説明

音響インクジェット記録装置

【課題】 複数のアレイ状超音波ヘッドによるスリット状開口部からの液滴飛翔にあたって、隣接する液滴相互の干渉を防ぎ、液滴の飛翔方向や液滴径を安定化させ、印字品質を確保する。
【解決手段】 超音波振動子17をアレイ状に配設し、高周波音響波を各電極より発振出射し、スリット状開口部14よりインク液面に伝播到達した音響波の音響圧力でインクを液滴飛翔させるにあたって、その液滴出射部がスリット状の開口部を持ち、且つアレイ状超音波ヘッドは、複数列のアレイ配列とし、記録動作を複数列交互に行うことにより、各アレーヘッドの隣接振動子は同時には駆動させないことで、スリット状開口部より出射する液滴が相互に影響を与えないように、交互駆動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収束超音波によりインク液面より液滴を飛翔させて記録を行う音響インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の音響インクジェット記録装置としては、種々の構造を有するものが提案されている。
たとえば、画像信号に応じて超音波振動を生じさせ、インク層の微小部分に超音波エネルギを付与することにより、局所的に帯電インクミストを発生させて、記録印字を行うようにしたインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
すなわち、特許文献1には、超音波を液面付近に収束させ、インク霧滴発生とガイド電極による帯電化の条件で電界飛翔させる音響インクジェット方式が開示されている。しかし、この特許文献1では、飛翔させる液滴ごとにガイドノズルが必要で、高密度化が難しいという問題がある。
【0004】
これに対し、特許文献2には、ライン型の音響スリットジェット方式として呼ばれるものが提案されており、これは個別のドットごとのノズルやインク流路の隔壁を必要としない、いわゆるノズルレスの方式であるため、ラインヘッド化する上での大きな障害であった目詰まりの防止と復旧に対して有効である。
【0005】
さらに、この特許文献2では、複数の圧電素子の超音波印加タイミングに時間差をつけ、あたかも音響レンズのようにライン方向で超音波を重ね合わせ収束させることも可能となっている。
【0006】
また、この特許文献2では、所定の解像度を得るために、それよりも低解像度なアレイ素子の重ね合わせ収束を利用するため実装素子数は従来のインクジェット方式のノズル数よりも大幅に削減できるという利点を有している。
【0007】
さらに、特許文献3にも、超音波発生素子が凹面型構造を有し、これにより液面に超音波を収束させるようにした構造が記載されている。この従来構造でも、液面に超音波を収束させて、液面の表面張力に音響圧が打ち勝って液滴を飛翔させるようになっている。
【0008】
【特許文献1】特開昭62−85948号公報
【特許文献2】特開平11−91094号公報
【特許文献3】米国特許第4308547号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような従来方式の音響インクジェット記録装置では、その液滴飛翔生成のため、液滴表面に超音波が収束し、強力な音響圧を生じさせねばならず、音響波発生振動子からの音響面波を振動板自身を湾曲させるか、直後に収束型の凹面型音響レンズを配置させることが必要であった。
【0010】
しかし、この収束波は焦点を最大ピークとし、その前後では収束前の不十分な音響圧レベルであるので、たとえば使用中に液滴飛翔面が変動した場合、その音響波焦点が前後にずれ、その結果、不十分な圧力となり、液滴飛翔が大きくばらつくといった課題が内在している。そのため、高精度な液面制御部材、機器、技術が必要となり、高価な記録装置となっていた。
【0011】
また、この高精度なレンズ群を含む音響波インクジェットヘッドは、そのノズル部でのインク凝集による不具合が原因で、高価なヘッド全体を使用不能とし、廃棄せざるを得なかった。
【0012】
さらに、上述したスリット状開口での高密度電極アレイ群からの同時音響波出射にあたっては、インク面上で隣接メニスカス発生となり、相互波面が影響しあい、飛翔方向、液滴径などが不安定となる要因があった。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、複数のアレイ状超音波ヘッドによるスリット状開口部からの液滴飛翔にあたって、隣接する液滴相互の干渉を防ぎ、液滴の飛翔方向や液滴径を安定化させ、安定した印字品質を確保することができる音響インクジェット記録装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的に応えるために本発明に係る音響インクジェット記録装置は、超音波振動子をアレイ状に配設し、高周波音響波を各電極より発振出射し、スリット状開口部よりインク液面に伝播到達した音響波の音響圧力でインクを液滴飛翔させるにあたって、音響インクジェット記録装置は、その液滴出射部がスリット状の開口部を持ち、且つアレイ状超音波ヘッドは、複数列のアレイ配列とし、記録動作を複数列交互に行うことにより、各アレイ状超音波ヘッドの隣接振動子は同時には駆動させないことで、スリット状の開口部より出射する液滴が相互に影響を与えないように、交互駆動するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明に係る音響インクジェット記録装置によれば、液滴出射部がスリット状開口部を持ち、且つアレイ状超音波ヘッドは複数列のアレイ配列とするとともに、各アレイ状超音波ヘッドの隣接振動子を同時には駆動させないように記録動作を複数列交互に行うことにより、スリット状開口部から出射する液滴の相互干渉を防ぎ、従来装置に比べて、クリーニング性、分離構造ヘッドでの本体部とノズル部との位置精度を容易とするスリットノズル構造を実現させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、低解像度の素子配列で、n分割数分のn倍解像度の記録密度を実現する駆動法による記録ヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1ないし図4は本発明に係る音響インクジェット記録装置の一実施形態を示す。
これらの図において、本発明による音響インクジェット記録装置におけるカラーインクジェットヘッドの構成は、図1および図2等に示すようになっている。
【0018】
これを簡単に説明すると、図1中12−Aは超音波出射部、超音波収束用音響レンズが一体構成とされたヘッド駆動・回路部、12−Bはその超音波伝播下流側に密着配設され、所望のインクを供給し、該インク滴を出射するノズルを有するカートリッヂ・ノズル一体構成部である。
【0019】
ここで、上述したヘッド駆動・回路部12−Aにおいて、符号17は超音波発生素子群、18はUS(Ultrasonic)駆動パルス、20はUS(Ultrasonic)駆動部、5は音響レンズ、21は超音波伝播液材である。
【0020】
また、上述したカートリッヂ・ノズル一体構成部12−Bにおいて、符号14は記録用紙等の受像担持体13に対向するスリットノズル、15はインクチャンバである。
【0021】
ここで、従来一般的な音響インクジェット記録装置のヘッド構成では、インクチャンバ15内に入射する音響波は収束段階の途中の波形密度であり、前述のごとく、スリットノズル14位置での音響エネルギにばらつきが内在する要因を有していた。
【0022】
この実施形態では、このような問題を解消するための部材として、ヘッド駆動回路部12−Aの天井板材(音響レンズ支持板9)中でその音響波伝播経路に、所定の第2の音響レンズ8を配設し、その位置で前記収束音響波を平行ビーム化するように波形整形させている。
【0023】
その結果、カートリッヂ・ノズル一体構成部12−Bへ入射する音響波は安定した高収束ビームとなっており、液面のばらつきにかかわらず安定した液滴飛翔を実現させることが可能となっている。
【0024】
また、上述したような構成によるヘッドにおいて、図2に示すように、第2の音響レンズ8を含むヘッド駆動・回路部12−Aと前記カートリッヂ・ノズル一体構成部12−Bとが分離可能な構成(分離線Aで分離可能)となっており、カートリッヂ・ノズル一体構成部12−Bのインク目詰まり等による印字不能状態では、前記ノズル部(12−B)を廃棄し、新規ノズル部(12−B)と交換可能に構成している。
【0025】
すなわち、この実施形態では、従来インクジェット記録装置の不具合の大半はインクノズル部でのインクの凝集固化によるインク滴射出不能状態がインクジェットヘッド本体の寿命となり、高価な部品全体を廃棄せざるを得なかった状況を効果的に解決し得る手段を得ることができるものである。
【0026】
換言すると、分離線A部より、前記構成部12−Aと12−Bを分離構造とすることにより、前記不具合部ノズル部のみを交換し、新規なノズル部とする、すなわち高価なヘッド・駆動部を温存し、記録を再開することを可能とすることができるのである。
【0027】
なお、図3(a1)、(a2)は本発明装置の特徴的な構成要素の音響波ビーム化レンズ特性を説明するための概要図である。
これを簡単に説明すると、平板の圧電振動子3は、音響収束レンズ5と密着して、そのレンズ面より収束音響波が出射されるように構成されている。
【0028】
そして、本発明の第2の音響レンズ8を備えていない従来装置によれば、図3(b1)、(b2)に示す収束音響波の伝播収束特性から明らかなように、前記収束音響波は、初期液面位置6aでその音響収束率が最大Pとなるように第1の音響波集束レンズ5がレンズ設計されており、図示の通り、その前後では収束率が不十分なものとなっている。上記の図3(b2)に音響波伝播路にそって、その音響圧力が収束するにつれて上昇する特性を示す。
【0029】
図中7cが縦軸の音響圧力を示し、一点鎖線7c_thが液滴飛翔に対して、その液面での表面張力とほぼ等しい強さを表している。この7c_thレベルよりも大なる強さの音響収束圧力があって初めて、液面より液滴が飛翔する力をもつこととなる。
図3(b1)、(b2)により、収束音響波が6aの位置にきて初めて、閾値7c_thをこえる音響圧力が発生し、液滴生成する設定となっていることが判る。
【0030】
しかし、上述した第2の音響レンズ8を備えていない従来構造では、液面レベルの制御が不安定であったり、液滴飛翔が増大し、液使用量が増加し、その結果、たとえば液面がZ量だけ下降して、液面6bの位置に変動した場合、その位置での音響圧は飛翔設計値に不十分な量であり、液滴量が不足か、液滴速度不足などの不都合な液滴条件で飛翔することとなり、その結果による記録濃度不足、濃度ばらつきなどの低品質な印字記録となっていた。
【0031】
そして、本実施形態での装置では、このような不均一な音響圧、収束音響波エネルギの不具合を解消しようとしている。すなわち、図3(a1),(a2)に示すように、収束音響レンズ5と液面6aとの間に、第2の音響波修正レンズ8を配置する。この第2の音響レンズ8は前記収束音響波をコリメート(平行ビーム化)するような凸レンズ形状の音響レンズである。
【0032】
そして、超音波振動子3より出射された音響平面波は密接された第1の音響波収束レンズ5に入射して、その第1の音響波収束レンズ5の出射面より出射されるときにそのレンズ凹面形状に対応して、収束波型の音響波となる。この伝播液中に出射された収束音響波は、その凹面波面のまま下流に配設された第2の音響レンズ8に反射することなく、入射される。これは、前記凹面波面と第2の音響レンズ8の凸レンズの外面が進行軸方向に対して垂直波面どうしとなっているように形状設定されているからである。
【0033】
さらに、前記第2の音響レンズ8内を伝播収束している音響波は第2の音響レンズ8の外面7a点に到達する。そして、レンズ外面7a位置で、前記音響波の収束量が最大ピークとなるよう、そのレンズ形状を予め設計配置しておくことにより、図3(a2)に示すように、音響圧力は7a位置で最大値に到達していることが判る。
【0034】
次に、この第2の音響レンズ8の材質設計に関し、その密度ρと体積弾性率Kを特定することにより、そのレンズ内の音響波の音速VsはVs=(K/ρ)1/2と定義される音響波速度を有している。さらに、固体と液体の界面での音響波の屈折特性でスネルの法則という特性がある。
【0035】
今、レンズ8から超音波伝播液材21に音波が進行するときの界面での特性として、レンズ8内での音速をV1、界面への入射角をθ1、超音波伝播液材21内の音速をV2、界面からの出射角をθ2とした時、スネルの法則は
Sinθ2/V2=Sinθ1/V1 ・・・・・(1)
であらわされる特性をもつ。
【0036】
したがって、(1)式より、図3(a1)に示すように、第2の音響レンズ8の音速V1と伝播液材21の音速V2とではV1>V2が成り立つことより、レンズ内での収束波は界面に対し、図3(a1)に示すように入射角θ1となり、スネルの法則より、界面より出射する音響波の出射角度は図3(a1)に示すようにθ2というθ1>θ2なる屈折が生ずることとなる。
【0037】
<材料採用値例>
第2の音響レンズ8:ガラスSiO2、密度2.3、音速V1=5440m/sec
伝播液材21:蒸留水、密度1.0、音速V2=1500m/sec
【0038】
したがって、たとえば出射角が垂直軸に対し2度となるようにコリメート(平行ビーム化)したい時は前記パラメータ値を(1)式より導いて、入射角度を7.3度となるように第1音響レンズ凹面曲率を調整すればよい。
【0039】
以上のように、前記材料値を選定して角度を設定することは、第2の音響レンズ8界面で音響波を拡散する方向であり、今7a点で、収束最大となる音響波は出射時その収束方向を拡散方向にコリメート(平行化)されていることを意味する。
【0040】
この拡散(屈折率)は収束角度θ1,音速V1,V2に依存することより、逆に、このパラメータを適正設計値として設計採用することにより、所望の平行ビーム化を達成することが可能となる。
【0041】
ここで、界面7aで最高音響圧力となった音響波は図3(a2)に示すように、そのビーム形状を維持したまま、伝播液材21中を進行することとなり、そのまま液面6aに到達する。
前記従来例で説明したような液面変動に伴う音響圧力の変動は、図3(a2)に示すように、液面6aから6bに変動しても、平行ビームであるため、その音響圧力は変化・減少することなく、到達できるため、従来に比し、格段の安定した飛翔圧力を形成することが可能となり、それにより安定した液滴飛翔を達成することが可能となる。
【0042】
上述した構成によれば、従来の音響インクジェット駆動構成に比し、液面に入射する音響波のぱらつきを解消でき、安定した記録品質を得ることが可能となった高価なレンズ群を含むヘッド駆動・回路部12−Aと消耗的なインクノズル・カートリッヂ部12−Bを分離可能とし、インクノズル・カートリッジ部12−Bのみを交換廃棄することを可能としたことにより、ヘッド寿命を大幅に延長させ得るものである。
【0043】
また、ヘッド駆動・回路部12−Aとノズル・カートリッヂ部12−Bとで構成された装置において、その境界部Aの部材に第2の音響レンズ8を同時形成でき、結合と分離に支障がなく、かつ効果的で安定な音響波ビーム整形を可能とすることができるとともに、第2のレンズ8の上流面を直接、音響伝播液材に露呈させ、超音波伝播を効果的に実現させることができる。
【0044】
図4は本発明を特徴づける記録駆動構造を説明するためのものである。
すなわち、図4(a)は本発明装置による装置構成を示し、同図(b)は従来の駆動法でアレイ状素子を同時駆動させている場合の不具合例を説明するものである。
【0045】
これを簡単に説明すると、ここで図4(a)において液滴出射口は、スリット状ノズル14である場合である。そして、アレイ配列の超音波発生素子群17に高周波駆動パルス群18がそれぞれの素子に入力されると、振動子より第1の音響レンズ5を介して、収束型の超音波が超音波伝播液材21の液中に出射される。
【0046】
さらに、収束しながら、第2の音響レンズ8に入射した音響波はそのロッドレンズ特性により、収束波をビーム波に成形させる機能を有し、その収束ビーム波がインクチャンバ15に入射し、その直進上のインク界面に配設されたスリット状の開口部14より、その界面のインクの表面張力を上回る音響放射圧によって、液面が柱状(メニスカス状)に突出し、その先端が引きちぎれ、液滴となり飛翔してゆく。
【0047】
本発明装置でのインクジェット記録プロセスを、以下に説明する。
すなわち、超音波発生素子群17は、30×300μm素子寸法のPZT薄膜を挟んだ電極で、アレイ状に24μmスペースで配列している。その上に、SiO2系の硝材を凹面形状化し、収束音響レンズとなるよう曲率200μmレベルの凹面形レンズを接続する。ヘッド駆動・回路部12−Aの上面には、第2の音響レンズ8を上面材の中に、または露出して配設しているが、ここでは、φ100μmのロッドレンズをインク伝播液材21中に露出させる配置とする。
【0048】
ロッドレンズによる第2の音響レンズ8の表面までの第1音響レンズ5の面からの距離はレンズ深さ50μm、音響伝播液材の深さ50μmとし、ロッドレンズによる第2の音響レンズ8に入射した収束音響波を約φ80μm径のビームに成形させている。
【0049】
さらに、カートリッヂ・ノズル一体構成部(インクノズルカートリッヂ部)12−Bをその駆動部(ヘッド駆動・回路部)12−Aと接合して、前記ビームがφ80μm径となって、直進上にインクチャンバ15に入射させている。インクチャンバ15の上面には幅150μmのスリット状開口部14を配設している。
【0050】
ここで、インク液滴形成の駆動条件は、US(Ultrasonic)駆動部20より各圧電振動子17に周波数250MHzの単パルスを10から100パルス連続印加したバースト波(高周波パルスのかたまり)を入力している。このバースト波群の一セットパルスが液滴の一滴を飛翔させるエネルギ単位となっている。
【0051】
また、超音波の直進性として、100MHz以上の高周波超音波は直進性を有することが知られており、本発明もこの直進性を利用して、アレイ電極の配列ピッチを30μmレベルとしても音響波径と解像度が300dpi(φ87μmドット径)が維持できることを利用している。
【0052】
以上の構成において、アレイ配列の各圧電素子17に同時に駆動バースト波を入力した時に、図4(b)のような不具合が確認される。
すなわち、この図4(b)はスリット開口部14を上からみた概要図であるが、隣接する3素子D1,D2,D3を同時に駆動し、液滴飛翔させると、隣接素子面上の飛翔面で液滴飛翔時に周囲にひろがる表面波が互いに干渉しあい、隣接液滴飛翔を阻害する傾向があることが観察される。なお、この図では、中央のD2部の液滴が両側より広まる表面波の影響をうけ、液滴径が小径化されている。
【0053】
このように上述した構成による音響インクジェット記録装置では、スリット状開口14を設けることにより、ノズル部のクリーニング性を容易にする利点や、分離構造とした時の位置合わせ精度を容易化する利点を有する反面、隣接ドット間の影響による液滴飛翔の不安定性が出てしまう欠点を同時に有している。
本発明はこのような不具合を効果的に解消し、高解像度な記録を可能とする手段を提供しようとするものである
【0054】
図4(c)、(d)は本発明装置による構成を示している。
すなわち、これらの図に示す複数のアレイ状駆動素子ヘッド{図4(c)に示すもの}と{図4(d)に示すもの}をその圧電電極配列としては交互に配置するように、同解像度ヘッドで、電極ピッチの半ピッチ分ずらした配列を配設する。
【0055】
このように配設された2つのヘッド{図4(c)に示すもの}と{図4(d)に示すもの}に、一ラインデータを偶数番目と奇数番目データに分割し、それぞれのデータ群を前記配列ヘッド{図4(c)に示すもの}と{図4(d)に示すもの}に流し、印加することにより、前記不具合の状況が解消された相互に非干渉の液滴飛翔を可能とすることができるものである。
【0056】
たとえば偶数データ印字ヘッド{図4(c)に示すもの}にて、D2,D4の同時駆動、および奇数データ印字ヘッド{図4(d)に示すもの}にてD1,D3を同時駆動させても、隣接距離が従来装置でのヘッド配置と比較して、2倍の距離をもっているヘッドのため、ヘッド内での隣接ドット干渉を効果的に防止していることが理解される。
【0057】
そして、以上のような本発明装置によれば、複数列のアレイ状超音波ヘッドの記録動作を複数列交互に行い、各アレーヘッドの隣接振動子を同時には駆動させないことにより、スリット開口部より出射する液滴が相互に影響を与えないようにすることができ、これによりスリット状開口部14(スリット状ノズル)の利点を有し、且つ高解像度なインク液滴飛翔を可能とすることができることとなる。
【0058】
以上の構成によれば、従来の音響インクジェット記録装置での駆動に比べて、ヘッド部のクリーニング性、分離構造ヘッドでの本体部とノズル部との位置精度を容易とするスリットノズル構造を実現させることが可能となるものである。
【0059】
また、上述した構成によれば、低解像度の素子配列で、n分割数分のn倍解像度の記録密度を実現するインクジェット記録装置を得ることができるものである。
【0060】
図5は本発明装置において、さらに記録を効果的にするための変形例を示す。すなわち、この例では、ヘッド・駆動回路部12−Aでの上部音響レンズ支持板材9に、前記音響波ビーム化ロッドレンズを内蔵化させるとともに、そのレンズ下面の表面を直接、前記音響波伝播液材21内に露呈させる構造とすることにより、前記音響振動子から出射された収束音響波を効果的に第2のロッドレンズ8内に伝播させることが可能となる。
【0061】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、音響インクジェット記録装置を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
たとえば本発明による記録ヘッド、駆動方法により、カラー色数分のヘッド構成を設けることにより、効果的なフルカラー印字が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】(a),(b)は本発明に係る音響インクジェット記録装置の一実施形態を示すインクジェットヘッドの概略構成図およびその正面図である。
【図2】本発明に係る音響インクジェット記録装置の要部を示す拡大図である。
【図3】(a1),(a2)は本発明に係る音響インクジェット記録装置の一つの実施の形態を示す、(b1),(b2)は従来装置での不具合を説明するための概要図および特性図である。
【図4】(a)は本発明装置の要部構成を説明するための概略図、(b)はその駆動時の不具合を説明するための図、(c),(d)はその駆動動作の特徴事項を説明するための図である。
【図5】本発明に係る音響インクジェット記録装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
3…超音波振動子列、4…スリット開口部、5…(第1の)音響波収束レンズ、6a…液面a、6b…液面b、Z…液面変動量、7a…音響波収束焦点、7b…音響波収束巾、7c…音響波強度、7c_th…液滴飛翔強度閾値、θ1…入射角、θ2…屈折角、8…第2の音響レンズ、9…音響レンズ支持板、12−A…ヘッド駆動・回路部、12−B…カートリッヂ・ノズル一体構成部、13…受像担持体、14…スリットノズル、15…インクチャンバ、17…超音波発生素子群、18…US駆動パルス、20…US駆動部、21…超音波伝播液材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子をアレイ状に配設し、高周波音響波を各電極より発振出射し、スリット状開口部よりインク液面に伝播到達した音響波の音響圧力でインクを液滴飛翔させる音響インクジェット記録装置において、
前記音響インクジェット記録装置は、その液滴出射部がスリット状の開口部を持ち、
且つアレイ状超音波ヘッドは、複数列のアレイ配列とし、
記録動作を複数列交互に行うことにより、
各アレイ状超音波ヘッドの隣接振動子は同時には駆動させないことで、スリット状の開口部より出射する液滴が相互に影響を与えないように、交互駆動するように構成したことを特徴とする音響インクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−69698(P2010−69698A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238999(P2008−238999)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】