音響システム
【課題】音響システムのスピーカの数を増やしても信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させないことを目的とする。
【解決手段】アレイスピーカを構成する複数の主スピーカ1m〜8mの各スピーカの2つの正極及び負極端子に増幅器1a〜8aが接続され、それぞれブリッジ駆動されている。主スピーカ1m〜8mを補間するための副スピーカ1s〜7sを主スピーカ1m〜8mの間にそれぞれ設置し、副スピーカ1s〜7sの正負電極をそれぞれ隣り合う2つの主スピーカ1m〜8mの同極の端子に接続する。一の副スピーカには、隣り合う2つの主スピーカに与えられる信号の平均値が入力され、該一の副スピーカは、隣り合う2つの主スピーカから放射される波面を補間する。
【解決手段】アレイスピーカを構成する複数の主スピーカ1m〜8mの各スピーカの2つの正極及び負極端子に増幅器1a〜8aが接続され、それぞれブリッジ駆動されている。主スピーカ1m〜8mを補間するための副スピーカ1s〜7sを主スピーカ1m〜8mの間にそれぞれ設置し、副スピーカ1s〜7sの正負電極をそれぞれ隣り合う2つの主スピーカ1m〜8mの同極の端子に接続する。一の副スピーカには、隣り合う2つの主スピーカに与えられる信号の平均値が入力され、該一の副スピーカは、隣り合う2つの主スピーカから放射される波面を補間する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間は2つの耳に入力された音の大きさの違いや時間差で音響空間を把握している。このことを利用して左右2つのスピーカで音空間を表現する方法、すなわちステレオ記録が一般的に用いられている。この音響システムでは、左右のスピーカから放射する音の音圧に差をつけ、あたかもスピーカの間の位置から音がしているかの如く知覚させる方法、すなわちパンニングも用いられている。また、間隔をおいて設置されたマイクに到達する時間差を利用して、同様の効果を得る方法も用いられている。
【0003】
しかしながら、左右のスピーカから放射された音が距離に応じて減衰すること、及びそれらの音の伝播時間に差が生ずること等により、聴取者の位置に応じて、左右のスピーカからの音に音圧差や時間差が存在する。それゆえ、意図したパンニング効果が得られる位置は、設置された左右2つのスピーカから等距離にある中央線上のみであり、それ以外の位置で音を聴いている聴取者は、その聴取者に近い位置にあるスピーカから音が放射されているかのように知覚する。
【0004】
この課題を解決する方法として、例えば非特許文献1には、WFS(Wave Field Synthesis)技術によりアレイスピーカを用いて音の波面を合成する音響システムが記載されている。WFS技術は、複数のスピーカを横一列に設置したアレイスピーカを用い、個々のスピーカから放射される音を重ね合わせることにより音の波面を合成し、音の波面の中心点に音源位置を知覚させる技術である。WFS技術は音の波面自体を再現する技術であるので、広い範囲で意図した位置に音源を知覚させることができる。ここで、アレイスピーカから発生させる音の波面の中心点を仮想音源と呼ぶ。
【0005】
アレイスピーカを構成する複数のスピーカは、互いの設置間隔が狭いほど周波数が高い音の波面を再現できる一方、アレイスピーカの設置幅が広いほど音の波面を再現できる空間が広くなる。アレイスピーカに含まれるスピーカの口径は、物理的にスピーカの設置間隔以下であるので、周波数が高い音の波面を再現する音響システムを実現しようとするには、個々のスピーカの口径を小さくせざるを得ない。一方、設置条件からスピーカの口径が制約を受けることも多い。特に、テレビにスピーカを組み込む場合にはスピーカの存在を目立たせないために、スピーカの高さ又は幅を短くすることにより面積を小さく抑え、その短辺に対応する口径の小さなスピーカを使用する方法がしばしばとられる。また別の理由として、信号処理部を含めた音響システム全体のコスト削減のためスピーカの設置間隔を広くとり、口径が比較的小さなスピーカを選択することがある。
【0006】
しかし、口径の小さなスピーカの場合、その振動板面積が小さいゆえ有限の振動板振幅で得られる音圧には限界がある。したがって、口径の小さなスピーカでは一般的に高い音圧が発生できないこと、及び再生周波数帯域も低音側が不十分であること等の音響特性上の課題を有する。また、振動板振幅自体の大きさも、その構造上、口径の大きなスピーカの振動振幅幅自体よりも小さい。高い音圧を得るには振動板面積の増大が有効であるが、スピーカの口径を大きくできない何らかの制約がある場合、十分な音圧を得るために複数のスピーカを並列又は直列に接続して、同じ信号で複数のスピーカを駆動し、等価的に振動板面積を増大させる手法がとられる。ところが、同じ信号で複数のスピーカを駆動すると、スピーカからの放射波が干渉することにより音波の指向性が高くなる。アレイスピーカは個々のスピーカから放射される音を重ね合わせることにより音の波面を合成するものであるゆえ、各々のスピーカの放射特性を無指向性にするのが適切である。よって、同じ信号で複数のスピーカを駆動することは音の波面を乱す原因となり、アレイスピーカ本来の機能を達成するのに妨げとなる。一方、低音側の再生周波数帯域を拡大するためにはスピーカの口径を大きくすることが有効であるが、同様の問題が生じ、現実的でない場合が多い。
【0007】
また、アレイスピーカの場合、アレイスピーカを構成する複数のスピーカの間隔が広いと、アレイスピーカに近づいた聴取者は自分の近くにあるスピーカの位置に音源を知覚してしまうという問題がある。これは、再現すべき波面に比べて実際に放射される波面の曲率が小さいことが原因である。WFSでは個々のスピーカの発する波面を重ね合わせることにより波面を再現するが、波面を重ね合わせるのに十分なスピーカ密度がないと波面を滑らかに再現できない。換言すると、波面を滑らかに再現するためには、スピーカの間隔を狭めてスピーカ密度を十分確保する必要がある。このためには、スピーカから放射される波面を補完するスピーカを追加することが考えられる。
【0008】
以上をまとめると、アレイスピーカを用いた音響システムとしてより高い周波数の音をより広範囲で再現するには、小口径のスピーカをできるだけ狭い間隔で且つできるだけ多く設置し、それらのスピーカを制御する必要がある。しかし一方で、低い周波数の音について高い音圧を得るためには、できるだけ大きな口径を有するスピーカをできるだけ多く音響システム内に組み込む必要がある。このような、スピーカの口径の大小と周波数帯域の広狭との関係に起因する課題を解決する方法として、例えば特許文献1には、周波数帯域毎に口径が異なる複数のスピーカを組み合わせてアレイスピーカを構成し、音の周波数を広帯域化した装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−67301号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ベルクハウト、ド ブリース、フォーゲル(A. J. Berkhout, D. de Vries, and P. Vogel)著、「アコースティック コントロール バイ ウェーブフィールド シンセシス (Acoustic control by wave field synthesis)」(オランダ)、第93(5)版、ジャーナル・オブ・ジ・アコウスティカル・ソサイエティ・オブ・アメリカ(J. Acoust. Soc)、1993年5月、p.2764−2778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の装置においては、アレイスピーカを構成する複数のスピーカに対応する信号処理系機器及びスピーカを駆動する増幅器がスピーカの数だけ必要となり、信号処理系機器及び増幅器のハードウェア量が増加し、音響システムの構築コストが増大する。
【0012】
また、音響システムを構築するに当たり何らかの制約により小径のスピーカを用いる場合、それらのスピーカの設置間隔を狭めることにより等価的に振動板面積を大きくし、それによりスピーカの出力音圧を上げることはできる。しかし、振動板面積を大きくするには小径のスピーカの個数を増やす必要があり、それに伴い信号処理系統機器及び増幅器の個数が増え、音響システムのハードウェア量が増大し、ひいては、音響システム構築コストが増大する。
【0013】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、音響システムにおいて、スピーカから放射される波面を補間するためにスピーカの個数を増やした場合であっても、それに伴う信号処理系統機器及び増幅器のハードウェア量の増加をもたらさない音響システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の音響システムは、少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、該二つの入力端子から入力された信号に基づき前記二つの第二スピーカを駆動する駆動装置とを備え、前記二つの第二スピーカ夫々が有する正極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の正極端子に各接続され、該二つの第二スピーカ夫々が有する負極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の負極端子に各接続され、前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、信号処理系統及び増幅器一系統に対して一系統接続されたスピーカ群に対し、系統間を補間する位置に別のスピーカ群を設けて入力信号の数より多くのスピーカ群を駆動する場合であっても、信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させずに、当該系統間の平均値を当該別のスピーカ群に印加することにより当該一系統接続されたスピーカ群から放音される波面を補間することができる。
【0016】
本発明の音響システムは、少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、該入力端子から入力された信号に基づき前記アレイスピーカを駆動する駆動装置と、前記二つの第二スピーカのいずれか一方のスピーカが有するいずれか一方の端子と該端子に対応する入力端子との間、又は他方の第二スピーカが有する他方の端子と該端子に対応する入力端子との間に介挿され、前記二つの入力端子に入力された信号のいずれか一方の信号の位相を反転する回路とを備え、前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、信号処理系統及び増幅器一系統に対して一系統接続されたスピーカ群に対し、系統間を補間する位置に別のスピーカ群を設けて入力信号の数より多くのスピーカ群を駆動する場合であっても、信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させずに、当該系統間の加算値を当該別のスピーカ群に印加することにより当該一系統接続されたスピーカ群から放音される波面を補間することができる。
【0018】
本発明の音響システムにおいて、前記一の第一スピーカは、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカから等距離にあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、一系統に含まれる二個のスピーカ群から同距離に別系統の一個のスピーカを設置することにより、当該別系統のスピーカから放射される波面の誤差を少なくすることができる。
【0020】
本発明の音響システムは、前記一の第一スピーカは、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々が有するインピーダンスの4倍のインピーダンスを有することを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、一のスピーカのインピーダンスを、該一のスピーカと隣り合う二個のスピーカがそれぞれ有するインピーダンスの4倍にすることにより、各入力端子に対し同じ信号が入力された際、接続された該一のスピーカ及び該一のスピーカと隣り合う二個のスピーカそれぞれに供給される電力をそろえることができる。
【0022】
本発明の音響システムは、少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、一の列をなすように配置された複数の第二スピーカと、該複数の第二スピーカとは別の列をなすように配置され、該複数の第二スピーカの数より少ない一又は複数の第一スピーカと、一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、該二つの入力端子から入力された信号に基づき前記二つの第二スピーカを駆動する駆動装置とを備え、前記二つの第二スピーカ夫々が有する正極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の正極端子に各接続され、前記二つの第二スピーカ夫々が有する負極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の負極端子に各接続され、前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、信号処理系統及び増幅器一系統に対して一系統接続された一列のスピーカ群に対し、系統間を補間する位置に別のスピーカ群を当該一系統のスピーカ群とは別の列に設けて入力信号の数より多くのスピーカ群を駆動する場合であっても、信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させずに、当該系統間の平均値を当該別のスピーカ群に印加することにより当該一系統のスピーカ群から放音される波面を補間することができる。
【0024】
本発明の音響システムは、少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、一の列をなすように配置された複数の第二スピーカと、該複数の第二スピーカとは別の列をなすように配置され、該複数の第二のスピーカの数より少ない一又は複数の第一スピーカとを備え、一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、該入力端子から入力された信号に基づき前記アレイスピーカを駆動する駆動装置と、前記二つの第二スピーカのいずれか一方のスピーカが有する正極端子又は他方の第二スピーカが有する負極端子のいずれか一方との間に介挿され、前記二つの入力端子に入力された信号の位相を反転する回路とを備え、前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、信号処理系統及び増幅器一系統に対して一系統接続された一列のスピーカ群に対し、系統間を補間する位置に別のスピーカ群を当該一系統のスピーカ群とは別の列に設けて入力信号の数より多くのスピーカ群を駆動する場合であっても、信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させずに、当該系統間の加算値を当該別の列のスピーカ群に印加することにより当該一系統のスピーカ群から放音される波面を補間することができる。
【0026】
本発明の音響システムにおいて、第一スピーカと接続され、該第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカは、該第一スピーカから等距離にあることを特徴とする。
【0027】
本発明にあっては、二列に配置されたスピーカ群であって、一系統に含まれる一列の二個のスピーカ群から同距離に別列の別系統の一個のスピーカを設置することにより、当該別系統のスピーカから放射される波面の誤差を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、例えば15個のスピーカに対して、8チャンネル分の信号処理系及び8チャンネル分の増幅器で音響システムを実現することができ、信号処理系等及び増幅器のハードウェア量を増やさなくとも波形を補間するスピーカを追加できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】アレイスピーカの外観例を示す説明図である。
【図2】仮想音源位置とアレイスピーカの位置を模式的に示す説明図である。
【図3】音響システムの全体構成例を示すブロック図である。
【図4】実施の形態1に係るアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
【図5】アレイスピーカと仮想音源の位置関係の一例を示す説明図である。
【図6】仮想音源から100Hzの正弦波を放射することを想定した時の各種波形を示す説明図である。
【図7】別のアレイスピーカの外観例を示す説明図である。
【図8】アレイスピーカと仮想音源の位置関係の一例を示す説明図である。
【図9】副スピーカに与える信号の周波数に帯域制限をかけた場合のアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
【図10】実施の形態2に係るアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
【図11】副スピーカに与える信号の周波数に帯域制限をかけた場合のアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施の形態を具体的に説明する。
実施の形態1
図1はアレイスピーカの外観例を示す説明図である。
図1において、アレイスピーカ1は、主スピーカ(第一スピーカ)1m〜8m及び副スピーカ(第二スピーカ)1s〜7sを有する。主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ2s〜7sのそれぞれはアレイスピーカ1の正面のバッフル板1b上に交互に設置される。つまり、アレイスピーカ1は、その筐体の正面に対して、左から1m、1s、2m、2s、3m、3s、4m、4s、5m、5s、6m、6s、7m、7s、8mの順で各スピーカが配置される構成をとる。
【0031】
主スピーカ1m〜8mは入力信号により駆動され、副スピーカ1s〜7sは補間信号により駆動される。入力信号及び補間信号の詳細については後述する。
【0032】
図2は仮想音源位置とアレイスピーカの位置を模式的に示す説明図である。
図2において、アレイスピーカ1の両側にはステージ及び聴取席がそれぞれ設けられ、ステージには仮想音源A1が設置され、聴取席には聴取者B1〜B3が設置されている。AL1は仮想音源A1の位置を示す。
WFSによれば、アレイスピーカ1を構成するスピーカ1m〜8m、1s〜7sが仮想音源A1から広がる音の波面を再現することによって、聴取者B1〜B3は、仮想音源A1の位置にあたかも音源があるかのように知覚することができる。
【0033】
図3は音響システムの全体構成例を示すブロック図である。
概略すると、音響システムは、k個のマイク11〜1k、波面合成信号処理部9、増幅部4及びアレイスピーカ1を有する。波面合成信号処理部9は、レベル調整部5、制御部6、位置情報保持部7、操作部8及び信号処理部3を有する。また、アレイスピーカ1は15個のスピーカ1m〜8m及び1s〜7sから構成されている。ここで、kは1以上の整数であるとする。
【0034】
レベル調整部5は、k個のレベル調整モジュール51〜5kを有する。
信号処理部3は、k×8個の遅延器及び可変利得増幅器311〜3k8及び8個の加算器711〜718を有する。
レベル調整モジュール51は、マイク11から入力した音声信号を増幅した後に、第一系統の信号として8個の遅延器及び可変利得増幅器311〜318に与える。レベル調整モジュール52は、マイク12から入力した音声信号を増幅した後に、第2系統の信号として8個の遅延器及び可変利得増幅器321〜328に与える。レベル調整モジュール5kは、マイク1kから入力した音声信号を増幅した後に、第k系統の信号として8個の遅延器及び可変利得増幅器3k1〜3k8に与える。
遅延器及び可変利得増幅器311〜318は、第1系統の信号を遅延させ、可変利得増幅する。また、遅延器及び可変利得増幅器321〜328は、第2系統の信号を遅延させ、可変利得増幅する。また、遅延器及び可変利得増幅器3k1〜3k8は、第k系統の信号を遅延させ、可変利得増幅する。このように、遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8それぞれは、第1系統〜第k系統の信号を遅延させ、可変利得増幅するが、その遅延量及び増幅率は後述する制御部6により算出される。遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8は、制御部6により算出された遅延量及び増幅率に従って第1系統〜第k系統の信号を個別に遅延させ、可変利得増幅する。
【0035】
このように、マイク11〜1kに対応する第1系統〜第k系統の信号のそれぞれは、遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8にて遅延され、可変利得増幅される。遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8にて遅延及び可変利得増幅された信号は、加算器711〜712にて加算され、第1〜第8チャンネルの信号に分離される。そして、分離された第1〜第8チャネルの信号は増幅部4に与えられる。
【0036】
加算器711〜712について更に詳しく説明する。
加算器711は、遅延器及び可変利得増幅器311〜3k1の出力信号を加算し、第1チャンネルの信号として増幅部4に与える。加算器712は、遅延器及び可変利得増幅器312〜3k2の出力信号を加算し、第2チャンネルの信号として増幅部4に与える。加算器718は、遅延器及び可変利得増幅器318〜3k8の出力信号を加算し、第8チャンネルの信号として増幅部4に与える。このように、信号処理部3は、第1〜第8チャンネルの信号を増幅部4に与える。
【0037】
増幅部4は、後述するアレイスピーカ駆動部(駆動装置)を有する。アレイスピーカ駆動部は、入力した第1〜第8チャンネルの信号を増幅し、増幅された信号を対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与える。そして、主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜8sは、アレイスピーカ駆動部から与えられた信号に基づいて音の波面を放射する。
【0038】
操作部8は、操作者が音響システムの操作を行うための操作機器であり、位置情報入力部81及び音量調整部82を有する。位置情報入力部81は、操作者によって入力される仮想音源位置及びアレイスピーカ1を構成するスピーカ1m〜8m及び1s〜7sの位置からなる位置情報を入力する。位置情報保持部7は、操作部8から受け取った位置情報を制御部6に与える。音量調節部82は、操作者による操作にしたがって、レベル調整モジュール51〜5kの各々に対して増幅率を与え、各音声信号が適切な音量でかつ音量バランスで聴取席に拡声されるようにする。
【0039】
制御部6は、その距離に応じた遅延量及び増幅率を演算し、アレイスピーカ1を構成するスピーカ1m〜8m及び1s〜7sにそれぞれ対応して設けられた信号処理部3内の遅延器及び可変利得増幅器311〜312、321〜328、・・・、3k1〜3k8に演算により求めた遅延量td 及び増幅率Gを設定する。
遅延器に設定される遅延量td 及び可変利得増幅器に設定される増幅率Gは、仮想音源A1と各スピーカ1m〜8m及び1s〜7s間の距離をdとすると、以下の式に従って算出される。
遅延量 td =d/c cは音速
増幅率 G=dr rは距離減衰定数(0>r>−2)
以上のように、信号処理部3は、例えば仮想音源A1に対応して入力された音声信号11に対して遅延量と増幅率に基づいた処理を施し、当該処理が行われた信号を増幅部4に与える。
【0040】
図4は、実施の形態1に係るアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
アレイスピーカ駆動部4vは、図3に示す増幅部4に含まれる装置であり、スピーカ1m〜8m及び1s〜7sに電力を供給する機能を有する。アレイスピーカ駆動部4vは、8個の入力端子1n〜8n及び8個の増幅器1a〜8aを有する。入力端子1n〜8nは、それぞれ増幅器1a〜8aに接続され、増幅器1a〜8aはそれぞれ対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに接続される。
【0041】
以下に増幅器1a〜8aと主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの接続関係をより具体的に述べる。
増幅器1a〜8aの正極端子(+)は主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの正極端子(+)にそれぞれ接続される。一方、増幅器1aの負極端子(−)は主スピーカ1mの負極端子(−)に接続され、増幅器2a〜8aの負極端子(−)は主スピーカ2m〜8mの及び副スピーカ1s〜7sの負極端子(−)にそれぞれ接続される。
【0042】
入力端子1n〜8nは、図3に示す信号処理部3により処理が行われた8個の信号を入力し、その8個の入力信号をそれぞれに対応する増幅器1a〜8aに送る。増幅器1a〜8aは、入力端子1n〜8nから受け取った入力信号を増幅して主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに送る。ここで、増幅器1a〜8aは、入力端子1n〜8nから受け取った入力信号をバランス増幅する。すなわち、増幅器1a〜8aは、信号の振幅は同じであって、基準電圧に対し入力信号と同じ位相で増幅される信号と、基準電圧に対し入力信号と逆の位相で増幅される信号とを主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに送る。
【0043】
各増幅器1a〜8aによりバランス増幅された信号は、主スピーカ1m〜8mの正極端子(+)及び負極端子(−)に与えられる。例えば、主スピーカ1m〜8mの正極端子(+)及び負極端子(−)には、バランス駆動すなわち基準電圧に対し等振幅で互いに逆位相で変化する2つの信号が送られる。
一方、副スピーカ1s〜7sの正極端子(+)及び負極端子(−)は、互いに隣り合う増幅器1a〜8aの同極性の端子に接続され、副スピーカ1s〜7sの正極端子(+)及び負極端子(−)にはそれぞれ異なる入力に対応した増幅器1a〜8aからの信号が与えられる。例えば、副スピーカ1sの正極端子(+)は主スピーカ1mの正極端子(+)に接続され、副スピーカ1sの負極端子(−)は主スピーカ2mの負極端子(−)に接続される。したがって、副スピーカ1sの正極端子(+)には、増幅器1aの正極端子(+)からの信号が与えられ、副スピーカ1sの負極端子(−)には、増幅器1aと隣り合う増幅器2aの負極端子(−)からの信号が送られる。
【0044】
主スピーカ1m及び2mはそれぞれバランス駆動されているゆえ、主スピーカ1mの正極端子(+)には、基準電圧に対して主スピーカ1mに印加されている駆動電圧の1/2の電圧が印加されている。同様に、主スピーカ2mの負極端子(−)には、基準電圧に対して主スピーカ2mに印加されている駆動電圧の1/2の電圧が逆位相で印加されている。従って、主スピーカ1mの正極端子(+)及び主スピーカ2mの負極端子(−)に接続されている副スピーカ1sには主スピーカ1mの駆動電圧の1/2の電圧と主スピーカ2mの駆動電圧の1/2の電圧が印加されていることになる。これは、副スピーカ1sに主スピーカ1m及び2mの駆動電圧の平均値が印加されていることと等価である。
【0045】
以上の通り、アレイスピーカ駆動部4vは、入力信号1n〜8nを、増幅器1a〜8aを用いて増幅し、増幅された信号をそれぞれ対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与える。そして、スピーカ1m〜8m及び1s〜8sは、増幅器1a〜8aから送られた信号に基づいて音の波面を放射する。
【0046】
さて、アレイスピーカ1は、それを構成する複数の主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sから放射される音波の重ね合わせで波面を合成する機能を有する。従って、アレイスピーカ1を構成する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与えられる信号は互いに強い相関をもつ。
例えば、WFSでは、仮想音源位置からアレイスピーカ1を構成する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの位置に音波が伝搬する際の遅延と距離減衰を図3に示した信号処理部3によって再現すること、すなわち遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8を用いて再現することにより、アレイスピーカ1から仮想音源位置を中心とした波面を放射する。
【0047】
アレイスピーカ駆動部4v内の増幅器1a〜8aに与えられる入力信号は、前述したとおり、仮想音源とアレイスピーカ1を構成する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの距離の相対差に依存して時間差が決まり、仮想音源と各スピーカ1m〜8m及び1s〜7sの距離に依存して振幅が決まる。それゆえ、アレイスピーカ1を構成する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの間隔が波長に比べて短い場合、又はアレイスピーカ1と仮想音源との距離が大きい場合、各増幅器1a〜8aに送られる入力信号の位相差は小さくなる。一方、アレイスピーカ1の幅が波長に比して短い場合、又はアレイスピーカ1と仮想音源とのなす角度が直角に近い場合、各増幅器1a〜8aに送られる入力信号の位相差の最大値は小さくなる。
【0048】
また、仮想音源位置とスピーカ1m〜8m及び1s〜7sの位置が離れていて、スピーカ1m〜8m及び1s〜7s近傍での波面の曲率が大きい場合、補間により生成された信号すなわち平均値と、対象となる副スピーカ1s〜7sの位置に対応する信号の真値との誤差は小さくなる。
【0049】
図5は、アレイスピーカと仮想音源の位置関係の一例を示す説明図である。図6は、仮想音源から100Hzの正弦波を放射することを想定した時の各種波形を示す説明図である。
図5によれば、アレイスピーカ1には主スピーカ1m〜4m及び副スピーカ1s〜4sがそれぞれ交互に20cm間隔で配置されている。仮想音原A1は、アレイスピーカ1のスピーカ正面からスピーカ背面側に向かって50cmの場所で且つ主スピーカ1mからスピーカ4sの方向に向かって75cmの場所に配置されている。
また、図6は、図5に示す位置関係を有するアレイスピーカ1において、仮想音源A1から100Hzの正弦波を放射することを想定した時に主スピーカ1m及び2m及び副スピーカ1sから与えられる信号(1n信号及び2n信号)、及び副スピーカ1sの位置に対応した波面を再現するのに必要な補間真値信号、副スピーカ1sに入力される補間信号と補間真値信号との誤差信号の波形を示す。図6において、波形の横軸方向は時間を示し、縦軸方向は波形の振幅を示すものとする。
前述の通り、例えば副スピーカ1sには、主スピーカ1m及び2mの駆動電圧の平均値が印加されているが、各々の主スピーカと仮想音源位置との距離の差は最大で40cmであり、100Hzの音波の波長の約3.4m(常温)と比較して短く、大きな位相差は生じない。さらに、図6に示すように副スピーカ1sの位置に対応した補間信号と補間真値信号とに大きな誤差が生じていない。
【0050】
このように、8系統の主スピーカ1m〜8mに対して、最大で7系統の副スピーカ1s〜7sを加え、それぞれの副スピーカ1s〜7sに対しては、互いに隣り合う主スピーカ1m〜8m(例えば、主スピーカ1mと2m)に対する駆動電圧の平均値が印加させることにより、主スピーカ1m〜8mが生成する波面を補間する形で副スピーカ1s〜7sを設置できる。補間信号であるゆえ、主スピーカ1m〜8mに対する並列駆動又は直列駆動と比較して、目標とする波面に近い波面を合成することができる。
【0051】
これにより、15系統の主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに対し、8チャンネル分の信号処理部3及び8チャンネル分の増幅器1a〜8aで音響システムを実現することができ、スピーカの数を増やしても信号処理部3及び増幅部4のハードウェア量を増加せずにすむという効果が得られる。
【0052】
ここで、副スピーカ1s〜7sは、2つの主スピーカに隣り合う位置であればどこに設置してもよいが、2つの主スピーカから同距離に副スピーカを設置することにより、仮想音源位置に関わらず、放射する波面に破綻をきたさない。さらに主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sを同じスピーカにすると、仮想音源位置からの波面に対し副スピーカが放射する波面の誤差を小さくすることができるという効果が得られる。
【0053】
なお、本実施の形態では8チャンネル分の信号処理部3及び増幅器1a〜8aに対し7個の副スピーカ1s〜7sを接続しているが、7個全ての副スピーカを接続する必要はない。
【0054】
図7は、別のアレイスピーカの外観例を示す説明図である。
アレイスピーカ10の場合、8個の主スピーカ1m〜8mは一の列をなすように配置され、4個の副スピーカ1s、3s、5s及び7sは主スピーカ1m〜8mの列とは別の列をなすように配置されている。つまり、8個の主スピーカ1m〜8m及び4個の副スピーカ1s、3s、5s及び7sは、2列をなすように配置されている。ここで、アレイスピーカ10の正面に向かって、主スピーカは、1m、2m、3m、4m、5m、6m、7m、8mの順で配置され、一方、副スピーカは、同様に、1s、3s、5s、7sの順で配置されている。尚、本例の場合、スピーカ1m〜8mは8個であり、副スピーカ1s、2s、5s、7sの数は4個としたが、副スピーカの数は1個〜4個のいずれの個数であってもよい。
【0055】
また、前述の通りWFSでは仮想音源と主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの距離に応じて遅延時間を設定するため、主スピーカ間の信号の位相差は、仮想音源位置とスピーカアレイの角度、スピーカ間隔及び波長により決定される。
【0056】
図8はアレイスピーカと仮想音源の位置関係の一例を示す説明図である。
図8を参照すると、仮想音源A1及び主スピーカ1mまでの距離がd1であり、仮想音源A1からスピーカ2mまでの距離をd2であるとすると、主スピーカ1m及び2mに印加される信号の位相差θは、次の式により表される。
θ=2π×Δd/λ=2π×|d1−d2|/(c/f)
尚、音速はc、周波数はfであるとする。
【0057】
一方、副スピーカ1s〜7sに対しては、隣り合う主スピーカ1m〜8mに対する駆動電圧の平均値が印加されるため、隣り合う2つの主スピーカに印加される信号の位相が逆相となるときには副スピーカには信号が印加されない。これより、補間可能な信号の周波数上限fH は、
fH =c/(2Δd)=c/|2d1-2d2|
となる。
従って、アレイスピーカ1に対し平行に進む波面を再現する条件が波面を再現できる周波数の上限としては最も低く、この時の周波数fz は、スピーカピッチをd、音速をcとすると、
fz =c/2d
となる。
【0058】
図9は、副スピーカに与える信号の周波数に帯域制限をかけた場合のアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
図9によれば、アレイスピーカ駆動部4vは、図3に示す増幅部4に含まれる装置である。副スピーカ1s、3s、5s、7sと増幅器1a〜8aとの間にローパスフィルタ1L、3L、5L及び7Lを挿入することで帯域制限を行う。すなわち、副スピーカ1s、3s、5s、7sに送る信号の周波数を周波数fz 以下に制限することにより、すなわち周波数fz より高い周波数を減衰させることにより、音の波面を乱す高周波成分を有する音波が副スピーカ1s、3s、5s、7sから放音されるのを防ぐことができる。特に、主スピーカ1m〜8mとは特性が異なる低域用スピーカを副スピーカ1s、3s、5s、7sとして用いる場合、スピーカ間隔の問題と再生帯域の問題の双方を回避するために帯域制限が有効となる。
【0059】
実施の形態2
図10は、実施の形態2に係るアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
アレイスピーカ駆動部4wは、図3に示す増幅部4に含まれる装置であり、主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに電力を供給する機能を有する。アレイスピーカ駆動部4wは、8個の入力端子1n〜8n、4つの位相反転器2r、4r、6r及び8r、8個の増幅器1a〜8aを有する。入力端子1n、3n、5n及び7nはそれぞれ増幅器1a、3a、5a及び7aに接続され、増幅器1a、3a、5a及び7aはそれぞれ対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに接続されている。一方、入力端子2n、4n、6n及び8nはそれぞれ位相反転器2r、4r、6r及び8rを介して増幅器2a、4a、6a及び8aに接続される。増幅器1a〜8aはそれぞれ対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに接続される。尚、主スピーカ1m〜7mの負極端子及び主スピーカ8mの正極端子はグラウンドに接地されている。
【0060】
増幅器1a〜8aとスピーカ1m〜8m及び1s〜7sの接続関係をより具体的に述べると、増幅器1a、3a、5a及び7aの出力信号は主スピーカ1m及び副スピーカ1sの正極端子(+)に接続され、増幅器2a、4a、6a及び8aの出力信号はそれぞれ主スピーカ2m、4m、6m及び8mの負極端子(−)及び副スピーカ1s〜7sの負極端子(−)に接続される。
【0061】
入力端子1n〜8nは、前述した信号処理部3により処理が行われた8個の入力信号を受け取り、受け取った8個の入力信号をそれぞれ対応する増幅器1a〜8a又は位相反転器2r、4r、6r及び8rに与える。
位相反転器2r、4r、6r及び8rは、入力端子2n、4n、6n及び8nから与えられた入力信号の位相を反転する。
【0062】
増幅器1a、3a、5a及び7aは、入力端子1n、3n、5n及び7nから受け取った入力信号を増幅して主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与える。
一方、増幅器2a、4a、6a及び8aは、位相反転器2r、4r、6r及び8rから与えられた信号を増幅して主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与える。そして、主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sは、与えられた信号に従って音波を放射する。
【0063】
図10において、入力端子2n、4n、6n及び8nに対応する位相反転器2r、4r、6r及び8rが設けられる。増幅器1a、3a、5a及び7aは、基準電圧に対し入力信号の位相と同じ位相のまま増幅した信号を出力し、増幅器2a、4a、6a及び8aは、基準電圧に対し入力信号の位相と逆の位相に変換された信号を増幅した信号を出力する。すなわち、増幅器1a、3a、5a及び7aは、主スピーカ1m、3m、5m及び7mの正極端子(+)に接続され、各主スピーカ1m、3m、5m及び7mに同じ位相の信号を与える。一方、増幅器2a、4a、6a及び8aは、主スピーカ2m、4m、6m及び8mの負極端子(−)に接続され、主スピーカ1m、3m、5m及び7mに与えられた信号の位相と逆の位相の信号を与える。これにより、各入力端子1n〜8nに同じ位相の信号が入力された場合、主スピーカ1m〜8mは同じ位相の信号に基づき音の波面を放射する。
【0064】
すなわち、増幅器1aは、入力端子1nからの入力信号を増幅し、主スピーカ1mの正極端子(+)に送る。他方、増幅器2aは、位相反転器2rにより位相反転された入力信号を増幅し、主スピーカ2mの負極端子(−)に送るため、主スピーカ2mは、主スピーカ1mに送られる信号の位相と同じ位相で動作する。また、増幅器2a、4a、6a及び8aは、副スピーカ1s及び2s、3s及び4s、5s及び6s、及び7sの負極端子(−)に位相が反転された信号を送る。つまり、副スピーカ1s〜7sの正極端子(+)及び負極端子(−)はそれぞれ異なる信号で駆動される。
【0065】
主スピーカ1mの正極端子(+)及び2mの負極端子(−)は互いに逆の位相で駆動されているため、副スピーカ1sには主スピーカ1mの駆動電圧と主スピーカ2mの駆動電圧が印加されることになり、主スピーカ1m及び2mの加算値が印加されていることと等価である。
【0066】
このように、8個の主スピーカ1m〜8mに対して、最大で7つの副スピーカ1s〜7sを追加し、それぞれの副スピーカ1s〜7sに対しては、隣り合う主スピーカ1m〜8mに対する駆動電圧の加算値が印加させることにより、主スピーカ1m〜8mが生成する波面を補間する形で副スピーカ1s〜7sを設置できる。補間信号であるゆえ、主スピーカ1m〜8mに対する並列駆動又は直列駆動と比較して、目標とする波面に近い波面を合成することができる。
【0067】
このことにより、実施の形態1と同様に、15個のスピーカ1m〜8m及び1s〜7sに対し、8チャンネル分の信号処理部3及び8チャンネル分の増幅器1a〜8aで音響システムを実現でき、スピーカの数を増やしても、信号処理部3及び増幅部4のハードウェア量の増加を防げる。さらに、バランス駆動でない増幅器1a〜8aを用いることができ、スピーカ1m〜8m及び1s〜7sを接続する配線の本数を最低9本で済ますことができ、その結果、音響システムの構築コストを削減できる。なお、位相反転回路はごく安価に構成できるため、位相反転回路を追加してもコストに殆ど影響を与えない。
【0068】
ここで、副スピーカ1s〜7sには、主スピーカ1m〜8mの2系統分の信号が与えられるため、主スピーカ1m〜8mに対して約2倍の電圧を印加できる。これにより、スピーカ1m〜8m及び1s〜7sのインピーダンスが同一であっても、主スピーカ1m〜8mよりも大きな電力を副スピーカ1s〜7sに供給することができる。副スピーカ1s〜7sとして低域用スピーカを用いる場合、低域用スピーカの能率は一般的に低いため低域用スピーカに供給する電力を大きくする必要があるが、低域用スピーカへ与える電圧を高くすることによりインピーダンスの高いスピーカを用いることができ、増幅器の電流容量を減らすことができる。
【0069】
また、特定の主スピーカに副スピーカを並列に接続する構成をとる場合、増幅器の電流容量を大きくする必要があり、当該構成と主スピーカに副スピーカを並列に接続しない構成とが混在する場合、主スピーカの回路毎に電流に偏りが生じる。そのため、アレイスピーカを同一種類の増幅器で駆動する場合、主スピーカに副スピーカを並列に接続する構成をとっていない場合の増幅器の電流容量に無駄が生じる。しかし、本実施の形態によれば、電流容量の偏りを軽減することができ、増幅器のコストを削減できる。
【0070】
また、副スピーカ1s〜7sには、主スピーカ1m〜8mの2系統分の加算信号が印加されるゆえ、副スピーカ1s〜7sのインピーダンスを主スピーカ1m〜8mの4倍とすることにより、入力端子1n〜8nに対し同じ信号が入力された際、接続された主スピーカ1m〜7m及び副スピーカ1s〜8sに供給される電力をそろえることができる。主スピーカ1m〜8mと副スピーカ1s〜7sのインピーダンス以外の特性や諸元をそろえておけば、主スピーカ1m〜8mと副スピーカ1s〜7sの見かけ上の能率をそろえることができ、波面を補間するうえで有効である。またこの際、副スピーカ1s〜7sに与えられる電流は、主スピーカ1m〜8mに与えられる電流のおよそ半分であり、増幅器の電流容量を大幅に増加させる必要がない。
【0071】
図11は、副スピーカに与える信号の周波数に帯域制限をかけた場合のアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
図11によれば、アレイスピーカ駆動部4wは、図3に示す増幅部4に含まれる装置である。実施の形態1と同様に、副スピーカ1s、3s、5s、7sと増幅器1a〜8aとの間にローパスフィルタ1L、3L、5L及び7Lを挿入することで帯域制限を行う。尚、主スピーカ1m〜7mの負極端子及び主スピーカ8mの正極端子はグラウンドに接地されている。
【0072】
尚、実施の形態2は、実施の形態1と同様に、図7に示すアレイスピーカの構成であっても適用できる。すなわち、主スピーカと副スピーカが2列に配置された構成であってもよい。
【0073】
変形例
本発明は上述した実施の形態1、2に限らず、他の態様でも実施することが可能である。以下に変形例として幾つかの態様を示す。
実施の形態1、2においては、8個の入力信号系統に対して波面を出力する場合を例にしたが、入力信号系統は任意の数に設定可能である。
実施の形態1、2においては、8個の入力信号系統に対し8個の主スピーカ1m〜8m、7つの副スピーカ1s〜7sを接続したが、接続するスピーカの数は、入力信号数をnとすると、主スピーカはn系統、副スピーカはn−1系統までの任意の系統数を接続することができる。
実施の形態1、2においては、各主スピーカに1つのスピーカを接続しているが、複数のスピーカを接続してもよい。その際、接続するスピーカの種類は同一のものであっても異なるものであってもよい。
実施の形態1、2においては、波面合成方法の例としてWFSを挙げているが、WFS以外の方法でもよい。
実施の形態1、2においては、スピーカが直線状に設置された構成をとっているが、スピーカは直線上に設置されなくてもよく、2次元的に設置されてもよい。その場合、副スピーカの端子は、同様に直近の2つの異なる主スピーカの端子に接続する。
【符号の説明】
【0074】
1 アレイスピーカ
1m〜8m 主スピーカ
1s〜7s 副スピーカ
1n〜8n 入力端子
1a〜8a 増幅器
2r、4r、6r、8r 位相反転器
1L、3L、5L、7L ローパスフィルタ
3 信号処理部
4 増幅部
5 レベル調整部
6 制御部
7 位置情報保持部
8 操作部
9 波面合成信号処理部
A1 仮想音源
B1〜B3 聴取者
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間は2つの耳に入力された音の大きさの違いや時間差で音響空間を把握している。このことを利用して左右2つのスピーカで音空間を表現する方法、すなわちステレオ記録が一般的に用いられている。この音響システムでは、左右のスピーカから放射する音の音圧に差をつけ、あたかもスピーカの間の位置から音がしているかの如く知覚させる方法、すなわちパンニングも用いられている。また、間隔をおいて設置されたマイクに到達する時間差を利用して、同様の効果を得る方法も用いられている。
【0003】
しかしながら、左右のスピーカから放射された音が距離に応じて減衰すること、及びそれらの音の伝播時間に差が生ずること等により、聴取者の位置に応じて、左右のスピーカからの音に音圧差や時間差が存在する。それゆえ、意図したパンニング効果が得られる位置は、設置された左右2つのスピーカから等距離にある中央線上のみであり、それ以外の位置で音を聴いている聴取者は、その聴取者に近い位置にあるスピーカから音が放射されているかのように知覚する。
【0004】
この課題を解決する方法として、例えば非特許文献1には、WFS(Wave Field Synthesis)技術によりアレイスピーカを用いて音の波面を合成する音響システムが記載されている。WFS技術は、複数のスピーカを横一列に設置したアレイスピーカを用い、個々のスピーカから放射される音を重ね合わせることにより音の波面を合成し、音の波面の中心点に音源位置を知覚させる技術である。WFS技術は音の波面自体を再現する技術であるので、広い範囲で意図した位置に音源を知覚させることができる。ここで、アレイスピーカから発生させる音の波面の中心点を仮想音源と呼ぶ。
【0005】
アレイスピーカを構成する複数のスピーカは、互いの設置間隔が狭いほど周波数が高い音の波面を再現できる一方、アレイスピーカの設置幅が広いほど音の波面を再現できる空間が広くなる。アレイスピーカに含まれるスピーカの口径は、物理的にスピーカの設置間隔以下であるので、周波数が高い音の波面を再現する音響システムを実現しようとするには、個々のスピーカの口径を小さくせざるを得ない。一方、設置条件からスピーカの口径が制約を受けることも多い。特に、テレビにスピーカを組み込む場合にはスピーカの存在を目立たせないために、スピーカの高さ又は幅を短くすることにより面積を小さく抑え、その短辺に対応する口径の小さなスピーカを使用する方法がしばしばとられる。また別の理由として、信号処理部を含めた音響システム全体のコスト削減のためスピーカの設置間隔を広くとり、口径が比較的小さなスピーカを選択することがある。
【0006】
しかし、口径の小さなスピーカの場合、その振動板面積が小さいゆえ有限の振動板振幅で得られる音圧には限界がある。したがって、口径の小さなスピーカでは一般的に高い音圧が発生できないこと、及び再生周波数帯域も低音側が不十分であること等の音響特性上の課題を有する。また、振動板振幅自体の大きさも、その構造上、口径の大きなスピーカの振動振幅幅自体よりも小さい。高い音圧を得るには振動板面積の増大が有効であるが、スピーカの口径を大きくできない何らかの制約がある場合、十分な音圧を得るために複数のスピーカを並列又は直列に接続して、同じ信号で複数のスピーカを駆動し、等価的に振動板面積を増大させる手法がとられる。ところが、同じ信号で複数のスピーカを駆動すると、スピーカからの放射波が干渉することにより音波の指向性が高くなる。アレイスピーカは個々のスピーカから放射される音を重ね合わせることにより音の波面を合成するものであるゆえ、各々のスピーカの放射特性を無指向性にするのが適切である。よって、同じ信号で複数のスピーカを駆動することは音の波面を乱す原因となり、アレイスピーカ本来の機能を達成するのに妨げとなる。一方、低音側の再生周波数帯域を拡大するためにはスピーカの口径を大きくすることが有効であるが、同様の問題が生じ、現実的でない場合が多い。
【0007】
また、アレイスピーカの場合、アレイスピーカを構成する複数のスピーカの間隔が広いと、アレイスピーカに近づいた聴取者は自分の近くにあるスピーカの位置に音源を知覚してしまうという問題がある。これは、再現すべき波面に比べて実際に放射される波面の曲率が小さいことが原因である。WFSでは個々のスピーカの発する波面を重ね合わせることにより波面を再現するが、波面を重ね合わせるのに十分なスピーカ密度がないと波面を滑らかに再現できない。換言すると、波面を滑らかに再現するためには、スピーカの間隔を狭めてスピーカ密度を十分確保する必要がある。このためには、スピーカから放射される波面を補完するスピーカを追加することが考えられる。
【0008】
以上をまとめると、アレイスピーカを用いた音響システムとしてより高い周波数の音をより広範囲で再現するには、小口径のスピーカをできるだけ狭い間隔で且つできるだけ多く設置し、それらのスピーカを制御する必要がある。しかし一方で、低い周波数の音について高い音圧を得るためには、できるだけ大きな口径を有するスピーカをできるだけ多く音響システム内に組み込む必要がある。このような、スピーカの口径の大小と周波数帯域の広狭との関係に起因する課題を解決する方法として、例えば特許文献1には、周波数帯域毎に口径が異なる複数のスピーカを組み合わせてアレイスピーカを構成し、音の周波数を広帯域化した装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−67301号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ベルクハウト、ド ブリース、フォーゲル(A. J. Berkhout, D. de Vries, and P. Vogel)著、「アコースティック コントロール バイ ウェーブフィールド シンセシス (Acoustic control by wave field synthesis)」(オランダ)、第93(5)版、ジャーナル・オブ・ジ・アコウスティカル・ソサイエティ・オブ・アメリカ(J. Acoust. Soc)、1993年5月、p.2764−2778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の装置においては、アレイスピーカを構成する複数のスピーカに対応する信号処理系機器及びスピーカを駆動する増幅器がスピーカの数だけ必要となり、信号処理系機器及び増幅器のハードウェア量が増加し、音響システムの構築コストが増大する。
【0012】
また、音響システムを構築するに当たり何らかの制約により小径のスピーカを用いる場合、それらのスピーカの設置間隔を狭めることにより等価的に振動板面積を大きくし、それによりスピーカの出力音圧を上げることはできる。しかし、振動板面積を大きくするには小径のスピーカの個数を増やす必要があり、それに伴い信号処理系統機器及び増幅器の個数が増え、音響システムのハードウェア量が増大し、ひいては、音響システム構築コストが増大する。
【0013】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、音響システムにおいて、スピーカから放射される波面を補間するためにスピーカの個数を増やした場合であっても、それに伴う信号処理系統機器及び増幅器のハードウェア量の増加をもたらさない音響システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の音響システムは、少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、該二つの入力端子から入力された信号に基づき前記二つの第二スピーカを駆動する駆動装置とを備え、前記二つの第二スピーカ夫々が有する正極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の正極端子に各接続され、該二つの第二スピーカ夫々が有する負極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の負極端子に各接続され、前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、信号処理系統及び増幅器一系統に対して一系統接続されたスピーカ群に対し、系統間を補間する位置に別のスピーカ群を設けて入力信号の数より多くのスピーカ群を駆動する場合であっても、信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させずに、当該系統間の平均値を当該別のスピーカ群に印加することにより当該一系統接続されたスピーカ群から放音される波面を補間することができる。
【0016】
本発明の音響システムは、少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、該入力端子から入力された信号に基づき前記アレイスピーカを駆動する駆動装置と、前記二つの第二スピーカのいずれか一方のスピーカが有するいずれか一方の端子と該端子に対応する入力端子との間、又は他方の第二スピーカが有する他方の端子と該端子に対応する入力端子との間に介挿され、前記二つの入力端子に入力された信号のいずれか一方の信号の位相を反転する回路とを備え、前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、信号処理系統及び増幅器一系統に対して一系統接続されたスピーカ群に対し、系統間を補間する位置に別のスピーカ群を設けて入力信号の数より多くのスピーカ群を駆動する場合であっても、信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させずに、当該系統間の加算値を当該別のスピーカ群に印加することにより当該一系統接続されたスピーカ群から放音される波面を補間することができる。
【0018】
本発明の音響システムにおいて、前記一の第一スピーカは、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカから等距離にあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、一系統に含まれる二個のスピーカ群から同距離に別系統の一個のスピーカを設置することにより、当該別系統のスピーカから放射される波面の誤差を少なくすることができる。
【0020】
本発明の音響システムは、前記一の第一スピーカは、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々が有するインピーダンスの4倍のインピーダンスを有することを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、一のスピーカのインピーダンスを、該一のスピーカと隣り合う二個のスピーカがそれぞれ有するインピーダンスの4倍にすることにより、各入力端子に対し同じ信号が入力された際、接続された該一のスピーカ及び該一のスピーカと隣り合う二個のスピーカそれぞれに供給される電力をそろえることができる。
【0022】
本発明の音響システムは、少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、一の列をなすように配置された複数の第二スピーカと、該複数の第二スピーカとは別の列をなすように配置され、該複数の第二スピーカの数より少ない一又は複数の第一スピーカと、一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、該二つの入力端子から入力された信号に基づき前記二つの第二スピーカを駆動する駆動装置とを備え、前記二つの第二スピーカ夫々が有する正極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の正極端子に各接続され、前記二つの第二スピーカ夫々が有する負極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の負極端子に各接続され、前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、信号処理系統及び増幅器一系統に対して一系統接続された一列のスピーカ群に対し、系統間を補間する位置に別のスピーカ群を当該一系統のスピーカ群とは別の列に設けて入力信号の数より多くのスピーカ群を駆動する場合であっても、信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させずに、当該系統間の平均値を当該別のスピーカ群に印加することにより当該一系統のスピーカ群から放音される波面を補間することができる。
【0024】
本発明の音響システムは、少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、一の列をなすように配置された複数の第二スピーカと、該複数の第二スピーカとは別の列をなすように配置され、該複数の第二のスピーカの数より少ない一又は複数の第一スピーカとを備え、一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、該入力端子から入力された信号に基づき前記アレイスピーカを駆動する駆動装置と、前記二つの第二スピーカのいずれか一方のスピーカが有する正極端子又は他方の第二スピーカが有する負極端子のいずれか一方との間に介挿され、前記二つの入力端子に入力された信号の位相を反転する回路とを備え、前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、信号処理系統及び増幅器一系統に対して一系統接続された一列のスピーカ群に対し、系統間を補間する位置に別のスピーカ群を当該一系統のスピーカ群とは別の列に設けて入力信号の数より多くのスピーカ群を駆動する場合であっても、信号処理系統及び増幅器のハードウェア量を増加させずに、当該系統間の加算値を当該別の列のスピーカ群に印加することにより当該一系統のスピーカ群から放音される波面を補間することができる。
【0026】
本発明の音響システムにおいて、第一スピーカと接続され、該第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカは、該第一スピーカから等距離にあることを特徴とする。
【0027】
本発明にあっては、二列に配置されたスピーカ群であって、一系統に含まれる一列の二個のスピーカ群から同距離に別列の別系統の一個のスピーカを設置することにより、当該別系統のスピーカから放射される波面の誤差を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、例えば15個のスピーカに対して、8チャンネル分の信号処理系及び8チャンネル分の増幅器で音響システムを実現することができ、信号処理系等及び増幅器のハードウェア量を増やさなくとも波形を補間するスピーカを追加できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】アレイスピーカの外観例を示す説明図である。
【図2】仮想音源位置とアレイスピーカの位置を模式的に示す説明図である。
【図3】音響システムの全体構成例を示すブロック図である。
【図4】実施の形態1に係るアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
【図5】アレイスピーカと仮想音源の位置関係の一例を示す説明図である。
【図6】仮想音源から100Hzの正弦波を放射することを想定した時の各種波形を示す説明図である。
【図7】別のアレイスピーカの外観例を示す説明図である。
【図8】アレイスピーカと仮想音源の位置関係の一例を示す説明図である。
【図9】副スピーカに与える信号の周波数に帯域制限をかけた場合のアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
【図10】実施の形態2に係るアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
【図11】副スピーカに与える信号の周波数に帯域制限をかけた場合のアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施の形態を具体的に説明する。
実施の形態1
図1はアレイスピーカの外観例を示す説明図である。
図1において、アレイスピーカ1は、主スピーカ(第一スピーカ)1m〜8m及び副スピーカ(第二スピーカ)1s〜7sを有する。主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ2s〜7sのそれぞれはアレイスピーカ1の正面のバッフル板1b上に交互に設置される。つまり、アレイスピーカ1は、その筐体の正面に対して、左から1m、1s、2m、2s、3m、3s、4m、4s、5m、5s、6m、6s、7m、7s、8mの順で各スピーカが配置される構成をとる。
【0031】
主スピーカ1m〜8mは入力信号により駆動され、副スピーカ1s〜7sは補間信号により駆動される。入力信号及び補間信号の詳細については後述する。
【0032】
図2は仮想音源位置とアレイスピーカの位置を模式的に示す説明図である。
図2において、アレイスピーカ1の両側にはステージ及び聴取席がそれぞれ設けられ、ステージには仮想音源A1が設置され、聴取席には聴取者B1〜B3が設置されている。AL1は仮想音源A1の位置を示す。
WFSによれば、アレイスピーカ1を構成するスピーカ1m〜8m、1s〜7sが仮想音源A1から広がる音の波面を再現することによって、聴取者B1〜B3は、仮想音源A1の位置にあたかも音源があるかのように知覚することができる。
【0033】
図3は音響システムの全体構成例を示すブロック図である。
概略すると、音響システムは、k個のマイク11〜1k、波面合成信号処理部9、増幅部4及びアレイスピーカ1を有する。波面合成信号処理部9は、レベル調整部5、制御部6、位置情報保持部7、操作部8及び信号処理部3を有する。また、アレイスピーカ1は15個のスピーカ1m〜8m及び1s〜7sから構成されている。ここで、kは1以上の整数であるとする。
【0034】
レベル調整部5は、k個のレベル調整モジュール51〜5kを有する。
信号処理部3は、k×8個の遅延器及び可変利得増幅器311〜3k8及び8個の加算器711〜718を有する。
レベル調整モジュール51は、マイク11から入力した音声信号を増幅した後に、第一系統の信号として8個の遅延器及び可変利得増幅器311〜318に与える。レベル調整モジュール52は、マイク12から入力した音声信号を増幅した後に、第2系統の信号として8個の遅延器及び可変利得増幅器321〜328に与える。レベル調整モジュール5kは、マイク1kから入力した音声信号を増幅した後に、第k系統の信号として8個の遅延器及び可変利得増幅器3k1〜3k8に与える。
遅延器及び可変利得増幅器311〜318は、第1系統の信号を遅延させ、可変利得増幅する。また、遅延器及び可変利得増幅器321〜328は、第2系統の信号を遅延させ、可変利得増幅する。また、遅延器及び可変利得増幅器3k1〜3k8は、第k系統の信号を遅延させ、可変利得増幅する。このように、遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8それぞれは、第1系統〜第k系統の信号を遅延させ、可変利得増幅するが、その遅延量及び増幅率は後述する制御部6により算出される。遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8は、制御部6により算出された遅延量及び増幅率に従って第1系統〜第k系統の信号を個別に遅延させ、可変利得増幅する。
【0035】
このように、マイク11〜1kに対応する第1系統〜第k系統の信号のそれぞれは、遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8にて遅延され、可変利得増幅される。遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8にて遅延及び可変利得増幅された信号は、加算器711〜712にて加算され、第1〜第8チャンネルの信号に分離される。そして、分離された第1〜第8チャネルの信号は増幅部4に与えられる。
【0036】
加算器711〜712について更に詳しく説明する。
加算器711は、遅延器及び可変利得増幅器311〜3k1の出力信号を加算し、第1チャンネルの信号として増幅部4に与える。加算器712は、遅延器及び可変利得増幅器312〜3k2の出力信号を加算し、第2チャンネルの信号として増幅部4に与える。加算器718は、遅延器及び可変利得増幅器318〜3k8の出力信号を加算し、第8チャンネルの信号として増幅部4に与える。このように、信号処理部3は、第1〜第8チャンネルの信号を増幅部4に与える。
【0037】
増幅部4は、後述するアレイスピーカ駆動部(駆動装置)を有する。アレイスピーカ駆動部は、入力した第1〜第8チャンネルの信号を増幅し、増幅された信号を対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与える。そして、主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜8sは、アレイスピーカ駆動部から与えられた信号に基づいて音の波面を放射する。
【0038】
操作部8は、操作者が音響システムの操作を行うための操作機器であり、位置情報入力部81及び音量調整部82を有する。位置情報入力部81は、操作者によって入力される仮想音源位置及びアレイスピーカ1を構成するスピーカ1m〜8m及び1s〜7sの位置からなる位置情報を入力する。位置情報保持部7は、操作部8から受け取った位置情報を制御部6に与える。音量調節部82は、操作者による操作にしたがって、レベル調整モジュール51〜5kの各々に対して増幅率を与え、各音声信号が適切な音量でかつ音量バランスで聴取席に拡声されるようにする。
【0039】
制御部6は、その距離に応じた遅延量及び増幅率を演算し、アレイスピーカ1を構成するスピーカ1m〜8m及び1s〜7sにそれぞれ対応して設けられた信号処理部3内の遅延器及び可変利得増幅器311〜312、321〜328、・・・、3k1〜3k8に演算により求めた遅延量td 及び増幅率Gを設定する。
遅延器に設定される遅延量td 及び可変利得増幅器に設定される増幅率Gは、仮想音源A1と各スピーカ1m〜8m及び1s〜7s間の距離をdとすると、以下の式に従って算出される。
遅延量 td =d/c cは音速
増幅率 G=dr rは距離減衰定数(0>r>−2)
以上のように、信号処理部3は、例えば仮想音源A1に対応して入力された音声信号11に対して遅延量と増幅率に基づいた処理を施し、当該処理が行われた信号を増幅部4に与える。
【0040】
図4は、実施の形態1に係るアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
アレイスピーカ駆動部4vは、図3に示す増幅部4に含まれる装置であり、スピーカ1m〜8m及び1s〜7sに電力を供給する機能を有する。アレイスピーカ駆動部4vは、8個の入力端子1n〜8n及び8個の増幅器1a〜8aを有する。入力端子1n〜8nは、それぞれ増幅器1a〜8aに接続され、増幅器1a〜8aはそれぞれ対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに接続される。
【0041】
以下に増幅器1a〜8aと主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの接続関係をより具体的に述べる。
増幅器1a〜8aの正極端子(+)は主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの正極端子(+)にそれぞれ接続される。一方、増幅器1aの負極端子(−)は主スピーカ1mの負極端子(−)に接続され、増幅器2a〜8aの負極端子(−)は主スピーカ2m〜8mの及び副スピーカ1s〜7sの負極端子(−)にそれぞれ接続される。
【0042】
入力端子1n〜8nは、図3に示す信号処理部3により処理が行われた8個の信号を入力し、その8個の入力信号をそれぞれに対応する増幅器1a〜8aに送る。増幅器1a〜8aは、入力端子1n〜8nから受け取った入力信号を増幅して主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに送る。ここで、増幅器1a〜8aは、入力端子1n〜8nから受け取った入力信号をバランス増幅する。すなわち、増幅器1a〜8aは、信号の振幅は同じであって、基準電圧に対し入力信号と同じ位相で増幅される信号と、基準電圧に対し入力信号と逆の位相で増幅される信号とを主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに送る。
【0043】
各増幅器1a〜8aによりバランス増幅された信号は、主スピーカ1m〜8mの正極端子(+)及び負極端子(−)に与えられる。例えば、主スピーカ1m〜8mの正極端子(+)及び負極端子(−)には、バランス駆動すなわち基準電圧に対し等振幅で互いに逆位相で変化する2つの信号が送られる。
一方、副スピーカ1s〜7sの正極端子(+)及び負極端子(−)は、互いに隣り合う増幅器1a〜8aの同極性の端子に接続され、副スピーカ1s〜7sの正極端子(+)及び負極端子(−)にはそれぞれ異なる入力に対応した増幅器1a〜8aからの信号が与えられる。例えば、副スピーカ1sの正極端子(+)は主スピーカ1mの正極端子(+)に接続され、副スピーカ1sの負極端子(−)は主スピーカ2mの負極端子(−)に接続される。したがって、副スピーカ1sの正極端子(+)には、増幅器1aの正極端子(+)からの信号が与えられ、副スピーカ1sの負極端子(−)には、増幅器1aと隣り合う増幅器2aの負極端子(−)からの信号が送られる。
【0044】
主スピーカ1m及び2mはそれぞれバランス駆動されているゆえ、主スピーカ1mの正極端子(+)には、基準電圧に対して主スピーカ1mに印加されている駆動電圧の1/2の電圧が印加されている。同様に、主スピーカ2mの負極端子(−)には、基準電圧に対して主スピーカ2mに印加されている駆動電圧の1/2の電圧が逆位相で印加されている。従って、主スピーカ1mの正極端子(+)及び主スピーカ2mの負極端子(−)に接続されている副スピーカ1sには主スピーカ1mの駆動電圧の1/2の電圧と主スピーカ2mの駆動電圧の1/2の電圧が印加されていることになる。これは、副スピーカ1sに主スピーカ1m及び2mの駆動電圧の平均値が印加されていることと等価である。
【0045】
以上の通り、アレイスピーカ駆動部4vは、入力信号1n〜8nを、増幅器1a〜8aを用いて増幅し、増幅された信号をそれぞれ対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与える。そして、スピーカ1m〜8m及び1s〜8sは、増幅器1a〜8aから送られた信号に基づいて音の波面を放射する。
【0046】
さて、アレイスピーカ1は、それを構成する複数の主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sから放射される音波の重ね合わせで波面を合成する機能を有する。従って、アレイスピーカ1を構成する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与えられる信号は互いに強い相関をもつ。
例えば、WFSでは、仮想音源位置からアレイスピーカ1を構成する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの位置に音波が伝搬する際の遅延と距離減衰を図3に示した信号処理部3によって再現すること、すなわち遅延器及び可変利得増幅器311〜318、321〜328、・・・、3k1〜3k8を用いて再現することにより、アレイスピーカ1から仮想音源位置を中心とした波面を放射する。
【0047】
アレイスピーカ駆動部4v内の増幅器1a〜8aに与えられる入力信号は、前述したとおり、仮想音源とアレイスピーカ1を構成する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの距離の相対差に依存して時間差が決まり、仮想音源と各スピーカ1m〜8m及び1s〜7sの距離に依存して振幅が決まる。それゆえ、アレイスピーカ1を構成する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの間隔が波長に比べて短い場合、又はアレイスピーカ1と仮想音源との距離が大きい場合、各増幅器1a〜8aに送られる入力信号の位相差は小さくなる。一方、アレイスピーカ1の幅が波長に比して短い場合、又はアレイスピーカ1と仮想音源とのなす角度が直角に近い場合、各増幅器1a〜8aに送られる入力信号の位相差の最大値は小さくなる。
【0048】
また、仮想音源位置とスピーカ1m〜8m及び1s〜7sの位置が離れていて、スピーカ1m〜8m及び1s〜7s近傍での波面の曲率が大きい場合、補間により生成された信号すなわち平均値と、対象となる副スピーカ1s〜7sの位置に対応する信号の真値との誤差は小さくなる。
【0049】
図5は、アレイスピーカと仮想音源の位置関係の一例を示す説明図である。図6は、仮想音源から100Hzの正弦波を放射することを想定した時の各種波形を示す説明図である。
図5によれば、アレイスピーカ1には主スピーカ1m〜4m及び副スピーカ1s〜4sがそれぞれ交互に20cm間隔で配置されている。仮想音原A1は、アレイスピーカ1のスピーカ正面からスピーカ背面側に向かって50cmの場所で且つ主スピーカ1mからスピーカ4sの方向に向かって75cmの場所に配置されている。
また、図6は、図5に示す位置関係を有するアレイスピーカ1において、仮想音源A1から100Hzの正弦波を放射することを想定した時に主スピーカ1m及び2m及び副スピーカ1sから与えられる信号(1n信号及び2n信号)、及び副スピーカ1sの位置に対応した波面を再現するのに必要な補間真値信号、副スピーカ1sに入力される補間信号と補間真値信号との誤差信号の波形を示す。図6において、波形の横軸方向は時間を示し、縦軸方向は波形の振幅を示すものとする。
前述の通り、例えば副スピーカ1sには、主スピーカ1m及び2mの駆動電圧の平均値が印加されているが、各々の主スピーカと仮想音源位置との距離の差は最大で40cmであり、100Hzの音波の波長の約3.4m(常温)と比較して短く、大きな位相差は生じない。さらに、図6に示すように副スピーカ1sの位置に対応した補間信号と補間真値信号とに大きな誤差が生じていない。
【0050】
このように、8系統の主スピーカ1m〜8mに対して、最大で7系統の副スピーカ1s〜7sを加え、それぞれの副スピーカ1s〜7sに対しては、互いに隣り合う主スピーカ1m〜8m(例えば、主スピーカ1mと2m)に対する駆動電圧の平均値が印加させることにより、主スピーカ1m〜8mが生成する波面を補間する形で副スピーカ1s〜7sを設置できる。補間信号であるゆえ、主スピーカ1m〜8mに対する並列駆動又は直列駆動と比較して、目標とする波面に近い波面を合成することができる。
【0051】
これにより、15系統の主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに対し、8チャンネル分の信号処理部3及び8チャンネル分の増幅器1a〜8aで音響システムを実現することができ、スピーカの数を増やしても信号処理部3及び増幅部4のハードウェア量を増加せずにすむという効果が得られる。
【0052】
ここで、副スピーカ1s〜7sは、2つの主スピーカに隣り合う位置であればどこに設置してもよいが、2つの主スピーカから同距離に副スピーカを設置することにより、仮想音源位置に関わらず、放射する波面に破綻をきたさない。さらに主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sを同じスピーカにすると、仮想音源位置からの波面に対し副スピーカが放射する波面の誤差を小さくすることができるという効果が得られる。
【0053】
なお、本実施の形態では8チャンネル分の信号処理部3及び増幅器1a〜8aに対し7個の副スピーカ1s〜7sを接続しているが、7個全ての副スピーカを接続する必要はない。
【0054】
図7は、別のアレイスピーカの外観例を示す説明図である。
アレイスピーカ10の場合、8個の主スピーカ1m〜8mは一の列をなすように配置され、4個の副スピーカ1s、3s、5s及び7sは主スピーカ1m〜8mの列とは別の列をなすように配置されている。つまり、8個の主スピーカ1m〜8m及び4個の副スピーカ1s、3s、5s及び7sは、2列をなすように配置されている。ここで、アレイスピーカ10の正面に向かって、主スピーカは、1m、2m、3m、4m、5m、6m、7m、8mの順で配置され、一方、副スピーカは、同様に、1s、3s、5s、7sの順で配置されている。尚、本例の場合、スピーカ1m〜8mは8個であり、副スピーカ1s、2s、5s、7sの数は4個としたが、副スピーカの数は1個〜4個のいずれの個数であってもよい。
【0055】
また、前述の通りWFSでは仮想音源と主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sの距離に応じて遅延時間を設定するため、主スピーカ間の信号の位相差は、仮想音源位置とスピーカアレイの角度、スピーカ間隔及び波長により決定される。
【0056】
図8はアレイスピーカと仮想音源の位置関係の一例を示す説明図である。
図8を参照すると、仮想音源A1及び主スピーカ1mまでの距離がd1であり、仮想音源A1からスピーカ2mまでの距離をd2であるとすると、主スピーカ1m及び2mに印加される信号の位相差θは、次の式により表される。
θ=2π×Δd/λ=2π×|d1−d2|/(c/f)
尚、音速はc、周波数はfであるとする。
【0057】
一方、副スピーカ1s〜7sに対しては、隣り合う主スピーカ1m〜8mに対する駆動電圧の平均値が印加されるため、隣り合う2つの主スピーカに印加される信号の位相が逆相となるときには副スピーカには信号が印加されない。これより、補間可能な信号の周波数上限fH は、
fH =c/(2Δd)=c/|2d1-2d2|
となる。
従って、アレイスピーカ1に対し平行に進む波面を再現する条件が波面を再現できる周波数の上限としては最も低く、この時の周波数fz は、スピーカピッチをd、音速をcとすると、
fz =c/2d
となる。
【0058】
図9は、副スピーカに与える信号の周波数に帯域制限をかけた場合のアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
図9によれば、アレイスピーカ駆動部4vは、図3に示す増幅部4に含まれる装置である。副スピーカ1s、3s、5s、7sと増幅器1a〜8aとの間にローパスフィルタ1L、3L、5L及び7Lを挿入することで帯域制限を行う。すなわち、副スピーカ1s、3s、5s、7sに送る信号の周波数を周波数fz 以下に制限することにより、すなわち周波数fz より高い周波数を減衰させることにより、音の波面を乱す高周波成分を有する音波が副スピーカ1s、3s、5s、7sから放音されるのを防ぐことができる。特に、主スピーカ1m〜8mとは特性が異なる低域用スピーカを副スピーカ1s、3s、5s、7sとして用いる場合、スピーカ間隔の問題と再生帯域の問題の双方を回避するために帯域制限が有効となる。
【0059】
実施の形態2
図10は、実施の形態2に係るアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
アレイスピーカ駆動部4wは、図3に示す増幅部4に含まれる装置であり、主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに電力を供給する機能を有する。アレイスピーカ駆動部4wは、8個の入力端子1n〜8n、4つの位相反転器2r、4r、6r及び8r、8個の増幅器1a〜8aを有する。入力端子1n、3n、5n及び7nはそれぞれ増幅器1a、3a、5a及び7aに接続され、増幅器1a、3a、5a及び7aはそれぞれ対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに接続されている。一方、入力端子2n、4n、6n及び8nはそれぞれ位相反転器2r、4r、6r及び8rを介して増幅器2a、4a、6a及び8aに接続される。増幅器1a〜8aはそれぞれ対応する主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに接続される。尚、主スピーカ1m〜7mの負極端子及び主スピーカ8mの正極端子はグラウンドに接地されている。
【0060】
増幅器1a〜8aとスピーカ1m〜8m及び1s〜7sの接続関係をより具体的に述べると、増幅器1a、3a、5a及び7aの出力信号は主スピーカ1m及び副スピーカ1sの正極端子(+)に接続され、増幅器2a、4a、6a及び8aの出力信号はそれぞれ主スピーカ2m、4m、6m及び8mの負極端子(−)及び副スピーカ1s〜7sの負極端子(−)に接続される。
【0061】
入力端子1n〜8nは、前述した信号処理部3により処理が行われた8個の入力信号を受け取り、受け取った8個の入力信号をそれぞれ対応する増幅器1a〜8a又は位相反転器2r、4r、6r及び8rに与える。
位相反転器2r、4r、6r及び8rは、入力端子2n、4n、6n及び8nから与えられた入力信号の位相を反転する。
【0062】
増幅器1a、3a、5a及び7aは、入力端子1n、3n、5n及び7nから受け取った入力信号を増幅して主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与える。
一方、増幅器2a、4a、6a及び8aは、位相反転器2r、4r、6r及び8rから与えられた信号を増幅して主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sに与える。そして、主スピーカ1m〜8m及び副スピーカ1s〜7sは、与えられた信号に従って音波を放射する。
【0063】
図10において、入力端子2n、4n、6n及び8nに対応する位相反転器2r、4r、6r及び8rが設けられる。増幅器1a、3a、5a及び7aは、基準電圧に対し入力信号の位相と同じ位相のまま増幅した信号を出力し、増幅器2a、4a、6a及び8aは、基準電圧に対し入力信号の位相と逆の位相に変換された信号を増幅した信号を出力する。すなわち、増幅器1a、3a、5a及び7aは、主スピーカ1m、3m、5m及び7mの正極端子(+)に接続され、各主スピーカ1m、3m、5m及び7mに同じ位相の信号を与える。一方、増幅器2a、4a、6a及び8aは、主スピーカ2m、4m、6m及び8mの負極端子(−)に接続され、主スピーカ1m、3m、5m及び7mに与えられた信号の位相と逆の位相の信号を与える。これにより、各入力端子1n〜8nに同じ位相の信号が入力された場合、主スピーカ1m〜8mは同じ位相の信号に基づき音の波面を放射する。
【0064】
すなわち、増幅器1aは、入力端子1nからの入力信号を増幅し、主スピーカ1mの正極端子(+)に送る。他方、増幅器2aは、位相反転器2rにより位相反転された入力信号を増幅し、主スピーカ2mの負極端子(−)に送るため、主スピーカ2mは、主スピーカ1mに送られる信号の位相と同じ位相で動作する。また、増幅器2a、4a、6a及び8aは、副スピーカ1s及び2s、3s及び4s、5s及び6s、及び7sの負極端子(−)に位相が反転された信号を送る。つまり、副スピーカ1s〜7sの正極端子(+)及び負極端子(−)はそれぞれ異なる信号で駆動される。
【0065】
主スピーカ1mの正極端子(+)及び2mの負極端子(−)は互いに逆の位相で駆動されているため、副スピーカ1sには主スピーカ1mの駆動電圧と主スピーカ2mの駆動電圧が印加されることになり、主スピーカ1m及び2mの加算値が印加されていることと等価である。
【0066】
このように、8個の主スピーカ1m〜8mに対して、最大で7つの副スピーカ1s〜7sを追加し、それぞれの副スピーカ1s〜7sに対しては、隣り合う主スピーカ1m〜8mに対する駆動電圧の加算値が印加させることにより、主スピーカ1m〜8mが生成する波面を補間する形で副スピーカ1s〜7sを設置できる。補間信号であるゆえ、主スピーカ1m〜8mに対する並列駆動又は直列駆動と比較して、目標とする波面に近い波面を合成することができる。
【0067】
このことにより、実施の形態1と同様に、15個のスピーカ1m〜8m及び1s〜7sに対し、8チャンネル分の信号処理部3及び8チャンネル分の増幅器1a〜8aで音響システムを実現でき、スピーカの数を増やしても、信号処理部3及び増幅部4のハードウェア量の増加を防げる。さらに、バランス駆動でない増幅器1a〜8aを用いることができ、スピーカ1m〜8m及び1s〜7sを接続する配線の本数を最低9本で済ますことができ、その結果、音響システムの構築コストを削減できる。なお、位相反転回路はごく安価に構成できるため、位相反転回路を追加してもコストに殆ど影響を与えない。
【0068】
ここで、副スピーカ1s〜7sには、主スピーカ1m〜8mの2系統分の信号が与えられるため、主スピーカ1m〜8mに対して約2倍の電圧を印加できる。これにより、スピーカ1m〜8m及び1s〜7sのインピーダンスが同一であっても、主スピーカ1m〜8mよりも大きな電力を副スピーカ1s〜7sに供給することができる。副スピーカ1s〜7sとして低域用スピーカを用いる場合、低域用スピーカの能率は一般的に低いため低域用スピーカに供給する電力を大きくする必要があるが、低域用スピーカへ与える電圧を高くすることによりインピーダンスの高いスピーカを用いることができ、増幅器の電流容量を減らすことができる。
【0069】
また、特定の主スピーカに副スピーカを並列に接続する構成をとる場合、増幅器の電流容量を大きくする必要があり、当該構成と主スピーカに副スピーカを並列に接続しない構成とが混在する場合、主スピーカの回路毎に電流に偏りが生じる。そのため、アレイスピーカを同一種類の増幅器で駆動する場合、主スピーカに副スピーカを並列に接続する構成をとっていない場合の増幅器の電流容量に無駄が生じる。しかし、本実施の形態によれば、電流容量の偏りを軽減することができ、増幅器のコストを削減できる。
【0070】
また、副スピーカ1s〜7sには、主スピーカ1m〜8mの2系統分の加算信号が印加されるゆえ、副スピーカ1s〜7sのインピーダンスを主スピーカ1m〜8mの4倍とすることにより、入力端子1n〜8nに対し同じ信号が入力された際、接続された主スピーカ1m〜7m及び副スピーカ1s〜8sに供給される電力をそろえることができる。主スピーカ1m〜8mと副スピーカ1s〜7sのインピーダンス以外の特性や諸元をそろえておけば、主スピーカ1m〜8mと副スピーカ1s〜7sの見かけ上の能率をそろえることができ、波面を補間するうえで有効である。またこの際、副スピーカ1s〜7sに与えられる電流は、主スピーカ1m〜8mに与えられる電流のおよそ半分であり、増幅器の電流容量を大幅に増加させる必要がない。
【0071】
図11は、副スピーカに与える信号の周波数に帯域制限をかけた場合のアレイスピーカ及びアレイスピーカ駆動部の全体構成の一例を示すブロック図である。
図11によれば、アレイスピーカ駆動部4wは、図3に示す増幅部4に含まれる装置である。実施の形態1と同様に、副スピーカ1s、3s、5s、7sと増幅器1a〜8aとの間にローパスフィルタ1L、3L、5L及び7Lを挿入することで帯域制限を行う。尚、主スピーカ1m〜7mの負極端子及び主スピーカ8mの正極端子はグラウンドに接地されている。
【0072】
尚、実施の形態2は、実施の形態1と同様に、図7に示すアレイスピーカの構成であっても適用できる。すなわち、主スピーカと副スピーカが2列に配置された構成であってもよい。
【0073】
変形例
本発明は上述した実施の形態1、2に限らず、他の態様でも実施することが可能である。以下に変形例として幾つかの態様を示す。
実施の形態1、2においては、8個の入力信号系統に対して波面を出力する場合を例にしたが、入力信号系統は任意の数に設定可能である。
実施の形態1、2においては、8個の入力信号系統に対し8個の主スピーカ1m〜8m、7つの副スピーカ1s〜7sを接続したが、接続するスピーカの数は、入力信号数をnとすると、主スピーカはn系統、副スピーカはn−1系統までの任意の系統数を接続することができる。
実施の形態1、2においては、各主スピーカに1つのスピーカを接続しているが、複数のスピーカを接続してもよい。その際、接続するスピーカの種類は同一のものであっても異なるものであってもよい。
実施の形態1、2においては、波面合成方法の例としてWFSを挙げているが、WFS以外の方法でもよい。
実施の形態1、2においては、スピーカが直線状に設置された構成をとっているが、スピーカは直線上に設置されなくてもよく、2次元的に設置されてもよい。その場合、副スピーカの端子は、同様に直近の2つの異なる主スピーカの端子に接続する。
【符号の説明】
【0074】
1 アレイスピーカ
1m〜8m 主スピーカ
1s〜7s 副スピーカ
1n〜8n 入力端子
1a〜8a 増幅器
2r、4r、6r、8r 位相反転器
1L、3L、5L、7L ローパスフィルタ
3 信号処理部
4 増幅部
5 レベル調整部
6 制御部
7 位置情報保持部
8 操作部
9 波面合成信号処理部
A1 仮想音源
B1〜B3 聴取者
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、
一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、
該二つの入力端子から入力された信号に基づき前記二つの第二スピーカを駆動する駆動装置と
を備え、
前記二つの第二スピーカ夫々が有する正極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の正極端子に各接続され、該二つの第二スピーカ夫々が有する負極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の負極端子に各接続され、
前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする音響システム。
【請求項2】
少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、
一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、
該入力端子から入力された信号に基づき前記アレイスピーカを駆動する駆動装置と、
前記二つの第二スピーカのいずれか一方のスピーカが有するいずれか一方の端子と該端子に対応する入力端子との間、又は他方の第二スピーカが有する他方の端子と該端子に対応する入力端子との間に介挿され、前記二つの入力端子に入力された信号のいずれか一方の信号の位相を反転する回路と
を備え、
前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする音響システム。
【請求項3】
前記一の第一スピーカは、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカから等距離にあることを特徴とする請求項1又は2記載の音響システム。
【請求項4】
前記一の第一スピーカは、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々が有するインピーダンスの4倍のインピーダンスを有することを特徴とする請求項2記載の音響システム。
【請求項5】
少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、
一の列をなすように配置された複数の第二スピーカと、
該複数の第二スピーカとは別の列をなすように配置され、該複数の第二スピーカの数より少ない一又は複数の第一スピーカと、
一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、
該二つの入力端子から入力された信号に基づき前記二つの第二スピーカを駆動する駆動装置と
を備え、
前記二つの第二スピーカ夫々が有する正極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の正極端子に各接続され、前記二つの第二スピーカ夫々が有する負極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の負極端子に各接続され、
前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする音響システム。
【請求項6】
少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、
一の列をなすように配置された複数の第二スピーカと、
該複数の第二スピーカとは別の列をなすように配置され、該複数の第二のスピーカの数より少ない一又は複数の第一スピーカと
を備え、
一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、
該入力端子から入力された信号に基づき前記アレイスピーカを駆動する駆動装置と、
前記二つの第二スピーカのいずれか一方のスピーカが有する正極端子又は他方の第二スピーカが有する負極端子のいずれか一方との間に介挿され、前記二つの入力端子に入力された信号の位相を反転する回路と
を備え、
前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする音響システム。
【請求項7】
第一スピーカと接続され、該第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカは、該第一スピーカから等距離にあることを特徴とする請求項5又は6記載の音響システム。
【請求項1】
少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、
一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、
該二つの入力端子から入力された信号に基づき前記二つの第二スピーカを駆動する駆動装置と
を備え、
前記二つの第二スピーカ夫々が有する正極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の正極端子に各接続され、該二つの第二スピーカ夫々が有する負極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の負極端子に各接続され、
前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする音響システム。
【請求項2】
少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、
一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、
該入力端子から入力された信号に基づき前記アレイスピーカを駆動する駆動装置と、
前記二つの第二スピーカのいずれか一方のスピーカが有するいずれか一方の端子と該端子に対応する入力端子との間、又は他方の第二スピーカが有する他方の端子と該端子に対応する入力端子との間に介挿され、前記二つの入力端子に入力された信号のいずれか一方の信号の位相を反転する回路と
を備え、
前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする音響システム。
【請求項3】
前記一の第一スピーカは、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカから等距離にあることを特徴とする請求項1又は2記載の音響システム。
【請求項4】
前記一の第一スピーカは、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々が有するインピーダンスの4倍のインピーダンスを有することを特徴とする請求項2記載の音響システム。
【請求項5】
少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、
一の列をなすように配置された複数の第二スピーカと、
該複数の第二スピーカとは別の列をなすように配置され、該複数の第二スピーカの数より少ない一又は複数の第一スピーカと、
一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、
該二つの入力端子から入力された信号に基づき前記二つの第二スピーカを駆動する駆動装置と
を備え、
前記二つの第二スピーカ夫々が有する正極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の正極端子に各接続され、前記二つの第二スピーカ夫々が有する負極端子は、該二つの第二スピーカに対応する二つの駆動装置の負極端子に各接続され、
前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする音響システム。
【請求項6】
少なくとも三つのスピーカを含むアレイスピーカを備えた音響システムにおいて、
一の列をなすように配置された複数の第二スピーカと、
該複数の第二スピーカとは別の列をなすように配置され、該複数の第二のスピーカの数より少ない一又は複数の第一スピーカと
を備え、
一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカ夫々に対応する信号を入力する二つの入力端子と、
該入力端子から入力された信号に基づき前記アレイスピーカを駆動する駆動装置と、
前記二つの第二スピーカのいずれか一方のスピーカが有する正極端子又は他方の第二スピーカが有する負極端子のいずれか一方との間に介挿され、前記二つの入力端子に入力された信号の位相を反転する回路と
を備え、
前記一の第一スピーカが有する正極端子及び負極端子は、該一の第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカのいずれか一方の第二スピーカが有する正極端子及び他方の第二スピーカが有する負極端子に各接続されることを特徴とする音響システム。
【請求項7】
第一スピーカと接続され、該第一スピーカと隣り合う二つの第二スピーカは、該第一スピーカから等距離にあることを特徴とする請求項5又は6記載の音響システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−19334(P2012−19334A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154858(P2010−154858)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]