説明

顔料分散用樹脂

【課題】メタリック顔料と水との反応を長期にわたり抑制するのに有効であり、しかも、かかるメタリック顔料を含有する水性メタリック塗料によって形成される塗膜が、優れた付着性、耐水性及び外観を有する顔料分散用樹脂を提供すること。
【解決手段】りん酸基と、下記一般式(I)


[式中、R1は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、mは1〜30の整数]及び/又は下記一般式(II)


[式中、R2は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは1〜30の整数]で示されるユニットを含有するエチレン性不飽和モノマー(A)、及び その他のエチレン性不飽和モノマー(B)を共重合せしめることにより得られる顔料分散用樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な顔料分散用樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムフレークなどのメタリック顔料を含むメタリック水性塗料は、メタリック顔料が塗料中の多量の水と接触して腐食し、そして水素ガスが発生するという問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するために、メタリック水性塗料中にりん酸エステル類を含有させ、該エステル類のりん原子に結合した酸性ヒドロキシル基による吸着作用を利用して、メタリック顔料の表面をりん酸エステル類で保護し、水とメタリック顔料との直接の接触による反応を抑制することが提案されている。しかしながら、かかるりん酸エステル類を含有するメタリック水性塗料は、長期間にわたってこの反応を抑制することが困難であり、かつ形成されるメタリック塗膜の付着性、耐水性、耐チッピング性、メタリック仕上がり感なども十分でないという欠点がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、りん酸エステルで処理したアルミニウムフレ−クを含有する水性メタリック塗料が、特許文献2には、オルトりん酸とエポキシ化合物との反応生成物を含有する水性メタリック塗料が、特許文献3には、オルトりん酸とグリシジル基含有アクリル重合体とから得られるりん酸塩化アクリル重合体を含有する水性メタリック塗料が、そして特許文献4には、スチレンとアリルアルコールとの重合体及びp−(t−アミル)フェノールとオルトりん酸又は五酸化りんとの反応生成物を含有する水性メタリック塗料がそれぞれ開示されている。しかしながら、これらの水性メタリック塗料は、いずれも、その塗膜の付着性、耐水性、メタリック外観などが十分でない。
【0005】
また、特許文献5には、特定の構造を有するりん酸エステルモノマー0.1〜5重量%とα,β−エチレン性不飽和単量体99.9〜95重量%を共重合させて得られる、OHV=30〜150及びMn=1,500〜20,000のアクリル樹脂を含有する、耐水変色性及びメタリック感に優れた塗膜を形成しうるメタリック塗料組成物が開示されている。しかしながら、該メタリック塗料組成物によって形成される塗膜の、温水浸漬後の付着性は不十分である。
【0006】
さらに、特許文献6には、アルキレンオキサイド鎖を有するりん酸基含有モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーを共重合して得られるアクリル重合体を用いた水性塗料組成物が開示されている。しかしながら、アルキレンオキサイド鎖を有するりん酸基含有モノマーは親水性が高く、塗膜の耐水性確保の観点から使用量が制限されるため、アクリル重合体中のりん酸量が十分ではなく、メタリック顔料と水の反応を長期間にわたって抑制することが困難である。
【特許文献1】特開昭58−168670号公報
【特許文献2】特開昭61−47771号公報
【特許文献3】特開平1−190765号公報
【特許文献4】特公平2−46624号公報
【特許文献5】特開昭62−30167号公報
【特許文献6】特開平4−25578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、メタリック顔料と水との反応を長期にわたり抑制するのに有効であり、しかも、かかるメタリック顔料を含有する水性メタリック塗料によって形成される塗膜が、優れた付着性、耐水性及び外観を有する顔料分散用樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、今回、特定の構造を有するりん酸基含有エチレン性不飽和モノマーと、その他のエチレン性不飽和モノマーを共重合することにより得られる顔料分散用樹脂が、メタリック顔料と水との反応を長期にわたり抑制するのに有効であり、しかも、該顔料分散用樹脂を含有する水性メタリック塗料によって形成される塗膜が、優れた付着性、耐水性及び外観を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、本発明は、りん酸基と、下記一般式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、R1は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、mは1〜30の整数であり、m個の繰り返し単位
【0012】
【化2】

【0013】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
及び/又は下記一般式(II)
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、R2は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは1〜30の整数であり、n個の繰り返し単位
【0016】
【化4】

【0017】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
で示されるユニットを含有するエチレン性不飽和モノマー(A)、及び
その他のエチレン性不飽和モノマー(B)
を共重合せしめることにより得られる顔料分散用樹脂を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従う顔料分散用樹脂を用いることにより、メタリック顔料と水との反応を長期にわたり抑制することが可能となり、しかも、かかる顔料分散用樹脂を含有する水性メタリック塗料を用いることにより、付着性、耐水性及び外観に優れた塗膜を形成することができる。
【0019】
以下、本発明の顔料分散用樹脂及びそれを含有する水性メタリック塗料組成物について、さらに詳細に説明する。

エチレン性不飽和モノマー(A)
エチレン性不飽和モノマー(A)は、りん酸基と、下記一般式(I)
【0020】
【化5】

【0021】
[式中、R1は炭素数1〜10、好ましくは2〜6のアルキレン基を表し、mは1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10の整数であり、m個の繰り返し単位
【0022】
【化6】

【0023】
は同じであっても又は互いに異なっていてもよい]
及び/又は下記一般式(II)
【0024】
【化7】

【0025】
[式中、R2は炭素数1〜10、好ましくは2〜6のアルキレン基を表し、nは1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10の整数であり、n個の繰り返し単位
【0026】
【化8】

【0027】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
で示されるユニットを含有するものである。
【0028】
エチレン性不飽和モノマー(A)は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレ−ト類を、
常法に従い、環状エステルや環状カーボネートで変性し、りん酸化剤を作用させた後、加水分解することにより容易に合成することができる。
【0029】
上記環状エステルとしては、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の炭素数3〜11のラクトン類を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、ε−カプロラクトンが好適である。また、上記環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート等の5員環(1,3−ジオキソラン環)構造を有するもの;1,3−プロピレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、2,4−ペンチレンカーボネート、2,2−ジメチル−1,3−プロピレンカーボネート(ネオペンチルグリコールカーボネートまたは5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オンとも呼ばれる)等の6員環(1,3−ジオキサン環)構造を有するもの;1,4−ブチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート等の7員環(1,3−ジオキセパン環)構造を有するものなどを挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、2,2−ジメチル−1,3−プロピレンカーボネートが好適である。
【0030】
また、りん酸化剤としては、それ自体既知のもの、例えば、五酸化りん、オキシ塩化りん等を使用することができる。
【0031】
水酸基含有(メタ)アクリレ−ト類の環状エステルや環状カーボネートによる変性は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート類の水酸基に、それ自体既知の方法で、環状エステルや環状カーボネートを開環付加させることにより行うことができ、得られる変性物中の例えば末端水酸基にりん酸化剤を反応させた後加水分解することにより、エチレン性不飽和モノマー(A)を得ることができる。
【0032】
エチレン性不飽和モノマー(A)は、さらに、下記一般式(III)
【0033】
【化9】

【0034】
[式中、R3は炭素数1〜10、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2もしくは3のアルキレン基を表し、iは1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10の整数であり、i個のオキシアルキレン単位
【0035】
【化10】

【0036】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
で示されるユニットを含有することができる。
【0037】
上記式(III)のユニットを含有するエチレン性不飽和モノマー(A)は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレ−ト類の水酸基に、それ自体既知の方法で、環状エステルや環状カーボネートを開環付加させ、得られる変性物中の例えば末端水酸基にアルキレンオキサイドを付加させ、さらにその付加生成物中の例えば末端水酸基に五酸化りんやオキシ塩化りん等の既知のりん酸化剤を作用させた後、加水分解することにより得ることができ
る。
【0038】
エチレン性不飽和モノマー(A)としては、具体的には、例えば、下記一般式(IV)〜(IX)で示されるものが挙げられる。
【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
[式中、Xは−O−又は−NH−を表し、kは0〜30、好ましくは0〜20、さらに好ましくは0〜10の整数であり、R4は水素原子又はメチル基を表し、R5は炭素数1〜6、好ましくは2〜4、さらに好ましくは2もしくは3のアルキレン基を表し、m個の繰り返し単位
【0042】
【化13】

【0043】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、k個のオキシアルキレン単位
【0044】
【化14】

【0045】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、R1、R3及びmは前記と同じ意味を有する]
【0046】
【化15】

【0047】
【化16】

【0048】
[式中、X、R2、R3、R4、R5、n及びkは前記と同じ意味を有し、n個の繰り返し単位
【0049】
【化17】

【0050】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、k個のオキシアルキレン単位
【0051】
【化18】

【0052】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
【0053】
【化19】

【0054】
【化20】

【0055】
[式中、X、R1、R2、R4、R5、m及びnは前記と同じ意味を有し、m個の繰り返し単位
【0056】
【化21】

【0057】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、n個の繰り返し単位
【0058】
【化22】

【0059】
は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、m個の繰り返し単位
【0060】
【化23】

【0061】
とn個の繰り返し単位
【0062】
【化24】

【0063】
の配列順序はブロックであってもランダムであってもよい]
これらのエチレン性不飽和モノマー(A)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。

その他のエチレン性不飽和モノマー(B)
その他のエチレン性不飽和モノマー(B)は、上記のエチレン性不飽和モノマー(A)と共重合し得るそれ以外のエチレン性不飽和モノマーであって、顔料分散用樹脂に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。
【0064】
そのようなモノマー(B)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロビル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートなどのC1〜C24の直鎖状又は環状アルキル(メタ)アクリレートモノマー;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーと有機ラクトンの付加物(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトン1モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン1モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン2モル付加物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン2モル付加物など)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートへのエチレンオキサイドの開環付加物やプロピレンオキサイドの開環付加物などの水酸基含有エチレン性不飽和モノマー;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー;アシッド
ホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート等のアシッドホスホキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー(好ましくはアシッドホスホキシエチルメタアクリレート);アクリルアミド、メタクリルアミド;3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有(メタ)アクリレートモノマー;2−(2’−
ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性エチレン性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの紫外線安定性エチレン性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和モノマーは1種のみもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
本発明の顔料分散用樹脂は、例えば、着色水性ベースコート用塗料の調製に用いる場合、硬化剤成分、例えば、アミノ樹脂やブロック化されてもよいポリイソシアネ−ト化合物と反応して架橋塗膜中にとりこまれることが塗膜性能上望ましく、そのため、上記モノマー(B)は、その成分の少なくとも一部として、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
【0066】
上記水酸基含有エチレン性不飽和モノマーは、得られる共重合体の水酸基価が一般に15〜150mgKOH/g、好ましくは30〜100mgKOH/gの範囲内となる量で使用するのが好適である。

顔料分散用樹脂
本発明の顔料分散用樹脂は、以上に述べたエチレン性不飽和モノマー(A)とその他のエチレン性不飽和モノマー(B)を共重合することによって得られる。共重合に際してのこれらのモノマー(A)及び(B)の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、形成される共重合体に望まれる物性等に応じて変えることができるが、一般には、エチレン性不飽和モノマー(A)対その他のエチレン性不飽和モノマー(B)の質量比が10/90〜70/30の範囲内にあることが好ましく、中でも、15/85〜60/40の範囲内にあることが好ましく、35/65〜55/45の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0067】
上記エチレン性不飽和モノマー(A)とその他のエチレン性不飽和モノマー(B)の共重合は、それ自体既知の方法、例えば、有機溶剤中での溶液重合法、水性媒体中でのエマルション重合法などの方法により行なうことができるが、なかでも溶液重合法が好適である。
【0068】
溶液重合法による共重合法としては、例えば、前記モノマー(A)及び(B)とラジカル重合開始剤の混合物を、有機溶媒に溶解もしくは分散せしめ、通常、約80〜約200℃の温度で1〜10時間程度撹拌しながら加熱して重合させる方法を挙げることができる。
【0069】
上記共重合反応において使用し得る有機溶媒としては、例えば、ヘプタン、トルエン、キシレン、オクタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコ−ル系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコール
モノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエ−テル系溶剤;コスモ石油社製のスワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等の芳香族石油系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は1種のみもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの有機溶剤は、通常、モノマー成分の合計量100質量部あたり400質量部以下の範囲内で使用することが好ましい。
【0070】
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキン)ヘキサン等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン2,2'−アゾビスメチルバレロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、モノマー成分の合計量100質量部あたり0.1〜15質量部、好ましくは0.3〜10質量部の範囲内が好適である。
【0071】
上記重合反応において、モノマー成分や重合開始剤の添加方法は特に制約されるものではないが、重合開始剤は重合初期に一括仕込みするよりも重合初期から重合後期にわたって数回に分けて分割滴下する方が、重合反応における温度制御、ゲル化物のような不良な架橋物の生成の抑制などの点から好適である。
【0072】
かくして得られる本発明に従う顔料分散用樹脂は、一般に、20〜200mgKOH/g、特に40〜170mgKOH/gの範囲内の酸価及び15〜150mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することができる。また、本発明の顔料分散用樹脂は、一般に、2,000〜100,000、好ましくは4,000〜50,000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。
【0073】
なお、本明細書における、メラミン樹脂、顔料分散用樹脂等の樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量を、ポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。この測定において、カラムとして「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも商品名、東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、設定温度40℃、流速1mL/min、検出器RIの測定条件を使用した。

水性メタリック塗料組成物
本発明により提供される顔料分散用樹脂は、水性メタリック塗料におけるメタリック顔料の不活性化剤(passivator)として極めて有用であり、メタリック顔料を水
との反応による腐食から長期にわたって保護することができ、しかも、該顔料分散用樹脂を配合することにより、メタリック顔料が塗面に対して平行かつ均一に配向し、塗膜外観に優れ、かつ付着性、耐水性などの塗膜性能にも優れた水性メタリック塗料組成物を得ることができる。
【0074】
本発明に従う顔料分散用樹脂が上記の如き優れた特性を発現する機構は明確ではないが、顔料分散用樹脂の主鎖とりん酸基をつなぐ側鎖中に、前記一般式(I)及び/又は(II)で示される独特なユニットが存在することによって、顔料分散用樹脂がメタリック顔料に強固に吸着し、かつ、メタリック顔料を水性媒体中に均一に分散させるため、メタリック顔料の配向性が向上して塗膜外観が向上し、さらに、メタリック顔料と塗膜形成樹脂との相互作用が向上して、付着性及び耐水性に優れた強固な塗膜が形成されるものと考えられる。
【0075】
水性メタリック塗料組成物は、例えば、基体樹脂、硬化剤、本発明に従う顔料分散用樹脂及びメタリック顔料、ならびに場合により、さらに他の塗料添加物を水性媒体中で混合、分散せしめることによって調製することができる。
【0076】
基体樹脂としては、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知のものを使用することができ、例えば、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などをベースとする水溶性又は水分散性の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、その分子中に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの架橋性官能基を有していることが好ましい。また、硬化剤としては、これらの官能基と反応し得るメラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物などが挙げられる。基体樹脂と硬化剤との配合比率は、これら両者の合計固形分重量を基準にして、通常、前者は50〜90%、特に60〜80%、後者は50〜10%、特に40〜20%の範囲内が適している。
【0077】
本明細書において、メタリック顔料は、塗膜にキラキラとした光輝感や光干渉性模様を付与する顔料であり、具体的には、例えば、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウムなどを挙げることができる。これらの顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのメタリック顔料はりん片状であることが好ましい。メタリック顔料の配合量は、通常、固形分として、基体樹脂と硬化剤との合計100質量部あたり、1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部の範囲内とすることができる。
【0078】
本発明に従う顔料分散用樹脂の配合量は、通常、メタリック顔料100質量部あたり、固形分として、0.1〜50質量部、好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部の範囲内とすることができる。
【0079】
本発明の顔料分散用樹脂は、塗料に配合するに先立ち、例えば、アンモニア、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノールなどの塩基であらかじめ中和しておくことができる。
【0080】
水性メタリック塗料組成物は、例えば、以上に述べた基体樹脂、硬化剤、本発明に従う顔料分散用樹脂及びメタリック顔料を、さらに必要に応じて、ソリッドカラ−顔料、体質顔料、親水性有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤などの塗料添加物と共に、それ自体既知の方法で、水性媒体中にて混合、分散せしめることによって調製することができる。その際、本発明に従う顔料分散用樹脂とメタリック顔料とをあらかじめ混合して顔料分散液を
調製しておき、その顔料分散液を基体樹脂や硬化剤などと共に水性媒体中で混合、分散せしめることが好ましい。より具体的には、例えば、固形分含有率を30〜70重量%に調整した本発明の顔料分散用樹脂溶液にメタリック顔料を上記した比率で均一に混合してメタリック顔料の表面に顔料分散用樹脂を吸着させ、次いで上記塩基で中和し、分散せしめてから、これらを基体樹脂や硬化剤などと共に水中で混合、分散せしめることが好ましい。
【0081】
水性メタリック塗料組成物は、金属製又はブラスチック製の自動車外板などの被塗物に直接塗装することが可能であるが、一般には、被塗物に、電着塗料などの下塗り塗料及び場合によりさらに中塗り塗料などをあらかじめ塗装し、これらの塗膜を硬化させた後、その塗面に上記の如くして調製される水性メタリック塗料組成物を塗装することが好ましい。
【0082】
水性メタリック塗料組成物は、例えば、回転霧化方式の静電塗装機、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機等の塗装機を用いて塗装することができ、特に、回転霧化方式の静電塗装機を用いて塗装することが好ましい。また、水性メタリック塗料組成物は、硬化塗膜で5〜30μmの膜厚となるように塗装することが好ましく、中でも10〜20μmの膜厚となるように塗装することがさらに好ましい。
【0083】
水性メタリック塗料組成物を用いて形成されるメタリック塗膜は、約100〜約170℃の温度で10〜40分間程度加熱することにより硬化させることができる。
【0084】
また、該メタリック塗膜を硬化させてから又は硬化させずに、該メタリック塗膜上にクリヤー塗料をさらに塗装することもできる。メタリック塗膜上にクリヤー塗料を塗装する場合には、水性メタリック塗料組成物の塗装後に、塗膜が硬化しない温度でプレヒート(予備乾燥)を行なった後、クリヤー塗料を塗装することが好ましい。プレヒートの温度は約50〜約100℃の範囲内であることが好適であり、プレヒートの時間は約30秒間〜約10分間、さらに好ましくは約1〜約5分間の範囲内であることが好適である。
【0085】
特に、未硬化のメタリック塗膜上に、クリヤー塗料を回転霧化方式の静電塗装機、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機等の塗装機を用いて塗装した後、約100〜約180℃、さらに好ましくは約120〜約160℃の温度で10〜40分間程度加熱して両塗膜を同時に硬化させることにより、優れた外観を有する塗膜を形成せしめることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。

エチレン性不飽和モノマー(A)の製造
製造例1
反応容器に、PLACCEL FM2D(ダイセル化学工業社製、商品名、ヒドロキシエチルメタクリレート1モルにε−カプロラクトン2モルを付加したモノマー)358部を入れ、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、50〜60℃で五酸化りん63.9部を少量ずつ加えた。全量添加後、60℃で5時間熟成し、イオン交換水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行い、エチレン性不飽和モノマー(A1)を得た。

製造例2
反応容器に、HEMAC1(ダイセル化学工業社製、商品名、ヒドロキシメチルメタクリレ−ト1モルにジメチルトリメチレンカーボネート1モルを付加したモノマー)260部を入れ、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、50〜60℃で五酸化りん63
.9部を少量ずっ加えた。全量添加後、60℃で5時間熟成し、イオン交換水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行い、エチレン性不飽和モノマー(A2)を得た。

製造例3
反応容器に、HEMAC1 260部、ε−カプロラクトン114部、モノブチル錫オキサイド0.00748部及びハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)0.281部を入れ、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、昇温を開始する。反応液の温度を120℃に保ちつつ、内容物をサンプリングし、ガスクロマトグラフにより、未反応のε−カプロラクトン量を定量しながら、反応率が95%を超えたところで冷却を行なう。
【0087】
続いて、50〜60℃で五酸化りん63.9部を少量ずつ加えた。全量添加後、60℃で5時間熟成し、イオン交換水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行い、エチレン性不飽和モノマー(A3)を得た。

製造例4
反応容器に、ヒドロキシエチルメタクリレート130部、ε−カプロラクトン114部、ジメチルトリメチレンカーボネート130部、p−トルエンスルホン酸1.87部及びMEHQ 0.281部を入れ、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、昇温を開始する。反応温度を80℃一定に保つ。内容物をサンプリングし、ガスクロマトグラフにより、未反応のε−カプロラクトン量及び未反応のジメチルトリメチレンカーボネート量を定量しながら、反応率が9.5%を超えたところで冷却する。
【0088】
続いて、50〜60℃で五酸化りん63.9部を少量ずつ加えた。全量添加後、60℃で5時間熟成し、イオン交換水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行い、エチレン性不飽和モノマー(A4)を得た。

製造例5
反応容器に、PLACCEL FM1D(ダイセル化学工業社製、商品名、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト1モルにε−カプロラクトン1モルを付加したモノマー)244部、塩化第二スズ1.44部及びMEHQ 0.18部を入れ、空間部分を窒素置換した後、40℃以下に保ちながらプロピレンオキサイド116部を圧入し、1時間熟成を行った。
【0089】
続いて、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、50〜60℃で五酸化りん63.9部を少量ずつ加えた。全量添加後、60℃で5時間熟成し、イオン交換水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行い、エチレン性不飽和モノマー(A5)を得た。

製造例6
反応容器に、ブレンマーPE−200(日本油脂社製、商品名、ポリエチレングリコールモノメタクリレート)398部、ε−カプロラクトン114部、モノブチル錫オキサイド0.008部及びMEHQ 0.3部を入れ、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、昇温を開始する。反応温度を120℃一定に保つ。内容物をサンプリングし、ガスクロマトグラフにより、未反応のε−カブロラクトン量を定量しながら、反応率95%を超えたところで冷却する。
【0090】
続いて、50〜60℃で五酸化りん63.9部を少量ずつ加えた。全量添加後、60℃で5時間熟成し、イオン交換水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行い、エチレン性不飽和モノマー(A6)を得た。

製造例7
反応容器に、HEMAC1 260部、塩化第二スズ1.50部及びMEHQ 0.188部を入れ、空間部分を窒素置換した後、40℃以下に保ちながらプロピレンオキサイド116部を圧入し、1時間熟成を行った。
【0091】
続いて、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、50〜60℃で五酸化りん63.9部を少量ずつ加えた。全量添加後、60℃で5時間熟成し、イオン交換水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行い、エチレン性不飽和モノマー(A7)を得た。

製造例8
反応容器に、HEAA(興人社製、商品名、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド)115部、ε−カプロラクトン228部、モノブチル錫オキサイド0.00686部及びMEHQ 0.258部を入れ、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、昇温を開始する。反応温度を120℃一定に保つ。内容物をサンプリングし、ガスクロマトグラフにより、未反応のε−カプロラクトン量を定量しながら、反応率95%を超えたところで冷却する。
【0092】
続いて、反応液中に乾燥空気をバブリングさせながら、50〜60℃で五酸化りん63.9部を少量ずつ加えた。全量添加後、60℃で5時間熟成し、イオン交換水9.0部を加え、さらに80℃にて5時間熟成を行い、エチレン性不飽和モノマー(A8)を得た。

顔料分散用樹脂の製造
実施例1
攪拌器、温度調整器及び冷却器を備えた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテル120部を入れ、110℃に加熱し、同温度に保持しつつ、スチレン20部、n−ブチルアクリレート20部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、製造例1で得たエチレン性不飽和モノマー(A1)50部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3部からなる混合物(I)103部を4時間を要して滴下し、滴下終了後1時間攪拌熟成を行なった。その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1部とプロピレングリコールモノメチルエーテル30部とからなる開始剤溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間攪拌熟成して顔料分散用樹脂(P1)を得た。顔料分散用樹脂(P1)の酸価は128mgKOH/g、水酸基価は48mgKOH/g、重量平均分子量は17,100、固形分濃度は40%であった。
【0093】
実施例2〜9、比較例1〜5
実施例1において、混合物(I)の代わりに下記表1に示す配合割合の混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度40%の顔料分散用樹脂溶液(P2)〜(P14)を得た。得られた顔料分散用樹脂溶液(P2)〜(P14)の酸価、水酸基価及び重量平均分子量を実施例1の顔料分散用樹脂(P1)と併せて下記表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
(注1)ライトエステルP−1M:共栄社化学社製、商品名、アシッドホスホキシエチルメタクリレート
(注2)Phosmer PE:ユニケミカル社製、商品名、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート
(注3)Phosmer PP:ユニケミカル社製、商品名、アシッドホスホキシポリオキシプロビレングリコールモノメタクリレート。

アクリルエマルション(AE)の製造
製造例9
温度計、サ−モスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水32.1部、「NEWCOL 562SF」(日本乳化剤社製、商品名、乳化剤)0.267部を加え、80℃に加温してから、脱イオン水1.110部に溶解した過硫酸アンモニウム0.033部及び下記のプレエマルション1の全量の1%量を投入し、同温度で20分間熟成した。その後、メチルメタクリレート14.45部、n−ブチルメタクリレート7.12部、アリルメタクリレート0.67部、脱イオン水21.63部及び「NEWCOL 562SF」0.267部を混合し、プレエマルション化したもの(プレエマルション1)を2時間かけて反応容器に滴下し、その後、1時間熟成した。
【0096】
ついで、メチルメタクリレート2.29部、n−ブチルメタクリレート2.48部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.98部、メタクリル酸0.78部、脱イオン水9.77部及び「NEWCOL 562SF」0.114部を混合し、プレエマルション化したもの(プレエマルション2)を2時問かけて反応容器に滴下した。また、上記プレエマルション2と同時に過硫酸アンモニウム0.003部を脱イオン水1.110部に溶解したものを2時間かけて滴下した。その後、1時間熟成して、脱イオン水19.53部に2−(ジメチルアミノ)エタノ−ル0.294部を溶解したものを投入し、固形分含有率25%、pH8.5、粒子径120nmのアクリルエマルション(AE)を得た。

ポリエステル水溶液(PE)の製造
製造例10
攪拌器、分縮器、ぜん縮器及びトルクメータを備えた反応容器に、ネオペンチルグリコール78.75部(0.75モル)、トリメチロールプロパン34.13部(0.25モル)、アジピン酸65.7部(0.45モル)及びイソフタル酸74.7部(0.45モル)を仕込み、3時間を要して150℃から230℃に昇温し、同温度で1.5時間維持して縮合水を系外に流出させながら縮合反応を行なった。その後、トルエン3部を加えて還流させながら、攪拌と脱水を継続して行い、カルボキシル基による酸価が8mgKOH/gになるまで反応せしめ、生成する水をトルエンと共沸させて除去した。その後、温度を170℃に下げてから、無水トリメリット酸6.72部(0.035モル)を投入し、同温度で30分間熟成してから、ブチルカルビトール20部を加え、温度を80℃に下げた。かくして酸価が25mgKOH/g、水酸基価が93mgKOH/g、数平均分子量が1,700の水溶性ポリエステルを得た。これに2−(ジメチルアミノ)エタノール9部を加えて中和し、脱イオン水で固形分含有率35%のポリエステル水溶液(PE)を得た。

水性メタリック塗料の製造
実施例10
アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(旭化成メタルズ社製、商品名、アルミニウム顔料含有率73%)17.8部とエチレングリコールモノブチルエーテル25部を混合し、アルミ顔料が均一に分散するまで攪拌した。っいで、この混合物に、実施例1で得た顔料分散用樹脂(P1)8部を加え15分攪拌した後、2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を加えて中和し、15分間攪拌して顔料分散液を得た。
【0097】
次に、製造例9で得たアクリルエマルション(AE)200部に「サイメル327」(メラミン樹脂、商品名、サイテックインダストリ−ズ社製、固形分90%)33部及び製造例10で得たポリエステル水溶液(PE)57部を加え、15分間攪拌してから、上記の顔料分散液51部を加え、30分間攪拌した後、脱イオン水及び2−(ジメチルアミノ)エタノールを加えて、pH8,4、固形分含有率25%の水性メタリック塗料(X1)を得た。

実施例11〜18、比較例6〜10
実施例10において、実施例1で得た顔料分散用樹脂(P1)の代わりに、実施例2〜9で得た顔料分散用樹脂(P2)〜(P9)又は比較例1〜5で得た顔料分散用樹脂(P10)〜(P14)を使用する以外は、実施例10と同様にして、pH8.4〜8.5、固形分含有率25%の水性メタリック塗料(X2)〜(X14)を得た。

塗料性能試験
ガス発生量: 実施例10〜18及び比較例6〜10で得た水性メタリック塗料(X1)〜(X14)(いずれも固形分含有率は25%であり、塗料中のアルミニウム顔料の含有率は2.8%である)150gを容量300mlの三角フラスコの底部に入れ、この容器中央部にメスピペットをほぼ垂直方向に差し込み、メスピペットの下端部が水性メタリック塗料中に没し且つフラスコ底部との間に約5mmの隙間があるようにして保持する。そして、メスピペットの外側と三角フラスコの蓋部内側をコルク栓などで密閉し、外部から遮断しておき、メスピペットの内側は外部と連通させておく。それを40℃で10日間
貯蔵し、貯蔵中に発生したガスの圧力で押し上げられたメスピペット内部の水性メタリック塗料の体積をメスピペットの目盛りから読み取る。その結果を表2に示す。

塗膜性能試験
カチオン電着塗料及び中塗り塗料を塗装し加熱硬化せしめた鋼板に、実施例10〜18及び比較例6〜10で得た水性メタリック塗料(X1)〜(X14)を、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、80℃、5分のプレヒートをしてから、マジクロンKINO−1200(関西ペイント社製、商品名、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料)を乾燥膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して両塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。得られた各試験板について、下記の塗膜試験方法により評価を行なった。評価結果を表2に示す。
【0098】
(塗膜試験方法)
層間付着性: 塗装鋼板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存数を調べた。○は100個残存、△は99〜90個残存、×は89個以下残存していたことを示す。
耐水性: 塗装鋼板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、室温で12時間乾燥してから、上記の層間付着性と同様にして試験を行なった。なお、評価基準も同じである。
メタリック外観: 目視で評価する。○はメタリックムラの発生が全くもしくはほとんど認められない、△はメタリックムラの発生が少し認められる、×はメタリックムラの発生が多く認められることを示す。
【0099】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
りん酸基と、下記一般式(I)
【化1】

[式中、R1は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、mは1〜30の整数であり、m個の繰り返し単位
【化2】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
及び/又は下記一般式(II)
【化3】

[式中、R2は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、nは1〜30の整数であり、n個の繰り返し単位
【化4】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
で示されるユニットを含有するエチレン性不飽和モノマー(A)、及び
その他のエチレン性不飽和モノマー(B)
を共重合せしめることにより得られる顔料分散用樹脂。
【請求項2】
エチレン性不飽和モノマー(A)が下記一般式(III)
【化5】

[式中、R3、は炭素数1〜10のアルキレン基を表し、iは1〜30の整数であり、i個のオキシアルキレン単位
【化6】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
で示されるユニットをさらに含有するエチレン性不飽和モノマーである請求項1に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項3】
エチレン性不飽和モノマー(A)が下記一般式(IV)
【化7】

又は下記一般式(V)
【化8】

[式中、Xは−O−又は−NH−を表し、kは0〜30の整数であり、R4は水素原子又はメチル基を表し、R5は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、m個の繰り返し単位
【化9】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、k個のオキシアルキレン単位
【化10】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、R1、R3及びmは前記と同じ意味を有する]
で示されるエチレン性不飽和モノマーである請求項1又は2に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項4】
エチレン性不飽和モノマー(A)が下記一般式(VI)
【化11】

又は下記一般式(VII)
【化12】

[式中、X、R2、R3、R4、R5、n及びkは前記と同じ意味を有し、n個の繰り返し単位
【化13】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、k個のオキシアルキレン単位
【化14】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよい]
で示されるエチレン性不飽和モノマーである請求項1又は2に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項5】
エチレン性不飽和モノマー(A)が下記一般式(VIII)
【化15】

又は下記一般式(IX)
【化16】

[式中、X、R1、R2、R4、R5、m及びnは前記と同じ意味を有し、m個の繰り返し単位
【化17】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、n個の繰り返し単位
【化18】

は同じであってももしくは互いに異なっていてもよく、m個の繰り返し単位
【化19】

とn個の繰り返し単位
【化20】

の配列順序はブロックであってもランダムであってもよい]
で示されるエチヒン性不飽和モノマーである請求項1又は2に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項6】
エチレン性不飽和モノマー(A)対その他のエチレン性不飽和モノマー(B)の質量比が10/90〜70/30の範囲内にある請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項7】
その他のエチレン性不飽和モノマー(B)が、その成分の少なくとも一部として、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料分散用樹脂。
【請求項8】
15〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有する請求項7に記載の顔料分散用樹脂。

【公開番号】特開2007−126607(P2007−126607A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322500(P2005−322500)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】