説明

顔料分散剤、カラーフィルター用着色組成物およびカラーフィルター

【課題】顔料濃度が高い場合にも粘度の増大および貯蔵安定性の低下が防止され、優れた透明性および色品位を有するカラーフィルターの製造が可能なカラーフィルター用着色組成物を与える分散剤を提供すること。
【解決手段】下記の一般式(I)で表される化合物からなることを特徴とする顔料分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤、液晶カラーディスプレイや撮像素子などの製造に使用されるカラーフィルター(以下「CF」と略す)用着色組成物およびこれを用いたCFに関する。さらに詳しくは、顔料分散性、透明性、流動性や貯蔵安定性に優れたCF用着色組成物およびこれを用いたCFに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイなどに使用されるCFは、現在、フォトレジストに顔料を分散させた着色組成物を、スピンコート法、コーティング法、あるいは転写法により基板に塗布後、フォトマスクを介して露光および現像して画素を形成させる方法により主に作製されている。その際、赤色画素形成用の顔料として、通常、ジケトピロロピロール顔料が用いられているが、該顔料を樹脂および溶剤などとともに、通常の分散機で分散させるだけでは、顔料が充分に分散しないことから、該分散液(「CF用着色組成物」を意味する場合がある)をCFの着色画素(以下単に「画素」という)の形成に使用すると、得られる赤色画素は透明性に欠け、該画素は、CFとして透過率が不十分であり、上記赤色顔料はCF用着色組成物用の顔料としては不満足なものであった。
【0003】
また、フォトレジストに一般的に使用される樹脂としては、アルカリ水溶液がパターニングの現像液に使用できることから、酸価が高いアクリル系ポリマーが主に採用されている。しかしながら、上記の顔料と高酸価のアクリル系樹脂からなる顔料分散液では、顔料粒子の凝集が起こり、顔料分散液の粘度が高くなりやすく、また、経時で顔料分散液が増粘し、顔料分散液の貯蔵安定性が悪くなる場合が多い。
【0004】
以上のような困難さを伴う顔料分散液によりCFを作製する場合、使用する顔料分散液をスピンコート法により基板に塗布および成膜し、その後に着色膜を画素化するが、顔料分散液の粘度が高かつたり、顔料が粒子凝集してCF用着色組成物がチクソトロピックな粘性を示す場合には、画素化前の塗布層の中央部が盛り上がるため、大画面のCFを作製する際には基板の中央部に形成した画素と周辺部に形成した画素とは色相にむらや濃度差が発生する原因となっている。
【0005】
従って、CF用着色組成物(顔料分散液)は、通常、顔料濃度が5〜20質量%の高濃度範囲にあるにも拘らず、その分散状態は顔料粒子同士が凝集せず、かつ一般的な常乾塗料や焼き付け塗料に比べて粘度が低く(例えば、5〜20mPa・s程度)、かつ貯蔵安定性に優れたものでなければならない。これらの問題点を解決するために、特許文献1や特許文献2では、緑色顔料に対しフタロシアニンブルー系顔料の誘導体を、赤色顔料に対しアンザンスロン系顔料の誘導体を顔料の分散剤として添加することにより顔料の凝集を防ぎ、均一な顔料分散液を得ることができる旨を提案している。
【0006】
特に従来、赤色顔料がジケトピロロピロール顔料(例えば、C.I.ピグメントレッド254)の場合には、スルホン化度が1分子当たり1以上のジケトピロロピロールスルホン酸を上記顔料に添加したり、または上記顔料を上記スルホン化物で処理する方法などが提案されている(特許文献3)。また、赤色顔料が縮合アゾ顔料(例えば、C.I.ピグメントレッド242)の場合には、スルホンアミド化アゾ化合物を上記顔料に添加する方法などが提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開昭60−237403号公報
【特許文献2】特開昭60−247603号公報
【特許文献3】特開2000−160084号公報
【特許文献4】特開平11−228858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、液晶表示装置もパーソナルコンピューターのモニターからカラーテレビジョンのカラーディスプレー用にと拡大し、CFに対してもさらなる性能向上の要請が高まり、画素の透明性の改善や、画素の透過光のコントラストのアップや、画素中の顔料濃度を高める必要が生じてきた。
【0008】
しかしながら、上記ジケトピロロピロール顔料のスルホン化物または縮合アゾ顔料のスルホンアミド化物を使用する方法では、顔料の分散性向上による画素の透明性の改良や、顔料濃度が高くなることによる顔料分散液の粘度の増大や貯蔵安定性の低下および異物の発生を防止することは困難であり、これらの改善が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、高顔料濃度CF用着色組成物における上記の問題点を解決し、CF用着色組成物の色品位の向上、低粘度化および異物の発生防止を可能にするべく鋭意研究した結果、イオン性基を有するジアセト酢酸アニリド系アゾ化合物を顔料分散剤として使用することにより、CF用着色組成物の低粘度化が達成でき、かつ貯蔵時の該着色用組成物の増粘ゲル化を防止でき、かつ異物の発生を防止するとともに、CFとして最も重要な画素の透明性も向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I)で表される化合物からなることを特徴とする顔料分散剤を提供する。

【0011】
(ただし、式中のXはイオン性基を1個〜3個有し、かつ置換基を有していてもよい芳香族環または芳香族ヘテロ環残基であり、Yはイオン性基以外の置換基を有していてもよい芳香族環または芳香族ヘテロ環残基であり、Zは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基または下記式[1]で表される基であり、上記イオン性基は、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸モノまたはジエステル基および硫酸エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン性基、あるいは線状あるいは環状の2級、3級アミノ基、第4級アンモニウム基、ピリジンおよびピリジニウム基からなる群から選ばれた少なくとも1種のカチオン性基である。)

(ただし、式中のRは水素原子または置換基を表し、WはO、CH2、HNCO、S、N=NまたはCH=CHを表す。)
【0012】
上記分散剤においては、Xが、スルファニル酸、ナフチオン酸または1−アミノアントラキノン−5−スルホン酸のカップリング残基であり、Zが、p−フェニレンジアミンまたは2,5−ジメチルフェニレンジアミンの縮合残基であり、Yが、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、1−アミノアントラキノン、3−アミノ−9−エチルカルバゾールまたは2,5−ジクロロアニリンのカップリング残基であることが特に好ましい。
【0013】
また、本発明は、有機顔料および上記本発明の顔料分散剤を含むことを特徴とする顔料組成物を提供する。ここで有機顔料が、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン顔料および金属錯体顔料からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。特に顔料が、C.I.ピグメントレッド254(A)とC.I.ピグメントイエロー139(B)との混合物であり、両者の混合割合が、A100質量部当たりB1〜40質量部であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、有機顔料、上記本発明の顔料分散剤および樹脂系分散剤を含むことを特徴とする着色組成物を提供する。ここで上記樹脂系分散剤が、顔料分散剤の有するX基がアニオン性基であるときはカチオン性基を含む樹脂系分散剤であり、顔料分散剤の有するX基がカチオン性基であるときはアニオン性基を含む樹脂系分散剤であることが好ましい。また、さらに皮膜形成材料(あるいは樹脂分散媒体)を含むことが好ましく、ここで上記の皮膜形成材料が、重合体、オリゴマーおよび/またはモノマーを含有してなることが好ましい。また、上記着色組成物が、印刷インキ、筆記具用インキ、プラスチック着色剤、顔料捺染用着色剤、塗料、画像記録用着色剤あるいは画像表示用着色剤であること、特にCF用着色剤であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、CF用基板に着色画素を形成する工程を含むCFの製造方法において、上記着色画素を、前記本発明の着色組成物を使用して形成することを特徴とするCFの製造方法、該方法で形成されたことを特徴とするCF、該CFを装備していることを特徴とする画像表示装置、および該画像表示装置を装備していることを特徴とする情報伝達機器を提供する。
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明によれば、特定の顔料分散剤をCFの黄色、赤色および緑色画素形成用着色組成物の分散剤として使用することにより、CF用着色組成物を安定して製造することができ、異物の発生を防止し、また、最終的にCF用着色組成物として使用される際にも、優れた分光カーブ特性を有し、鮮明で冴えた、透明感の高い、しかも耐光性、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性および耐水性などの諸堅牢性に優れた画素を有するCFを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に発明を実施するため最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の分散剤は、スルホン酸基などのイオン性基を持つアセト酢酸系ジスアゾ構造を有することに特徴があり、本発明の分散剤は種々の顔料に対する優れた親和性を有しており、広範囲の顔料に使用可能である。また、本発明の分散剤は優れた顔料分散効果を有していることより、CFに使用される着色剤の製造に使用することができる。
【0018】
本発明の一般式(I)で表される分散剤は、まず、置換基を有していてもよいジアミノフェニレン、ジアミノビフェニレン、ジアミノナフチレン、または前記式[1]のジアミンなどの芳香族ジアミンをキシレン、モノクロロベンゼン、ニトロベンゼンなどの不活性な溶媒中、ケテンダイマー(ジケテン)、あるいはアセト酢酸エステルを2モル比に反応させ、カップラー(カップリング成分)を合成する。次いで、置換基を有していてもよいイオン性基を有する芳香族アミンまたは芳香族ヘテロアミンを常法によりジアゾ化後、上記のカップリング成分に1モル比でカップリングさせ、さらに、イオン性基以外の置換基を有していてもよい芳香族アミンまたは芳香族ヘテロアミンを常法により1モル比でジアゾ化後、カップリングさせることによって得ることができる。また、上記のカップリングの順序を逆にしても得ることができる。
【0019】
一般式(I)の化合物の製造に使用されるイオン性基を有する芳香族化合物アミンとしては、スルホン酸化合物として、例えば、o−アミノベンゼンスルホン酸(オルタニル酸)、m−アミノベンゼンスルホン酸(メタニル酸)、p−アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)、4−クロロアニリン−3−スルホン酸、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸、2−アミノフェノール−4−スルホン酸、o−アニシジン−5−スルホン酸、p−アニシジン−5−スルホン酸、o−トルイジン−4−スルホン酸、m−トルイジン−4−スルホン酸、p−トルイジン−2−スルホン酸、2−クロロ−p−トルイジン−3−スルホン酸、2−クロロ−p−トルイジン−5−スルホン酸、3−アミノ−6−クロロトルエン−4−スルホン酸、3−アミノ−6−クロロ−4−スルホ安息香酸、1−アミノ−8−ナフタレンスルホン酸、2−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、5−アミノ−3−ナフタレンスルホン酸、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、7−アミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、1−アミノ−5−アントラキノンスルホン酸、1−アミノ−8−アントラキノンスルホン酸、1−アミノ−2−アントラキノンスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−3,6,8−ナフタレントリスルホン酸などが挙げられる。以上において、特に好ましいアミンはスルファニル酸、ナフチオン酸、1−アミノアントラキノン−5−スルホン酸である。
【0020】
他のイオン性基を有する芳香族アミンとしては、例えば、2−(4−アミノフェノキシ)エチル水素サルフェート、2−((4−アミノフェノキシ)(メチル)アミノ)エチル水素サルフェート、N1−メチルベンゼン−1,4−ジアミン、4−(ピペリジン−4−イル)アニリン、3−(ピペラジン−4−イル)アニリン、2−(ピリジン−4−イル)アニリン、4−アミノ−N−(3−(ジエチルアミノ)プロピル)ベンズアミド、3−アミノ−N−(3−(ジエチルアミノ)プロピル)ベンズアミド、2−アミノ−N−(3−(ジエチルアミノ)プロピル)ベンズアミド、4−アミノ−N,N−ビス((3−(ジエチルアミノ)プロピル))ベンズアミド、3−アミノ−N,N−ビス((3−(ジエチルアミノ)プロピル))ベンズアミド、2−アミノ−N,N−ビス((3−(ジエチルアミノ)プロピル))ベンズアミド、4−アミノ−N−(3−(ジエチルアミノ)プロピル)ベンゼンスルホンアミド、3−アミノ−N−(3−(ジエチルアミノ)プロピル)ベンゼンスルホンアミド、2−アミノ−N−(3−(ジエチルアミノ)プロピル)ベンゼンスルホンアミド、4−アミノ−N,N−ビス((3−(ジエチルアミノ)プロピル))スルホンアミド、3−アミノ−N,N−ビス((3−(ジエチルアミノ)プロピル))スルホンアミド、2−アミノ−N,N−ビス((3−(ジエチルアミノ)プロピル)スルホンアミド、N2−(4−アミノフェニル)−N4−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N6−プロピル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4−n−ブチル−N6−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4−sec−ブチル−N6−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン,N2−(4−アミノフェニル)−N4−tert−ブチル−N6−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4,N4−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N6−プロピル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4,N4−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N6−n−ブチル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4,N4−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N6−sec−ブチル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4,N4−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N6−tert−ブチル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4,N4−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−N6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)−N4−(4−クロロフェニル)−N6,N6−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4,N4−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−6−(4−クロロフェノキシ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、N2−(4−アミノフェニル)−N4,N4−ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−6−(フェニルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミンなどが挙げられる。
【0021】
一般式(I)の化合物の製造に使用されるアミノ基を有し、イオン性基以外の置換基を有していてもよい芳香族またはヘテロ芳香族化合物(Y−NH2)としては、例えば、アニリン、トルイジン(o−、m−またはp−)、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、p−クレシジン、アニシジン(o−、m−またはp−)、アミノフェノール(o−、m−またはp−)、アントラニル酸アミド、p−アミノ安息香酸アミド、ニトロアニリン(o−、m−またはp−)、クロロアニリン(o−、m−またはp−)、2,5−ジクロロアニリン、3,4−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、2,4,5−トリクロロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−クロロ−2−ニトロアニリン、2,6−ジクロロ−4−ニトロアニリン、o−フルオロアニリン、2,4−ジフルオロアニリン、m−トリフルオロメチルアニリン、2−クロロ−5−トリフルオロメチルアニリン、2−アミノチオフェノール、2−アミノ−5−ニトロベンゾニトリル、2−アミノ−3−ブロモ−5−ニトロベンゾニトリル、ジフェニルアミン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−4−クロロ−N−フェニルフェニルベンズアミド、3−アミノ−4−クロロ−N−(3−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−4−メトキシ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、3−アミノ−4−メトキシ−N−フェニルルベンズアミド、3−アミノ−4−メトキシ−N−(3−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、4−アミノ−1,9−アントラピリミジン、2−アミノ−5−ニトロチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、5−アミノ−3−メチルイソアゾール、3−アミノ−5−ニトロ−2,1−ベンズイソチアゾール、2−アミノ−3,5−ジニトロチオフェン、5−アミノ−4−シアノピラゾールなどが挙げられる。以上において、特に好ましいアミンは3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、1−アミノアントラキノン、3−アミノ−9エチルカルバゾール、2,5−ジクロロアニリンである。
【0022】
一般式(I)の化合物の製造に使用されるジアミノ芳香族化合物(H2N−Z−NH2)としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、o−アニシジン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノクロロベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノスチルベンなどが挙げられる。上記において特に好ましいいジアミンは、p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチルフェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−p−フェニレンジアミンである。
【0023】
一般式(I)で表わされる分散剤のイオン性基はフリーでもよいし、その塩でもよい。例えば、スルホン酸基の如きアニオン性基の場合には、塩を形成する金属としては、例えば、Li、NaおよびKなどのアルカリ金属、Ca、Ba、Al、Mn、Sr、MgおよびNiなどの多価金属が挙げられる。また、アミン塩またはアンモニウム塩を形成するアミンとしては、例えば、(モノ、ジまたはトリ)アルキルアミン類、置換または未置換のアルキレンジアミン類、アルカノールアミン類、アルキルアンモニウムクロライドおよびアンモニアなどが挙げられる。また、一般式(I)で表わされる分散剤のイオン性基がアミノ基の如きカチオン性基の場合には、塩を形成する化合物としては、有機または無機の酸が挙げられる。
【0024】
本発明のCF用着色組成物は、顔料、前記の顔料分散剤、樹脂系分散剤および樹脂ワニスから構成されることが好ましい。本発明で使用する顔料は、赤色顔料として特にジケトピロロピロール系顔料が挙げられる。このような赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド254などが挙げられる。その際、色補正として、縮合アゾ系赤色顔料や黄色顔料を配合させてもよい。このような縮合アゾ系赤色顔料としては、C.I.ピグメントレッド166および242が、黄色顔料としては、イソインドリン顔料(C.I.ピグメントイエロー139)などを用いることができる。C.I.ピグメントレッド254に対するC.I.ピグメントイエロー139の使用量は前者100質量部当たり後者が1〜40質量部である。上記赤色顔料の使用量は特に限定されないが、通常、後述の樹脂ワニスの樹脂バインダー100質量部に対し5〜500質量部の割合で使用される。
【0025】
前記顔料分散剤の顔料に対する配合割合は、顔料100質量部に対して、0.05〜40質量部の割合が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10質量部の割合である。分散剤の配合割合が少なすぎると、目的とする分散剤の効果が十分に得られにくくなる。また、分散剤の配合割合が多すぎると、多く用いただけの効果が得られず、逆にその結果得られるCF用着色組成物の諸物性の低下をもたらし、さらには、分散剤自体の持つ色によって、分散されるべき顔料の色相が大きく変化してしまう。
【0026】
本発明で用いられる樹脂系分散剤としては、公知の樹脂系分散剤が使用でき、特に前記本発明の分散剤がスルホン酸などのアニオン性基を有する場合には、カチオン系樹脂分散剤が好ましい。カチオン系樹脂分散剤としては、例えば、特開昭54−37082号公報などに記載のポリ(低級アルキレンイミン)誘導体、特開平9−169821号公報、特開2001−59906号公報などに記載のポリアリルアミンまたはポリビニルアミン誘導体、特開2000−155209号公報などに記載のジイソシアナート類および/またはトリイソシアナート類と片末端に水酸基を有するポリエステル類および/または両末端に水酸基を有するポリエステル類との反応生成物であるウレタン系分散剤、特開2000−95992号公報などに記載のポリカプロラクトン骨格を有する分散剤などを使用することができる。
【0027】
これらの中で、特に限定されるわけではないが、分散安定効果が高い点でポリ(低級アルキレンイミン)誘導体、あるいはポリアリルアミン誘導体といったポリアミン誘導体を用いるのが好ましく、さらには、これら上記ポリアミン誘導体のアミノ基および/またはイミノ基にポリエステル、ポリアミドおよびポリエステルアミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種が導入された構造を有する側鎖導入型ポリアミン誘導体の使用が、より分散安定性を向上させることができるため、より好ましい。
【0028】
以下に、本発明において樹脂系分散剤として好ましく用いることができる側鎖導入型ポリアミン誘導体の例を示す。側鎖導入型ポリアリルアミン誘導体としては、ポリアリルアミンのアミノ基と、カルボキシル基を有するポリエステル、カルボキシル基を有するポリアミド、またはカルボキシル基を有するポリエステルアミドから選ばれる化合物(以下、導入化合物という)の少なくとも1種のカルボキシル基との反応により、式:−NHCOR(式中、Rはカルボキシル基を有するポリエステル、カルボキシル基を有するポリアミド、またはカルボキシル基を有するポリエステルアミドのカルボキシル基を除いた残基を表す)で表されるアミド基が、ポリアリルアミン誘導体の1分子当たり少なくとも1個導入されている化合物、あるいは導入化合物のカルボキシル基とポリアリルアミンのアミノ基との塩形成により、式:−NH3+-OCORで表されるアンモニウム塩構造が導入されている化合物が好ましい。さらにポリアリルアミン誘導体は導入化合物のカルボキシル基と反応せず、塩も形成しない遊離のアミノ基を有していてもよい。より好ましいポリアリルアミン誘導体は、1分子当たり前記アミド基および/またはアンモニウム塩構造と遊離のアミノ基をそれぞれ1個以上有するものである。遊離のアミノ基を有する方が顔料への吸着力が強く、より分散安定性が向上する傾向がある。
【0029】
側鎖導入型ポリ(低級アルキレンイミン)誘導体としては、ポリ(低級アルキレンイミン)のイミノ基および/またはアミノ基と、上記導入化合物のカルボキシル基との反応により、イミド基および/またはアミド基が、ポリ(低級アルキレンイミン)1分子当たり少なくとも1個導入されている化合物、あるいは導入化合物のカルボキシル基とポリ(低級アルキレンイミン)のイミノ基および/またはアミノ基との塩形成により、アンモニウム塩構造が導入されている化合物が好ましい。さらにポリ(低級アルキレンイミン)誘導体は導入化合物のカルボキシル基と反応せず、塩も形成しない遊離のアミノ基および/またはイミノ基を有していてもよい。
【0030】
上記側鎖導入型ポリアリルアミン誘導体、ポリ(低級アルキレンイミン)誘導体に導入される導入化合物としては、カルボキシル基を有するポリエステルの場合、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、9および10−ヒドロキシステアリン酸の混合物、ヒマシ油脂肪酸、水添ヒマシ油脂肪酸、乳酸などのヒドロキシ脂肪酸や、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、4−メチルカプロラクトン、2−メチルカプロラクトンなどのラクトンから得られるものが挙げられる。また、無水マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの二塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのジオールとの反応により得られるものが挙げられる。
【0031】
カルボキシル基を有するポリアミドの場合、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムや、アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸などのアミノカルボン酸などから得られるものが挙げられる。また、二塩基酸(ポリエステルの製造に使用するものと同様なもの)とエチレンジアミン、1,4−アミノブタン、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンとの反応により得られるものが挙げられる。カルボキシル基を有するポリエステルアミドの場合、上記ポリエステル、ポリアミドの製造に使用する、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン、あるいは二塩基酸およびジオールから選ばれる少なくとも1種と、アミノカルボン酸、ラクタム、あるいは二塩基酸およびジアミンから選ばれる少なくとも1種の反応により得られるものが挙げられる。
【0032】
上記のような構造を有するポリアリルアミン誘導体の具体例としては、商品名で、例えば、BYK(ビッグ)ケミー社(ドイツ)の商品名:DISPER BYK−160、同161、同162、同163、同164、同166、同171、同182、同184、同2000、同2001、同2070、同2150;EFKA社(オランダ)の商品名:EFKA−44、同46、同47、同48、同4010、同4050、同4055、同4020、同4015、同4060、同4300、同4330、同4400、同4406、同4510、同4800;Avecia社(イギリス)の商品名:SOLSPERS−24000、同32550、NBZ−4204/10;川研ファインケミカル社の商品名:ヒノアクトT−6000、同7000、同8000;味の素社の商品名:アジスパーPB−821、同822、同823;共栄社化学社の商品名:フローレンDOPA−17HF、同15BHF、同33、同44などがある。
【0033】
本発明で用いる樹脂系分散剤の添加量としては、特に限定されるわけではないが、好ましくは顔料100質量部に対して2〜100質量部であり、より好ましくは10〜50質量部である。樹脂系分散剤の添加量が2質量部より少ないと良好な顔料分散安定性が得られず、100質量部より多いと現像性が不良となる場合がある。
【0034】
本発明において顔料を分散させる分散媒体としての樹脂ワニスとしては、従来からCF用着色組成物に使用されている公知の樹脂ワニスがいずれも使用でき、特に限定されない。また、分散媒体として樹脂ワニスとしては適切な溶剤または水系媒体が使用される。また、必要に応じて従来公知の添加剤、例えば、分散助剤、平滑化剤および密着化剤などが適宜添加使用される。
【0035】
樹脂ワニスとしては、感光性の樹脂ワニスと非感光性樹脂ワニスが使用される。感光性樹脂ワニスとしては、例えば、紫外線硬化性インキや電子線硬化インキなどに用いられる感光性樹脂ワニスが挙げられ、非感光性樹脂ワニスとしては、例えば、凸版インキ、平版インキ、凹版グラビアインキおよび孔版スクリーンインキなどの印刷インキに使用する樹脂ワニス、インクジェットプリンティングに使用する樹脂ワニス、電着塗装に使用する樹脂ワニス、電子印刷や静電印刷の現像剤に使用する樹脂ワニス、熱転写フィルムまたはリボンに使用する樹脂ワニスなどが挙げられる。
【0036】
感光性樹脂ワニスの具体例としては、例えば、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂など、および不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂などのワニス、あるいはこれらにさらに反応性希釈剤としてモノマーが加えられたワニスが挙げられる。上記感光性樹脂ワニスの中で好適な樹脂としては、分子中にフリーのカルボン酸基を有するアルカリ現像可能なアクリレート系の樹脂が望ましい。
【0037】
非感光性の樹脂ワニスの具体例としては、例えば、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂および水溶性ポリアミド系樹脂などが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を組み合わせて使用される。
【0038】
上記の各成分から構成される本発明の着色組成物の製造方法は、特に制限されないが、例えば、下記の方法などが挙げられる。
(イ)硫酸などに顔料および顔料分散剤を溶解した後、水中に析出させ、両者を固溶体にして、カチオン性樹脂系分散剤とともに樹脂ワニスに添加して練肉する方法。
(ロ)水または有機溶媒中に顔料を均一に懸濁させ、該懸濁液に顔料分散剤を含有する溶液を添加し、上記顔料粒子表面に顔料分散剤を沈着させたものをカチオン性樹脂系分散剤とともに樹脂ワニスに加えて練肉する方法。
(ハ)顔料、顔料分散剤およびカチオン性樹脂系分散剤をアトライターやボールミルなどの湿式媒体分散機で微分散し、樹脂ワニスに添加して練肉する方法。
(ニ)樹脂ワニス中に顔料、顔料分散剤およびカチオン性樹脂系分散剤をプレミキシング時に添加し、湿式媒体分散機で分散処理する方法。
【0039】
本発明のCF用着色組成物を用いてCFを製造するに際しては、樹脂ワニスとして感光性の樹脂ワニスを使用する場合には、該組成物にベンゾインエーテルやベンゾフェノンなどの従来公知の光重合開始剤を加え、従来公知の方法で練肉して調製した感光性着色組成物を使用する。また、上記の光重合開始剤に代えて熱重合開始剤を使用して熱重合性着色組成物として使用することもできる。
【0040】
上記の感光性着色組成物を用いて基板上にCFの画素を形成する場合には、透明基板上に該感光性着色組成物を、例えば、スピンコーター、低速回転コーター、ロールコーターまたはナイフコーターなどを用いて全面コーティングを行うか、あるいは各種の印刷方法による全面印刷または画素よりやや大きな部分印刷を行い、予備乾燥後フォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を使用して露光を行って画素を焼き付けする。次いで現像および洗浄を行い、必要に応じポストベークを行うことによりCFの画素を形成することができる。これらのCFの画素形成方法自体は公知であり、本発明においてはCFの画素形成方法は特に限定されない。
【0041】
非感光性の樹脂ワニスを使用した本発明のCF用着色組成物(非感光性着色組成物)を用いてCFの画素を形成する場合には、透明基板上に該非感光性着色組成物を、例えば、CF用印刷インキとして上記した各種の印刷方法にて直接基板に画素を印刷する方法、CF用水性電着塗装組成物として電着塗装により基板に画素を形成する方法、インクジェット用インキとしてインクジェットプリンティングにより基板に画素を形成する方法、電子印刷方法や静電印刷方法を用いたり、あるいは転写性基材に上記の方式などで一旦画素を形成してからCF用基板に転写する方法などが挙げられる。次いで常法に従い、必要に応じてベーキングを行ったり、表面平滑化のための研磨を行ったり、表面保護のためのトップコーティングを行う。また、常法に従いブラックマトリックスを形成し、RGBの各画素を有するCFを得ることができる。これらのCFの製造方法自体は公知であり、本発明においてはCFの製造方法は特に限定されない。
【実施例】
【0042】
次に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
[合成例1]
攪拌しながら、N,N’−(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)ビス(3−オキソブタンアミド)6.1部を、水酸化ナトリウム1.8部を溶かしたメタノール100部に溶解させた。これに酢酸5.0部を加えてスラリーにした(下漬液)。別に、スルファニル酸3.5部を炭酸ナトリウム1.2部と水30部に溶かし、濃塩酸5.3部を加えてスラリーとし、10℃以下で30%亜硝酸ナトリウム5部を加えて1時間攪拌した(ジアゾ液A)。ジアゾ液Aを上記下漬液に10℃以下で加え、酢酸ナトリウムでpH3.0〜3.5に調整して2時間攪拌させた(反応液)。別に、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド5.4部を濃塩酸8.5部、50%酢酸30部でスラリー状とし、5℃以下で30%亜硝酸ナトリウム5部を加えて2時間攪拌した(ジアゾ液B)。ジアゾ液Bを上記の反応液に加え、酢酸ナトリウムでpH3.0〜3.5に調整して5℃以下で5時間攪拌させた。生成物をろ過、水洗後、得られたペーストを水中でリスラリー化して塩酸酸性として1時間攪拌した。ろ過、水洗、乾燥して下記構造で表される顔料分散剤(A)13.6部を得た。
【0043】

【0044】
[合成例2]
合成例1で得られた分散剤(A)の水ペースト(固形分5.0部)を水50部に加えて十分にスラリー化し、テトラエチルアンモニウムクロリド5.0部を加えて3時間攪拌後に混合物をろ過して、フィルターケーキを十分に水洗し、顔料分散剤(B)4.7部を得た。

【0045】
[合成例3]
合成例1で得られた分散剤(A)の水ペースト(固形分5.0 部)を水50部に加えて十分にスラリー化し、硫酸アルミニウム14〜18水和物6.0部を水30部に溶かして加え、80℃にて3時間攪拌後に混合物をろ過して、フィルターケーキを十分に水洗し、顔料分散剤(C)5.1部を得た。

【0046】
[合成例4]
合成例1のN,N’−(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)ビス(3−オキソブタンアミド)の代わりに、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−オキソブタンアミド)を使用する以外は合成例1と同様にして、顔料分散剤(D)を得た。

【0047】
[合成例5]
合成例1のスルファニル酸の代わりにナフチオン酸を使用する以外は合成例1と同様にして、顔料分散剤(E)を得た。

【0048】
[合成例6]
合成例1の3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミドの代わりに1−アミノアントラキノンを使用する以外は合成例1と同様にして、顔料分散剤(F)を得た。

【0049】
[合成例7]
合成例1のスルファニル酸の代わりに1−アミノアントラキノン−5−スルホン酸を、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミドの代わりに1−アミノアントラキノン使用する以外は合成例1と同様にして、顔料分散剤(G)を得た。

【0050】
[合成例8]
合成例1の3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミドの代わりに3−アミノ−9−エチルカルバゾールを使用する以外は合成例1と同様にして、顔料分散剤(H)を得た。

【0051】
[合成例9]
合成例1の3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミドの代わりに2,5−ジクロロアニリンを使用する以外は合成例1と同様にして、顔料分散剤(I)を得た。

【0052】
[合成例10]
合成例1の3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミドの代わりにアントラニル酸アミドを使用する以外は合成例1と同様にして、顔料分散剤(J)を得た。

【0053】
[実施例1]
アクリル樹脂ワニス(メタクリル酸/ブチルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエチルアクリレートを25/50/15/10のモル比で共重合させたもの、分子量12,000、固形分30%)50部にC.I.ピグメントレッド254を20部、イソインドリンイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー139)を4部、合成例1で得られた顔料分散剤(A)を1部、カチオン性樹脂系分散剤を4部および溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)(以下PGMAcと略す)を20部配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散し赤色のCF用着色組成物を得た。
【0054】
[実施例2〜10]
実施例1の顔料分散剤(A)の代わりに、それぞれ合成例2〜10で得られた顔料分散剤(B)〜(J)を使用し、その他は実施例1と同様にして赤色のCF用着色組成物を得た。
[比較例]
顔料分散剤(A)を使用しない以外は、実施例1と同様にして赤色のCF用着色組成物を得た。
【0055】
上記の実施例1〜10のCF用着色組成物の粘度(流動性)と展色面のグロスおよび異物発生の有無(粘度)を比較例の場合と比較した。CF用着色組成物の粘度と展色のグロスは、下記の方法に従って測定し、初期とCF用着色組成物を室温で1ヶ月間貯蔵後について比較例の場合と相対評価を行った。
粘度:B型粘度計を用い、室温(25℃)、ローターの回転数60rpmの条件で測定した。
【0056】
グロス:バーコーター(巻線の太さ0.45mm)を使用して、ポリプロピレンフィルムに展色し、展色面のグロスを目視およびグロスメーターにて比較した。なお、グロスの高いものを良好とし、下記の指標で表示した。
○:良好
△:やや良好
×:不良
以上の結果を表1に示す。
【0057】

【0058】
表1から明らかなように、本発明の顔料分散剤(A)〜(J)を使用した実施例1〜10のCF用着色組成物は、顔料分散剤を使用しない比較例の該組成物に比べて、いずれも初期および貯蔵後の粘度(1ヶ月後)が低く、グロスも良好で、CF用着色組成物として優れた性質を有していた。
【0059】
[参考例1]
実施例1で使用したアクリル樹脂ワニス50部に臭塩素化フタロシアニングリーン(C.I.ピグメントグリーン36)17部、キノフタロンイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー138)13部、顔料分散剤としてモノスルホン化キノフタロンイエロー2部、カチオン性樹脂系分散剤4部およびPGMAc20部を配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散し、緑色の顔料分散液を得た。
【0060】
[参考例2]
実施例1で使用したアクリル樹脂ワニス50部にε型銅フタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:6)16部、ジオキサジンバイオレット(C.I.ピグメントバイオレット23)4部、顔料分散剤としてモノスルホン化フタロシアニンブルー2部、モノスルホン化インダントロン1部、カチオン性樹脂系分散剤4部およびPGMAc20部を配合し、プレミキシングの後、横型ビーズミルで分散し、青色の顔料分散液を得た。
【0061】
[参考例3]
RGBのCFを作製するために、下記の表2の配合処方によりR、GおよびBのCF用着色組成物を得た。
【0062】

【0063】
シランカップリング剤処理を行ったガラス基板をスピンコーターにセットし、表2のRのCF用着色組成物を最初300rpmで5秒間、次いで1,200rpmで5秒間の条件でスピンコートした。次いで80℃で10分間プリベークを行い、モザイク状の画素を有するフォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を用い100mJ/cm2の光量で露光を行った。次いで専用現像液および専用リンスで現像および洗浄を行い、ガラス基板上に赤色のモザイク状画素を形成させた。引き続いて緑色モザイク状画素および青色モザイク状画素を表2のGおよびBのCF用着色組成物を用いて上記の方法に準じて塗布および焼き付けを行って形成し、RGBの各画素を有するCFを得た。得られたCFは優れた分光カーブ特性を有し、各画素の耐光性や耐熱性などの堅牢性に優れ、また、光の透過性にも優れた性質を有し、液晶カラーディスプレイ用CFとして優れた性質を示した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上の本発明によれば、特定の分散剤を、CFの赤色画素形成用着色組成物の分散剤として使用することにより、CF用着色組成物も安定に製造することができ、異物の発生を防止し、また、最終的にCF用着色組成物として使用される際にも、優れた分光カーブ特性を有し、鮮明で冴えた、透明感の高い、しかも耐光性、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性および耐水性などの諸堅牢性に優れた画素を有するCFを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表される化合物からなることを特徴とする顔料分散剤。

(ただし、式中のXはイオン性基を1個〜3個有し、かつ他の置換基を有していてもよい芳香族環または芳香族ヘテロ環残基であり、Yはイオン性基以外の置換基を有していてもよい芳香族環または芳香族ヘテロ環残基であり、Zは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基または下記式[1]で表される基であり、上記イオン性基は、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸モノまたはジエステル基および硫酸エステル基からなる群から選ばれた少なくとも1種のアニオン性基、あるいは線状あるいは環状の2級、3級アミノ基、第4級アンモニウム基、ピリジンおよびピリジニウム基からなる群から選ばれた少なくとも1種のカチオン性基である。)

(ただし、式中のRは水素原子または置換基を表し、WはO、CH2、HNCO、S、N=またはCH=CHを表す。)
【請求項2】
Xが、スルファニル酸、ナフチオン酸または1−アミノアントラキノン−5−スルホン酸のカップリング残基であり、Zが、p−フェニレンジアミンまたは2,5−ジメチルフェニレンジアミンの縮合残基であり、Yが、3−アミノ−4−クロロ−N−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ベンズアミド、1−アミノアントラキノン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、2,5−ジクロロアニリンまたはアントラニル酸アミドのカップリング残基である請求項1に記載の分散剤。
【請求項3】
有機顔料および請求項2に記載の顔料分散剤を含むことを特徴とする顔料組成物。
【請求項4】
有機顔料が、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン顔料および金属錯体顔料からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機顔料である請求項3に記載の顔料組成物。
【請求項5】
顔料が、C.I.ピグメントレッド254(A)とC.I.ピグメントイエロー139(B)との混合物であり、両者の混合割合が、A100質量部当たりB1〜40質量部である請求項4に記載の顔料組成物。
【請求項6】
有機顔料、請求項1に記載の顔料分散剤および樹脂系分散剤を含むことを特徴とする着色組成物。
【請求項7】
樹脂系分散剤が、顔料分散剤の有するX基がアニオン性基であるときはカチオン性基を含む樹脂系分散剤であり、顔料分散剤の有するX基がカチオン性基であるときはアニオン性基を含む樹脂系分散剤である請求項6に記載の着色組成物。
【請求項8】
さらに皮膜形成材料(あるいは樹脂分散媒体)を含む請求項7に記載の着色組成物。
【請求項9】
皮膜形成材料が、重合体、オリゴマーおよび/またはモノマーを含有してなる請求項8に記載の着色組成物。
【請求項10】
印刷インキ、筆記具用インキ、プラスチック着色剤、顔料捺染用着色剤、塗料、画像記録用着色剤あるいは画像表示用着色剤である請求項9に記載の着色組成物。
【請求項11】
カラーフィルター用着色剤である請求項10に記載の着色組成物。
【請求項12】
カラーフィルター用基板に着色画素を形成する工程を含むカラーフィルターの製造方法において、上記着色画素を、請求項11に記載の着色組成物を使用して形成することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法で形成されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項14】
請求項13に記載のカラーフィルターを装備していることを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像表示装置を装備していることを特徴とする情報伝達機器。

【公開番号】特開2010−59224(P2010−59224A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223207(P2008−223207)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】