説明

顔料調製物

顔料および分散剤樹脂を含んでいる固形顔料調製物であって、該組成物が、顔料と分散剤樹脂との合計重量当たり、少なくとも35重量%の少なくとも1の顔料および最大でも65重量%の分散剤樹脂を含んでいる顔料調製物において、該分散剤樹脂が、ペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有する、連鎖反応重合によって製造されたポリマー骨格を含んでおり、かつ該調製物内の顔料粒子が50nm〜5,000nmの範囲にある平均粒子サイズを有している顔料調製物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料および分散剤樹脂を含んでいる固形顔料調製物、顔料調製物を調製する方法、ならびに分散剤樹脂を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料および分散剤樹脂を含んでいる、ポンプ輸送可能な流動性の水性顔料調製物を、特許文献1は記載しており、該顔料調製物中の分散剤樹脂は、ペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有する、連鎖反応重合によって製造されたポリマー骨格を含んでいる。また、液状水性組成物を調製するために分散、すなわち高せん断力が必要とされる固形顔料調製物が記載されている。
【0003】
特許文献2は、ビニルモノマーおよびジカルボン酸のジエステルの交互単位を含んでいるコポリマーに関するものであり、該ジカルボン酸のジエステル中でエステル化形成基のうち少なくとも1がポリエーテル基を含んでおり、当該コポリマーは1未満の酸価を有している。該コポリマーを含有する液状顔料分散物および該分散物を配合されたコーティング組成物も記載されている。
【0004】
これら公知の液状顔料調製物は一般に、安定化のためのさらなる助剤、たとえば乾燥抑制剤、凍結防止剤、増粘剤、および皮張り防止剤を配合されなければならない。水性に基づいた顔料調製物は一般に、溶媒で媒体されたコーティング組成物には適していない。液状顔料調製物中の有機共溶媒の存在は望ましくない。というのは、水で媒体されたコーティング組成物中へと揮発性有機化合物を、これらの共溶媒は持ち込むからである。特許文献1に記載された固形粉状顔料調製物は、追加の分散段階なしに直接には塗料配合物中へと導入されることができない。したがって、該固形粉状顔料調製物は、撹拌混入型(stir−in)顔料としては適していない。撹拌混入型顔料は、多くの場合、顔料および分散剤樹脂を含んでいる、乾燥した一般に粉状の顔料高濃度物であり、これはマトリックス、たとえばコーティング組成物中へと追加の分散段階の必要なしに単純な撹拌によって混入されることができ、その故に撹拌混入型顔料調製物の名前がある。
【特許文献1】欧州特許1026178号明細書
【特許文献2】国際公開第96/14347号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色の特性および分散性に関しては液状配合物と同等であるが、上述の追加の助剤を必要とせず取り扱いがより容易な新規な顔料調製物の必要性がある。
【0006】
したがって、本発明は、撹拌混入型顔料として使用されて、安定に分散された顔料を有する塗料をもたらすことができる、顔料および分散剤樹脂を含んでいる顔料調製物を提供しようとする。該顔料調製物は、コーティング組成物中へと容易に混入され、その中で顔料は安定に分散されていなければならない。加えて、広範な顔料を有する顔料調製物を調製することが可能でなければならない。該顔料調製物は、優れた特性および安定性を有する塗料の調製を、とりわけ分散し安定化するのが困難な顔料の場合に許さなければならない。該顔料調製物は、水で媒体されたコーティング組成物ならびに溶媒で媒体されたコーティング組成物の着色に適していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は今、顔料および分散剤樹脂を含んでいる固形顔料調製物であって、該組成物が、顔料と分散剤樹脂との合計重量当たり、少なくとも35重量%の少なくとも1の顔料および最大でも65重量%の分散剤樹脂を含んでいる顔料調製物において、該分散剤樹脂が、ペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有する、連鎖反応重合によって製造されたポリマー骨格を含んでおり、かつ該調製物内の顔料粒子が50nm〜5,000nmの範囲にある平均粒子サイズを有している顔料調製物を提供する。
【0008】
プラスチックを着色するための自由流動性、非水性の微細に分割された組み合わせ物を、米国特許第3385808号が記載していることは注記されなければならない。該組み合わせ物は、顔料10〜80重量%および重合性ビニル化合物とポリアルキレンオキシドとのラジカル重合によって調製されたグラフトポリマー90〜20重量%から成っている。ポリアルキレンオキシドの上に重合性ビニル化合物をグラフトすることによって、該重合体は製造される。該グラフト反応は、連鎖反応重合によって製造されたペンダントのポリマー側基を有する親水性ポリアルキレンオキシド骨格を含んでいる樹脂を製造する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の顔料調製物は、撹拌混入型顔料として使用されることができる。すなわち、これは、コーティング組成物中へと容易に混入されて、その中で顔料が安定に分散されていることができる。加えて、広範な顔料を有する顔料調製物を調製することが可能である。該顔料調製物は、優れた特性および安定性を有する塗料の調製を、とりわけ分散し安定化するのが困難な顔料の場合に許す。追加の利点として、該顔料調製物は、水で媒体されたコーティング組成物ならびに溶媒で媒体されたコーティング組成物の着色に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の顔料調製物は、無機または有機の顔料を含んでいることができる。あるいは、該顔料調製物は、複数の異なった顔料、たとえば2以上の無機顔料、2以上の有機顔料、または1以上の無機顔料と1以上の有機顔料との混合物を含んでいることができる。
【0011】
上述のように、該調製物内の顔料粒子は、微細に分割された形態で存在する。すなわち、その平均粒子サイズは50nm〜5,000nmの範囲内にある。好ましくは、平均粒子サイズは少なくとも80nm、より好ましくは少なくとも100nmである。平均粒子サイズは最大でも3,000nmであることが好ましく、より好ましくは最大でも1,500nm、最も好ましくは最大でも1,000nmである。該調製物内の顔料粒子の平均粒子サイズは、たとえば電子顕微鏡法によって測定されることができる。調製物内の顔料の平均粒子サイズは、該顔料が液体中へと撹拌混入された後のその平均粒子サイズと本質的に同じであるから、顔料調製物を液状媒体と混合して、動的光散乱によってその平均顔料粒子サイズを測定することも可能である。
【0012】
有機顔料は典型的には有機の有彩顔料および黒色顔料である。無機顔料も同様に着色顔料(有彩、黒色、および白色の顔料)ならびにまた光輝顔料およびフィラーとして典型的に使用される無機顔料であることができる。
【0013】
以下は、好適な有機着色顔料の例である。
モノアゾ顔料:
C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントオレンジ5、13、36、38、64、67および74;C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、51:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、58:2、58:4、63、112、146、148、170、175、184、185、187、191:1、208、210、245、247、および251;C.I.ピグメントイエロー1、3、62、65、73、74、97、120、151、154、168、181、183、および191;C.I.ピグメントバイオレット32;
ジアゾ顔料:
C.I.ピグメントオレンジ16、34、44、および72;C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、170、174、176、180、および188;
ジアゾ高濃度顔料:
C.I.ピグメントイエロー93、95および128;C.I.ピグメントレッド144、166、214、220、221、242、および262;C.I.ピグメントブラウン23および41;
アントラスロン顔料:
C.I.ピグメントレッド168;
アントラキノン顔料:
C.I.ピグメントイエロー147、177、および199;C.I.ピグメントバイオレット31;
アントラピリミジン顔料:
C.I.ピグメントイエロー108;
キナクリドン顔料:
ピグメントオレンジ48および49;C.I.ピグメントレッド122、202、206、および209;C.I.ピグメントバイオレット19;
キノフタロン顔料:
C.I.ピグメントイエロー138;
ジケトピロロピロール顔料:
C.I.ピグメントオレンジ71、73および81;C.I.ピグメントレッド254、255、264、270、および272;
ジオキサジン顔料:
C.I.ピグメントバイオレット23および37;C.I.ピグメントブルー80;
フラバントロン顔料:
C.I.ピグメントイエロー24;
インダントロン顔料:
C.I.ピグメントブルー60および64;
イソインドリン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ61および69;C.I.ピグメントレッド260;C.I.ピグメントイエロー139および185
イソインドリノン顔料:
C.I.ピグメントイエロー109、110、および173
イソバイオラントロン顔料:
C.I.ピグメントバイオレット31;
金属錯体顔料:
C.I.ピグメントレッド257;C.I.ピグメントイエロー117、129、150、153、および177;C.I.ピグメントグリーン8;
ペリノン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ43;C.I.ピグメントレッド194;
ペリレン顔料:
C.I.ピグメントブラック31および32;C.I.ピグメントレッド123、149、178、179、190、および224;C.I.ピグメントバイオレット29;
フタロシアニン顔料:
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4;15:6、および16;C.I.ピグメントグリーン7および36;
ピランスロン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ51;C.I.ピグメントレッド216;
ピラゾロキナゾロン顔料:
C.I.ピグメントオレンジ67;C.I.ピグメントレッド251;
チオインジゴ顔料:
C.I.ピグメントレッド88および181;C.I.ピグメントバイオレット38;
トリアリールカルボニウム顔料:
C.I.ピグメントブルー1、61および62;C.I.ピグメントグリーン1;C.I.ピグメントレッド81、81:1、および169;C.I.ピグメントバイオレット1、2、3、および27;C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック);C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー);C.I.ピグメントブラウン22。
【0014】
好適な無機着色顔料の例は以下の通りである。
白色顔料:
二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)、亜鉛白、顔料級酸化亜鉛;硫化亜鉛、リトポン;
黒色顔料:
ブラック酸化鉄(C.I.ピグメントブラック11)、鉄マンガンブラック、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27);カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7);
有彩顔料:
酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン;クロムグリーン(C.I.ピグメントグリーン48);コバルトグリーン(C.I.ピグメントグリーン50);ウルトラマリングリーン;コバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28および36;C.I.ピグメントブルー72);ウルトラマリンブルー;マンガンブルー;ウルトラマリンバイオレット;コバルトバイオレット;マンガンバイオレット;レッド酸化鉄(C.I.ピグメントレッド101);硫セレン化カドミウム(C.I.ピグメントレッド108);硫化セリウム(C.I.ピグメントレッド265);モリブデートレッド(C.I.ピグメントレッド104);ウルトラマリンレッド;ブラウン酸化鉄(C.I.ピグメントブラウン6および7)、スピネル相およびコランダム相の混合ブラウン(C.I.ピグメントブラウン29、31、33、34、35、37、39、および40)、クロムチタンイエロー(C.I.ピグメントブラウン24)、クロムオレンジ;硫化セリウム(C.I.ピグメントオレンジ75);イエロー酸化鉄(C.I.ピグメントイエロー42);ニッケルチタンイエロー(C.I.ピグメントイエロー53;C.I.ピグメントイエロー157、158、159、160、161、162、163、164、および189);スピネル相(C.I.ピグメントイエロー119);硫化カドミウムおよび硫化カドミウム亜鉛(C.I.ピグメントイエロー37および35);クロムイエロー(C.I.ピグメントイエロー34);ビスマスバナデート(C.I.ピグメントイエロー184)。
【0015】
フィラーとして典型的に使用される無機顔料の例は、透明二酸化ケイ素、石英粉末、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、天然マイカ、天然および沈降白亜、タルク、粘土、ならびに硫酸バリウムである。
【0016】
光輝顔料は、単相または多相構造を有する小板(フレーク)状顔料であり、その遊色効果は干渉、反射、および吸収の現象の相互作用によって特徴付けられる。その例は、アルミニウムフレークならびに1以上の被膜、とりわけ金属酸化物の被膜を持つアルミニウム、酸化鉄、およびマイカのフレークである。
【0017】
上述のように、本発明の顔料調製物は、必須成分として顔料および分散剤樹脂を含んでおり、ここで該組成物は、顔料と分散剤樹脂との合計重量当たり、少なくとも35重量%の少なくとも1の顔料および最大でも65重量%の分散剤樹脂を含んでいる。該調製物中の顔料がカーボンブラックであるときは、顔料調製物中のカーボンブラックの含有量は上記の範囲の比較的低い部分にあることが好まれる。したがって、顔料がカーボンブラックであるときは、顔料調製物は、顔料と分散剤樹脂との合計重量当たり、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%のカーボンブラック、および最大でも60重量%、好ましくは最大でも55重量%の分散剤樹脂を含んでいる。他の顔料については、顔料調製物は、顔料と分散剤樹脂との合計重量当たり、一般に少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも64重量%、より好ましくは少なくとも68重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%の少なくとも1の顔料、および最大でも40重量%、好ましくは最大でも36重量%、より好ましくは最大でも32重量%、最も好ましくは最大でも30重量%の分散剤樹脂を含んでいる。特に好まれる実施態様では、顔料と分散剤樹脂との上述の重量比は、顔料調製物の全重量当たりで計算されたときでも当てはまる。
【0018】
顔料調製物はさらに、顔料調製物に普通に使用される他の成分、添加剤または助剤、たとえば湿潤剤、消泡剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、および他の顔料分散助剤ならびに/または界面活性剤を含んでいてもよい。顔料調製物中に追加的に存在することができる好適な界面活性剤として、脂肪族エトキシレートが具体的に挙げられることができる。脂肪族エトキシレートは、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、または脂肪族アミドに基づいたエトキシレートである。これらは、顔料調製物の撹拌混入特性、たとえば色形成の速度および色の強さをさらに改良する潜在力を有することが見出されている。好適な脂肪族エトキシレートの例は、Akzo Nobel Surface Chemistry社からのココモノエタノールアミドエトキシレートであるBermodol(商標)SPS2525である。脂肪族エトキシレートは、分散剤樹脂の量と同じようなまたはこれを超えさえする量で存在することができる。
【0019】
1の実施態様では、本発明の顔料調製物は、撹拌混入型顔料として使用されるのに適している自由流動性粉体である。また、たとえばペレットまたは錠剤の形態をしている固形圧縮顔料調製物が使用されることもできる。
【0020】
本発明に従う顔料調製物およびその調製方法に使用される分散剤のポリマー骨格は、好適なエチレン性不飽和重合性モノマーの連鎖反応重合によって調製されることができる。
【0021】
好適な連鎖反応重合の例は、上述のオレフィン性不飽和重合性モノマーの周知のフリーラジカル重合である。1以上の段階でおよび有機希釈剤の不存在下または存在下に、該重合は実施されることができる。
【0022】
好適なラジカル生成開始剤は従来技術で知られており、たとえばジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートおよびtert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等、ならびにアゾ開始剤、たとえば2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)および2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)である。
【0023】
連鎖移動剤、たとえばn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、またはチオグリコールによって、ポリマーの分子量は調節されることができる。
【0024】
ポリマー骨格の重合度、すなわちポリマー骨格一個当たりのモノマーの平均数は、好適には5〜150、好ましくは10〜100、より好ましくは15〜50の範囲にある。
【0025】
ポリマー骨格の調製のために、進歩した重合技術、たとえばグループ移動重合(GTP)、ニトロキシドを用いた重合(NMP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、および可逆的付加開裂連鎖(RAFT)重合が使用されることもできる。
【0026】
ポリマー骨格の調製に適したモノマーは、エチレン性不飽和重合性モノマーである。このようなモノマーの好適な例は、アルコール部分に1〜18炭素原子を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エーテル基を有する(メタ)アクリレート、たとえば2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、および3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、または、好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二塩基酸、たとえばマレイン酸、イタコン酸、およびシトラコン酸のモノアルキルエステル;他のメタクリレート、たとえばジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、ならびに3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートである。さらなる好適なモノマーは、アルコール部分中に1〜18炭素原子を有するβ−カルボキシエチルアクリレートおよびクロトン酸のエステル、ならびに(シクロ)アルキル基中に1〜12炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸の(シクロ)アルキルエステル、たとえばジエチルマレエートおよびジブチルフマレート、ジ(シクロ)アルキルイタコネート、およびジ(シクロ)アルキルシトラコネートである。
【0027】
他の好適なエチレン性不飽和モノマーは、ビニル芳香族化合物、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、またはp−メチルスチレン、およびtert−ブチルスチレン;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド;C〜C18モノカルボン酸のビニルエステル、たとえばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルイソブチレート、α−分枝C〜C18モノカルボン酸のビニルエステルを含む。他の好適なビニルモノマーは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピロリドン、ならびにビニルシラン、たとえばビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランを含む。
【0028】
約10%までの少量の多不飽和モノマー、たとえばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレート等の重合された単位を、ポリマー骨格は含有することもできる。
【0029】
ポリマー骨格から吊り下がった(ペンダントの)少なくとも1のポリアルキレンオキシド側基を、分散剤樹脂は有する。分散剤樹脂は、2以上のペンダントのポリアルキレンオキシド側基を有することが好まれる。3〜20のポリアルキレンオキシド側基を有する分散剤樹脂が特に適している。典型的には、ペンダントのポリアルキレンオキシド側基の数は100を超えない。典型的な実施態様では、該樹脂のポリマー骨格は、本質的に直鎖であり、ペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有している。このようなポリマーは、くし形ポリマーと説明されてもよい。
【0030】
少なくとも1のポリアルキレンオキシド基を有するモノマーを重合反応に使用することによって、該少なくとも1のペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基は導入されることができる。このようなモノマーの例は、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレートおよびポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートである。
【0031】
あるいは、重合後の反応で、すなわちまずポリマー骨格を調製し、その後に少なくとも1のペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド基を該骨格へグラフトすることで、該少なくとも1のペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド基を導入することも可能である。この場合、重合後の反応に適した官能基を有するモノマーが、好ましくはポリマー骨格中に含められる。このような官能基の例は、ヒドロキシル基、アセトアセトキシ基、カルボン酸基、環式カルボン酸無水物基、イソシアネート基、およびエポキシド基等である。環式カルボン酸無水物基が特に好まれる。環式カルボン酸無水物基を含んでいるエチレン性不飽和重合性モノマーの例は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水シトラコン酸であり、無水マレイン酸が好まれる。無水マレイン酸とスチレンとのコポリマーが、特に好まれるポリマー骨格である。
【0032】
重合後の反応によって、少なくとも1のペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド基を導入するためには、
(i)式(I)

(この式で、Rはアルキル基もしくはアルケニル基または好ましくは水素であり、RはC〜Cアルキル基から選択され、nは0〜25であり、mは1〜50であり、ただしn+mは≦50である。)
の親水性ポリアルキレンオキシドモノアミンモノアルキルエーテル、および
(ii)環式カルボン酸無水物基を有するポリマー骨格
の反応によって顔料分散剤樹脂を調製することが特に適している。
【0033】
式(I)に従う好適なモノアミン化合物の例は、ポリアルキレンオキシドに基づいたアミンであり、Huntsman社からJeffamine(商標)Mの商品表示下に商業的に入手可能である。
【0034】
親水性ポリアルキレンオキシドモノアミンモノアルキルエーテルは、ポリマー骨格の環式カルボン酸無水物基と反応する。この反応では、親水性ポリアルキレンオキシドモノアミンモノアルキルエーテルのアミン基によって、環式カルボン酸無水物がまず開環されて、アミド基およびカルボン酸基(アミド酸基)が形成される。この段階で、親水性ポリアルキレンオキシド基はポリマー骨格に既に結合されており、この生成物は、本発明の顔料調製物中の分散剤樹脂として使用されることができる。式(I)中のRが水素であるときは、アミド酸基は第二反応段階において縮合反応を行って、イミドが形成される。アミド酸基の少なくとも一部がイミドを形成することが好まれる。
【0035】
分散剤樹脂のポリアルキレンオキシド含有量は、分散剤樹脂の全重量当たり、好適には少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも65重量%である。分散剤樹脂のポリアルキレンオキシド含有量の好適な上限は、分散剤樹脂の全重量当たり、95重量%、好ましくは90重量%、より好ましくは85重量%である。
【0036】
好適なアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドである。ポリアルキレンオキシドに基づいた側基は、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドまたはこれらの混合物に基づいているものであることが好まれる。これまでのところ、ポリアルキレンオキシドに基づいた側基の全重量当たり、その少なくとも50重量%、好ましくは70重量%がエチレンオキシドに基づいているところのポリアルキレンオキシドに基づいた側基を用いて、非常に良好な結果が得られている。ポリアルキレンオキシドに基づいた側基は、一般に少なくとも200、好ましくは少なくとも350、最も好ましくは少なくとも700の分子量を有する。ポリアルキレンオキシドに基づいた側基の分子量は一般に4,000を超えず、好ましくは3,000を超えない。
【0037】
分散剤樹脂は、任意的にイオン性基を含んでいる。イオン性基の例は、アニオン性基、たとえば塩基で中和された酸性基、およびカチオン性基、たとえば酸で中和された塩基性基である。ポリマー骨格の調製に好適なモノマーを使用することによって、イオン性基は導入されることができる。好適なモノマーの例は、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物の官能性モノマー、たとえばアクリル酸および無水マレイン酸である。
【0038】
分散剤樹脂のポリアルキレンオキシド含有量が上記の範囲の比較的下端にあるならば、顔料調製物の所望の特性を確保するために、イオン性基の存在が特に好まれる。分散剤樹脂の酸価は、中和されたおよび中和されていない酸性基の合計として計算されて、分散剤樹脂の非揮発性物質当たり好適には0〜200mgKOH/gの範囲にある。好ましくは、酸価は少なくとも5mgKOH/g、より好ましくは少なくとも15mgKOH/gである。酸価は150mgKOH/g未満であることが好まれ、より好ましくは100mgKOH/g未満、最も好ましくは50mgKOH/g未満である。
【0039】
分散剤樹脂の数平均分子量は、好適には少なくとも1,500、好ましくは少なくとも3,000、より好ましくは少なくとも8,000、最も好ましくは少なくとも12,000である。分散剤樹脂の数平均分子量は、好適には150,000未満、好ましくは100,000未満、より好ましくは60,000未満、最も好ましくは40,000未満である。
【0040】
本発明はさらに、
a) 任意的な添加された水または有機希釈剤とともに、顔料および分散剤樹脂を撹拌して、流動化された顔料スラリーが形成される段階、
b) 任意的に、該スラリーを粉砕する段階、および
c) 該スラリーを乾燥する段階
の段階を含む顔料調製物を調製する方法に関し、ここで該分散剤樹脂は、ペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有する、連鎖反応重合によって製造されたポリマー骨格を含んでいる。
【0041】
顔料調製物に関連して上述したように、本発明の方法に使用される顔料は、有機または無機の顔料であることができる。顔料の混合物、たとえば2以上の無機顔料の混合物、2以上の有機顔料の混合物、または無機および有機の顔料の混合物を使用することも可能である。多種多様の顔料を本発明の方法に使用することが可能である。顔料は、標準的な乾燥された顔料として該工程中へと導入されることができる。凝集物を壊しおよび所要の顔料粒子サイズを達成するのに、粉砕段階は役立つ。有機顔料はいわゆるプレスケーキとしても入手可能である。有機顔料は、合成されたときには、一次粒子と呼ばれる非常に小さい結晶の形態をしている。顔料の合成の目的は、顔料施与特性、たとえば色の強さ、色調および明度、透明性および不透明性、ならびに流れ特性を最適化するサイズの一次粒子を製造することである。プレスケーキは、本質的にこの非凝集化された形態をしている顔料を含有している。したがって、凝集物を壊し所要の顔料粒子サイズを達成するのに、要求されるエネルギーがより少ない。分散剤樹脂なしに顔料プレスケーキを乾燥する際には、一次粒子は合体して、集合物および凝集物が形成されるだろう。したがって、有機顔料が本発明の方法に使用されるときには、顔料プレスケーキの形態をしている有機顔料を使用することが可能でありかつ好まれる。顔料プレスケーキが使用されるときには、所要の顔料粒子サイズを得るために、流動化された顔料スラリーの単純な撹拌が十分でありうる。このような場合には、該スラリーの粉砕は余計でありうる。
【0042】
顔料と分散剤樹脂との混合物を流動化するために追加の液体が要求されるときは、該液体は水であることが好まれる。水の代わりにまたは水に追加して、グリコールまたはグリコールエーテル、たとえばエチレングリコールもしくはその高級同属体またはエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルのような有機溶媒が使用されることができる。
【0043】
顔料の粒子サイズを壊して小さくするために普通に用いられる周知の粉砕装置を使用して、任意的な粉砕段階は実施されることができる。該工程を実施するのに適した装置の例は、ビーズミル、ジェットミル、超音波ミル、バスケットミル、ロールミル、および高速度溶解機である。一般に平均粒子サイズが50nm〜5,000nmの範囲内になるまで、粉砕は続けられる。好ましくは、平均粒子サイズは少なくとも80nm、より好ましくは少なくとも100nmである。平均粒子サイズは最大でも3,000nmであることが好まれ、より好ましくは最大でも1,500nm、最も好ましくは最大でも1,000nmである。
【0044】
好適な乾燥方法の例は、スプレー顆粒化および流動床乾燥、スプレー乾燥、パドルドライヤー中での乾燥、蒸発およびその後の粉砕、ならびに凍結乾燥である。選択された乾燥方法は、本発明の顔料調製物の粒子サイズに影響を与えうる。乾燥段階は、好ましくは凍結乾燥によってまたはスプレー乾燥によって実施される。
【0045】
スプレーおよび流動床顆粒化は、50〜5,000μm、とりわけ100〜1,000μmの平均粒子サイズを有する粗に分割された顆粒を製造することができる。工程条件に応じて、スプレー乾燥は微細に分割された顔料調製物を製造することもできる。スプレー乾燥は、20μm未満の平均粒子サイズを有する顆粒を製造することができる。パドルドライヤー中での乾燥によってならびに蒸発およびその後の粉砕によって、微細に分割された調製物は得られることもできる。
【0046】
乾燥され得られた顔料調製物の残留水分含有量は、有意に様々であることができる。残留水分含有量は、全顔料調製物の重量当たり、たとえば15重量%であることができる。一般に、残留水分含有量は15重量%を超えず、好ましくは12重量%を超えない。多くの場合、残留水分含有量はさらに5重量%未満である。顔料調製物が非水系での使用を意図されるときは、低い残留水分含有量が特に好まれ、たとえば2重量%未満である。
【0047】
本発明の顔料調製物は、その優れた色特性のために、とりわけ色の強さ、光輝、色合いおよび隠蔽力に関して、ならびにとりわけその撹拌混入特性のために使用に際して顕著に優れており、該撹拌混入特性とは、すなわち本発明の顔料調製物が最小のエネルギー投入量で、単純に撹拌または振盪によって施与媒体中に分散されることができることである。
【0048】
本発明の顔料調製物は、さらに以下の利点を有する。すなわち、これらは高い顔料含有量を有し、貯蔵において非常に良好な安定性を示し、包装、貯蔵、および輸送に関して経済的および生態学的の双方の面において有利であり、かつ使用における柔軟性がより高い。すなわち、水で媒体された組成物ならびに溶媒で媒体された組成物を着色するために、これらは使用されることができる。
【0049】
本発明の顔料調製物は、任意の種類の高分子状の有機および無機の物質を着色するために非常に有用である。本明細書の文脈における液状施与媒体は、純粋に水性であることができ、水と有機溶媒、たとえばアルコールとの混合物を含んでいることができ、またはアルコール、グリコールエーテル、ケトン、たとえばメチルエチルケトン、アミド、たとえばN−メチルピロリドンおよびジメチルホルムアミド、エステル、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル、および酢酸メトキシプロピル、または芳香族もしくは脂肪族炭化水素、たとえばキシレン、鉱油、およびミネラルスピリットのような有機溶媒にもっぱら基づいたものであることができる。
【0050】
本発明の顔料調製物で着色されることができる物質の例は、コーティング、たとえば建築用コーティング、工業用コーティング、自動車コーティング、放射線硬化コーティング;粉体コーティング;塗料、例として建物の外側および建物の内側用塗料、たとえば木材用塗料、ライムウォッシュ、ジステンパー、乳化塗料;溶媒で媒体された印刷インク、たとえばオフセット印刷インク、フレキソグラフ印刷インク、トルエンインタリオ印刷インク、織物捺染インク、放射線硬化性印刷インク;水で媒体されたインク、たとえばインクジェットインク;カラーフィルター;建築材料(典型的には建築材料および顔料調製物が乾燥混合された後ではじめて、水が添加される。)、たとえばケイ酸塩下塗り系、セメント、コンクリート、モルタル、石こう;瀝青、コーク;セルロース物質、たとえば紙、板紙、ボール紙、木材およびウッドベース(これらはそれぞれコーティングされまたは他様に仕上げ塗りされることができる。);接着剤;たとえば医薬産業において使用される膜形成性ポリマー状保護コロイド;化粧品;プラスチック;ならびに洗剤を含む。
【0051】
本発明の顔料調製物は、混色システムまたは調色システムにおける混合成分として特に有用である。その撹拌混入特性の故に、この目的のためにこれらは固体として直接に使用されることができる。しかし、所望であれば、これらはまず基本色材、混合用ワニス、および調色材へと(とりわけ高固形分含有量を有する色材、すなわち「HS色材」へと)、またはさらにより高度に顔料を加えられた調色ペーストへと姿を変えられ、これが次に混色システムの成分を構成することもできる。所望の色合いを合わせること、したがって色材成分の混合は、色見本、たとえばRAL、BS、およびNCSに基づいた非常に多数の色合い等級のカラーカード集合体によって目視で、または好ましくはコンピュータ調整の下で実施されることができ、該コンピュータ調整によって無限に多数の色合いが利用できるようになる(「コンピュータ調色」)。本発明の顔料調製物、少なくとも1の膜形成性バインダー、および少なくとも1の液状希釈剤を任意の実行可能な順番で撹拌しながら混合することを、顔料を添加されたコーティング組成物を調製する方法は含む。
【0052】
実施例
【0053】

【0054】
一般的方法
サンプルを140℃に30分間加熱した後の重量損失を測定することによって、組成物の固形分含有量が測定された。
ポリスチレンを標準物として使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって、分子量が測定された。
光沢がByk−Gardner光沢計を用いて測定され、結果がグロス単位で報告される。
CIE LCh体系に基づいて、彩度(C)値が測定された。
【0055】
[実施例1]
【0056】
ポリマー骨格およびペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有する分散剤樹脂の調製
【0057】
撹拌機、熱電対、加熱外套、還流凝縮器、および滴下ロートを備えた反応容器中に、SMA 2000(商標)20.3重量部およびJeffamine(商標)M 2070の79.7重量部が入れられた。真空下に180℃までこの混合物が加熱された。反応水が留去され、酸価が30mgKOH/g未満になるまで、180℃において反応が続けられた。その後、該反応混合物は室温まで放置冷却された。該分散剤樹脂は水に可溶性であり、酸価(非揮発性物質当たり)28.0mgKOH/g、数平均分子量17,100、および重量平均分子量43,000を有していた。
【0058】
[実施例2]
【0059】
本発明に従う顔料調製物の調製
【0060】
実施例1の分散剤樹脂の40重量%水性溶液33.5重量部、脱イオン水20.1重量部、市販の消泡剤0.3重量部、ジメチルエタノールアミン0.5重量部、およびIrgazin(商標)DPP Red BO顔料45.6重量部の混合物が調製された。
【0061】
該混合物が、ECMパイロットミルを用いる7リットル規模でビーズ粉砕され、この顔料分散物は、0.7〜0.9mmビーズを使用して合計75パス回数を与えられた。平均粒子サイズは170nmであった。
【0062】
入口温度132℃および出口温度85℃のBuchiミニスプレー乾燥機中で、サンプルはスプレー乾燥され、流量は0.2kg/時であった。目に明らかなノズルの詰まりまたは圧力上昇は認められなかった。粉状顔料調製物は約1%の残留水分まで乾燥され、顔料含有量は76.8%であると計算された。出来上がった顔料調製物は、自由流動性乾燥粉体であった。
【0063】
[実施例3〜10および比較例A〜F]
【0064】
コーティング組成物の調製
【0065】
水で媒体された2の異なったバインダー系、すなわちAutowave(商標)665(実施例3)およびAutowave(商標)666(実施例4)、ならびに溶媒で媒体された2の異なったバインダー系、すなわちAutocryl(商標)Plus(実施例5)およびAutocryl(商標)LV(実施例6)中への撹拌混入型顔料として、実施例2の顔料調製物が試験された。750〜760rpmで作動される4cm撹拌刃を有するIKA RW20撹拌機が、試験のために使用された。実施例2の顔料調製物が撹拌下に添加され、それから設定速度に合計30分間保たれた。十分な顔料調製物が添加されて、顔料含有量6.6重量%(実施例3および4)、9.58重量%(実施例5)、および11.76重量%(実施例6)を有するコーティング組成物が得られた。これらの顔料含有量は参照物、すなわち
比較例A:Autowave(商標)357トナー、実施例3および4に対する参照物、
比較例B:Autocryl(商標)Plus色材A273、実施例5に対する参照物、
比較例C:Autocryl(商標)Plus色材S273、実施例6に対する参照物、
として使用された比較例のそれらと同一である。
【0066】
出来上がったコーティング組成物は優れた粉砕微細度値を有し、ヘグマン(Hegmann)ゲージ試験において粒子ははっきりとは視認されなかった。
【0067】
これらのコーティング組成物を白色トナーと混合することによって、白色希釈物が調製された。
【0068】
[実施例7]
【0069】
得られる混合物中の赤色顔料と白色顔料との重量比が50:50であるように、実施例3のコーティング組成物が白色トナーモジュールAutowave(商標)00と混合された。
【0070】
[実施例8]
【0071】
得られる混合物中の赤色顔料と白色顔料との重量比が50:50であるように、実施例4のコーティング組成物が白色トナーモジュールAutowave(商標)00と混合された。
【0072】
[比較例D]
【0073】
得られる混合物中の赤色顔料と白色顔料との重量比が50:50であるように、比較例Aのコーティング組成物が白色トナーモジュールAutowave(商標)00と混合された。
【0074】
[実施例9]
【0075】
得られる混合物中の赤色顔料と白色顔料との重量比が50:50であるように、実施例5のコーティング組成物が白色トナーモジュールAutocryl(商標)Plus A110と混合された。
【0076】
[比較例E]
【0077】
得られる混合物中の赤色顔料と白色顔料との重量比が50:50であるように、比較例Bのコーティング組成物が白色トナーモジュールAutocryl(商標)Plus A110と混合された。
【0078】
[実施例10]
【0079】
得られる混合物中の赤色顔料と白色顔料との重量比が50:50であるように、実施例6のコーティング組成物が白色トナーモジュールAutocryl(商標)LV S110と混合された。
【0080】
[比較例F]
【0081】
得られる混合物中の赤色顔料と白色顔料との重量比が50:50であるように、比較例Cのコーティング組成物が白色トナーモジュールAutocryl(商標)Plus S110と混合された。
【0082】
K−Control Coater塗布機(バー0.4、速度3)を使用してLeneta様式2Aの不透明カード上に、これらのコーティング組成物が塗布され、室温で一晩放置乾燥された。実施例5、6、9、10、ならびに比較例B、C、E、およびFは、塗布前に2:1の体積比でAutocryl(商標)LV硬化剤420と混合された。
【0083】
結果が表1にまとめられる。
【表1】

【0084】
試験された、水で媒体されたベースコートおよび溶媒で媒体されたトップコートにおいて、全体色調特性は良好であった。水で媒体されたベースコートおよび溶媒で媒体されたトップコートにおける光沢は、参照物と同等であり、いくつかの場合にはそれよりも良好であった。
【0085】
水で媒体された白色希釈物(実施例7および8)についての彩度値は、参照物(比較例D)におけるよりも低かったが、それにもかかわらず許容可能であった。Autocryl(商標)PlusおよびLVの彩度値は、参照物系についてのそれよりも有意に高い。水で媒体された組成物ならびに溶媒で媒体された組成物において同じように、本発明に従う顔料調製物は優れた撹拌混入特性を示すと結論されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料および分散剤樹脂を含んでいる固形顔料調製物であって、該組成物が、顔料と分散剤樹脂との合計重量当たり、少なくとも35重量%の少なくとも1の顔料および最大でも65重量%の分散剤樹脂を含んでいる顔料調製物において、該分散剤樹脂が、ペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有する、連鎖反応重合によって製造されたポリマー骨格を含んでおり、該調製物内の顔料粒子が50nm〜5,000nmの範囲にある平均粒子サイズを有することを特徴とする顔料調製物。
【請求項2】
分散剤樹脂中のポリアルキレンオキシドの含有量が、少なくとも20重量%であることを特徴とする、請求項1に従う顔料調製物。
【請求項3】
ポリアルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはこれらの混合物に基づいていることを特徴とする、請求項1または2に従う顔料調製物。
【請求項4】
分散剤樹脂の数平均分子量が、1,500〜150,000の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に従う顔料調製物。
【請求項5】
分散剤樹脂が、5〜150mgKOH/gの範囲にある酸価を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に従う顔料調製物。
【請求項6】
脂肪族エトキシレート界面活性剤をさらに含んでいることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に従う顔料調製物。
【請求項7】
a) 任意的な添加された水または有機希釈剤とともに、顔料および分散剤樹脂を撹拌して、流動化された顔料スラリーが形成される段階、
b) 任意的に、該スラリーを粉砕する段階、および
c) 該スラリーを乾燥する段階
の段階を含む顔料調製物を調製する方法であって、該分散剤樹脂が、ペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有する、連鎖反応重合によって製造されたポリマー骨格を含んでいる、方法。
【請求項8】
顔料が、プレスケーキの形態で用意された有機顔料であることを特徴とする、請求項7に従う方法。
【請求項9】
段階c)が、凍結乾燥またはスプレー乾燥によって実施されることを特徴とする、請求項7または8に従う方法。
【請求項10】
a. 請求項1〜6のいずれか1項に従う顔料調製物、
b. 少なくとも1の膜形成性バインダー、および
c. 少なくとも1の液状希釈剤
を任意の実行可能な順番で、撹拌しながら混合することを含む、顔料を添加されたコーティング組成物を調製する方法。
【請求項11】
ペンダントの親水性ポリアルキレンオキシド側基を有する、連鎖反応重合によって製造されたポリマー骨格を含んでいる分散剤樹脂を、撹拌混入された顔料の調製物を調製するために使用する方法。

【公表番号】特表2009−510246(P2009−510246A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533998(P2008−533998)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066985
【国際公開番号】WO2007/039603
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】