音響装置、音像設定方法、音像設定プログラム及びその記録媒体
【課題】
原音響信号に含まれる所定種類の音声に関する音像位置を選択的に変化させる。
【解決手段】
抽出処理部230Aが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成(2チャンネル構成)の信号から、指定された種類の音声の信号成分を抽出する。そして、信号補正部240Aが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成の信号が適宜分配されて生成された分配チャンネル信号DCAL〜DCASRのそれぞれに、指定された種類の音声の音像位置の補正量に対応して分配チャンネル信号DCAL〜DCASRごとに定める比率で、抽出結果信号EDAを加算する。
原音響信号に含まれる所定種類の音声に関する音像位置を選択的に変化させる。
【解決手段】
抽出処理部230Aが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成(2チャンネル構成)の信号から、指定された種類の音声の信号成分を抽出する。そして、信号補正部240Aが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成の信号が適宜分配されて生成された分配チャンネル信号DCAL〜DCASRのそれぞれに、指定された種類の音声の音像位置の補正量に対応して分配チャンネル信号DCAL〜DCASRごとに定める比率で、抽出結果信号EDAを加算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置、音像設定方法、音像設定プログラム、及び、当該音像設定プログラムが記録された記録媒体である。
【背景技術】
【0002】
従来から、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の普及に伴って、複数のスピーカを有するマルチチャンネルサラウンド方式の音響装置が普及している。これにより、家庭内空間や車両内空間においても、臨場感溢れるサラウンド音声を楽しむことができるようになってきている。
【0003】
ところで、音響装置の設置環境は様々である。このため、音声を出力する複数のスピーカを、マルチチャンネルサラウンド方式の観点における対称性を有する位置に配置することができない場合がしばしば発生する。特に、車両にマルチチャンネルサラウンド方式の音響装置を搭載する場合には、聴取位置である着座位置の制約等から、聴取位置に対して、複数のスピーカを、マルチチャンネルサラウンド方式の観点から推奨される対称性を有する位置に配置することができない。
【0004】
このため、音声コンテンツの作成者の意図とは異なる聴取位置に対する複数のスピーカの配置で音声コンテンツを再生することになる場合がある。こうした場合には、例えば、セリフ音声を含む音声コンテンツにおいて、コンテンツ作成者としては、聴取者の正面にセリフ音声の音像を設定することを意図していた場合であっても、セリフ音声の音像位置が聴取者の正面からずれてしまうことがある。
【0005】
かかる事態が発生した場合に、音響装置として標準的に搭載されているバランス制御機能やフェーダ制御機能を利用して音像位置を移動させる技術(特許文献1参照)を適用することにより対処することが一般的に行なわれている(以下、「従来例」という)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−197198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来例の技術では、上記のようなセリフ音声を含む音声コンテンツの再生に際して、セリフ音声の音像を移動させるその移動量を同じ量だけ、例えば、バックグラウンドミュージック音声の音像や背景音の音像等の他の音声の音像も移動してしまう。このため、音像移動により、他の音声についてバランスがくずれてしまい、再生音全体としては聞きづらいものになってしまうことがある。
【0008】
このため、所定種類の音声についてだけ音像位置を移動させ、マルチチャンネルサラウンド環境において、利用者にとって快適な音声再生を行うことができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決しようとする課題の一つとして挙げられる。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、原音響信号に含まれる所定種類の音声に関する音像位置を選択的に変化させることができる音響装置及び音像設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、複数である第1の数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置であって、第2の数のチャンネル信号を含む第1音響信号から前記複数のスピーカそれぞれに対応する第2音響信号を生成する生成手段と;前記第1音響信号に含まれる所定種類の音声の信号を抽出する抽出手段と;前記所定種類の音声の前記音場空間における音像位置に対応して前記スピーカごとに定められた比率で、前記抽出手段による抽出結果を前記第2音響信号における前記複数のスピーカそれぞれに対応する信号に加算する補正手段と;を備えることを特徴とする音響装置である。
【0011】
請求項11に記載の発明は、複数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置において使用される音像設定方法であって、前記スピーカの数とは異なる数のチャンネル信号を含む第1音響信号から前記複数のスピーカそれぞれに対応する第2音響信号を生成する生成工程と;前記第1音響信号に含まれる所定種類の音声の信号を抽出して補正用抽出信号を生成する抽出工程と;前記所定種類の音声の前記音場空間における音像位置に対応して前記スピーカごとに定められた比率で、前記補正用抽出信号を前記第2音響信号における前記複数のスピーカそれぞれに対応する信号に加算する補正工程と;を備えることを特徴とする音像設定方法である。
【0012】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の音像設定方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする音像設定プログラムである。
【0013】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の音像設定プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面においては、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。なお、本第1実施形態の説明では、2チャンネルステレオ方式に従って作成された音声コンテンツを、4チャンネルマルチサラウンド方式で再生する場合を例示して説明する。
【0016】
[構成]
図1には、第1実施形態に係る音響装置100Aの概略的な構成がブロック図にて示されている。なお、以下の説明においては、音響装置100Aは、車両CR(図2参照)に搭載される装置であるものとする。また、この音響装置100Aは、マルチチャンネルサラウンド方式の1つである4チャンネルサラウンド方式を採用しているものとする。
【0017】
この図1に示されるように、音響装置100Aは、制御ユニット110Aと、ドライブユニット120とを備えている。
【0018】
また、音響装置100Aは、音出力ユニット130Lと、音出力ユニット130Rと、音出力ユニット130SLと、音出力ユニット130SRとを備えている。
【0019】
ここで、音出力ユニット130Lはレフトスピーカ131Lを有し、音出力ユニット130Rはライトスピーカ131Rを有している。また、音出力ユニット130SLはサラウンドレフトスピーカ131SLを有し、音出力ユニット130SRはサラウンドライトスピーカ131SRを有している。
【0020】
さらに、音響装置100Aは、表示ユニット150と、操作入力ユニット160とを備えている。
【0021】
なお、制御ユニット110A以外の要素120,130L〜130R,150,160は、制御ユニット110Aに接続されている。
【0022】
制御ユニット110Aは、音響装置100Aの全体を統括制御する。この制御ユニット110Aの詳細については、後述する。
【0023】
上記のドライブユニット120は、音声コンテンツが記録されたコンパクトディスクCDがドライブユニット120に挿入されると、その旨を制御ユニット110Aに報告する。そして、ドライブユニット120は、コンパクトディスクCDが挿入された状態で、制御ユニット110Aから音声コンテンツの再生指令DVCを受けると、再生指定がなされた音声をコンパクトディスクCDから読み出す。かかる音声コンテンツの読み出し結果は、オーディオ信号であるコンテンツデータCTDとして、制御ユニット110Aへ向けて送られる。
【0024】
なお、コンパクトディスクCDには、音声コンテンツが、2チャンネルステレオ方式で記録されているものとする。かかる2チャンネルステレオ方式では、音声チャンネルとして、レフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」とも記す)及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」とも記す)が利用されるようになっている。
【0025】
上記の音出力ユニット130L〜130SRのそれぞれは、上述したスピーカ131L〜131SRの他に、制御ユニット110Aから受信した音声出力信号AOSL〜AOSSRを増幅する増幅器を備えている。これらの音出力ユニット130L〜130SRは、制御ユニット110Aから送られてきた音声出力信号AOSL〜AOSSRに従って、計測信号、楽曲等を再生して出力する。
【0026】
本実施形態では、図2に示されるように、音出力ユニット130Lのレフトスピーカ131Lは、助手席側の前方ドア筐体内に配置される。このレフトスピーカ131Lは、助手席側を向くように配設されている。
【0027】
音出力ユニット130Rのライトスピーカ131Rは、運転席側の前方ドア筐体内に配置される。このライトスピーカ131Rは、運転席側を向くように配設されている。
【0028】
音出力ユニット130SLのサラウンドレフトスピーカ131SLは、助手席側後部の筐体内に配置される。このサラウンドレフトスピーカ131SLは、助手席側の後部座席を向くように配設されている。
【0029】
音出力ユニット130SRのサラウンドライトスピーカ131SRは、運転席側後部の筐体内に配置される。このサラウンドライトスピーカ131SRは、運転席側の後部座席を向くように配設されている。
【0030】
図1に戻り、上記の表示ユニット150は、例えば、(i)液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、PDP(Plasma Display Panel)等の表示デバイス151と、(ii)制御ユニット110Aから送出された表示制御データに基づいて、表示ユニット150全体の制御を行うグラフィックレンダラ等の表示コントローラと、(iii)表示画像データを記憶する表示画像メモリ等を備えて構成されている。この表示ユニット150は、制御ユニット110Aからの表示データIMDに従って、操作ガイダンス情報等を表示する。
【0031】
上記の操作入力ユニット160は、音響装置100Aの本体部に設けられたキー部、及び/又はキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、表示ユニット150の表示デバイス151に設けられたタッチパネルを用いることができる。なお、キー部を有する構成に代えて、又は併用して音声認識技術を利用して音声にて入力する構成を採用することもできる。
【0032】
この操作入力ユニット160を利用者が操作することにより、音響装置100Aの動作内容の設定が行われる。例えば、音声コンテンツの再生指令、音像位置補正等の利用者による入力が、操作入力ユニット160を利用して行われる。こうした入力内容は、操作入力データIPDとして、操作入力ユニット160から制御ユニット110Aへ向けて送られる。
【0033】
次に、上記の制御ユニット110Aについて説明する。上述したように、制御ユニット110Aは、音響装置100Aの全体を統括制御する。この制御ユニット110Aは、図3に示されるように、抽出制御手段、及び、補正制御手段としての制御処理部111Aと、チャンネル信号処理部112Aとを備えている。また、制御ユニット110Aは、アナログ変換部114と、音量調整部115とを備えている。
【0034】
上記の制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された指令に基づいて、チャンネル信号処理部112A及び音量調整部115を制御する。この制御処理部111Aの詳細については、後述する。
【0035】
上記のチャンネル信号処理部112Aは、ドライブユニット120から送られてきたコンテンツデータCTDを処理し、スピーカ131L〜131SRに対応するチャンネル処理データPCDL〜PCDSRを生成する。かかる機能を有するチャンネル信号処理部112Aは、図4に示されるように、チャンネル分離部210Aと、生成手段としてのチャンネル分配部220Aと、抽出手段としての抽出処理部230Aと、補正手段としての信号補正部240Aとを備えている。
【0036】
上記のチャンネル分離部210Aは、ドライブユニット120からのコンテンツデータCTDを受ける。そして、チャンネル分離部210Aは、コンテンツデータCTDを展開し、オーディオ信号であるデジタル音データ信号を生成する。引き続き、チャンネル分離部210Aは、生成されたデジタル音データ信号を解析し、デジタル音データ信号に含まれるチャンネル指定情報に従って、デジタル音データ信号を、2チャンネルステレオ方式におけるL,Rチャンネルに対応する2個の分離チャンネル信号SCAL,SCARに分離する。このようにして分離された分離チャンネル信号SCAL,SCARは、チャンネル分配部220A及び抽出処理部230Aへ向けて送られる。
【0037】
上記のチャンネル分配部220Aは、チャンネル分離部210Aからの分離チャンネル信号SCAL,SCARを受ける。そして、チャンネル分配部220Aは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCAL,SCARから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを生成する。こうして生成された分配チャンネル信号DCAL〜DCASRは、信号補正部240Aへ送られる。
【0038】
上記の抽出処理部230Aは、チャンネル分離部210Aからの分離チャンネル信号SCAL,SCARを受ける。そして、上記の抽出処理部230Aは、制御処理部111Aからの抽出制御信号EXC及びバンドバスフィルタ(BPF)制御信号BPCに従って、指定された種類の信号(例えば、セリフ音声信号)の成分を抽出し、抽出結果信号EDAを生成する。かかる機能を有する抽出処理部230Aは、図5に示されるように、個別抽出手段としての適応フィルタ231L,231Rと、加算手段としての加算部232と、加算結果フィルタリング手段としてのバンドバスフィルタ(BPF)233とを備えている。
【0039】
上記の適応フィルタ231Lは、チャンネル分離部210Aからの分離チャンネル信号SCALを受ける。そして、適応フィルタ231Lは、制御処理部111Aからの抽出制御信号EXCにより指定された上記の指定された種類の信号の情報に基づいて、分離チャンネル信号SCALにおける当該指定された種類の信号の成分抽出を行う。かかる抽出結果は、抽出結果信号EXTLとして、加算部232へ送られる。
【0040】
かかる機能を有する適応フィルタ231Lは、本実施形態では、不図示の直列接続された所定数の遅延部、各遅延部からの出力信号に指定係数倍する乗算部、全ての乗算部から出力された信号を加算する加算部、加算部による加算結果等に基づいて各乗算部に指定する係数を決定する係数決定部等から構成されている。すなわち、適応フィルタ231Lは、分離チャンネル信号SCALについて、時間領域演算を行なって、当該指定された種類の信号の成分抽出を行うようになっている。
【0041】
上記の適応フィルタ231Rは、チャンネル分離部210Aからの分離チャンネル信号SCARを受ける。そして、適応フィルタ231Rは、制御処理部111Aからの抽出制御信号EXCにより指定された上記の指定された種類の信号の情報に基づいて、分離チャンネル信号SCARにおける当該指定された種類の信号の成分抽出を行う。かかる抽出結果は、抽出結果信号EXTRとして、加算部232へ送られる。
【0042】
なお、適応フィルタ231Rは、適応フィルタ231Lと同様に構成されている。
【0043】
上記の加算部232は、適応フィルタ231Lからの抽出結果信号EXTLを入力端子I1で受ける。また、加算部232は、適応フィルタ231Rからの抽出結果信号EXTRを入力端子I2で受ける。そして、加算部232は、入力端子I1における受信信号と、入力端子I2における受信信号とを加算し、加算結果信号AEAを出力端子OからBPF233へ向けて出力する。
【0044】
上記のBPF233は、加算部232からの加算結果信号AEAを受ける。そして、BPF233は、制御処理部111AからのBPF制御信号BPCに従って、上記の指定された種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる。こうしてBPF233を通過した信号は、抽出結果信号EDAとして信号補正部240Aへ送られる。
【0045】
図4に戻り、上記の信号補正部240Aは、チャンネル分配部220Aからの分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを受ける。また、信号補正部240Aは、抽出処理部230Aからの抽出結果信号EDAを受ける。そして、信号補正部240Aは、制御処理部111Aからの補正制御信号ACAに従い、抽出結果信号EDAに基づいて、分配チャンネル信号DCAL〜DCASRに対する補正をして、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRを生成する。かかる機能を有する信号補正部240Aは、図6に示されるように、4個の個別補正部241AL〜241ASRを備えている。
【0046】
上記の個別補正部241Aj(j=L〜SR)のそれぞれは、補正制御信号ACAにおける個別補正制御信号ACAjによる指定に従って、分配チャンネル信号DCAjを補正する。かかる機能を有する個別補正部241Ajは、図7に示されるように、可変減衰部246と、加算部247とを備えている。
【0047】
上記の可変減衰部246は、抽出処理部230Aからの抽出結果信号EDAを入力端子Iで受ける。また、可変減衰部246は、制御処理部111Aからの個別補正制御信号ACAjを制御端子Cで受ける。そして、可変減衰部246は、個別補正制御信号ACAjにより指定された係数を抽出結果信号EDAに乗じる。可変減衰部246は、この乗算結果は、出力端子Oから、個別補正信号AVAjとして加算部247へ向けて出力する。
【0048】
上記の加算部247は、チャンネル分配部220Aからの分配チャンネル信号DCAjを入力端子I1で受ける。また、加算部247は、可変減衰部246からの個別補正信号AVAjを入力端子I2で受ける。そして、加算部247は、入力端子I1における受信信号と、入力端子I2における受信信号とを加算する。加算部247は、加算結果をチャンネル処理データPCDjとして、出力端子Oからアナログ変換部114へ向けて出力する。
【0049】
図3に戻り、上記のアナログ変換部114は、チャンネル信号処理部112Aから送られてきたデジタル信号であるチャンネル処理データPCDL〜PCDSRを、それぞれアナログ信号に変換する。このアナログ変換部114は、当該4種のデジタル信号に対応して、互いに同様に構成された4個のDA(Digital to Analogue)変換器を備えている。このアナログ変換部114による変換結果であるアナログ信号PBSL〜PBSSRは、音量調整部115へ向けて送られる。
【0050】
上記の音量調整部115は、アナログ変換部114からのアナログ信号PBSL〜PBSSRを受ける。そして、音量調整部115は、アナログ信号PBSL〜PBSSRのそれぞれに対して、制御処理部111Aからの音量調整指令VLCに従って、音量を調整する。かかる調整結果は、音声出力信号AOSL〜AOSSRとして、音出力ユニット130L〜130SRへ向けて出力される。
【0051】
次に、制御処理部111Aについて説明する。この制御処理部111Aは、上述した他の構成要素を制御しつつ、音響装置100Aの機能を発揮させる。この制御処理部111Aは、利用者が再生すべき音声コンテンツの指定を支援するための案内画面を表示ユニット150に表示させる。そして、操作入力ユニット160から音声コンテンツを指定した再生指令が入力されると、制御処理部111Aは、ドライブユニット120を制御して、再生コンテンツのデータ読み出しを制御する。
【0052】
また、制御処理部111Aは、音量調整部115を制御して、音出力ユニット130L〜130SRのスピーカ131L〜131SRからの出力音量を調整する。この出力音量の制御に際して、制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された音量指定に従って音量調整指令VLCを生成し、音量調整部115へ向けて送る。
【0053】
制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された、補正対象となる音声の種類の指定に従って、上述した抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを生成する。そして、制御処理部111Aは、生成された抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを、チャンネル信号処理部112Aの抽出処理部230Aへ向けて出力する。
【0054】
また、制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された、補正対象となる音声の音像位置の補正量(移動量)の指定に従って、上述した補正制御信号ACAを生成する。そして、制御処理部111Aは、生成された補正制御信号ACAを、チャンネル信号処理部112Aの信号補正部240Aへ向けて出力する。
【0055】
[動作]
次に、上記のように構成された音響装置100Aの動作について、音像位置の補正処理に主に着目して説明する。なお、以下の説明においては、コンテンツデータCTDには、セリフ音声、背景音音声及びBGM音声の3種類の音声が含まれており、セリフ音声の音像位置を補正する場合を例示して説明する。
【0056】
利用者が、ドライブユニット120にCDを挿入して、操作入力ユニット160に音声コンテンツを指定した再生指令を入力すると、その旨が、操作入力データIPDとして、制御処理部111Aへ送られる(図3参照)。この再生指令を受けると、制御処理部111Aは、まず、補正処理を行わない指定、すなわち、上記の補正処理用の係数を「0」に指定した個別補正制御信号ACAj(j=L〜SR)を生成し、補正信号ACAとして信号補正部240Aへ送る(図4及び図6参照)。
【0057】
引き続き、制御処理部111Aは、ドライブユニット120を制御して、再生コンテンツのデータ読み出しを制御する。かかる制御のもとでCDから読み出されたコンテンツデータCTDは、チャンネル分離部210Aへ送られる(図4参照)。コンテンツデータCTDを受けたチャンネル分離部210Aは、コンテンツデータCTDを展開して解析し、2チャンネルステレオ方式におけるL,Rチャンネルに対応する2個の分離チャンネル信号SCAL,SCARに分離し、チャンネル分配部220A及び抽出処理部230Aへ向けて送る(図4参照)。
【0058】
分離チャンネル信号SCAL,SCARを受けたチャンネル分配部220Aは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCAL,SCARから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを生成する。チャンネル分配部220Aは、こうして生成された分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを信号補正部240Aへ送る(図4参照)。
【0059】
なお、信号補正部240Aにおける信号補正用の抽出処理を行う抽出処理部230Aの動作については、後述する信号補正部240Aにおいて信号補正処理を行う場合に説明することにし、この段階における説明を省略する。
【0060】
この時点では、上述のように、補正処理を行わない旨の補正制御信号ACAを制御処理部111Aから受けているので、信号補正部240Aは、受信した分配チャンネル信号DCAL〜DCASRに何等の補正を行わずに、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRとして、アナログ変換部114へ向けて送る(図4参照)。この後、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRについて、アナログ変換部114においてアナログ信号に変換され、さらに、音量調整部115において音量調整が行われて、音声出力信号AOSL〜AOSSRが生成される。そして、音声出力信号AOSL〜AOSSRが音出力ユニット130L〜130SRに供給される(図3参照)。
【0061】
この結果、CDに記録された音声コンテンツをほぼ正確に反映した音声が、スピーカ131L〜131SRから出力される。こうしたCDに記録された音声コンテンツをほぼ正確に反映した音声再生による音像位置と、聴取者との位置関係の例が、図8に示されている。
【0062】
以上のようにして再生された音声を聴取した聴取者が、例えば、セリフ音声の音像位置に違和感を覚え、セリフ音声の音像位置の補正を行う音像位置補正指令を入力すると、その旨が、操作入力データIPDとして、制御処理部111Aへ送られる(図3参照)。なお、音像位置補正指令では、補正対象の音声の種類(ここでは、セリフ音声)、及び、音像位置の補正量、すなわち、セリフ音像位置の移動量が指定される。
【0063】
音像位置補正指令を受けた制御処理部111Aは、音像位置補正指定において指定された補正対象音声の種類の指定に従って、上述した抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを生成する。そして、制御処理部111Aは、生成された抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを抽出処理部230Aへ向けて送る(図4参照)。
【0064】
また、制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された、音像位置補正指定において指定された補正対象となる音声の音像位置の補正量(移動量)の指定に従って、上述した補正制御信号ACAを生成する。そして、制御処理部111Aは、生成された補正制御信号ACAを信号補正部240Aへ向けて送る(図4参照)。
【0065】
抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを受けた抽出処理部230Aは、抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、分離チャンネル信号SCAL,SCARから指定された種類の音声信号(この場合には、セリフ音声信号)の成分を抽出する。かかる抽出処理に際しては、適応フィルタ231Lが、抽出制御信号EXCにより指定された上記の指定された種類の信号の情報に基づいて、分離チャンネル信号SCALに関する上述した時間領域演算を行うことにより、分離チャンネル信号SCALから当該指定された種類の音声信号の成分抽出を行う。かかる抽出結果は、抽出結果信号EXTLとして、加算部232へ送られる(図5参照)。
【0066】
また、適応フィルタ231Rが、抽出制御信号EXCにより指定された上記の指定された種類の音声信号の情報に基づいて、分離チャンネル信号SCARに関する上述した時間領域演算を行うことにより、分離チャンネル信号SCARから当該指定された種類の音声信号の成分抽出を行う。かかる抽出結果は、抽出結果信号EXTRとして、加算部232へ送られる(図5参照)。
【0067】
抽出結果信号EXTL及び抽出結果信号EXTRを受けた加算部232は、これらを加算し、加算結果信号AEAとして、BPF233へ送る。加算結果信号AEAを受けたBPF233は、BPF制御信号BPCに従って、指定された種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる。こうしてBPF233を通過した信号は、抽出結果信号EDAとして信号補正部240Aへ送られる(図5参照)。
【0068】
制御処理部111Aからの補正制御信号ACAを受けた信号補正部240Aは、補正制御信号ACAに従って、チャンネル分配部220Aからの分配チャンネル信号DCAL〜DCASRに対して、抽出処理部230Aからの抽出結果信号EDAに基づく補正を行う。かかる補正処理に際しては、信号補正部240Aの個別補正部241j(j=L〜SR)のそれぞれにおける可変減衰部246が、補正制御信号ACAにおける個別補正制御信号ACAjにより指定された係数を抽出結果信号EDAに乗じる。可変減衰部246は、この乗算結果を個別補正信号AVAjとして加算部247へ向けて送る(図7参照)。
【0069】
個別補正信号AVAjを受けた加算部247は、チャンネル分配部220Aからの分配チャンネル信号DCAjと個別補正信号AVAjとを加算する。この加算結果が、チャンネル処理データPCDjとして、出力端子Oからアナログ変換部114へ向けて送られる(図7参照)。
【0070】
この後、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRについて、上記と同様にして、アナログ変換部114においてアナログ信号に変換され、さらに、音量調整部115において音量調整が行われて、音声出力信号AOSL〜AOSSRが生成される。そして、音声出力信号AOSL〜AOSSRが音出力ユニット130L〜130SRに供給される(図3参照)。
【0071】
この結果、CDに記録された音声コンテンツにおける利用者により指定された種類の音声(この場合には、セリフ音声)の音像位置を補正した音声が、スピーカ131L〜131SRから出力される。こうしてセリフ音声の音像位置が補正された音声再生による音像位置と、聴取者との位置関係の例が、図9に示されている。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、抽出処理部230Aが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成(2チャンネル構成)の信号から、指定された種類の音声の信号成分を抽出する。そして、信号補正部240Aが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成の信号が適宜分配されて生成された分配チャンネル信号DCAL〜DCASRのそれぞれに、指定された種類の音声の音像位置の補正量に対応して分配チャンネル信号DCAL〜DCASRごとに定める比率で、抽出結果信号EDAを加算する。この結果、再生された音声における指定された種類の音声の音像位置を選択的に補正することができる。
【0073】
したがって、本実施形態によれば、音声コンテンツに含まれる所定種類の音声に関する音像位置を選択的に変化させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、音像位置の補正対象となる種類の音声と、音像位置の補正量とを、利用者が操作入力ユニット160への指令入力により指定できる。このため、利用者の利便性を向上させることができる。
【0075】
[第2実施形態]
まず、本発明の第2実施形態を、図10〜図15を参照して説明する。なお、本第2実施形態の説明では、3チャンネルサラウンド方式に従って作成された音声コンテンツを、4チャンネルマルチサラウンド方式で再生する場合を例示して説明する。
【0076】
前提として、当該3チャンネルサラウンド方式は、第1実施形態の場合における2チャンネルステレオ方式におけるLチャンネル及びRチャンネルに加えて、センタチャンネル(以下、「Cチャンネル」とも呼ぶ)を加えた方式であるものとする。そして、当該Cチャンネルが、音像位置の補正対象となる音声を主成分とするチャンネルであるものとする。
【0077】
[構成]
図10には、第2実施形態に係る音響装置100Bの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図10に示されるように、音響装置100Bは、上述した第1実施形態と比べて、制御ユニット110Aに代えて、制御ユニット110Bを備えている点のみが異なっている。以下、この相違点に主に着目して説明する。
【0078】
制御ユニット110Bは、図11に示されるように、制御ユニット110Aと比べて、制御処理部111Aに代えて制御処理部111Bを備えるとともに、チャンネル信号処理部112Aに代えてチャンネル信号処理部112Bを備える点が異なっている。
【0079】
上記の制御処理部111Bは、操作入力ユニット160に入力された指令入力指令に基づいて、チャンネル信号処理部112B及び音量調整部115を制御する。この制御処理部111Bの詳細については、後述する。
【0080】
上記のチャンネル信号処理部112Bは、図12に示されるように、チャンネル分離部210Bと、チャンネル分配部220Bとを備えている。また、チャンネル信号処理部112B、抽出処理部230Bと、信号補正部240Bとを備えている。
【0081】
上記のチャンネル分離部210Bは、ドライブユニット120からのコンテンツデータCTDを受ける。そして、チャンネル分離部210Bは、コンテンツデータCTDを展開し、オーディオ信号であるデジタル音データ信号を生成する。引き続き、チャンネル分離部210Bは、生成されたデジタル音データ信号を解析し、デジタル音データ信号に含まれるチャンネル指定情報に従って、デジタル音データ信号を、3チャンネルサラウンド方式におけるC,L,Rチャンネルに対応する3個の分離チャンネル信号SCBC〜SCBRに分離する。このようにして分離された分離チャンネル信号SCBC〜SCBRは、チャンネル分配部220B及び抽出部230Bへ向けて送られる。
【0082】
上記のチャンネル分配部220Bは、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBC〜SCBRを受ける。そして、チャンネル分配部220Bは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCBC〜SCBRから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを生成する。こうして生成された分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRは、信号補正部240Bへ送られる。
【0083】
上記の抽出処理部230Bは、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBC〜SCBRを受ける。そして、抽出処理部230Bは、制御処理部111Bからの抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、指定された種類の信号(例えば、セリフ音声信号)の成分を抽出し、抽出結果信号EDB1,EDB2を生成する。かかる機能を有する抽出処理部230Bは、図13に示されるように、抽出処理部230Aと、直接フィルタリング手段としてのバンドパスフィルタ(BPF)235とを備えている。
【0084】
上記の抽出処理部230Aは、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBL,SCBRを受ける。そして、抽出処理部230Aは、制御処理部111Bからの抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、上述した第1実施形態の場合と同様に動作して、指定された種類の信号(例えば、セリフ音声信号)の成分を抽出し、抽出結果信号EDB1を生成する。こうして生成された抽出結果信号EDB1は、信号補正部240Bへ送られる。
【0085】
上記のBPF235は、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBCを受ける。そして、BPF235は、制御処理部111BからのBPF制御信号BPCに従って、上記の指定された種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる。こうしてBPF235を通過した信号は、抽出結果信号EDB2として信号補正部240Bへ送られる。
【0086】
図12に戻り、上記の信号補正部240Bは、チャンネル分配部220Bからの分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを受ける。また、信号補正部240Bは、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB1,EDB2を受ける。そして、信号補正部240Bは、制御処理部111Bからの補正制御信号ACBに従い、抽出結果信号EDB1,EDB2に基づいて、分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRに対する補正をして、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRを生成する。かかる機能を有する信号補正部240Bは、図14に示されるように、4個の個別補正部241BL〜241BSRを備えている。
【0087】
上記の個別補正部241Bj(j=L〜SR)のそれぞれは、補正制御信号ACBにおける個別補正制御信号ACBjによる指定に従って、分配チャンネル信号DCBjを補正する。かかる機能を有する個別補正部241Bjは、図15に示されるように、個別補正部241Ajと、可変減衰部248と、加算部249とを備えている。
【0088】
上記の個別補正部241Ajは、チャンネル分配部220Bからの分配チャンネル信号DCBjと、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB1とを受ける。そして、個別補正部241Ajは、制御処理部111Bからの個別補正制御信号ACBjにおける信号ACBj1に従って、上述した第1実施形態の場合と同様に動作して、個別補正信号AVBj1を生成する。こうして生成された個別補正信号AVBj1は、加算部249へ向けて出力される。
【0089】
なお、信号ACBj1による指定内容は、上述した第1実施形態における補正制御信号ACAjと同様の内容となっている。
【0090】
上記の可変減衰部248は、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB2を入力端子Iで受ける。また、可変減衰部248は、制御処理部111Bからの個別補正制御信号ACBjにおける信号ACBj2を制御端子Cで受ける。そして、可変減衰部248は、信号ACBj2により指定された係数を抽出結果信号EDB2に乗じる。可変減衰部248は、この乗算結果は、出力端子Oから、個別補正信号AVBj2として加算部249へ向けて出力する。
【0091】
上記の加算部249は、個別補正部241Ajからの個別補正信号AVBj1を入力端子I1で受ける。また、加算部249は、可変減衰部248からの個別補正信号AVBj2を入力端子I2で受ける。そして、加算部249は、入力端子I1における受信信号と、入力端子I2における受信信号とを加算する。加算部249は、加算結果をチャンネル処理データPCDjとして、出力端子Oからアナログ変換部114へ向けて出力する。
【0092】
図11に戻り、次に、制御処理部111Bについて説明する。この制御処理部111Bは、上述した他の構成要素を制御しつつ、音響装置100Bの機能を発揮させる。この制御処理部111Bは、第1実施形態における制御処理部111Aと同様に、利用者が再生すべき音声コンテンツの指定を支援するための案内画面を表示ユニット150に表示させる。そして、操作入力ユニット160から音声コンテンツを指定した再生指令が入力されると、制御処理部111Bは、ドライブユニット120を制御して、再生コンテンツのデータ読み出しを制御する。
【0093】
また、制御処理部111Bは、制御処理部111Aと同様に、音量調整部115を制御して、音出力ユニット130L〜130SRのスピーカ131L〜131SRのからの出力音量を調整する。この出力音量の制御に際して、制御処理部111Bは、操作入力ユニット160に入力された音量指定に従って音量調整指令VLCを生成し、音量調整部115へ向けて送る。
【0094】
また、制御処理部111Bは、制御処理部111Aと同様に、操作入力ユニット160に入力された、補正対象となる音声の種類の指定に従って、上述した抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを生成する。そして、制御処理部111Bは、生成された抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを、チャンネル信号処理部112Bの抽出処理部230Bへ向けて出力する。
【0095】
また、制御処理部111Bは、操作入力ユニット160に入力された、補正対象となる音声の音像位置の補正量(移動量)の指定に従って、上述した補正制御信号ACBを生成する。そして、制御処理部111Bは、生成された補正制御信号ACBを、チャンネル信号処理部112Bの信号補正部240Bへ向けて出力する。
【0096】
[動作]
次に、上記のように構成された音響装置100Bの動作について、音像位置の補正処理に主に着目して説明する。なお、以下の説明においては、第1実施形態の場合と同様に、コンテンツデータCTDには、セリフ音声、背景音音声及びBGM音声の3種類の音声が含まれており、セリフ音声の音像位置を補正する場合を例示して説明する。
【0097】
利用者が、ドライブユニット120にCDを挿入して、操作入力ユニット160に音声コンテンツを指定した再生指令を入力すると、その旨が、操作入力データIPDとして、制御処理部111Bへ送られる(図11参照)。この再生指令を受けると、制御処理部111Bは、第1実施形態における制御処理部111Aと同様に、まず、補正処理を行わない指定、すなわち、上記の補正処理用の係数を「0」に指定した個別補正制御信号ACBj(j=L〜SR)を生成し、補正信号ACBとして信号補正部240Bへ送る(図12及び図14参照)。
【0098】
引き続き、制御処理部111Bは、制御処理部111Aと同様に、ドライブユニット120を制御して、再生コンテンツのデータ読み出しを制御する。かかる制御のもとでCDから読み出されたコンテンツデータCTDは、チャンネル分離部210Bへ送られる(図12参照)。コンテンツデータCTDを受けたチャンネル分離部210Bは、コンテンツデータCTDを展開して解析し、3チャンネルサラウンド方式におけるC,L,Rチャンネルに対応する3個の分離チャンネル信号SCBC〜SCBRに分離し、チャンネル分配部220B及び抽出処理部230Bへ向けて送る(図12参照)。
【0099】
分離チャンネル信号SCBC〜SCBRを受けたチャンネル分配部220Bは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCBC〜SCBRから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを生成する。チャンネル分配部220Bは、こうして生成された分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを信号補正部240Bへ送る(図12参照)。
【0100】
なお、信号補正部240Bにおける信号補正用の抽出処理を行う抽出処理部230Bの動作については、後述する信号補正部240Bにおいて信号補正処理を行う場合に説明することにし、この段階における説明を省略する。
【0101】
分離チャンネル信号SCBC〜SCBRを受けたチャンネル分配部220Bは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCBC〜SCBRから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを生成する。チャンネル分配部220Bは、こうして生成された分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを信号補正部240Bへ送る(図12参照)。
【0102】
この時点では、上述のように、補正処理を行わない旨の補正制御信号ACBを制御処理部111Bから受けているので、信号補正部240Bは、受信した分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRに何等の補正を行わずに、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRとして、アナログ変換部114へ向けて送る(図12参照)。この後、第1実施形態の場合と同様にして、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRについて、アナログ変換部114においてアナログ信号に変換され、さらに、音量調整部115において音量調整が行われて、音声出力信号AOSL〜AOSSRが生成される。そして、音声出力信号AOSL〜AOSSRが音出力ユニット130L〜130SRに供給される(図11参照)。この結果、CDに記録された音声コンテンツをほぼ正確に反映した音声が、スピーカ131L〜131SRから出力される。
【0103】
以上のようにして再生された音声を聴取した聴取者が、例えば、セリフ音声の音像位置に違和感を覚え、セリフ音声の音像位置の補正を行う音像位置補正指令を入力すると、その旨が、操作入力データIPDとして、制御処理部111Bへ送られる(図11参照)。なお、音像位置補正指令では、第1実施形態の場合と同様に、補正対象の音声の種類(ここでは、セリフ音声)、及び、音像位置の補正量、すなわち、セリフ音像位置の移動量が指定される。
【0104】
音像位置補正指令を受けた制御処理部111Bは、音像位置補正指定において指定された補正対象音声の種類の指定に従って、上述した抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを生成する。そして、制御処理部111Bは、生成された抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを抽出処理部230Bへ向けて送る(図12参照)。
【0105】
また、制御処理部111Bは、操作入力ユニット160に入力された、音像位置補正指定において指定された補正対象となる音声の音像位置の補正量(移動量)の指定に従って、上述した補正制御信号ACBを生成する。そして、制御処理部111Bは、生成された補正制御信号ACBを信号補正部240Bへ向けて送る(図12参照)。
【0106】
抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを受けた抽出処理部230Bは、抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、分離チャンネル信号SCBC〜SCBRから指定された種類の音声信号(この場合には、セリフ音声信号)の成分を抽出する。かかる抽出処理に際しては、抽出処理部230Bにおいて、抽出処理部230Aが、抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、指定された種類の信号(例えば、セリフ音声信号)の成分をチャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBL,SCBRから抽出し、抽出結果信号EDB1を生成する。こうして生成された抽出結果信号EDB1は、信号補正部240Bへ送られる(図13参照)。
【0107】
また、抽出処理部230Bにおいては、BPF235が、BPF制御信号BPCに従って、指定された種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる。こうしてBPF235を通過した信号は、抽出結果信号EDB2として信号補正部240Bへ送られる(図13参照)。
【0108】
制御処理部111Bからの補正制御信号ACBを受けた信号補正部240Bは、補正制御信号ACBに従って、チャンネル分配部220Bからの分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRに対して、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB1及びEDB2に基づく補正を行う。かかる補正処理に際しては、信号補正部240Bの個別補正部241Bj(j=L〜SR)のそれぞれにおける個別補正部241Ajが、分配チャンネル信号DCBjに対して、補正制御信号ACBの個別補正制御信号ACBjにおける信号ACBj1に従って、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB1に基づく補正を行ない、個別補正信号AVBj1を生成する。こうして生成された個別補正信号AVBj1は、加算部249へ向けて送られる(図15参照)。
【0109】
一方、個別補正部241Bjにおける可変減衰部248が、補正制御信号ACBにおける個別補正制御信号ACB2により指定された係数を抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDBj2に乗じる。可変減衰部248は、この乗算結果を個別補正信号AVBj2として加算部249へ向けて送る(図15参照)。
【0110】
個別補正信号AVBj1及び個別補正信号AVBj2を受けた加算部249は、個別補正信号AVBj1と個別補正信号AVBj2とを加算する。この加算結果が、チャンネル処理データPCDjとして、アナログ変換部114へ向けて送られる(図15参照)。
【0111】
この後、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRについて、上記と同様にして、アナログ変換部114においてアナログ信号に変換され、さらに、音量調整部115において音量調整が行われて、音声出力信号AOSL〜AOSSRが生成される。そして、音声出力信号AOSL〜AOSSRが音出力ユニット130L〜130SRに供給される(図11参照)。
【0112】
この結果、CDに記録された音声コンテンツにおける利用者により指定された種類の音声(この場合には、セリフ音声)の音像位置を補正した音声が、スピーカ131L〜131SRから出力される。
【0113】
以上説明したように、本実施形態では、抽出処理部230Bが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成(3チャンネル構成)の信号から、指定された種類の音声の信号成分を抽出する。そして、信号補正部240Bが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成の信号が適宜分配されて生成された分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRのそれぞれに、指定された種類の音声の音像位置の補正量に対応して分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRごとに定める比率で、抽出結果信号EDB1,EDB2を加算する。この結果、再生された音声における指定された種類の音声の音像位置を選択的に補正することができる。
【0114】
したがって、本実施形態によれば、音声コンテンツに含まれる所定種類の音声に関する音像位置を選択的に変化させることができる。
【0115】
また、本実施形態では、音像位置の補正対象となる種類の音声と、音像位置の補正量とを、利用者が操作入力ユニット160への指令入力により指定できる。このため、利用者の利便性を向上させることができる。
【0116】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0117】
例えば、上記の第1実施形態では、2チャンネル構成の音声コンテンツを4チャンネル構成に変換して再生するとともに、上記の第2実施形態では、3チャンネル構成の音声コンテンツを4チャンネル構成に変換して再生するようにした。これに対して、他のチャンネル構成の変換を行う場合に、本発明を適用するようにしてもよい。ここで、変換前のチャンネル構成と変換後のチャンネル構成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0118】
また、上記の第1及び第2実施形態では、セリフ音声の音像位置の補正に本発明を適用したが、音像位置の補正対象の音声の種類は、セリフ音声以外の種類の任意の種類の音声とすることができる。
【0119】
また、上記の第1及び第2実施形態では、適応フィルタが、内部的な加算結果に基づいて内部乗算部に指定する係数を決定するようにしたが、例えば、図5におけるBPFからの出力信号に基づいて内部乗算部に指定する係数を決定するようにしてもよい。
【0120】
また、第2実施形態における制御ユニット110Bに代えて、図16に示されように構成された制御ユニット110Cを採用するようにすることもできる。この制御ユニット110Cは、制御ユニット110Bと比べて、制御処理部111Bに代えて第1実施形態の場合と同様の制御処理部111Aを備えるとともに、チャンネル信号処理部112Bに代えてチャンネル信号処理部112Cを備える点が異なっている。
【0121】
このチャンネル信号処理部112Cは、図17に示されるように、チャンネル信号処理部112Bと比べて、抽出処理部230Bに代えて抽出処理部230Cを備えるとともに、信号補正部240Bに代えて第1実施形態の場合と同様の信号補正部240Aを備える点が異なっている。ここで、抽出処理部230Cは、図18に示されるように、抽出処理部230Aと似た構成となっており、抽出処理部230Aと比べて、加算部232に代えて、加算部236を備えている。
【0122】
この加算部236は、加算部232と比べて、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBCを受信する入力端子I3を更に有している。そして、加算部236は、上述した抽出結果信号EXTLと、抽出結果信号EXTRと、分離チャンネル信号SCBCとを加算し、加算結果信号AECを出力端子OからBPF233へ向けて出力する。そして、BPF233を通過した信号が、抽出結果信号EDCとして信号補正部240Aへ送られるようになっている。
【0123】
以上のように構成された制御ユニット110Cを用いても、第2実施形態の場合と同様に、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成(3チャンネル構成)の信号から、4チャンネルサラウンド方式で音声出力する際の再生された音声における指定された種類の音声の音像位置を選択的に補正することができる。
【0124】
また、上記の第1及び第2実施形態では、ドライブユニット120をCDのドライブユニットとしたが、固定ディスクやDVDのドライブユニットとすることもできる。さらに、ラジオ放送や地上デジタルテレビ放送等の放送波受信回路や外部機器の音声入力回路等とすることもできる。
【0125】
なお、上記の第1及び第2実施形態における制御ユニットを中央処理装置(CPU:Central Processor Unit)やDSP(Digital Signal Processor)を備えるコンピュータシステムとして構成し、制御処理部等の機能を、プログラムの実行によっても実現するようにすることができる。これらのプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配送の形態で取得されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1実施形態に係る音響装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の4個のスピーカの配置位置を説明するための図である。
【図3】図1の制御ユニットの構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図3のチャンネル信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図4の抽出処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図6】図4の信号補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図6の個別補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】図1の装置による音像位置補正前の聴取者と音像との位置関係の例を説明するための図である。
【図9】図1の装置による音像位置補正後の聴取者と音像との位置関係の例を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る音響装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図11】図10の制御ユニットの構成を説明するためのブロック図である。
【図12】図11のチャンネル信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図13】図12の抽出処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図14】図12の信号補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図15】図14の個別補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図16】制御ユニットの変形例を説明するための図である。
【図17】図16のチャンネル信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図18】図17の抽出処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0127】
100A,100B … 音響装置
111A,111B … 制御処理部(抽出制御手段及び補正制御手段)
131L〜131SR … スピーカ
220A,220B … チャンネル分配部(生成手段)
230A〜230C … 抽出処理部(抽出手段)
231L,231R … 適応フィルタ(個別抽出手段)
232,236 … 加算部(加算手段)
233 … バンドパスフィルタ(加算結果フィルタリング手段)
235 … バンドパスフィルタ(直接フィルタリング手段)
240A,240B … 信号補正部(補正手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置、音像設定方法、音像設定プログラム、及び、当該音像設定プログラムが記録された記録媒体である。
【背景技術】
【0002】
従来から、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の普及に伴って、複数のスピーカを有するマルチチャンネルサラウンド方式の音響装置が普及している。これにより、家庭内空間や車両内空間においても、臨場感溢れるサラウンド音声を楽しむことができるようになってきている。
【0003】
ところで、音響装置の設置環境は様々である。このため、音声を出力する複数のスピーカを、マルチチャンネルサラウンド方式の観点における対称性を有する位置に配置することができない場合がしばしば発生する。特に、車両にマルチチャンネルサラウンド方式の音響装置を搭載する場合には、聴取位置である着座位置の制約等から、聴取位置に対して、複数のスピーカを、マルチチャンネルサラウンド方式の観点から推奨される対称性を有する位置に配置することができない。
【0004】
このため、音声コンテンツの作成者の意図とは異なる聴取位置に対する複数のスピーカの配置で音声コンテンツを再生することになる場合がある。こうした場合には、例えば、セリフ音声を含む音声コンテンツにおいて、コンテンツ作成者としては、聴取者の正面にセリフ音声の音像を設定することを意図していた場合であっても、セリフ音声の音像位置が聴取者の正面からずれてしまうことがある。
【0005】
かかる事態が発生した場合に、音響装置として標準的に搭載されているバランス制御機能やフェーダ制御機能を利用して音像位置を移動させる技術(特許文献1参照)を適用することにより対処することが一般的に行なわれている(以下、「従来例」という)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−197198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来例の技術では、上記のようなセリフ音声を含む音声コンテンツの再生に際して、セリフ音声の音像を移動させるその移動量を同じ量だけ、例えば、バックグラウンドミュージック音声の音像や背景音の音像等の他の音声の音像も移動してしまう。このため、音像移動により、他の音声についてバランスがくずれてしまい、再生音全体としては聞きづらいものになってしまうことがある。
【0008】
このため、所定種類の音声についてだけ音像位置を移動させ、マルチチャンネルサラウンド環境において、利用者にとって快適な音声再生を行うことができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決しようとする課題の一つとして挙げられる。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、原音響信号に含まれる所定種類の音声に関する音像位置を選択的に変化させることができる音響装置及び音像設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、複数である第1の数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置であって、第2の数のチャンネル信号を含む第1音響信号から前記複数のスピーカそれぞれに対応する第2音響信号を生成する生成手段と;前記第1音響信号に含まれる所定種類の音声の信号を抽出する抽出手段と;前記所定種類の音声の前記音場空間における音像位置に対応して前記スピーカごとに定められた比率で、前記抽出手段による抽出結果を前記第2音響信号における前記複数のスピーカそれぞれに対応する信号に加算する補正手段と;を備えることを特徴とする音響装置である。
【0011】
請求項11に記載の発明は、複数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置において使用される音像設定方法であって、前記スピーカの数とは異なる数のチャンネル信号を含む第1音響信号から前記複数のスピーカそれぞれに対応する第2音響信号を生成する生成工程と;前記第1音響信号に含まれる所定種類の音声の信号を抽出して補正用抽出信号を生成する抽出工程と;前記所定種類の音声の前記音場空間における音像位置に対応して前記スピーカごとに定められた比率で、前記補正用抽出信号を前記第2音響信号における前記複数のスピーカそれぞれに対応する信号に加算する補正工程と;を備えることを特徴とする音像設定方法である。
【0012】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の音像設定方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする音像設定プログラムである。
【0013】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の音像設定プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面においては、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を、図1〜図9を参照して説明する。なお、本第1実施形態の説明では、2チャンネルステレオ方式に従って作成された音声コンテンツを、4チャンネルマルチサラウンド方式で再生する場合を例示して説明する。
【0016】
[構成]
図1には、第1実施形態に係る音響装置100Aの概略的な構成がブロック図にて示されている。なお、以下の説明においては、音響装置100Aは、車両CR(図2参照)に搭載される装置であるものとする。また、この音響装置100Aは、マルチチャンネルサラウンド方式の1つである4チャンネルサラウンド方式を採用しているものとする。
【0017】
この図1に示されるように、音響装置100Aは、制御ユニット110Aと、ドライブユニット120とを備えている。
【0018】
また、音響装置100Aは、音出力ユニット130Lと、音出力ユニット130Rと、音出力ユニット130SLと、音出力ユニット130SRとを備えている。
【0019】
ここで、音出力ユニット130Lはレフトスピーカ131Lを有し、音出力ユニット130Rはライトスピーカ131Rを有している。また、音出力ユニット130SLはサラウンドレフトスピーカ131SLを有し、音出力ユニット130SRはサラウンドライトスピーカ131SRを有している。
【0020】
さらに、音響装置100Aは、表示ユニット150と、操作入力ユニット160とを備えている。
【0021】
なお、制御ユニット110A以外の要素120,130L〜130R,150,160は、制御ユニット110Aに接続されている。
【0022】
制御ユニット110Aは、音響装置100Aの全体を統括制御する。この制御ユニット110Aの詳細については、後述する。
【0023】
上記のドライブユニット120は、音声コンテンツが記録されたコンパクトディスクCDがドライブユニット120に挿入されると、その旨を制御ユニット110Aに報告する。そして、ドライブユニット120は、コンパクトディスクCDが挿入された状態で、制御ユニット110Aから音声コンテンツの再生指令DVCを受けると、再生指定がなされた音声をコンパクトディスクCDから読み出す。かかる音声コンテンツの読み出し結果は、オーディオ信号であるコンテンツデータCTDとして、制御ユニット110Aへ向けて送られる。
【0024】
なお、コンパクトディスクCDには、音声コンテンツが、2チャンネルステレオ方式で記録されているものとする。かかる2チャンネルステレオ方式では、音声チャンネルとして、レフトチャンネル(以下、「Lチャンネル」とも記す)及びライトチャンネル(以下、「Rチャンネル」とも記す)が利用されるようになっている。
【0025】
上記の音出力ユニット130L〜130SRのそれぞれは、上述したスピーカ131L〜131SRの他に、制御ユニット110Aから受信した音声出力信号AOSL〜AOSSRを増幅する増幅器を備えている。これらの音出力ユニット130L〜130SRは、制御ユニット110Aから送られてきた音声出力信号AOSL〜AOSSRに従って、計測信号、楽曲等を再生して出力する。
【0026】
本実施形態では、図2に示されるように、音出力ユニット130Lのレフトスピーカ131Lは、助手席側の前方ドア筐体内に配置される。このレフトスピーカ131Lは、助手席側を向くように配設されている。
【0027】
音出力ユニット130Rのライトスピーカ131Rは、運転席側の前方ドア筐体内に配置される。このライトスピーカ131Rは、運転席側を向くように配設されている。
【0028】
音出力ユニット130SLのサラウンドレフトスピーカ131SLは、助手席側後部の筐体内に配置される。このサラウンドレフトスピーカ131SLは、助手席側の後部座席を向くように配設されている。
【0029】
音出力ユニット130SRのサラウンドライトスピーカ131SRは、運転席側後部の筐体内に配置される。このサラウンドライトスピーカ131SRは、運転席側の後部座席を向くように配設されている。
【0030】
図1に戻り、上記の表示ユニット150は、例えば、(i)液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル、PDP(Plasma Display Panel)等の表示デバイス151と、(ii)制御ユニット110Aから送出された表示制御データに基づいて、表示ユニット150全体の制御を行うグラフィックレンダラ等の表示コントローラと、(iii)表示画像データを記憶する表示画像メモリ等を備えて構成されている。この表示ユニット150は、制御ユニット110Aからの表示データIMDに従って、操作ガイダンス情報等を表示する。
【0031】
上記の操作入力ユニット160は、音響装置100Aの本体部に設けられたキー部、及び/又はキー部を備えるリモート入力装置等により構成される。ここで、本体部に設けられたキー部としては、表示ユニット150の表示デバイス151に設けられたタッチパネルを用いることができる。なお、キー部を有する構成に代えて、又は併用して音声認識技術を利用して音声にて入力する構成を採用することもできる。
【0032】
この操作入力ユニット160を利用者が操作することにより、音響装置100Aの動作内容の設定が行われる。例えば、音声コンテンツの再生指令、音像位置補正等の利用者による入力が、操作入力ユニット160を利用して行われる。こうした入力内容は、操作入力データIPDとして、操作入力ユニット160から制御ユニット110Aへ向けて送られる。
【0033】
次に、上記の制御ユニット110Aについて説明する。上述したように、制御ユニット110Aは、音響装置100Aの全体を統括制御する。この制御ユニット110Aは、図3に示されるように、抽出制御手段、及び、補正制御手段としての制御処理部111Aと、チャンネル信号処理部112Aとを備えている。また、制御ユニット110Aは、アナログ変換部114と、音量調整部115とを備えている。
【0034】
上記の制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された指令に基づいて、チャンネル信号処理部112A及び音量調整部115を制御する。この制御処理部111Aの詳細については、後述する。
【0035】
上記のチャンネル信号処理部112Aは、ドライブユニット120から送られてきたコンテンツデータCTDを処理し、スピーカ131L〜131SRに対応するチャンネル処理データPCDL〜PCDSRを生成する。かかる機能を有するチャンネル信号処理部112Aは、図4に示されるように、チャンネル分離部210Aと、生成手段としてのチャンネル分配部220Aと、抽出手段としての抽出処理部230Aと、補正手段としての信号補正部240Aとを備えている。
【0036】
上記のチャンネル分離部210Aは、ドライブユニット120からのコンテンツデータCTDを受ける。そして、チャンネル分離部210Aは、コンテンツデータCTDを展開し、オーディオ信号であるデジタル音データ信号を生成する。引き続き、チャンネル分離部210Aは、生成されたデジタル音データ信号を解析し、デジタル音データ信号に含まれるチャンネル指定情報に従って、デジタル音データ信号を、2チャンネルステレオ方式におけるL,Rチャンネルに対応する2個の分離チャンネル信号SCAL,SCARに分離する。このようにして分離された分離チャンネル信号SCAL,SCARは、チャンネル分配部220A及び抽出処理部230Aへ向けて送られる。
【0037】
上記のチャンネル分配部220Aは、チャンネル分離部210Aからの分離チャンネル信号SCAL,SCARを受ける。そして、チャンネル分配部220Aは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCAL,SCARから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを生成する。こうして生成された分配チャンネル信号DCAL〜DCASRは、信号補正部240Aへ送られる。
【0038】
上記の抽出処理部230Aは、チャンネル分離部210Aからの分離チャンネル信号SCAL,SCARを受ける。そして、上記の抽出処理部230Aは、制御処理部111Aからの抽出制御信号EXC及びバンドバスフィルタ(BPF)制御信号BPCに従って、指定された種類の信号(例えば、セリフ音声信号)の成分を抽出し、抽出結果信号EDAを生成する。かかる機能を有する抽出処理部230Aは、図5に示されるように、個別抽出手段としての適応フィルタ231L,231Rと、加算手段としての加算部232と、加算結果フィルタリング手段としてのバンドバスフィルタ(BPF)233とを備えている。
【0039】
上記の適応フィルタ231Lは、チャンネル分離部210Aからの分離チャンネル信号SCALを受ける。そして、適応フィルタ231Lは、制御処理部111Aからの抽出制御信号EXCにより指定された上記の指定された種類の信号の情報に基づいて、分離チャンネル信号SCALにおける当該指定された種類の信号の成分抽出を行う。かかる抽出結果は、抽出結果信号EXTLとして、加算部232へ送られる。
【0040】
かかる機能を有する適応フィルタ231Lは、本実施形態では、不図示の直列接続された所定数の遅延部、各遅延部からの出力信号に指定係数倍する乗算部、全ての乗算部から出力された信号を加算する加算部、加算部による加算結果等に基づいて各乗算部に指定する係数を決定する係数決定部等から構成されている。すなわち、適応フィルタ231Lは、分離チャンネル信号SCALについて、時間領域演算を行なって、当該指定された種類の信号の成分抽出を行うようになっている。
【0041】
上記の適応フィルタ231Rは、チャンネル分離部210Aからの分離チャンネル信号SCARを受ける。そして、適応フィルタ231Rは、制御処理部111Aからの抽出制御信号EXCにより指定された上記の指定された種類の信号の情報に基づいて、分離チャンネル信号SCARにおける当該指定された種類の信号の成分抽出を行う。かかる抽出結果は、抽出結果信号EXTRとして、加算部232へ送られる。
【0042】
なお、適応フィルタ231Rは、適応フィルタ231Lと同様に構成されている。
【0043】
上記の加算部232は、適応フィルタ231Lからの抽出結果信号EXTLを入力端子I1で受ける。また、加算部232は、適応フィルタ231Rからの抽出結果信号EXTRを入力端子I2で受ける。そして、加算部232は、入力端子I1における受信信号と、入力端子I2における受信信号とを加算し、加算結果信号AEAを出力端子OからBPF233へ向けて出力する。
【0044】
上記のBPF233は、加算部232からの加算結果信号AEAを受ける。そして、BPF233は、制御処理部111AからのBPF制御信号BPCに従って、上記の指定された種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる。こうしてBPF233を通過した信号は、抽出結果信号EDAとして信号補正部240Aへ送られる。
【0045】
図4に戻り、上記の信号補正部240Aは、チャンネル分配部220Aからの分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを受ける。また、信号補正部240Aは、抽出処理部230Aからの抽出結果信号EDAを受ける。そして、信号補正部240Aは、制御処理部111Aからの補正制御信号ACAに従い、抽出結果信号EDAに基づいて、分配チャンネル信号DCAL〜DCASRに対する補正をして、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRを生成する。かかる機能を有する信号補正部240Aは、図6に示されるように、4個の個別補正部241AL〜241ASRを備えている。
【0046】
上記の個別補正部241Aj(j=L〜SR)のそれぞれは、補正制御信号ACAにおける個別補正制御信号ACAjによる指定に従って、分配チャンネル信号DCAjを補正する。かかる機能を有する個別補正部241Ajは、図7に示されるように、可変減衰部246と、加算部247とを備えている。
【0047】
上記の可変減衰部246は、抽出処理部230Aからの抽出結果信号EDAを入力端子Iで受ける。また、可変減衰部246は、制御処理部111Aからの個別補正制御信号ACAjを制御端子Cで受ける。そして、可変減衰部246は、個別補正制御信号ACAjにより指定された係数を抽出結果信号EDAに乗じる。可変減衰部246は、この乗算結果は、出力端子Oから、個別補正信号AVAjとして加算部247へ向けて出力する。
【0048】
上記の加算部247は、チャンネル分配部220Aからの分配チャンネル信号DCAjを入力端子I1で受ける。また、加算部247は、可変減衰部246からの個別補正信号AVAjを入力端子I2で受ける。そして、加算部247は、入力端子I1における受信信号と、入力端子I2における受信信号とを加算する。加算部247は、加算結果をチャンネル処理データPCDjとして、出力端子Oからアナログ変換部114へ向けて出力する。
【0049】
図3に戻り、上記のアナログ変換部114は、チャンネル信号処理部112Aから送られてきたデジタル信号であるチャンネル処理データPCDL〜PCDSRを、それぞれアナログ信号に変換する。このアナログ変換部114は、当該4種のデジタル信号に対応して、互いに同様に構成された4個のDA(Digital to Analogue)変換器を備えている。このアナログ変換部114による変換結果であるアナログ信号PBSL〜PBSSRは、音量調整部115へ向けて送られる。
【0050】
上記の音量調整部115は、アナログ変換部114からのアナログ信号PBSL〜PBSSRを受ける。そして、音量調整部115は、アナログ信号PBSL〜PBSSRのそれぞれに対して、制御処理部111Aからの音量調整指令VLCに従って、音量を調整する。かかる調整結果は、音声出力信号AOSL〜AOSSRとして、音出力ユニット130L〜130SRへ向けて出力される。
【0051】
次に、制御処理部111Aについて説明する。この制御処理部111Aは、上述した他の構成要素を制御しつつ、音響装置100Aの機能を発揮させる。この制御処理部111Aは、利用者が再生すべき音声コンテンツの指定を支援するための案内画面を表示ユニット150に表示させる。そして、操作入力ユニット160から音声コンテンツを指定した再生指令が入力されると、制御処理部111Aは、ドライブユニット120を制御して、再生コンテンツのデータ読み出しを制御する。
【0052】
また、制御処理部111Aは、音量調整部115を制御して、音出力ユニット130L〜130SRのスピーカ131L〜131SRからの出力音量を調整する。この出力音量の制御に際して、制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された音量指定に従って音量調整指令VLCを生成し、音量調整部115へ向けて送る。
【0053】
制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された、補正対象となる音声の種類の指定に従って、上述した抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを生成する。そして、制御処理部111Aは、生成された抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを、チャンネル信号処理部112Aの抽出処理部230Aへ向けて出力する。
【0054】
また、制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された、補正対象となる音声の音像位置の補正量(移動量)の指定に従って、上述した補正制御信号ACAを生成する。そして、制御処理部111Aは、生成された補正制御信号ACAを、チャンネル信号処理部112Aの信号補正部240Aへ向けて出力する。
【0055】
[動作]
次に、上記のように構成された音響装置100Aの動作について、音像位置の補正処理に主に着目して説明する。なお、以下の説明においては、コンテンツデータCTDには、セリフ音声、背景音音声及びBGM音声の3種類の音声が含まれており、セリフ音声の音像位置を補正する場合を例示して説明する。
【0056】
利用者が、ドライブユニット120にCDを挿入して、操作入力ユニット160に音声コンテンツを指定した再生指令を入力すると、その旨が、操作入力データIPDとして、制御処理部111Aへ送られる(図3参照)。この再生指令を受けると、制御処理部111Aは、まず、補正処理を行わない指定、すなわち、上記の補正処理用の係数を「0」に指定した個別補正制御信号ACAj(j=L〜SR)を生成し、補正信号ACAとして信号補正部240Aへ送る(図4及び図6参照)。
【0057】
引き続き、制御処理部111Aは、ドライブユニット120を制御して、再生コンテンツのデータ読み出しを制御する。かかる制御のもとでCDから読み出されたコンテンツデータCTDは、チャンネル分離部210Aへ送られる(図4参照)。コンテンツデータCTDを受けたチャンネル分離部210Aは、コンテンツデータCTDを展開して解析し、2チャンネルステレオ方式におけるL,Rチャンネルに対応する2個の分離チャンネル信号SCAL,SCARに分離し、チャンネル分配部220A及び抽出処理部230Aへ向けて送る(図4参照)。
【0058】
分離チャンネル信号SCAL,SCARを受けたチャンネル分配部220Aは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCAL,SCARから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを生成する。チャンネル分配部220Aは、こうして生成された分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを信号補正部240Aへ送る(図4参照)。
【0059】
なお、信号補正部240Aにおける信号補正用の抽出処理を行う抽出処理部230Aの動作については、後述する信号補正部240Aにおいて信号補正処理を行う場合に説明することにし、この段階における説明を省略する。
【0060】
この時点では、上述のように、補正処理を行わない旨の補正制御信号ACAを制御処理部111Aから受けているので、信号補正部240Aは、受信した分配チャンネル信号DCAL〜DCASRに何等の補正を行わずに、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRとして、アナログ変換部114へ向けて送る(図4参照)。この後、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRについて、アナログ変換部114においてアナログ信号に変換され、さらに、音量調整部115において音量調整が行われて、音声出力信号AOSL〜AOSSRが生成される。そして、音声出力信号AOSL〜AOSSRが音出力ユニット130L〜130SRに供給される(図3参照)。
【0061】
この結果、CDに記録された音声コンテンツをほぼ正確に反映した音声が、スピーカ131L〜131SRから出力される。こうしたCDに記録された音声コンテンツをほぼ正確に反映した音声再生による音像位置と、聴取者との位置関係の例が、図8に示されている。
【0062】
以上のようにして再生された音声を聴取した聴取者が、例えば、セリフ音声の音像位置に違和感を覚え、セリフ音声の音像位置の補正を行う音像位置補正指令を入力すると、その旨が、操作入力データIPDとして、制御処理部111Aへ送られる(図3参照)。なお、音像位置補正指令では、補正対象の音声の種類(ここでは、セリフ音声)、及び、音像位置の補正量、すなわち、セリフ音像位置の移動量が指定される。
【0063】
音像位置補正指令を受けた制御処理部111Aは、音像位置補正指定において指定された補正対象音声の種類の指定に従って、上述した抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを生成する。そして、制御処理部111Aは、生成された抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを抽出処理部230Aへ向けて送る(図4参照)。
【0064】
また、制御処理部111Aは、操作入力ユニット160に入力された、音像位置補正指定において指定された補正対象となる音声の音像位置の補正量(移動量)の指定に従って、上述した補正制御信号ACAを生成する。そして、制御処理部111Aは、生成された補正制御信号ACAを信号補正部240Aへ向けて送る(図4参照)。
【0065】
抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを受けた抽出処理部230Aは、抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、分離チャンネル信号SCAL,SCARから指定された種類の音声信号(この場合には、セリフ音声信号)の成分を抽出する。かかる抽出処理に際しては、適応フィルタ231Lが、抽出制御信号EXCにより指定された上記の指定された種類の信号の情報に基づいて、分離チャンネル信号SCALに関する上述した時間領域演算を行うことにより、分離チャンネル信号SCALから当該指定された種類の音声信号の成分抽出を行う。かかる抽出結果は、抽出結果信号EXTLとして、加算部232へ送られる(図5参照)。
【0066】
また、適応フィルタ231Rが、抽出制御信号EXCにより指定された上記の指定された種類の音声信号の情報に基づいて、分離チャンネル信号SCARに関する上述した時間領域演算を行うことにより、分離チャンネル信号SCARから当該指定された種類の音声信号の成分抽出を行う。かかる抽出結果は、抽出結果信号EXTRとして、加算部232へ送られる(図5参照)。
【0067】
抽出結果信号EXTL及び抽出結果信号EXTRを受けた加算部232は、これらを加算し、加算結果信号AEAとして、BPF233へ送る。加算結果信号AEAを受けたBPF233は、BPF制御信号BPCに従って、指定された種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる。こうしてBPF233を通過した信号は、抽出結果信号EDAとして信号補正部240Aへ送られる(図5参照)。
【0068】
制御処理部111Aからの補正制御信号ACAを受けた信号補正部240Aは、補正制御信号ACAに従って、チャンネル分配部220Aからの分配チャンネル信号DCAL〜DCASRに対して、抽出処理部230Aからの抽出結果信号EDAに基づく補正を行う。かかる補正処理に際しては、信号補正部240Aの個別補正部241j(j=L〜SR)のそれぞれにおける可変減衰部246が、補正制御信号ACAにおける個別補正制御信号ACAjにより指定された係数を抽出結果信号EDAに乗じる。可変減衰部246は、この乗算結果を個別補正信号AVAjとして加算部247へ向けて送る(図7参照)。
【0069】
個別補正信号AVAjを受けた加算部247は、チャンネル分配部220Aからの分配チャンネル信号DCAjと個別補正信号AVAjとを加算する。この加算結果が、チャンネル処理データPCDjとして、出力端子Oからアナログ変換部114へ向けて送られる(図7参照)。
【0070】
この後、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRについて、上記と同様にして、アナログ変換部114においてアナログ信号に変換され、さらに、音量調整部115において音量調整が行われて、音声出力信号AOSL〜AOSSRが生成される。そして、音声出力信号AOSL〜AOSSRが音出力ユニット130L〜130SRに供給される(図3参照)。
【0071】
この結果、CDに記録された音声コンテンツにおける利用者により指定された種類の音声(この場合には、セリフ音声)の音像位置を補正した音声が、スピーカ131L〜131SRから出力される。こうしてセリフ音声の音像位置が補正された音声再生による音像位置と、聴取者との位置関係の例が、図9に示されている。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、抽出処理部230Aが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成(2チャンネル構成)の信号から、指定された種類の音声の信号成分を抽出する。そして、信号補正部240Aが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成の信号が適宜分配されて生成された分配チャンネル信号DCAL〜DCASRのそれぞれに、指定された種類の音声の音像位置の補正量に対応して分配チャンネル信号DCAL〜DCASRごとに定める比率で、抽出結果信号EDAを加算する。この結果、再生された音声における指定された種類の音声の音像位置を選択的に補正することができる。
【0073】
したがって、本実施形態によれば、音声コンテンツに含まれる所定種類の音声に関する音像位置を選択的に変化させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、音像位置の補正対象となる種類の音声と、音像位置の補正量とを、利用者が操作入力ユニット160への指令入力により指定できる。このため、利用者の利便性を向上させることができる。
【0075】
[第2実施形態]
まず、本発明の第2実施形態を、図10〜図15を参照して説明する。なお、本第2実施形態の説明では、3チャンネルサラウンド方式に従って作成された音声コンテンツを、4チャンネルマルチサラウンド方式で再生する場合を例示して説明する。
【0076】
前提として、当該3チャンネルサラウンド方式は、第1実施形態の場合における2チャンネルステレオ方式におけるLチャンネル及びRチャンネルに加えて、センタチャンネル(以下、「Cチャンネル」とも呼ぶ)を加えた方式であるものとする。そして、当該Cチャンネルが、音像位置の補正対象となる音声を主成分とするチャンネルであるものとする。
【0077】
[構成]
図10には、第2実施形態に係る音響装置100Bの概略的な構成がブロック図にて示されている。この図10に示されるように、音響装置100Bは、上述した第1実施形態と比べて、制御ユニット110Aに代えて、制御ユニット110Bを備えている点のみが異なっている。以下、この相違点に主に着目して説明する。
【0078】
制御ユニット110Bは、図11に示されるように、制御ユニット110Aと比べて、制御処理部111Aに代えて制御処理部111Bを備えるとともに、チャンネル信号処理部112Aに代えてチャンネル信号処理部112Bを備える点が異なっている。
【0079】
上記の制御処理部111Bは、操作入力ユニット160に入力された指令入力指令に基づいて、チャンネル信号処理部112B及び音量調整部115を制御する。この制御処理部111Bの詳細については、後述する。
【0080】
上記のチャンネル信号処理部112Bは、図12に示されるように、チャンネル分離部210Bと、チャンネル分配部220Bとを備えている。また、チャンネル信号処理部112B、抽出処理部230Bと、信号補正部240Bとを備えている。
【0081】
上記のチャンネル分離部210Bは、ドライブユニット120からのコンテンツデータCTDを受ける。そして、チャンネル分離部210Bは、コンテンツデータCTDを展開し、オーディオ信号であるデジタル音データ信号を生成する。引き続き、チャンネル分離部210Bは、生成されたデジタル音データ信号を解析し、デジタル音データ信号に含まれるチャンネル指定情報に従って、デジタル音データ信号を、3チャンネルサラウンド方式におけるC,L,Rチャンネルに対応する3個の分離チャンネル信号SCBC〜SCBRに分離する。このようにして分離された分離チャンネル信号SCBC〜SCBRは、チャンネル分配部220B及び抽出部230Bへ向けて送られる。
【0082】
上記のチャンネル分配部220Bは、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBC〜SCBRを受ける。そして、チャンネル分配部220Bは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCBC〜SCBRから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを生成する。こうして生成された分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRは、信号補正部240Bへ送られる。
【0083】
上記の抽出処理部230Bは、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBC〜SCBRを受ける。そして、抽出処理部230Bは、制御処理部111Bからの抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、指定された種類の信号(例えば、セリフ音声信号)の成分を抽出し、抽出結果信号EDB1,EDB2を生成する。かかる機能を有する抽出処理部230Bは、図13に示されるように、抽出処理部230Aと、直接フィルタリング手段としてのバンドパスフィルタ(BPF)235とを備えている。
【0084】
上記の抽出処理部230Aは、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBL,SCBRを受ける。そして、抽出処理部230Aは、制御処理部111Bからの抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、上述した第1実施形態の場合と同様に動作して、指定された種類の信号(例えば、セリフ音声信号)の成分を抽出し、抽出結果信号EDB1を生成する。こうして生成された抽出結果信号EDB1は、信号補正部240Bへ送られる。
【0085】
上記のBPF235は、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBCを受ける。そして、BPF235は、制御処理部111BからのBPF制御信号BPCに従って、上記の指定された種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる。こうしてBPF235を通過した信号は、抽出結果信号EDB2として信号補正部240Bへ送られる。
【0086】
図12に戻り、上記の信号補正部240Bは、チャンネル分配部220Bからの分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを受ける。また、信号補正部240Bは、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB1,EDB2を受ける。そして、信号補正部240Bは、制御処理部111Bからの補正制御信号ACBに従い、抽出結果信号EDB1,EDB2に基づいて、分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRに対する補正をして、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRを生成する。かかる機能を有する信号補正部240Bは、図14に示されるように、4個の個別補正部241BL〜241BSRを備えている。
【0087】
上記の個別補正部241Bj(j=L〜SR)のそれぞれは、補正制御信号ACBにおける個別補正制御信号ACBjによる指定に従って、分配チャンネル信号DCBjを補正する。かかる機能を有する個別補正部241Bjは、図15に示されるように、個別補正部241Ajと、可変減衰部248と、加算部249とを備えている。
【0088】
上記の個別補正部241Ajは、チャンネル分配部220Bからの分配チャンネル信号DCBjと、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB1とを受ける。そして、個別補正部241Ajは、制御処理部111Bからの個別補正制御信号ACBjにおける信号ACBj1に従って、上述した第1実施形態の場合と同様に動作して、個別補正信号AVBj1を生成する。こうして生成された個別補正信号AVBj1は、加算部249へ向けて出力される。
【0089】
なお、信号ACBj1による指定内容は、上述した第1実施形態における補正制御信号ACAjと同様の内容となっている。
【0090】
上記の可変減衰部248は、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB2を入力端子Iで受ける。また、可変減衰部248は、制御処理部111Bからの個別補正制御信号ACBjにおける信号ACBj2を制御端子Cで受ける。そして、可変減衰部248は、信号ACBj2により指定された係数を抽出結果信号EDB2に乗じる。可変減衰部248は、この乗算結果は、出力端子Oから、個別補正信号AVBj2として加算部249へ向けて出力する。
【0091】
上記の加算部249は、個別補正部241Ajからの個別補正信号AVBj1を入力端子I1で受ける。また、加算部249は、可変減衰部248からの個別補正信号AVBj2を入力端子I2で受ける。そして、加算部249は、入力端子I1における受信信号と、入力端子I2における受信信号とを加算する。加算部249は、加算結果をチャンネル処理データPCDjとして、出力端子Oからアナログ変換部114へ向けて出力する。
【0092】
図11に戻り、次に、制御処理部111Bについて説明する。この制御処理部111Bは、上述した他の構成要素を制御しつつ、音響装置100Bの機能を発揮させる。この制御処理部111Bは、第1実施形態における制御処理部111Aと同様に、利用者が再生すべき音声コンテンツの指定を支援するための案内画面を表示ユニット150に表示させる。そして、操作入力ユニット160から音声コンテンツを指定した再生指令が入力されると、制御処理部111Bは、ドライブユニット120を制御して、再生コンテンツのデータ読み出しを制御する。
【0093】
また、制御処理部111Bは、制御処理部111Aと同様に、音量調整部115を制御して、音出力ユニット130L〜130SRのスピーカ131L〜131SRのからの出力音量を調整する。この出力音量の制御に際して、制御処理部111Bは、操作入力ユニット160に入力された音量指定に従って音量調整指令VLCを生成し、音量調整部115へ向けて送る。
【0094】
また、制御処理部111Bは、制御処理部111Aと同様に、操作入力ユニット160に入力された、補正対象となる音声の種類の指定に従って、上述した抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを生成する。そして、制御処理部111Bは、生成された抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを、チャンネル信号処理部112Bの抽出処理部230Bへ向けて出力する。
【0095】
また、制御処理部111Bは、操作入力ユニット160に入力された、補正対象となる音声の音像位置の補正量(移動量)の指定に従って、上述した補正制御信号ACBを生成する。そして、制御処理部111Bは、生成された補正制御信号ACBを、チャンネル信号処理部112Bの信号補正部240Bへ向けて出力する。
【0096】
[動作]
次に、上記のように構成された音響装置100Bの動作について、音像位置の補正処理に主に着目して説明する。なお、以下の説明においては、第1実施形態の場合と同様に、コンテンツデータCTDには、セリフ音声、背景音音声及びBGM音声の3種類の音声が含まれており、セリフ音声の音像位置を補正する場合を例示して説明する。
【0097】
利用者が、ドライブユニット120にCDを挿入して、操作入力ユニット160に音声コンテンツを指定した再生指令を入力すると、その旨が、操作入力データIPDとして、制御処理部111Bへ送られる(図11参照)。この再生指令を受けると、制御処理部111Bは、第1実施形態における制御処理部111Aと同様に、まず、補正処理を行わない指定、すなわち、上記の補正処理用の係数を「0」に指定した個別補正制御信号ACBj(j=L〜SR)を生成し、補正信号ACBとして信号補正部240Bへ送る(図12及び図14参照)。
【0098】
引き続き、制御処理部111Bは、制御処理部111Aと同様に、ドライブユニット120を制御して、再生コンテンツのデータ読み出しを制御する。かかる制御のもとでCDから読み出されたコンテンツデータCTDは、チャンネル分離部210Bへ送られる(図12参照)。コンテンツデータCTDを受けたチャンネル分離部210Bは、コンテンツデータCTDを展開して解析し、3チャンネルサラウンド方式におけるC,L,Rチャンネルに対応する3個の分離チャンネル信号SCBC〜SCBRに分離し、チャンネル分配部220B及び抽出処理部230Bへ向けて送る(図12参照)。
【0099】
分離チャンネル信号SCBC〜SCBRを受けたチャンネル分配部220Bは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCBC〜SCBRから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを生成する。チャンネル分配部220Bは、こうして生成された分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを信号補正部240Bへ送る(図12参照)。
【0100】
なお、信号補正部240Bにおける信号補正用の抽出処理を行う抽出処理部230Bの動作については、後述する信号補正部240Bにおいて信号補正処理を行う場合に説明することにし、この段階における説明を省略する。
【0101】
分離チャンネル信号SCBC〜SCBRを受けたチャンネル分配部220Bは、予め定められたアルゴリズムに従って、分離チャンネル信号SCBC〜SCBRから4チャンネルサラウンド方式におけるL〜SRチャンネルに対応する分配チャンネル信号DCAL〜DCASRを生成する。チャンネル分配部220Bは、こうして生成された分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRを信号補正部240Bへ送る(図12参照)。
【0102】
この時点では、上述のように、補正処理を行わない旨の補正制御信号ACBを制御処理部111Bから受けているので、信号補正部240Bは、受信した分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRに何等の補正を行わずに、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRとして、アナログ変換部114へ向けて送る(図12参照)。この後、第1実施形態の場合と同様にして、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRについて、アナログ変換部114においてアナログ信号に変換され、さらに、音量調整部115において音量調整が行われて、音声出力信号AOSL〜AOSSRが生成される。そして、音声出力信号AOSL〜AOSSRが音出力ユニット130L〜130SRに供給される(図11参照)。この結果、CDに記録された音声コンテンツをほぼ正確に反映した音声が、スピーカ131L〜131SRから出力される。
【0103】
以上のようにして再生された音声を聴取した聴取者が、例えば、セリフ音声の音像位置に違和感を覚え、セリフ音声の音像位置の補正を行う音像位置補正指令を入力すると、その旨が、操作入力データIPDとして、制御処理部111Bへ送られる(図11参照)。なお、音像位置補正指令では、第1実施形態の場合と同様に、補正対象の音声の種類(ここでは、セリフ音声)、及び、音像位置の補正量、すなわち、セリフ音像位置の移動量が指定される。
【0104】
音像位置補正指令を受けた制御処理部111Bは、音像位置補正指定において指定された補正対象音声の種類の指定に従って、上述した抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを生成する。そして、制御処理部111Bは、生成された抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを抽出処理部230Bへ向けて送る(図12参照)。
【0105】
また、制御処理部111Bは、操作入力ユニット160に入力された、音像位置補正指定において指定された補正対象となる音声の音像位置の補正量(移動量)の指定に従って、上述した補正制御信号ACBを生成する。そして、制御処理部111Bは、生成された補正制御信号ACBを信号補正部240Bへ向けて送る(図12参照)。
【0106】
抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCを受けた抽出処理部230Bは、抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、分離チャンネル信号SCBC〜SCBRから指定された種類の音声信号(この場合には、セリフ音声信号)の成分を抽出する。かかる抽出処理に際しては、抽出処理部230Bにおいて、抽出処理部230Aが、抽出制御信号EXC及びBPF制御信号BPCに従って、指定された種類の信号(例えば、セリフ音声信号)の成分をチャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBL,SCBRから抽出し、抽出結果信号EDB1を生成する。こうして生成された抽出結果信号EDB1は、信号補正部240Bへ送られる(図13参照)。
【0107】
また、抽出処理部230Bにおいては、BPF235が、BPF制御信号BPCに従って、指定された種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる。こうしてBPF235を通過した信号は、抽出結果信号EDB2として信号補正部240Bへ送られる(図13参照)。
【0108】
制御処理部111Bからの補正制御信号ACBを受けた信号補正部240Bは、補正制御信号ACBに従って、チャンネル分配部220Bからの分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRに対して、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB1及びEDB2に基づく補正を行う。かかる補正処理に際しては、信号補正部240Bの個別補正部241Bj(j=L〜SR)のそれぞれにおける個別補正部241Ajが、分配チャンネル信号DCBjに対して、補正制御信号ACBの個別補正制御信号ACBjにおける信号ACBj1に従って、抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDB1に基づく補正を行ない、個別補正信号AVBj1を生成する。こうして生成された個別補正信号AVBj1は、加算部249へ向けて送られる(図15参照)。
【0109】
一方、個別補正部241Bjにおける可変減衰部248が、補正制御信号ACBにおける個別補正制御信号ACB2により指定された係数を抽出処理部230Bからの抽出結果信号EDBj2に乗じる。可変減衰部248は、この乗算結果を個別補正信号AVBj2として加算部249へ向けて送る(図15参照)。
【0110】
個別補正信号AVBj1及び個別補正信号AVBj2を受けた加算部249は、個別補正信号AVBj1と個別補正信号AVBj2とを加算する。この加算結果が、チャンネル処理データPCDjとして、アナログ変換部114へ向けて送られる(図15参照)。
【0111】
この後、チャンネル処理データPCDL〜PCDSRについて、上記と同様にして、アナログ変換部114においてアナログ信号に変換され、さらに、音量調整部115において音量調整が行われて、音声出力信号AOSL〜AOSSRが生成される。そして、音声出力信号AOSL〜AOSSRが音出力ユニット130L〜130SRに供給される(図11参照)。
【0112】
この結果、CDに記録された音声コンテンツにおける利用者により指定された種類の音声(この場合には、セリフ音声)の音像位置を補正した音声が、スピーカ131L〜131SRから出力される。
【0113】
以上説明したように、本実施形態では、抽出処理部230Bが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成(3チャンネル構成)の信号から、指定された種類の音声の信号成分を抽出する。そして、信号補正部240Bが、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成の信号が適宜分配されて生成された分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRのそれぞれに、指定された種類の音声の音像位置の補正量に対応して分配チャンネル信号DCBL〜DCBSRごとに定める比率で、抽出結果信号EDB1,EDB2を加算する。この結果、再生された音声における指定された種類の音声の音像位置を選択的に補正することができる。
【0114】
したがって、本実施形態によれば、音声コンテンツに含まれる所定種類の音声に関する音像位置を選択的に変化させることができる。
【0115】
また、本実施形態では、音像位置の補正対象となる種類の音声と、音像位置の補正量とを、利用者が操作入力ユニット160への指令入力により指定できる。このため、利用者の利便性を向上させることができる。
【0116】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0117】
例えば、上記の第1実施形態では、2チャンネル構成の音声コンテンツを4チャンネル構成に変換して再生するとともに、上記の第2実施形態では、3チャンネル構成の音声コンテンツを4チャンネル構成に変換して再生するようにした。これに対して、他のチャンネル構成の変換を行う場合に、本発明を適用するようにしてもよい。ここで、変換前のチャンネル構成と変換後のチャンネル構成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0118】
また、上記の第1及び第2実施形態では、セリフ音声の音像位置の補正に本発明を適用したが、音像位置の補正対象の音声の種類は、セリフ音声以外の種類の任意の種類の音声とすることができる。
【0119】
また、上記の第1及び第2実施形態では、適応フィルタが、内部的な加算結果に基づいて内部乗算部に指定する係数を決定するようにしたが、例えば、図5におけるBPFからの出力信号に基づいて内部乗算部に指定する係数を決定するようにしてもよい。
【0120】
また、第2実施形態における制御ユニット110Bに代えて、図16に示されように構成された制御ユニット110Cを採用するようにすることもできる。この制御ユニット110Cは、制御ユニット110Bと比べて、制御処理部111Bに代えて第1実施形態の場合と同様の制御処理部111Aを備えるとともに、チャンネル信号処理部112Bに代えてチャンネル信号処理部112Cを備える点が異なっている。
【0121】
このチャンネル信号処理部112Cは、図17に示されるように、チャンネル信号処理部112Bと比べて、抽出処理部230Bに代えて抽出処理部230Cを備えるとともに、信号補正部240Bに代えて第1実施形態の場合と同様の信号補正部240Aを備える点が異なっている。ここで、抽出処理部230Cは、図18に示されるように、抽出処理部230Aと似た構成となっており、抽出処理部230Aと比べて、加算部232に代えて、加算部236を備えている。
【0122】
この加算部236は、加算部232と比べて、チャンネル分離部210Bからの分離チャンネル信号SCBCを受信する入力端子I3を更に有している。そして、加算部236は、上述した抽出結果信号EXTLと、抽出結果信号EXTRと、分離チャンネル信号SCBCとを加算し、加算結果信号AECを出力端子OからBPF233へ向けて出力する。そして、BPF233を通過した信号が、抽出結果信号EDCとして信号補正部240Aへ送られるようになっている。
【0123】
以上のように構成された制御ユニット110Cを用いても、第2実施形態の場合と同様に、音声コンテンツ作成者が意図したチャンネル構成(3チャンネル構成)の信号から、4チャンネルサラウンド方式で音声出力する際の再生された音声における指定された種類の音声の音像位置を選択的に補正することができる。
【0124】
また、上記の第1及び第2実施形態では、ドライブユニット120をCDのドライブユニットとしたが、固定ディスクやDVDのドライブユニットとすることもできる。さらに、ラジオ放送や地上デジタルテレビ放送等の放送波受信回路や外部機器の音声入力回路等とすることもできる。
【0125】
なお、上記の第1及び第2実施形態における制御ユニットを中央処理装置(CPU:Central Processor Unit)やDSP(Digital Signal Processor)を備えるコンピュータシステムとして構成し、制御処理部等の機能を、プログラムの実行によっても実現するようにすることができる。これらのプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配送の形態で取得されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1実施形態に係る音響装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の4個のスピーカの配置位置を説明するための図である。
【図3】図1の制御ユニットの構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図3のチャンネル信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図4の抽出処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図6】図4の信号補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図6の個別補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】図1の装置による音像位置補正前の聴取者と音像との位置関係の例を説明するための図である。
【図9】図1の装置による音像位置補正後の聴取者と音像との位置関係の例を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る音響装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図11】図10の制御ユニットの構成を説明するためのブロック図である。
【図12】図11のチャンネル信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図13】図12の抽出処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図14】図12の信号補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図15】図14の個別補正部の構成を説明するためのブロック図である。
【図16】制御ユニットの変形例を説明するための図である。
【図17】図16のチャンネル信号処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図18】図17の抽出処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0127】
100A,100B … 音響装置
111A,111B … 制御処理部(抽出制御手段及び補正制御手段)
131L〜131SR … スピーカ
220A,220B … チャンネル分配部(生成手段)
230A〜230C … 抽出処理部(抽出手段)
231L,231R … 適応フィルタ(個別抽出手段)
232,236 … 加算部(加算手段)
233 … バンドパスフィルタ(加算結果フィルタリング手段)
235 … バンドパスフィルタ(直接フィルタリング手段)
240A,240B … 信号補正部(補正手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数である第1の数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置であって、
第2の数のチャンネル信号を含む第1音響信号から前記複数のスピーカそれぞれに対応する第2音響信号を生成する生成手段と;
前記第1音響信号に含まれる所定種類の音声の信号を抽出する抽出手段と;
前記所定種類の音声の前記音場空間における音像位置に対応して前記スピーカごとに定められた比率で、前記抽出手段による抽出結果を前記第2音響信号における前記複数のスピーカそれぞれに対応する信号に加算する補正手段と;
を備えることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記第2の数は、前記第1の数と異なっている、ことを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記第2の数は、複数であり、
前記抽出手段は、
前記複数のチャンネル信号における前記所定種類の音声を主成分とする信号とは異なる信号のそれぞれにおける前記所定種類の音声の信号成分を抽出する個別抽出手段と;
前記個別抽出手段により抽出された前記複数のチャンネル信号のそれぞれにおける抽出信号を加算する加算手段と;を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記個別抽出手段は、複数のチャンネル信号のそれぞれについて、時間領域演算を行う適応フィルタである、ことを特徴とする請求項3に記載の音響装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記加算手段による加算結果における前記所定種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる加算結果フィルタリング手段を更に備える、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の音響装置。
【請求項6】
前記加算手段は、前記所定種類の音声を主成分とする信号を更に加算する、ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項7】
前記抽出手段は、前記所定種類の音声を主成分とする信号における前記所定種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる直接フィルタリング手段を更に備える、ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項8】
前記所定種類の音声の指定に従って、前記抽出手段により抽出される音声の種類を制御する抽出制御手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項9】
前記音像位置の指定に従って、前記比率を前記補正手段に対して指定する補正制御手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項10】
移動体に搭載される、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項11】
複数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置において使用される音像設定方法であって、
前記スピーカの数とは異なる数のチャンネル信号を含む第1音響信号から前記複数のスピーカそれぞれに対応する第2音響信号を生成する生成工程と;
前記第1音響信号に含まれる所定種類の音声の信号を抽出して補正用抽出信号を生成する抽出工程と;
前記所定種類の音声の前記音場空間における音像位置に対応して前記スピーカごとに定められた比率で、前記補正用抽出信号を前記第2音響信号における前記複数のスピーカそれぞれに対応する信号に加算する補正工程と;
を備えることを特徴とする音像設定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の音像設定方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする音像設定プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の音像設定プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。
【請求項1】
複数である第1の数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置であって、
第2の数のチャンネル信号を含む第1音響信号から前記複数のスピーカそれぞれに対応する第2音響信号を生成する生成手段と;
前記第1音響信号に含まれる所定種類の音声の信号を抽出する抽出手段と;
前記所定種類の音声の前記音場空間における音像位置に対応して前記スピーカごとに定められた比率で、前記抽出手段による抽出結果を前記第2音響信号における前記複数のスピーカそれぞれに対応する信号に加算する補正手段と;
を備えることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記第2の数は、前記第1の数と異なっている、ことを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記第2の数は、複数であり、
前記抽出手段は、
前記複数のチャンネル信号における前記所定種類の音声を主成分とする信号とは異なる信号のそれぞれにおける前記所定種類の音声の信号成分を抽出する個別抽出手段と;
前記個別抽出手段により抽出された前記複数のチャンネル信号のそれぞれにおける抽出信号を加算する加算手段と;を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記個別抽出手段は、複数のチャンネル信号のそれぞれについて、時間領域演算を行う適応フィルタである、ことを特徴とする請求項3に記載の音響装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記加算手段による加算結果における前記所定種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる加算結果フィルタリング手段を更に備える、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の音響装置。
【請求項6】
前記加算手段は、前記所定種類の音声を主成分とする信号を更に加算する、ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項7】
前記抽出手段は、前記所定種類の音声を主成分とする信号における前記所定種類の音声に対応する帯域成分を選択的に通過させる直接フィルタリング手段を更に備える、ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項8】
前記所定種類の音声の指定に従って、前記抽出手段により抽出される音声の種類を制御する抽出制御手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項9】
前記音像位置の指定に従って、前記比率を前記補正手段に対して指定する補正制御手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項10】
移動体に搭載される、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項11】
複数のスピーカから音場空間へ向けて音声を出力する音響装置において使用される音像設定方法であって、
前記スピーカの数とは異なる数のチャンネル信号を含む第1音響信号から前記複数のスピーカそれぞれに対応する第2音響信号を生成する生成工程と;
前記第1音響信号に含まれる所定種類の音声の信号を抽出して補正用抽出信号を生成する抽出工程と;
前記所定種類の音声の前記音場空間における音像位置に対応して前記スピーカごとに定められた比率で、前記補正用抽出信号を前記第2音響信号における前記複数のスピーカそれぞれに対応する信号に加算する補正工程と;
を備えることを特徴とする音像設定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の音像設定方法を演算手段に実行させる、ことを特徴とする音像設定プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の音像設定プログラムが、演算手段により読み取り可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−159428(P2009−159428A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336973(P2007−336973)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
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