説明

頭部付き軸体の姿勢矯正装置および頭部付き軸体の検査装置

【課題】回転テーブルに吊り下げられた頭部付き軸体の姿勢を鉛直に矯正することにより、頭部付き軸体の安定した検査を可能とする。
【解決手段】回転テーブル1に形成した鉛直方向の切欠き溝4に頭部付き軸体Aの軸部aを導入し、その頭部付き軸体Aの頭部aを回転テーブル1の上面で支えてその軸体Aを吊り下げ、その頭部付き軸体Aを回転テーブル1が搬送し、その搬送される頭部付き軸体Aを搬送経路に固定して設けた押し上げガイド2で案内して上昇させ、その上昇した頭部付き軸体Aの軸部aを搬送経路に設けた押さえ手段で切欠き溝4の内面に押さえ付け、その押さえ付けにより頭部付き軸体Aの姿勢を鉛直に矯正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、頭部付き軸体の姿勢を矯正する姿勢矯正装置およびこの姿勢矯正装置を用いた頭部付き軸体の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ、釘、リベットなどの頭部付き軸体は、頭部の形状やめっきの状態、軸部の直径、ねじ山の有無などを検査し、不良品を除去して出荷される。この出荷前の検査をおこなう装置として、水平配置の回転テーブルの外周に形成した切欠き溝に頭部付き軸体の軸部を導入し、その頭部付き軸体の頭部を回転テーブルの上面で支えてその軸体を吊り下げ、その頭部付き軸体を回転テーブルが回転して搬送し、その搬送される頭部付き軸体をCCDカメラや光学センサを用いて検査する装置が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
しかし、この検査装置で、あらかじめ座金が組み込まれた座金付きねじを検査しようとすると、ねじの軸部のねじ山が座金に引っ掛かってねじが傾き、検査が不安定となることがある。特に、ばね座金が組み込まれた座金付きねじの場合、ねじの頭部がコイル状のばね座金を介して回転テーブルの上面で支えられるので、ねじが傾き、安定した検査をすることができない。また、頭部の座面がテーパ状の皿ねじや、頭部の座面に突起を有する溶接ボルトも、回転テーブルの上面で頭部を支えて吊り下げたときに傾きやすく、安定した検査が難しかった。
【0004】
【特許文献1】特公昭60−35003号公報
【特許文献2】特開2004−354367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、搬送テーブルに吊り下げた頭部付き軸体の姿勢を鉛直に矯正することにより、頭部付き軸体の安定した検査を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、搬送テーブルに形成した鉛直方向の切欠き溝に頭部付き軸体の軸部を導入し、その頭部付き軸体の頭部を前記搬送テーブルの上面で支えてその軸体を吊り下げ、その頭部付き軸体を前記搬送テーブルが水平に運動して搬送し、その搬送される頭部付き軸体を搬送経路に固定して設けた押し上げガイドで案内して上昇させ、その上昇した頭部付き軸体の軸部を前記搬送経路に設けた押さえ手段で前記切欠き溝の内面に押さえ付け、その押さえ付けにより頭部付き軸体の姿勢を鉛直に矯正するようにした。
【0007】
この頭部付き軸体の姿勢矯正装置は、次の構成を加えるとより好ましいものとなる。
1)前記搬送テーブルを、鉛直軸を中心として回転運動する回転テーブルで構成し、その回転テーブルの外周に前記切欠き溝を形成する。
2)前記切欠き溝をV字溝にする。
3)前記押さえ手段を、鉛直軸を中心として揺動可能に支持された押さえプレートと、その押さえプレートを前記頭部付き軸体に向けて付勢するばねとで構成する。
【0008】
また、この発明では、上記の姿勢矯正装置を備え、その姿勢矯正装置で姿勢を矯正された頭部付き軸体をCCDカメラまたは光学センサを用いて検査する頭部付き軸体の検査装置もあわせて提供する。
【発明の効果】
【0009】
この発明の頭部付き軸体の姿勢矯正装置は、押し上げガイドが頭部付き軸体を案内して上昇させ、その上昇した軸体の軸部を押さえ手段が切欠き溝の内面に押さえ付けるので、頭部付き軸体の軸部と切欠き溝の内面との接触により頭部付き軸体の姿勢が鉛直に矯正される。そのため、頭部付き軸体の安定した検査が可能となる。
【0010】
さらに、前記搬送テーブルを、鉛直軸を中心として回転運動する回転テーブルで構成し、その回転テーブルの外周に前記切欠き溝を形成したものは、頭部付き軸体が遠心力を受けて傾いても、その傾きを矯正することができる。
【0011】
また、前記切欠き溝をV字溝にしたものは、押さえ手段と切欠き溝の内面とで頭部付き軸体の軸部を3点支持するので、頭部付き軸体の姿勢がより安定する。また、V字溝の求心効果により、頭部付き軸体の位置決め精度が向上する。
【0012】
また、前記押さえ手段を、鉛直軸を中心として揺動可能に支持された押さえプレートと、その押さえプレートを前記頭部付き軸体に向けて付勢するばねとで構成したものは、頭部付き軸体を確実に押さえ付けることができる。
【0013】
また、上記の頭部付き軸体の姿勢矯正装置を備える頭部付き軸体の検査装置は、姿勢矯正装置で姿勢を矯正した状態で頭部付き軸体を検査するので、安定した検査が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および図2に、この発明の頭部付き軸体の姿勢矯正装置の実施形態を示す。この姿勢矯正装置は、座金付きねじAを搬送する回転テーブル1と、搬送される座金付きねじAを案内して上昇させる押し上げガイド2と、上昇した座金付きねじAを押圧する押さえプレート3を有する。
【0015】
回転テーブル1は、駆動装置(図示せず)で駆動されて鉛直軸を中心として回転する。回転テーブル1の外周には、図1に示すように鉛直方向の切欠き溝4が一定間隔で形成され、フィーダ5からこの切欠き溝4に座金付きねじAの軸部aが導入される。図2に示すように、軸部aが切欠き溝4に導入された座金付きねじAは、頭部aが座金aを介して回転テーブル1の上面で支えられ、吊り下げられた状態となって搬送される。回転テーブル1の径方向外側には、図1に示すように回転テーブル1の外周に沿って円弧状の固定ガイド6が配置され、この固定ガイド6が、座金付きねじAが回転テーブル1から脱落するのを防止している。
【0016】
座金付きねじAの搬送経路には、図2および図3に示すように、押し上げガイド2が固定されており、この押し上げガイド2が、搬送される座金付きねじAを案内して上昇させる。
【0017】
上昇した座金付きねじAは、図4に示す押さえプレート3に押圧されて、軸部aが切欠き溝4の内面に押さえ付けられる。押さえプレート3は、鉛直軸7を中心として揺動可能に支持され、座金付きねじAに向けてばね8で付勢されている。この押さえプレート3によって切欠き溝4に押さえ付けられた座金付きねじAは、その軸部aと切欠き溝4の内面との接触により、姿勢が鉛直に矯正される。
【0018】
姿勢が矯正された座金付きねじAは、図5に示すように回転テーブル1の上方に配置されたCCDカメラ9で頭部を撮影され、頭部aのくぼみの形状の良否、頭部aのめっきの良否などが検査される。また、回転テーブル1の側方に配置されたCCDカメラ10で軸部aを撮影され、軸部aの直径の良否、ねじ山の有無などが検査される。
【0019】
この検査により不良品と判定された座金付きねじAは、エア噴射装置(図示せず)によって、図1に示す不良品排出口11に排出され、良品と判定された座金付きねじAは、エア噴射装置(図示せず)によって良品排出口12に排出される。
【0020】
この姿勢矯正装置を用いると、座金付きねじAの軸部aを切欠き溝4の内面に押さえ付けてその姿勢を鉛直に矯正することができる。そのため、CCDカメラ9、10に対する座金付きねじAの姿勢が一定となり、安定した検査が可能となる。また、回転テーブル1の側方のCCDカメラ10から座金付きねじAの軸部aまでの距離も一定となり、側方のCCDカメラ10による検査精度が安定する。
【0021】
上記実施形態では、CCDカメラ9、10で座金付きねじAを撮影して検査しているが、レーザセンサや光電センサなどの光学センサを用いて検査してもよい。
【0022】
切欠き溝4は、図4に示すように内面をV字状にすると好ましい。このようにすると、切欠き溝4の内面に押さえ付けられた座金付きねじAの軸部aが、押さえプレート3と切欠き溝4の内面とで3点支持されるので、座金付きねじAの姿勢がより安定する。また、V字状の切欠き溝4の求心効果により、座金付きねじAの軸部aの位置決め精度が向上する。
【0023】
押し上げガイド2は、図3に示すように板ばねで形成すると好ましい。このようにすると、万一、座金付きねじAが上昇しなくても、板ばねが下方に逃げて装置の破損を防止する。
【0024】
上記実施形態では、押さえプレート3で座金付きねじAの軸部aを切欠き溝4の内面に押さえ付けているが、他の方式で押さえ付けるようにしてもよく、たとえば、押さえプレート3に代えて板ばねを設け、その板ばねで座金付きねじAを直接押圧してその軸部aを切欠き溝4の内面に押さえ付けるようにしてもよい。
【0025】
上記実施形態では、座金付きねじAの搬送を回転テーブル1で行なっているが、水平に運動する他の搬送テーブルで行なってもよく、たとえば水平に直線移動する移動テーブルで行なってもよい。
【0026】
上記実施形態では、姿勢を矯正する頭部付き軸体として座金付きねじAを例に挙げて説明したが、同様の姿勢矯正装置を用いて、他の頭部付き軸体の姿勢の矯正を行なうことも可能である。たとえば、座面がテーパ状の皿ねじや皿リベット、皿頭くぎの姿勢の矯正や、座面に突起を有する溶接ボルトの姿勢の矯正を行なうこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の頭部付き軸体の姿勢矯正装置の実施形態を示す平面図
【図2】図1の姿勢矯正装置の拡大斜視図
【図3】図2の姿勢矯正装置を径方向外方から見た図
【図4】図2の姿勢矯正装置を上方から見た図
【図5】図2の姿勢矯正装置を周方向から見た図
【符号の説明】
【0028】
1 回転テーブル
2 押し上げガイド
3 押さえプレート
4 切欠き溝
7 鉛直軸
8 ばね
9、10 CCDカメラ
A 座金付きねじ
軸部
頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送テーブル1に形成した鉛直方向の切欠き溝4に頭部付き軸体Aの軸部aを導入し、その頭部付き軸体Aの頭部aを前記搬送テーブル1の上面で支えてその軸体Aを吊り下げ、その頭部付き軸体Aを前記搬送テーブル1が水平に運動して搬送し、その搬送される頭部付き軸体Aを搬送経路に固定して設けた押し上げガイド2で案内して上昇させ、その上昇した頭部付き軸体Aの軸部aを前記搬送経路に設けた押さえ手段で前記切欠き溝4の内面に押さえ付けるようにした頭部付き軸体の姿勢矯正装置。
【請求項2】
前記搬送テーブル1を、鉛直軸を中心として回転運動する回転テーブル1で構成し、その回転テーブル1の外周に前記切欠き溝4を形成した請求項1に記載の頭部付き軸体の姿勢矯正装置。
【請求項3】
前記切欠き溝4をV字溝にした請求項1または2に記載の頭部付き軸体の姿勢矯正装置。
【請求項4】
前記押さえ手段を、鉛直軸7を中心として揺動可能に支持された押さえプレート3と、その押さえプレート3を前記頭部付き軸体Aに向けて付勢するばね8とで構成した請求項1から3のいずれかに記載の頭部付き軸体の姿勢矯正装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の頭部付き軸体の姿勢矯正装置を備え、その姿勢矯正装置で姿勢を矯正された頭部付き軸体AをCCDカメラ9、10または光学センサを用いて検査する頭部付き軸体の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−55763(P2007−55763A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244317(P2005−244317)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(392010050)株式会社ユタカ (13)
【Fターム(参考)】