説明

顔料分散体、トナー及びそれらの製造方法

【課題】 分散性に優れた粘度の低い顔料分散体を提供すること。更に、着色力に優れたイエロートナーの提供。
【解決手段】 少なくともイエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し、分散処理を行うことで得られる顔料分散体及びその製造方法を提供する。
更に、該顔料分散体を使用したイエロートナー及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インキ、トナー、樹脂成型品等の製造工程において用いられる顔料分散体及びその製造方法に関する。また、本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法などの記録方法に用いられるトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、顔料の各種媒体への分散は、顔料を十分に微細化させることや、均一に分散させることが困難である。更に、分散工程中に粘度が大きくなりすぎて、キャビテーションが発生し、更なる分散が困難になったり、分散機からの移送が困難になったりする傾向がある。
【0003】
一方、静電荷像現像用トナーの中でもイエロートナーは、着色剤として用いられているイエロー顔料の重合性単量体中での分散が不十分であり、その結果、重合法により得られたイエロートナーは、精細で着色力の高い画像を形成することが困難であった。
【0004】
このような技術課題に対し、トナー用顔料の分散性を向上させる方法が提案されている。特許文献1には、顔料と重合性単量体とを含む混合物中に第一級アミン化合物を添加して分散処理を行うことで、顔料分散体の分散性を向上させて、重合トナーを製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−157017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、顔料分散体の粘度が十分に低下せず、結着樹脂中において十分な顔料分散性を得るために更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、イエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し、分散処理を行うことを特徴とする顔料分散体の製造方法に関する。
【0008】
更に、該顔料分散体や該顔料分散体を使用したイエロートナー及びその製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分散性、粘度特性に優れた顔料分散体及びその製造方法を提供することができる。更に着色力の高いイエロートナー及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、イエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し、分散処理を行うことにより顔料分散体の粘度が著しく低下することを見出した。また、得られた顔料分散体に、その他トナー用添加剤を加えて重合性単量体組成物とし、これを重合することでトナー粒子を製造する場合、高い着色力を有するイエロートナーを提供できることを見出した。
【0011】
本発明の顔料分散体はイエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し、分散処理を行うことで得られる。
【0012】
本発明で顔料分散体に使用される重合性単量体としては、以下の化合物が挙げられる。スチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリルレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリルレート系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体。これらは使用用途に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、上記重合性単量体の中でも、スチレン又はスチレン系単量体を単独で、又は他の重合性単量体と混合して使用すること好ましい。特に好ましいのはスチレンである。
【0013】
本発明で使用されるイエロー顔料としては、分子内にハロゲン元素を含まないイエロー顔料が好ましい。近年、環境に有害な物質の使用を禁止する法制度が整いつつあり、ハロゲンフリーの製品に対する要求が高まっているためである。特に本発明で使用されるイエロー顔料としては、アゾ系化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などから選択されるハロゲン元素を含まないイエロー顔料が望ましく、ジスアゾ系化合物が本発明による粘度の低減効果が大きい点でより好ましい。具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.Pigment Yellow 4、C.I.Pigment Yellow 5、C.I.Pigment Yellow 7、C.I.Pigment Yellow 24、C.I.Pigment Yellow 65、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 99、C.I.Pigment Yellow 108、C.I.Pigment Yellow 117、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 123、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 167、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 213、及びこれらの誘導体。これらのイエロー顔料は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
上記列挙したイエロー顔料の中で、本発明による粘度の低減効果の点で好ましいイエロー顔料は、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 213からなる群より選ばれる1種以上のイエロー顔料である。その中でも特に好ましいのは、C.I.Pigment Yellow 155である。
【0015】
本発明の顔料分散体において、イエロー顔料は、重合性単量体100部に対して1.0乃至30.0部含有されることが好ましい。より好ましくは重合性単量体100部に対して2.0乃至20.0部、特に好ましくは重合性単量体100部に対して3.0乃至15.0部である。イエロー顔料の含有量が少なすぎると着色力が低くなり、含有量が多すぎると粘度が上昇しすぎるため、本発明の粘度の低減効果を得にくくなり、分散性が悪くなる。
【0016】
本発明で使用される塩基性アルカリ金属塩水溶液のアルカリ金属塩は、水溶液中でのpHが塩基性を示せば特に限定されるものではないが、以下の化合物が挙げられる。水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のナトリウム塩;水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、リン酸三カリウム等のカリウム塩;水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸リチウム、リン酸三リチウム等のリチウム塩;水酸化セシウム、炭酸セシウム等のセシウム塩などが挙げられる。その中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムは、水への溶解性が高く、顔料分散体の粘度の低減効果が大きいことから特に好ましい。これらアルカリ金属塩は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
また、本発明において、イエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に添加するアルカリ金属塩は、水溶液として添加することで十分な粘度の低減効果が得られる。この理由は定かではないが、塩基性アルカリ金属塩を水溶液として加えることによって、顔料表面の電気的な反発力を強め、粘度低減効果を発揮しているものと考えられる。
【0018】
本発明の顔料分散体において、重合性単量体100部に対して0.01乃至30.0部の塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加することが好ましい。また、重合性単量体100部に対して0.05乃至10.0部の塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加することがより好ましく、0.1乃至5.0部添加することが特に好ましい。塩基性アルカリ金属塩水溶液の添加量が少ないと、粘度の低減効果が小さく、イエロー顔料を十分に微細かつ均一に分散させることが困難になる。一方、顔料分散体の粘度の低減効果は、塩基性アルカリ金属塩水溶液の添加量が一定量を超えると、それ以上の効果は上がらなくなる。むしろ、塩基性アルカリ金属塩水溶液の添加量が多すぎると、重合性単量体と水溶液が分離し易くなり、イエロー顔料の分散が不均一になる。
【0019】
本発明の顔料分散体において、イエロー顔料1molに対して塩基性アルカリ金属塩の濃度が0.01乃至20.0当量となるように、塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加することが好ましい。イエロー顔料1molに対する塩基性アルカリ金属塩の濃度は、0.03乃至8.0当量がより好ましく、0.06乃至1.0当量が特に好ましい。塩基性アルカリ金属塩の濃度が低いと、粘度の低減効果が小さくなり、イエロー顔料を十分に微細かつ均一に分散させることが困難になる。一方、顔料分散体中の塩基性アルカリ金属塩の濃度が高過ぎると、塩基性アルカリ金属塩が水溶液から析出してしまい、顔料分散体の粘度が上昇してしまう。
【0020】
本発明において、分散処理は、例えば、以下のようにして行われる。重合性単量体中にイエロー顔料及び塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加混合する。更にボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の公知の分散機により機械的剪断力を加えることで、顔料を安定に均一な微粒子状に分散することができる。
【0021】
本発明の顔料分散体を塗料や重合トナー用の重合性単量体組成物に利用する際に好ましい粘度は、測定温度25℃において、2000mPa・s以下である。本発明の顔料分散体の粘度は1500mPa・s以下であることがより好ましく、1300mPa・s以下であることが特に好ましい。顔料分散体の粘度が高すぎると、分散効率が悪くなったり、分散処理後の移送が困難になったりする。
【0022】
次に本発明のイエロートナーについて説明する。
【0023】
本発明に用いられるイエロートナー粒子は、以下の製造工程を有することを特徴とする。
(1)イエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に、塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し、分散処理して顔料分散体を調製する工程。
(2)該顔料分散体に、その他トナー用添加剤を加えて、重合性単量体組成物を調製する工程。
(3)該重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系分散媒体中に分散させて、該重合性単量体組成物の液滴を形成する工程。
(4)水系分散媒体中に液滴として分散している重合性単量体組成物中の重合性単量体を重合開始剤により重合して、イエロートナー粒子を形成させる工程。
【0024】
上記(1)の工程では、イエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に、塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し、分散処理して顔料分散体を調製する。使用されるイエロー顔料、重合性単量体、塩基性アルカリ金属塩水溶液は前記顔料分散体中の各成分と同様であり、顔料分散体も同様に調製される。
【0025】
上記(2)の工程では、顔料分散体に、その他トナー用添加剤を加えて、重合性単量体組成物を調製する。使用されるトナー用添加剤としては、重合性単量体、架橋剤、ワックス成分、極性樹脂、荷電制御剤、重合開始剤等、重合法によってトナー粒子を形成することができる各種成分が含まれる。
【0026】
上記(2)の工程で使用されるトナー用添加剤としての重合性単量体は、重合性単量体総量での理論ガラス転移温度(Tg)の調製のために使用される。具体的には、以下の化合物が挙げられる。スチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリルレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリルレート系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体。これらは、単独又は、Tgが、トナー粒子製造に用いる重合性単量体総量で、40乃至75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。Tgが上記範囲内であれば、トナーの保存安定性や耐久安定性が良好である。
【0027】
上記(2)の工程では、架橋剤をトナー粒子の機械的強度を高めると共に、結着樹脂の分子量を制御するために用いることもできる。本発明のトナーに用いることができる架橋剤としては、以下の化合物が挙げられる。二官能の架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0028】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0029】
これらの架橋剤は、前記単量体100部に対して、好ましくは0.05乃至10部、より好ましくは0.1乃至5部用いることが、定着性、耐オフセット性の点から好ましい。
【0030】
上記(2)の工程で使用できるワックス成分としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体。誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0031】
上記(2)の工程では極性樹脂として、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等を用いることができる。例えば、懸濁重合法等によりトナー粒子を製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加すると、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成したり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在したりするように制御することができる。この時、本発明の顔料分散体を含む着色剤や荷電制御剤と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー中への該着色剤の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。
【0032】
上記(2)の工程では、必要に応じて荷電制御剤を添加し、重合性単量体組成物を形成することが可能である。これにより、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。上記(2)の工程で用いられる荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。更に、トナー粒子を重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0033】
トナーを負帯電に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。スルホン酸基及びその塩又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体、サリチル酸誘導体及びその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤。トナーを正帯電に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、樹脂系帯電制御剤。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記(2)の工程で用いられる重合性開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができる。具体的には、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロリトニル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート、4,4−アゾビス−4−シアノバレロニトリル、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシピバレート等の過酸化物;アルカリ金属、金属水酸化物、グリニャール試薬等の求核試薬;プロトン酸、ハロゲン化金属、安定カルボニウムイオンが挙げられる。重合開始剤の濃度は単量体に対して0.1乃至20部が好ましく、より好ましくは0.1乃至10部である。重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独又は混合して使用される。
【0035】
重合性開始剤は、上記(2)の工程において、重合性単量体組成物に予め添加することができるが、早期重合を抑制するために、上記(3)の工程において重合性単量体組成物の液滴形成工程の途中の段階で懸濁液中に添加することもできる。
【0036】
上記(3)の工程では、重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系分散媒体中に分散させて、重合性単量体組成物の液滴を形成する。
【0037】
第(3)工程で用いられる分散安定剤としては、公知の界面活性剤や有機及び無機分散剤を使用することができる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いので好ましく使用することができる。無機分散剤の例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。
【0038】
これらの無機分散剤は、重合性単量体100部に対して、0.2乃至20部を単独で使用することが、重合性単量体の水中での液滴安定性の点で好ましい。
【0039】
これら無機分散剤を用いる場合には、市販のものをそのまま使用してもよいが、より微細な粒子を得るため、水系媒体中にて無機分散剤粒子を生成させて用いることもできる。例えば、リン酸カリウムの場合、高速撹拌下、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性のリン酸カルシウムを生成させることが出来、より均一で細かな分散が可能となる。この際、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。しかし、重合反応終期に残留している重合性単量体を除去する時には障害となることから、水系媒体を交換するかイオン交換樹脂で脱塩したほうがよい。なお、無機分散剤は、重合終了後に、酸あるいはアルカリで溶解してほぼ完全に取り除くことができる。
【0040】
上記(3)の工程の液滴の形成においては、高剪断力を与えることができる各種分散機を用いることができる。例えば、T.K.ホモミクサー(プライミクス株式会社製)、クレアミクス(エムテクニック株式会社製)が挙げられる。上記(3)の工程で形成される液滴の粒径は、重量平均粒径が2.0乃至15.0μmの範囲である場合が好ましく、3.0乃至10.0μmの範囲である場合がより好ましい。液滴の粒径が小さすぎると重合後のトナー粒子が小さくなりすぎ、カブリや転写性が悪化してしまい、液滴の粒径が大きすぎると重合後のトナー粒子が大きくなりすぎ、文字やライン画像に飛び散りが生じやすく、高解像度が得られにくくなる。
【0041】
上記(4)の工程では、水系分散媒体中に液滴として分散している重合性単量体組成物を重合開始剤により重合して、イエロートナー粒子を形成させる。上記(4)の工程における重合温度は40℃以上、一般には50乃至90℃の温度に設定して重合を行う。この温度範囲内で重合を行うと、内部に封じられるべきワックスが相分離により折出して、より確実に内包化することができる。
【0042】
本発明のトナーは、トナー粒子に、流動化剤として無機微粉体を添加しても良い。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ又はそれらの複酸化物や、これらを表面処理したものなどの微粉体が使用できる。
【0043】
本発明のイエロートナーは、重量平均粒径D4が4.0乃至8.0μmの範囲であり、重量平均粒径D4と個数平均粒径D1の比(以下、重量平均粒径D4/個数平均粒径D1又はD4/D1ともいう)が1.35以下であることが好ましい。更には、重量平均粒径D4が4.9乃至7.5μmの範囲であり、重量平均粒径D4/個数平均粒径D1が1.30以下であることがより好ましい。重量平均粒径D4が上記の範囲内であれば、カブリや転写性の悪化や飛び散りを抑制することができる。重量平均粒径D4/個数平均粒径D1が上記の範囲内であれば、カブリや転写性の悪化を抑制することができる。
【0044】
なお、重量平均粒径D4や個数平均粒径D1は、懸濁重合法の場合は、その製造時において、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、又は反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
【0045】
本発明のイエロートナーは、フロー式粒子像分析装置で測定される該イエロートナーの平均円形度が0.960乃至0.995であり、より好ましくは0.970乃至0.990であることが、トナーの転写性が大幅に改善される点から好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0047】
[顔料分散体の製造]
以下に記載する方法で本発明の顔料分散体及び比較顔料分散体を製造した。
【0048】
<顔料分散体の製造例1>
始めに6M−水酸化ナトリウム水溶液1.32部とイオン交換水4.08部を混合し水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した。
・スチレン単量体 180部
・C.I.Pigment Yellow 155(クラリアント社製、商品名「Toner Yellow 3GP」) 18.0部
・上記調製した水酸化ナトリウム水溶液(a) 5.40部
上記混合物を、アトライター(日本コークス工業株式会社製)により3時間分散させて本発明の顔料分散体(1)を得た。
【0049】
<顔料分散体の製造例2>
炭酸ナトリウム(無水)0.69部とイオン交換水4.71部を混合し、炭酸ナトリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した炭酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(2)を得た。
【0050】
<顔料分散体の製造例3>
6M−水酸化カリウム水溶液1.36部とイオン交換水4.04部を混合し、水酸化カリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した水酸化カリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(3)を得た。
【0051】
<顔料分散体の製造例4>
水酸化リチウム(無水)0.16部とイオン交換水5.24部を混合し、水酸化リチウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した水酸化リチウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(4)を得た。
【0052】
<顔料分散体の製造例5>
炭酸水素ナトリウム0.55部とイオン交換水4.85部を混合し、炭酸水素ナトリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した炭酸水素ナトリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(5)を得た。
【0053】
<顔料分散体の製造例6>
炭酸カリウム0.90部とイオン交換水4.50部を混合し、炭酸カリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した炭酸カリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(6)を得た。
【0054】
<顔料分散体の製造例7>
炭酸リチウム0.48部とイオン交換水4.92部を混合し、炭酸リチウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した炭酸リチウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(7)を得た。
【0055】
<顔料分散体の製造例8>
炭酸水素カリウム0.65部とイオン交換水4.75部を混合し、炭酸水素カリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した炭酸水素カリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(8)を得た。
【0056】
<顔料分散体の製造例9>
酢酸ナトリウム(無水)0.53部とイオン交換水4.87部を混合し、酢酸ナトリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した酢酸ナトリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(9)を得た。
【0057】
<顔料分散体の製造例10>
酢酸カリウム0.64部とイオン交換水4.76部を混合し、酢酸カリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した酢酸カリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(10)を得た。
【0058】
<顔料分散体の製造例11>
リン酸三ナトリウム(無水)0.33部とイオン交換水5.07部を混合し、リン酸三ナトリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製したリン酸三ナトリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(11)を得た。
【0059】
<顔料分散体の製造例12>
スチレン単量体180.0部を、スチレン単量体140.0部に、C.I.Pigment Yellow 155 18.0部をC.I.Pigment Yellow 74 20.0部に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(12)を得た。
【0060】
<顔料分散体の製造例13乃至16>
C.I.Pigment Yellow 74をそれぞれC.I.Pigment Yellow 120、151、180、213に変更した以外は、顔料分散体の製造例12と同様にして本発明の顔料分散体(13)乃至(16)を得た。
【0061】
<顔料分散体の製造例17乃至18>
水酸化ナトリウム水溶液(a)5.40部をそれぞれ12M−水酸化ナトリウム水溶液0.18部、0.09部に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(17)乃至(18)を得た。
【0062】
<顔料分散体の製造例19>
1M−水酸化ナトリウム水溶液7.07部とイオン交換水10,93部を混合し、水酸化ナトリウム水溶液(b)18.0部を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)5.40部を調製した水酸化ナトリウム水溶液(b)18.0部に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(19)を得た。
【0063】
<顔料分散体の製造例20>
1M−水酸化ナトリウム水溶液7.07部とイオン交換水46.93部を混合し、水酸化ナトリウム水溶液(c)54.0部を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)5.40部を調製した水酸化ナトリウム水溶液(c)54.0部に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(20)を得た。
【0064】
<顔料分散体の製造例21乃至22>
水酸化ナトリウム水溶液(a)5.40部をそれぞれ12M−水酸化ナトリウム水溶液18.0部、1.80部に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(21)乃至(22)を得た。
【0065】
<顔料分散体の製造例23乃至24>
スチレン単量体180.0部を、それぞれスチレン単量体126.0部、n−ブチルアクリレート54.0部の混合液、n−ブチルアクリレート180.0部に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の顔料分散体(23)乃至(24)を得た。
【0066】
<顔料分散体の比較製造例1>
水酸化ナトリウム水溶液(a)を入れないこと以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして比較顔料分散体(1)を得た。
【0067】
<顔料分散体の比較製造例2>
水酸化ナトリウム水溶液(a)をイオン交換水に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして比較顔料分散体(2)を得た。
【0068】
<顔料分散体の比較製造例3>
28%アンモニア水を0.40部とイオン交換水5.00部を混合し、アンモニア水を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製したアンモニア水に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして比較顔料分散体(3)を得た。
【0069】
<顔料分散体の比較製造例4>
2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール0.68部とイオン交換水4.72部を混合し、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして比較顔料分散体(4)を得た。
【0070】
<顔料分散体の比較製造例5>
塩化ナトリウムを0.38部とイオン交換水5.02部を混合し、塩化ナトリウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した塩化ナトリウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして比較顔料分散体(5)を得た。
【0071】
<顔料分散体の比較製造例6>
塩化カルシウムを0.72部とイオン交換水4.68部を混合し、塩化カルシウム水溶液を調製した。水酸化ナトリウム水溶液(a)を調製した塩化カルシウム水溶液に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして本発明の比較顔料分散体(6)を得た。
【0072】
<顔料分散体の比較製造例7>
水酸化ナトリウム水溶液を水酸化ナトリウム0.26部に変更した以外は、顔料分散体の製造例1と同様にして比較顔料分散体(7)を得た。
【0073】
<顔料分散体の比較製造例8>
水酸化ナトリウム水溶液(a)を入れないこと以外は、顔料分散体の製造例12と同様にして比較顔料分散体(8)を得た。
【0074】
<顔料分散体の比較製造例9>
水酸化ナトリウム水溶液(a)を入れないこと以外は、顔料分散体の製造例13と同様にして比較顔料分散体(9)を得た。
【0075】
<顔料分散体の比較製造例10>
水酸化ナトリウム水溶液(a)を入れないこと以外は、顔料分散体の製造例14と同様にして比較顔料分散体(10)を得た。
【0076】
<顔料分散体の比較製造例11>
水酸化ナトリウム水溶液(a)を入れないこと以外は、顔料分散体の製造例15と同様にして比較顔料分散体(11)を得た。
【0077】
<顔料分散体の比較製造例12>
水酸化ナトリウム水溶液(a)を入れないこと以外は、顔料分散体の製造例16と同様にして比較顔料分散体(12)を得た。
【0078】
[顔料分散体実施例1]
顔料分散体(1)の粘度の評価を以下のように行った。粘弾性測定装置「Physica MCR300」(アントンパール社製)(コーンプレート型測定治具:75mm径、1°)を用い、10s−1の剪断速度で測定し、下記の基準で、顔料分散液の粘度評価を行った。顔料分散体(1)乃至(11)、(17)乃至(24)の粘度低下率は、比較顔料分散体(1)の粘度を基準値とし下記式より算出した。顔料分散体(12)乃至(16)の粘度低下率は、それぞれ比較顔料分散体(8)乃至(12)の粘度を基準値として下記式より算出した。
粘度低下率[%]={[(基準となる比較顔料分散体の粘度)−(顔料分散体の粘度)]/(基準となる比較顔料分散体の粘度)}×100
A:粘度低下率が45%以上である。
B:粘度低下率が30%以上、45%未満である。
C:粘度低下率が10%以上、30%未満である。
D:粘度低下率が10%未満である。
粘度低下率が10%以上であれば粘度低減効果があると判断した。
【0079】
[顔料分散体実施例2乃至24]
顔料分散体(1)をそれぞれ顔料分散体(2)乃至(24)に変更した以外は、顔料分散体実施例1と同様に評価した。
【0080】
[顔料分散体比較例1乃至12]
顔料分散体(1)をそれぞれ比較顔料分散体(1)乃至(12)に変更した以外は、顔料分散体実施例1と同様に評価した。
【0081】
上記の顔料分散体の製造例及び顔料分散体の比較製造例の主な処方内容や評価結果を表1にまとめた。
【0082】
【表1】

【0083】
[表1中、使用した顔料のPY155、PY74、PY120、PY151、PY180、PY213はそれぞれ、C.I.Pigment Yellow 155、74、120、151、180、213を表す。「St」はスチレン単量体、「BA」はn−ブチルアクリレート単量体を表す。]
【0084】
表1より明らかなように、顔料と重合性単量体とを含む混合物中に、塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加して、分散処理すると、粘度の低下した顔料分散体が得られることがわかった。
【0085】
アルカリ金属塩種の中では水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウムの粘度低減効果が大きいことがわかった。
【0086】
[イエロートナーの製造]
以下に記載する方法で本発明のイエロートナー及び比較イエロートナーを製造した。
【0087】
<イエロートナーの製造例1>
高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(プライミクス株式会社製)を備えた2L用四つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/l−リン酸三ナトリウム水溶液450部を添加し回転数を12000rpmに調製し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−塩化カルシウム水溶液68部を徐々に添加し微小な難水溶性分散安定剤リン酸カルシウムを含む水系分散媒体を調製した。
・顔料分散体(1) 135.6部
・スチレン単量体 46.0部
・n−ブチルアクリレート単量体 34.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物 2.0部
(オリエント化学工業株式会社製 ボントロンE−88)
・極性樹脂 10.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、Tg=65℃、Mw=10000、Mn=6000)
・エステルワックス 25.0部
(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度=70℃、Mn=704)
・ジビニルベンゼン単量体 0.10部
上記、処方を60℃に加温し、T.K.ホモミクサーを用いて5000rpmにて均一に溶解・分散した。これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃/減圧下で残存単量体を留去した後、液温を30℃まで冷却し、重合体微粒子分散体を得た。
【0088】
次に、重合体微粒子分散体を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5で2時間撹拌し、リン酸カルシウムを含むリン酸とカルシウムの化合物を溶解させた後に、濾過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散体とした後に、濾過器で固液分離した。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とを、リン酸カルシウムを含むリン酸とカルシウムの化合物が十分に除去されるまで繰り返し行った。その後に、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してイエロートナー粒子(1)を得ることができた。
【0089】
得られたイエロートナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(数平均一次粒子径7nm)1.00部、ルチル型酸化チタン微粉体(数平均一次粒子径45nm)0.15部、ルチル型酸化チタン微粉体(数平均一次粒子径200nm)0.50部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で5分間乾式混合して、本発明のイエロートナー(1)を得た。
【0090】
<イエロートナーの製造例2乃至11>
顔料分散体(1)をそれぞれ顔料分散体(2)乃至(11)に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして本発明のイエロートナー(2)乃至(11)を得た。
【0091】
<イエロートナーの製造例12>
顔料分散体(1)135.6部とスチレン単量体46.0部を、それぞれ顔料分散体(12)99.2部、スチレン単量体82.0部に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして本発明のイエロートナー(12)を得た。
【0092】
<イエロートナーの製造例13乃至16>
顔料分散体(12)をそれぞれ顔料分散体(13)乃至(16)に変更する以外はイエロートナーの製造例12と同様にして本発明のイエロートナー(13)乃至(16)を得た。
【0093】
<イエロートナーの製造例17>
顔料分散体(1)135.6部を顔料分散体(17)132.1部に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして本発明のイエロートナー(17)を得た。
【0094】
<イエロートナーの製造例18>
顔料分散体(1)135.6部を顔料分散体(18)132.1部に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして本発明のイエロートナー(18)を得た。
【0095】
<イエロートナーの製造例19>
顔料分散体(1)135.6部を顔料分散体(19)144.0部に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして本発明のイエロートナー(19)を得た。
【0096】
<イエロートナーの製造例20>
顔料分散体(1)135.6を顔料分散体(20)168.0部に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして本発明のイエロートナー(20)を得た。
【0097】
<イエロートナーの製造例21>
顔料分散体(20)135.6部を顔料分散体(21)に変更する以外はトナー実施例45と同様にして本発明のイエロートナー(21)を得た。
【0098】
<イエロートナーの製造例22>
顔料分散体(1)135.6部を顔料分散体(22)133.2部に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして本発明のイエロートナー(22)を得た。
【0099】
<イエロートナーの製造例23>
顔料分散体(1)、スチレン単量体46.0部とn−ブチルアクリレート単量体34.0部の混合液をそれぞれ顔料分散体(23)135.6部、スチレン単量体 80.0部に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして本発明のイエロートナー(23)を得た。
【0100】
<イエロートナーの比較製造例1>
顔料分散体(1)135.6部を比較顔料分散体(1)132.0部に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして比較イエロートナー(1)を得た。
【0101】
<イエロートナーの比較製造例2乃至6>
顔料分散体(1)をそれぞれ比較顔料分散体(2)乃至(6)に変更する以外はイエロートナーの製造例1と同様にして比較イエロートナー(2)乃至(6)を得た。
【0102】
<イエロートナーの比較製造例7>
比較顔料分散体(1)を比較顔料分散体(7)に変更する以外はイエロートナーの比較製造例1と同様にして比較イエロートナー(7)を得た。
【0103】
<イエロートナーの比較製造例8>
顔料分散体(12)99.2部を比較顔料分散体(8)96.0部に変更する以外はイエロートナーの製造例12と同様にして比較イエロートナー(8)を得た。
【0104】
<イエロートナーの比較製造例9乃至12>
比較顔料分散体(8)をそれぞれ比較顔料分散体(9)乃至(12)に変更する以外はイエロートナーの比較製造例8と同様にして比較イエロートナー(9)乃至(12)を得た。
【0105】
[トナー実施例1]
上記イエロートナー(1)の評価を以下のように行った。
(1)トナーの重量平均粒径D4、及び個数平均粒径D1の測定
上記トナー粒子の個数平均粒径(D1)及び重量平均粒径(D4)はコールター法による粒度分布解析にて測定する。測定装置として、コールターカウンターTA−IIあるいはコールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター株式会社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定する。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%塩化ナトリウム水溶液を調製する。例えば、ISOTON−II(コールターサイエンティフィックジャパン株式会社製)が使用できる。具体的な測定方法としては、前記電解水溶液100乃至150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1乃至5ml加え、更に測定試料(トナー粒子)を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行う。得られた分散処理液を、アパーチャーとして100μmアパーチャーを装着した前記測定装置により、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定してトナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の個数分布から求めた個数平均粒径(D1)と、トナー粒子の体積分布から求めたトナー粒子の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)及びD4/D1を求めた。
【0106】
上記チャンネルとしては、2.00乃至2.52μm、2.52乃至3.17μm、3.17乃至4.00μm、4.00乃至5.04μm、5.04乃至6.35μm、6.35乃至8.00μm、8.00乃至10.08μm、10.08乃至12.70μm、12.70乃至16.00μm、16.00乃至20.20μm、20.20乃至25.40μm、25.40乃至32.00μm、32.00乃至40.30μmの13チャンネルを用いる。
【0107】
(2)トナーの平均円形度の測定
フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス株式会社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出した。
【0108】
【数1】

【0109】
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。円形度は粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合には1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0110】
(3)トナーの着色力
評価機としてLBP−2510(キヤノン株式会社製)を用いて、常温常湿[N/N(23.5℃,60%RH)]環境下にて、0.1mg/cm乃至1.0mg/cmの範囲で転写紙(75g/m紙)に対してトナーのり量の異なる数種類のベタ画像を作成し、それらの画像濃度OD(Y)をSpectrolino(GretagMacbeth社製)を用いて測定し、転写紙上のトナー量と画像濃度の関係を求めた後、特に転写紙上のトナーのり量が0.5mg/cmの場合に対応する画像濃度をもって相対的に着色力を評価した。
A:OD(Y)が1.40以上である。
B:OD(Y)が1.30以上、1.40未満である。
C:OD(Y)が1.20以上、1.30未満である。
D:OD(Y)が1.20未満である。
OD(Y)が1.20以上であれば使用上問題がないレベルであると判断した。
【0111】
[トナー実施例2乃至23]
イエロートナー(1)をそれぞれイエロートナー(2)乃至(23)に変更した以外はトナー実施例1と同様に評価した。
【0112】
[トナー比較例1乃至12]
イエロートナー(1)をそれぞれ比較イエロートナー(1)乃至(12)に変更した以外はトナー実施例1と同様に評価した。
【0113】
上記、イエロートナーの製造例、及び、イエロートナーの比較製造例の評価結果を表2にまとめた。
【0114】
【表2】

【0115】
表2より明らかなように、本発明の条件を満たす顔料分散体を用いて製造したトナーは良好な着色力を示した。塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し顔料分散処理を行うことで得られた顔料分散体に、その他トナー用添加剤を加えて、重合トナー用重合性単量体組成物としトナー粒子を製造することにより高い着色力を示すことがわかった。
【0116】
トナーの製造例18及び20から、塩基性アルカリ金属塩水溶液の液量が少なすぎると、顔料分散体の粘度低減効果が不十分で、液量が多すぎると、顔料分散体の粘度低減効果は十分であるけれども、顔料の分散状態が悪化し、イエロートナーの着色力はそれほど向上しないことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し、分散処理を行うことを特徴とする顔料分散体の製造方法。
【請求項2】
該重合性単量体が、スチレンであることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
該イエロー顔料が、分子内にハロゲン元素を含まないことを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
該イエロー顔料が、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 213からなる群より選ばれる1種以上のイエロー顔料であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
該イエロー顔料が、C.I.Pigment Yellow 155であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
該塩基性アルカリ金属塩が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウムからなる群から選ばれる化合物であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の顔料分散体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の顔料分散体の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする顔料分散体。
【請求項8】
(1)イエロー顔料と重合性単量体とを含む混合物中に塩基性アルカリ金属塩水溶液を添加し、分散処理して、該重合性単量体中に該イエロー顔料が分散した顔料分散体を調製する工程、
(2)該顔料分散体にトナー用添加剤を加えて、重合性単量体組成物を調製する工程、
(3)該重合性単量体組成物を水系分散媒体中に分散させて、該重合性単量体組成物の液滴を形成する工程、及び
(4)水系分散媒体中に液滴として分散している該重合性単量体組成物中の該重合性単量体を重合開始剤により重合して、イエロートナー粒子を形成する工程、
を有するイエロートナー粒子の製造方法。
【請求項9】
結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有するイエロートナー粒子を有するイエロートナーであって、
該イエロートナー粒子が、請求項8に記載のイエロートナー粒子の製造方法を用いて製造されたものであることを特徴とするイエロートナー。

【公開番号】特開2012−111873(P2012−111873A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262870(P2010−262870)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】