音程を下げる場合はフレームを分割する処理を行う。
【0029】
クロスフェード部103は、フレーム合成/分割部102で合成または分割されたフレームの分割部および前後のフレームとの接続部における音声をスムーズに接続するクロスフェード処理を行う。
【0030】
次に、図3を参照してキーコントロール部100の処理の例として、音程を上げる処理について説明する。
【0031】
図3(a)は、キーコントロール対象となる音声データにおける任意のフレームの波形を模した図である。波形上に記載されている点は音声データのサンプリング位置を示しており、一例としてサンプリング周波数fs=48kHzなどのデータである。
【0032】
図3(b)は、入力された波形の各フレームにおいてサンプリングレート変換処理を行った波形を模した図である。ここでは入力された波形のサンプリング周波数fsを所望の音程に対応してダウンサンプリングする。例えば、入力波形のサンプリング周波数がfs=48kHzであった場合、音程を110%にする場合はfs=43.63kHz、音程を120%にする場合はfs=40kHz、音程を200%にする場合はfs=24kHzなどに変換する。
【0033】
図3(c)は、サンプリングレート変換処理を行った波形を合成する処理を模した図である。ダウンサンプリングを行った1フレーム分の波形に対して、入力時のサンプリング周波数によるサンプリング数と同一のサンプリング数となるように、繰り返し合成していく。例えば、音程を200%とする場合は、1フレームにおけるサンプリング数がサンプリングレート変換部により2分の1となるため、入力時のサンプリング数と同一となるよう、1フレームに対してさらに1フレーム分の同一波形を合成して1フレームとする。同様に、音程を120%とする場合は、1フレームにおけるサンプリング数がサンプリングレート変換部により100/120=0.833倍となるため、入力時のサンプリング数と同一となるよう、1フレームに対してさらに同一波形を0.167フレーム分合成して1フレームとする。
【0034】
図3(d)は、フレーム合成処理の波形を滑らかに接続するクロスフェード処理を模した図である。クロスフェード処理とは、フレーム合成を行い1フレーム分とした波形に対して、合成部分の波高を一致させるように接続する処理である。図3(d)において矩形で囲んだ部分は、フレーム合成処理により接続した波形の端部をクロスフェード処理により接続した部分を指す。
【0035】
図3(e)は、クロスフェード処理を行った波形を、入力時と同一のサンプリング周波数で出力した波形を模した図である。このようにサンプリングレート変換処理を行った音声波形は、再生速度を変更することなく任意の音程とすることができる。
【0036】
上述した説明は、音程の変更を入力されたフレームにおける音程を100%として所定割合音程を上げる処理について説明したが、他の例としてはオクターブ単位で音程を上げることもある。この場合、1オクターブ音程を上げる再生とは、元の音程の200%の音程とすることを意味し、2オクターブ音程を上げる再生とは、元の音程の400%の音程とすることを意味する。
【0037】
次に、図4を参照してキーコントロール部100の処理の例として、音程を下げる処理について説明する。
【0038】
図4(a)は、キーコントロール対象となる音声データにおける任意のフレームの波形を模した図である。波形上に記載されている点は音声データのサンプリング位置を示しており、一例としてサンプリング周波数fs=48kHzなどのデータである。
【0039】
図4(b)は、入力された波形の各フレームにおいてサンプリングレート変換処理を行った波形を模した図である。ここでは入力された波形のサンプリング周波数fsを所望の音程に対応してアップサンプリングする。例えば、入力波形のサンプリング周波数がfs=48kHzであった場合、音程を90%にする場合はfs=53.33kHz、音程を80%にする場合はfs=60kHz、音程を50%にする場合はfs=96kHzなどに変換する。
【0040】
図4(c)は、サンプリングレート変換処理を行った波形を分割する処理を模した図である。アップサンプリングを行った1フレーム分の波形に対して、入力時のサンプリング周波数によるサンプリング数と同一のサンプリング数となるように波形を分割する。例えば、音程を50%とする場合は、1フレームにおけるサンプリング数がサンプリングレート変換部により2倍となるため、入力時のサンプリング数と同一となるよう、1フレームを50%に分割して1フレームとする。同様に、音程を80%とする場合は、1フレームにおけるサンプリング数がサンプリングレート変換部により100/80=1.25倍となるため、入力時のサンプリング数と同一となるよう、1フレームの0.8フレーム分を分割して1フレームとする。
【0041】
図4(d)は、フレーム分割した波形を前後のフレームの波形と滑らかに接続するクロスフェード処理を模した図である。クロスフェード処理とは、フレーム分割を行い1フレーム分とした波形に対して、前後のフレームの波高を一致させるように接続する処理である。図4(d)において矩形で囲んだ部分は、フレーム分割した波形と、後に続く波形との端部をクロスフェード処理により接続した部分を指す。
【0042】
図4(e)は、クロスフェード処理を行った波形を、入力時と同一のサンプリング周波数で出力した波形を模した図である。このようにサンプリングレート変換処理を行った音声波形は、再生速度を変更することなく任意の音程とすることができる。
【0043】
上述した説明は、音程の変更を入力されたフレームにおける音程を100%として所定割合音程を下げる処理について説明したが、他の例としてはオクターブ単位で音程を下げることもある。この場合、1オクターブ音程を下げる再生とは、元の音程の50%の音程とすることを意味し、2オクターブ音程を上げる再生とは、元の音程の25%の音程とすることを意味する。
【0044】
次に、本発明の音声再生装置10の音声処理について、図5に従い説明する。図5は、第1の実施例に係る音声再生装置10の動作を表すフローチャートである。
【0045】
先ずユーザは、音声再生装置10の操作部12および表示部13を用いて、所望の音声データを選択し、再生開始を指示する(ステップS101)。再生開始が指示されると(ステップS101:Yes)、制御部11は選択された音声データを記憶部14から読み出してデコード処理を行い、デコード処理を行った音声データをDAC15でアナログ信号に変換して出力部16に出力する。
【0046】
再生開始が指示されない場合(ステップS101:No)、制御部11は再生指示の操作を受け付けるまで待機する。
【0047】
ステップS101において、再生開始が指示された音声データの再生中、ユーザが繰返し再生を希望する区間の開始位置に達した時点で、操作部12を用いてリピート操作を行うことにより、再生中の音声データにおける繰返し再生の開始位置(以下、位置A)が記憶される(ステップS102:Yes)。ステップS102において、位置Aが設定されなかった場合(ステップS102:No)、音声データの再生が継続され、ステップS106の処理へ移行する。
【0048】
ステップS102において、位置Aを設定した場合、ユーザは位置Aを設定したときと同様に、ユーザが繰り返し再生を希望する区間の終了地点に達した時点で、操作部12を用いてリピート操作を行うことにより、再生中の音声データにおける繰り返し再生の終了地点(以下、位置B)が記憶され(ステップS103:Yes)、上述した位置Aおよび位置Bは、各々リピートボタンを押したときの音声データの時間情報やアドレス情報といった、楽曲の繰り返し再生位置を特定可能な情報が、制御部11のRAMまたは記憶部14に記憶される。
【0049】
ステップS103において、ユーザが位置Bを設定しない場合(ステップS103:No)、位置Bが設定されるまで音声再生装置10は音声データの再生を継続する。この場合に位置Bが設定されずに音声データが最後まで再生された場合は本処理を終了してもよい。
【0050】
次に、ユーザはステップS102およびステップS103で設定した位置Aから位置Bまでの区間(以下、A−B区間)について、繰り返し再生を行なうか否かを、操作部12を用いて制御部11に指示する。この指示は、例えば位置B設定後の操作部12における再生操作や、再度のリピート操作などにより実行される。もしくは、位置Bの設定と同時にA−B区間の再生を開始してもよい。
【0051】
ステップS104において、ユーザによる操作等によって制御部11がA−B区間を再生する指示を受け付けた場合(ステップS104:Yes)、A−B区間の音声に対して、キーコントロール部100により音程を変更してA−B区間を再生する(ステップS105)。ここでのキーコントロールとは、A−B区間における元の音程より音程を上げる処理または音程を下げる処理である。
【0052】
ステップS104において、ユーザによる操作等によって制御部11がA−B区間の再生指示を受け付けなかった場合(ステップS104:No)、A−B区間の再生は行われずに、ステップS102以前からの音声データの再生が継続された後、もしくはその時点で音声データの再生を終了するためステップS106の処理へ移行する。
【0053】
ステップS105において、A−B区間の音程を変更して再生後、ユーザは再度A−B区間の再生を要求する場合があるため、再度ステップS104の判断を行い、ここで再度A−B区間を再生すると判断された場合(ステップS104:Yes)、A−B区間の音声に対して、キーコントロール部100により音程を変更してA−B区間を再生する(ステップS105)。
【0054】
A−B区間の再生を終了した後は、ステップS102で設定した位置Aからの音声データの再生が継続されてもよく、ステップS103で設定した位置Bからの音声データの再生が継続されてもよく、さらには音声データの再生を終了してもよい。いずれであっても、音声データの所望の再生が終了したか否かを判断し、終了していないと判断された場合(ステップS106:No)、再生の終了と判断されるまで音声データの再生を継続し、再生が終了と判断された場合(ステップS106:Yes)再生を終了する。
【0055】
以上のように、本発明の第1の実施例に係る音声再生装置においては、音声データの再生時に所定の区間(A−B区間)の繰り返し再生(いわゆるA−Bリピート再生)を行うと、指定したA−B区間の音声の音程を変更して再生するため、ユーザは目的に応じて必要な箇所を必要な音程により再生することができる。例えば、音声データが語学学習用の音声であった場合や、会話やインタビューを録音した音声であった場合、特に男性の声に対して聞き取りが困難であった場合には、音程を上げることにより、明瞭に聞き取ることが可能となる。さらには、音声データが楽曲であった場合、音程を下げることにより他の音程による演奏や採譜を容易に行うことができる。
【0056】
上記第1の実施例における繰り返し再生時に変更する音程は、予め設定されていてもよく、ユーザが予め設定してもよい。さらにはA−B区間の繰り返し再生時に、複数の音程よりユーザが選択可能としてもよい。さらには、繰り返し再生時に変更する音程はオクターブ単位で変更してもよく、ステップS105において1オクターブ上げた音程または1オクターブ下げた音程により、A−B区間を再生してもよい。
【0057】
次に、本発明の第2の実施例に係る音声再生装置10の音声処理について、図6、図7、図8に従い説明する。第2の実施例に係る音声再生装置については、図1、図2により説明した第1の実施例に係る音声再生装置と同一であるため、説明を省略する。
【0058】
図6は、第2の実施例に係る音声再生装置10の動作を表すフローチャートである。先ずユーザは、音声再生装置10の操作部12および表示部13を用いて、所望の音声データを選択し、再生を開始する(ステップS201)。
【0059】
再生を開始した音声データの再生中において、ユーザが繰返し再生を希望する区間の開始位置に達した時点で、操作部12を用いてリピート操作を行うことにより、再生中の音声データにおける繰返し再生の開始位置(以下、位置A)が記憶される(ステップS202:Yes)。ステップS202において、位置Aが設定されなかった場合(ステップS202:No)、音声データの再生が継続され、ステップS208の処理へ移行する。
【0060】
ステップS202において、位置Aを設定した場合、ユーザは位置Aを設定したときと同様に、ユーザが繰り返し再生を希望する区間の終了地点に達した時点で、操作部12を用いてリピート操作を行うことにより、再生中の音声データにおける繰り返し再生の終了地点(以下、位置B)が記憶される(ステップS203:Yes)。上述した位置Aおよび位置Bは、各々リピートボタンを押したときの音声データの時間情報やアドレス情報といった、楽曲の位置を特定可能な情報を、制御部11のRAMまたは記憶部14に記憶する。
【0061】
ステップS203において、ユーザが位置Bを設定しない場合(ステップS203:No)、位置Bが設定されるまで音声再生装置10は音声データの再生を継続する。この場合に位置Bが設定されずに音声データが最後まで再生された場合は本処理を終了してもよい。
【0062】
ステップS202及びステップS203により、繰返し再生を行ないたい位置Aから位置Bまでの区間(以下、A−B区間)が設定されると、制御部11において設定されたA−B区間における繰り返し再生回数のカウント値nが初期化(n=0)される(ステップS204)、制御部11におけるRAM等に記憶される。
【0063】
次に、ユーザはステップS202およびステップS203で設定したA−B区間について繰り返し再生を行うか否かを、操作部12を用いて制御部11に指示する。この指示は、例えば位置B設定後の操作部12における再生操作や、再度のリピート操作などにより実行される。または、位置Bの設定と同時にA−B区間の再生を開始してもよい。
【0064】
ステップS205において、ユーザによる操作等によって制御部11がA−B区間を再生する指示を受け付けた場合(ステップS205:Yes)、S204で初期化された繰り返し再生回数に1を加算し(ステップS206)、ステップS207に移行する。
【0065】
ステップS207においては、A−B区間の音声に対してS206において加算された繰り返し回数に応じた音程に変更して再生する。例えば、図7に示すようにA−B区間の繰り返し回数が1回目(n=1)であれば、A−B区間の音声に対してキーコントロール部100が+10%(110%)の音声に変換して、繰り返し再生が行なわれる。さらに例えばn=2であれば+20%(120%)、n=3であれば+30%(130%)、n=4であれば+40%(140%)、n=5以上であれば+50%(150%)の音程で繰り返し再生を行う。
【0066】
ステップS205において、ユーザによる操作等によって制御部11がA−B区間の再生指示を受け付けなかった場合(ステップS205:No)、A−B区間の再生は行なわれずに、ステップS202以前からの音声データの再生が継続された後、もしくはその時点で音声データの再生を終了するためステップS106の処理へ移行する。
【0067】
ステップS207において、n=n+1回目のA−B区間を再生後、ユーザは再度A−B区間の再生を要求する場合があるため、再度ステップS205の判断を行ない、ここで再度A−B区間を再生すると判断された場合(ステップS205:Yes)、前回のステップS206における処理で設定されたnに対して再度1が加算され(ステップS206)、加算された繰り返し回数に応じた音程に変更して再生する。
【0068】
A−B区間の再生を終了した後は、ステップS202で設定した位置Aからの音声データの再生が継続されてもよく、ステップS203で設定した位置Bからの音声データの再生が継続されてもよく、さらには音声データの再生を終了してもよい。いずれであっても、音声データの所望の再生が終了したか否かを判断し、終了していないと判断された場合(ステップS208:No)、再生の終了と判断されるまで音声データの再生を継続し、再生が終了と判断された場合(ステップS208:Yes)再生を終了する。
【0069】
以上のように本発明の第2の実施例に係る音声再生装置においては、音声データの再生時に所定の区間(A−B区間)のの繰返し再生の回数に応じて、再生する音声の音程を変更して再生するため、ユーザは当初の音声が聞き取り困難であった場合に、段階的に音程を変更しながら繰返し再生を行うことができるため、聞き取り可能になるまで音程を段階的に変更しながら音声の再生を行うことができる。
【0070】
上記第2の実施例における繰り返し再生時に変更する音程は、図7に示すように段階的に変更していく例について説明したが、例えば図8に示すように繰り返し再生時に変更する音程をオクターブ単位で変更してもよい。ステップS206においてn=1とした場合は、S207において1オクターブ上の音程で再生し、n=2とした場合は、2オクターブ上の音程で再生し、同様にn=3以上の場合は3オクターブ上の音程で再生する。または、音程をオクターブ単位で下げてもよい。
【0071】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はその主旨を逸脱しない限りこれに限定されるものではない。例えば実施例1および実施例2において、A−B区間の初回の繰返し再生時は音程を変更せずに2回目からの繰返し再生より音程を変更することとしてもよい。
【0072】
また、音程の変化は再生速度の変化を伴わないことが望ましいとしたが、必用に応じて再生速度の変化を伴ってもよい。例えば繰り返し再生時に音程を上げる処理を行った場合には、繰り返し再生を行う音声データが自然に聞こえる程度に再生速度を上げてもよい。
【0073】
再生速度を上げる処理としては、図3(e)で入力時と同一のサンプリング周波数での出力に対して、入力時より高いサンプリング周波数で再生することにより再生速度を上げることができる。例えば図3(a)の入力波形におけるサンプリング周波数が、一例としてfs=48kHzである場合、例えばfs=60kHzで再生すると、繰り返し再生部分の音声データの再生速度は25%上昇し、再生速度125%での再生となる。
【0074】
再生速度を下げる処理も同様に、図4(e)において入力時より低いサンプリング周波数で再生すればよく、例えば入力時のサンプリング周波数fs=48kHzに対してfs=40kHzとすると、再生速度約83%での再生となる。
【0075】
また、実施例2においては、繰り返し再生回数に応じて段階的に音程を上げて再生する例について説明したが、段階的に音程を下げてもよい。
【0076】
さらには、実施例2におけるステップS205:NoによりA−B区間の繰り返し再生を一旦終了した後、再度A−B区間を呼び出すことによりA−B区間の繰り返し再生を再開した場合は、再度n=0としてS206により1を加算してもよく、記憶されている前回の繰り返し再生回数nに対して1を加算してもよい。
【符号の説明】
【0077】
10:音声再生装置、11:制御部(制御手段)、12:表示部、14:記憶部、15:DAC、16:出力部、17:ADC、18:入力部、100:キーコントロール部(キー変更手段)、101:ピッチ抽出部、102:サンプル数変換部、103:ピッチ圧縮伸張部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を再生する音声再生手段、
前記音声再生手段により再生される音声に対して、所定の再生区間を設定する区間設定手段、
前記音声再生手段により再生される音声の音程を変更する音程変更手段、
前記区間設定手段により設定された再生区間を前記音声再生手段により再生する際に、前記音程変更手段により再生される音声の音程を変更して再生する制御を行なう制御手段、
を備えることを特徴とする、音声再生装置。
【請求項2】
前記音程変更手段は、前記区間設定手段により設定した区間の音声を再生する回数に応じた音程に音程を変更する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の音声再生装置。
【請求項3】
前記音程変更手段は、前記音程の変更をオクターブ単位で変更することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の音声再生装置。
【請求項4】
音声を再生する音声再生ステップ、
前記音声再生ステップにより再生される音声に対して、所定の再生区間を設定する区間設定ステップ、
前記音声再生ステップにより再生される音声の音程を変更する音程変更ステップ、
前記区間設定ステップにより設定された再生区間を再生する際に、再生される音声の音程を変更して再生する制御を行なう制御ステップ、
を備えることを特徴とする、音声再生方法。
【請求項5】
請求項4に記載の音声再生方法の各ステップをコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−113603(P2011−113603A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268492(P2009−268492)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】