説明

顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソース

【課題】
低温溶媒を注いで攪拌した際にも良好な分散性を有する顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースを提供する。
【解決手段】
喫食の際、分散に用いる溶媒100重量部に対して、HLBが7〜13の範囲内であり、構成脂肪酸がオレイン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.005〜0.12重量部の割合で含む顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温溶媒への優れた分散性を有する顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースの製造方法に関し、特に冷水又は冷たい牛乳に良好な分散性を有するインスタントスープ又はインスタントソースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加工食品技術の進歩に伴い、様々な顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースが開発されている。一般に、これらの顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースは、熱湯又は温水を加えて攪拌するだけで直ちに分散し、賞味することができる簡便性を大きな特徴としている。また、これらの顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースについては、より高い簡便性を求め、熱湯又は温水を注いだ際のいわゆる「ままこ(ダマ)」の発生を抑え、分散性を向上させる工夫がこれまでにも数多くなされてきた。即ち、デキストリンや乳糖等の分散剤を配合する方法、食用油脂を添加する方法、流動層造粒等の方法によって顆粒化する方法、等である。
【0003】
しかしながら、これら従来技術を用いても、得られた顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースを、冷水や冷たい牛乳等の低温溶媒を加えて、加熱することなく攪拌しただけでは、「ままこ(ダマ)」の発生を十分に抑えることができず、分散不良が生じるという課題があった。その為、冷たいスープや冷たいソースを調理しようとする場合には、熱湯又は温水を注いで攪拌し、十分に分散させてから冷ましたり、少量の熱湯又は温水、或いは冷水又は冷たい牛乳で予め練った後で、最終的に必要な分量の冷水又は冷たい牛乳を注いだりする必要があり、十分な簡便性が得られるものではなかった。
【0004】
分散性が改善された顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースを提供する方法として、ポリグリセリンベヘン酸エステルを特定量の割合で含有することで「ままこ(ダマ)」を生じ難くする方法が知られている(特許文献1)。この方法では、顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースに熱湯又は温水を注いだ際に、熱湯や温水に接触したインスタントスープやインスタントソースの表面で、澱粉や野菜パウダー等の原料が急激に膨潤して膜をつくり、インスタントスープ又はインスタントソース内部への熱湯や温水の侵入を妨げることで「ままこ(ダマ)」を形成してしまう現象を、HLBが3.1の疎水性ポリグリセリンベヘン酸エステルを用いることで抑制している。
【0005】
また、水に対する分散性の低い食用粉末に、炭素数8〜14の脂肪酸と重合度4〜10のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステルを配合することを特徴とする水易溶解性粉末食品が知られている(特許文献2)。この方法では、粉末食品を水に添加した場合に、水濡れ性が悪く、一部の小さい粉末塊が水面に浮いて沈降するのに時間が掛かったり、逆に沈降したままで容易に溶解しなかったりする現象を、特定の親水性ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで改善している。
【0006】
また、溶解性を改善した顆粒状組成物を提供する方法として、ママコ形成性成分と乳化剤を予め混合する顆粒状組成物の製造方法が知られている(特許文献3)。この方法は、ママコ形成性成分が親水性である場合は疎水性の乳化剤を混合することでママコ形成性成分の急激な膨潤によって膜をつくる現象を抑制し、ママコ形成性成分が疎水性である場合は親水性の乳化剤を混合することでママコ形成性成分の水濡れ性を改善するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−304826号公報
【特許文献2】特開平06−113755号公報
【特許文献3】特開2008−104435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は熱湯又は温水への分散性を改善する方法である為に、冷水や冷たい牛乳等の低温溶媒への分散性については記載も示唆もない。また、検討されている乳化剤の中で、HLBが3.1の疎水性乳化剤であるポリグリセリンベヘン酸エステルを選択している。
【0009】
また、特許文献2は、粉末食品の水濡れ性を向上させる為に特定の親水性ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることを特徴としており、実施例としてテトラグリセリンモノカプリエート、デカグリセリンモノミリステート、ヘキサグリセリンモノラウレートが記載されている。これらは、いずれも親水性の高い乳化剤であるが、これらをインスタントスープやインスタントソースのような複数の原料からなる組成物に用いたのでは、冷水や冷たい牛乳等の低温溶媒を注いで攪拌した際の分散性を十分に改善することは出来ないと考えられる。また、非常に高い親水性を有する乳化剤を用いた場合、インスタントスープやインスタントソースに配合されている澱粉や野菜パウダー等の親水性の高い原料の水濡れ性がさらに増してしまう。その為、低温溶媒であっても溶媒に接触した表面で澱粉や野菜パウダー等の原料が急激に膨潤して膜をつくり、インスタントスープ又はインスタントソース内部への低温溶媒の侵入を妨げることで「ままこ(ダマ)」を形成してしまう現象を助長してしまい、却って分散性が悪くなるという課題があった。
【0010】
また、特許文献3は、ママコ形成性成分と乳化剤を予め混合して、その混合物と残りの成分を混合し造粒する点に特徴がある為、混合を2段階以上実施しなければならないという煩雑さが伴う。また、該特許の実施例には、親水性のママコ形成性成分としてα化澱粉及びα化玄米粉を、疎水性の乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルを主成分とする製剤(リョートーエステルSP、三菱化学フーズ(株)製)をそれぞれ使用した実施例の記載しかなく、疎水性のママコ形成性成分と親水性乳化剤を混合した場合の実施例については全く示されていない。さらに、該特許に記載の方法に従えば、インスタントスープやインスタントソースのように、「疎水性成分と親水性成分が混在する食品」においては、疎水性成分と親水性乳化剤を、親水性成分と疎水性乳化剤をそれぞれ混合し、それらと残りの成分を混合しなくてはならないが、この場合は製造工程がさらに煩雑になる上、2種の乳化剤を必要とする点でコスト面が嵩み、工業的に不利である。しかも、このようにして得られた組成物は、親水性乳化剤と疎水性乳化剤が最終的に共存することになる為、親水性乳化剤の一部が親水性成分のままこ形成を助長する、及び/又は疎水性乳化剤の一部が疎水性成分のままこ形成を助長するなどして、所期の分散性改善効果が得られなくなるという課題があった。
【0011】
このように、従来の技術では、顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースにおいて、冷水や冷たい牛乳等の低温溶媒を注いで攪拌した際の分散性を、簡便且つ効果的に向上させるには至らなかった。そこで、本発明は、低温溶媒に対しても優れた分散性を有する顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースを提供することを目的とし、特に冷水や冷たい牛乳を注いで攪拌した際に容易に分散し、直ちに喫食に好ましい状態となる顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成した。本発明は以下の各発明を包含する。
(1) 喫食の際、分散に用いる溶媒100重量部に対して、HLBが7〜13の範囲内であり、構成脂肪酸がオレイン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.005〜0.12重量部の割合で含むことを特徴とする、顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースの製造方法。
(2) 分散に用いる溶媒が低温溶媒であることを特徴とする、発明(1)記載の顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースの製造方法。
(3) 発明(1)に記載の方法で得られる低温溶媒に優れた分散性を有する顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソース。
(4) 発明(2)に記載の顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースを、原料或いは中間製品として得られる即席食品。
【0013】
尚、本発明は、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置等の間で置き換えたものも含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースは、冷水や冷たい牛乳等の低温溶媒を注いで攪拌することで容易に分散し、濃度勾配がなく、スープ又はソースらしい良好な風味とテキスチャーを有した本格的なスープ又はソースを与える。加熱器具が無くても手軽にできるので、水や牛乳さえあればどこでも本格的なスープ又はソースを調理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、「顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソース」とは、溶媒を注いで攪拌することで、スープ又はソースを調理することができる即席乾燥食品である。本願発明の即席乾燥食品は、ラーメン等の即席食品を製造する為の原料乃至は中間製品として利用することも可能であり、該インスタントスープ又はインスタントソースに具材及び副原料を添加して、最終即席食品とすることができる。この場合の最終即席食品としては、インスタントラーメン等が好適な例として挙げられる。
【0016】
顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースは、一般に、原料として澱粉類、増粘多糖類、粉乳類、穀粉、野菜・果実パウダー、調味料、香辛料、賦形剤、食用油脂等を含むものであるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じてパセリ等の具材を加えることもできる。これらの原料を、混合機等を用いて混合して粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースとしても良いし、必要に応じ、流動層造粒等、公知の方法で顆粒化して顆粒状のインスタントスープ又はインスタントソースとしても良い。また、これらの原料の一部を顆粒化した後、残りの原料を混合することもできる。澱粉類としては、食用のものであれば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉等を用いることができる。澱粉の由来原料となる穀物は問わない。未加工のものであっても良いし、加工したものであっても良い。各種架橋澱粉やα化澱粉を用いることもできる。このような澱粉類は、該インスタントスープ又はインスタントソースを調理した際、溶媒に粘性を与える目的で用いられるが、本発明に用いる澱粉類としては、冷水や冷たい牛乳等の低温溶媒でも粘性を発現する加工澱粉(例えばα化澱粉等)がより好ましい。増粘多糖類は食用のものであれば特に限定されない。具体的にはグアガムやキサンタンガム等が挙げられる。澱粉類、及び増粘多糖類は一般に、溶媒に接触した表面で急激に膨潤して膜をつくり、内部への溶媒の侵入を妨げることで「ままこ(ダマ)」を形成し、インスタントスープ又はインスタントソースの分散性を悪化させる傾向にある。
【0017】
また、粉乳類としては、全脂粉乳、脱脂粉乳、チーズパウダー等が挙げられる。さらに、粉末油脂等の粉乳代替品(クリーミングパウダー)も含む。粉乳類は一般に、前記の澱粉類や増粘多糖類とは逆に、水濡れ性が低く、溶媒を注いで攪拌しても拡散せずに塊をつくることで「ままこ(ダマ)」を形成し、インスタントスープ又はインスタントソースの分散性を悪化させる傾向にある。
【0018】
また、穀粉としては、コーンパウダー、小麦粉のように、穀物を粉砕し、乾燥して得られる粉末が挙げられ、食用のものであれば任意に使用することができる。野菜・果実パウダーとしては特に限定されないが、例えば、たまねぎ、にんじん、ピーマン、ネギ、セロリ、白菜、かぼちゃ、じゃがいも、さつまいも、トマト、りんご、イチゴ、桃、マンゴー、バナナ等を粉砕し、乾燥して得られる粉末が挙げられる。また、これらを煮て得た抽出物を乾燥して得られるエキス粉末や、これらを搾って得た搾汁を乾燥して得られるジュース粉末を含む。これらは必要に応じ、粉末化前に単独或いは複数を混合して加熱したり、調味処理を施したりしても良い。
【0019】
調味料としては、砂糖、食塩、旨味調味料、畜肉エキス、魚介エキス等が挙げられる。香辛料としては、コショウ、ナツメグ、シナモン等が挙げられ、食用のものであれば任意に使用することができる。賦形剤としては、デキストリン、乳糖、麦芽糖等を用いることができる。本発明に用いる賦形剤としては、低温溶媒における分散性により優れた乳糖、麦芽糖が好ましく、麦芽糖が特に好ましい。
【0020】
食用油脂としては、食用として使用が認められているものであれば、植物性油脂、動物性油脂、或いはそれらの水素添加油脂であっても良い。具体的には、植物性油脂としては、コーン油、大豆油、菜種油、パーム油等を挙げることができる。また、動物性油脂としては、ラード、チキンファット、バターオイル等が挙げられる。本発明に用いる食用油脂としては、低温溶媒中でも凝固し難い融点30℃以下の油脂が好ましく、融点15℃以下の油脂がさらに好ましい。食用油脂の含有量としては、顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソース100重量部に対して1〜12重量部が好ましく、2〜10重量部がさらに好ましい。食用油脂の含量が1重量部未満の場合は、混合物の飛散性が増し、粉立ちが激しくなる為、好ましくない。一方、食用油脂が12重量部を越えると、逆に混合物の付着性が増して、流動性の悪化や多量の油ダマの発生を招く為、好ましくない。
【0021】
本発明における溶媒は食用であれば特に限定はないが、冷たいスープや冷たいソースを調理する際に分散性が良好なことから、特に低温溶媒に効果が見られ好ましい。その中でも本発明に特に好ましい溶媒として、水、牛乳等を挙げることができる。本発明において低温溶媒とは常温以下、すなわち加熱を行っていない温度の溶媒を指す。喫食時の官能上、30℃以下が好ましく、15℃以下が更に好ましい。
【0022】
本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、HLBが7〜13であり、且つ、構成する脂肪酸がオレイン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが重要である。HLBが前記の範囲より低い場合、インスタントスープ又はインスタントソースの疎水性が強くなり過ぎ、低温溶媒を注いで攪拌しても水濡れ性が乏しくなり、「ままこ(ダマ)」を形成して良好な分散性が得られない。HLBが前記の範囲より大きい場合、インスタントスープ又はインスタントソースに含まれる特に親水性成分の親水性が強くなり過ぎ、低温溶媒を注いで攪拌しても該溶媒に接触した表面で膨潤して膜をつくり易くなる。その為、内部への低温溶媒の侵入を妨げ「ままこ(ダマ)」を形成し、良好な分散を阻害してしまう。HLBが前記の範囲内であれば、ポリグリセリンの平均重合度や、主たる構成脂肪酸であるオレイン酸のエステル化度は特に限定はない。ここで、「主たる構成脂肪酸であるオレイン酸」とは、HLBが前記の範囲内で、本発明の目的、効果が達成される範囲内であれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造過程においてエステル化の際に他の脂肪酸が含まれても良いということを意味する。但し、HLBがこの範囲内であっても、主たる構成脂肪酸がオレイン酸でなければ十分な効果は得られない。本発明において主たる構成脂肪酸とは、いくつかの脂肪酸で構成されている場合は、質量の割合が最も多い脂肪酸のことをいう。好適にはいくつかの脂肪酸で構成されている場合は、オレイン酸が全構成脂肪酸のうちの50質量%以上の割合であることが、量対効果が高く、ポリグリセリン脂肪酸エステルの使用量が抑えられる為、風味の点で有利である。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造法としては公知の製造法が使用できる。例えば、ポリグリセリンは、グリセリンを原料として脱水縮合にて得ることができる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、例えば前記のポリグリセリンと脂肪酸とをアルカリ又は酸触媒の存在化で加熱してエステル化することで得られる。このような公知の方法によって得られたポリグリセリン脂肪酸エステルは、通常、ポリグリセリンの重合度や、脂肪酸のエステル化度の異なる化学種の混合物となるが、HLBが前記の範囲内であれば純度は特に限定されない。HLBが前記の範囲内であるポリグリセリンオレイン酸エステルとして市販品を使用することもできる。例えば、リョートーポリグリエステルO50D(デカグリセリンオレイン酸エステル;三菱化学フーズ(株)製)等が挙げられる。
また、本発明で用いるポリグリセリン脂肪酸エステルは、該インスタントスープ又はインスタントソースの調理に使用する溶媒100重量部に対して、0.005〜0.12重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部となるような配合量で使用することが重要である。配合したポリグリセリン脂肪酸エステルが溶媒100重量部に対して0.005重量部以下となるようでは発明の効果が十分に得られず、同様に0.12重量部以上となるようではスープ又はソース本来の風味を損なう為、好ましくない。また、本発明の効果を妨げない範囲で他の乳化剤を使用しても良い。
【0023】
以下、本発明について実施例でさらに説明するが、本発明の技術範囲はこれら実施例によって制限されるものではない。
【実施例】
【0024】
(実施例1 乳化剤の種類を変更した顆粒状インスタントスープの分散性の評価)
以下の表1に示す原料を、表中の配合割合となるように混合機で混合し、流動層造粒機(WSG5;(株)大川原製作所製)にて造粒した。この際、表1に記載の乳化剤として、表2に示す各種ポリグリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステル又は有機酸モノグリセリド又はソルビタン脂肪酸エステル、比較対照品1の場合は乳化剤の代わりに同量の麦芽糖をそれぞれ配合して混合することで、顆粒状のインスタントスープ(本発明品1〜4、比較対照品1〜14)を得た。尚、麦芽糖の最終配合割合が25.000重量部か、25.075重量部かの、いずれであるかのみによって分散性に違いが生じないことは言うまでもない。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
分散性の評価
前記のインスタントスープ(本発明品1〜4、及び比較対照品1〜14)それぞれを20gずつ200ml容カップに計量し、8℃の冷水150mlを注ぎ入れ、ティースプーンを用いて120rpmで15秒攪拌した後、直ちに目開き1700μmのメッシュにあけ、メッシュ上に残ったダマの重量(g)を測定した。従って、この値が小さいほど、「ままこ(ダマ)」の発生が少なく分散性が良いことを示している。分散性の評価は、値が1g未満であれば「分散性が良い」、値が1g以上2g未満であれば「分散性がやや悪い」、値が2g以上であれば「分散性が悪い」とした。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
表3の結果によれば、本発明に定めるとおり、HLBが7〜13であり、且つ、構成する脂肪酸がオレイン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した本発明品1〜4が、乳化剤を配合しなかった比較対照品1に比べ分散性に優れていることが判明した。また、HLBが本発明に定める範囲内でない乳化剤を用いた場合は、構成する脂肪酸がオレイン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルであっても十分な分散性効果が得られていないことが判明した。さらに、HLBが本発明に定める範囲内であってもポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤を用いたり、構成脂肪酸がオレイン酸でないポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたりしたのでは、十分な分散性改善効果が得られていないことが判明した。
【0030】
(実施例2 乳化剤の濃度を変更したインスタントスープの官能評価)
実施例1の表1の原料において、乳化剤を0.750重量部、1.000重量部と増量し、乳化剤を増量した分は麦芽糖を減らして配合割合を変更した以外は、実施例1と同様の条件で顆粒状のインスタントスープ(本発明品5〜8、比較対照品15〜18)を得た。尚、該インスタントスープにおいて、麦芽糖の最終配合割合が25.000重量部か、24.325重量部か、24.075重量部かの、いずれであるかによってのみでは、明らかに風味に違いは生じない。
【0031】
スープの官能評価
上記のようにして得られたインスタントスープ(本発明品5〜8、比較対照品15〜18)及び実施例1で製造した本発明品1〜4、比較対照品1について、それぞれを20gずつ200ml容カップに計量し、8℃の冷水150mlを注ぎ入れ、ティースプーンを用いて溶け残りがなくなるまで十分に攪拌した。そのようにして調理したスープの風味について、社内官能検査資格を有する専門の官能検査員5名にて、下記の3.0点満点の評価基準を用いて、0.1点刻みで採点を行い、平均値をとった。結果を表4に示す。尚、乳化剤を用いない比較対照品1の官能評価スコアは3.0点とした。
【0032】
(官能評価基準)
1.0点:スープとして明らかに好ましくない。
2.0点:許容範囲だが、スープとしてやや好ましさに欠ける。
3.0点:スープとして好ましい。
【0033】
【表4】

【0034】
表4の結果から、本発明の定める範囲内でポリグリセリンオレイン酸エステルを配合した本発明品1〜8は、スープらしい官能品質が維持されていることが判明した。尚、比較対照品1は、官能上は好ましいが、分散性が悪い為、溶け残りがなくなるまで7分以上の攪拌が必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、冷水や冷たい牛乳等の低温溶媒を注いで攪拌した際にも良好な分散性を有する顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫食の際、分散に用いる溶媒100重量部に対して、HLBが7〜13の範囲内であり、構成脂肪酸がオレイン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.005〜0.12重量部の割合で含むことを特徴とする、顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースの製造方法。
【請求項2】
分散に用いる溶媒が低温溶媒であることを特徴とする、請求項1記載の顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法で得られる低温溶媒に優れた分散性を有する顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソース。
【請求項4】
請求項2に記載の顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースを、原料或いは中間製品として得られる即席食品。

【公開番号】特開2011−193756(P2011−193756A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61870(P2010−61870)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】