説明

音方向検出

【課題】音源の方向ベクトルを求める工程を提供すること。
【解決手段】この工程は、第1の音センサによって、音源から伝播した音波の第1の音圧を検出し、第2の音センサによって、音波の第2の音圧を検出するように実施することができる。この工程は、プロセッサによって、音源の、第1の音センサおよび第2の音センサに対する方向ベクトルを求めるようにさらに実施することができ、この方向ベクトルは、第1の音圧、第2の音圧、および第1の音センサの第1の物理的位置と、第2の音センサの第2の物理的位置との間の第1の間隔に基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において別段の指示がない限り、本節に記載されている手法は、本願の特許請求の範囲に対する従来技術ではなく、本節に含めることによって従来技術となるとみなされるものではない。
【背景技術】
【0002】
音は、圧力の振動波として、固体、液体、または気体媒体中を進む。光とは異なり、音は真空中を進むことはできない。音が、特定の範囲内の周波数を有し、かつ十分に強い強度を有する場合、媒体中を進む音によって生じる振動は、人間または装置によって検出することができる。伝播中の音の強度は、進行距離が増大するにつれて低減する。音の強度を低減させ得る他の要因には、音波の拡散(dissemination)、および障害による音波の散乱(scattering)が含まれる。また、音波の音響エネルギーの一部は、音波が通過している媒体によって吸収されることがある。この現象はしばしば、吸音または音響減衰と呼ばれる。粘性、熱伝導、またはミクロ緩和吸収などの追加の要因によってもやはり、減衰が生じることがある。
【0003】
音波伝播路に沿った特定の位置における音の強度は、音センサによって検出される音圧を評価することによって測定することができる。音センサは、速度、周波数、および/または位相などの音波特性、ならびにかかる特性のいかなる変動も監視し、測定するように構成することができる。音センサは、検出された音圧の量を示す信号を生成することができる。次いで、そうした音圧信号を用いて、音の存在、および音量を求めることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示のいくつかの実施形態によれば、音源の方向ベクトルを求める方法は、第1の音センサによって、音源から伝播した音波の第1の音圧を検出すること、第2の音センサによって、前記音波の第2の音圧を検出すること、ならびにプロセッサによって、音源の、第1の音センサおよび第2の音センサに対する方向ベクトルを求めることを含み、方向ベクトルは、第1の音圧、第2の音圧、および第1の音センサの第1の物理的位置と、第2の音センサの第2の物理的位置との間の第1の間隔に基づいて求められる。
【0005】
本開示の別の実施形態によれば、音源の方向ベクトルを求める方法は、第1の音センサによって、音源から伝播した音波の第1の音圧を検出すること、第2の音センサによって、前記音波の第2の音圧を検出すること、ならびにプロセッサによって、音源の、第1の音センサおよび第2の音センサに対する方向ベクトルを求めることを含み、プロセッサは、参照テーブルを利用し、第1の音圧および第2の音圧から導出された値に基づいて、方向ベクトルを得る。
【0006】
本開示のさらなる実施形態によれば、音源の方向ベクトルを求めるように構成されたシステムは、音源から伝播した音波の第1の音圧を検出する第1の音センサと、前記音波の第2の音圧を検出する第2の音センサと、第1の音センサおよび第2の音センサに結合され、第1の音圧および第2の音圧に基づいて、音源のシステムに対する方向ベクトルを求めるプロセッサとを含む。
【0007】
前述の概要は、単なる例示にすぎず、いかなる形にも限定するものではない。図面および以下の詳細な説明を参照すれば、上述の例示的な態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、および特徴が明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】音源の方向ベクトルを求めるように構成された音方向検出装置の例示的な実施形態のブロック図である。
【図2】A〜Gは音圧および方向ベクトルを求める際に使用するのに適した数式を示す図である。
【図3】方向ベクトルを求める際に使用するのに適した複数の参照テーブルの例示的な実施形態を示す図である。
【図4】音源の三次元方向ベクトルを求める複数組の音センサを備えたシステムの例示的な実施形態のブロック図である。
【図5】音源の音圧を検出し、音源の方向ベクトルを求める工程の例示的な実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を成す添付の図面を参照する。文脈において別段の指示がない限り、図面中の同じ符号は、典型的には同じ構成要素を示す。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載されている例示的な実施形態は、限定を意図したものではない。本明細書で提示する主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態も使用することができ、他の変更を行うこともできる。本明細書に概括的に記載し、図に例示した本開示の態様は、多種多様の異なる構成に配置、置換え、組合せ、および設計することができ、これらは全て明示的に企図されたものであり、本開示の一部を成すことが容易に理解されよう。
【0010】
本開示は、とりわけ、音源の方向ベクトルを求めることに関連した方法、装置、コンピュータプログラム、およびシステムを対象とする。本開示を通して、用語「ベクトル」は、空間中の基準点に対する対象物の位置を表すことができる位置、配置、または動径ベクトルを広く指すことがある。用語「方向ベクトル」は、ベクトルの長さまたは他の性質に関わらず、ベクトルの方向に関する性質を広く指すことがある。二次元空間では、基準点から対象物までの方向を特定するには角度で十分となり得るので、「二次元方向ベクトル」は、二次元座標系の角度座標によって記載することができ、長さ、幅、または他の座標は使用しなくともよい。さらに、三次元座標空間では、「三次元方向ベクトル」は、球座標系の2つの角度座標を用いて、基準点から対象物までの方向を特定することができる。例えば、三次元座標空間では、「仰角」は、第1の固定平面における基準点から対象物までの第1の方向を特定することができ、「方位角(azimuth angle)」は、第2の固定平面における基準点からの対象物までの第2の方向を特定することができ、第2の固定平面は、第1の固定平面に直交する。
【0011】
用語「音圧」とは、音波によって生じる圧力の測定値を広く指すことがある。音センサを音波の伝播路に配置して、音波を検出し、圧力信号を出力することができる。音センサによって生成された圧力信号は、処理し、測定値(すなわち音圧)として定量化することができ、次いで、そうした測定値を比較および/または評価して、音波を生じる音源の方向ベクトルを求めることができる。
【0012】
本開示の少なくともいくつかの実施形態では、音方向検出装置は、2つの音センサを異なる物理的位置で用いて、音源から伝播した音波の音圧を検出することができる。次いで、この音方向検出装置は、検出された音圧を用いて、音源の、音方向検出装置に対する方向ベクトルを求めることができる。音波が2つの音センサをある角度で通過する場合、音源からそれらの音センサまでの距離は同じでない可能性が高いため、これらの2つの音センサによって検出される音圧は、音響減衰のため異なることがある。検出された2つの音圧間の差、および2つの音センサ間の間隔を用いて、音源の、音センサおよび/または音検出装置に対する方向ベクトルを求めることができる。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態は、複数の微小電子機械システム(MEMS)センサを利用して、音源に伴う音圧を検出し、シングルチッププロセッサまたはシングルチップマイクロコンピュータなど、例によって示すものであり限定するものではないプロセッサを用いて、音源の二次元方向ベクトルを求めることができる。さらに、プロセッサは、2つの音圧から導出される値を計算し、その導出された値を用いて、予め生成しておいた参照テーブルから方向ベクトル値を選択することができ、複雑なデータ処理を実施しなくともよい。本開示の他の実施形態では、音方向検出装置は第3の音センサを使用し、該第3の音センサは最初の2つの音センサの向きとは反対の向きに配置することができる。第3の音センサによって検出された音圧を用いて、音源が第1の2つの音センサの前方または後方にあるかを判断して、方向ベクトルをさらに精確にすることができる。
【0014】
図1は、音源の方向ベクトルを求めるように構成された音方向検出装置130の例示的な実施形態のブロック図を示す。音方向検出装置130はとりわけ、複数の音センサ121、122、および123を含むことができる。音方向検出装置130はまた、プロセッサ131、メモリ132、およびモニタ134を含むことができ、これらの1つまたは複数は、音方向検出装置130の内部にあっても、または外部にあってもよい。音センサ121、122、および123は、音源110から伝播した音波の音圧を独立して検出し、独立して検出されたそれらの音圧をプロセッサ131に伝送することができる。プロセッサ131は、受け取った音圧を用いて、音源110の、音センサ121、122、および123に対する方向ベクトルを求めることができる。メモリ132は、方向ベクトルを効率良く求める際に使用するのに適した参照テーブル133を含むことができ、モニタ134を用いて、方向ベクトルを表示し、音源110の、音方向検出装置130および/または音センサ121、122、および123に対する方向を示すことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、音源110は、自然音の発音源でも、人工音の発音源でもよい。自然音の例には、それだけに限られるものではないが、人間による音、動物による音、環境音などが含まれる。この場合、自然音の発音源は、人間、動物、環境などでよい。人工音の例は録音された音であり、人工音の発音源はスピーカでよい。音源110から生じ、音方向検出装置130の方に伝播する音波は、特定の周波数、およびある音量を有し得る。さらに、音源110は、識別可能な特徴(縦波または横波)および物理的特性を有する音を発生することができる。音波の特徴および特性はまた、その音波が進む伝送媒体にも密接に関連し得る。さらに、発生音は、人間が検出できる周波数よりも高い周波数を有する超音波でも、または人間が検出できる周波数よりも低い周波数を有する超低周波不可聴音でもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、音センサ121、122、および123は、検出した音波の物理的特徴を測定し、その物理的特徴をアナログまたはデジタル信号に変換することができる。音センサ121、122、および123は、音センサ中を進む音波の振動および/または圧力を検出することができる。いくつかの実施形態では、音センサ121、122、および123は、MEMS技術を利用したMSMAS42z−MSMSensing音センサでよい。MEMS技術は、微細加工工程によって、一般的なシリコン基板上に、機械要素をセンサ、アクチュエータ、および電子部品と共に集積することができる。このMEMS技術によって、音センサをより小型に、よりエネルギー効率良く、かつより可搬式にすることができる。あるいは、音波を感知し、音圧を検出することができる多種多様な種類の音センサのいかなるものもまた、音方向検出装置130によって使用することができる。
【0017】
図1では、音方向検出装置130の音センサ121、122および/または123は、音源110が発生した音波を検出することができる。いくつかの実施形態では、音センサ121および122は、音方向検出装置130の片側の、それぞれの物理的位置に取り付けられる。音センサ123は、音センサ121および122とは異なる物理的位置に配置することができる。例えば、音センサ123は、音方向検出装置130の反対側に取り付けることができる。したがって、音センサ121および122は、第1の向きに面するように配置することができる。音センサ123は、第2の向きに面するように配置することができ、この第2の向きは、音センサ121および122が面する第1の向きとは異なる。
【0018】
いくつかの実施形態では、音方向検出装置130は、音源110から任意の角度で伝播した音波を検出することができるので、音センサ121と音源110との距離111は、音センサ122と音源110との距離112とは異なることがある。音の強度は、伝播距離が増大するにつれて低減するので、音センサ121によって検出される音圧は、音センサ122によって検出される圧力とは異なる傾向がある。一方、2つの音センサ121および122によって検出される音圧が実質的に同一(同じ)である場合、距離111と距離112とは、実質的に同じとなり得る。かかる状況では、音源の方向ベクトルは、90度に近くなり得る。例えば、音波が何らかの表面から反射されない場合、異なる複数の音センサから検出された音圧を用いて、音源110の、音方向検出装置130に対する方向を示すことができる。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態によれば、音方向検出装置130の音センサ121および122は、音源110とは異なる代替音源140から伝播した音波を検出することができる。音センサ121は、音源110までと音源140までとで実質的に同じ距離を有することができ、音センサ122は、音源110までと音源140までとで実質的に同じ距離を有することができる。言い換えれば、音センサ121は、音源110および音源140から実質的に同じ距離で配置または位置されることができ、音センサ122は、音源110からおよび音源140から実質的に同じ距離で配置または位置されることができる。この場合、音方向検出装置130は、音センサ121および122によって検出された音圧を利用して音波の方向を求める場合、音波の方向が音源110からのものであるのか、音源140からのものであるのか判断し難いことがある。したがって、二次元空間では、2つの音センサを用いて、方向ベクトルを約180度の精度で求めることができる。すなわち、音方向検出装置130は、音源が、音センサ121および122の左側、右側、またはそれらセンサ間の中央領域にあるのかを、180度の範囲の角度数で正確に示すことができる。しかし、音方向検出装置130は、音源110が、音センサ121および122の前方にあるのか後方にあるのかを判断することはできないことがある。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態によれば、第3の音センサ123を、音方向検出装置130の、音センサ121および122が位置する側とは異なる側の固定位置に取り付けることができる。次いで、音源が音センサ121および122の前方にあるのか後方にあるのかを判断するために、第3の音センサ123によって検出された音圧を、音センサ121および122によって検出された圧力と比較するために用いることができる。例えば、図1では、音センサ123は、音センサ121の位置と122の位置との間のある位置に配置することができる。それと同時に、音センサ123は、音方向検出装置130の、音センサ121および122が配置されている側とは反対側に配置することができる。動作中、音源110と音センサ123との距離は、距離111および距離112とは異なる。したがって、音センサ123によって検出された音圧が音センサ121および/または122によって検出された圧力よりも弱い場合、その音波は、音センサ121および122の前方にあり音センサ121および122までの距離が音センサ123までの距離よりも短い音源110からのものであると推論することができる。同様に、音センサ123によって検出された音圧が音センサ121および/または122によって検出された圧力よりも強い場合、音方向検出装置130は、音源から音センサ123までの距離が音センサ121および122までの距離よりも短いと判断することができる。この場合、音は、音センサ121および122の後方にある音源140から生じているはずである。したがって、3つの音響センサ121、122、および123を使用することによって、音方向検出装置130は、二次元平面を、音方向検出装置130から見て4つのほぼ同じ大きさの四分円(前方左、前方右、後方左、後方右)に分割することができ、二次元方向ベクトルを360度の範囲で決定することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、図1の角度θによって表される二次元方向ベクトルを用いて、音源110の、音方向検出装置130に対する方向を表すことができる。さらに、角度θは、音センサ121、122および/または123から得られる音圧を処理することによって求めることができ、音源110と音方向検出装置130との距離は使用せずともよい。図1に示すように、いくつかの実施形態では、2つの音センサ121および122をつなぐ線と、音源110から2つの音センサ121と122との間の仮想点に至る線とが成す角度θが、音源110の、音方向検出装置130に対する方向ベクトルを表すとみなされる。あるいは、角度θはまた、音方向検出装置130の仮想中心点から音源110に至る線と、2つの音センサ121と122とをつなぐ線とによって成すこともできる。
【0022】
いくつかの実施形態では、音センサ121および122によって検出された音圧から角度θを導出することによって、音源110からそれぞれ音センサ121および122まで測られる距離111および112は無関係になる。上記を実現するために、音方向検出装置130は、プロセッサ131を使用して、音センサ121、122、および123によって絶えず検出される音圧を評価し、検出された音圧から、何らかのトリガ基準に基づいてサンプルを選択し、選択した音圧サンプルに基づいて方向ベクトルを求めることができる。さらに、プロセッサ131は、プロセッサ131によって管理する、またはメモリ132内に記憶しておくことができる参照テーブル133を利用して、方向ベクトルを迅速に求めることができる。その後、方向ベクトルをモニタ134上に表示して、音源110の、音方向検出装置130に対する方向を視覚的に示すことができる。音圧処理、および方向ベクトルを求める詳細について、以下でさらに説明する。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態によれば、プロセッサ131、メモリ132、およびモニタ134は、音センサ121、122、および123と共に音方向検出装置130に組み込むことができる。音方向検出装置130は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯メディアプレーヤ装置、無線ウェブ閲覧装置、携帯ヘッドホン装置、特定用途向け装置、または上記機能のいずれかを含むハイブリッド装置などの可搬式装置、あるいは可搬式装置の一構成要素として実施することができる。音方向検出装置130はまた、ラップトップコンピュータ構成、および非ラップトップコンピュータ構成のどちらも含めたパーソナルコンピュータを用いて実施することができる。一代替実施形態では、プロセッサ131、メモリ132、および/またはモニタ134は、音方向検出装置130の外部にあってもよい。このような場合、これらの外部構成要素を、音方向検出装置130に結合された別個のコンピュータシステムによって設けて、上述と同様の機能を実施することができる。さらに別の代替実施形態では、音センサ121、122、および123の1つ、または全てを、音方向検出装置130の外部に設けて、音圧を検出してもよい。
【0024】
図2のA〜Gは、本開示の少なくともいくつかの実施形態による、音圧および方向ベクトルを求める際に使用するのに適した数式を示す。図2のA〜Gには、2つの音センサから検出された音圧から、方向ベクトルをいかにして導出することができるかを示す様々な式が列挙されている。媒体による音波の吸収がそれほど大きくない場合、特定の位置における音圧は、図2Aの式によって表すことができる。図2Aでは、pは音圧であり、測定単位はN/mである。変数c0は、特定の媒体中を伝導する音速を表す。特定の媒体が固定されている場合、変数c0は、制御環境下で定数となる。変数ωは、音の角周波数を表す。音の減衰の速さを決定する減衰係数を表すαもやはり、制御環境下では定数となり得る。
【0025】
図2Aに示す式では、音波が進む距離は、変数xによって表される。したがって、図2Aの式は、音の振幅が、距離xの増大に伴って指数関数的に低減する現象を反映している。かかる現象は、粘性の結果生じ得る。したがって、吸音媒体によって音波伝播に多大な影響が及ぼされない限り、図2Aの音圧によって表される音の音響特性は、図2Aの式によって適切に表すことができる。さらに、定数αを調整して、異なる吸音シナリオ、または異なる種類の媒体を反映させることもできる。
【0026】
図1に示す一シナリオでは、2つの音響センサ121および122が、2つの異なる位置に配置されている。音源110から発生した音波が、音センサ121および122に伝播すると、音センサ121および122は、2つの音圧測定値p1およびp2を生成する。したがって、方向ベクトルの角度と、p1およびp2との関係は、図2Aの式に基づいて導出することができる。いくつかの実施形態では、図2Bは、p1およびp2から導出される2つの値を示している。一方の値Δpは、音圧p1とp2との差を表し、p1およびp2の高い方の値から、p1およびp2の低い方の値を減算することによって計算することができる。他方の値 ̄p〔以下、 ̄付きのpをこのように記す〕は、音圧p1およびp2の平均を示し、2つの値p1およびp2の合計を2で除算することによって算出することができる。したがって、角度θと、音圧p1およびp2との関係を見出すことは、図2Cの形の式を確かめる作業になる。
【0027】
一シナリオでは、図2Aの式を、図2Bの式に当てはめることができる。例示の目的で、図2Aの式は、
A[exp(−αr)]
に単純化することができ、式中、Aおよびαは定数であり、rは音源から音センサまでの距離を表す。その結果、図2Dの式は、図2Aの式を図2Bの式に当てはめた結果となる。図2Dでは、r1は、音源110と音センサ121との距離を表し、r2は、音源110から音センサ122までの距離を表している。ほとんどの場合、音源と音センサとの距離は、2つのセンサ121と122との間隔L(図1に示す)よりも遙かに大きいので、入射音波は、平面波と近似することができ、図2Cおよび図2Dの式は、図2Eの第1の式に近似することができる。
【0028】
一シナリオでは、図2Eの第2の式に示すように、角度θの余弦は、r1とr2の差を間隔Lで除算することによって近似的に計算することができる。図2Fに基づいて上記式をさらに演繹することによって、図2Fの式では、変数r1およびr2がなくなっている。したがって、角度θは、図2Gの式に示すように、音圧p1、p2、および間隔Lに基づいて計算することができる。関数「逆余弦(arccos)」によって、0度から180度までの範囲の出力を得ることができるので、図2Gの式は、2つの音センサでは、二次元方向ベクトルを180度の範囲でしか求めることができず、音源が音センサの前方にあるのか後方にあるのかを識別することができないという先の分析とも一致する。したがって、360度の範囲を有する方向ベクトルを得るために、第3のセンサを介して検出された音圧を分析することによって、図2Gの式から得られる出力をさらに精確にすることができる。
【0029】
図3は、方向ベクトルを求める際に使用するのに適した複数の参照テーブルの例示的な実施形態を示す。参照テーブルは、インデックスの付いたデータのアレイを記憶するデータ構造である。参照テーブルを使用することによって、特定の式に従って、一組の入力値から出力値を計算する工程の代わりに、入力値から生成されるインデックスを用いて参照テーブルの検索を行うことができる。処理前に、参照テーブルに、考えられ得る全ての入力値および/または出力値を予め取り込んでおくことができる。例えば、1度の精度、かつ180度の範囲を有する参照テーブルでは、考えられ得る全ての方向ベクトル値をカバーするには180個の出力値で十分となる。参照テーブルに値を入れる際、工程または式に基づいて1つまたは1組の入力値を計算して、出力値を生成する。生成された出力値は、入力値(複数可)と対にして、参照テーブルに記憶することができる。入力値と出力値とは対にして記憶しておくことができ、参照テーブルは入力値に基づいてインデックスを付けることができる。後に、特定の入力値(複数可)を受け取ると、その入力値(複数可)に基づいてインデックスの付いたデータ対を参照テーブルから迅速に検索することができ、出力値をデータ対から直接得ることができ、いかなる複雑な計算も実施しなくともよい。
【0030】
図3では、参照テーブル310(表1)は、複数のデータ行を含むことができ、各行は入力値と、対応する出力値とを含み、データ対を形成している。いくつかの実施形態では、参照テーブル310の入力値は、式(例えばΔp/ ̄p)から導出される値でよく、対応する出力値は、入力値および図2Gの式に基づいて生成される方向ベクトル角度である。いくつかの実施形態では、参照テーブル310は、考えられ得る全ての出力値をカバーするデータ対を含むように予め取り込んでおくことができる。動作中、プロセッサはまず、2つの音圧値p1およびp2、ならびに式Δp/ ̄pに基づいて入力値を計算することができる。次いで、その計算値をインデックスとして用いて、対応するデータ対を検索することができる。参照テーブル内で対応するデータ対が突き止められると、そのデータ対から、出力値を方向ベクトルとして直接検索することができ、乗算、除算、対数計算、および逆余弦計算を含む複雑な計算を実施する必要はない。
【0031】
いくつかの実施形態では、参照テーブルは、同じ出力値を有する複数の入力変数を含むことがある。この状況は、出力値を生成するために使用する式の性質に関連することもあるし、または所定の精度率によって生じることもある。図3の参照テーブル310を例に取ると、この参照テーブルが1度の精度の出力値を記憶すると仮定すると、生成される各出力値を、最も近い整数値に四捨五入する必要が生じ得る。したがって、異なる入力値「値1」および「値2」が、共通の出力値「角度1」を有することがあり、この出力値は、参照テーブル内で2つのデータ対として関連付けられることがあり得る。また、出力値の精度は、参照テーブル内のデータ対量を増やすことによって向上させることができる。例えば、精度率を0.5度まで向上させた場合、同じ値に四捨五入されていた、異なる入力値の出力を、異なる値に丸めることができ、異なる入力値が、同じ出力値に関連付けられ得る可能性を低減させることができる。あるいは、出力値の検索中に、異なる入力値を、参照テーブル内にある入力値に四捨五入することもできる。例えば、特定の入力値が参照テーブル内で対を成す出力値を有しない場合、その入力値の置き換えとして、対を成す出力値を有する最も近い入力値を使用することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、参照テーブル320(表2)は、入力値を記憶するための列を2列、出力値用の列を1列含む。例えば、「入力値A」列は、式Δp/ ̄pから導出された値を記憶することができる。また、「入力値B」列は、第3の音センサ123から検出された音圧に基づいた判断から導出された値を記憶し、この値は、音源110が2つの音センサ121および122の前方または後方にあるのかを示す。この場合、入力値A「値1」が入力値B「前方」と対を成す場合、その出力値は、「後方」入力値Bと対を成す「値1」から導出される出力値とは異なる。したがって、2つの入力値を有することによって、参照テーブル320は、360度の範囲で方向ベクトルを与えることができる。あるいは、「入力値A」列を用いてp1を記憶し、「入力値B」列を用いてp2を記憶してもよい。この場合、Δpおよび ̄pの計算、ならびにΔpの ̄pによる除算は、参照テーブルに値を入れる際に予め実施しておくことができる。動作中には、Δpおよび ̄pの計算をなくして、データ処理の性能を向上させ、エネルギーを節約し、装置の複雑化を低減させることができる。あるいは、参照テーブルはまた、複数の出力を有する計算用に複数の出力値列を有してもよい。したがって、複雑な演算を参照テーブルと置き換えることによって、音方向検出装置130は、データ処理構成要素を減少させてシングルチップマイクロコンピュータに組み込み、付随する周辺要件を簡易化することができる。
【0033】
図4は、音源の三次元方向ベクトルを求める複数組の音センサを備えたシステムの例示的な実施形態のブロック図を示す。図4では、音方向検出装置(図4には示さず)は、互いに直交して配置された2組の音センサ420および430を含む。音センサ組420および430はそれぞれ、図1の音センサ構成に基づいて構築することができる。例えば、音センサ組420(組1)は、右向きの2つの音センサと、左向きの第3のセンサ(図4には示さず)とを有することができる。また、音センサ組430(組2)は、上向きの2つのセンサと、下向きの第3のセンサ(図4には示さず)とを有することができる。音源410は、図4の全ての音センサによって検出することができる音波を生じることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、音センサ組420および430のそれぞれを用いて、音源410のそれぞれの二次元方向ベクトルを求めることができる。したがって、音センサ組420を用いて、二次元平面421内における二次元方向ベクトルを求めることができ、また、音センサ組430を用いて、二次元平面431内における別の二次元方向ベクトルを求めることができる。音センサ組420の前方2つのセンサは、二次元平面421を成すことができる、すなわち、これら2つのセンサは、二次元平面421に配置することができる。音センサ組430の前方2つのセンサは、二次元平面431を成すことができる、すなわち、これら2つのセンサは、二次元平面431に配置することができる。いくつかの実施形態では、平面421は、平面431と直交して、三次元座標空間を成すことができる。
【0035】
三次元空間を示す図4では、平面421および431はどちらも、図4が描かれている二次元平面に対して直交する。かかる三次元座標空間では、音源410が取り得る位置は、1つの音センサ組に対して円を成すことができる。すなわち、音センサ円411上のいかなる点も、音源410が音センサ組420に対して取り得る位置となり得、その理由は、これらの点はそれぞれ、音センサ組420の2つのセンサに対して同じ距離を有するからである。同様に、音センサ円412は、音源410が音センサ組430に対して取り得る全ての位置を表す。音センサ組420および430がそれぞれ、第3のセンサを用いて音源をさらに識別する場合、第3のセンサによって、音源が第1の2つのセンサの前方または後方にあるのかを求めることができるので、音源円411および412は、半円になる(平面421および431によってそれぞれ分割される)。三次元方向ベクトルを生成するには、音センサ組420または430単一では、三次元空間において音源410の方向を正確に示すには不十分となり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、音センサ組420および430からの音圧を、プロセッサによって処理して、音源410の位置を三次元座標空間において正確に示す三次元方向ベクトルを生成することができる。すなわち、2つのセンサ組420および430によって検出された音圧に基づいて生成することができる2つの角度θ1およびθ2で、音源の三次元方向ベクトルを示すのに十分となり得る。図4に示すように、音源410の実際の位置は、2つの円411および412が交差する位置となり得る。一方の音センサ組420を他方の音センサ組430の隣に直交させて配置することによって、2つのセンサ組が位置する二次元平面421および431は、互いに直交することになる。したがって、平面421内にあり、音センサ組420によって検出された音圧から生成される角度値θ1、および平面431内にあり、音センサ組430によって検出された音圧に基づいて生成される角度値θ2は、三次元方向ベクトルの仰角、および方位角とみなすことができる。その後、三次元方向ベクトルの2つの角度値θ1およびθ2を三次元座標空間に描画し、モニタに表示することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、三次元方向ベクトルを求めるのに必要となる音センサの数をさらに減少させるために、音センサ組420および430のうちの一方の音センサを、他方のセンサ組用の第3のセンサとして利用することができる。すなわち、一方のセンサ組は、二次元方向ベクトルを360度の角度範囲で求める際に、他方のセンサ組のセンサによって検出された音圧を使用することができる。したがって、音源の三次元方向ベクトルを求めるのに4つの音センサで十分となり得る。さらに、方向ベクトルの処理はまた、参照テーブルを利用することによって実施することができる。この場合、参照テーブルは、2つの角度出力を4つの音圧入力と対にすることができる。センサ組420および430の4つのセンサからの音圧値を用いて、2つの対応する角度値を見出すことができる。したがって、参照テーブルによって、三次元方向ベクトルを求める際のプロセッサ性能を大幅に向上させることができる。
【0038】
図5は、音源の音圧を検出し、音源の方向ベクトルを求める工程501の例示的な実施形態の流れ図である。工程501は、ハードウェア(例えば、特殊目的回路、専用ハードウェアロジック、プログラム可能ハードウェアロジックなど)、ソフトウェア(処理装置で実行することができる命令など)、ファームウェア、またはそれらの組合せを含み得る処理ロジックによって実施することができる。いくつかの実施形態では、工程501用の機械実行可能命令は、図1のメモリ132中に記憶することができ、プロセッサ131によって実行する、かつ/または図1の音方向検出装置130内で実施することができる。
【0039】
工程501は、ブロック510「音源から伝播した音波の第1の音圧を検出する」ことから開始することができる。ブロック510の後にはブロック520「音波の第2の音圧を検出する」ことを続けることができる。ブロック520の後には、ブロック530「音波の第3の音圧を検出する」ことを続けることができる。ブロック530の後には、ブロック540「第1の音圧、および第2の音圧から導出される値を求める」ことを続けることができる。ブロック540の後には、ブロック550「前記値に基づいて、参照テーブルから方向ベクトルを取り出す」ことを続けることができる。ブロック550の後には、ブロック560「第3の音圧を第1および第2の音圧と比較することによって、音源が第1および第2の音センサの前方にあるのか後方にあるのかを判断する」ことを続けることができる。そして、ブロック560の後には、ブロック570「方向ベクトルをモニタに表示する」ことを続けることができる。
【0040】
本明細書に開示の本工程および他の工程、ならびに方法について、その工程および方法で実施される機能は、異なる順序で実施してもよいことが当業者には理解されよう。さらに、概略的に述べたステップおよび動作は、例として示したものにすぎず、ステップおよび動作のいくつかは、任意選択であっても、より少ないステップおよび動作に組み合わせても、または追加のステップおよび動作に拡張してもよく、それによって開示の実施形態の本質が損なわれることはない。さらに、概略的に述べたステップおよび動作の1つまたは複数を、並行して実施することもできる。
【0041】
ブロック510で、音方向検出装置は、音源から伝播した音波の第1の音圧を検出することができる。例示的な実装形態では、音方向検出装置は、第1の音センサを用いて第1の音圧を検出することができる。第1の音センサは、音方向検出装置のプロセッサによって、音圧を検出するように命令されてもよく、第1の音センサは、遠隔にある音源から伝播した音波の第1の圧力を検出することができるいかなるセンサでもよい。この音センサは、音波の圧力を、音圧を表すアナログまたはデジタル信号に変換することができる。いくつかの実施形態では、音センサによって検出された音圧がアナログ形式である場合、8ビットアナログ−デジタル(A/D)変換器を用いて、アナログ信号をデジタル信号に切り換えることができる。変換中、8ビットA/D変換器は、連続したアナログ信号をサンプリングし、その信号を離散したデジタル数字に書き換える。デジタル数字は、さらなる処理のためのデジタル化音圧と考えることができる。
【0042】
ブロック520で、音方向検出装置は、音源から伝播した同じ音波の第2の音圧を検出することができる。例示的な一実装形態では、音方向検出装置は、第2の音センサを用いて、第2の音圧を検出することができる。第2の音センサは、第1の音センサと同様のものでよく、第1の音センサと同じ向きに面することができる。ブロック530で、音方向検出装置は、第3の音センサを用いて、音波の第3の音圧を検出することができる。いくつかの実施形態では、第3の音センサは任意選択でよく、または異なる音センサ組の音センサと置き換えてもよい。次いで、音センサによって検出された第1、第2、および任意選択で第3の音圧は、音方向検出装置のプロセッサに伝送して、以下で説明するように、さらなる処理を行うことができる。
【0043】
ブロック540で、音方向検出装置のプロセッサは、先に検出された音圧を処理し、第1の音圧および第2の音圧から、値を導出することができる。いくつかの実施形態では、異なる音センサによって異なる時間に検出された音圧の測定値が、意味を成すように確実に評価されるように、プロセッサは、音センサによって供給された信号を、ある基準に基づいて処理することができる。例えば、音波は、異なる時間で異なる音センサを通過するので、複数の音センサによって検出された音圧は、伝送遅延を補償するために相関させる必要が生じ得る。また、音波は連続的であることがあるので、単一のセンサによって検出される音圧は、時間にわたって変動することがある。いくつかの実施形態では、プロセッサは、所定の時間間隔の範囲内で音センサによって検出された音圧の組から最高音量のサンプルを選択することができる。所定の時間間隔の範囲内では、全ての音センサによって検出された最高音量のサンプルは、同じ音波の結果となり得るので、これらの最高音量のサンプルが、時間遅延を補償し、音センサによって検出された音圧を表すのに十分となり得る。したがって、最高音量は、音圧検出時に使用することができる基準の1つとなり得る。
【0044】
あるいは、プロセッサは、信号サンプルを選択するための基準として特定の周波数を使用してもよい。さらに、プロセッサは、音圧を表す信号サンプルを識別する際に、音量基準と音周波数基準とを組み合わせて使用してもよい。したがって、上記の手法により、異なる音センサによって検出された音圧信号を、意味を成すように確実に比較し、処理することができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の音センサによって検出された第1の音圧値、および第2の音圧値を、次いでプロセッサによって利用して、圧力差値Δp、および平均圧力値 ̄pを計算することができる。プロセッサは、圧力差値Δpを平均圧力値 ̄pでさらに除算して、図2Gに示す式で使用することができる特定の値を生成することができる。したがって、プロセッサは、第1の音圧、および第2の音圧から導出される値を求めることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ブロック550で、音方向検出装置のプロセッサは、ブロック540で生成された値を用いて、1つまたは複数の角度値によって表される方向ベクトルを参照テーブルから取り出すことができる。参照テーブルは、図2Gの式に基づいて予め生成されたデータ対を含むことができる。データ生成中、第1の音センサと第2の音センサとの間隔、およびΔp/ ̄p値を、図2Gの式への入力値として使用する。次いで、Δp/ ̄p入力値を、それらの対応する出力値と対にして、参照テーブル用のデータ対とする。この場合、ブロック540で生成された値をインデックスとして用いて、参照テーブルから出力値(複数可)を取り出すことができる。出力値(複数可)は、1つまたは複数の角度値でよく、音源の方向ベクトルとみなすことができる。
【0046】
ブロック560で、音方向検出装置のプロセッサは、第3の音圧を第1および第2の音圧とさらに比較して、音源が第1および第2の音センサの前方にあるのか後方にあるのかを判断することができる。いくつかの実施形態では、第3の音センサは、第1および第2のセンサが面する向きとは反対の向きに面することができる。第3の音圧が、第1または第2の音圧よりも低い場合、プロセッサは、音源が第1の音センサまたは第2の音センサの前方にあると判断することができる。第3の音圧が、第1または第2の音圧よりも高い場合、音源は、第1および第2の音センサの後方にあることになる。かかる判断もやはり参照テーブルに組み込んで、360度の範囲を有する方向ベクトルを与えることができる。
【0047】
ブロック570で、音方向検出装置のプロセッサは、目視検査のために方向ベクトルをモニタに表示することができる。いくつかの実施形態では、方向ベクトルは、第1の音センサおよび第2の音センサから音源の方向を指す矢印として表示することができる。具体的には、第1の音センサと第2の音センサとを、モニタの中央位置に配置された点に一体化し、方向ベクトルを、その中央位置から音源の方向に描くことができる。矢印の長さは、音センサが受け取った音圧の強度を示すように符号化することができる。したがって、音センサによって検出された音圧が高いほど、矢印をモニタ上でより長く表示することができる。また、例えば、東西、南北の向きなどの追加の情報も、モニタ上に表示することができる。さらに、方向ベクトルはまた、GPSまたはマップアプリケーションなど、他の用途にも供給して、音方向検出のための総合的な解決策(integrated solution)を提供することができる。
【0048】
システムの諸側面のハードウェアによる実施とソフトウェアによる実施とではほとんど差異はなく、ハードウェアまたはソフトウェアの使用は、一般には(場合によっては、ハードウェアとソフトウェアとの間の選択が重要となり得るため、常にではないが)費用対効果の兼ね合いを表す設計上の選択である。本明細書に記載の工程および/またはシステムおよび/または他の技術を実現させ得る様々な媒体が存在し(例えば、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェア)、好ましい媒体は、工程および/またはシステムおよび/または他の技術が展開される背景によって異なることになる。例えば、速度および精度が優先される場合、実施者は、主にハードウェアおよび/またはファームウェアによる構成を選択することができ、融通性が優先される場合は、実施者は、主にソフトウェアによる実施を選択することができ、あるいは、実施者は、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアの何らかの組合せを選択してもよい。
【0049】
前述の詳細な説明では、ブロック図、流れ図、および/または例を用いて、装置および/または工程の様々な実施形態について説明してきた。かかるブロック図、流れ図、および/または例が1つまたは複数の機能および/または動作を含む限り、かかるブロック図、流れ図、または例における各機能および/または動作は、幅広いハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または事実上それらの任意の組合せによって、個別に、かつ/または集合的に実施することができることが当業者には理解されよう。一実施形態では、本明細書に記載の主題のうちいくつかの部分は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはその他の集積されたフォーマットによって実施することができる。しかし、本明細書に開示の実施形態のうちいくつかの態様は、全体または一部において、1つまたは複数のコンピュータ上で実行する1つまたは複数のコンピュータプログラムとして(例えば、1つまたは複数のコンピュータシステム上で実行する1つまたは複数のプログラムとして)、1つまたは複数のプロセッサ上で実行する1つまたは複数のプログラムとして(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ上で実行する1つまたは複数のプログラムとして)、ファームウェアとして、あるいは事実上それらの任意の組合せとして、集積回路において同等に実施することができること、また、ソフトウェアおよび/またはファームウェア用の回路を設計するおよび/またはコードを書くことは本開示を考慮すれば十分に当業者の技術の範囲内であることが、当業者には理解されよう。さらに、本明細書に記載の主題の機構は、様々な形態のプログラム製品として頒布可能であること、また、そうした頒布を実際に行うために使用する信号担持媒体の特定の種類に関わらず、本明細書に記載の主題の例示的な実施形態が当てはまることが当業者には理解されよう。信号担持媒体の例には、それだけに限られるものではないが、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、デジタルテープ、コンピュータメモリなどの記録可能型媒体、ならびにデジタルおよび/またはアナログ通信媒体などの伝送型媒体(例えば、光ファイバケーブル、導波路、有線通信リンク、無線通信リンクなど)が含まれる。
【0050】
本明細書に記載する様式で装置および/または工程を説明し、その後、実際上の工学技術を用いて、上記説明のかかる装置および/または工程をデータ処理システムに組み込むことは、当技術分野において通常のことであることが当業者には理解されよう。すなわち、本明細書に記載の装置および/または工程の少なくとも一部は、妥当な量の試行を通じて、データ処理システムに組み込むことができる。典型的なデータ処理システムは一般に、システムユニットハウジング、ビデオ表示装置、揮発性メモリおよび不揮発性メモリなどのメモリ、マイクロプロセッサおよびデジタル信号プロセッサなどのプロセッサ、オペレーティングシステム、ドライバ、グラフィカルユーザインターフェイス、ならびにアプリケーションプログラムなどの計算エンティティ、タッチパッドまたは画面などの1つまたは複数の対話装置、ならびに/あるいはフィードバックループおよび制御モータ(例えば、位置および/または速度感知用フィードバック、構成要素および/または量を移動および/または調整する制御モータ)を含む制御システムのうち、1つまたは複数を含むことが当業者には理解されよう。典型的なデータ処理システムは、データ計算/通信システム、および/またはネットワーク計算/通信システムに典型的に見られるものなどの適切な任意の市販部品を利用して実施することができる。
【0051】
本明細書に記載の主題は、異なる構成要素内に含まれる、または異なる構成要素に接続された他の異なる構成要素を例示することがある。記載のかかる構成は、単なる例示にすぎず、実際には、同様の機能性を実現する他の多くの構成でも実施できることを理解されたい。概念的な意味において、同様の機能性を実現するための構成要素のいかなる構成も、所望の機能性が実現されるように効果的に「関連付けられる(associated)」。したがって、特定の機能性を実現するために、本明細書で組み合わせた2つのいかなる構成要素も、構成または介在する構成要素に関わらず、所望の機能性が実現されるように互いに「関連付けられる」とみなすことができる。同様に、そのように関連付けられた2つのいかなる構成要素もまた、所望の機能性が実現されるように互いに「動作可能に接続されている」または「動作可能に結合されている」とみなすことができ、そのように関連付けることが可能な2つのいかなる構成要素もやはり、所望の機能性が実現されるように互いに「動作可能に結合できる」とみなすことができる。動作可能に結合されている具体例には、それだけに限定されるものではないが、物理的に嵌合可能かつ/または物理的に相互作用する構成要素、ならびに/あるいは無線で相互作用可能かつ/または無線で相互作用する構成要素、ならびに/あるいは論理的に相互作用かつ/または論理的に相互作用可能な構成要素が含まれる。
【0052】
本明細書で実質的に使用するいかなる複数形および/または単数形の用語に関しても、当業者であれば、文脈および/または用途に応じて複数形から単数形に、かつ/または単数形から複数形に書き換えることができる。様々な単数形/複数形の置換えは、分かりやすいように、本明細書において明確に記載することがある。
【0053】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の主要部分)で使用する用語は、一般に、「包含的な(open)」用語として意図されている(例えば、用語「含んでいる(including)」は、「含んでいるがそれだけに限られない」と解釈すべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、用語「含む(include)」は、「含むがそれだけに限られない」と解釈すべきである、など)ことが当業者には理解されよう。導入された請求項記載において特定の数が意図される場合、かかる意図は、当該請求項中に明確に記載され、かかる記載がない場合は、かかる意図も存在しないことが当業者にはさらに理解されよう。例えば、理解の一助として、以下の添付の特許請求の範囲では、「少なくとも1つの(at least one)」、および「1つまたは複数の(one or more)」という導入句を用いて、請求項記載を導入することがある。しかし、かかる句の使用は、不定冠詞「a」または「an」によって請求項記載が導入される場合に、同じ請求項内に導入句「1つまたは複数の」あるいは「少なくとも1つの」、ならびに「a」または「an」などの不定冠詞が含まれる場合でも、不定冠詞「a」または「an」によって導入された請求項記載を含む特定の請求項が、かかる記載事項をただ1つだけ含む発明に限定されるということが示唆されると解釈すべきではなく(例えば、「a」および/または「an」は、典型的には「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈すべきである)、定冠詞を用いて請求項記載を導入する場合にも同じことが言える。さらに、導入された請求項記載において特定の数が明示されている場合でも、かかる記載は、典型的には「少なくとも記載された数」を意味するとして解釈すべきであることが、当業者には理解されよう(例えば、他に修飾語のない、単なる「2つの記載事項」という記載がある場合、典型的には、「少なくとも2つの記載事項」、または「2つ以上の」記載事項を意味する)。さらに、「A、B、およびCのうち少なくとも1つ」などに類する慣用句が使用されている場合、一般に、かかる構造は、当業者がその慣用句を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、BおよびCのうち少なくとも1つを有するシステム」は、それだけに限られるものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、および/またはAとBとCの全て、などを有するシステムを含み得る)。また、「A、B、またはCのうち少なくとも1つ」などに類する慣用句が使用されている場合、一般に、かかる構造は、当業者がその慣用句を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCのうち少なくとも1つを有するシステム」は、それだけに限られるものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、および/またはAとBとCの全て、などを有するシステムを含み得る)。さらに、2つ以上の代替用語を示すいかなる事実上の選言的用語および/または句も、説明文中、特許請求の範囲中、または図面中に関わらず、それらの代替用語のうちの1つ、それらの代替用語のいずれか、またはそれらの代替用語の両方を含む可能性が企図されると理解すべきであることが、当業者には理解されよう。例えば、句「AまたはB」は、「A」、または「B」、あるいは「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0054】
様々な態様および実施形態について本明細書で開示してきたが、他の態様および実施形態も当業者には明らかであろう。本明細書に開示の様々な態様および実施形態は、例示を目的とするものであり、限定を意図するものではなく、その真の範囲と趣旨は以下の特許請求の範囲に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源の方向ベクトルを求める方法であって、
第1の音センサによって、前記音源から伝播した音波の第1の音圧を検出すること、
第2の音センサによって、前記音波の第2の音圧を検出すること、ならびに
プロセッサによって、前記音源の、前記第1の音センサおよび前記第2の音センサに対する前記方向ベクトルを求めること
を含み、前記方向ベクトルが、前記第1の音圧、前記第2の音圧、および前記第1の音センサの第1の物理的位置と前記第2の音センサの第2の物理的位置との間の第1の距離に基づいて求められる、方法。
【請求項2】
前記プロセッサによって、前記方向ベクトルをモニタ上に表示することをさらに含み、前記方向ベクトルが、前記第1の音センサおよび前記第2の音センサから前記音源までの方向として表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3の音センサによって、前記音波の第3の音圧を検出することをさらに含み、前記方向ベクトルが、前記第3の音圧を、前記第1の音圧および前記第2の音圧と比較することによってさらに求められる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の音圧を前記検出することが、所定の時間間隔の範囲内で前記第1の音センサの出力から前記第1の音圧を選択することを含み、
前記第2の音圧を前記検出することが、前記所定の時間間隔の範囲内で前記第2の音センサの出力から前記第2の音圧を選択することを含み、前記第1の音圧および前記第2の音圧が、ある基準に基づいて選択される、請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の音センサ、および前記第2の音センサが、微小電子機械システム(MEMS)センサである、請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方向ベクトルを前記求めることが、参照テーブルを用いて、前記方向ベクトルを得ることを含む、請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方向ベクトルを前記求めることが、前記音源と前記第1の音センサとの間の第2の距離、または前記音源と前記第2の音センサとの間の第3の距離には基づかない、請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方向ベクトルが、前記第1の音センサ、および前記第2の音センサが位置する二次元集音平面において表される、請求項1ないし7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第3の音センサによって、前記音波の第3の音圧を検出すること、
第4の音センサによって、前記音波の第4の音圧を検出すること、ならびに
前記プロセッサによって、前記第1の音圧、前記第2の音圧、前記第3の音圧、および前記第4の音圧に基づいて、前記音源の三次元方向ベクトルを求めること
をさらに含み、前記三次元方向ベクトルが、前記第1の音センサ、および前記第2の音センサが位置する第1の集音平面と、前記第3の音センサ、および前記第4の音センサが位置する第2の集音平面とに基づいて形成される三次元座標空間で表される、請求項1ないし8のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の集音平面と、前記第2の集音平面とが互いに直交して、前記三次元座標空間を成す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
音源の方向ベクトルを求める方法であって、
第1の音センサによって、前記音源から伝播した音波の第1の音圧を検出すること、
第2の音センサによって、前記音波の第2の音圧を検出すること、ならびに
プロセッサによって、前記音源の、前記第1の音センサ、および前記第2の音センサに対する前記方向ベクトルを求めること
を含み、前記プロセッサが、参照テーブルを用い、前記第1の音圧および前記第2の音圧から導出された値に基づいて、前記方向ベクトルを得る、方法。
【請求項12】
前記第1の音圧を前記検出することが、所定の時間間隔の範囲内で、前記第1の音センサの出力から前記第1の音圧を選択することを含み、さらに、
前記第2の音圧を前記検出することが、前記所定の時間間隔の範囲内で、前記第2の音センサの出力から前記第2の音圧を選択することを含み、前記第1の音圧および前記第2の音圧が、ある基準に基づいて選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第3の音センサによって、前記音波の第3の音圧を検出すること、ならびに
前記プロセッサによって、前記第3の音圧を、前記第1の音圧および前記第2の音圧と比較することによって、360度の二次元平面において前記方向ベクトルを求めること
をさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記プロセッサによって、前記第1の音センサの第1の物理的位置と、前記第2の音センサの第2の物理的位置との間の第1の距離に基づいて前記方向ベクトルを求め、前記音源と前記第1の物理的位置との間の第2の距離、または前記音源と前記第2の物理的位置との間の第3の距離は使用しないことをさらに含む、請求項11ないし13のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
音源の方向ベクトルを求めるように構成されたシステムであって、
前記音源から伝播した音波の第1の音圧を検出する第1の音センサと、
前記音波の第2の音圧を検出する第2の音センサと、
前記第1の音センサおよび前記第2の音センサに結合され、前記第1の音圧および前記第2の音圧に基づいて、前記音源の、前記システムに対する前記方向ベクトルを求めるプロセッサと
を備える、システム。
【請求項16】
前記プロセッサに結合され、前記方向ベクトルを表示するモニタをさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の音センサ、および前記第2の音センサが、微小電子機械システム(MEMS)センサである、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサが、前記第1の音圧、および前記第2の音圧から導出された値に基づいて、参照テーブルから前記方向ベクトルを突き止めるように構成される、請求項15ないし17のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記音波から第3の音圧を検出する第3の音センサをさらに備え、前記第1の音センサおよび前記第2の音センサが、第1の向きに面し、前記第3の音センサが、前記第1の向きとは反対の第2の向きに面する、請求項15ないし18のうちいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記プロセッサが、前記第3の音圧を、前記第1の音圧および前記第2の音圧と比較することによって、前記音源が、前記第1の音センサおよび前記第2の音センサの前方または後方にあるのかを判断する、請求項19に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate