説明

顔料粒状物、その製造方法及び使用

40〜65質量%の顔料と、少なくとも10質量%の一般式(I)CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H{ここで、n=8〜18、p=1〜4及びm=35〜100である}で示される化合物とを含有しており、一般式Iの化合物対顔料の質量比が、0.0021g/m2を乗じた前記顔料のSTSA表面積[単位:m2/g]以上であり、かつ前記顔料粒状物の質量加重平均粒度が<20μmである、顔料粒状物。前記顔料粒状物は、前記顔料と一般式Iの化合物とを、溶剤中に分散させ、引き続き得られた分散液を乾燥させることにより製造されることができる。これらは、水をベースとするペイント系及び塗装系、エマルションペイント、印刷インキ、インキシステム及びコーティングシステムにおいて着色するため及び/又は帯電防止加工するために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料粒状物、その製造方法及びその使用に関する。
【0002】
粉末顔料は、熱可塑性プラスチック及び熱硬化性プラスチックの着色に使用される。粉末顔料の利点は、これらがキャリヤー材料に依存しないことである。しかしながらこの利点は、しばしば分散性を犠牲にして達成される。
【0003】
分散性を改善するために、前記顔料は、樹脂(DE 2540355)で又はポリマー(US 3133893)で被覆される。
【0004】
特殊な乾燥法は、EP 0036520から知られており、その際に微粒状の顔料と、臨界温度が前記顔料の分解温度を下回る液体とが、加圧下に、前記液体の臨界温度を上回る温度に加熱され、ついで放圧され、その際に温度は常に、前記液体の露点曲線を上回り維持される。
【0005】
そのうえ、EP 0282855からは、有機顔料及び/又はカーボンブラックと、アルキルベンゼンスルホナート又は特殊なスルホコハク酸エステルの中からの界面活性剤とを含有し、かつ、場合により湿式粉砕後に、水性媒体からのスプレー乾燥又は凍結乾燥により乾燥される顔料配合物が知られている。
【0006】
EP 1103173からは、顔料とポリエーテルポリオールとを含有する、種を着色するための顔料配合物が知られている。
【0007】
EP 857764からは、無機顔料と、顔料を基準として0.1〜10質量%の量の水溶性親水性又は疎水性/親水性の助剤とを含有し、かつ50〜1500μmの平均粒度を有する無機顔料粒状物が知られている。
【0008】
さらに、EP 1090081からは、顔料と式[CH3(CH2n][CH3(CH2m]CH[(CH2pO(AO)qH]の分散剤とを含有する水性分散液が知られている。
【0009】
さらに、US 6063182及びDE 19731572からは顔料配合物が、かつUS 5837044からはインクジェットインキが、知られている。
【0010】
WO 2003055959からは、粒子状固体と、水素とは異なる少なくとも1つの末端基を有するポリグリコールもしくはジオール又はアルキルスルホナートの群から選択される化合物0.05〜9質量%とを含有する粒子状固体配合物が知られている。
【0011】
さらに、US 2005090609からは、ポリエーテルをベースとする少なくとも1つの非イオン表面活性添加剤をとりわけ10〜40質量%含有する、50〜5000μmの平均粒度及び≦15m2/gのBET表面積を有する顔料粒状物が知られている。
【0012】
これらの知られた顔料配合物は、分散挙動が、水又は水ベースの塗装系中で添加剤を添加せずには劣悪であるという欠点を有する。
【0013】
DE 102007026551からは、少なくとも1つの顔料と、一般式CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H{ここで、n=8〜18、p=1〜4及びm=15〜25である}の少なくとも1つの化合物とを含有する顔料配合物が知られている。
【0014】
本発明の課題は、水又は水ベースの塗装系中での良好な分散挙動を、前記塗料の極めて良好な彩色性(Koloristik)と同時に有し、かつ架橋された塗膜中で、顔料粒状物の成分のうちの1つも浮きまだら(Aufschwimmen)(塗膜の表面への移行)が起こらない、顔料粒状物を製造することである。
【0015】
本発明の対象は、顔料粒状物であって、この顔料粒状物が、前記顔料粒状物を基準として40〜65質量%、好ましくは43〜63質量%、特に好ましくは45〜60質量%、極めて特に好ましくは45〜56質量%の顔料と、前記顔料粒状物を基準として、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも12質量%、特に好ましくは少なくとも15質量%、極めて特に好ましくは少なくとも20質量%の一般式I
CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H I
{ここで、n=8〜18、好ましくはn=10〜18、特に好ましくはn=12〜17、極めて特に好ましくはn=14〜16、p=1〜4、好ましくはp=2、及びm=35〜100、好ましくはm=35〜90、特に好ましくはm=40〜80、極めて特に好ましくはm=45〜70である}で示される化合物とを含有し、一般式Iの化合物対顔料の質量比が、0.0021g/m2を乗じた前記顔料のSTSA表面積[単位:m2/g]以上であり、かつ前記顔料粒状物の質量加重平均粒度が、<20μm、好ましくは<15μm、特に好ましくは<12μm、極めて特に好ましくは<9μmであることにより特徴付けられている。
【0016】
一般式Iの化合物対顔料の質量比についての下限を定めることにより、一般式Iの化合物での顔料表面積(STSA表面積)の最小限の被覆が保証されることができる。
【0017】
前記顔料のSTSA表面積は、385m2/g以下、好ましくは380m2/g以下であることができる。
【0018】
STSA表面積は、顔料カーボンブラック以外の顔料については、ASTM D 6556 (2004)に従い測定される。顔料カーボンブラックについては、その試料は、ASTM D 6556 (2004)とは相違し、105℃で乾燥される。
【0019】
前記顔料粒状物の質量加重平均粒度は、ISO 13320-1に従って、レーザー回折分光法を用いて測定される。この測定は、Sympatec社製のレーザー回折分光計HELOS中で行われる。前記顔料粒状物の分散は、1バールの分散空気圧で行われる。粒度分布の評価は、フラウンホーファー理論に従い行われる。
【0020】
顔料として、カーボンブラック、カーボンエーロゲル又は有色顔料が使用されることができる。
【0021】
有色顔料として、例えば黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、スミレ色顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料又は茶色顔料が使用されることができる。有色顔料として、無機青色顔料、例えば紺青、群青、コバルトブルー又は混相青色顔料(Mischphasenblaupigmente)、又は有機青色顔料、例えばフタロシアニンブルー又はインダンスレンブルーが、使用されることができる。
【0022】
カーボンブラックとして、ファーネスブラック、ガスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、WO 98/45361又はDE 19613796から知られたSi含有カーボンブラック、DE 19521565から知られたインバージョンブラック(Inversionsrusse)、及びWO 98/42778から知られた金属含有カーボンブラックが使用されることができる。カーボンブラックとして、8〜80nm、好ましくは10〜35nmの平均一次粒子直径、及び40〜200ml/100g、好ましくは60〜150ml/100gのOAN数を有する顔料カーボンブラックが好ましくは使用されることができる。
【0023】
ガスブラックは、8〜30nm、好ましくは10〜25nmの平均一次粒子直径を有することができる。ガスブラックは、2〜5、好ましくは3.5〜4.5のpH値を有することができる。
【0024】
ファーネスブラックは、8〜80nm、好ましくは10〜50nmの平均一次粒子直径、及び40〜200ml/100g、好ましくは50〜180ml/100gのOAN価を有することができる。
【0025】
カーボンブラック顔料の油吸収価(OAN)の測定は、ASTM D 2414に従って行われる。ASTM D 2414 (2000)とは相違し、カーボンブラック顔料は105℃で恒量まで乾燥され、かつ前記油価は、カーボンブラック顔料100gあたりのmlで記載される。
【0026】
顔料カーボンブラックのpH値の測定は、DIN ISO 787/9 (1995)に従って行われる。DIN ISO 787/9 (1995)とは相違し、脱イオン水が使用され(使用前に煮沸されない)、10%のカーボンブラック顔料濃度で操作され、カーボンブラック顔料懸濁液は、1分間撹拌され、湿潤のために、エタノール5滴が一様に常に添加され、かつpH値は、表示が一定になった後に読み取られる。
【0027】
平均一次粒度は、DIN 53206に従い測定される。粒度計数装置TGZ3を用いる校正されたTEM写真に基づく平均一次粒度の直接測定である。
【0028】
顔料として使用されるカーボンエーロゲルは、20〜1500m2/g、好ましくは100〜1200m2/g、特に好ましくは400〜900m2/gのBET値を有することができる。
【0029】
BET表面積の測定は、DIN ISO 9277 (1995)に従い、QUANTACHROME社製の収着測定装置NOVA e2000中で行われる。
【0030】
顔料として使用されるカーボンエーロゲルは、0.005〜5cm3/g、好ましくは0.05〜3cm3/g、特に好ましくは0.2〜2cm3/gのメソ孔容積を有することができる。
【0031】
顔料として使用されるカーボンエーロゲルは、1.8〜50nm、好ましくは5〜45nm、特に好ましくは10〜35nmの平均メソ孔径を有することができる。
【0032】
メソ孔容積及び細孔半径分布の測定は、DIN 66134 (1998)に従い、BJH法により0.99〜0.34の相対圧力範囲p/p0中でプロットされた等温線の脱着データから行われる。
【0033】
さらに、顔料として使用されるカーボンエーロゲルは、0.01〜1.0cm3/g、好ましくは0.05〜0.5cm3/g、特に好ましくは0.1〜0.35cm3/gのミクロ孔容積を有することができる。
【0034】
ミクロ孔容積の測定は、DIN 66135-1、66135-2、66135-3 (2001)に従い、t−プロット法により行われる。t−プロットの評価は、その場合に、de Boerの等式により行われる。
【0035】
顔料として使用されるカーボンエーロゲルは、1μm未満、好ましくは0.05〜1μm、特に好ましくは0.1〜1μm、極めて特に好ましくは0.5〜0.95μmの平均粒度を有することができる。
【0036】
前記顔料は、顔料の混合物であることができる。
【0037】
一般式Iの化合物は、好ましくはCH3−(CH2n−CH2−O−[(CH22−O]m−H{ここで、n=10、12、14、16又は18及びm=35〜100である}であることができる。
例えば、一般式Iの化合物は、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH218−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH218−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]90−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]90−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]90−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]90−H又はCH3−(CH218−CH2−O−[(CH22−O]90−Hであることができる。
【0038】
前記顔料粒状物は、殺生物剤、pH調整剤、保湿剤、付着剤(Haftungsmittel)、流動助剤又は消泡剤を含有することができる。
【0039】
前記顔料粒状物は、沈降シリカ及び/又は熱分解シリカを含有することができる。
【0040】
本発明による顔料粒状物は、分散剤を含有することができる。前記分散剤は、非イオン性、カチオン性、アニオン性又は両性の湿潤剤であることができる。本発明による顔料粒状物は、一般式Iの化合物以外に、分散剤不含であることができる。
【0041】
前記顔料粒状物は、前記顔料粒状物を基準として、40〜65質量%、好ましくは43〜63質量%、特に好ましくは45〜60質量%、極めて特に好ましくは45〜56質量%の顔料、前記顔料粒状物を基準として、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも12質量%、特に好ましくは少なくとも15質量%、極めて特に好ましくは少なくとも20質量%の一般式I
CH3(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H I
{ここで、n=8〜18、好ましくはn=10〜18、特に好ましくはn=12〜17、極めて特に好ましくはn=14〜16、p=1〜4、好ましくはp=2、及びm=35〜100、好ましくはm=35〜90、特に好ましくはm=40〜80、極めて特に好ましくはm=45〜70である}で示される化合物、場合によりpH調整剤、場合により保湿剤、場合により付着剤、場合により消泡剤、場合により流動助剤及び場合により殺生物剤からなることができ、0.0021g/m2を乗じた前記顔料のSTSA表面積[単位:m2/g]以上の一般式Iの化合物対顔料の質量比を有することができ、かつ<20μm、好ましくは<15μm、特に好ましくは<12μm、極めて特に好ましくは<9μmの前記顔料粒状物の質量加重平均粒度を有することができる。
【0042】
前記顔料粒状物は、DIN ISO 787-2に従い測定される0〜20質量%、好ましくは0.1〜5質量%の残留水分を有することができる。
【0043】
前記顔料粒状物は、pH調整剤0〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%を含有することができる。
【0044】
前記顔料粒状物は、保湿剤0〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%を含有することができる。
【0045】
前記顔料粒状物は、付着剤0〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%を含有することができる。
【0046】
前記顔料粒状物は、消泡剤0〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%を含有することができる。
【0047】
前記顔料粒状物は、流動助剤0〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%を含有することができる。
【0048】
前記顔料粒状物は、殺生物剤0〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%を含有することができる。
【0049】
本発明の一実施態様において、前記顔料粒状物は、前記顔料粒状物を基準として、40〜65質量%、好ましくは43〜63質量%、特に好ましくは45〜60質量%、極めて特に好ましくは45〜56質量%の、ガスブラック、ファーネスブラック、ピグメントイエロー74、ピグメントブルー15:3及びピグメントレッド122の群から選択される顔料、前記顔料粒状物を基準として、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも12質量%、特に好ましくは少なくとも15質量%、極めて特に好ましくは少なくとも20質量%の一般式I
CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H I
{ここで、n=8〜18、好ましくはn=10〜18、特に好ましくはn=12〜17、極めて特に好ましくはn=14〜16、p=1〜4、好ましくはp=2、及びm=35〜100、好ましくはm=35〜90、特に好ましくはm=40〜80、極めて特に好ましくはm=45〜70である}で示される化合物、場合によりpH調整剤、場合により保湿剤、場合により付着剤、場合により消泡剤、場合により流動助剤及び場合により殺生物剤からなることができ、0.0021g/m2を乗じた前記顔料のSTSA表面積[単位:m2/g]以上の一般式Iの化合物対顔料の質量比を有することができ、かつ<20μm、好ましくは<15μm、特に好ましくは<12μm、極めて特に好ましくは<9μmの前記顔料粒状物の質量加重平均粒度を有することができる。
【0050】
本発明のさらなる対象は、本発明による顔料粒状物の製造方法であって、前記方法は、前記顔料粒状物を基準として、40〜65質量%、好ましくは43〜63質量%、特に好ましくは45〜60質量%、極めて特に好ましくは45〜56質量%の顔料、及び前記顔料粒状物を基準として、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも12質量%、特に好ましくは少なくとも15質量%、極めて特に好ましくは少なくとも20質量%の、0.0021g/m2を乗じた前記顔料のSTSA表面積[単位:m2/g]以上の一般式Iの化合物対顔料の質量比を有する一般式Iの化合物を、溶剤中に分散させ、かつ引き続き得られた分散液を乾燥させることにより特徴付けられている。
【0051】
溶剤として、水、グリコール、グリセリン、アルコール、ケトン又は前記の化合物の混合物が使用されることができる。
【0052】
分散は、ビードミル、プラネタリ形ミル、超音波、撹拌装置及び混合装置、ディソルバー、振盪ミキサー、例えばScandex、ローター−ステーター分散装置、例えばUltra-Turrax、又は高圧ホモジナイザーを用いて行われることができる。
【0053】
分散液の乾燥は、凍結乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥又はスプレー乾燥を用いて行われることができる。
【0054】
スプレー乾燥は、スプレードライヤー中で、並流、半向流(噴水式噴霧)中でのノズル噴霧又は向流ガス操作で行われることができる。
【0055】
スプレードライヤー中での噴霧は、その場合に、一流体ノズル又は多流体ノズルを用いて行われることができる。ノズル開口部は、0.01〜3mm、好ましくは0.05〜2mm、特に好ましくは0.1〜1.5mmであることができる。噴霧器媒体として、気体状物質、例えば空気、窒素、CO2及びアルゴンが、使用されることができる。ノズルとして、ソリッドコーンノズル、ホローコーンノズル、平射ノズル及び直射ノズルが使用されることができる。
【0056】
スプレードライヤー中への得られた分散液の噴霧は、外部場により補助されることができる。外部場は、電場又は音場、例えば超音波であることができる。
【0057】
スプレードライヤー中への得られた分散液の噴霧は、回転噴霧器、圧力噴霧器、振動噴霧器又はベンチュリノズルによって行われることができる。
【0058】
スプレードライヤー中への噴霧により発生される液滴の大きさは、50nm〜3mm、好ましくは100nm〜1mm、特に好ましくは200nm〜0.5mmであることができる。
【0059】
スプレー乾燥は、80〜500℃、好ましくは80〜250℃の入口温度で、実施されることができる。出口温度は、10〜150℃、好ましくは15〜90℃であることができる。
【0060】
スプレー乾燥は、0.03〜1.2バールのノズル下流の圧力レベルで実施されることができる。
【0061】
スプレー乾燥は、0.8〜8バールのノズル中の圧力レベルで実施されることができる。
【0062】
分散液の乾燥は、好ましくはスプレー乾燥により、80〜500℃、好ましくは80〜250℃の入口温度、0.8〜8バールのノズル中の圧力レベル及び0.01〜3mm、好ましくは0.05〜2mm、特に好ましくは0.1〜1.5mmのノズル開口部で、実施されることができる。
【0063】
本発明による顔料粒状物は、水をベースとするペイント系及び塗装系、エマルションペイント、印刷インキ、インキシステム及びコーティングシステムにおける着色及び/又は帯電防止加工に使用されることができる。
【0064】
本発明のさらなる対象は、本発明による少なくとも1つの顔料粒状物を含有する塗料である。
【0065】
本発明による顔料粒状物は、有利には、水又は水ベースの塗装系中での極めて良好な分散性("Stir in")を、前記塗料の極めて良好な彩色性と同時に有し、かつ架橋された塗膜中で、前記顔料粒状物のうちの1つの成分の浮きまだら(塗膜の表面への移行)を示さない。
【実施例】
【0066】
例1〜8:
例1〜8についての顔料粒状物の製造。
水性顔料分散液の組成は、第1表に示されている。
【0067】
【表1】

【0068】
Alkanol S 20は、Tego社の一般式Iの化合物{ここで、p=2、m=20及びn=16である}である(物質群:脂肪アルコールエトキシラート)。
【0069】
Alkanol S 60は、Tego社の一般式Iの化合物{ここで、p=2、m=60及びn=16である}である(物質群:脂肪アルコールエトキシラート)。
【0070】
Lutensol AO 30は、BASF AG社の一般式Iの化合物{ここで、p=2、m=30及びn=11〜13である}である(物質群:オキソ−アルコールエトキシラート)。
【0071】
Farbruss S 160は、Evonik Degussa GmbH社製の123m2/gの平均STSAを有するガスブラックである。
【0072】
Farbruss FW 171は、Evonik Degussa GmbH社製の380m2/gの平均STSAを有するファーネスブラックである。
【0073】
AMP 90は、Angus Chemie社製の2−アミノ−2−メチル−プロパノールである。
【0074】
2−ジメチルアミノエタノールは、Merck KGaA社製のアミンである。
【0075】
TEGO Antifoam XP 7001は、Evonik Tego社製の消泡剤である。
【0076】
Acticide MBSは、Thor Chemie社製の殺生物剤である。
【0077】
1.例1〜8用の湿潤剤溶液の調製
一般式Iの化合物をまず最初に溶融し、かつ使用すべき水を約45℃に加熱する。引き続き、双方の成分を第1表による量比のとおり、ディソルバーを用いて60min混合する。引き続き、湿潤剤溶液に、第1表に挙げられたpH調節剤、場合により消泡剤、イソプロパノール及び殺生物剤を添加する。
【0078】
2.調製された湿潤剤溶液中への前記顔料の導入/予備分散
多様な顔料分散液1〜8を製造するために、相応する顔料を、調製された湿潤剤溶液中へゆっくりと撹拌しながら導入する。
【0079】
3.分散
2の項で調製された顔料分散液1〜8を、酸化ジルコニウム粉砕体(0.75〜1.0mm、イットリウム安定化)を用いる型式CoBall-Mill MS12のFrymaKoruma社のアニュラーギャップボールミル(RSKM)を用いて、分散させる。粉砕体充填度は60%であり、周速は12m/sである。それぞれ9パスで走らせる。顔料分散液1〜8は、分散後に、低粘度の均質な分散液となる。
【0080】
4.スプレー乾燥
顔料分散液1〜8を、引き続きスプレー乾燥させる(Buechi 190 Mini Spray Dryer、ノズル開口部0.5mm、ノズル中の圧力レベル 2バール)。前記分散液を、ホースポンプを用い噴霧ノズルに搬送し、かつ200℃の入口温度及び80℃の出口温度で乾燥させる。沈殿はサイクロンによって行われる。
これから、第2表に計算された前記顔料粒状物の組成が生じる。前記計算の際に、助剤AMP 90、2−ジメチルアミノエタノール、Antifoam XP 7001、Acticide MBS及びイソプロパノールが、僅かな含分及び低い沸点に基づいて、スプレー乾燥後にもはや顧慮されることができないことが想定される。さらに、顔料粒状物の残留水分を測定し、かつ100%から減じられるので、残部は、前記顔料及び一般式Iの化合物に分けられる。
【0081】
【表2】

【0082】
塗料試験
本発明による塗料に対する参考塗料A〜Cとして、相応するFarbruss S160及びFW 171をベースとして従来の分散により製造される塗料が採用される。
【0083】
a.参考塗料A〜Cの製造
Farbruss S160及びFW 171用の参考塗料のミルベース(Reibgut)組成は、次の記載により行われる:
1.蒸留水 48.4g
2.Tego Dispers 760W、35% 20.8g
3.Tego Foamex 830 0.3g
4.AMP 90 0.1g
5.Farbruss 10.4g
合計 80.0g
カーボンブラック濃度 13%。
【0084】
Tego Dispers 760W、35%は、Tego社製の湿潤助剤及び分散助剤である。
【0085】
Tego Foamex 830は、Tego社製の消泡剤である。
【0086】
品目1〜4を、Skandex分散ビーカー(180ml、直径5.3cm、高さ12.5cm)中へ秤量し、かつスパチュラで均質化する。105℃で予備乾燥された顔料カーボンブラックを秤量して加え、スパチュラを用いて全量が湿潤されるまでかき混ぜる。
【0087】
ミルベースの予備分散を、5分間、実験室用ディソルバー(Pendraulik、LR 34)を用いて4000rpmで直径40mmの分散ディスクを用いて行う。
【0088】
予備分散後に、pH値制御を行う。pH値を、AMP 90の添加により8.5〜9.0の値に調節する。
【0089】
ついで、ミルベースに、Chromanit鋼ビーズ、直径3mmを540g添加する。
【0090】
Farbrussの粉砕を、実験室用振盪機(Skandex-分散機BA-S 20)を用いて行う。分散時間は60分である。実験室用振盪機の冷却は、その際に段階2に調節される。
【0091】
分散過程後に、ミルベースを、VA鋼ふるいを通してふるい分けし、かつ350mlプラスチックビーカー中に捕集する。引き続き、改めてpH値制御を実施し、かつpH値を、場合によりAMP 90の添加により、8.2〜8.7の値に調節する。
【0092】
希釈結合剤(Auflackbindemittel)として、Alberdingk & Boley社、Alberdingk U710(30%)のポリウレタン分散液が使用される。
【0093】
こうして製造されたミルベースの希釈(Auflackung)を、次の記載に従って行う:
例1〜3に対する参考塗料A及びB用の希釈:
1.ミルベース 5.6g
2.Alberdingk U710、30% 24.4g
合計 30g
カーボンブラック濃度、合計 2.4%。
【0094】
例4〜8に対する参考塗料C用の希釈:
1.ミルベース 5.6g
2.Alberdingk U710、30% 42.9g
合計 48.5g
カーボンブラック濃度、合計 1.5%。
【0095】
ミルベース量及び結合剤量を、記載された順序で180ml混合ビーカー中へ秤量し、引き続きスパチュラを用いて強力に10分間均質化する。1時間後に、つぶゲージ値(練磨度(Mahlfeinheit))の測定を、DIN EN ISO 1524に従ってErichsen社製のつぶゲージブロックを用いて行う。
【0096】
b.顔料粒状物1〜8をベースとする塗料の製造(第2表)
Skandex分散ビーカー(180ml、直径5.3cm、高さ12.5cm)中に、脱塩水を装入し、それぞれ粒状物1〜8の1つを、スパチュラを用いて混ぜ入れる。引き続き、分散を、ディソルバーを用いて3000rpmで10分間、40mmの直径を有するディソルバーディスクを用いて行う。
【0097】
脱塩水対粒状物の比を、顔料15質量%の濃度となるように選択する。ペーストを一晩放置する。
【0098】
こうして製造された濃厚ペーストの希釈を、Alberdingk & Boley社製の希釈結合剤Alberdingk U710(30%)を用いて行う。
【0099】
例1〜3の塗料についての希釈のカーボンブラック濃度は、2.4%であり、例4〜8の塗料についての希釈のカーボンブラック濃度は、1.5%である。
【0100】
ペースト量及び結合剤量を180ml混合ビーカー中に秤量し、引き続き、強力にスパチュラを用いて10分間均質化する。1時間後に、つぶゲージ値(練磨度)の測定を、DIN EN ISO 1524に従ってErichsen社製のつぶゲージブロックを用いて行う。
【0101】
c. aによる参考塗料A〜C及びbによる塗料の塗布及び彩色性の測定
完成した塗料を、ガラスプレート(130×90×1mm)上に、200μmのスリット高さを有するコーティングバー(Lackhantel)を用いて、湿式で、均一な張力及び圧力で付着させる。そのためには、完成した塗料2mlを、プラスチックピペットを用いて塗膜用に取り出し、かつ長さ5cm及び幅約1cmの筋(Streifen)中でガラスプレート上へ施与する。塗料筋中に気泡が存在しないことに顧慮されるべきである。コーティングバーを塗料筋上に載せ、かつ均一にプレート全体へ付着させる。長さが約10cm及び幅が6cmである塗膜が生成される。
【0102】
付着させた後に、ガラスプレート上にある湿った塗膜を、室温で30分間排気し、引き続きコーティングされたガラスプレートを、80℃で30分間強制乾燥させる。
【0103】
彩色性の測定を、測定装置Pausch Q-Color 35及びSoftware WinQC+を用いて実施する。全ての測定を、下からコーティングされたガラスを通して行う。
【0104】
彩色的データの計算:
色相から独立した黒値My及び色相に依存した黒値Mc:
測定(イルミナントD65/10)の三刺激値Yからは、まず最初に色相から独立した黒値My(等式1)を計算する:
【数1】

【0105】
引き続き、色相に依存した黒値(等式2)を計算する:
【数2】

n/Zn/Yn(DIN 6174)=イルミナント及び観察者を基準とした座標原点の三刺激値(DIN 5033/第7部、イルミナントD65/10゜)
n=94.81 Zn=107.34 Y=100.0
X/Y/Z =試験体の測定から計算される三刺激値。
【0106】
絶対色相寄与度(Absoluter Farbtonbeitrag)dM:
黒値Mc及びMyから、絶対色相寄与度dM(等式3)を計算する:
(3)dM=Mc−My。
【0107】
第3表において、顔料粒状物1〜8の塗料試験の結果が、参考塗料の塗料試験の相応する結果と対比されている。色の深みMYの値が大きければ大きいほど、相応する塗膜は色がますます深くなる("より黒くなる")。底色dMの値が大きければ大きいほど、塗膜中の顔料分布がますます安定になり、かつ黒色の塗膜がますます青色に見える。積極的な評価のためには、相応する顔料粒状物をベースとする塗膜の色の深みMY及び底色dMの値が少なくとも、相応する参考塗膜の色の深み値MY及び底色dMのレベルになければならない。さらに、練磨度は、10μm未満の値を有するべきであり、かつ光学的に良好な表面が斑点及び凝集された顔料粒子を有さずに存在するべきであり、かつ式Iの化合物は、48hの貯蔵時間後に塗膜の表面に移行して(浮きまだらが生じて)はならない。
【0108】
【表3】

【0109】
参考塗料1は、参考塗料Aの彩色性を達成しない。色の深みMY及び青色の底色dMは、達成されない。表面は良ではなく、かつm=20である式Iの化合物の浮きまだらが生じる。
【0110】
参考塗料2は、参考塗料Bの彩色性を達成しない。色の深みMYは達成されない。その表面は粗く、目に見える顔料アグロメレートを伴う。式Iの化合物対顔料カーボンブラックの比は低すぎる。m=30である化合物Iの浮きまだらが生じる。
【0111】
参考塗料3は、参考塗料Bの彩色性をほぼ達成する。練磨度は良である。式Iの化合物対顔料カーボンブラックの比は良である。しかしながら、m=30である式Iの化合物の浮きまだらが依然として生じる。
【0112】
m=60である式Iの化合物を含有する参考塗料4では、もはや浮きまだらは生じない。しかしながら、式Iの化合物対顔料カーボンブラックFW 171の比は小さすぎる。塗膜の表面は斑点があり、練磨度は良ではなく、かつ参考塗料Cの彩色的なデータは達成されない。
【0113】
本発明による塗料5〜8は、参考塗料Cの彩色的なデータよりも優れている。練磨度は<10μmであり、かつ塗膜の表面は斑点がなく、かつ良である。式Iの化合物の浮きまだらは生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料粒状物であって、
前記顔料粒状物を基準として40〜65質量%の顔料と、前記顔料粒状物を基準として少なくとも10質量%の一般式I
CH3−(CH2n−CH2−O−[(CH2p−O]m−H I
{ここで、n=8〜18、p=1〜4及びm=35〜100である}で示される化合物とを含有しており、一般式Iの化合物対顔料の質量比が、0.0021g/m2を乗じた前記顔料のSTSA表面積[単位:m2/g]以上であり、かつ前記顔料粒状物の質量加重平均粒度が<20μmである
ことを特徴とする、顔料粒状物。
【請求項2】
顔料が、有色顔料、カーボンエーロゲル又はカーボンブラックである、請求項1記載の顔料粒状物。
【請求項3】
一般式Iの化合物が、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH218−CH2−O−[(CH22−O]35−H、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH218−CH2−O−[(CH22−O]60−H、CH3−(CH210−CH2−O−[(CH22−O]90−H、CH3−(CH212−CH2−O−[(CH22−O]90−H、CH3−(CH214−CH2−O−[(CH22−O]90−H、CH3−(CH216−CH2−O−[(CH22−O]90−H又はCH3−(CH218−CH2−O−[(CH22−O]90−Hである、請求項1又は2記載の顔料粒状物。
【請求項4】
残留水分が、0〜20質量%である、請求項1記載の顔料粒状物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の顔料粒状物の製造方法であって、
前記顔料粒状物を基準として40〜65質量%の顔料と、前記顔料粒状物を基準として少なくとも10質量%の、0.0021g/m2を乗じた前記顔料のSTSA表面積[単位:m2/g]以上の一般式Iの化合物対顔料の質量比を有する一般式Iの化合物とを、溶剤中に分散させ、引き続き得られた分散液を乾燥させる
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の顔料粒状物の製造方法。
【請求項6】
水をベースとするペイント系及び塗装系、エマルションペイント、印刷インキ、インキシステム及びコーティングシステムにおいて着色するため及び/又は帯電防止加工するための、請求項1から4までのいずれか1項記載の顔料粒状物の使用。
【請求項7】
塗料であって、請求項1から4までのいずれか1項記載の少なくとも1つの顔料粒状物を含有することを特徴とする、塗料。

【公表番号】特表2012−509969(P2012−509969A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537941(P2011−537941)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065500
【国際公開番号】WO2010/060858
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511004139)エボニック カーボンブラック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Carbon Black GmbH
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4, D−63457 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】