説明

音声記録装置、音声記録方法及び音声記録プログラム

【課題】古い音声情報の一部を新しい音声情報で更新する処理を繰り返すことにより最新の音声情報をメモリに記録し続ける場合において、音声情報を記憶するメモリの消費量を削減しつつ、より新しい音声情報を記憶できる音声記録装置を提供する。
【解決手段】音声変換手段81は、入力された音声を予め定められたバイト数ごとの符号化データに変換する。データ登録手段83は、バイト数ごとの符号化データをメモリ82に登録する。また、データ登録手段83は、メモリ82に登録された符号化データ量が予め定められた閾値よりも多くなったときに、バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いてメモリ82に登録された最も古い符号化データを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶容量の小さいメモリに効率よく音声情報を記憶する音声記録装置、音声記録方法及び音声記録プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
緊急事態の発生に備え、緊急事態の通報に用いられる緊急通報ボタンを備えた携帯端末が知られている。利用者は、緊急事態が発生した時に緊急通報ボタンを押すことで、利用者の通話音声記録を開始させたり、コールセンタへ通報したりすることが可能になる。
【0003】
また、緊急通報ボタンを押してからコールセンタが応答を開始するまでの間に容態が急変し、コールセンタとの通話が出来なくなるケースを想定し、緊急通報ボタンを押す以前の音声情報を予め記録しておく装置も知られている。
【0004】
特許文献1には利便性が高い情報を通報することが可能な携帯型通報装置が記載されている。特許文献1に記載された携帯型通報装置は、入力される音声データの記憶を常時行い、最も古い音声データが記録されている領域から順番に、記憶されたデータを新しいデータで上書きする。そして、特許文献1に記載された携帯型通報装置は、異常が発生した場合に、現在から所定時間だけ前の音声データをセンタに送信する。
【0005】
なお、特許文献2には、通報システムにおける音声通信装置が記載されている。特許文献2に記載された音声通信装置は、緊急通報センタから再生指示信号を受信すると、録音されている音声を再生させ、緊急通報センタにその音声を送信する。
【0006】
また、特許文献3には、通信相手の端末に緊急メッセージを送信する移動体通信端末装置が記載されている。特許文献3に記載された移動体端末装置は、緊急通報開始キーが押下されると緊急事態発生時の音声データを作成し、発着信履歴データをもとに作成される宛先に対してその音声データを添付した緊急メール送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−23475号公報(段落0052〜0053,0058)
【特許文献2】特開2000−312266号公報(段落0020)
【特許文献3】特開2005−44197号公報(段落0025)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メモリに記憶できる音声情報は有限である。そのため、現在から所定時間だけ前の音声データを得ようとする場合には、特許文献1に記載された携帯型通報装置のように、古い音声情報の一部を新しい音声情報で更新する処理を繰り返すことにより、最新の音声情報をメモリに記録し続ける方法が取られることがある。
【0009】
しかし、音声情報はメモリ消費量が非常に多いにもかかわらず、組み込み機器に用いられるメモリの記憶容量は小さい場合が多い。そのため、特許文献1に記載された携帯型通報装置のように、音声の生データをメモリに記憶させる方法では、メモリの消費量を抑えることが出来ないという問題がある。したがって、少ない記憶容量のメモリであっても、メモリの消費量を抑え、より新しい音声情報を記録できることが望ましい。
【0010】
音声情報を圧縮させることで、メモリの消費量を抑えることは可能である。しかし、圧縮された音声情報を途中の位置からデコードするのは困難なため、古い音声情報の一部を新しい音声情報で更新する処理を繰り返す方法にそのまま圧縮データを用いることは困難である。
【0011】
そこで、本発明は、古い音声情報の一部を新しい音声情報で更新する処理を繰り返すことにより最新の音声情報をメモリに記録し続ける場合において、音声情報を記憶するメモリの消費量を削減しつつ、より新しい音声情報を記憶できる音声記録装置、音声記録方法及び音声記録プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による音声記録装置は、入力された音声を予め定められたバイト数ごとの符号化データに変換する音声変換手段と、バイト数ごとの符号化データをメモリに登録するデータ登録手段とを備え、データ登録手段が、メモリに登録された符号化データ量が予め定められた閾値よりも多くなったときに、バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いてメモリに登録された最も古い符号化データを更新することを特徴とする。
【0013】
本発明による音声記録方法は、入力された音声を予め定められたバイト数ごとの符号化データに変換し、バイト数ごとの符号化データをメモリに登録し、符号化データをメモリへ登録する際、そのメモリに登録された符号化データ量が予め定められた閾値よりも多くなったときに、バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いてメモリに登録された最も古い符号化データを更新することを特徴とする。
【0014】
本発明による音声記録プログラムは、コンピュータに、入力された音声を予め定められたバイト数ごとの符号化データに変換する音声変換処理、および、バイト数ごとの符号化データをメモリに登録するデータ登録処理を実行させ、データ登録処理で、メモリに登録された符号化データ量が予め定められた閾値よりも多くなったときに、バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いてメモリに登録された最も古い符号化データを更新させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、古い音声情報の一部を新しい音声情報で更新する処理を繰り返すことにより最新の音声情報をメモリに記録し続ける場合において、音声情報を記憶するメモリの消費量を削減しつつ、より新しい音声情報を記憶できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態における音声記録装置の例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態における音声記録装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図3】コールセンタとの通信を行う処理の例を示すフローチャートである。
【図4】録音データを更新する処理の例を示す説明図である。
【図5】コールセンタとの通信を行う処理の他の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態における音声記録装置の例を示すブロック図である。
【図7】コールセンタとの通信及び音声情報のEメール送信処理の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明による音声記録装置の最小構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0018】
実施形態1.
図1は、本発明の第1の実施形態における音声記録装置の例を示すブロック図である。本実施形態における音声記録装置は、制御部301と、記憶部302と、モデム部303と、操作部304と、発呼部305とを備えている。
【0019】
モデム部303は、マイク(図示せず)から入力された声などの音声に対するエンコード処理及び圧縮処理を行う。また、モデム部303は、エンコード及び圧縮された音声符号データの再生を行う。
【0020】
すなわち、モデム部303は、音声が入力されると予め定められたバイト数ごとに(すなわち、バイト数単位で)変調データを作成する。具体的には、モデム部303は、録音開始の指示を受けると、自動的にアナログ音声に対してアナログデジタル変換(以下、A−D(analog−to−digital)変換と記す。)を行い、変換したデータの符号化を行う。そして、モデム部303は、予め定められたバイト数ごとに符号化データの生成を終了(ターミネイト)し、そのバイト数ごとに符号化データを出力する。なお、以下の説明では、予め定められたバイト数のデータをブロックと記す。
【0021】
例えば、モデム部303は、人間の聴覚の特性に基づいたサンプリング周波数を選択してデータを符号化してもよい。ただし、符号化の方法は上記方法に限定されない。音声データのサイズを減少させる方法であれば、他の方法を用いて符号化してもよい。
【0022】
なお、モデム部303に対する録音開始の指示は、ユーザによる緊急指示を受ける前に予め与えておけばよい。また、モデム部303として、例えば、ある決まったバイト数の符号を出力する固定長符号化モードを持つモデムを使用してもよい。なお、エンコード及び圧縮された音声符号データが示す音声の再生処理を行う方法は広く知られているため、ここでは説明を省略する。
【0023】
発呼部305は、通知先への発呼処理を行う。発呼部305は、例えば、緊急ボタンが押されたときに、コールセンタへの接続(ダイヤル処理と言うこともある。)を行ってもよい。
【0024】
制御部301は、装置全体を制御する。制御部301は、モデム部303が生成した符号化データをブロック単位で記憶部302に記憶させる。すなわち、制御部301は、符号化データを記憶部302に登録するということが出来る。このように、音声情報を符号化データとして記憶部302に記憶させるため、メモリの消費量を削減することができる。
【0025】
また、制御部301は、記憶部302に記憶された符号化データ量が予め定められた閾値(以下、メモリ量判定閾値と記す。)よりも多くなったときに、ブロック単位で最も古い符号化データを記憶部302から削除する。そして、制御部301は、モデム部303が出力した最も新しい符号化データを登録する。すなわち、制御部301は、記憶部302に記憶された符号化データ量がメモリ量判定閾値よりも多くなったときに、最も古い符号化データをブロック単位で最新の符号化データに更新するということができる。
【0026】
さらに、制御部301は、モデム部303に音声の再生を開始させるよう指示を行う。制御部301は、音声情報の通知先であるコールセンタが応答したと判定したときに、音声の再生指示をモデム部303に行ってもよい。他にも、制御部301は、通知先からの再生指示を受信したときに、音声の再生指示をモデム部303に行ってもよい。この場合、制御部301は、例えば、コールセンタからDTMF(Dual−Tone Multi−Frequency)信号などの起動要求信号を検出したときに、録音された音声の再生を行ってもよい。制御部301は、音声の再生が完了したと判定したときに、通知先とユーザとの間の通話処理を開始させる。
【0027】
記憶部302は、録音した音声データを記憶する。具体的には、記憶部302は、モデム部303が出力した符号化データを記憶する。記憶部302には、モデム部303が出力した符号化データが制御部301によって記憶される。記憶部302は、例えば、磁気ディスク等により実現される。
【0028】
操作部304は、ユーザによる緊急通報指示や、各処理の中断指示を検知する。操作部304は、例えば、緊急通報指示を検知する緊急ボタン(図示せず)を備えていてもよい。この場合、操作部304は、ユーザによって緊急ボタンが押下されたときに、ユーザの緊急通報指示を検知してもよい。また、操作部304は、各処理の中断指示検知する中断ボタンや中断キー(図示せず)などを備えていてもよい。この場合、操作部304は、ユーザによって中断ボタンが押下されたり、中断キーを介してキー入力がされたりしたときに、ユーザによる中断指示を検知してもよい。
【0029】
制御部301と、モデム部303と、発呼部305とは、プログラム(音声記録プログラム)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、プログラムは、音声記録装置の記憶部302に記憶され、CPUは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、制御部301、モデム部303及び発呼部305として動作してもよい。また、制御部301と、モデム部303と、発呼部305とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。
【0030】
次に、動作について説明する。図2は、本実施形態における音声記録装置の動作の例を示すフローチャートである。音声が入力される(ステップS1)と、モデム部303は、入力された音声をデジタルデータに変換し、変換された音声データを予め定められたバイト数(ブロック)ごとの符号化データに変換する(ステップS2)。制御部301は、ブロック単位の符号化データを記憶部302に登録する(ステップS3)。制御部301は、記憶部302に登録された符号化データ量がメモリ量判定閾値よりも多いか否かを判定する(ステップS4)。符号化データ量がメモリ量判定閾値よりも多くなった場合(ステップS4におけるY)、制御部301は、最も古い符号化データをブロック単位で最新の符号化データに更新する(ステップS5)。一方、符号化データ量がメモリ量判定閾値以下の場合(ステップS4におけるN)、制御部301は、処理を終了する。なお、制御部301は、ステップS1以降の処理を繰り返してもよい。
【0031】
次に、本実施形態における音声記録装置を用いてコールセンタと通信を行う処理について説明する。なお、以下の説明では、モデム部303が音声を変換した符号化データを、音声録音データもしくは音声録音データと記す。また、緊急通報時には、ユーザが緊急ボタンを押下するものとし、緊急ボタンが押下されるまでの状態を待機状態と記す。図3は、コールセンタとの通信を行う処理の例を示すフローチャートである。まず、音声記録装置を予め音声を録音できる状態にするため、制御部301は、例えば、ユーザの指示に応じて、モデム部303に対する音声録音開始の指示を行う(ステップS101)。
【0032】
記憶部302には、一定の録音時間の音声録音データ(すなわち、メモリ量判定閾値以下の符号化データ)を記憶するものとする。そこで、制御部301は、記憶部302に記憶された音声録音データの録音合計時間が一定時間を超えたか否かを判断する(ステップS102)。録音合計時間が一定時間を超えている場合(ステップS102におけるY)、制御部301は、一番古い音声録音データのブロックを消去する(ステップS103)。具体的には、制御部301は、超過分の音声録音データを削除する。
【0033】
ここで、記憶部302に記憶された音声データを更新する処理について図4を用いて説明する。図4は、録音データを更新する処理の例を示す説明図である。図4に例示する録音データ更新前状態401は、現在の録音データが一定時間(すなわち、予め定められたバイト数)以下の場合に、「現在の録音状態」で示す記憶内容とは別に、現在の録音データを「録音データ一時ファイル」に保存していることを示す。
【0034】
現在の録音データが一定時間以下の場合、制御部301は、現在の録音データを録音データ一時ファイルに記憶させる。そして、一定時間分の録音が完了すると、制御部301は、「現在の録音状態」で示す記憶内容を、録音が完了した一定時間分の録音データを用いて更新する。
【0035】
図4に例示する録音データ更新後状態402は、「録音データ一時ファイル」に保存していた録音データが、「録音データN+1」として、新たに追加されたことを示す。なお、録音データ1から録音データN+1の順にデータが新しくなるものとする。制御部301は、「最新の録音状態」で示す記憶内容の録音時間が、メモリ量判定閾値を超えている場合、古い録音データ(ここでは、録音データ1)を削除する。このようにして、制御部301は、最も古い符号化データを最新の符号化データにバイト数単位で更新する。なお、待機状態では、制御部301は、録音データの録音及び超過分の録音データの削除を逐次繰り返す。
【0036】
録音合計時間が一定時間以下の場合(ステップS102におけるN)、または、制御部301が一番古い音声録音データのブロックを消去した(ステップS103)後、制御部301は、録音データの録音を行うと同時に、ユーザが緊急ボタンを押下したか否かを判定する(ステップS104)。緊急ボタンが押されていない場合(ステップS104におけるN)、制御部301は、ステップS102以降の処理を繰り返す。
【0037】
一方、緊急ボタンが押された場合(ステップS104におけるY)、発呼部305は、回線接続を行い(ステップS105)、コールセンタに対してダイヤル発信を行う(ステップS106)。その後、発呼部305は、コールセンタが応答したか否かを判定する(ステップS107)。
【0038】
コールセンタが応答した場合(ステップS107におけるY)、制御部301は、音声の録音を停止し(ステップS113)、モデム部303に音声の再生を開始させる(ステップS114)。その後、制御部301は、音声の再生が終了したか否かを判定する(ステップS115)。音声の再生が終了した場合(ステップS115におけるY)、制御部301は、コールセンタとユーザとの間の通話処理を開始させる(ステップS116)。そして、制御部301は、コールセンタとユーザとの間の通話が終了したか否かを判定し(ステップS118)、通話が終了していないと判定した場合(ステップS118におけるN)には、ステップS118以降の処理を繰り返す。一方、通話が終了したと判定された場合(ステップS118におけるY)、発呼部305は、回線を切断し(ステップS119)、ステップS101以降の処理を繰り返す待機状態へ移行させる。
【0039】
一方、ステップS115において、音声の再生が終了していない場合(ステップS115におけるN)、制御部301は、ユーザによる音声再生の中断指示が行われたか否かを判定する(ステップS117)。音声再生の中断指示が行われていない場合(ステップS117におけるN)、制御部301は、ステップS115以降の処理を繰り返す。一方、音声再生の中断指示が行われた場合(ステップS117におけるY)、発呼部305は、回線を切断し(ステップS119)、ステップS101以降の処理を繰り返す待機状態へ移行させる。
【0040】
また、ステップS107において、コールセンタが応答していない場合(ステップS107におけるN)、制御部301は、ユーザがコールセンタへの通報を中断するため、中断ボタンを押したか否かを判定する(ステップS108)。ユーザが中断ボタンを押した場合(ステップS108におけるY)、発呼部305は、回線を切断し(ステップS119)、ステップS101以降の処理を繰り返す待機状態へ移行させる。
【0041】
一方、ユーザが中断ボタンを押していない場合(ステップS108におけるY)、制御部301は、コールセンタが応答しない時間が一定時間継続したか否かを判定する(ステップS109)。応答しない時間が一定時間継続していない場合(ステップS109におけるN)、制御部301は、ステップS107以降の処理を繰り返す。一方、応答しない時間が一定時間継続した場合(ステップS109におけるY)、制御部301は、センタ無応答によるリダイヤル処理を規定回数分実施しても接続できないか否かを判定する。すなわち、制御部301は、センタ無応答によるリトライ処理を規定回数分実施したか否かを判定する(ステップS110)。リトライ処理の回数が規定回数を超えている場合(ステップS110におけるY)、制御部301は、コールセンタへのダイヤル処理を終了し、ステップS101以降の処理を繰り返す。一方、リトライ処理の回数が規定回数以下の場合(ステップS110におけるN)、制御部301は、センタのタイムアウトによる無応答と判断し、リトライ処理の回数をカウントアップする(ステップS111)。そして、発呼部305は、回線を一旦切断し(ステップS112)、5秒待機(ウェイト)したあと、コールセンタへダイヤル処理を行うステップS106以降の処理を繰り返す。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、モデム部303が、入力された音声をブロックごとの符号化データに変換し、制御部301が、そのブロックごとの符号化データを記憶部302に登録する。また、制御部301は、符号化データを記憶部302へ登録する際、記憶部302に登録された符号化データ量がメモリ量判定閾値よりも多くなったときに、ブロックごとに符号化された最新のデータを用いて最も古い符号化データを更新する。そのため、古い音声情報の一部を新しい音声情報で更新する処理を繰り返すことにより最新の音声情報をメモリに記録し続ける場合において、音声情報を記憶するメモリの消費量を削減しつつ、より新しい音声情報を記憶できる。
【0043】
すなわち、本実施形態では、音声記録装置が待機状態の場合、常に装置周囲の音声を録音しておく。例えば、記憶部302には、数十秒程度の音声データを常に保持しておき、制御部301は、それを超えるデータを古いものから順に消去していく。そして、ユーザが緊急通報ボタンを押し、センタへの接続が完了した段階で、モデム部303は、録音された音声を再生する。録音された音声を再生することで、通報を受けたコールセンタは、緊急通報を受ける直前の周囲の状況を把握することができるため、より迅速かつ正確な対応を行うことが可能になる。
【0044】
次に、本実施形態における音声記録装置の変形例について説明する。上記実施形態では、コールセンタ応答後、制御部301がすぐに音声再生の開始指示をモデム部303に行う場合について説明した。本変形例では、コールセンタ応答後、制御部301がモデム部303に対してすぐに再生指示を行わず、コールセンタからの再生要求(再生起動信号)に従って音声再生指示を行う場合について説明する。
【0045】
図5は、コールセンタとの通信を行う処理の他の例を示すフローチャートである。音声録音を開始してから、コールセンタに接続するまでのステップS601〜S614における処理は、図3に例示するステップS101〜ステップS113及びステップS120の処理と同様である。
【0046】
ステップS614において、制御部301が音声の録音を停止したあと、制御部301は、コールセンタとユーザとの間の通話処理を開始させる(ステップS615)。そして、制御部301は、コールセンタとユーザとの間の通話が終了したか否かを判定する(ステップS616)。通話が終了したと判定された場合(ステップS616におけるY)、発呼部305は、回線を切断し(ステップS622)、ステップS601以降の処理を繰り返す待機状態へ移行させる。
【0047】
一方、通話が終了したと判定されなかった場合(ステップS616におけるN)、制御部301は、コールセンタから再生起動信号を受信したか否かを判定する(ステップS617)。再生起動信号を受信したと判定した場合(ステップS617におけるY)、制御部301は、モデム部303に音声の再生を開始させる(ステップS618)。その後、制御部301は、音声の再生が終了したか否かを判定する(ステップS620)。音声の再生が終了した場合(ステップS620におけるY)、制御部301は、ステップS616以降の処理を繰り返す。
【0048】
一方、音声の再生が終了していない場合(ステップS620におけるN)、制御部301は、ユーザによる音声再生の中断指示が行われたか否かを判定する(ステップS621)。音声再生の中断指示が行われていない場合(ステップS621におけるN)、制御部301は、ステップS620以降の処理を繰り返す。一方、音声再生の中断指示が行われた場合(ステップS621におけるY)、発呼部305は、回線を切断し(ステップS622)、ステップS601以降の処理を繰り返す待機状態へ移行させる。
【0049】
一方、ステップS617において、再生起動信号を受信したと判定されなかった場合(ステップS617におけるN)、制御部301は、通話の中断指示が行われたか否かを判定する(ステップS619)。中断指示が行われた場合(ステップS619におけるY)、発呼部305は、回線を切断し(ステップS622)、ステップS601以降の処理を繰り返す待機状態へ移行させる。一方、中断指示が行われていない場合(ステップS619におけるN)、制御部301は、ステップS616以降の処理を繰り返す。
【0050】
以上のように、本変形例では、制御部301がコールセンタからの再生要求(再生起動信号と言うこともある。)を受信したときに、モデム部303が符号化データに変換された音声を再生する。そのため、コールセンタと通話状態になった後、何らかの原因でユーザとの通話ができない場合に、事前に録音した音声を聞くことが可能になる。
【0051】
なお、上記説明では、制御部301がコールセンタからの再生要求(再生起動信号)に従って音声再生指示を行う場合について説明した。他にも、制御部301は、コールセンタからの再生停止要求(再生停止信号)に従って音声再生の停止指示をモデム部303に行ってもよい。
【0052】
実施形態2.
図6は、本発明の第2の実施形態における音声記録装置の例を示すブロック図である。
本実施形態における音声記録装置は、制御部501と、記憶部502と、モデム部503と、操作部504と、発呼部505と、LAN制御部506とを備えている。第2の実施形態における制御部501、記憶部502、モデム部503、操作部504及び発呼部505は、それぞれ、第1の実施形態における制御部301、記憶部302、モデム部303、操作部304及び発呼部305と同様である。すなわち、第2の実施形態における音声記録装置は、LAN制御部506を備えている点で、第1の実施形態と異なる。
【0053】
LAN制御部506は、モデム部503が作成した符号化データを添付したファイル(以下、音声添付ファイルと記す。)を作成し、そのファイルを電子メール(以下、Eメールと記す。)を用いて送信する。すなわち、LAN制御部506は、モデム部503が変換した符号化データをEメールにて通知先に送信する。LAN制御部506は、例えば、LANに接続されたメールサーバ(図示せず)に、録音した音声データを添付したEメールを送信してもよい。
【0054】
なお、Eメールの送信先は、予め定めておけばよい。Eメールの送信先を複数定めておくことにより、一度に複数個所へ連絡することが可能になる。また、LAN制御部506が送信する符号化データは、最も新しい音声情報であり、メモリ消費量を抑えたデータである。そのため、通知先にはより新しい音声情報を送信できると共に、メール送信時の負荷を軽減できる。
【0055】
LAN制御部506が、音声添付ファイルを作成する方法について説明する。通常、一般的な音声モデムで生成される符号化データを、別のパーソナルコンピュータなどの機器で再生することはできない。そこで、LAN制御部506は、符号化データを復号化して生データへ変換する。具体的には、LAN制御部506は、符号化データから予め定められたバイト数(ブロック)分のデータを取り出して生データへ変換する復号化処理を最終ブロックまで繰り返し行う。そして、LAN制御部506は、その生データをMP3(MPEG Audio Layer-3)などのフォーマットへ変換する。
【0056】
その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
制御部501と、モデム部503と、発呼部505と、LAN制御部506は、プログラム(音声記録プログラム)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、プログラムは、音声記録装置の記憶部502に記憶され、CPUは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、制御部501、モデム部503、発呼部505及びLAN制御部506として動作してもよい。また、制御部501と、モデム部503と、発呼部505と、LAN制御部506とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。
【0058】
次に、動作について説明する。図7は、コールセンタとの通信及び音声情報のEメール送信処理の例を示すフローチャートである。図7に例示するフローチャートは、ステップS205〜S207までのEメール送信処理が追加されている点で、図3に例示するフローチャートと異なる。
【0059】
すなわち、音声記録装置に対して予め音声録音の開始指示が行われてから、緊急ボタンが押下されたか否かを制御部501が判定するまでのステップS201〜S204における処理は、図3に例示するステップS101〜S104までの処理と同様である。
【0060】
緊急ボタンが押された場合(ステップS204におけるY)、制御部501は、音声の録音を停止し(ステップS205)、LAN制御部506は、音声添付ファイルを作成する(ステップS206)。そして、LAN制御部506は、作成した音声添付ファイルをEメール送信する(ステップS207)。例えば、LAN制御部506は、コールセンタや、予め設定された家族への携帯メールアドレスに対してEメール送信を行ってもよい。
【0061】
以降、コールセンタとの通信を行うステップS208〜S222における処理については、図3に例示するステップS105〜S120までの処理と同様である。なお、図7におけるステップS205〜S207で示すEメール送信処理で、既に音声録音の停止(ステップS205)が行われている。そのため、ステップS211とステップS217との間に、音声録音の停止処理は不要である。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、LAN制御部506が、モデム部503が作成した符号化データを添付した音声添付ファイルを作成し、そのファイルを通知先へEメール送信する。よって、実施形態1の効果に加え、一度に複数個所への連絡が可能になる。
【0063】
すなわち、第1の実施形態では、通知先を1箇所特定すれば、その通知先にダイヤル接続することで録音された音声の通知が可能になる。さらに、本実施形態によれば、Eメールを用いて音声を通知するため、一度に複数個所へ連絡することが可能になる。
【0064】
次に、本発明による音声記録装置の最小構成の例を説明する。図8は、本発明による音声記録装置の最小構成の例を示すブロック図である。本発明による音声記録装置は、入力された音声を予め定められたバイト数(例えば、ブロック)ごとの符号化データに変換する音声変換手段81(例えば、モデム部303)と、バイト数ごとの符号化データをメモリ82(例えば、記憶部302)に登録するデータ登録手段83(例えば、制御部301)とを備えている。
【0065】
データ登録手段83は、メモリ82に登録された符号化データ量が予め定められた閾値(例えば、メモリ量判定閾値)よりも多くなったときに、バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いてメモリ82に登録された最も古い符号化データを更新する。
【0066】
そのような構成により、古い音声情報の一部を新しい音声情報で更新する処理を繰り返すことにより最新の音声情報をメモリに記録し続ける場合において、音声情報を記憶するメモリの消費量を削減しつつ、より新しい音声情報を記憶できる。
【0067】
なお、少なくとも以下に示すような音声記録装置も、上記に示すいずれかの実施形態に開示されている。
【0068】
(1)入力された音声を予め定められたバイト数(例えば、ブロック)ごとの符号化データに変換する音声変換手段(例えば、モデム部303)と、バイト数ごとの符号化データをメモリ(例えば、記憶部302)に登録するデータ登録手段(例えば、制御部301)とを備え、データ登録手段が、メモリに登録された符号化データ量が予め定められた閾値(例えば、メモリ量判定閾値)よりも多くなったときに、バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いてメモリに登録された最も古い符号化データを更新する音声記録装置。
【0069】
(2)音声変換手段が変換した符号化データを電子メールで通知先に送信する符号化データ送信手段(例えば、LAN制御部506)を備えた音声記録装置。
【0070】
(3)音声の再生指示を示す信号(例えば、DTMF信号などの起動要求信号)を受信したときに、メモリに記憶された符号化データが示す音声を再生する音声再生手段(例えば、モデム部303)を備えた音声記録装置。
【0071】
(4)音声変換手段が、入力された音声を予め定められたバイト数ごとのデータにデジタル変換(例えば、A/D変換)し、デジタル変換後のデータを符号化する音声記録装置。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、記憶容量の小さいメモリに効率よく音声情報を記憶する音声記録装置に好適に適用される。例えば、本発明における音声記録装置を、お年寄りや要看護の方の家に設置される緊急通報端末などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
301,501 制御部
302,502 記憶部
303,503 モデム部
304,504 操作部
305,505 発呼部
506 LAN制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された音声を予め定められたバイト数ごとの符号化データに変換する音声変換手段と、
前記バイト数ごとの符号化データをメモリに登録するデータ登録手段とを備え、
前記データ登録手段は、前記メモリに登録された符号化データ量が予め定められた閾値よりも多くなったときに、前記バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いて前記メモリに登録された最も古い符号化データを更新する
ことを特徴とする音声記録装置。
【請求項2】
音声変換手段が変換した符号化データを電子メールで通知先に送信する符号化データ送信手段を備えた
請求項1記載の音声記録装置。
【請求項3】
音声の再生指示を示す信号を受信したときに、メモリに記憶された符号化データが示す音声を再生する音声再生手段を備えた
請求項1または請求項2記載の音声記録装置。
【請求項4】
音声変換手段は、入力された音声を予め定められたバイト数ごとのデータにデジタル変換し、デジタル変換後のデータを符号化する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の音声記録装置。
【請求項5】
入力された音声を予め定められたバイト数ごとの符号化データに変換し、
前記バイト数ごとの符号化データをメモリに登録し、
前記符号化データを前記メモリへ登録する際、当該メモリに登録された符号化データ量が予め定められた閾値よりも多くなったときに、前記バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いて前記メモリに登録された最も古い符号化データを更新する
ことを特徴とする音声記録方法。
【請求項6】
音声変換手段が変換した符号化データを電子メールで通知先に送信する
請求項5記載の音声記録方法。
【請求項7】
音声の再生指示を示す信号を受信したときに、メモリに記憶された符号化データが示す音声を再生する
請求項5または請求項6記載の音声記録方法。
【請求項8】
コンピュータに、
入力された音声を予め定められたバイト数ごとの符号化データに変換する音声変換処理、および、
前記バイト数ごとの符号化データをメモリに登録するデータ登録処理を実行させ、
前記データ登録処理で、前記メモリに登録された符号化データ量が予め定められた閾値よりも多くなったときに、前記バイト数ごとに符号化された最新のデータを用いて前記メモリに登録された最も古い符号化データを更新させる
ための音声記録プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
音声変換処理で変換された符号化データを電子メールで通知先に送信する符号化データ送信処理を実行させる
請求項8記載の音声記録プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−166660(P2011−166660A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30027(P2010−30027)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】