説明

音声出力装置、音声出力方法、及びプログラム

【課題】浴室で音声を出力する際に、残響による影響を低減させる。
【解決手段】試験音出力部110は音声データを試験用音声としてスピーカ300から出力する。ここで出力される音声データは、試験用の音声データであるのが好ましい。集音部120は、試験用音声を集音して集音データを生成する。補正方法算出部130は、音声データと集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出する。音声出力部210は、音声データ補正機能を有している。具体的には、音声出力部210は、補正方法算出部130が算出した補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正する。そして音声出力部210は、補正後の音声データをスピーカ300から出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置、音声出力方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
映画やテレビ、音楽など、音声が出力されるコンテンツを浴室で楽しむ機会が増えている。例えば特許文献1には、測定用の音響信号を再生し、マイクで集音された測定用の音響信号の音響データに基づいて、音場特性を補正することが記載されている。そして特許文献1によれば、音場特性の補正設定のためにトーンコントロール操作が不要になる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−77657号公報(特に段落0031)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が検討した結果、浴室における音声出力は、残響による影響が大きく、この残響の影響を低減させることが好ましいことが判明した。
【0005】
本発明の目的は、音声出力において、残響による影響を低減させることができる音声出力装置、音声出力方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ノーマルモードと、浴室モードを有しており、
前記浴室モードが選択されたときに、
音声データを試験用音声としてスピーカから出力する試験音出力手段と、
前記試験用音声を集音して集音データを生成する集音手段と、
前記音声データと前記集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出する補正方法算出手段と、
前記補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正する音声データ補正手段と、
補正後の前記出力すべき音声データを前記スピーカから出力する音声出力手段と、
を備える音声出力装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、音声出力装置に、ノーマルモードと、浴室モードを持たせ、
前記浴室モードが選択されたときに、音声出力装置が、
スピーカから、音声データを試験用音声として出力し、
前記試験用音声を集音して集音データを生成し、
前記音声データと前記集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出し、
前記補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正し、
補正後の前記出力すべき音声データを前記スピーカから出力する音声出力方法が提供される。
【0008】
本発明によれば、コンピュータを、音声出力装置として機能させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
ノーマルモードと、浴室モードを持たせ、
前記浴室モードが選択されたときに、
音声データを試験用音声としてスピーカから出力する機能と、
前記試験用音声を集音して集音データを生成する機能と、
前記音声データと前記集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出する機能と、
前記補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正する機能と、
補正後の前記出力すべき音声データを前記スピーカから出力する機能と、
を実現させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浴室で音声を出力する場合、残響による影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る音声出力装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】音声出力装置が使用される場所を具体的に示す図である。
【図3】音声出力装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る音声出力装置が行う処理を示すフローチャートである。
【図5】低音強調処理を説明するための図である。
【図6】低音強調処理を説明するための図である。
【図7】低音強調処理を説明するための図である。
【図8】第3の実施形態に係る音声出力装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示した音声出力装置において、補正方法記憶部が補正方法を記憶している場合の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る音声出力装置の機能構成を示すブロック図である。この音声出力装置は、ノーマルモードと、浴室モードを有しており、また、試験音出力部110、集音部120、補正方法算出部130、及び音声出力部210を備えている。試験音出力部110、集音部120、及び補正方法算出部130は、浴室モードが選択されたときに機能する。試験音出力部110は音声データを試験用音声としてスピーカ300から出力する。ここで出力される音声データは、試験用の音声データであるのが好ましい。集音部120は、試験用音声を集音して集音データを生成する。補正方法算出部130は、音声データと集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出する。音声出力部210は、音声データ補正機能を有している。具体的には、音声出力部210は、補正方法算出部130が算出した補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正する。そして音声出力部210は、補正後の音声データをスピーカ300から出力する。本図に示す例において、スピーカ300は音声出力装置の一部となっており、その面積は300mm以下、さらに詳細には250mm以下である。ただし、スピーカ300は音声出力装置とは別の装置であってもよい。以下、詳細に説明する。
【0013】
音声出力装置は、携帯性を有している装置、例えば携帯通信端末や携帯プレーヤーである。音声出力装置は、さらにモード選択部100及びコンテンツ記憶部200を有している。
【0014】
モード選択部100は、音声出力装置のユーザからの入力に基づいて、ノーマルモードと、浴室モードのいずれかを選択する。ただし音声出力装置はさらに複数の音声モードを有していてもよい。この場合においても、モード選択部100は、音声出力装置のユーザからの入力に基づいて、いずれかの音声モード(浴室モードを含む)を選択する。
【0015】
コンテンツ記憶部200は、再生すべき音声データをコンテンツとして記憶している。コンテンツ記憶部200が記憶しているコンテンツは、音楽であってもよいし、映画等の動画であってもよい。なお、音声出力装置がアンテナやインターネット等の通信網に接続することができる場合、音声出力部210は、アンテナや通信網を介して受信したコンテンツを、再生すべき音声データとして扱ってもよい。
【0016】
ここで、補正方法算出部130が算出する補正方法を詳細に説明する。補正方法算出部130は、試験音出力部110が出力した音声データの出力時の波形と、集音部120が集音した音声データの波形を比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出する。補正方法算出部130は、例えば試験音出力部110からインパルスを出力させ、このときのインパルス応答として、集音部120が集音した音声データを使用する。試験音出力部110、集音部120は、複数の測定点においてインパルス応答を取得する。
【0017】
インパルス応答の離散的列ベクトルをhχ[n]とする(n>1、ただしnは自然数)と、補正方法算出部130は、m個(m>1、ただしmは自然数)の測定点から得られたインパルス応答を、下記(1)式に基づいて、総合的なインパルス応答に変換する。
【0018】

・・・(1)

ただし、αχは、重み付け係数である。ここで、αχ=1/mと、単純化してもよい。
【0019】
そして、g(n)のz変換をG(z)とすると、伝達関数は、F(z)=1/G(z)となる。そしてこの伝達関数F(z)を逆z変換することにより、求めるべき補正方法を示す関数f(n)が算出される。
【0020】
なお、補正方法算出部130は、z変換の代わりにラプラス変換又はフーリエ変換を用いてもよい。
【0021】
そして音声出力部210は、以下の(2)式に基づいて音声データの補正を行う。なおこの処理は、ハードウェア上でみると、例えばDSPにおけるFIRフィルタはIIRフィルタにより行われる。
【0022】

・・・(2)
【0023】
なお、図1に示した音声出力装置の各構成要素は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。音声出力装置の各構成要素は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶ユニット、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0024】
図2は、音声出力装置が使用される場所を具体的に示す図である。上記したように、音声出力装置は携帯性を有している。このため、浴室10内で使用されることがある。浴室10内には浴槽12がある。ユーザは、そのときの状況に応じて様々な場所に音声出力装置を位置させる。図2において「×」で示す箇所が、その一例である。ユーザは、音声出力装置を位置させると想定される場所それぞれにおいて、図1に示した試験音出力部110、集音部120、及び補正方法算出部130を機能させるのが好ましい。
【0025】
図3は、音声出力装置の動作の一例を示すフローチャートである。まず音声出力部210は、コンテンツをコンテンツ記憶部200から読み出す(ステップS10)。次いで、モード選択部100は、いずれの音声モードをユーザが選択しているか、確認する(ステップS20)。浴室モードが選択されていない場合(ステップS20:No)、音声出力部210は、コンテンツに含まれる音声データをそのまま出力する(ステップS70)。
【0026】
浴室モードが選択された場合(ステップS20:Yes)、試験音出力部110は、試験用の音声データを用いて試験用の音声をスピーカ300から出力させる(ステップS30)。集音部120は、試験用の音声を集音する(ステップS40)。そして補正方法算出部130は、上記した補正方法の算出を行う(ステップS50)。次いで音声出力部210は、ステップS50で算出された補正方法を用いて、ステップS10で読み出したコンテンツに含まれる音声データを補正し(ステップS60)、補正後の音声データを出力する(ステップS70)。
【0027】
以上、本実施形態によれば、補正方法算出部130は、音声データと集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出する。そして音声出力部210は、補正方法算出部130が算出した補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正して、補正後の音声データをスピーカ300から出力する。従って、残響による影響を低減させることができる。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る音声出力装置が行う処理を示すフローチャートであり、第1の実施形態における図3に対応している。本実施形態に係る音声出力装置は、音声出力部210が、補正方法算出部130が算出した補正方法を用いて補正を行った(ステップ60)後、低音強調処理を行う(ステップS65)点を除いて、第1の実施形態に係る音声出力装置と同じである。
【0029】
詳細には、音声出力部210は、図5に示すように、1kHz以下の音声を強調する処理を行う。具体的には、1kHz以下の音声に対してはゲインを上げ、1kHz超の音声に対してはゲインを下げる。音声出力部210は、図6に示すように、音声出力部210は、500Hz以上1kHz以下の音声を強調する処理を行ってもよい。
【0030】
その結果、図7に示すように、残響音を含め、低音は高音に対して全体的に強調される。
【0031】
浴室の壁、天井、及び床は、例えば、モルタル、コンクリート、又は樹脂などの下地にアクリル樹脂を塗布した構成を有しており、一般的に剛性が高い。このような場合、高音の吸音率が高くなる。また、人の聴覚は、低音を感じにくいという性質がある。これに対し、本実施形態に係る音声出力装置は、音声出力部210は、補正方法算出部130が算出した補正方法により補正を行った後、低音を強調する処理を行っている。このため、人の聴覚上、低音と高音を、残響音の現象度合いを含めて互いに等価にすることができる。従って、より自然な音声を出力することができる。
【0032】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係る音声出力装置の機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る音声出力装置は、補正方法記憶部140を有している点を除いて、第1又は第2の実施形態に係る音声出力装置と同様の構成である。
【0033】
補正方法記憶部140は、補正方法算出部130が算出した補正方法を記憶している。このため、補正方法算出部130が一度補正方法を算出している場合、音声出力部210は、補正方法記憶部140が記憶している補正方法を読み出して使用することができる。
【0034】
図9は、図8に示した音声出力装置において、補正方法記憶部140が補正方法を記憶している場合の動作を示すフローチャートである。本図は、第1の実施形態と同様の場合を示している。
【0035】
まず音声出力部210は、コンテンツをコンテンツ記憶部200から読み出す(ステップS10)。次いで、モード選択部100は、いずれの音声モードをユーザが選択しているか、確認する(ステップS20)。浴室モードが選択されていない場合(ステップS20:No)、音声出力部210は、コンテンツに含まれる音声データをそのまま出力する(ステップS70)。
【0036】
浴室モードが選択された場合(ステップS20:Yes)、音声出力部210は、補正方法記憶部140から補正方法を読み出す(ステップS25)。次いで音声出力部210は、ステップS25で読み出された補正方法を用いて、ステップS10で読み出したコンテンツに含まれる音声データを補正し(ステップS60)、補正後の音声データを出力する(ステップS70)。
【0037】
なお、補正方法記憶部140が補正方法を記憶していない場合、図8に示した音声出力装置は、第1又は第2の実施形態で示した処理を行う。このとき補正方法記憶部140は、補正方法算出部130が算出した補正方法を記憶する。
【0038】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、補正方法算出部130が一度補正方法を算出している場合、ユーザは、試験音出力部110、集音部120、及び補正方法算出部130を用いて補正方法を再度算出する必要がなくなる。
【0039】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
10 浴室
12 浴槽
100 モード選択部
110 試験音出力部
120 集音部
130 補正方法算出部
140 補正方法記憶部
200 コンテンツ記憶部
210 音声出力部
300 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーマルモードと、浴室モードを有しており、
前記浴室モードが選択されたときに、
音声データを試験用音声としてスピーカから出力する試験音出力手段と、
前記試験用音声を集音して集音データを生成する集音手段と、
前記音声データと前記集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出する補正方法算出手段と、
前記補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正する音声データ補正手段と、
補正後の前記出力すべき音声データを前記スピーカから出力する音声出力手段と、
を備える音声出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音声出力装置において、
前記音声データ補正手段は、前記補正後の出力すべき音声データに対し、低音の音声を強調する補正をさらに行う音声出力装置。
【請求項3】
請求項2に記載の音声出力装置において、
前記音声データ補正手段は、1kHz以下の音声を強調する音声出力装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の音声出力装置において、
前記スピーカは面積が300mm以下である音声出力装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の音声出力装置において、
前記補正方法を記憶する補正方法記憶手段を備える音声出力装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の音声出力装置において、
前記音声出力装置は携帯通信端末である音声出力装置。
【請求項7】
音声出力装置に、ノーマルモードと、浴室モードを持たせ、
前記浴室モードが選択されたときに、音声出力装置が、
スピーカから、音声データを試験用音声として出力し、
前記試験用音声を集音して集音データを生成し、
前記音声データと前記集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出し、
前記補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正し、
補正後の前記出力すべき音声データを前記スピーカから出力する音声出力方法。
【請求項8】
コンピュータを、音声出力装置として機能させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
ノーマルモードと、浴室モードを持たせ、
前記浴室モードが選択されたときに、
音声データを試験用音声としてスピーカから出力する機能と、
前記試験用音声を集音して集音データを生成する機能と、
前記音声データと前記集音データを比較することにより、残響を減少させるための補正方法を算出する機能と、
前記補正方法を用いて、出力すべき音声データを補正する機能と、
補正後の前記出力すべき音声データを前記スピーカから出力する機能と、
を実現させるプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−100199(P2012−100199A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248339(P2010−248339)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】