説明

頭付きワークの検査装置

【課題】ねじのような頭付き棒状ワークの良品・不良品を選別する検査装置において、選別速度のアップと低廉化とを図る。
【解決手段】検査装置は、複数の単位通路13〜17がコーナー部4〜7で方向変換しながら連続したワーク移動路を備えている。各単位通路13〜17は平行に伸びるガイドレール18〜22の対で構成されており、ねじ(ワーク)1は頭3を上にした吊り下げ姿勢で移動する。ねじ1の移動はエアシリンダ28〜31で行われる。例えば、第3コーナー部6において第1センサ8で全長の測定が行われ、第4単位通路16の通過途中において第2センサ9で頭3の外径の測定が行われ、第4単位通過17において第3センサ10で軸(ねじ部)2の外径の検査が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ねじ類のような頭付きワーク(頭付き棒状部材)の寸法類を検査(計測)して良品と不良品とを識別する検査装置(選別装置)に関するものである。ここにねじ類とは、外周にねじ山(雄ねじ)が形成されているものを言い、木ねじやタッピンねじ、ドリルねじ、小ねじ(ビス)、ボルトなどを総称するものである。頭付きワークは軸の一端に当該軸よりも大径の頭を設けてなる物品の総称であり、リベット、釘、締結用ピン、アンカー類などの打ち込み式ファスナーが挙げられる。なお、ねじ類と打ち込み式ファスナーとは頭付きファスナーと呼ぶことも可能である。
【0002】
また、寸法類とは、長さや厚さや外径や距離等の純然たる寸法に加えて、形状、真直率(曲がりの程度)、表面粗さなども含む概念である(これら形状や表面粗さ等も詰めると寸法データに還元されるので、本願では、寸法類と総称している。)。
【背景技術】
【0003】
ねじは製造してから出荷する前に検査されて不良品が排除される。検査項目としては、全長、頭部の外径、軸(ねじ部)の外径(呼び径)、ねじ部の谷径、ピッチなどの多くの項目がある。また、ねじの種類に応じた特有の項目も存在する。但し、常に全項目のチェックが要求される訳ではなく、例えば、全長と頭部大径とねじ部外径との3種類だけの検査で済まされる場合もある。
【0004】
そして、ねじの検査は、ねじを整列させて移送しつつ行うようになっており、その例として特許文献1には、ねじを回転円板の縁部に吊り下げて鉛直姿勢にして水平移動させつつ、移動途次においてカメラで撮影して画像処理することで各種の項目を検査することが開示されている。また、特許文献2,3には、ねじを直線状の移送路に沿って移送しつつカメラで撮影して画像処理することで各種項目を検査する技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3519356号公報
【特許文献2】特許第3329966号公報
【特許文献3】特開平6−167323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記各特許文献は、近年の画像処理技術のめざましい進歩を背景にしているものであるが、画像処理装置を使用するのは、まず第一に価格が高いという問題点がある。特に、検査能率を高くしようとすると処理能力の高い装置を採用せねばならず、すると、益々コストが嵩むことになる。画像処理装置を使用した場合の第2の問題点は、塵埃がカメラに付着して撮像精度が低下するというように検査場所の環境によって影響を受けることがある点である(光電式センサや赤外線センサを使用した場合も同様の問題がある。)。
【0006】
更に、画像処理技術を使用した検査装置では、カメラの焦点がぴったり合うようにねじを所定位置に停止させねばならないが、ねじには停止によって慣性力が作用するため、停止・前進に要する時間を縮めるには限度があり、このために検査能率を高め難いという問題もあった。特に、特許文献1のようにロータリー式の装置の場合、回転円板は割り付け装置によって正確に停止させねばならないため、処理速度を高めることの限界が顕著に現われるのみならず、割り付け装置は高価であるためコスト面でも不利であった。
【0007】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、ねじのような頭付き棒状ワークの検査装置について、検査能率のアップ、環境の影響の排除によるランニングコストの低減、装置全体としてのコストダウンといったことを実現せんとすることにある。
【0008】
ところで、センサ類は多くの種類のものがあり、その例として、ワークとの間隔を精密(例えばμm単位で)測定できる高周波発振型等の非接触式近接センサが安価に市販されている。しかし、ワークの表面に凹凸がある場合やワークが移動している場合、近接センサでは正確に検知し難い場合がある。本願発明はこの点にも配慮しており、複雑な形状のワークを安価な近接センサで簡易に検査できるようにすることも目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、ロータリー式の送りや画像処理装置を使用した検査方法(計測方法)の持つ問題に関する知見に基づき、ワーク移動路の形態と送り手段、及びセンサの種類について複合的に考察することにより、本願発明を完成させるに至った。
【0010】
本願発明が対象とする検査装置は、軸の一端に頭を設けたワークが頭を上にした鉛直姿勢で水平移動するワーク移動路と、前記ワークをワーク移動路に沿って強制的に水平移動させる送り手段と、前記ワーク移動路の近傍に配置したセンサとを備えている。前記ワーク移動路は平面視で平行に延びるガイドレールの対で構成されており、前記ワークは、軸は両ガイドレールの間のガイド溝に移動自在に嵌まって頭の座面は両ガイドレールで摺動自在に支持されるようになっており、更に、前記ワークは、前記両ガイドレールで吊り下げられて水平移動しつつ寸法類が前記センサで計測されるようになっている。
【0011】
そして、本願発明では、前記ワーク移動路は、平面視直線状の単位通路がコーナー部を介して交叉しつつ連続した形態になっている一方、前記送り手段は、前記単位通路に対応して配置されたプッシャーの群から成っており、各プッシャーは、単位通路の箇所でワークを一方向に押すように配置されている。
【0012】
本願発明は多くの局面を持っている。その例として請求項2の発明は、請求項1において、前記ワーク移動路は複数のコーナー部を備えており、複数のコーナー部の近傍及び少なくとも1つの単位通路の略中途部に計測対象が相違するセンサをそれぞれ配置している。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明をねじ類の検査に適用したものであり、ねじ類は、外周にねじ山が形成された軸の一端に頭を設けてなる構成である。そして、請求項3の検査装置は、請求項2において、前記ワーク移動路は少なくとも3つのコーナー部を有しており、前記3つのコーナー部の近傍と4つの単位通路の略中間部とのうちの任意の部位に、ねじ類の全長を計測するためのセンサと、ねじ類における頭の外径を計測するためのセンサと、ねじ類におけるねじ山の外径を計測するためのセンサとが、互いに分散した状態で配置されている。なお、ねじの曲がりを計測することも可能である。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちの何れかにおいて、前記各センサは、高周波発振型又は磁気型若しくは静電容量型の近接センサになっている。
【0015】
更に請求項5の発明では、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、前記センサとワークとの間には、ワークが通過すると当該ワークの表面に直接に又はガイド体を介して弾性に抗して当たってセンサとの間隔が変化する検知板が配置されており、前記センサと検知板との間隔を計測することによってセンサとワークとの間隔寸法が間接的に計測されるようになっている。
【発明の効果】
【0016】
従来技術ではワークは停止の前後で同じ方向に向いているため停止に際して慣性力が作用しており、そこで、ワークを正確な位置に停止させるためには移送速度をあまり高くすることができないのであったが、本願発明ではワークをワーク移動路のコーナー部で停止させるものであるため、ワークは従来より高速で移動していても正確に停止する。換言すると、本願発明ではワーク移動路のコーナー部がワークを強制的に停止させるストッパーの役割を果たしており、このため、ワークを高速で移動させていてもコーナー部に正確に停止させることができるのである。
【0017】
また、ワークは各単位通路に対応して設けたプッシャーで押されて直線移動するに過ぎないため、ワークの移送速度を高くすることも極めて容易である。このように本願発明の検査装置は、ワークを高速移動させて正確に停止させることができるため、ワークの検査能率を格段に向上させることが可能になる。また、プッシャーとしては例えばエアシリンダや電磁ソレノイドのような安価なものを使用でき、しかも高価な割り付け装置は不要であるため、製造コストの抑制にも貢献できる。
【0018】
ところで、一般に頭付きで棒状のワークは全長や外径等の複数の寸法類を検査せねばならないことが多く、この場合、コーナー部を1箇所のみ設けてこの1箇所のコーナー部で全ての寸法類を検査することも理論的には可能ではあるが、この場合はセンサの設置場所の設定が面倒になったり、センサの種類によっては干渉等のために同時計測ができなくなったりする虞がある。これに対して請求項2や請求項3のようにワーク移動路に複数のコーナー部を設けて各コーナー部で別々の寸法を検査(計測)する構成を採用すると、複数のセンサをスペースや干渉の問題を回避した状態で設置できる利点がある。
【0019】
また、請求項4のようにセンサとして高周波発振型又は磁気型若しくは静電容量型を採用すると、光学式のセンサではないため、塵埃の影響を受けることなく長期にわたって安定した稼働させることができる。この点も本願発明の大きな利点である。
【0020】
更に、請求項5のように構成すると、ワークの検査箇所に凹凸がある場合や、ワークを移動させつつ検査させたりせねばならない場合であっても、検知板は広い面積(幅や長さ)とすることができるため、近接センサやポテンショメータのような安価なセンサ類を使用してワークとの間隔を検知(計測)することが可能になる。その結果、検査能率のアップやコストダウンに一層貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態はねじの検査装置に適用している。
【0022】
(1).検査対象・検査の流れ
図1(B)に示すように、ねじ1は軸2と皿形の頭3とを備えており、軸2にはその全長にわたって雄ねじ(ねじ山)が形成されている(但し、ねじ山の表示は部分的にしか描いていない。)。頭3には十字穴が形成されている。本実施形態では、ねじ1は、全長と頭3の外径と軸2の外径(正確には雄ねじ部の外径である呼び径)の3つの項目が計測される。
【0023】
敢えて述べるまでもないが、軸2にはねじ無し部が存在している場合もある。また、軸2の先端はフラットに表示しているが、先端部の形状はねじの種類(例えばタッピンねじ、ドリルねじ、木ねじ等)によって相違することになる。
【0024】
図1(B)に簡単に示すように、ねじ1は第1〜第4の各コーナー部4〜7で進行方向を90°ずつ変えて移動するようになっており、第3コーナー部6において第1センサ8で全長が検査され、第3コーナー部7と第4コーナー部8との間の中途部において第2センサ9で頭部3の外径が検査され、第4コーナー部7よりも下流側の通路において第3センサ10で軸部2の外径が検査される。
【0025】
(2).ワーク移動路の構成
まず、図1(A)及び図2,3に基づいてワーク移動路を説明する。図1(A)は検査装置の概略斜視図、図2は平面図、図3のうち(A)は図2の III(A)-III(A)視断面図、(B)は図2の III(B)-III(B)視断面図、(C)は部分的な拡大断面図、(D)は別例の拡大断面図である。図1(A)や図2に示すように検査装置はベース板(テーブル)12を備えており、このベース板12に各構成部材が配置されている。
【0026】
検査装置は、ねじ1を鉛直姿勢で移動させるワーク移動路(ねじ移動路)を備えており、このワーク移動路は、ねじ1を平面視で一直線方向に移動させる第1〜第5の単位通路13〜17で構成されている。第1単位通路13と第2単位通路14とは第1コーナー部4を介して交叉しており、第2単位通路14と第3単位通路15とは第2コーナー部5を介して交叉しており、第3単位通路15と第4単位通路16とは第3コーナー部6を介して交叉しており、第4単位通路16と第5単位通路17とは第4コーナー部7を介して交叉している。図2では、各コーナー部4〜7は便宜的に点線の円で囲って表示している。
【0027】
ワーク移動路は平行に延びるガイドレール(ガイド部材)の対で構成されている。すなわち、第1単位通路13は主として第1ガイドレール18の対で構成されており、第2単位通路14は主として第2ガイドレール19の対で構成されており、第3単位通路15は主として第3ガイドレール20の対で構成されており、第4単位通路16は主として第4ガイドレール21の対で構成されており、第5単位通路17は第5ガイドレール22の対で構成されている。
【0028】
第1コーナー部4と第3コーナー部6とはねじ1の進行方向から見て右に曲がっており、第2コーナー部5と第4コーナー部7とは左に曲がっている(コーナー部の曲がり方向はねじ1の進行方向に向かって順次違っている)。従って、第1単位通路13と第3単位通路15と第5単位通路17とは平面視で同じ方向に延びており、第2単位通路14と第4単位通路16とは同じ方向に延びている。第5単位通路17を構成するガイドレール22の対は、ねじ1の進行方向に向かって右側のものが平面視で短くなっている。これは、不良品を第5単位通路17と直交した方向に排除するためである。
【0029】
第1単位通路13はねじ1の導入口であり、その始端にシュート23の終端が近接又は接続されている。図3(A)に示すように、シュート23も平行に延びるガイドレール24の対で構成されており、両ガイドレール24でねじ1の頭3の座面3aがスライド自在に支持されている。シュート23の上面にはねじ1の飛び出しを防止するための上カバー24aが固定されている。シュート23にはパーツフィーダ(図示せず)からねじ1が頭3を上にした姿勢で整列して送られる。
【0030】
シュート23がバイブレータを有する振動式になっている場合は、振動が検査装置に伝播するのを防止するため、シュート23の終端と第1単位通路13の始端との間には僅かの隙間を開けておくのが好ましい。シュート23が傾斜式であってねじ1が自重で移動する場合は、シュート23の終端を第1単位通路13の始端に当接させても構わない。
【0031】
各単位通路13〜17でのねじ1の移送態様はシュート23と共通しており、ねじ1の頭3の座面3aを各ガイドレール18〜22でスライド自在に支持することにより、ねじ1を吊り下げられた鉛直姿勢で移動させるようになっている。図3(C)に示すように、各ガイドレール18〜22の上端部にはねじ1の座面3aが重なる傾斜面25が形成されている。従って、ねじ1の座面3aが正確に加工されている限り、ねじ1の軸心はガイドレール18〜22の対の中間点を移動する。
【0032】
敢えて述べるまでもなく、ガイドレール18〜22の対で挟まれた部分はねじ1の軸2が通るガイド溝になっている。図3(C)では雄ねじ部2aがガイドレール18〜22の内側面に当たった状態を描いているが、実際には若干のクリアランスがある。図3(D)では、ねじ1の軸2がねじ無し部2bを備えている場合の送り状態を示している。
【0033】
図2及び図3(B)に示すように、第1単位通路13を構成する一方の第1ガイドレール18には、ねじ1が通過する度に信号を発するカウントセンサ26が固定されている。カウントセンサ26はねじ1の存在を検知するに過ぎないので計測機能を備えている必要はなく、例えば赤外線照射方式のフォトセンサのようなものでよい。勿論、高周波発振型又は磁気型若しくは静電容量型等の近接センサを使用することも可能である。マイクロスィッチのような接触式のセンサも使用可能ではあるが、メンテナンスフリーの点からは非接触式のものが好ましい。
【0034】
本実施形態では各ガイドレール18〜22は板材を使用しているが、例えば棒材やパイプ材で構成することも可能である(要は、ねじ1の軸2を横振れしない状態で移送できたら良い)。ガイドレール18〜22の素材に限定はないが、センサとの関係で非磁性体(例えば非フェライト系ステンレスやアルミ)が好ましい場合もある。
【0035】
(3).プッシャーの構成
次に、図1(A)や図2に加えて図4〜図8も参照してねじ1の送り手段であるプッシャーについて説明する。図4は図2のIV−IV視断面図、図5は図2の V-V視断面図、図6は図2のVI−VI視断面図、図7は図2の VII-VII視断面図、図8は図2の VIII-VIII視断面図である。
【0036】
本実施形態では、プッシャーのアクチェータとしてエアシリンダを使用しており、ねじ1を第2単位通路14に沿って移動させる(押しやる)第1エアシリンダ22、ねじ1を第3単位通路15に沿って移動させる第2エアシリンダ29、ねじ1を第4単位通路15に沿って移動させる第3エアシリンダ30、ねじ1を第5単位通路17に沿って移動させる第4エアシリンダ31、ねじ1を第5単位通路17と直交した方向に押しやる第5エアシリンダ32、の5本のエアシリンダを備えている。
【0037】
各エアシリンダ28〜32は、その軸心が対応した単位通路13〜17の中心線と並んだ状態でワーク移動路の外側に配置されており、ヘッドがベース板12にボルトで固定されている。そして、第1エアシリンダ28〜第4エアシリンダ31のピストンロッド34には、ねじ1を押し移動させるための第1〜第4の押し板35〜38が固定されている。すなわち、図2〜図7に示すように、ピストンロッド34の先端に形成したねじ部を押し板(押し部材)35〜38の背面にねじ込んでナット39でロックしている。
【0038】
各押し板35〜38の板厚は各単位通路13〜17の溝幅よりも僅かに小さい寸法に設定されており、また、各押し板35〜38はねじ1の軸2に広い範囲で当接できる程度の上下長さになっている。図4〜図7に示すように、一方の第1ガイドレール18、一方の第2ガイドレール19、一方の第3ガイドレール20、一方の第4ガイドレール22には、それぞれ押し板35〜38がスライド自在に嵌まる長穴41を空けている。
【0039】
また、各第1〜第3の押し板35〜38の背面の上部には上向きに延びる添え板がボルトで固定されており、各添え板42に補助ロッド43を固定し、補助ロッド43を一方のガイドレール18〜22にスライド自在に嵌め入れている。
【0040】
補助ロッド43は押し板35〜38の姿勢保持機能とねじ1の押し機能とを併有しており、補助ロッド43の先端面と押し板35〜38の先端面とは略同じ位置になっている(ねじ1の軸2がねじ無し部2bを有する場合は、補助ロッド43の先端を押し板35〜38の先端よりも僅かに突出させても良い。)。第4押し板38には補助ロッド43を設けていない(勿論、補助ロッド43を設けることは可能である。)。
【0041】
図8に示すように、第5エアシリンダ32のピストンロッド34には、中間板44を介して上下2本のストッパーピン45が固定されており、ストッパーピン45は片方の第5ガイドレール22に空けた穴にスライド自在に嵌まっている。ストッパーピンは不良なねじ1の前進動を停止させるためのものであり、片方のガイドレール22のうちストッパーピン45よりもやや後ろ側(ねじ1の前進方向にむかってストッパーピン45よりもやや手前側)には、不良なねじ1を排除するための上下複数個(3個)のエアー噴出穴46が空いており、このエア噴出穴46にエア配管47が接続されている。
【0042】
(4).センサ類
次に、図9〜図13も参照して検査用のセンサ8〜10とこれに関連した構成を説明する。図9は各種部材を表示した状態での平面図、図10は図9の X-X視断面図、図11は図9の XI-XI視断面図、図12は図9の XII-XII視断面図、図13は図9の XIII-XIII視断面図、(B)は(A)のB−B視図である。
【0043】
第1センサ8は円柱状(棒状)の形態であり、第3コーナー部6の上方に第1ブラケット49にて鉛直姿勢で配置されている。第1ブラケット49はL字状に形成されており、第3エアシリンダ30のヘッドにボルト50で固定されている(勿論、他の部材に固定しても良い)。第1ブラケット49の先端部は平面視で二つ割り状に形成されたクランプ部になっており、このクランプ部に第1センサ8を差し込んでボルト51で締め付け固定している。
【0044】
第1センサ8はその下端から高周波が下向きに発振されるようになっており、ねじ1が下方に位置すると電磁誘導によって誘導電流が流れるが、誘導電流の大きさがねじ1の長さLによって相違し、すると、検出コイルに生じるインピーダンスが変化する。そこで、正確な長さ寸法のねじが下方に位置したときのインピーダンスの値を基準値として、インピーダンスが基準値よりも許容値以上に増減しているときに全長が短か過ぎるか又は長すぎると不良品と判定される。
【0045】
第1センサ8とねじ1の頭3との間には、ステンレス板や板ばねのような弾性を有する薄金属板からなる第1検知板52が配置されている。第1検知板52は帯状に形成されていてその基端部は第2単位通路14を構成する第2ガイドレール19にスペーサ53を介してねじで固定されており、かつ、第1検知板52の先端部は、第1センサ8の下方のみにおいてねじ1の頭3の頂面に弾性的に当たるように配置されている(従って、第1検知板52は先端に行くに従って下向きとなるように全体として傾斜している。)。
【0046】
図6に示すように、第3コーナー部6の箇所にはねじ1の下端面が当たり得る下ガイド体6aが配置されており、ねじ1が下ガイド体6aに乗り上げて上昇することを利用して、全長Lの良否が検知される。その具体例の1つは次のとおりである。すなわち、設計値の長さのねじ1が下ガイド体6aに当たって上昇する寸法を基準値として、基準値に許容値を増減することで下限値と上限値とを設定し、上昇寸法が下限値よりも小さい場合(第1センサ8と第1検知板52との間隔寸法Sが上限値より大きい場合)は短すぎとして不良と判定し、上昇寸法が上限値よりも大きい場合(間隔寸法Sが下限値より小さい場合)は長すぎるとして不良の判定を行う。
【0047】
実際のねじの上昇寸法の演算は、第1センサ8と第1検知板52との間隔寸法Sに基づいて行われる。このように第1検知板52を使用するのは、ねじ1の頭3には十字穴やすり割り、或いは六角穴等のドライバ用係合穴があることから、これら係合穴の影響を防止すること、及び、ねじ1の素材(磁性体・非磁性体)に関係なく正確に測定するためである。
【0048】
第2ブラケット54の一端部(図9で右端)は片方の第3ガイドレール20の上面にボルト55で固定されており、第2ブラケット50の他端部(図9で左端)は、片方の第5ガイドレール22の上面にボルト56で固定された第3ブラケット57にスペーサ58を介してボルト59で固定されている。第3ブラケット57とスペーサ58との間には第2検知板60が挟み固定されており、第2検知板60は第2センサ9の前方に延びていて、第4単位通路15を通過するねじ1の頭3の外周面に弾性的に当接し得るようになっている。
【0049】
第2センサ9は、その軸心がねじ1の頭3の真横に位置するように配置されている。第2センサ9では、ねじ1の頭3の外周面との間隔を直接に計測するのではなく、ガイド手段の一例としてのローラ64で頭3の位置を保持した状態で第2検知板60との間隔を検出して、間接的に外径D1を測定する。すなわち、第4単位通路16を挟んだ一方の第4ガイドレール21にねじ1の頭3の外周面が必ず当たるローラ64を水平回転自在に配置する一方、第4単位通路16を挟んでローラ64と反対側の第3ガイドレール21の上方に弾性板製の第1検知板60を配置し、第2センサ9から第2検知板60までの間隔寸法を検知するようになっている。
【0050】
第2センサ9の先端面からローラ64までの距離L1は一定であると共に第2検知板60の厚さは一定なので、第2検知センサ9と第2検知板60との間隔寸法をL2とするすと、(L1−L2−t)からねじ1の頭3の外径が演算される。実際には、ねじの頭3の基準径の場合のL2の値を基準値として、L2が所定寸法に入っていれば良品と判別し、L2が下限寸法以下及び上限寸法以上である場合は不良品と判別する。
【0051】
ねじ1の頭3の外周面には上下の幅は殆ど(或いは全く)無いので、頭3の外周面を直接に検知するのは厄介であるが(ねじ1が僅かでも上下に振れると精度が著しく低下する)、第2検知板60を使用すると、第2検知板60は上下幅寸法を大きく取ることができるため、頭3の頂面の高さに関係なく外周D1を正確に検知できる。また、第2センサ9の軸心を頭3の頂面の高さに揃える必要もないため、第2センサ9を配置するに当たっての微妙な調節は不要になる。
【0052】
ねじの頭3を位置止めするためのガイド手段としてはローラ64に代えて板材やブロック材を使用することも可能であるが、ローラ64を使用するねじ1の移動がスムースであると共に使用に伴う経時的な磨耗が極めて少ない点で優れている。
【0053】
例えば図2に示すように、第3センサ10は平面視L型の第4ブラケット65を介して片方の第5ガイドレール22の外側面に固定されている。そして、図13に示すように、片方の第5ガイドレール22のうち第3センサ10の検知方向前方の部位には窓穴66が形成されており、この窓穴66に板ばね製ブラケット67を介してローラ68が水平回転自在に配置されている。
【0054】
板ばね製ブラケット67は水平方向(上下方向でもよい)に延びていた基端部がボルト69で片方の第5ガイドレール22に固定され、先端部に形成した二股状部67aにローラ68が回転自在に取付けられている。ローラ68は第5単位通路17に部分的に入り込んでおり、ねじ1が第5単位通路17を通過すると、必ずローラ68を外側に押しやるように設定されている。すなわち、ねじ1は、その軸2がローラ68と一方の第5ガイドレール22とで挟まれた状態で第5単位通路17を通過する。
【0055】
そして、片方の第5ガイドレール22の外面には、ローラ68の外周面に常に当たっている弾性板製の基端部が第3検知板70がボルト69に固定されており、第3検知板70を挟んでローラ68と反対側に第3センサ10が配置されている。従って、第3検知板70は片持ち梁状の状態になっており、ねじ1の通過に伴ってローラ68が水位方向に移動すると、第3検知板70の先端部が第3センサ10に接近したり離れたり移動する。
【0056】
図から容易に推測できると解されるが、ローラ68及び第3検知板70はねじ1の軸2の外径D2に応じて水平移動することにより、第3検知板70と第3センサ10との間隔L3がねじの外径D2に応じて変化することにより、L3が許容範囲外である場合は不良品として排除する。具体的には、ねじ1の外径D2が許容値よりも小径の場合はL3は上限値よりも大きくなって不良品と判別され、ねじ1の外径D2が許容値よりも大径の場合はL3は下限値よりも小さくなって不良品と判別される。
【0057】
ねじ1の通過によって移動するガイド手段としてはローラ68に代えてブロック状体や板状体も使用できる。また、第3検知板70にガイド体を一体に設けることも可能である。
【0058】
図示していないが、検査装置は、各エアシリンダ28〜31のピストンロッド34の前進・後退を検知するセンサも備えている。また、当然ながら、各エアシリンダ28〜32の駆動は制御装置で制御されるようになっており、各センサは制御装置に結線されている。
【0059】
(5).まとめ
シュート23から送られてきたねじ1は第1単位通路13に移行して第1コーナー部4でいったん停止し、次いで、第1エアシリンダ28によって第2コーナー部5に移行し、次いで、第2エアシリンダ29で第3コーナー部5に移動させられ、この第3コーナー部5に停止した状態で第1センサ8によって全長が測定され、次いで、第3エアシリンダ30で第4単位通路16を第4コーナー部7に向けて移動する途中で第2センサ9によって頭3の外径D1が測定され、次いで、第4コーナー部7に停止した状態で第3センサ10によって軸2の外径D2が測定される。
【0060】
そして、第4エアシリンダ31によって第4コーナー部7から第5単位通路17の外に排出される。この場合、第4コーナー部7に至ったねじ11が各寸法とも許容範囲内である良品である場合は、は図2に白抜き矢印で示すように、第5エアシリンダ32は後退状態にあって第4エアシリンダ31によってねじ1は第5単位通路17の前方に排出される。
【0061】
他方、第4コーナー部7に至ったねじ1が不良品である場合は、第5エアシリンダ32を前進させた状態で第4エアシリンダ31が作動させることでねじ1を第5エアシリンダ32のストッパーピン45で停止させ、そしてエア噴出穴46から圧縮空気を噴出させて第5単位通路17と直交した方向に排除する。
【0062】
ねじ1は上記の工程を経て検査(計測)・選別されるが、ねじ1はピストンロッド34が往復動するに過ぎないエアシリンダ28〜31によって各単位通路を素早く送られ、しかも各コーナー部4〜7での停止時間はごく僅かであり、更に、各センサ8〜10は高周波発振型であって寸法を瞬間的に検知できる。これらが相まって、ねじの検査(選別)を極めて能率良く行うことができる(すなわち単位時間当たりに検査・選別できるねじの本数を従来よりも多くすることができる)。
【0063】
また、ねじ1の送りは安価で信頼性が高いエアシリンダ28〜31で行われるものであるため装置は全体として簡単な構成であり、高価な割り付け装置やターンテーブルは不要である。このためコストも抑制できる。更に、センサ8〜10は高周波発振型であるため塵埃の影響を受けることはなく、メンテナンスの手間を無くしてランニングコストも抑制できる。
【0064】
本実施形態のように検知板52,60,70を使用すると、ワークとの間隔を測定するだけの近接センサを使用したものでありながら、ねじのような複雑な形状のワークの寸法を正確に検出することができる(この場合、ローラ等のガイド手段を併用すると検知の正確さの点で特に好適である)、また、ねじ1と検知板52,60,70との接触面積がある程度あることにより、ねじ1がエアシリンダ28〜31で押されて移動してもある程度の時間は検知板52,60,70とセンサ8〜10との間隔は一定のままの状態が保持されるため、ねじ1を移動させながらでも各数値を検知できるのであり、この面からも能率アップに貢献できる。
【0065】
(6).その他
上記の実施形態は本願発明の一例であり、本願発明は更に様々の態様に具体化できる。例えば、計測対象項目(検査箇所)はワークの種類や等級に応じて任意に設定できる。例えば、検査対象項目としては、軸の曲がりの程度、メッキ層の有無又は完全度、ねじの場合における十字穴やすり割り等の係合部の有無、ドリルねじにおけるドリル部の有無、ねじ(或いはボルト)であって軸にねじ無し部が存在する場合に当該ねじ無し部の外径、ねじのピッチ、などが挙げられる。
【0066】
また、コーナー部の数や各単位通路の長さも計測対象項目に応じて任意に設定できる。コーナー部は1箇所のみでも良く、1つのコーナー部で複数の項目を検査することも可能である。1つのコーナー部でワークを軸心回りに回転させて軸の曲がりを検出するといったことも可能である。プッシャーの具体的な構成はワークの形状に応じて設計すれば良く、例えば、実施形態のような押し板を使用せずにピストンロッドで直接に押すことも可能である。
【0067】
ワークの長さを検知する方法としては、センサで軸の下端を検知することも可能である。この場合、センサはワークの移動経路の横に配置しても良いし、移動経路の下方に配置してもよい(本実施形態のように第1センサ8をねじ1の上方に配置すると、ゴミ類の影響を防止できる。)。
【0068】
実施形態のように検知板を介してワークとの間隔寸法を間接的に計測する方法を採用する場合、使用できるセンサの種類は高周波発振型等の近接センサに限るものではなく、ポテンテショメータ等の接触式センサや、赤外線照射式センサや光電式センサ等の非接触式センサも使用できる。光学式センサを使用する場合は可撓性のカバーで覆うことによって塵埃等の影響を排除できる(ワークを直接に検査する場合は先端部をカバーすることはできないが、検知板を使用するとセンサ機能を損なうことなく先端部を確実にカバーすることができる。)。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(A)は実施形態に係る検査装置の概略斜視図、(B)は検査工程の流れを示す概念図である。
【図2】検査装置の平面図である。
【図3】(A)は図2の III(A)-III(A)視断面図、(B)は図2の III(B)-III(B)視断面図、(C)は部分的な拡大断面図、(D)は別例の拡大断面図である。
【図4】図2のIV−IV視断面図である。
【図5】図2の V-V視断面図である。
【図6】図2のVI−VI視断面図である。
【図7】図2の VII-VII視断面図である。
【図8】図2の VIII-VIII視断面図である。
【図9】各種部材を表示した状態での平面図である。
【図10】(A)は図9の XA-XA視断面図、(B)は図6の部分的な拡大図である。
【図11】図9の XI-XI視断面図である。
【図12】図9の XII-XII視断面図である。
【図13】(A)は図9の XIII-XIII視断面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 頭付き棒状ワークの一例としてのねじ(ビス)
2 ねじの軸
3 ねじの頭
4〜7 コーナー部
8〜10 検査用のセンサ(近接センサ)
13〜17 単位通路
18〜22 ガイドレール
23 シュート
28〜31 プッシャーのアクチェータを構成するエアシリンダ
32 ストッパー用の第5エアシリンダ
35〜38 プッシャーを構成する押し板
52,60,70 検知板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の一端に頭を設けたワークが頭を上にした鉛直姿勢で水平移動するワーク移動路と、前記ワークをワーク移動路に沿って強制的に水平移動させる送り手段と、前記ワーク移動路の近傍に配置したセンサとを備えており、
前記ワーク移動路は平面視で平行に延びるガイドレールの対で構成されており、前記ワークは、軸は両ガイドレールの間のガイド溝に移動自在に嵌まって頭の座面は両ガイドレールで摺動自在に支持されるようになっており、更に、前記ワークは、前記両ガイドレールで吊り下げられて水平移動しつつ寸法類が前記センサで計測されるようになっている、
という検査装置であって、
前記ワーク移動路は、平面視直線状の単位通路がコーナー部を介して交叉しつつ連続した形態になっている一方、前記送り手段は、前記単位通路に対応して配置されたプッシャーの群から成っており、各プッシャーは、単位通路の箇所でワークを一方向に押すように配置されている、
頭付きワークの検査装置。
【請求項2】
前記ワーク移動路は複数のコーナー部を備えており、複数のコーナー部の近傍及び少なくとも1つの単位通路の略中途部に計測対象が相違するセンサをそれぞれ配置している、
請求項1に記載した頭付きワークの検査装置。
【請求項3】
外周にねじ山が形成された軸の一端に頭を設けてなるねじ類の検査を行う装置であり、
前記ワーク移動路は少なくとも3つのコーナー部を有しており、前記3つのコーナー部の近傍と4つの単位通路の略中間部とのうちの任意の部位に、ねじ類の全長を計測するためのセンサと、ねじ類における頭の外径を計測するためのセンサと、ねじ類におけるねじ山の外径を計測するためのセンサと、互いに分散した状態で配置されている、
請求項2に記載した頭付きワークの検査装置。
【請求項4】
前記各センサは、高周波発振型又は磁気型若しくは静電容量型の近接センサである、
請求項1〜3のうちの何れかに記載した頭付きワークの検査装置。
【請求項5】
前記センサとワークとの間には、ワークが通過すると当該ワークの表面に直接に又はガイド体を介して弾性に抗して当たってセンサとの間隔が変化する検知板が配置されており、前記センサと検知板との間隔を計測することによってセンサとワークとの間隔寸法が間接的に計測されるようになっている、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載した頭付きワークの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−246323(P2008−246323A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88946(P2007−88946)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000110789)日本パワーファスニング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】