説明

顔料調製物、その製法、ならびにその使用

【課題】凝縮傾向が少なく、特に良好なプリント開始特性を有する顔料調製物の提供。
【解決手段】a)少なくとも1種の顔料、
b)アルコキシ化、特にエトキシ化およびプロポキシ化および/またはブトキシ化された少なくとも1種のポリエチレンイミン、および
c)次のもの
A)スルホン化芳香族、
B)アルデヒドおよび/またはケトンおよび場合により
C)スルホン化されていない芳香族、尿素および尿素誘導体から成る群から選択される1種以上の化合物
をベースとする少なくとも1種の縮合生成物
を有する顔料調製物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規顔料調製物、それらの製法ならびにそれらの使用、特にインクジェット印刷用の記録液を製造するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性有機染料をベースとするだけではなく、有機着色顔料をベースとするインクジェット印刷用の水性印刷インキは周知である。顔料は、染料よりも著しく高い光安定性とオゾン安定性を有するプリントを提供する。この用途に最も重要な顔料は、カーボンブラックである。それというのも、カーボンブラックインクジェットプリントは、ブラック染料のようにではなく、記録の色が褪せない、すなわち光安定性および耐水性であるからである。
【0003】
しかし、顔料インキの幅広い使用は、幾つかの場合に、それらの分散特性により防止される。顔料粒子は、最適に分散していない形で凝縮し得るからである。このことは、粒度分布を変化し、これが不均一となり、かつこれがプリント開始(start-of-print)問題を生じ、プリント品質を下げ得る。
【0004】
カーボンブラック粒子は、Robert Lustenader(ink jet world 01/1995, 75ページ以降)により"Color Pigment Encapsulation"に記載されているように封入してそれらの凝縮傾向を減少させることができる。
【0005】
さらなるアプローチは、顔料を機能化することにある(US-A-5554739およびUS-A-5922118)。しかし、欠点は流動する傾向の高さと付随する水の通さなさである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US-A-5554739
【特許文献2】US-A-5922118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、凝縮傾向が少なく、特に良好なプリント開始特性を有する顔料調製物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、
a)少なくとも1種の顔料、
b)アルコキシ化、特にエトキシ化およびプロポキシ化および/またはブトキシ化された少なくとも1種のポリエチレンイミン、および
c)次のものをベースとする少なくとも1種の縮合生成物
A)スルホン化芳香族、
B)アルデヒドおよび/またはケトンおよび場合により
C)スルホン化されていない芳香族、尿素および尿素誘導体から成る群から選択される1種以上の化合物
を有する顔料調製物により達成された。
【0009】
有効な顔料には、無機顔料だけではなく、有機顔料も含まれる。
【0010】
本明細書中で使用される"有機顔料"は、バット染料も包含する。顔料調製物は、種々の有機または種々の無機顔料または有機顔料と無機顔料の混合物を含むと解釈される。
【0011】
適切な顔料(a)の例は、次のものである:
有機顔料:
−モノアゾ顔料:
C.I.ピグメントブラウン25;
C.I.ピグメントオレンジ5、13、36および67;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、184、210、245および251;
C.I.ピグメントイエロー1、3、73、74、65、97、151および183;
−ジスアゾ顔料:
C.I.ピグメントオレンジ16、34および44;
C.I.ピグメントレッド144、166、214および242;
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176および188、
−アンタントロン(anthanthrone)顔料:
C.I.ピグメントレッド168
(C.I.バットオレンジ3);
−アントラキノン顔料:
C.I.ピグメントイエロー147および177;
C.I.ピグメントバイオレット31;
−アントラピリミジン顔料:
C.I.ピグメントイエロー108
(C.I.バットイエロー20)、
−キナクリドン顔料:
C.I.ピグメントレッド122、202および206;
C.I.ピグメントバイオレット19;
−キノフタロン顔料:
C.I.ピグメントイエロー138;
−ジオキサジン顔料:
C.I.ピグメントバイオレット23および37;
−フラバントロン顔料:
C.I.ピグメントイエロー24;
(C.I.バットイエロー1)
−インダントロン顔料:
C.I.ピグメントブルー60;
(C.I.バットブルー4)および64(C.I.バットブルー6);
−イソインドリン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ69;C.I.ピグメントレッド260;C.I.ピグメントイエロー139および185;
−イソインドリノン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ61;C.I.ピグメントレッド257および260;C.I.ピグメントイエロー109、110、173および185;
−イソビオラントロン顔料:
C.I.ピグメントバイオレット31;
(C.I.バットバイオレット1);
−金属錯体顔料:C.I.ピグメントイエロー117、150および153;C.I.ピグメントグリーン8;
−ペリノン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ43;
(C.I.バットオレンジ7);
C.I.ピグメントレッド194;
(C.I.バット15);
−ペリレン顔料:
C.I.ピグメントブラック31および32;C.I.ピグメントレッド123、149、178、179、(C.I.バットレッド23)、190および240;C.I.ピグメントバイオレット29;
−フタロシアニン顔料:
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6および16;
C.I.ピグメントグリーン7および36;
−ピラントロン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ51;C.I.ピグメントレッド216;
(C.I.バットオレンジ4);
−チオインジゴ顔料:
C.I.ピグメントレッド88および181;
(C.I.バットレッド1);
C.I.ピグメントバイオレット38;
(C.I.バットバイオレット3);
−トリアリールカルボニウム顔料:
C.I.ピグメントブルー1、61および62;
C.I.ピグメントグリーン1;C.I.ピグメントレッド81、81:1および169;
−C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック);
−C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー);
−C.I.ピグメントブラウン22。
バット染料(既に先に挙げた染料以外のもの):
−C.I.バットイエロー2、3、4、5、9、10、12、22、26、33、37、46、48、49および50;
−C.I.バットオレンジ1、2、5、9、11、13、15、19、26、29、30および31;
−C.I.バットレッド2、10、12、13、14、16、19、21、31、32、37、41、51、52および61;
−C.I.バットバイオレット2、9、13、14、15、17および21;
−C.I.バットブルー1(C.I.ピグメントブルー66)、3、5、10、12、13、14、16、17、18、19、20、22、25、26、29、30、31、35、41、42、43、64、65、66、72および74;
−C.I.バットグリーン1、2、3、5、7、8、9、13、14、17、26、29、30、31、32、33、40、42、43、44および49;
−C.I.バットブラウン1、3、4、5、6、9、11、17、25、32、33、35、38、39、41、42、44、45、49、50、55、57、68、72、73、80、81、82、83および84、
−C.I.バットブラック1、2、7、8、9、13、14、16、19、20、22、25、27、28、29、30、31、32、34、36、56、57、58、63、64および65;
無機顔料:
−白色顔料:
二酸化チタン(C.I.顔料ホワイト6)、亜鉛ホワイト、ピグメントグレード酸化亜鉛;硫酸亜鉛、リトポン;鉛ホワイト;
−ブラック顔料:
酸化鉄ブラック(C.I.顔料ブラック11)、鉄マンガンブラック、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27);カーボンブラック
(C.I.ピグメントブラック7);
−着色顔料:
酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン;クロムグリーン(C.I.顔料グリーン48);コバルトグリーン(C.I.顔料グリーン50);ウルトラマリングリーン;
コバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28および36);ウルトラマリンブルー;アイアンブルー(C.I.ピグメントブルー27);マンガンブルー;ウルトラマリンバイオレット;コバルトおよびマンガンバイオレット;
酸化鉄レッド(C.I.ピグメントレッド101);カドミウムスルホセレニド(C.I.ピグメントレッド108);モリブデートレッド(C.I.ピグメントレッド104);ウルトラマリンレッド;
酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネルおよびコランダムフェーズ(C.I.顔料ブラウン24、29および31)、クロムオレンジ;酸化鉄イエロー(C.I.ピグメントイエロー42);ニッケルチタンイエロー(C.I.ピグメントイエロー53;C.I.ピグメントイエロー157および164);クロムチタンイエロー;カドミウムスルフィドおよびカドミウム亜鉛スルフィド(C.I.ピグメントイエロー37および35);クロムイエロー(C.I.ピグメントイエロー34)、亜鉛イエロー、アルカリ金属土類クロメート;ナポリイエロー;ビスマスバナデート(C.I.ピグメントイエロー184);
−干渉顔料:
コーティング金属プレート(platelet)を基礎とする金属効果顔料;酸化金属被覆マイカプレートをベースとする真珠光沢顔料;液晶顔料。
【0012】
本発明に関連する有利な顔料は、モノアゾ顔料(特にレーキ化BONS顔料(laked BONS pigment)、Naphtol AS顔料)、ジアゾ顔料(特にジアリールイエロー顔料、ビスアセトアセトアニリド顔料、ジスアゾピラゾロン顔料)、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ペリノン顔料、フタロシナニン顔料、トリアリールカルボニウム顔料(アルカリブルー顔料、レーキ化ドーダミン)、錯体アニオンとの染料塩)、イソインドリン顔料およびカーボンブラック(特にガスブラックまたはファーネス)。
【0013】
特に有利な顔料の例は、とりわけ次のものである:C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.顔料バイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3および15:4、C.I.顔料ブラック7、C.I.ピグメントオレンジ5、38および43およびC.I.顔料グリーン7。
【0014】
特に有利な顔料は、5%の液体スラリー中で、pH≦4.5を有するカーボンブラックのタイプのもの、例えば、Spezialschwarz 4、Spezialschwarz 4a、Spezialschwarz 5、Spezialschwarz 6、Spezialschwarz 100、Spezialschwarz 250、Spezialschwarz 350、Spezialschwarz 550、ならびにFW 200、FW 2、FW 2V、FW 285、FW 1、FW 18、 S 160 、S 170タイプのピグメントグレードカーボンブラック、プリンテックスグレードV、140 U、140 U、ピグメントイエロー74、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:1、ピグメントレッド122である。
【0015】
有利な実施態様において、成分b)のアルコキシ化ポリエチレンイミンは、はじめにプロポキシ化またはブトキシ化され、次にエトキシ化されたポリエチレンイミンである。
【0016】
有利には、NH官能基1molあたりプロピレンオキシドまたはブチレンオキシド単位を1〜10mol、特に1〜6mol、とりわけ2〜5mol有するポリエチレンイミン(b)を挙げることができる。
【0017】
ポリエチレンイミン(b)のエチレンオキシド含量は、有利にNH官能基1molあたり、エチレンオキシド単位10〜40molの範囲内、より有利に15〜35molの範囲内、最も有利に20〜30molの範囲内である。
【0018】
特に適切であるポリエチレンアミンは、1molあたり、アルキレンオキシド単位少なくとも12、特に20〜45、とりわけ25〜40molを含有する。
【0019】
成分(b)を形成するアルコキシ化する前のポリエチレンイミンの平均分子量Mは、400〜25000g/molの範囲内、有利に1200〜20000g/molの範囲内、より有利には2000〜5000g/molの範囲内、最も有利に約3000g/molである。
【0020】
ポリエチレンイミン(b)は、WO-A-99/67352から公知であり、かつそこで記載されているように製造することができる。
【0021】
成分c)の縮合生成物:
"ベースとする"とは縮合生成物が、A、Bの他にさらなる反応体および場合によりCから製造されていてもよいことを意味する。しかし有利には、本明細書中の縮合生成物は、A、Bおよび場合によりCだけから製造される。
【0022】
本明細書中の成分A)のスルホン化芳香族には、スルホメチル化芳香族が含まれる。有利なスルホン化芳香族は次のものである:ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸、ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、スルホン化ジトリルエーテル、スルホメチル化4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、スルホン化ジフェニルメタン、スルホン化ビフェニル、スルホン化ヒドロキシビフェニル、特に2−ヒドロキシビフェニル、スルホン化テルフェニルまたはベンゼンスルホン酸。
【0023】
成分B)の有効なアルデヒドおよび/またはケトンには、特に脂肪族、脂環式ならびに芳香族のものが含まれる。有利には、脂肪族アルデヒドが挙げられ、特に有利にはホルムアルデヒドならびに3〜5個の炭素原子を有する他の脂肪族アルデヒドが挙げられる。
【0024】
成分C)に関して有効なスルホン化されていない芳香族には、例えば、フェノール、クレゾール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンまたはジヒドロキシジフェニルメタンが含まれる。
【0025】
有効な尿素誘導体には、例えば、ジメチルウレア、メラミンまたはグアニンが含まれる。
【0026】
成分c)に関して有利な縮合生成物は、
A)ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸、ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、スルホン化ジトリルエーテル、スルホメチル化4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、スルホン化ジフェニルメタン、スルホン化ビフェニル、スルホン化ヒドロキシビフェニル、特に2−ヒドロキシビフェニル、スルホン化テルフェニルおよびベンゼンスルホン酸から成る群から選択される少なくとも1種のスルホン化芳香族、
B)ホルムアルデヒドおよび場合により
C)フェノール、クレゾール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシジフェニルメタン、尿素、ジメチル尿素、メラミンおよびグアニジンから成る群から選択される1種以上の化合物
をベースにしているものである。
【0027】
縮合の経過の際に有利に得られる縮合生成物は、有利には1〜150、より有利に1〜20の範囲内および特に1〜5の範囲内である平均縮合度を有する。
【0028】
成分c)の縮合生成物は、水溶液または懸濁液または固体として、例えば、粉末または顆粒として、有利に噴霧乾燥した粉末または顆粒として使用することができる。
【0029】
成分c)の有利な縮合生成物は、使用成分の水溶液または懸濁液に対して、または使用成分c)の固体に対して、10質量%未満、有利に5質量%未満、特に1質量%未満の無機塩含量を有する。
【0030】
残留モノマーが少ないか、または残留モノマー不含である成分c)の縮合生成物を使用することも同様に有利である。
【0031】
"モノマーが少ない"とは、縮合生成物に対して、30質量%未満、有利に20質量%未満の残留モノマー含量、特に<10質量%、有利に<5質量%を意味する。本明細書において残留モノマーとは、縮合生成物を製造するために使用される反応体である。
【0032】
塩が少なく、かつ残留モノマーが少ないこのような縮合生成物は、例えば、EP-A 816406から公知である。
【0033】
成分c)の縮合生成物は、EP-A 1049745に記載されているように製造することができる。
【0034】
2成分b)とc)は、有利に成分a)の顔料に対して0.1質量%〜200質量%の範囲内、特に5質量%〜60質量%に範囲内である量で一緒に使用される。
【0035】
同様に、成分b)とc)を相互の質量比が1:50〜20:1、特に1:5〜1:1の範囲内で使用するのが有利である。
【0036】
本発明による顔料調製物は、成分e)の水または水性媒体を含有するのが有利である。このような水性顔料調製物は、有利に
− 成分a)の少なくとも1種の顔料0.2質量%〜50質量%、有利に1質量%〜35質量%、
− 成分b)とc)5質量%〜40質量%、および
− 水性媒体1質量%〜88質量%、有利に5〜60質量%
を含む。
【0037】
水性媒体は、有利に20℃で5g/lを上回る水への溶解度を有する単独の水または水と有機溶剤の混合物である。
【0038】
有利な有機溶剤には、次のものが含まれる:
脂肪族C〜C−アルコール、線状または分枝状のペンタンジオール、脂肪族ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、ポリオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、200〜2000g/molのモル質量を有するポリグリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、チオジグリコール、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルアセトアミドならびにジメチルホルムアミド。
【0039】
記載された溶剤の混合物も使用することができる。
【0040】
有機溶剤の量は、有利に0〜50質量%、特に0〜35質量%である。顔料調製物は、紙上での安定性、印刷特性および乾燥特性に不利な影響を与えない限り、さらに粘性調節剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、キサンタンを含有できる。
【0041】
顔料調製物は、pH調節剤、例えば、NaOH、KOH、アミノエタノール、アミノメチルプロパノール、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミンまたはメチルジエタノールアミンを含有することができる。
【0042】
本発明は、さらに、成分a)〜c)を水と一緒に均質化し、必要な場合には有利に1〜10μm膜、ガラスフィルターまたはペーパークロスを用いて粗い粒子を除去し、顔料調製物を場合により乾燥させることに特徴付けられる本発明による顔料調製物の製法を提供する。
【0043】
均質化は、有利に個々の成分をディソルバー中でビーティングし、次に例えば酸化ジルコニウムビーズを用いて高剪断ビーズミル中で粉砕することにより行われる。
【0044】
よって調製物は一般的に例えば1〜10μm膜またはガラス繊維フィルターを通して濾過される。
【0045】
本発明による顔料調製物は、優れた貯蔵安定性を示し、かつサーマルバブルジェット(HP, Encad)だけではなく、ピエゾプリンター(Epson, Canon, Mutoh)においても、優れた耐光性のプリントを提供する。さらに、これらは以下の利点:
プリントヘッドの変色がなく、ならびに高い耐水性および耐移染性を有する。
色測定の基礎は、次に見つけることができる:
Farbmessung BAYER Farben Revue, Sonderheft 3/2D(1986)。
【0046】
本発明による水性顔料調製物は、インクジェット法により、シートのような物または三次元に配置された支持体に印刷するために極めて有効であり、これは、インクジェットインキが支持体上に印刷され、かつ得られたプリントを所望に場合に固定することにより特徴付けられる。
【0047】
インクジェット法は、一般的に水性インキを用いて実施され、これは支持体上に小さな液滴として直接に噴霧される。方法の連続的形があり、その際、インキは一定の速度でノズルを通して圧縮され、かつジェットは、印刷すべきパターンに応じて電界により支持体上に向けられる。さらに断続インクジェット(interrupted ink jet)またはドロップ・オン・デマンド法があり、その際、インキは着色ドットが現れるべき部分にだけ放出され、後者の方法では、圧電結晶または加熱中空針(バブルまたはサーマルジェット法)のどちらかを用いて、インキ系上に圧力が放出され、その結果、インキ液滴が押し出される。これらの技法は、Text Chem. Color, Band 19(8), 23〜29ページ、1987および第21(6)巻27〜32ページに記載されている。
【0048】
本発明によるインクジェットインキは、特にバブルジェット法および圧電結晶を用いる方法に有効である。
【0049】
プリントを固定すべき場合には、公知の方法で、かつWO-A-99/01516に記載されているように進めることができ、例えばバインダーを、所望の場合には、分散液またはエマルションの形で印刷支持体のトップに塗布し、かつ硬化させるか、または印刷支持体上にフィルムを積層させることができる。
【0050】
これらのバインダーに関する更なる詳細については、WO-A-99/01516から引用することができる。
【0051】
本発明による水性顔料調製物は、あらゆる種類の支持体材料上に印刷することができる。例えば、支持体材料には次のものが含まれる:
−被覆されたまたは被覆されていないセルロース系材料、例えば、紙、厚紙、板紙、木材および木台、
−被覆されたまたは被覆されていない金属材料、例えば、アルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛またはそれらの金属の合金から構成されるホイル、シートまたは加工物、
−被覆されたまたは被覆されていないシリカ材料、例えば、ガラス、陶器およびセラミック、
−任意の種類の高分子材料、例えば、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンおよび相応するブロックおよびブロック化されていないコポリマー、生分解性ポリマーおよび天然ポリマー、例えば、ゼラチン、
−織物材料、例えば、繊維、ヤーン、トレッド、ニット、織布、不織布およびポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステルブレンド繊維、セルロース系材料、例えば、コットン、コットンブレンド繊維、ジュート、亜麻、大麻およびラミーから成る構成物、ビスコース、ウール、シルク、ポリアミド、ポリアミドブレンド繊維、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルミクロ繊維およびガラス繊維、
−スムースレザー、ナパレザーまたはスエードレザーの形の革(天然および人工の両方)、
−食料品および化粧品。
【0052】
有利には本発明の方法により得られた顔料調製物を、水および/または有機溶剤の添加によって、所望の色の濃さに調節することにより水性記録液体(インキ)が得られる。
【実施例】
【0053】
顔料インキ印刷試験用のベース液体:
1,5−ペンタンジオール15%
ポリグリコール200 10%
2−ピロリドン 5%
完全な脱イオン水70%。
【0054】
例1
エトキシ化−プロポキシ化ポリエチレンイミン7.7g(1.1%塩基窒素含量、63%ポリオキシエチレン含量および1%ポリオキシプロピレン含量を有する)および低い塩のナフタレンスルホン酸―ホルムアルデヒド縮合物25g(平均モル質量1000〜1500g/molを有する)を、完全な脱イオン水380g中に溶解させた。次に、BET表面積180m/gおよび5%水性スラリー(Spezialschwarz 4 Degussa)においてpH<4.5を有する酸性ガスカーボンブラック90gを、全体のカーボンブラックが湿るまでディソルバーを用いて撹拌供給した。エタノールアミンでpHを約7.5に調節した。
【0055】
次に懸濁液を1リットルの開いた撹拌装置ミル(stirred media mill)(Sussmeier社製、Brussel)に加え、かつ1.1〜1.4mmの酸化ジルコニウムビーズを用いて冷却しながら1時間粉砕した。必要な場合には粉砕の間にpHを再調節した。この顔料調製物を仕上げて印刷インキを製造した。
【0056】
顔料調製物6.94gとベース液体18.06gを混合し、5μmを通して濾過し、かつHP 890プリンターを用いて、普通紙と高級紙に印刷した。
【0057】
Cielab系で測定したY値は、普通紙で4.4であり、高級紙で2.2であった。24時間後の印刷のリスタートでは、何の問題も無かった。
【0058】
Yは、Cielab系の明るさのパラメーターであり、従ってカーボンブラックの色の濃さの尺度である。値が小さいほど支持体(この場合には紙)上のカーボンブラックは一層黒くなる。
【0059】
例2
オキシエチル化−オキシプロピル化ポリエチレンイミン85g(3%塩基窒素、55%ポリオキシエチレン、平均モル質量800g/molの3%ポリオキシプロピレンを有する)および脱塩したナフタレンスルホン酸―ホルムアルデヒド縮合物330g(平均モル質量1200g/mol)を、完全な脱イオン水3300g中に溶解させた。次に、Spezialschwarz 4 (Degussa)1250gを、ディソルバーを用いて撹拌供給し、エタノールアミンでpHを7.5に調節した。次に0.6〜0.8mmのケイ酸ジルコニウムビーズを用いて、分散液を冷却しながらAdvantis V−15ビーズミル中で再循環させて60分間粉砕した。必要に応じて粉砕の間にpHを再調節した。
【0060】
顔料調製物5gとベース液体20gを混合し、5μmを通して濾過し、かつHP 6122プリンターを用いて、普通紙と高級紙に印刷した。
【0061】
Cielab系で測定したY値は、普通紙で4.2であり、高級紙で1.9であった。24時間後の印刷のリスタートは、問題なく可能であった。
【0062】
例3
脱塩ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物(平均モル質量1000g/mol)20g、オキシエチル化−オキシプロピル化ポリエチレンイミン(1.1%塩基窒素、63%オキシエチレンフラクション、1%オキシプロピレンフラクション)6.5gを、完全な脱イオン水400g中に溶解させ、かつSpezialschwarz 4 75gを、ディソルバーを用いて徐々に撹拌供給した。エタノールアミンでpHを7.5に調節した。
次に、懸濁液を1リットルの開いた撹拌装置ミル(Sussmeier社製、Brussel)に加え、かつ1.1〜1.4mmの酸化ジルコニウムビーズを用いて冷却しながら1時間粉砕した。粉砕の間に必要な場合にはpHを再調節した。この顔料調製物を仕上げて印刷インキを製造した:
顔料調製物8.33gとベース液体16.67gを混合し、5μmを通して濾過し、かつEpson 760プリンターを用いて、普通紙と高級紙に印刷した。
【0063】
Cielab系で測定したY値は、普通紙で5.2であり、高級紙で1.7であった。24時間後の印刷のリスタートでは、何の問題も無かった。
【0064】
例4
オキシエチル化−オキシプロピル化ポリエチレンイミン(1.1%塩基窒素、63%オキシエチレンフラクション、1%オキシプロピレンフラクション)15.4gおよび脱塩ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物(モル質量1100g/mol)32gを完全な脱イオン水214.8g中に溶解させ、かつピグメントブルー15 140gを、ディソルバーを用いて撹拌供給した。エタノールアミンでpHを7.5に調節した。
【0065】
次に、懸濁液を1リットルの開いた撹拌装置ミル(Sussmeier社製、Brussel)に加え、かつ0.6〜0.8mmの酸化ジルコニウムビーズを用いて冷却しながら2時間粉砕した。必要な場合には粉砕の間にpHを再調節した。
この顔料調製物を仕上げて印刷インキを製造した:
顔料調製物1.43gをベース液体23.57gと混合し、5μmを通して濾過し、かつHP 890プリンターを用いて、HP普通紙(CHP 210)と高級紙に印刷した。ブリリアントプリントはストリークが無く、印刷のリスタートは容易に可能であった。
カラーローカス(colour locus)は、
普通紙においてL=62、a=−11、b=−45、C=46であり、
高級紙においてL=55、a=−16.4、b=−48、C=51であった。
【0066】
例5
オキシエチル化−オキシプロピル化ポリエチレンイミン5g(3%塩基窒素および55%オキシエチレンフラクションおよび3%オキシプロピレンフラクションおよび平均モル質量800g/molを有する)および脱塩したナフタレンスルホン酸―ホルムアルデヒド縮合物20g(平均モル質量1000g/mol)を、完全な脱イオン水229g中に溶解させた。次に、固形分50.8%を有するウォーターモイストC.I.ピグメントイエロー150 246gを、ディソルバーを用いて撹拌供給した。トリエタノールアミンでpHを7.5に調節した。
【0067】
次に、懸濁液を1リットルの開いた撹拌装置ミル(Sussmeier社製、Brussel)に加え、0.6〜0.8mmの酸化ジルコニウムビーズを用いて、冷却しながら2時間粉砕した。
【0068】
必要に応じて粉砕の間にpHを再調節した。
【0069】
顔料調製物を仕上げて印刷インキを製造した:
顔料調製物1.5gをベース液体23.5gと混合し、5μmを通して濾過し、かつHP 6122プリンターを用いて、普通紙と高級紙に印刷した。
普通紙のカラーローカスは、L=91、a=−5.4、b=60.5であり、
高級紙のカラーローカスは、L=88.6、a=−5.2、b=74.4であった。
ブリリアントプリントはストリークが無く、印刷のリスタートは容易に可能であった。
【0070】
例6
オキシエチル化−オキシプロピル化ポリエチレンイミン6g(1.1%塩基窒素、63%オキシエチレンフラクション、1%オキシプロピレンフラクション)および脱塩したナフタレンスルホン酸―ホルムアルデヒド縮合物26g(平均モル質量1100g/mol)を、完全な脱イオン水266.8g中に溶解させた。
【0071】
次に、ピグメントレッド122 100gをディソルバーを用いて撹拌供給し、トリエタノールアミンでpHを7.5に調節した。
【0072】
次に、懸濁液を1リットルの開いた撹拌装置ミル(Sussmeier社製、Brussel)に加え、0.6〜0.8mmの酸化ジルコニウムビーズを用いて、冷却しながら2時間粉砕した。必要に応じて粉砕の間にpHを再調節した。
【0073】
顔料調製物を仕上げて印刷インキを製造した:
顔料調製物2gをベース液体23gと混合し、5μmを通して濾過し、かつHP 890プリンターを用いて、普通紙と高級紙に印刷した。
【0074】
ブリリアントプリントはストリークが無く、印刷のリスタートは容易に可能であった。
普通紙のカラーローカスは、L=53、a=52、b=−17、C=54.4であり、
高級紙のカラーローカスは、L=44.5、a=62.3、b=−10、C=63.1であった。
【0075】
比較例(オキシアルキル化ポリエチレンイミンだけ)
オキシエチル化−オキシプロピル化ポリエチレンイミン415g(1.1%塩基窒素、63%ポリオキシエチレン、1%ポリオキシプロピレンを有する)を、完全な脱イオン水3300g中に溶解させた。次に、BET表面積180m/gを有する酸性ガスカーボンブラック(5%スラリーのpHは<4.5)1250gを、ディソルバーを用いて撹拌し、エタノールアミンでpHを7.5に調節した。
【0076】
次に、0.6〜0.8mmケイ酸ジルコニウムビーズを用いて分散液をAdvantis V 15ビーズミル中で再循環させながら60分間粉砕した。必要な場合には粉砕の間にpHを再調節した。
【0077】
顔料調製物5gとベース液体20gを混合し、5μmを通して濾過し、かつHP 6122プリンターを用いて、普通紙と高級紙に印刷した。
【0078】
Cielab系で測定したY値は、普通紙で9.5であり、高級紙で3であった。例2で達成されたY値と比較して、本発明による分散剤の組み合わせは、DE-A-10026466に記載されているようにアルコキシ化ポリエチレンイミンだけを使用するよりも、著しく良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の顔料、
b)アルコキシ化、特にエトキシ化およびプロポキシ化および/またはブトキシ化された少なくとも1種のポリエチレンイミン、および
c)次のもの
A)スルホン化芳香族、
B)アルデヒドおよび/またはケトンおよび場合により
C)スルホン化されていない芳香族、尿素および尿素誘導体から成る群から選択される1種以上の化合物
をベースとする少なくとも1種の縮合生成物
を有する顔料調製物。
【請求項2】
NH官能基1molあたりプロピレンオキシドまたはブチレンオキシド単位を1〜10mol、かつエチレンオキシド単位を10〜40mol有するアルコキシ化されたポリエチレンイミン(b)を有する請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項3】
成分(b)を形成するアルコキシ化する前のポリエチレンイミンの平均分子量Mは、400〜25000g/molの範囲内である、請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項4】
成分b)とc)は、成分a)の顔料に対して0.1質量%〜200質量%含有している、請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項5】
成分e)として、水性媒体1質量%〜88質量%含有している、請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項6】
成分a)〜c)を水の存在で均質化し、必要な場合には、有利に膜またはガラスフィルターにより粗い粒子を除去し、場合により顔料調製物を乾燥させることに特徴付けられる、請求項1に記載の顔料調製物の製法。
【請求項7】
インクジェット法により、シートのような物または三次元的に配置された支持体を印刷するための、請求項1に記載の顔料調製物の使用。

【公開番号】特開2011−127122(P2011−127122A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291903(P2010−291903)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2004−58005(P2004−58005)の分割
【原出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【氏名又は名称原語表記】Lanxess Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】D−51369 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】