説明

音波検査装置

【課題】 電子部品を水の中に入れて超音波探触子から出射される超音波を媒質に相当する水を介して音波検査を行う場合、電子部品は水に濡れて機能が劣化すること、水が中に浸入しない容器に入れて、水槽内に設置する方法があるものの、水を媒質にするために検査に至るまでに多くの時間、準備、及びコストを要する。
【解決手段】 探傷信号回路により発生する電気信号を音波探触子で音波に変換し、音波探触子に取り付けられたプローブの先端部を電子部品、半田若しくはプリント配線基板の測定物に直接、接触させた状態で、該音波を測定物に照射し、その反射波をプローブを介した音波探触子にて電気信号に変換した信号により該測定物の良否を判断する音波検査装置であり、CADデータを基に検査対象である複数の測定物の測定位置に音波探触子に取り付けられたプローブの先端部を移動後に、接触させて測定するための移動機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音波検査方法及び音波検査装置、特に電子部品、半田若しくは部品内蔵プリント配線基板を含むプリント配線基板等の欠陥を識別する音波検査方法及び音波検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の欠陥の有無を調査し、分析する検査装置として超音波を用いた検査装置が使用されている。これらの検査装置は電子部品の信頼性評価や故障箇所の解析に利用されてきた。ここで、一般的に超音波を用いた検査装置は、検査対象である試料を、水槽に溜めた水に沈め、超音波探触子から出射される超音波を媒質に相当する水を介して試料の中に入射する。試料の中から反射される超音波は超音波探触子で受信され、電気信号に変換される。この電気信号を信号処理し、表示装置にて映像表示している。
【0003】
それに対して特許文献1は、検査対象である試料を水槽内に配置して弾性フィルムで覆い、この弾性フィルムで覆った水槽を水の入った容器に沈めた後に、超音波探触子から出射される超音波を媒質に相当する水を介して試料の中に入射している。だが、特許文献1は試料を直接、水に接触させないだけであり、同様に超音波探触子から出射される超音波を媒質に相当する水を介して試料の中に入射する必要があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−77341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ICチップなどの電子部品では、パッケージの界面剥離、樹脂ボイド、チップクラック、パッケージクラック等の不良を検査する為に、特許文献1記載のように試料を水の中に入れて超音波探触子から出射される超音波を媒質に相当する水を介して試料の中に入射する音波検査装置を使用することが多い。このような電子部品を試験体として、音波検査を行うとき水槽の水等の液体中に電子部品を配置しなければならないが、一般的に電子部品は水に濡れると機能が劣化するものが多い。そのため、超音波検査で水槽内に入れて一度測定した電子部品を正常品として扱うことは稀である。その為、品質管理の観点で前記検査を行うことはあるが、定常的な全数検査に利用されることは少ない。
【0006】
そこで、特許文献1のように水が中に浸入しない容器に入れて、水槽内に設置する方法があるものの、プリント配線基板に実装された部品の検査を行うには、検査対象であるプリント配線基板の形状に合わせた専用の容器を用意する必要が有ること、プリント配線基板は両面実装の場合、検査する面に超音波探触子から出射される超音波を入射できるように設置し直す必要があることが生じるので、多くの時間や手間がかかる欠点があった。更に特許文献1では、容器内に検査対象である試料を配置し、その上に弾性フィルムを配置し、開口部が形成された蓋部材で容器本体の内部空間を閉じ、容器本体に真空ポンプで真空排気にて弾性フィルムを検査対象である試料に密着させている。これは弾性フィルムを検査対象である試料に密着させなければ、水槽内の水と検査対象である試料の間に弾性フィルムを介して空気が存在する空間が生じ、超音波による検査ができないためであると考えられる。しかし、様々な高さの部品が実装されたプリント配線基板の検査では、全ての箇所にて空気が存在する空間を生じることなく弾性フィルムを検査対象である電子部品、半田箇所に密着させることは困難である。
【0007】
また近年、電子部品の小型化、高集積化および高密度実装が進んでいる。このためプリント配線基板に実装した抵抗、コンデンサ等のチップ部品で、チップクラック、チップ立ち、実装ずれ、欠品(機械実装時の不具合による部品の落下)等の不具合が発生している。これら不具合の検査のために目視や光学系の検査装置を用いて検査を行っているが、微細なクラック等の欠陥を検出することは非常に難しい。
【0008】
上記の様な微細な欠陥は、一般的な超音波検査装置を用いることで検出することができる。しかしながら、前述のとおり、従来の超音波検査装置を用いて全数検査を行うにはコスト、人手及び時間がかかる。
【0009】
従って本発明は、このような課題に関して、水等の液体の媒質を介することなく、電子部品および半田の欠陥、プリント配線基板の亀裂・破損等の検査を可能とし、定常的な全数検査に利用できる音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、探傷信号回路により発生する電気信号を少なくとも1つ以上の音波探触子で音波に変換し、音波探触子に取り付けられたプローブの先端部を電子部品、半田若しくはプリント配線基板の何れかの測定物に直接、接触させた状態で、該音波を測定物に照射し、その反射波をプローブを介した少なくとも1つ以上の音波探触子にて電気信号に変換し、メモリに記憶された信号と対比することで、該測定物の良否を判断する音波検査装置であり、測定対象である電子部品の部品データを有するCADデータより前記プリント配線基板の測定対象である電子部品の部品位置データ及び部品形状データを取得して、これら電子部品の部品位置データ及び部品形状データより測定対象である電子部品の測定位置を抽出し、該測定位置まで移動機構により移動した後に音波探触子に取り付けられたプローブの先端部を測定対象である電子部品に接触させて測定することを特徴とする。
【0011】
好適には、前記音波探触子に取り付けられたプローブの先端部を測定対象である電子部品に接触させて測定した際の前記音波探触子の測定位置、測定履歴、移動機構の移動履歴からなる走査履歴をメモリに保存し、逐次、その走査履歴と同じ測定をすること、或いはそのメモリに保存された走査履歴から任意の前記音波探触子の測定位置、測定履歴、移動機構の移動履歴を抽出した抽出情報により測定することの何れかを実行することを特徴とする。
【0012】
又、好適には、前記探傷信号回路により発生する電気信号はパルス波信号、バースト信号、若しくは連続波信号の何れかを選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水等の液体の媒質を介することなく、電子部品および半田の欠陥、部品内蔵プリント配線基板の内部欠陥、プリント配線基板の亀裂・破損等の測定及び検査が可能になり、水槽、試験体を入れる容器等が不要になる為、コスト、検査工数の低減に寄与する。
【0014】
又、水等の液体によって濡れることが無いため、全数検査が可能であり、且つプローブを介した複数の音波探触子によって、1つの部品においても異なる複数の箇所にて試験体に照射した音波の反射波を受信できるため、電子部品および半田の欠陥、部品内蔵プリント配線基板の内部欠陥、プリント配線基板の亀裂・破損等の検査精度が向上する。
【0015】
加えて、プリント配線パターン等のCAD情報及び部品形状情報に基いて測定する方式により、最適な測定位置にて測定及び検査することが容易となる上に、一度測定した走査履歴と同じ測定をすることが容易になる。その為、検査時間の短縮に効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の音波検査装置及び音波検査方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施例である音波検査装置の構成図である。本発明の音波検査装置はベースとなる基台11の上に位置決め装置6aが設けられている。位置決め装置6aは支持体7a、支持体8a、支持体9a、支持体10aと、プローブ5aを先端に取り付けた音波振動子4aによって構成されている。支持体7a、支持体8a、支持体9a、支持体10aにはそれぞれアクチュエータが内蔵されていて、例えば音波振動子4aを固定する支持体8aはA方向とA‘方向に移動することができ、プローブ5aの先端部を測定対象である試験体12の測定位置に合わせるように内蔵のアクチュエータに印加する信号を変化することによりA方向とA‘方向の間で微小調節できる。この内蔵のアクチュエータに印加する信号はコンピュータ2からの命令に基づき、図示されていない発振器から生成される。同じ構成にて支持体7aはZ軸方向を上下動し、支持体9aはB方向とB‘方向に移動する(X方向にて動く)。そして、支持体10aはC方向とC‘方向に移動する(Y方向にて動く)ことと、X方向の移動の2軸方向で移動できるように少なくとも2ケ以上のアクチュエータが内蔵されている。従って、これらの構成により、位置決め装置6aはX、Y、Zの3軸方向に移動可能であり、音波探触子およびプローブを3軸方向に自在に動作できるようになっている。
【0018】
本発明の音波検査方法の一実施例を下記に記載する。図1にて音波探触子4aの片側の先端部には、プローブ5aが接続されており、位置決め装置6aにより試験体12の音波を照射する位置まで移動させて、そのポイントにプローブ5aの先端部を接触させる。ここで、基台11には検査対象である試験体12を直接、基台上に載置しても構わないが、試験体12にはプローブ5aの先端部を接触させる為、プローブ5aの先端部の接触により試験体12のがたつきが無いようにする必要がある。試験体12がプリント基板13に片面のみ実装されている状態では問題ないが、両面実装の場合はがたつきが無いようにプリント基板13を固定できる基台11である必要がある。
【0019】
試験体12の音波を照射するポイントにプローブ5aの先端部を接触させた後は、コンピュータ2の指示により探傷信号回路3aを制御する。探傷信号回路3aはパルス波信号、バースト信号、連続波信号を生成し、コンピュータ2の指示によりこれらの信号から1種類の電気信号を選択して音波探触子4aに出力する。音波探触子4aはこの電気信号を音波に変換して、片側に接続しているプロ−ブ5aを介して、直接試験体12の音波を照射する位置に音波を照射する。試験体12の内部では音波の反射エコー(反射波)が発生し、この反射エコーを前述プローブ5aを介して音波探触子4aで電気信号に変換し、探傷信号回路3aに送る。コンピュータ2は探傷信号回路3aからの情報に基づき試験体の欠陥を判断する。この判断方法としてはコンピュータ2が探傷信号回路3aからの情報を表示装置1に映像表示することや、予め記憶装置(メモリ)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体の欠陥を判断することができる。表示装置1で、映像表示以外にスピーカーを通して音声によって判断する方法も可能である。
【0020】
1つの検査が完了すると、位置決め装置6aをコンピュータ2で制御することにより、位置決め装置6aはX、Y、Zの3軸方向の任意の位置に移動されることとなり、目標位置にプローブを接触させるよう制御することで、引き続き反射エコーを得ることができる。このようにして得られた反射エコーを変換した電気信号により、任意の部品および半田の欠陥を検出する。又、この方法で部品内蔵プリント基板13の内部の欠陥も検出可能である。
【0021】
位置決め装置6aをコンピュータ2でX、Y、Zの3軸方向の任意の位置に移動制御する際に、配線パターン、電極接続情報、部品装着情報等のプリント配線基板13に関する設計情報及び部品実装情報、且つ部品形状情報等の部品情報等のCADに登録されている情報を利用するとより位置決めの時間短縮に有効である。具体的には、電子部品を装着したプリント配線基板に関する配線パターン、電極接続情報、部品装着情報、部品形状・寸法情報等のCAD情報を事前にメモリ(記憶装置)に格納しておき、試験体12の音波を照射する位置にプローブ5aの先端部を接触させ、コンピュータ2の指示により探傷信号回路3aにて生成されたパルス波信号、バースト信号、連続波信号から音波探触子4aにより変換された音波を直接試験体12の音波を照射する位置に照射し、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4aで電気信号に変換し、探傷信号回路3aを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断する一連の検査工程にて、一つの測定位置の測定が完了した後に、メモリ(記憶装置)に格納されたCAD情報を抽出して別の測定位置まで位置決め装置6aを移動させ、再度、別の測定位置の測定を行う。これらの検査工程を繰り返すことにより効率的な測定が容易になる。ここで、どの測定位置をどのような順番で測定するかは、事前にその測定プログラムをメモリ(記憶装置)に格納して実行させることも可能である。又、CAD情報を格納しているメモリ(記憶装置)と正常な時の反射エコー情報を格納しているメモリ(記憶装置)を別にし、それぞれが個別にコンピュータ2の指示に基づいて抽出するようにしても良い。
【0022】
尚、本発明では、上記の様に電子部品等の測定物における一つの測定位置の測定が完了した後に、メモリ(記憶装置)に格納されたCAD情報を抽出して別の測定位置まで位置決め装置6aを移動させ、再度、別の測定ポイントの測定を行う検査工程は、上記の様にどの測定位置をどのような順番で測定するかを事前にプログラム化して、そのプログラムをメモリ(記憶装置)に格納して実行させること以外の方法で検査することも可能である。その方法を下記に記載する。
【0023】
試験体12の音波を照射する位置にプローブ5aの先端部を接触させ、コンピュータ2の指示により探傷信号回路3aにて生成されたパルス波信号、バースト信号、連続波信号から音波探触子4aにより変換された音波を直接試験体12の音波を照射する位置に照射し、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4aで電気信号に変換し、探傷信号回路3aを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断する一連の検査工程にて、測定者がリアルタイムでコンピュータ2を操作し、測定位置を決定するようにする。まず、測定者は測定位置の選択、及び探傷信号回路3aが生成する電気信号をパルス波信号、バースト信号、連続波信号から選択することを行う。
【0024】
その後、選択した測定位置、選択した電気信号を音波に変換して照射し、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4aで電気信号に変換し、探傷信号回路3aを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断する。ここでは、探傷信号回路3aが生成する電気信号を選択して実行する際は、自動的にメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比するように設定している。
【0025】
そして、これら一つの電子部品の測定位置に関する検査工程完了後に改めて測定者はコンピュータ2を操作し、次に測定する電子部品の測定位置、の選択、及び探傷信号回路3aが生成する電気信号をパルス波信号、バースト信号、連続波信号から選択することを行う。この選択を実行後に、メモリ(記憶装置)に格納されたCAD情報を抽出して別の測定位置まで位置決め装置6aが自動的に移動して、測定対象である試験体12の音波を照射する位置にプローブ5aの先端部を接触させ、この測定位置の測定を行い、正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断するといった検査工程を繰り返すことになる。本発明はこの一連の検査工程にて測定した測定位置、探傷信号回路3aが生成する電気信号の種類、どのような順番にて様々な電子部品の各測定位置を選択したかを示す測定履歴、移動機構である位置決め装置6aがどのルートで移動したかを示す移動履歴(一連の検査工程にて測定した測定位置、探傷信号回路3aが生成する電気信号の種類、測定履歴、移動履歴を総称して走査履歴とする)を自動的にメモリ(記憶装置)に格納することと、その走査履歴を再度読み出しで実行することを可能にした。ここで、これらの走査履歴はコンピュータ2にて測定者がどこの測定位置からどの測定位置までの履歴を保存するかを任意に設定できる。そして、走査履歴は複数、メモリ(記憶装置)に格納することが出来るため、多種類の電子部品を装着したプリント配線基板に関する情報を保存して、任意に選択した走査履歴を読み出して実行することで同じ検査が可能である。又、一度、メモリ(記憶装置)に格納された走査履歴はその走査履歴の途中から途中までに限定して実行させることも可能である。つまり、メモリ(記憶装置)に格納された走査履歴の中で、任意の音波探触子の測定位置、任意の測定履歴、任意の移動機構の移動履歴にて自由に範囲を設定し、実行できる。
【0026】
又、図2は本発明の別の実施例である音波検査装置の構成図である。本発明の音波検査装置はベースとなる基台11の上に2つの位置決め装置6b、6cが設けられている。但し、図2では2つの位置決め装置が記載されているが、3つ以上の位置決め装置を基台11の上に設置することも可能である。
【0027】
位置決め装置6bは支持体7b、支持体8b、支持体9b、支持体10bと、プローブ5bを先端に取り付けた音波振動子4bによって構成されている。支持体7b、支持体8b、支持体9b、支持体10bにはそれぞれアクチュエータが内蔵されていて、例えば音波振動子4bを固定する支持体8bはD方向とD‘方向に移動することができ、プローブ5bの先端部を測定対象である試験体12の一つの測定ポイントに合わせるように内蔵のアクチュエータに印加する信号を変化することによりD方向とD‘方向の間で微小調節できる。この内蔵のアクチュエータに印加する信号はコンピュータ2からの命令に基づき、図示されていない発振器から生成される。同じ構成にて支持体7bはZ軸方向を上下動し、支持体9bはE方向とE‘方向に移動する(X方向にて動く)。そして、支持体10bはF方向とF‘方向に移動する(Y方向にて動く)ことと、X方向の移動の2軸方向で移動できるように少なくとも2ケ以上のアクチュエータが内蔵されている。従って、これらの構成により、位置決め装置6bはX、Y、Zの3軸方向に移動可能であり、音波探触子およびプローブを3軸方向に自在に動作できるようになっている。
【0028】
位置決め装置6bと同様に、位置決め装置6cは支持体7c、支持体8c、支持体9c、支持体10cと、プローブ5cを先端に取り付けた音波振動子4cによって構成されている。支持体7c、支持体8c、支持体9c、支持体10cにはそれぞれアクチュエータが内蔵されていて、音波振動子4cを固定する支持体8cはG方向とG‘方向に移動することができる。そして、支持体7cはZ軸方向を上下動し、支持体9cはH方向とH‘方向に移動する(X方向にて動く)。そして、支持体10cはI方向とI‘方向に移動する(Y方向にて動く)。ここで、プローブ5cはもう一つの位置決め装置6bにおけるプローブ5bと異なる測定ポイントに合わせることにより、照射するプローブ付きの音波振動子と試験体12からの反射エコーを受信するプローブ付きの音波振動子を別にすることができる。このことにより、試験体12の照射ポイントと反射エコーを受信するポイントを異なるところで検出できることになり、容量の大きい電子部品やプリント配線部品の欠陥や亀裂等を判別することが容易になる。
【0029】
又、図2の実施例では、試験体12の音波を照射するポイントにプローブ5bの先端部を接触させた後は、コンピュータ2の指示により探傷信号回路3bを制御する。探傷信号回路3bはパルス波信号、バースト信号、連続波信号を生成し、コンピュータ2の指示によりこれらの信号から1種類の電気信号を選択して音波探触子4bに出力する。音波探触子4bはこの電気信号を音波に変換して、片側に接続しているプロ−ブ5bを介して、直接試験体12の音波を照射するポイントに音波を照射する。試験体12の内部では音波の反射エコー(反射波)が発生し、この反射エコーをプロ−ブ5bと別のポイントに接触させたプローブ5cを介して音波探触子4cで電気信号に変換し、探傷信号回路3cに送る。コンピュータ2は探傷信号回路3cからの情報に基づき試験体の欠陥を判断する。この判断方法としてはコンピュータ2が探傷信号回路3cからの情報を探傷信号回路3bから生成した情報と同時に情報表示装置1に映像表示することや、予め記憶装置(メモリ)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体の欠陥を判断することができる。図1の実施例と同様に表示装置1で、映像表示以外にスピーカーを通して音声によって判断する方法も可能である。試験体12の照射ポイントと反射エコーを受信するポイントを異なるところで検出できること、特に反射エコーを受信するポイントを複数設定して検出し、その複数の反射エコーを電気信号に変換した情報を同時に情報表示装置1に映像表示することが可能なことから、上述したように容量の大きい電子部品や複雑な形状の電子部品、大きな面積の半田やプリント配線板の欠陥を容易に検査することができる。
【0030】
更に図2の実施例ではプローブを先端に取り付けた音波振動子位置決め装置を複数用意して、検査できるために表示装置を複数設置するなどにより、全数検査をより効率よく短時間で行うことが可能になる。
【0031】
上記以外に位置決め装置6b、位置決め装置6cをコンピュータ2でX、Y、Zの3軸方向の任意の位置に移動制御する際に、配線パターン、電極接続情報、部品装着情報等のプリント配線基板13に関する設計情報及び部品実装情報、且つ部品形状情報等の部品情報等のCADに登録されている情報を利用するとより位置決めの時間短縮に有効である。
【0032】
具体的には、電子部品を装着したプリント配線基板に関する配線パターン、電極接続情報、部品装着情報、部品形状・寸法情報等のCAD情報を事前にメモリ(記憶装置)に格納しておき、試験体12の音波を照射する異なる位置にプローブ5b、プローブ5cの先端部を接触させ、コンピュータ2の指示により探傷信号回路3bにて生成されたパルス波信号、バースト信号、連続波信号から音波探触子4bにより変換された音波を直接試験体12の音波を照射する位置に照射し、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4bで電気信号に変換し、探傷信号回路3bを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断することと、且つコンピュータ2の指示により探傷信号回路3cにて生成されたパルス波信号、バースト信号、連続波信号から音波探触子4cにより変換された音波を直接試験体12の音波を照射する位置に照射し、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4cで電気信号に変換し、探傷信号回路3cを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断することを同時に行う一連の検査工程にて、これら二つの測定位置の測定が完了した後に、メモリ(記憶装置)に格納されたCAD情報を抽出して別の測定位置まで位置決め装置6b、位置決め装置6cをそれぞれ別途移動させ、再度、別の測定位置の測定を行う。これらの検査工程を繰り返すことにより効率的な測定が容易になる。ここで、どの測定位置をどのような順番で測定するかは、事前にその測定プログラムをメモリ(記憶装置)に格納して実行させることも可能である。
【0033】
尚、本発明では、上記の様に電子部品等の測定物における一つの測定位置の測定が完了した後に、メモリ(記憶装置)に格納されたCAD情報を抽出して別の測定位置まで位置決め装置6b、位置決め装置6cをそれぞれ移動させ、再度、別の測定ポイントの測定を行う検査工程は、上記の様にどの測定位置をどのような順番で測定するかを事前にプログラム化して、そのプログラムをメモリ(記憶装置)に格納して実行させること以外の方法で検査することも可能である。その方法を下記に記載する。
【0034】
試験体12の音波を照射する位置にプローブ5bの先端部を接触させ、コンピュータ2の指示により探傷信号回路3bにて生成されたパルス波信号、バースト信号、連続波信号から音波探触子4bにより変換された音波を直接試験体12の音波を照射する位置に照射し、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4bで電気信号に変換し、探傷信号回路3bを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断することと、試験体12の音波を照射する位置にプローブ5cの先端部を接触させ、コンピュータ2の指示により探傷信号回路3cにて生成されたパルス波信号、バースト信号、連続波信号から音波探触子4cにより変換された音波を直接試験体12の音波を照射する位置に照射し、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4cで電気信号に変換し、探傷信号回路3cを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断することを同時に実行する一連の検査工程にて、測定者がリアルタイムでコンピュータ2を操作し、測定位置を決定するようにする。まず、測定者は測定位置の選択、及び探傷信号回路3b及び探傷信号回路3cが生成する電気信号をパルス波信号、バースト信号、連続波信号から選択することを行う。
【0035】
その後、選択した測定位置、選択した電気信号を音波に変換して照射し、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4bで電気信号に変換し、探傷信号回路3bを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断する。同様に、試験体12からの音波の反射エコー(反射波)を音波探触子4cで電気信号に変換し、探傷信号回路3cを介してコンピュータ2が予めメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断する。ここでは、探傷信号回路3b及び探傷信号回路3cが生成する電気信号を選択して実行する際は、自動的にメモリ(記憶装置)に格納している正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比するように設定している。
【0036】
そして、これら一つの電子部品の測定位置に関する検査工程完了後に改めて測定者はコンピュータ2を操作し、次に測定する電子部品の測定位置の選択、及び探傷信号回路3bと探傷信号回路3cが生成する電気信号をパルス波信号、バースト信号、連続波信号から選択することを行う。この選択を実行後に、メモリ(記憶装置)に格納されたCAD情報を抽出して別の測定位置まで位置決め装置6b、位置決め装置6cがそれぞれ自動的に移動して、測定対象である試験体12の音波を照射する位置にプローブ5b、プローブ5cの先端部を接触させ、この測定位置の測定を行い、正常な時の反射エコーを電気信号に変換した電気信号と検査した電気信号とを対比することにより試験体12の欠陥を判断するといった検査工程を繰り返すことになる。本発明はこの一連の検査工程にて測定した測定位置、探傷信号回路3b及び探傷信号回路3cが生成する電気信号の種類、どのような順番にて様々な電子部品の各測定位置を選択したかを示す測定履歴、移動機構である位置決め装置6b及び位置決め装置6cがどのルートで移動したかを示す移動履歴(一連の検査工程にて測定した測定位置、探傷信号回路3b及び探傷信号回路3cが生成する電気信号の種類、測定履歴、移動履歴を総称して走査履歴とする)を自動的にメモリ(記憶装置)に格納することと、その走査履歴を再度読み出しで実行することを可能にした。ここで、これらの走査履歴はコンピュータ2にて測定者がどこの測定位置からどの測定位置までの履歴を保存するかを任意に設定できる。そして、走査履歴は複数、メモリ(記憶装置)に格納することが出来るため、多種類の電子部品を装着したプリント配線基板に関する情報を保存して、任意に選択した走査履歴を読み出して実行することで同じ検査が可能である。又、一度、メモリ(記憶装置)に格納された走査履歴はその走査履歴の途中から途中までに限定して実行させることも可能である。つまり、メモリ(記憶装置)に格納された走査履歴の中で、任意の音波探触子の測定位置、任意の測定履歴、任意の移動機構の走査履歴にて自由に範囲を設定し、実行できる。
【0037】
尚、上記ではプローブを先端に取り付けた音波振動子位置決め装置を2つのみ用いた例を示しているが、プローブを先端に取り付けた音波振動子位置決め装置を複数用意して検査すること、及び表示装置を複数設置するなどにより、全数検査を極めて短時間で高効率行うこと、任意な測定の組み合わせが可能になる。又、ここでは電子部品、半田、部品内蔵プリント配線板の内部の欠陥を測定して良否の検査をしているが、電子部品表面の毀損やプリント配線板一般の亀裂・破損等の測定も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は従来の媒質に液体を用いて欠陥を検出する超音波検査方法および超音波検査装置では、時間がかかり困難であったプリント配線基板に実装された部品および半田の欠陥の全数検査を行うことができ、実装済みプリント配線基板の定常全数検査等に有効に利用することができると共に、検査実施した走査履歴を保存して実行可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例である音波検査装置の構成図である。
【図2】本発明の別の実施例である音波検査装置の構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1:表示装置
2:コンピュータ
3a、3b、3c:探傷信号回路
4a、4b、4c:音波探触子
5a、5b、5c:プローブ
6a、6b、6c:位置決め装置
7a、7b、7c:支持体
8a、8b、8c:支持体
9a、9b、9c:支持体
10a、10b、10c:支持体
11:基台
12:試験体
13:プリント配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探傷信号回路により発生する電気信号を少なくとも1つ以上の音波探触子で音波に変換し、音波探触子に取り付けられたプローブの先端部を電子部品、半田若しくはプリント配線基板の何れかの測定物に直接、接触させた状態で、該音波を測定物に照射し、その反射波をプローブを介した少なくとも1つ以上の音波探触子にて電気信号に変換し、メモリに記憶された信号と対比することで、該測定物の良否を判断する音波検査装置であり、測定対象である電子部品の部品データを有するCADデータより前記プリント配線基板の測定対象である電子部品の部品位置データ及び部品形状データを取得して、これら電子部品の部品位置データ及び部品形状データより測定対象である電子部品の測定位置を抽出し、該測定位置まで移動機構により移動した後に音波探触子に取り付けられたプローブの先端部を測定対象である電子部品に接触させて測定することを特徴とする音波検査装置。
【請求項2】
前記音波探触子に取り付けられたプローブの先端部を測定対象である電子部品に接触させて測定した際の前記音波探触子の測定位置、測定履歴、移動機構の移動履歴からなる走査履歴をメモリに保存し、逐次、その走査履歴と同じ測定をすること、或いはそのメモリに保存された走査履歴から任意の前記音波探触子の測定位置、測定履歴、移動機構の移動履歴を抽出した抽出情報により測定することの何れかを実行することを特徴とする請求項1に記載の音波検査装置。
【請求項3】
前記探傷信号回路により発生する電気信号はパルス波信号、バースト信号、若しくは連続波信号の何れかを選択することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の音波検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−243913(P2009−243913A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87468(P2008−87468)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】