説明

顕微鏡システム

【課題】対物レンズの光路への挿脱時に、浸液の有無/種類に応じた対物レンズの種別に変化がある場合、浸液の注入/除去作業がしやすく、かつ浸液への気泡混入を防止する顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】顕微鏡システムは、浸液の有無/種類に応じた対物レンズの種別を示す種別フラグと、ステージ又は対物レンズ切換部を所定の距離退避させるための退避距離とを含む移動制御情報が対物レンズ毎に格納されており、対物レンズの切換指示が入力された場合、切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合、退避距離に従ってステージ又は対物レンズ切換部を移動させた後に動作を停止し、操作指示入力部によりステージと対物レンズ切換部についての動作指示が入力された後、ステージ又は対物レンズ切換部を元の位置に復帰させることにより、上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の対物レンズを有し、微小な試料の拡大観察を行なうと共に、各種光学部材がモータによって駆動される顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡装置は工業分野を始め、生物分野における研究や検査等において広く利用されている。このような顕微鏡装置を使用して検査を行う場合には、一般に拡大倍率の異なる複数の対物レンズを有する顕微鏡装置において、対物レンズからの観察光路と直交する平面内で観察試料を移動できる電動ステージを操作することにより、観察、検査を行っている。これらの顕微鏡によって標本を観察する際には、顕微鏡を構成する各種の構成ユニット(例えば、各種照明、開口絞り、視野絞り、レボルバ、自動焦準機構、レンズやフィルター等の光学素子切り換え機構など)をそれぞれ観察条件に応じて操作する必要がある。
【0003】
これらの構成ユニットを操作する手法として、例えば、次の方法がある。顕微鏡本体に操作装置を接続し、この操作装置に対する操作に応じて各構成ユニットを駆動し、操作装置での表示によって各構成ユニットの駆動状態を把握する方法が一般的に知られている。すなわち、顕微鏡に専用のコントローラやPC(パーソナル・コンピュータ)などの顕微鏡コントローラを、通信ケーブルを介して顕微鏡本体と接続する。そして、顕微鏡コントローラの操作に応じて顕微鏡本体との間でコマンドの送受を行い、各構成ユニットの駆動制御が各種設定を行う。
【0004】
電動レボルバの操作においては、コントローラまたはタッチパネル上に、レボルバに装着された全対物レンズに対応するボタンがあるものがある。そのボタン操作により任意の対物レンズを直接顕微鏡光路に挿入させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3396070号
【特許文献2】特許第3823471号
【特許文献3】特開2003−307684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
顕微鏡に取り付ける対物レンズとしては、対物レンズの先端と標本との間の空間にオイル等の液体を満たして用いる液浸系の対物レンズ(オイル対物)と、オイル等を使用しない(対物レンズの先端と標本との間の空間が空気で満たされる)乾燥系の対物レンズ(ドライ対物)とがある。
【0007】
オイル対物を用いて標本を観察する場合、対物レンズと標本との間にオイル等をスポイト等によって注入する作業が必要である。このとき、従来の顕微鏡によって電動で対物レンズを切り換えると、液浸系対物レンズが光路上に配置されてしまうことになる。この状態では、標本と液浸系対物レンズとの間隔が非常に狭く、オイルを注入する作業をすることが困難である。このような場合は、オイル対物に切り換えた後、ステージを若干下げて対物レンズと標本との間隔を広げ、標本上にオイルを垂らし、オイルに気泡が混入するのを注意しながらオイル対物の先端にオイルが着くまでゆっくりステージを上げて、焦準を合わせる必要がある。または、ドライ対物に切り換える場合のみ、手動でレボルバを回転させながら、対物レンズと標本との間に液体を注入する作業をすることも考えられる。
【0008】
また、オイル対物レンズからドライ対物レンズに切り換えるような場合も、対物レンズと標本との間のオイルを取り除く必要がある。また、オイルを取り除かずに、オイル対物レンズからドライ対物に切り換えた場合には、標本上面に付けたオイルがドライ対物レンズの先端に付着し、像が著しく見え難くなったりするおそれがある。
【0009】
しかしながら、従来の電動顕微鏡システムではオイルを注入、除去する際の顕微鏡の操作が面倒であり、電動による利点が半減されてしまう。
そこで、本発明では、対物レンズの顕微鏡光路への挿脱時に、浸液の有無又は浸液の種類に応じた対物レンズの種別に変化がある場合、浸液の注入/除去作業がしやすく、かつ浸液への気泡混入を防止することが可能な顕微鏡システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る、試料を観察する顕微鏡により観察を行う顕微鏡システムは、複数の対物レンズをそれぞれ取り付け穴に搭載し、前記複数の対物レンズを切り換えることにより所望の対物レンズを光路に設定することができる対物レンズ切換部と、前記試料が載置されるステージと、前記ステージと前記対物レンズ切換部の少なくとも一方を前記光路方向へ移動させる焦準機構と、前記顕微鏡システムを操作するための指示を入力する操作指示入力部と、浸液の有無又は浸液の種類に応じた対物レンズの種別を示す種別フラグと、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を所定の距離退避させるための退避距離とを含む移動制御情報が前記対物レンズ毎に格納されている格納部と、前記操作指示入力部により前記対物レンズの切換指示が入力された場合、前記格納部から切換指示された対物レンズに対応する前記移動制御情報を取得し、該移動制御情報に含まれる種別フラグにより切換前後の対物レンズの種別に変化があるかを判定し、切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合、該移動制御情報に含まれる前記退避距離に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させた後に動作を停止し、前記操作指示入力部により前記ステージと前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された後、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
前記顕微鏡システムにおいて、前記移動制御情報は、さらに、切換前後の対物レンズの種別に変化がない場合に該移動制御情報により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際に用いられる第1の退避距離を含み、切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合に該移動制御情報により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際に用いられる前記退避距離を第2の退避距離とすると、該第2の退避距離は全対物レンズの前記第1の退避距離のいずれよりも長いことを特徴とする。
【0012】
前記顕微鏡システムにおいて、前記移動制御情報は、さらに、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の移動速度を含み、前記制御部は、前記操作指示入力部により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、前記移動制御情報の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させることを特徴とする。
【0013】
前記顕微鏡システムにおいて、前記移動制御情報は、さらに、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の対物レンズに応じた第1の移動速度と、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の所定の移動速度であって該第1の移動速度のいずれよりも速い速度である第2の移動速度と、前記第2の退避距離よりも短い所定の距離である速度変更距離とを含み、前記制御部は、前記操作指示入力部により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、現在の前記ステージと該ステージの復帰位置との間の距離が前記速度変更距離になるまで、前記移動制御情報の第2の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を復帰させる方向へ移動させ、前記ステージと前記対物レンズ切換部との間の距離が前記速度変更距離になったら、前記移動制御情報の第1の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させることを特徴とする。
【0014】
前記顕微鏡システムにおいて、前記操作指示入力部は、前記対物レンズ切換部に装着された各対物レンズに対応したボタンを有し、任意の該ボタンを押下することにより、該ボタンに対応した対物レンズへの切換指示を出力し、前記切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合において、該移動制御情報に含まれる前記退避距離に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させた後に動作を停止し、再度該ボタンを押下することにより、前記ステージと前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、対物レンズの顕微鏡光路への挿脱時に、浸液の有無又は浸液の種類に応じた対物レンズの種別に変化がある場合、浸液の注入/除去作業がしやすく、かつ浸液への気泡混入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態における顕微鏡システムの構成例を示す。
【図2】第1の実施形態における顕微鏡コントローラ2の内部構成の概要を示す。
【図3】第1の実施形態におけるステージ移動制御情報テーブル40の一例を示す。
【図4】第1の実施形態における顕微鏡コントローラ2の上面図を示す。
【図5】(a)対物レンズの切り換え操作をするためのアイコン302bが選択されたときのタッチパネルの表示画面と、(b)そのアイコン302bが選択されたときの電動レボルバ24に配置された対物レンズの位置を説明するための図である。
【図6】(a)対物レンズの切り換え操作をするためのアイコン302cが選択されたときのタッチパネルの表示画面と、(b)そのアイコン302cが選択されたときの電動レボルバ24に配置された対物レンズの位置を説明するための図である。
【図7】第1の実施形態における対物レンズの切り換えの際、顕微鏡コントローラ2のCPU201により実行される対物レンズの種別に応じてステージの動作を制御するフローを示す。
【図8】第1の実施形態における10倍のドライ対物レンズ23bから40倍ドライ対物23cへの切り換え動作の様子を示す。
【図9】第1の実施形態における40倍のドライ対物レンズ23bから60倍のオイル対物23cへの切り換え動作の様子を示す。
【図10】第1の実施形態における40倍のドライ対物レンズ23bから60倍のオイル対物23cへの切り換え途中で、ステージが一時退避して停止した際のタッチパネルの表示画面の一例を示す。
【図11】(a)対物レンズの切り換え操作をするためのアイコン302dが選択されたときのタッチパネルの表示画面と、(b)そのアイコン302dが選択されたときの電動レボルバ24に配置された対物レンズの位置を説明するための図である。
【図12】第1の実施形態における対物レンズの切り換えのパターンを示す。
【図13】第2の実施形態におけるステージ移動制御情報テーブル40aの一例を示す。
【図14】第2の実施形態における対物レンズの切り換えの際、顕微鏡コントローラ2のCPU201により実行される対物レンズの種別に応じてステージの動作を制御するフローを示す。
【図15】第2の実施形態における40倍のドライ対物レンズ23cから60倍のオイル対物23dへの切り換え動作の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
本実施形態では、ドライ対物からオイル対物への切り換え、またはオイル対物からドライ対物への切り換えを行う場合、ステージを一時退避させてオイル注入/ふき取りを行い、その後再びステージを復帰させることができる顕微鏡システムについて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態における顕微鏡システムの構成例を示す。顕微鏡装置1には、透過観察用光学系として、透過照明用光源6と、透過照明用光源6の照明光を集光するコレクタレンズ7と、透過用フィルタユニット8と、透過視野絞り9と、透過開口絞り10と、コンデンサ光学素子ユニット11と、トップレンズユニット12とが備えられている。
【0019】
また、顕微鏡装置1には、落射観察光学系として、落射照明用光源13と、コレクタレンズ14と、落射用フィルタユニット15と、落射シャッタ16と、落射視野絞り17と、落射開口絞り18とが備えられている。
【0020】
また、透過観察用光学系の光路と落射観察用光学系の光路とが重なる観察光路上には、標本19が載置される電動ステージ20が備えられている。電動ステージ20は、上下(Z)方向、左右(XY)方向の各方向に移動させることができる。
【0021】
電動ステージ20の移動の制御は、ステージX−Y駆動制御部21とステージZ駆動制御部22とによって行われる。ステージX−Y駆動制御部21は、X−Yモータ21aの駆動を制御することにより、ステージ20をX方向及びY方向へ移動させる。ステージZ駆動制御部22は、Zモータ22aの駆動を制御することにより、ステージ20をZ方向へ移動させる。
【0022】
なお、電動ステージ20は原点センサによる原点検出機能(不図示)を有している。そのため、電動ステージ20に載置した標本19の座標検出及び座標指定による移動制御を行うことができる。
【0023】
また、観察光路上には、レボルバ24、キューブターレット25と、ビームスプリッタ27とが備えられている。
レボルバ24には、複数の対物レンズ23a,23b,・・・(以下、必要に応じて「対物レンズ23」と総称する)が装着されている。レボルバ24を回転させることにより、複数の対物レンズ23から観察に使用する対物レンズを選択することができる。
【0024】
蛍光キューブA(35a)、蛍光キューブB(35b)、蛍光キューブC(図示せず)はそれぞれ、励起フィルター、ダイクロックミラー及び各蛍光観察波長に対応した吸収フィルターを有する。キューブターレット25により、蛍光キューブA(35a)、蛍光キューブB(35b)、蛍光キューブC(図示せず)・・・のうちいずれかに切り換えて、光路上に配置することができる。
【0025】
ビームスプリッタ27により、観察光路が接眼レンズ26側とビデオカメラ側(図示せず)とに分岐されている。
更に、微分干渉観察用のポラライザー28、DIC(DifferentialInterference Contrast)プリズム29、及びアナライザー30は観察光路に挿入可能となっている。
【0026】
なお、これらの各ユニットは電動化されており、その動作は後述する顕微鏡制御部31によって制御される。
顕微鏡制御部31は、顕微鏡コントローラ2に接続されている。顕微鏡制御部31は、顕微鏡装置1全体の動作を制御する機能を有する。顕微鏡制御部31は、顕微鏡コントローラ2からの制御信号またはコマンドに応じ、検鏡法の変更、透過照明用光源6及び落射照明用光源13の調光を行う。さらに、顕微鏡制御部31は、顕微鏡装置1による現在の検鏡状態を顕微鏡コントローラ2へ送出する機能を有している。また、顕微鏡制御部31はステージX−Y駆動制御部21及びステージZ駆動制御部22にも接続されている。このため、顕微鏡制御部31を介して、電動ステージ20の制御も顕微鏡コントローラ2により行うことができる。
【0027】
顕微鏡コントローラ2は、実際にユーザーが顕微鏡1の操作の入力を行うためのタッチパネル207を有するコントローラである。タッチパネル207上の所定のエリアに、顕微鏡システム1を操作するための所定の属性が設定されている。ユーザーは所定の属性が設定された機能エリア(タッチパネル上に表示されたGUI(Graphical User Interface)ボタン等)を操作することで、各種顕微鏡の操作が可能な構成となっている。
【0028】
図2は、本実施形態における顕微鏡コントローラ2の内部構成の概要を示す。顕微鏡コントローラ2は、CPU(Central Processing Unit)201、RAM(Random Access Memory)202、ROM(Read Only Memory)203、不揮発性メモリ204、通信制御部205、及びタッチパネル制御部206、タッチパネル207を備えている。これらの構成要素間では、CPU201の管理の下でバスを介して各種のデータを相互に授受することができる。
【0029】
CPU201は、顕微鏡コントローラ2全体の動作制御を行うものである。RAM202は、CPU201が制御プログラムを実行する際に作業用記憶領域として利用すると共に、各種のデータを一時的に記憶しておくメモリである。ROM203には、CPU201がコントローラ2の動作制御を行うための制御プログラムが予め格納されている。なお、顕微鏡装置1を制御するためのアプリケーションソフトウェアもこの制御プログラムの一部である。
【0030】
不揮発性メモリ204には、タッチパネル207に表示させるための、操作ボタン表示(アイコンボタン表示等)を含めた顕微鏡1を操作するための所定の属性が設定された複数の機能エリアの情報(機能エリア設定情報)が予め格納されている。具体的には、機能エリア設定情報は、機能エリアの範囲を示すタッチパネル上の座標情報と、顕微鏡システムを構成する所定の電動ユニットを操作するためにその機能エリアに割り当てられた機能に関する情報とが関連付けられた情報である。電動ユニットを操作するためにその機能エリアに割り当てられた機能とは、例えば、ステージ20の操作に関しては、ステージ20をX−Y方向へ移動させる機能またはZ方向へ移動させるための機能であり、電動レボルバ24の操作に関しては、電動レボルバを回転させて任意の対物レンズを選択し観察光路に挿入させる機能である。また、不揮発性メモリ204には、図3に示す情報が記憶されている。
【0031】
通信制御部205は、顕微鏡装置1本体の顕微鏡制御部31との間で行われるデータ通信(例えばシリアル通信)の管理を行い、各構成ユニットの動作を制御する制御情報などの顕微鏡制御部31への送信を行う。
【0032】
タッチパネル207は、表示装置としての機能と入力装置としての機能とを兼ね備えている。タッチパネル207は、膜抵抗方式、静電容量方式、赤外線方式、超音波方式等いずれの種類のタッチパネルでもよく、その種類に限定されない。また、タッチパネル制御部206は、タッチパネル207上においてユーザーより入力された位置のX座標及びY座標を検出し、その検出した座標情報をCPU201へ送信する。
【0033】
図3は、本実施形態におけるステージ移動制御情報テーブル40の一例を示す。ステージ移動制御情報テーブル40は、不揮発性メモリ204に記憶されている。ステージ移動制御情報テーブル40には、電動レボルバ24のレボルバ穴位置に対応した情報が格納されている。
【0034】
ステージ移動制御情報テーブル40は、「レボルバ穴位置」41、「倍率」42、「第1の退避距離」43、「種別フラグ」44、「第2の退避距離」45、「復帰速度」46のデータ項目から構成される。「レボルバ穴位置」41は、電動レボルバ24のレボルバ穴位置を識別するための番号が格納されている。「倍率」42には、対物レンズの倍率情報が格納されている。「第1の退避距離」43には、Z方向におけるステージ20の退避距離が格納されている。「種別フラグ」44には、ドライ対物かオイル対物かを特定するための種別フラグ(ドライ/オイル)が格納されている。「第2の退避距離」45には、オイルの注入及びオイルの拭き取りのためのZ方向におけるステージ20の退避距離(SB)が格納されている。「復帰速度」46には、退避位置から復帰するためのステージ20の移動速度が格納されている。
【0035】
本実施形態では、図3のステージ移動制御情報テーブル40に示すように、レボルバ穴位置=1で識別される電動レボルバ24の穴位置には5倍のドライ対物レンズ23aが装着されている。レボルバ穴位置=2で識別される電動レボルバ24の穴位置には10倍のドライ対物レンズ23bが装着されている。レボルバ穴位置=3で識別される電動レボルバ24の穴位置には40倍のドライ対物レンズ23cが装着されている。レボルバ穴位置=4で識別される電動レボルバ24の穴位置には60倍のオイル対物レンズ23dが装着されている。レボルバ穴位置=5で識別される電動レボルバ24の穴位置には100倍のオイル対物レンズ23eが格納されている。以下では、光軸に10倍のドライ対物23bが挿入された状態として説明する。
【0036】
図4は、本実施形態における顕微鏡コントローラ2の上面図を示す。タッチパネル207は、顕微鏡コントローラ2の外装208に嵌め込まれている。タッチパネル207上の所定のエリアに、顕微鏡システム1を操作するための所定の属性が設定されている。ユーザーは所定の属性が設定された機能エリア(タッチパネル上に表示されたGUI(Graphical User Interface)ボタン等)を操作することで、各種顕微鏡の操作が可能な構成となっている。
【0037】
またタッチパネル207は、外装208の凹部の底に取り付けられている。タッチパネル207の面と外装208の外表面の間には、段差209aが設けられている。
タッチパネル207は、S_A、S_B、S_C、S_Dで示す領域(機能エリア)にそれぞれ機能を割り当てることができる。これにより、段差209aに沿って指を移動させたとき、段差209aがガイドの役目を果たす。そのため、段差209aに沿って、S_A、S_B、S_C、S_Dで示す機能エリアの位置を把握することができる。
【0038】
また、S_F、S_G,S_H、S_Iで示す領域は、タッチパネル207の角に配置された機能エリアである。また、S_A、S_B、S_C、S_Dで囲まれた範囲には機能エリアS_Eが配置されている。また、規制枠209上に1つ以上の突起210と、突起枠211が設けられている。
【0039】
突起210は、ユーザーが段差209aに沿ってタッチパネル207を指で移動させたときに、認識可能な大きさとなっている。これにより、段差209aに沿って指を移動させたとき、段差209a及び突起210がガイドの役目を果たす。そのため、段差209aに沿って、かつ突起210の位置によって、S_A、S_B、S_C、S_Dで示す機能エリアの位置をより正確に把握することができる。
【0040】
さらに突起210及びタッチパネル207の角により、これらで囲まれたS_F、S_G、S_H、S_Iで示す機能エリアの位置をより明確に把握することができる。
また、機能エリアS_Eは、タッチパネル207上に設けた突起枠211によって、他の機能エリアと分離されている。これにより、突起枠211がガイドの役目を果たす。そのため、突起枠211で囲まれた機能エリアの位置が明確になり、より正確に機能エリアS_Eの位置を把握することができる。
【0041】
顕微鏡コントローラ2の制御部であるCPU201は、ROM202に記録されているプログラムを読み出す。すると、そのプログラムの制御に従って、CPU202は、不揮発性メモリ204に記録されている機能エリア設定情報を読み出し、その機能エリア設定情報に基づいて、タッチパネル207上の顕微鏡システム1を操作するための機能ボタンの設定を行う。
【0042】
続いて電動レボルバ24の切り換え動作について、図5,図6を用いて説明する。図5(b)に示すように、電動レボルバ24には、5倍のドライ対物レンズ23a、10倍のドライ対物レンズ23b、24倍のドライ対物レンズ23c、60倍のオイル対物レンズ24d、100倍のオイル対物レンズ23eがそれぞれ装着されており、光軸には10倍のドライ対物レンズ23bが挿入されている。
【0043】
図5(a)に示すように、S_Bのエリアには電動レボルバ24に装着されている対物レンズ23a〜23eを示すアイコン302a〜302eがそれぞれ表示されている。なお、光路に挿入されている対物レンズのアイコンは、光路外にある他の対物レンズのアイコンと区別されるように強調表示されている。図5(a)では、10倍ドライ対物レンズ23bが光路に挿入されているので、アイコン302bが強調表示されている。
【0044】
ここで、ユーザーがそれぞれのアイコン302a〜302eを押下することで、その押下したアイコンに対応した対物レンズ23へ直接切り換えを行うことができる。すなわち、その押下したアイコンが表示されたタッチパネル上の座標が検出されると、顕微鏡コントローラ2は、顕微鏡制御部31に指示を与え、電動レボルバ24の回転制御を行わせる。
【0045】
例えば、図5(a)においてアイコン302cが押下されると、顕微鏡コントローラ2のCPU201は、顕微鏡制御部31に対して指示信号を送信する。すると、顕微鏡制御部31は電動レボルバ24の回転を制御して、10倍対物レンズ23bから40倍対物レンズ23cへ切り換えて、40倍対物レンズ23cを光路に入れる。すると、図6に示すように、40倍の対物レンズ23cを示すアイコン302cは、現在光路に挿入されている対物レンズを示すように強調表示される。
【0046】
図7は、本実施形態における対物レンズの切り換えの際、顕微鏡コントローラ2のCPU201により実行される対物レンズの種別に応じてステージの動作を制御するフローを示す。図8は、本実施形態における10倍のドライ対物レンズ23bから40倍のドライ対物23cへの切り換え動作の様子を示す。
【0047】
図8(A)は、対物レンズと標本19の位置関係を示す。符号401で示す実線は、標本19の最上面の位置であるカバーガラスの位置を示す。現在の光軸方向(Z軸方向)のステージ20上の標本19のカバーガラス401の座標は、Z_Aである。
【0048】
CPU201は、不揮発性メモリ204から、ステージ移動制御テーブル40を読み込み、RAM203に展開する(S601)。
図5に示した状態で、ユーザーによってアイコン302cが押されると(S602)、CPU201は、RAM203上に展開されたステージ移動制御テーブル40から、切り換え指示された対物レンズの情報を取得する(S603)。CPU201は、どのレボルバ穴位置への切り換え指示かの判別と、切り換え経路の判別を行う。ここではレボルバ穴位置=2からレボルバ穴位置=3への切り換え経路となる。
【0049】
CPU201は、切り換え経路中に含まれる対物レンズの「種別フラグ」44に基づいて、当該切り換え経路中に、ドライ対物からオイル対物への切り換え、またはオイル対物からドライ対物への切り換えが発生するかの判別を行う(S604)。この例では、ドライ対物からドライ対物への切り換えになるので(S604で「N」)、切り換え経路中に含まれる対物レンズの「第1の退避距離」43のうち、退避距離が最も大きな退避距離の判別を行う(S605)。ここでは、レボルバ穴位置=3の「第1の退避距離」43=SA3が選択される。
【0050】
CPU201は、顕微鏡制御部31を介して、ステージZ制御部22に指示信号を送信する。この指示信号に基づいて、ステージZ制御部22は、図8(B)に示すように、ステージ20を第1の退避距離SA3だけ退避させる(S606)。ステージ20の退避速度は、規定値V0で行われる。
【0051】
ステージ20の退避後の標本19のカバーガラス401のZ座標は、Z_Bである。ステージ20の退避が終了すると、CPU201は、顕微鏡制御部31を介して電動レボルバ24に指示信号を送信する。この指示信号に基づいて、電動レボルバ24は、図8(C)に示すように、レボルバ穴位置=3に装着された40倍のドライ対物を光軸に挿入させる(S607)。
【0052】
図8(D)に示すように、40倍のドライ対物が光路に挿入された後、再びCPU201は、図8(E)に示すように、第1の退避距離SA3だけステージ20を復帰させる制御を行う。このとき、レボルバ穴位置=3に対応した「復帰速度」46=V3でステージ20の復帰が行われる(S608)。
【0053】
ステージ20の復帰後、図8(E)に示すように、標本19のカバーガラス401のZ座標は、再びZ_Aの座標に復帰される。このとき、図6に示すように、アイコン302bは通常の表示状態になり、アイコン302cが強調表示される。
【0054】
続いて、図9を用いて、40倍のドライ対物23cから60倍のオイル対物23dへの切り換え動作について説明する。
図9(A)は、図8(A)と同様に対物レンズと標本19の位置関係を示す。符号401で示す実線は、標本19の最上面の位置であるカバーガラスの位置を示す。現在の光軸方向(Z軸方向)のステージ20上の標本19のカバーガラス401の座標は、Z_Aである。
【0055】
図6に示した状態で、ユーザーによってアイコン302dが押されると(S602)、CPU201は、RAM203上に展開されたステージ移動制御テーブル40から、切り換え指示された対物レンズの情報を取得する(S603)。CPU201は、どのレボルバ穴位置への切り換え指示かの判別と、切り換え経路の判別を行う。ここではレボルバ穴位置=3からレボルバ穴位置=4への切り換え経路となる。
【0056】
CPU201は、切り換え経路中に含まれる対物レンズの「種別フラグ」44に基づいて、当該切り換え経路中に、ドライ対物からオイル対物への切り換え、またはオイル対物からドライ対物への切り換えが発生するかの判別を行う(S604)。この例では、ドライ対物からオイル対物への切り換えになるので(S604で「Y」)、ステージ退避距離はオイル注入/拭き取り動作に対応した「第2の退避距離」45=SBが選択される。
【0057】
CPU204は、顕微鏡制御部31を介して、ステージZ制御部22に指示信号を送信する。この指示信号に基づいて、ステージZ制御部22は、図9(B)に示すように、速度V0でステージ20を第2の退避距離SBだけ退避させる(S610)。
【0058】
退避後の標本19のZ軸の座標は、Z_Cである。ステージ20の退避が終了すると、CPU201は、顕微鏡制御部31を介して電動レボルバ24に指示信号を送信する。この指示信号に基づいて、電動レボルバ24は、図9(C)に示すように、レボルバ穴位置=4に装着された60倍のオイル対物を光路に挿入させる(S611)。60倍のオイル対物が光路に挿入された後は、ステージ20の復帰動作は行われず、ステージ20はその状態で停止した状態となる。
【0059】
このとき、アイコン302dは、図10(a)に示すように、点滅状態となる。ここで、図9(D)に示すように、ユーザーはスポイト410を用いてオイル411の注入作業等を行う(S612)。作業終了後、再びユーザーによってアイコン302dが押されると(S613)、CPU201は、図9(E)に示すように、ステージ20を第2の退避距離SBだけ復帰させる制御を行う。このとき、レボルバ穴位置=4の60倍オイル対物に対応した「復帰速度」46=V4でステージ20の復帰が行われる(S608)。
【0060】
ステージ20の復帰後、図9(E)に示すように、標本19のカバーガラスの座標は再びZ_Aの座標に復帰される。このとき、図11に示すように、アイコン302cは通常の表示状態になり、アイコン302dが強調表示される。
【0061】
図12は、本実施形態における対物レンズの切り換えのパターンを示す。パターン1で示されるドライ対物からドライ対物への切り換えは、図8で説明した。パターン2で示されるドライ対物からオイル対物への切り換えは、図9で説明した。
【0062】
オイル対物からドライ対物への切り換え(パターン3)、及びオイル対物からオイル対物への切り換え(パターン4)も図7のフローに基づいて行うことができる。パターン3の場合、パターン2と同様に、切り換え途中でステージ20が退避した状態で一時停止し、オイルを拭き取る作業をした後に、復帰する。パターン4の場合、パターン1と同様に、切り換え途中でステージ20が退避した後に、復帰する。
【0063】
以上のように、本実施形態における顕微鏡システムは、レボルバ穴位置に対応した各対物レンズの情報である第1の退避距離(SA1−SA5)、ドライ対物/オイル対物の種別フラグ(ドライ/オイル)、オイル注入/ふき取りのための第2の退避距離(SB)、復帰するための復帰速度(V1−V5)を備える。これにより、ドライ対物からオイル対物への切り換え、またはオイル対物からドライ対物への切り換えを行う場合、オイル注入及びふき取り動作がしやすくなる。それと同時に、対物レンズの種類に応じたステージ復帰速度が設定可能となるため、気泡の混入も防止可能となる。また、ステージ復帰速度を対物レンズ毎に設定可能となるため、オイル対物に応じたステージ復帰速度が設定可能となるため、気泡の混入も防止可能となる。
【0064】
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態においてステージを一時退避させてオイル注入及びふき取りを行った後に再びステージを復帰させる場合、復帰距離に応じて復帰速度を変更することができる顕微鏡システムについて説明する。本実施形態のシステム構成は第1の実施形態と同様である。また、本実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
図13は、本実施形態におけるステージ移動制御情報テーブル40aの一例を示す。ステージ移動制御情報テーブル40aは、不揮発性メモリ204に記憶されている。ステージ移動制御情報テーブル40aは、図3のステージ移動制御情報テーブル40に、「第2の復帰速度」47と「速度変更距離」48のデータ項目を追加したものである。なお、図3において「復帰速度」46と表していたデータ項目を、図13では「第1の復帰速度」46と表す。
【0066】
「第2の復帰速度」47には、「第1の復帰速度」46に記憶された復帰速度より速い復帰速度(VB)が格納されている。「速度変更距離」48には、復帰時、第2の復帰速度から対物レンズに応じた第1の復帰速度に切り換える条件である速度変更距離(SC)が格納されている。
【0067】
以下では、40倍のドライ対物23cから60倍ドライ対物23dへの切り換え動作について説明する。
図14は、本実施形態における対物レンズの切り換えの際、顕微鏡コントローラ2のCPU201により実行される対物レンズの種別に応じてステージの動作を制御するフローを示す。図15は、本実施形態における40倍のドライ対物レンズ23cから60倍のオイル対物23dへの切り換え動作の様子を示す。
【0068】
図15(A)は、対物レンズと標本19の位置関係を示す。符号401で示す実線は、標本19の最上面の位置であるカバーガラスの位置を示す。現在の光軸方向(Z軸方向)のステージ20上の標本19の座標は、Z_Aである。
【0069】
CPU201は、不揮発性メモリ204から、ステージ移動制御テーブル40aを読み込み、RAM203に展開する(S1301)。
図6に示した状態で、ユーザーによってアイコン302dが押されると(S1302)、CPU201は、RAM203上に展開されたステージ移動制御テーブル40aから、切り換え指示された対物レンズの情報を取得する(S1303)。CPU201は、どのレボルバ穴位置への切り換え指示かの判別と、切り換え経路の判別を行う。ここではレボルバ穴位置=2からレボルバ穴位置=3への切り換え経路となる。
【0070】
CPU201は、切り換え経路中に含まれる対物レンズの「種別フラグ」44に基づいて、当該切り換え経路中に、ドライ対物からオイル対物への切り換え、またはオイル対物からドライ対物への切り換えが発生するかの判別を行う(S1304)。この例では、ドライ対物からオイル対物への切り換えになるので(S1304で「Y」)、ステージ退避距離はオイル注入/拭き取り動作に対応した「第2の退避距離」45=SBが選択される。
【0071】
CPU204は、顕微鏡制御部31を介して、ステージZ制御部22に指示信号を送信する。この指示信号に基づいて、ステージZ制御部22は、図15(B)に示すように、速度V0でステージ20を第2の退避距離SBだけ退避させる(S1310)。
【0072】
退避後の標本19のカバーガラス401のZ座標は、Z_Cである。ステージ20の退避が終了すると、CPU201は、顕微鏡制御部31を介して電動レボルバ24に指示信号を送信する。この指示信号に基づいて、電動レボルバ24は、図15(C)に示すように、レボルバ穴位置=4に装着された60倍のオイル対物を光路に挿入させる(S1311)。60倍のオイル対物が光路に挿入された後は、ステージ20の復帰動作は行われず、ステージ20はその状態で停止した状態となる。
【0073】
このとき、アイコン302dは、図10(a)に示すように、点滅状態となる。ここで、図15(D)に示すように、ユーザーはスポイト410を用いてオイル411の注入作業等を行う(S1312)。作業終了後、再びユーザーによってアイコン302dが押されると(S1313)、CPU201は図15(E)に示すように、ステージ20を第2の退避距離SBだけ復帰させる制御を行う(S1314)。このとき、「第2の復帰速度」47に格納された速度VBで、ステージ20の復帰が行われる。
【0074】
このとき、ステージ20の現在位置と復帰位置との間の距離が「速度変更距離」48に格納された距離SCになると(S1315)、「第2の復帰速度」47=VBからレボルバ穴位置=4の60倍のオイル対物に対応した「第1の復帰速度」46=V4の速度へ変更される(S1308)。この速度変更時の標本19のカバーガラス401のZ座標は、Z_Dである。
【0075】
ステージ20の復帰後、図15(F)に示すように、標本19のカバーガラスの座標は再びZ_Aの座標に復帰される。このとき、図11に示すように、アイコン302cは通常の表示状態になり、アイコン302dが強調表示される。
【0076】
以上のように、本実施形態における顕微鏡システムでは、第1の実施形態に加えてさらに、第2の復帰速度(VB)、速度変更距離(SC)を備える。これにより、ステージ20の復帰時間の短縮を図るとともに、気泡の混入も防止可能となる。
【0077】
本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、ステージ退避状態から復帰状態への指示を行うための入力指示は顕微鏡コントローラ2のタッチパネル207上のボタン302の2度押しとしたが、別途専用のボタンを設けてもよい。
【0078】
また、電動レボルバ24の切り換えは、各対物レンズに対応したアイコンを押すことで指定を行う例であったが、回転方向による切り換え指示のものであってもよい。
さらに、入力ボタンはタッチパネル上のボタンとしたが、ハンドスイッチ等のボタンであってもよい。また、本実施形態ではタッチパネルを有する顕微鏡コントローラとしたが、タッチパネルと同等の機能を有するデバイスにも置き換え可能である。
【0079】
また、本実施形態では、電動レボルバに対してステージ20を光軸方向へ移動させたが、ステージ20に対して電動レボルバを光軸方向へ移動させてもよい。また、本実施形態では、浸液としてオイル(イマージョンオイル)とオイル対物レンズを用いたが、これに限定されず、例えば、水と水浸対物レンズを用いてもよい。
【0080】
各実施形態に係る顕微鏡システムにおいては、顕微鏡装置1として正立顕微鏡装置を採用していたが、その代わりに、倒立顕微鏡装置を採用することももちろん可能である。また、顕微鏡装置を組み込んだライン装置といった各種システムに本実施形態を適応することも可能である。
【0081】
本発明の実施形態に係る顕微鏡システムは、レボルバ穴位置に対応した第1の退避距離情報、ドライ対物/オイル対物の種別フラグ、オイル注入/ふき取りのための第2の退避距離、復帰するための復帰速度を備える。これにより、ドライ対物からオイル対物への切り換え、またはオイル対物からドライ対物への切り換え時において、ステージ退避復帰のうち復帰動作を自動的に一時停止させることが可能となる。よって、オイル注入/ふき取り動作がしやすくなりユーザー負担の低減を図ることが可能となる。
また、ステージ復帰速度を対物レンズ毎に設定可能となるために、オイル対物に応じたステージ復帰速度が設定可能となる。そのため、気泡の混入も防止可能となる。
【0082】
本実施形態における試料を観察する顕微鏡により観察を行う顕微鏡システムは、対物レンズ切換部、ステージ、焦準機構、操作指示入力部、格納部、制御部を備える。
【0083】
対物レンズ切換部は、複数の対物レンズをそれぞれ取り付け穴に搭載し、前記複数の対物レンズを切り換えることにより所望の対物レンズを光路に設定することができる。対物レンズ切換部は、例えば本実施形態で言えば、電動レボルバ24に相当する。
【0084】
ステージは、前記試料が載置される。ステージは、例えば本実施形態で言えば、ステージ20に相当する。
焦準機構は、前記ステージと前記対物レンズ切換部の少なくとも一方を前記光路方向へ移動させる。焦準部は、例えば本実施形態で言えば、ステージZ駆動制御部22に相当する。
【0085】
操作指示入力部は、前記顕微鏡システムを操作するための指示を入力する。操作指示入力部は、例えば本実施形態で言えば、タッチパネル207に相当する。
格納部は、浸液の有無又は浸液の種類に応じた対物レンズの種別を示す種別フラグと、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を所定の距離退避させるための退避距離とを含む移動制御情報が前記対物レンズ毎に格納されている。格納部は、例えば本実施形態で言えば、不揮発性メモリ204に相当する。移動制御情報は、例えば本実施形態で言えば、ステージ移動制御情報テーブル40,40aに相当する。
【0086】
制御部は、前記操作指示入力部により前記対物レンズの切換指示が入力された場合、前記格納部から切換指示された対物レンズに対応する前記移動制御情報を取得し、該移動制御情報に含まれる種別フラグにより切換前後の対物レンズの種別に変化があるかを判定し、切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合、該移動制御情報に含まれる前記退避距離に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させた後に動作を停止し、前記操作指示入力部により前記ステージと前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された後、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる。制御部は、例えば本実施形態で言えば、CPU201に相当する。
【0087】
このように構成することにより、対物レンズの顕微鏡光路への挿脱時に、浸液の有無又は浸液の種類に応じた対物レンズの種別に変化がある場合、ステージを一時退避させてオイル注入/ふき取りを行い、その後再びステージを復帰させることができる。よって、浸液の注入/除去作業がしやすく、かつ浸液への気泡混入を防止することができる。
【0088】
また、前記移動制御情報は、さらに、切換前後の対物レンズの種別に変化がない場合に該移動制御情報により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際に用いられる第1の退避距離を含んでいる。切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合に該移動制御情報により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際に用いられる前記退避距離を第2の退避距離とすると、該第2の退避距離は全対物レンズの前記第1の退避距離のいずれよりも長い。
【0089】
このように構成することにより、ドライ対物からオイル対物への切り換え、またはオイル対物からドライ対物への切り換えを行う場合、オイル注入及びふき取り動作がしやすくなる。
【0090】
また、前記移動制御情報は、さらに、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の移動速度を含んでいる。前記制御部は、前記操作指示入力部により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、前記移動制御情報の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる。
【0091】
このように構成することにより、オイル対物に応じたステージ復帰速度が設定可能となるため、気泡の混入も防止可能となる。また、ステージ復帰速度を対物レンズ毎に設定可能となるため、オイル対物に応じたステージ復帰速度が設定可能となるため、気泡の混入も防止可能となる。
【0092】
また、前記移動制御情報は、さらに、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の対物レンズに応じた第1の移動速度と、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の所定の移動速度であって該第1の移動速度のいずれよりも速い速度である第2の移動速度と、前記第2の退避距離よりも短い所定の距離である速度変更距離とを含んでいる。前記制御部は、前記操作指示入力部により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、現在の前記ステージと該ステージの復帰位置との間の距離が前記速度変更距離になるまで、前記移動制御情報の第2の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を復帰させる方向へ移動させ、前記ステージと前記対物レンズ切換部との間の距離が前記速度変更距離になったら、前記移動制御情報の第1の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる。
【0093】
このように構成することにより、ステージの復帰時間の短縮を図るとともに、気泡の混入も防止可能となる。
また、前記操作指示入力部は、前記対物レンズ切換部に装着された各対物レンズに対応したボタンを有する。このとき、任意の該ボタンを押下することにより、該ボタンに対応した対物レンズへの切換指示を出力する。それから、前記切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合において、該移動制御情報に含まれる前記退避距離に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させた後に動作を停止し、再度該ボタンを押下することにより、前記ステージと前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる。当該ボタンは、例えば本実施形態で言えば、アイコン302a〜302eに相当する。
【0094】
このように構成することにより、例えば、ステージを一時退避させてオイル注入/ふき取りを行った後に、再度切換先の対物レンズをしているためのボタンを押下することにより、ステージを復帰させることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 顕微鏡装置
2 顕微鏡コントローラ
6 透過照明用光源
7 コレクタレンズ
8 透過用フィルタユニット
9 透過視野絞り
10 透過開口絞り
11 コンデンサ光学素子ユニット
12 トップレンズユニット
13 落射照明用光源
14 コレクタレンズ
15 落射用フィルタユニット
16 落射シャッタ
17 落射視野絞り
18 落射開口絞り
19 観察体
20 電動ステージ
21 ステージX−Y駆動制御部
21a X−Yモータ
22 ステージZ駆動制御部
22a Zモータ
23 対物レンズ
24 レボルバ
25 キューブターレット
26 接眼レンズ
27 ビームスプリッタ
28 ポラライザー
29 DICプリズム
30 アナライザー
31 顕微鏡制御部
35(35a,35b) 蛍光キューブ
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 不揮発性メモリ
205 通信制御部
206 タッチパネル制御部
207 タッチパネル
209 規制枠
210 突起
211 突起枠
209a,211a 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を観察する顕微鏡により観察を行う顕微鏡システムであって、
複数の対物レンズをそれぞれ取り付け穴に搭載し、前記複数の対物レンズを切り換えることにより所望の対物レンズを光路に設定することができる対物レンズ切換部と、
前記試料が載置されるステージと、
前記ステージと前記対物レンズ切換部の少なくとも一方を前記光路方向へ移動させる焦準機構と、
前記顕微鏡システムを操作するための指示を入力する操作指示入力部と、
浸液の有無又は浸液の種類に応じた対物レンズの種別を示す種別フラグと、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を所定の距離退避させるための退避距離とを含む移動制御情報が前記対物レンズ毎に格納されている格納部と、
前記操作指示入力部により前記対物レンズの切換指示が入力された場合、前記格納部から切換指示された対物レンズに対応する前記移動制御情報を取得し、該移動制御情報に含まれる種別フラグにより切換前後の対物レンズの種別に変化があるかを判定し、切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合、該移動制御情報に含まれる前記退避距離に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させた後に動作を停止し、前記操作指示入力部により前記ステージと前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された後、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる制御部と、
を備えることを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記移動制御情報は、さらに、切換前後の対物レンズの種別に変化がない場合に該移動制御情報により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際に用いられる第1の退避距離を含み、
切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合に該移動制御情報により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際に用いられる前記退避距離を第2の退避距離とすると、該第2の退避距離は全対物レンズの前記第1の退避距離のいずれよりも長い
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記移動制御情報は、さらに、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の移動速度を含み、
前記制御部は、前記操作指示入力部により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、前記移動制御情報の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記移動制御情報は、さらに、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の対物レンズに応じた第1の移動速度と、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させる際の所定の移動速度であって該第1の移動速度のいずれよりも速い速度である第2の移動速度と、前記第2の退避距離よりも短い所定の距離である速度変更距離とを含み、
前記制御部は、前記操作指示入力部により前記ステージ又は前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、現在の前記ステージと該ステージの復帰位置との間の距離が前記速度変更距離になるまで、前記移動制御情報の第2の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を復帰させる方向へ移動させ、前記ステージと前記対物レンズ切換部との間の距離が前記速度変更距離になったら、前記移動制御情報の第1の移動速度に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記操作指示入力部は、前記対物レンズ切換部に装着された各対物レンズに対応したボタンを有し、
任意の該ボタンを押下することにより、該ボタンに対応した対物レンズへの切換指示を出力し、
前記切換前後の対物レンズの種別に変化がある場合において、該移動制御情報に含まれる前記退避距離に従って前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を移動させた後に動作を停止し、再度該ボタンを押下することにより、前記ステージと前記対物レンズ切換部についての動作指示が入力された場合、前記ステージ又は前記対物レンズ切換部を元の位置に復帰させる
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の顕微鏡システム。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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