説明

音響波により動作する素子および該素子の製造方法

本発明は、ガイド音響波(GBAW)により動作する素子に関する。この素子には、圧電素子(PS1)およびこの上に配置された第1の金属層(ME1)を含む層系が設けられている。この層系は導波体を成しており、この導波体を介してガイド音響波が横方向に導かれる。この素子は、互いに音響的に結合されかつ互いに電気的に分離された2つの共振器を有している。対応する共振器は金属層(ME1)に形成された電極(A)を有しており、これは波の伝播方向で周期的に配置された電極構造体を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響波により動作する素子に関する。
【0002】
刊行物WO 01/99276 A1によれば、互いに並置され1つの共通の電極により互いに電気的に接続され音響的に互いに結合されているBAW共振器(BAW=Bulk Acoustic Wave)が公知である。
【0003】
本発明の課題は、音響体積波ないしはバルク弾性波により動作する素子において、非平衡/平衡モードあるいは平衡/平衡モードで駆動できるようにすることである。本発明の別の課題は、この種の素子の製造方法を提供することである。
【0004】
本発明によれば1つめの課題は、請求項1の特徴を備えた電気音響素子によって解決される。本発明によれば2つめの課題は、請求項15記載の方法により解決される。従属請求項には本発明の有利な実施形態が示されている。
【0005】
本発明は、ガイド音響体積波(GBAW=Guided Bulk Acoustic Wave)により動作する素子に関する。この素子は、互いに音響的に結合された2つの共振器を有している。これらの共振器の各電極は互いに電気的に絶縁されている。1つの有利な実施形態によれば、各共振器は周期的に配置された電極構造体を有するインタディジタル変換器ないしは交差指変換器を有している。インタディジタル変換器のことを、以下では単に変換器と称する。電極構造体には公知のSAW素子部材のようにウェイトを設けることができ、可変のフィンガ中央間隔、フォーカシング特性、湾曲フィンガ、可変の幅のフィンガ、音響トラック長に関して種々のアパーチャ(横方向でそれぞれ異なる極性をもつ隣り合う2つの電極構造体のオーバラップ長)等を有するように構成することができる。
【0006】
音響体積波は、層系によって形成された音響導波体を介して横方向平面で導かれる。層系には圧電層およびその上に配置され構造形成された第1の金属層が含まれており、この第1の金属層に第1の共振器における第1の電極の電極構造体が形成されている。1つの実施形態によれば、第1の共振器における第2の電極を第1の電極と同じ金属化平面に配置することができ、これによって第1の変換器を構成することができる。このケースでは両方の電極の電極構造体が並べて配置されており、この場合、電気的励起が横方向で行われる。
【0007】
別の実施形態によれば、第1の共振器における第2の電極をたとえば圧電層の下に配置された金属化平面に配置することができる。このケースでは両方の電極の電極構造体が上下に配置されており、この場合、電気的励起が垂直方向で行われる。
【0008】
同じ共振器における(並置されたまたは上下に配置された)各電極構造体間の電気的励起を1次励起と称する。それぞれ異なる金属化平面に同じ共振器の電極が設けられている場合、同じ平面に配置されたそれぞれ異なる共振器の電極を互いにかみ合わせることができ、ないしは交互に入り込んで配置されている。異なる共振器における並置された各電極構造体間の電気的励起を2次励起と称する。
【0009】
さらに1つの変形実施形態によれば、層系には金属層の上に配置された誘電層が含まれ、これは金属層とは反対側で有利には平坦な表面を有している。1つの変形実施形態によれば、誘電層を省くことができる。
【0010】
共振器をたとえば、変換器およびその下もしくはその上に配置された層系の各層によって形成することができる。さらに共振器を、2つの共振器およびそれらの間に配置された変換器によって形成することもできる。GBAWのガイドに適した層構造を備えた任意の音響トラックにより、共振器の結合された音響共振器装置を構成することができる。たとえば、互いに音響的に結合された共振器を2つの反射器の接する音響トラック内に配置することも可能である。
【0011】
圧電層の厚さhをλよりも著しく小さくすることができ、ここでλは素子駆動周波数における音響波の波長である。圧電層の厚さを、たとえばλ/2〜2λの間とすることができる。1つの有利な実施形態によれば、hを実質的にλ/2またはλとすることができる。
【0012】
有利であるのは、層系を2つの基板の間に配置することである。1つの変換器は、互いにかみ合ったないしは交互に入り込んだ2つの櫛形電極を有することができる。電極構造体は周期的に配置された金属ストライプを成しており、これらは集合レールないしは母線に接続されている。1つの変換器において、それぞれ異なる電位に接続されている並置された2つの電極構造体間で電気的励起が生じる。その際、圧電層のボリュームないしはバルクを介して横方向に有利には流れ方向に伝播する音響波が励起される。
【0013】
互いに音響的に結合されかつ導電分離された共振器をたとえば、少なくとも1つの対称なゲートを備えた素子の電気的なゲートを導電分離するために利用することができる。横方向平面における電極構造体の周期的な配置によりGBAWの波長λが設定され、その際、同じ電位と接続された電極構造体の各中央部を1波長分互いに隔てると有利である。
【0014】
波の励起は励起中心において横方向で行われ、この励起中心は圧電基板上に並置されそれぞれ異なる電位と接続された2つの電極構造体の間に位置している。電極構造体が上下に配置され圧電層を介して互いに接続されている場合、励起は垂直方向で行われる。特定の方向における励起は、励起中心もしくはその方向に沿った互いに逆極性の2つの電極構造体の配置に関係する。
【0015】
横方向もしくは長手方向で1次励起が行われ、垂直方向で2次励起が行われるように共振器を配置することができる。さらに、垂直方向で1次励起が行われ、横方向もしくは長手方向で2次励起が行われるように共振器を配置することも可能である。
【0016】
横方向の励起の場合、同じ金属層に形成された同極性の各電極構造体中央間の横方向間隔を、実質的にλとするのが有利である。また、同じ金属層に形成され互いに逆極性である各電極構造体の中央間の間隔を、実質的にλ/2とするのが有利である。垂直方向における励起の場合、圧電層の厚さに対応する互いに逆極性の各電極構造体間の垂直方向最小間隔hを、実質的にλ/2とするのが有利である。
【0017】
各共振器間で音響結合が生じる方向を励起方向に対し90°ずらすのが有利であり、これによればたとえば励起は長手方向で、音響結合は横断方向および/または垂直方向で行われる。これに対する代案として、励起を垂直方向で、音響結合を横断方向および/または長手方向で行わせることもできる。まえもって定めた方向における音響結合は、この方向で伝播する音響モードを介して行われる。
【0018】
さらに、励起と音響結合を同方向で行わせることもできる。
【0019】
GBAWにより動作する素子における変換器の配置構成を、それ自体知られているDMSフィルタ(DMS = Double Mode Surface Acoustic Wave)の場合のように選定することもでき、その際、公知の配置構成とは異なり本発明による素子によれば、変換器ではなくこれらの変換器を含む共振器が長手方向で(SAWの代わりにGBAWを介して)互いに音響的に結合される。この場合、互いに音響的に結合された2つの共振器は、同一の音響トラック内に並置される。GBAWにより動作する装置を2つのトラックに配置することも可能であり、このような配置構成の場合、第1の金属層は2つのトラックに配置された(たとえば1つの音響トラックごとに3つの変換器を備えた)DMS装置に相応する構造を有している。その際にこれらの音響トラックは、結合変換器を含む複数の共振器を介して互いに電気的に接続されている。
【0020】
原則的に、横方向における電気的励起および音響的結合の場合、SAWにより動作する任意の既知の変換器・共振器配置構成たとえば横断方向で結合された共振器(transversal mode resonatorまたはTMR)を、本発明による素子に転用することができる。
【0021】
また、長手方向における励起および垂直方向における励起ならびに横断方向における音響結合も可能である(図5A)。
【0022】
さらに、それぞれ異なる電位と接続された2つの櫛形状共振器電極をそれぞれ異なる横方向平面に形成することも可能であり、たとえば第1の電極を第1の金属層に設け、第2の電極を第2の金属層に形成することも可能であり、この場合、双方の電極構造体は互いに向かい合って配置されている。ガイド体積波はこのケースでは垂直方向で励起され、横断方向で伝播する。
【0023】
双方の電極を互いに所定の値だけ横方向にずらして配置することも可能であり、および/または互いに所定の角度だけ回転させて配置することも可能であり、この目的はたとえば所定の励起形状を実現することである。
【0024】
1つの実施形態によれば、音響モードの垂直方向における電気的励起を、上下に配置された変換器の互いに対向する各電極構造体間で生じさせることができる。垂直におけるにおける波モードの電気的励起を、横方向における励起のほかに生じさせることができる。垂直方向における励起はたとえば、第1の変換器の「ホット」電極構造体と、これと向き合った第2の変換器の「コールド」電極構造体との間およびその逆で行われる。その際に同時に、ガイド体積波の2つの音響モードが励起される。垂直方向で励起されるモードの周波数を、横方向で励起されるモードの周波数に対しずらすことができる。1次励起される波を装置の駆動周波数に対応させると有利であり、この場合、2次励起される波の周波数を駆動周波数から20%よりも僅かに異ならせる。また、双方の周波数を一致させることもできる。
【0025】
1つの実施形態によれば層系には第2の金属層が含まれており、これは圧電層の下に配置されている。この第2の金属層に第2の変換器の構造体を配置することができ、これは第1の変換器の構造体と向き合って配置されている。第1の共振器は、第1の変換器およびその下に配置された圧電層によって形成されている。第2の共振器は、第2の変換器の構造体およびその下に配置された圧電層によって形成されている。このケースでは圧電層は、双方の共振器を垂直方向において音響的に結合するための結合系として用いられる。
【0026】
音響的に結合された双方の共振器における変換器を、たとえば第1の金属層に相応する同一の横方向平面に配置することができる。また、変換器を長手方向にすなわち波の伝播方向に並置することができる。対応する共振器はこの方向で圧電層を介して互いに音響的に結合されており、この場合、電気的励起の方向は音響的結合の方向と一致している。さらに変換器を横方向で並置し、それらの共振器に対応する共振器をこの方向で圧電層を介して音響的に結合することもできる。
【0027】
択一的に第2の金属層に、第1の変換器の構造体と向き合って位置する導電面(たとえばアース面)を形成することができる。1つの実施形態によれば、この導電面を浮いた状態とすることができる。1つの有利な実施形態によれば、アース面として設けられている導電面は基準電位と接続されている。
【0028】
1つの実施形態によれば、導電面は第1の変換器ならびに第2の変換器と対向して配置されており、この場合、これらの変換器は同一の横方向平面に配置されている。このケースでは、圧電層と導電面の複合体により1つの結合系が形成されており、これによって両方の共振器が互いに結合される。全体に渡って延びている導電平面は平衡/平衡モードで駆動すべき素子にとって有利であり、その際にたとえば第1の変換器は対称の第1のゲートと接続されており、第2の変換器は対称の第2のゲートと接続されている。
【0029】
別の変形実施形態によれば、2つの変換器は同一の横方向平面に配置されており、この場合、第1の変換器は第1の導電面を介して配置されており、第2の変換器は第1の導電面とは電気的に分離されている第2の導電面を介して配置されている。その際に有利であるのは、これらの変換器を横断方向に並べて配置することである。このケースでは、各変換器に対応づけられている共振器は横断方向で互いに音響的に結合されており、かつ互いに電気的に分離されている。上記の導電面は、有利にはそれぞれ固有の基準電位と接続されている。互いに電気的に分離されている導電面は非平衡/平衡モードで駆動すべき素子にとって有利であり、その際にたとえば第1の変換器は非対称の第1のゲートと接続されており、第2の変換器は対称の第2のゲートと接続されている。
【0030】
電気的1次励起は、同一の変換器における各電極構造体間において横方向で行われる。電気的2次励起を、一方の変換器電極の電極構造体とその下に位置する導電面(有利にはアース面)との間において垂直方向で生じさせることができる。
【0031】
圧電層が2つの部分層を有するように構成できる。これらの部分層を、第3の金属層によって互いに分離することができる。また、これらの部分層が互いにそれぞれ異なる圧電軸配向を有するように構成できる。有利であるのは、圧電軸が各部分層の境界面に対し点対称、鏡面対称あるいは反響面対称の配向をもつことである。殊に有利であるのは、圧電軸が逆平行の配向をもつことである(有利には個々の軸が部分層境界面に対し直交して配向されている場合)。また、2つの部分層の境界面に対するそれら双方の部分層の圧電軸配向が等しくてもよいし、ないしは平行でもよい。この場合、第1の変換器は第1の金属層に配置され、第2の変換器は第2の金属層に配置される。双方の変換器の電極構造体は、有利には上下に配置されている。全体に延びるアース面を第3の金属層に形成するのが有利であり、このアース面は第1の変換器と第2の変換器との間に配置されている。
【0032】
さらに1つの共振器配置構成として、双方の共振器が第1の金属層に形成された第1の電極と第2の金属層に形成された第2の電極をそれぞれ有するようにしてもよい。この場合、同一の変換器における第1の電極と第2の電極の電極構造体が上下に配置される。第1および第2の共振器における第1の(もしくは第2の)電極は、双方の共振器における櫛形状の第1(もしくは第2の)電極が互いに入り組んでかみ合うよう、同一の金属層に形成され長手方向で交互に配置される。
【0033】
電気的1次励起は、同一の共振器における各電極構造体間において垂直方向で行われる。電気的2次励起を、同じ金属層に形成され並置されたそれぞれ異なる共振器の各電極構造体間で行わせることができる。
【0034】
また、対応する共振器電極において同じ金属層に形成された各電極構造体の中央間の間隔を、1波長とするのが有利である。同じ金属層に形成されたそれぞれ異なる共振器における電極構造体の各中央間の間隔は、横方向に励起すべき波の位相に整合される。
【0035】
1つの実施形態によれば、垂直方向に1次励起される共振器が長手方向に並置されている。この場合、各共振器間の音響的結合は長手方向で行われる。
【0036】
さらに別の実施形態によれば、垂直方向に1次励起される共振器が横断方向に並置されている。これによれば各共振器間の音響結合は、横断方向において圧電層を介して行われる。
【0037】
2つの共振器をそれぞれ対称に結線することもできるし、あるいは2つの対称の信号経路間に接続された互いに異なる分岐路中に配置することもできる。しかしながらこれらの共振器の一方を非対称に結線してもよい。この場合、非対称に結線された共振器における一方の電極は基準電位と接続される。
【0038】
さらに本発明は、ガイド音響波により動作する素子の製造方法に関する。本発明による方法は、
A)犠牲基板の上に第1の金属層と圧電層と構造形成された第2の金属層から成る層構造を形成するステップと、
B)この層構造を基板と固定的に接合するステップと、
C)犠牲基板を除去するステップと、
D)第1の金属層を構造形成するステップと、
E)上記の層構造を第1の金属層の側で別の基板と固定的に接合するステップ
を有している。
【0039】
基板として、電気的絶縁材料あるいは半導体材料が適している。基板(たとえば二酸化シリコン、窒化シリコン、ポリマー)がそのために設けられた層構造表面上に、有利には厚膜プロセスでそれぞれ厚膜として被着される。基板の開放された表面を、基板材料の硬化後に平坦化することができる。
【0040】
ただ1つの基板の代わりに積層体を堆積させることも可能である。この堆積を、たとえば化学蒸着法または他の層堆積プロセスによって行うことができる。
【0041】
また、基板をウェハボンディングによりその他の層構造と固定的に接合することができる。このケースにおいて有利であるのは、ステップB)の前に第2の金属層上に、ステップE)の前に第1の金属層上に、誘電性平坦化層たとえば二酸化シリコンを設けることである。この場合、基板材料としてたとえばSiを用いることができる。
【0042】
平坦化層が最初に誘電層として生成され、これはたとえば化学機械研磨によって平坦化される。1つの実施形態によれば、圧電層の代わりに複数の誘電部分層を含む多層系が生成される。最初にステップA)〜C)が実施される。第1の金属層の開放されている表面上に別の層構造が取り付けられ、これには別の誘電層と構造形成された第3の金属層が含まれている。この別の層構造が第3の金属層の側で、別の基板と固定的に接合される。
【0043】
次に、図面を参照しながら実施例に基づき本発明について詳しく説明する。なお、これらの図面には本発明の様々な実施例が概略的に示されており、縮尺どおりには描かれていない。同じ部材あるいは同等の働きをする部材には同一の参照符号が付されている。
【0044】
図1Aは、変換器を含む共振器を示す図である。
【0045】
図1Bは、分岐路に配置され互いに音響的に結合された共振器を示す図(等価回路図)である。
【0046】
図1Cは、それぞれ異なる信号経路に配置され互いに音響的に結合された共振器を示す図(等価回路図)である。
【0047】
図2Aは、GBAWにより動作する素子の層構造を示す断面図であり、この図には電気的1次励起と電気的2次励起が2つの横方向平面で、音響結合が垂直方向で描かれている。
【0048】
図2Bは、図2Aに示した第1の変換器の平面図である。
【0049】
図2Cは、図2Aに示した第2の変換器の平面図である。
【0050】
図3Aは、GBAWにより動作する共振器の層構造を示す断面図であり、この図にはガイド体積波の垂直方向における電気的励起が描かれている。
【0051】
図3Bは、GBAWにより動作する素子の層構造を示す断面図であり、この図には垂直方向における電気的励起と長手方向における音響結合が描かれている。
【0052】
図3Cは、図3Aに示した共振器の変形実施形態を示す図であり、この実施形態では対向電極が全体に延びるアース面として構成されている。
【0053】
図4Aは、GBAWにより動作する共振器の層構造を示す断面図であり、この図にはGBAWの電気的1次励起が長手方向で、GBAWの電気的2次励起が垂直方向で描かれている。
【0054】
図4Bは、図4Aに示した2つの共振器を示す図であり、これらの共振器は圧電層および導電面の結合体を介して長手方向で互いに音響的に結合されている。
【0055】
図4Cは、図4Aに示した2つの共振器から成る共振器の配置構成を描いた平面図であり、これらの共振器は圧電層および導電面の結合体を介して横断方向で互いに音響的に結合されている。
【0056】
図4Dは、図4Bに示した共振器の配置構成を描いた斜視図である。
【0057】
図5Aは、圧電層を介して横断方向で音響的に結合された図4Aによる共振器を備えた素子を示す平面図である。
【0058】
図5Bは、図4Aに示した2つの共振器を示す図であり、これらの共振器は圧電層を介して長手方向で互いに音響的に結合されている。
【0059】
図6は、図2Aに示した素子の変形実施形態を示す図であり、この実施形態では圧電層は中央の金属層により分離された2つの部分層を有している。
【0060】
図7は、図3Bに示した素子の変形実施形態を示す図であり、この実施形態では圧電層は中央の金属層により分離された2つの部分層を有している。
【0061】
図8Aは、それぞれ異なる共振器の相互にかみ合った電極を備えた素子を垂直方向の1次励起とともに示す図である。
【0062】
図8Bは、図8Aによる第1の共振器の斜視図である。
【0063】
図8Cは、図8Aによる第2の共振器の斜視図である。
【0064】
図9A〜図9Eは、1つの圧電層だけが設けられたGBAW導波体構造におけるプロセスステップを示す図である。
【0065】
図10A〜図10Eは、2つの圧電層を備えたGBAW導波体構造におけるプロセスステップを示す図である。
【0066】
図11A〜図11Eは、平坦化層を備えたGBAW導波体構造におけるプロセスステップを示す図である。
【0067】
図1Aには、GBAWにより動作する共振器R1が略示されており、この共振器は変換器W1およびその下に配置された圧電層PSを有している。図2Bにも示されている変換器W1は、図2Aに示されている第1の金属層ME1に形成されている。金属層ME1および圧電層PSは図9Eに示されている層系SSに対応しており、これは導波体として用いられ、GBAWを導くのに適している。
【0068】
図1B、図1Cに示されている素子は、互いに音響的に結合された2つの共振器R1,R2を有している。
【0069】
GBAWは横方向で(この方向を以下では長手方向と称する)基板を案内され、この基板の上に変換器構造が配置されている。2つの共振器間の音響結合を、変換器が並置されている場合には横方向平面で、変換器が上下に配置されている場合には垂直方向で行うことができる。電気的励起も変換器の配置に応じて、横方向平面でまたは垂直方向で行うことができる。
【0070】
図1B、図1Cには、2つの電気的ゲートを有する素子の等価回路図が示されている。第1のゲート(たとえば入力ゲート)は第1の端子11と第2の端子12を有している。第2のゲート(出力ゲート)は第1の端子21と第2の端子22を有している。1つの変形実施形態によれば、第1のゲートは対称に、第2のゲートは非対称に構成されている。さらに別の変形実施形態によれば、両方のゲートは対称に結線されている。両方のゲートを非対称に結線することも可能である。両方のゲートにおける各第1の端子11,21間に、第1の信号経路が配置されている。両方のゲートにおける各第2の端子12,22間に、第1の信号経路が配置されている。
【0071】
図1Cによれば、第1の共振器R1が第1のゲートにおける第1の端子11と第2の端子12の間に配置されている。同様に、第2のゲート21,22には第2の共振器R2が接続されている。つまりこれらの共振器R1,R2は、上述の信号経路を接続している横断分岐路中に配置されている。図1Bの場合、それぞれ異なる信号経路において音響的に結合された共振器が配置されている。
【0072】
図2AにはGBAWにより動作する素子が断面図として部分的に描かれており、この素子には構造形成された2つの金属層ME1とME2との間に配置された圧電層PSが設けられている。圧電層PSならびに金属層ME1とME2がいっしょになって1つの層系SSを成しており、これは2つの基板S1とS2との間に配置されている。
【0073】
第1の金属層ME1には、互いに逆の極性をもつ2つの電極AおよびBを備えた第1の変換器W1が形成されている。第2の金属層ME2には、互いに逆の極性をもつ2つの電極A′およびB′を備えた第2の変換器W2が形成されている。図2Bには第1の変換器W1を上から見た平面図が示されており、図2Bには第2の変換器W2の平面図が示されている。第1の変換器における電気的励起は、並置された電極Aおよび電極Bの各構造体の間で生じる。第2の変換器における電気的励起は、電極A′およびB′の並置された構造の間で生じる。このケースでは、2つの横方向の平面ME1,ME2において長手方向xに沿って、水平方向の単線の矢印によって表された電気的1次励起が生じる。互いに向かい合う電極AとA′(ないしはBとB′)の構造体の間において、垂直方向zで2次励起を生じさせることができる。
【0074】
第1の共振器R1は、第1の変換器W1およびその下に位置する圧電層PSによって形成されている。第2の共振器R2は、第2の変換器W2およびその上に位置する圧電層PSによって形成されている。
【0075】
この場合、圧電層ごとの厚さないしは金属層ME1,ME2の間隔によって、励起すべき体積波の波長が決まる。
【0076】
同じ極性をもつ各電極ストライプ中央間の間隔Lは実質的に、1次励起すべき波モードの波長λ1となる。
【0077】
圧電層の厚さhは有利には、2次励起すべき波モードの半波長λ2/2または全波長λ2となる。
【0078】
本発明におけるすべての実施形態において間隔Lを、λ(もしくはλ)の分数またはその整数倍とすることができる。また、圧電層の厚さを、λ2/2(もしくはλ1/2)の分数またはその整数倍とすることができる(添え字1もしくは2は1次励起すべきモードもしくは2次励起すべきモードを表す)。
【0079】
励起された音響波は長手方向で伝播する。音響結合は垂直方向zで生じる。白抜き矢印はすべての実施形態において音響結合の方向を表す。
【0080】
図3Aには共振器R1を備えた素子が示されており、この場合、矢印で表された電気的励起が垂直方向zにおいて、それぞれ異なる電位と接続されそれぞれ異なる金属層ME1,ME2に設けられていて互いに上下に配置された2つの電極構造体AとBとの間で生じる。
【0081】
圧電層の厚さhは有利には、(1次)励起すべき波モードの半波長λ1/2または(2n+1)(λ1/2)となる。ただしn=0,1,2...である。
【0082】
図3Bには、図3Aに示した共振器R1およびR2を長手方向に並置した素子の断面図が略示されている。
【0083】
第2の共振器R2は上下に配置された電極A′およびB′の電極構造体を有しており、これらの電極構造体の間で垂直方向の励起が行われる。第1の共振器もしくは第2の共振器における第1の電極AもしくはA′は、同じ金属層ME1に形成されている。また、第1の共振器もしくは第2の共振器における第2の電極BもしくはB′は、同じ金属層ME2に形成されている。各電極A,A′,B,B′はそれぞれ、周期的に配置された金属ストライプ(=電極構造体)を有している。さらに、第1の共振器および/または第2の共振器における電極の一方を、図3Cに示すように全体に延びた金属面として形成することも可能である。第1の共振器および第2の共振器におけるそれぞれ一方の電極を金属面として構成する場合、それらの金属面を互いに異なる平面の金属層に設けることができる。たとえば左側の共振器が金属層ME1において全体に延びる金属面を有し、右側の共振器が金属層ME2において全体に延びる金属面を有するように構成できる。白抜きの矢印によって、各共振器R1,R2間の長手方向における音響結合が示されている。
【0084】
図3Cには、図3Aに示した共振器の変形実施形態が示されており、この実施形態によれば第2の電極Bが(有利には共振器の非対称結線において基準電位G1と電気的に接続されている)導電面MF1として形成されている。
【0085】
図4Aには、図2Aに示したような長手方向における電気的1次励起が生じる共振器R1が示されている。
【0086】
この場合、金属層ME2において、櫛形の電極A,Bを備えた変換器の下に導電面MF1が配置されている。
【0087】
2次励起すべき波モードは、一方では第1の電極Aの電極構造体と導電面MF1との間において、他方では第2の電極Bの電極構造体と導電面MF1との間で励起される。1次励起もしくは2次励起は、水平方向の矢印もしくは垂直方向の矢印によって表されている。
【0088】
この場合、同じ極性をもつ各電極ストライプ中央間の間隔Lは実質的に、1次励起すべき波モードの波長λ1となる。また、圧電層の厚さhは有利には、2次励起すべき波モードの半波長λ2/2となる。
【0089】
図4Bには、図4Aに示した共振器R1およびR2を長手方向に並置して結合した素子の断面図が略示されている。第2の共振器R2は、電極A′とB′を備えた変換器W2を有している。基本的に、横断方向に伝播し2つの共振器の横断方向における音響結合に用いることのできる波を、長手方向および/または垂直方向で励起することも可能である。図4Cには、横断方向に並置されこの方向で互いに音響結合される2つの共振器R1,R2を備えた素子が平面図として略示されている。図4Dには、図4Cに示した共振器の配置構成が斜視図として描かれている。
【0090】
図4Bおよび図4Cの場合、両方の共振器R1,R2は全体に延びる同一の導電面MF1の上方に配置されている。これらの共振器の各電極は互いに電気的に絶縁されている。共振器R1,R2は、圧電層と導電面MF1を有する1つの結合系を介して互いに音響的に結合されている。
【0091】
図5Aには、図4Cに示した配置構成の変形実施形態が示されており、この実施形態によれば各変換器W1,W2は固有の導電面MF1,MF2の上方に配置されており、その際、これらの導電面は互いに電気的に絶縁されており、有利にはそれぞれ異なる基準電位と電気的に接続されている。各共振器間の音響結合は、ここでは横断方向yにおいて圧電層PS1のみを介して行われる。
【0092】
図5Bには、図4Bに示した配置構成の変形実施形態が示されており、この実施形態によれば各変換器W1,W2は固有の導電面MF1,MF2の上方に配置されている。各共振器間の音響結合は、ここでは長手方向xにおいて圧電層PS1のみを介して行われる。
【0093】
図6には、2つの横方向の励起平面ME1,ME2を有する本発明による素子が示されている。電極AおよびBの電極構造体を備えた第1の変換器W1は第1の金属層ME1に配置されており、電極A′およびB′の電極構造体を備えた第2の変換器W2は第2の金属層ME2に配置されている。この場合、横方向の電気的励起は、同一変換器においてそれぞれ異なる電位と接続され金属層ME1もしくはME2に設けられている各電極構造体間で、つまり第1の変換器における電極AとBとの間もしくは第2の変換器における電極A′とB′との間で、長手方向xにおいて行われる。図2Aとの相違点は、層系が1つの圧電層だけの代わりに、第3の金属層ME3によって互いに分離された2つの圧電層PS1,PS2を有していることである。(中央の)第3の金属層ME3には、2つの変換器の間に配置され全体に延びる導電面MF1が形成されている。
【0094】
導電面MF1は有利には基準電位G1と接続されており、アース面を成している。この場合、有利には垂直方向においても、第1の変換器または第2の変換器の各電極構造体間で、2次波が励起される。別の変形実施形態によれば、導電面MF1を浮いた状態とすることもできる。別の変形実施形態によれば、導電面MF1をフィンガ構造または格子構造によって置き換えることも可能である。第1の変換器において励起されるGBAWは第1の圧電層PS1において、第2の変換器において励起されるGBAWは第2の圧電層PS2において、横方向(ここでは長手方向)で導かれる。図6によれば共振器R1,R2は、2つの圧電層PS1,PS2とアース面MF1を含む結合系を介して、垂直方向に互いに音響的に結合されている。
【0095】
図7には、図3Bに示されている素子の変形実施形態が示されている。この場合、図3Bとは異なり圧電層は、中央の金属層により互いに分離された2つの部分層PS1およびPS2を有している。中央の金属層には金属面ないしは導電面MF1が形成されており、これは第1の共振器R1における第1の電極Aと第2の電極Bとの間に配置されている。中央の金属層にはさらに第2の金属面ないしは導電面MF2が形成されており、これは第1の共振器R2における第1の電極A′と第2の電極B′との間に配置されている。これらの金属面MF1,MF2は有利には互いに電気的に絶縁されており、1つの実施形態によればそれぞれ固有の電位G1もしくはG2と電気的に接続されている。別の実施形態によれば、金属面MF1,MF2を互いに電気的に接続しておくことができる。
【0096】
第1の共振器R1において、個々の電極(AもしくはB)と金属面MF1との間で垂直方向の励起が行われる。第2の共振器R2において、個々の電極(A′もしくはB′)と金属面MF2との間で垂直方向の励起が行われる。個々の圧電層PS1,PS2のところで双方の共振器において励起された波は、これらの層を介して互いに結合される。
【0097】
図8Aには2つの共振器R1およびR2を備えた素子が示されており、この場合、各共振器の電極A,B(もしくはA′,B′)は互いに向かい合って位置しており、つまり互いにそれぞれ異なる素子ME1,ME2に配置されている。図8Bには第1の共振器R1が示されており、これは第1の(ホット)電極Aと第2の(コールド)電極Bを有している。図8Cには第2の共振器R2が示されており、これは第1の(たとえばコールド)電極Aと第2の(ホット)電極B′を有している。電極構造体A,A′は金属層ME1に形成されており、交互に配置されている。電極構造体B,B′は金属層ME2に形成されており、交互に配置されている。
【0098】
第3の金属層ME3に形成されている導電面MF3は、この実施形態では有利にはアースにおかれている。
【0099】
1次励起は、第1の共振器もしくは第2の共振器の電極構造体と導電面との間で垂直方向に行われる。2次音響モードは、第1の共振器もしくは第2の共振器においてそれぞれ異なる電位に接続され同一の金属層ME1に存在する並置された2つの電極構造体AとA′との間で長手方向に励起される。さらに、第1の共振器もしくは第2の共振器においてそれぞれ異なる電位に接続され同一の金属層ME2に存在する並置された2つの電極構造体BとB′との間で、別の2次音響モードが長手方向に励起される。
【0100】
この場合、図8Aに示されているように第3の金属層ME3により圧電層を2つの部分層に分離する構成を省くこともできる。垂直方向の励起は、第1の共振器において第1の電極Aとこれと向き合った第2の電極Bとの間で行われる。さらに垂直方向の励起は、第2の共振器において第1の電極A′とこれと向き合った第2の電極B′との間でも行われる。
【0101】
垂直方向においても長手方向においても励起される波モードは横方向で伝播する。長手方向で励起されるモードと垂直方向で励起されるモードを同じ方向(たとえば長手方向)xで伝播させることができる。垂直方向で励起される波モードと長手方向で励起される波モードをたとえば90°異ならせることも可能である。たとえばこの場合、長手方向で励起される波モードは長手方向で進行し、垂直方向で励起される波モードは横方向yで進行する。さらに、垂直方向で励起される波モードを長手方向で伝播させ、長手方向で励起される波モードを横方向で伝播させることも可能である。
【0102】
図8Aの場合、共振器R1,R2は長手方向で音響的に互いに結合される。
【0103】
図9A〜図9Eには、GBAWにより動作し2つの励起平面をもつ素子を製造する際のプロセスステップが概略的に示されている。
【0104】
最初に、図9Aに示されている層構造が準備される。この場合、犠牲基板OSの上に、第1の金属層ME1と圧電層PSと構造形成された第2の金属層ME2が配置される。図9Aに示されている層構造は180°回転させられ、その際、犠牲基板OSは上側に向けられる。1つの変形実施形態によれば、はじめは全体に渡って延びている第2の金属層ME2において、たとえばエッチングにより電極構造体が形成される。構造形成された金属層を、マスクを利用して構造形成することも可能である。
【0105】
図9Bに示されているプロセスステップによれば、既述の層構造が第2の基板S2と固定的に接合される。その後、犠牲基板OSが取り除かれる(図9C)。
【0106】
電極構造体とコンタクト面を形成するために、金属層ME1が構造形成される(図9D)。構造形成された金属層ME1の上に、基板S1が取り付けられる(図9E)。この実施形態によれば、波を導く層系SSには上下に順次配置される層ME2,PS,ME1が含まれている。
【0107】
図10A〜図10Eには別の方法が示されている。図10A〜図10Cに示されているステップは図9A〜図9Cのステップに対応しているが、この場合、第1の金属層ME1を第3の金属層ME3に置き換えることができ、ないしは圧電層PSを第1の圧電層PS1に置き換えることができる。
【0108】
第3の金属層ME3の開放されている方の表面上に第1の圧電層PS1が取り付けられ、構造形成された金属層ME1がこの層の上に形成される(図10D)。さらにこの金属層ME1の上に基板S1が取り付けられる(図10E)。この実施形態によれば、波を導く層系SSには上下に順次配置される層ME2,PS2,ME3,PS1,ME1が含まれている。
【0109】
図11A〜11Eには、図10A〜10Eで説明したプロセスの変形実施形態が示されている。
【0110】
第1の基板S1と第1の金属層ME1との間ならびに第2の基板S2と第2の金属層ME2との間に、平坦化された誘電層DS1もしくはDS2が形成され、これらの誘電層は第1もしくは第2の基板S1,S2へ向かって平坦な表面を有している。
【0111】
この実施形態によれば、波を導く層系SSには上下に順次配置される層DS2,ME2,PS2,ME3,PS1,ME1およびDS1が含まれている。
【0112】
図10A〜図10Eによるプロセスの利点は、これによって圧電部分層においてそれぞれ異なる圧電軸配向をもつ層系を形成できることである。
【0113】
実施例では本発明について限られた数の実施形態しか説明できなかったが、本発明はこれらに限定されるものではない。素子の特性を要求に合わせて変更する目的で、たとえば変換器やレフレクタといった電気音響的にアクティブな構造体を任意の個数および任意の形状で製造することができる。 本発明は既述の材料あるいは特定の周波数レンジに限定されるものではない。また、1つの実施例と関連して言及した特徴は既述の実施形態に限定されるものではなく、別の実施形態と組み合わせることができる。さらにすべての金属層に、電極構造体のほか外部から接触接続可能なコンタクト面を設けることができる。種々の金属層に設けられている電極構造体が、互いに異なる高さおよび組成をもつようにしてもよい。さらにすべての層に、上下に連続する複数の部分層をもたせることもできる。たとえば1つの金属層を、一例としてAlおよびCuから成る層列とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】変換器を含む共振器を示す図
【図1B】分岐路に配置され互いに音響的に結合された共振器を示す図(等価回路図)
【図1C】それぞれ異なる信号経路に配置され互いに音響的に結合された共振器を示す図(等価回路図)
【図2A】GBAWにより動作する素子の層構造を示す断面図
【図2B】図2Aに示した第1の変換器の平面図
【図2C】図2Aに示した第2の変換器の平面図
【図3A】GBAWにより動作する共振器の層構造を示す断面図
【図3B】GBAWにより動作する素子の層構造を示す断面図
【図3C】図3Aに示した共振器の変形実施形態を示す図
【図4A】GBAWにより動作する共振器の層構造を示す断面図
【図4B】図4Aに示した2つの共振器を示す図
【図4C】図4Aに示した2つの共振器から成る共振器の配置構成を描いた平面図
【図4D】図4Bに示した共振器の配置構成を描いた斜視図
【図5A】圧電層を介して横断方向で音響的に結合された図4Aによる共振器を備えた素子を示す平面図
【図5B】図4Aに示した2つの共振器を示す図
【図6】図2Aに示した素子の変形実施形態を示す図
【図7】図3Bに示した素子の変形実施形態を示す図
【図8A】それぞれ異なる共振器の相互にかみ合った電極を備えた素子を垂直方向の1次励起とともに示す図
【図8B】図8Aによる第1の共振器の斜視図
【図8C】図8Aによる第2の共振器の斜視図
【図9】1つの圧電層だけが設けられたGBAW導波体構造におけるプロセスステップを示す図
【図10】2つの圧電層を備えたGBAW導波体構造におけるプロセスステップを示す図
【図11】平坦化層を備えたGBAW導波体構造におけるプロセスステップを示す図
【符号の説明】
【0115】
11,12 第1のゲートの端子
21,22 第2のゲートの端子
A 第1の共振器R1の第1の電極
A′ 第2の共振器R2の第1の電極
B 第1の共振器R1の第2の電極
B′ 第2の共振器R2の第2の電極
DS1,DS2 誘電層
G1 第1の基準電位
G2 第2の基準電位
MEj j番目の金属層、j=1〜3
MF1 第1の導電面
MF2 第2の導電面
OS 犠牲基板
PS,PS1,PS2 圧電層
R1 第1の共振器
R2 第2の共振器
SS 層系
S1 第1の基板
S2 第2の基板
W1 第1の変換器
W2 第2の変換器
x 長手方向
y 横断方向
z 垂直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響波により動作する素子において、
層系と第1の共振器と第2の共振器とが設けられており、
前記層系は、圧電層(PS1)および該圧電層(PS1)の上に配置された第1の金属層(ME1)を含んでおり、
前記第1の共振器は、前記第1の金属層(ME1)の上に形成された第1の電極(A)を備え、該第1の電極(A)は、波の伝播方向で周期的に配置された電極構造体を有しており、
前記第2の共振器は、前記第1の共振器と音響的に結合されかつ該第1の共振器とは電気的に絶縁されており、
前記層系は導波体を成しており、該導波体を介してガイド音響体積波が横方向に案内されることを特徴とする、
音響波により動作する素子。
【請求項2】
請求項1記載の素子において、
前記第1の共振器は、前記第1の金属層(ME1)に形成された第2の電極(B)を備え、該第2の電極(B)は、波の伝播方向で周期的に配置された電極構造体を有しており、前記第1の電極(A)と前記第2の電極(B)の電極構造体は交互に配置されていて第1の変換器(W1)を成すことを特徴とする素子。
【請求項3】
請求項1記載の素子において、
前記圧電層(PS1)の下に配置された第2の金属層(ME2)が設けられており、前記第1の共振器は、該第2の金属層(ME2)に形成された第2の電極(B)を備え、該第2の電極(B)は、波の伝播方向で周期的に配置された電極構造体を有しており、前記第1の電極(A)と前記第2の電極(B)の電極構造体は上下に配置されていることを特徴とする素子。
【請求項4】
請求項2記載の素子において、
前記圧電層(PS1)の下に配置された第2の金属層(ME2)が設けられており、前記第2の共振器は第2の変換器(W2)を有し、該第2の変換器(W2)は相互にかみ合った電極(A′,B′)を備えており、前記第1の変換器(W1)と第2の変換器(W2)の電極構造体は互いに向き合って配置されていることを特徴とする素子。
【請求項5】
請求項1記載の素子において、
前記第1の圧電層(PS1)の下に配置された第2の金属層(ME2)と、該第2の金属層(ME2)に形成され第1の変換器(W1)の下に配置された第1の導電面(MF1)が設けられており、該第1の導電面(MF1)は、前記第1の共振器の第2の電極(B)として用いられ、前記第2の共振器は、前記第1の金属層(ME1)に形成された第2の変換器(W2)を有しており、
前記第2の金属層(ME2)に形成され該第2の変換器(W2)の下に配置された第2の導電面(MF2)が設けられており、該第2の導電面(MF2)は、前記第2の共振器の第2の電極(B′)として用いられ、前記第1の導電面(MF1)とは電気的に絶縁されていることを特徴とする素子。
【請求項6】
請求項1記載の素子において、
前記第1の圧電層(PS1)の下に配置された第2の金属層(ME2)と、該第2の金属層(ME2)に形成され第1の変換器(W1)の下に配置された第1の導電面(MF1)が設けられており、該第1の導電面(MF1)は、前記第1の共振器の第2の電極(B)として用いられ、前記第2の共振器は、前記第1の金属層(ME1)に形成された第2の変換器(W2)を有しており、前記第1の導電面(MF1)も該第2の変換器(W2)の下に配置されていることを特徴とする素子。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項記載の素子において、
前記両方の共振器は、前記圧電層(PS1)を含む結合系を介して互いに音響的に結合されていることを特徴とする素子。
【請求項8】
請求項7記載の素子において、
前記圧電層は、第3の金属層(ME3)により分離された圧電部分層(PS1,PS2)を有しており、前記結合系は、第1の圧電部分層(PS1)と前記第3の金属層(ME3)と第2の圧電部分層(PS2)の複合体により形成されていることを特徴とする素子。
【請求項9】
請求項8記載の素子において、
前記第3の金属層(ME3)に第1の導電面(MF1)が形成されており、該第1の導電面は前記第1の変換器(W1)と前記第2の変換器(W2)との間に配置されていることを特徴とする素子。
【請求項10】
請求項6または9記載の素子において、
前記導電面(MF1)はアースと電気的に接続されていることを特徴とする素子。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項記載の素子において、
前記両方の共振器は、前記結合系を介して横断方向(y)で互いに音響的に結合されていることを特徴とする素子。
【請求項12】
請求項6から10のいずれか1項記載の素子において、
前記両方の共振器は、前記結合系を介して長手方向(x)で互いに音響的に結合されていることを特徴とする素子。
【請求項13】
請求項6から10のいずれか1項記載の素子において、
前記両方の共振器は、前記結合系を介して垂直方向(z)で互いに音響的に結合されていることを特徴とする素子。
【請求項14】
請求項2から13のいずれか1項記載の素子において、
前記第1および/または第2の共振器における電気的励起は、層平面に対し垂直方向(z)で行われることを特徴とする素子。
【請求項15】
請求項14記載の素子において、
垂直方向(z)における電気的励起は、第1または第2の変換器(W1,W2)と該変換器と対向する導電面(MF1,MF2)との間で行われることを特徴とする素子。
【請求項16】
請求項2から11または13から15のいずれか1項記載の素子において、
前記第1および/または第2の変換器における電気的励起は長手方向(x)で行われることを特徴とする素子。
【請求項17】
請求項2から16のいずれか1項記載の素子において、
第1および第2の電気的ゲートの各第1の端子(11,21)間に配置された第1の信号経路と、該第1および第2の電気的ゲートの各第2の端子(12,22)間に配置された第2の信号経路が設けられており、前記第1の変換器(W1)は前記第1の信号経路中に、前記第2の変換器は第2の信号経路中に配置されていることを特徴とする素子。
【請求項18】
請求項2から16のいずれか1項記載の素子において、
第1および第2の電気的ゲートの各第1の端子(11,21)間に配置された第1の信号経路と、該第1および第2の電気的ゲートの各第2の端子(12,22)間に配置された第2の信号経路と、前記第1の信号経路と前記第2の信号を接続する分岐路が設けられており、前記第1の変換器(W1)は第1の分岐路中に、前記第2の変換器(W2)は第2の分岐路中に配置されていることを特徴とする素子。
【請求項19】
ガイド音響波により動作する素子の製造方法において、
A)犠牲基板(OS)の上に、全体に延びる金属層(ME3)と圧電層(PS2)と構造形成された金属層(ME2)から成る層構造を形成するステップと、
B)該層構造を前記構造形成された金属層(ME2)の側で基板(S2)と固定的に接合するステップと、
C)前記犠牲基板(OS)を取り除くステップと、
D)前記全体に延びる金属層(ME3)の開放されている表面上に、別の圧電層(PS1)と別の構造形成された金属層(ME1)を含む別の層構造を取り付けるステップと、
E)該別の層構造を前記別の構造形成された金属層(ME1)の側で別の基板(S1)と固定的に接合するステップ
が設けられていることを特徴とする、ガイド音響波により動作する素子の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、
ステップB)および/またはステップE)における前記層構造と前記基板との接合をウェハボンディングにより行うことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19記載の方法において、
前記基板(S1,S2)の少なくとも一方を圧電層として取り付けることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項19または20記載の方法において、
ステップB)の前の層構造および/またはステップE)の前の別の層構造に最後の層として平坦化層を形成し、該平坦化層をステップB)またはステップE)において個々の基板(S1,S2)と接合することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項19から22のいずれか1項記載の方法において、
ステップA)またはステップD)における構造形成された金属層(ME1,ME2)の形成のため最初に、全体に延びる金属層を形成し、次にエッチングにより該金属層に電極構造体を構造形成することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項19から22のいずれか1項記載の方法において、
前記構造形成された金属層(ME1,ME2)をマスクを利用して形成することを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【公表番号】特表2008−516490(P2008−516490A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535054(P2007−535054)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010387
【国際公開番号】WO2006/040001
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】