説明

顕微鏡システム

【課題】微分干渉観察行う顕微鏡装置のリタデーション調整において、最適なリタデーション位置を高精度に設定できる顕微鏡システムを提供すること。
【解決手段】標本からの観察光を集光する対物レンズと、標本に照射する照明光を射出する照明用光源から射出された照明光を分光して標本に照射するとともに、標本からの光を干渉させる微分干渉観察光学系と、微分干渉観察光学系により生成された干渉像を撮像する撮像部と、干渉像の画像データ、および代表的な干渉色として選択された代表干渉色を記憶する記憶部と、代表干渉色に該当する代表干渉色画像を取得して、代表干渉色画像を配列してカラーバーを作成するカラーバー作成部と、表示部上のカラーバーに対して選択する代表干渉色画像の選択指示情報を入力する入力部と、入力部からの選択指示情報に応じて、リタデーション調整を行うリタデーション調整部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光の干渉を利用して位相の差(リタデーション)を色彩のコントラストに変換する微分干渉観察を行う顕微鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医学や生物学等の分野では、細胞等の観察に、標本を照明して観察する顕微鏡装置を有する顕微鏡システムが用いられている。また、工業分野においても、金属組織等の品質管理や、新素材の研究開発、電子デバイスや磁気ヘッドの検査等、種々の用途で顕微鏡装置が利用されている。標本の観察を行う顕微鏡システムとして、目視によるものの他、CCDカメラ等の撮像素子を用いて標本像を撮像し、モニタ表示する構成を有するものが知られている。
【0003】
また、電子デバイスに用いられるシリコンウエハなどの製造工程では、光の干渉を利用して位相の差(リタデーション)を色彩のコントラストに変換する微分干渉観察法を用いて、例えば透明膜の傷や透明膜の厚みのバラツキなどといった製造上の欠陥の有無の検査が行われている。
【0004】
微分干渉観察法では、光学顕微鏡が備えている通常の光学系(照明レンズ、対物レンズ、結像レンズ)と、ポラライザ、ノマルスキープリズム、アナライザ等の光学素子とを用いて、微分干渉観察光学系を形成する。ポラライザは、照明光の光路に挿入され、照明光を特定方向(単一の振動面)の直線偏光にする。
【0005】
ノマルスキープリズムは、このポラライザを透過した直線偏光を、振動方向が互いに直交している(互いに直交する振動面をもつ)2つの直線偏光に分解して射出するとともに、この2つの直線偏光を照射した標本からの2つの光を再び単一の振動面に統合して干渉させる微分干渉プリズムである。標本からの2つの光は、微分干渉プリズムによって干渉し、干渉像を生成する。微分干渉プリズムによって干渉した光のうち、ある波長の光は強め合い、ある波長の光は打ち消される。この光の組成変化によって現れる色を干渉色という。
【0006】
アナライザは、ノマルスキープリズムを通過して統合された光のみを通過させ、それ以外の光を遮断する。アナライザは、干渉像の振動方向に平行な向き、すなわちポラライザと直交する向きに配置される。
【0007】
微分干渉観察法による顕微鏡システムとして、ポラライザ、アナライザ、またはノマルスキープリズムを電動で駆動させるためのアクチュエータを備え、観察者が操作部を操作することでこれらの光学素子を駆動させることができる光学顕微鏡が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この光学顕微鏡では、観察者が微分干渉観察法を選択すると、制御部がアクチュエータに駆動指示を出してこれらの光学素子を光路に挿入させる。その後、観察者が操作部を操作してリタデーションの調整を行う指示を出すと、制御部がアクチュエータに駆動指示を出してノマルスキープリズムを移動させ、リタデーションの調整が行われる。
【0008】
また、ノマルスキープリズムを電動で駆動させるためのアクチュエータを備え、観察者による操作により、位置情報と干渉色との対応関係を記憶したテーブルを参照して代表的な干渉色に自動で移動させるとともに、干渉色の微調整を行い、標本ごとのリタデーション位置の再現を容易に行うことができる光学顕微鏡が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。この光学顕微鏡により、特許文献1と比して、リタデーションの調整を一段と容易に行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−325281号公報
【特許文献2】特開2008−286871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、微分干渉観察法を用いた検査では、検査対象によっては特定の干渉色のみで検出することが可能な形状もあるため、リタデーション位置の設定(原点位置の設定)が重要となる。しかしながら、上述した特許文献2が開示する光学顕微鏡は、位置情報と干渉色との対応関係を記憶したテーブルを参照してノマルスキープリズムを移動させるため、位置情報と干渉色との対応関係が、ノマルスキープリズムを装置に組み付けた際に生じる装置間の差、または標本ごとによる固体差に対応しない場合が生じる。これにより、アクチュエータにより移動されたノマルスキープリズムの位置が所望の位置に配置されず、微調整を行わなければならなかった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、微分干渉観察行う顕微鏡装置のリタデーション調整において、最適なリタデーション位置を高精度に設定できる顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる顕微鏡システムは、標本が載置されるステージと、少なくとも前記ステージ上の前記標本からの観察光を集光する対物レンズと、前記標本に照射する照明光を射出する照明用光源と、前記照明用光源から射出された前記照明光を分光して前記標本に照射するとともに、該分光した光が照射された前記標本からの光を干渉させる微分干渉観察光学系と、前記微分干渉観察光学系により生成された干渉像を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した干渉像の画像データ、および干渉によって現れる干渉色のうち、代表的な干渉色である代表干渉色を記憶する記憶部と、前記代表干渉色の代表干渉色画像を取得して、該代表干渉色画像を配列してカラーバーを作成するカラーバー作成部と、前記カラーバーを表示する表示部と、前記表示部上の前記カラーバーに対して選択する代表干渉色画像の選択指示情報を入力する入力部と、前記入力部からの選択指示情報に応じて、リタデーション調整を行うリタデーション調整部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記入力部によって選択される前記カラーバーの画像は、0次暗黒点であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記微分干渉観察光学系は、前記照明光の光路に挿入され、該照明光を単一の振動面をもつ直線偏光にするポラライザと、前記対物レンズの光軸に対して直交する方向に移動可能であって、前記直線偏光を互いに直交する振動面をもつ2つの直線偏光に分解して射出するとともに、該射出された前記2つの直線偏光を照射した前記標本からの前記2つの直線偏光に応じた2つの光を、単一の振動面に統合して干渉させるノマルスキープリズムと、前記ノマルスキープリズムを通過した光のみを通過させるアナライザと、からなり、前記ノマルスキープリズムの前記対物レンズの光軸と垂直な方向の移動を制御する駆動制御部をさらに備え、前記カラーバー作成部は、前記代表干渉色画像を前記ノマルスキープリズムの移動方向に対応付けて配列することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記入力部は、外部からの物体の接触位置に応じた入力を受け付けるタッチパネルであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる顕微鏡システムは、上記発明において、前記表示部の表示態様を制御する表示制御部をさらに備え、前記表示制御部は、前記入力部によって指示された代表干渉色画像と、前記入力部によって指示された代表干渉色画像に対応する代表干渉色近傍の干渉色の干渉色画像と、を前記表示部に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、設定された代表干渉色に対応する画像を配列することによって作成されたカラーバーにおける代表干渉色画像の選択情報に基づいてリタデーション調整を行うようにしたので、微分干渉観察行う顕微鏡装置のリタデーション調整において、最適なリタデーション位置を高精度に設定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムの構成の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムの表示入力部の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う表示処理の一態様を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う処理の概要を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う表示処理の一態様を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態の変形例にかかる顕微鏡システムが行う表示処理の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムの構成の一例を示す概念図である。図2は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムの機能構成を示すブロック図である。なお、図1および図2において、顕微鏡システム1が載置される平面をXY平面とし、XY平面と垂直な方向をZ方向として説明する。
【0021】
図1および図2に示すように、顕微鏡システム1は、標本Sを観察する顕微鏡装置2と、顕微鏡装置2を駆動制御する顕微鏡制御部3と、顕微鏡装置2を介して標本Sを撮像して画像データを生成する撮像装置4と、撮像装置4の駆動を制御する撮像制御部5と、制御端末7を介して撮像装置4が撮像した画像データに対応する画像を表示するとともに、顕微鏡システム1の各種の操作の入力を受け付ける表示入力部6と、顕微鏡制御部3、撮像制御部5および表示入力部6を制御する制御端末7と、を備える。顕微鏡装置2、顕微鏡制御部3、撮像装置4、撮像制御部5、表示入力部6および制御端末7は、データが送受信可能に有線または無線で接続されている。
【0022】
顕微鏡装置2は、標本Sが載置されるステージ21と、側面視略C字状をなし、ステージ21を支持するとともに、レボルバ22を介して対物レンズ23を保持する顕微鏡本体部24と、標本試料Sに光を照射する落射照明用光源25と、を備える。
【0023】
ステージ21は、XYZ方向に移動自在に構成されている。ステージ21は、モータ211によってXY平面内で移動自在である。ステージ21は、顕微鏡制御部3の制御のもと、図示しないXY位置の原点センサによってXY平面における所定の原点位置を検出し、この原点位置を基点としてモータ211の駆動量が制御されることによって、標本S上の観察箇所を移動する。また、ステージ21は、モータ212によってZ方向に移動自在である。ステージ21は、顕微鏡制御部3の制御のもと、図示しないZ位置の原点センサによってステージ21のZ方向における所定の原点位置を検出し、この原点位置を基点としてモータ212の駆動量が制御されることによって、所定の高さ範囲内の任意のZ位置に標本Sを焦準移動させる。なお、焦準移動はステージをZ方向に動かすだけでなく、対物レンズ23または対物レンズ23を含む観察光学系を上下動させることで行ってもよい。
【0024】
レボルバ22は、顕微鏡本体部24に対してスライド自在または回転自在に設けられ、対物レンズ23を標本Sの上方に配置する。レボルバ22は、電動レボルバ等を用いて構成される。レボルバ22は、マウンタ221によって倍率(観察倍率)が異なる複数の対物レンズ23を保持する。レボルバ22は、観察光の光路上に挿入されて標本Sの観察に用いる対物レンズ23を択一的に切換えるため、マウンタ221をスライドまたは回転させるレボルバ駆動部222と、レボルバ22の接続状態等を検出するレボルバ検出部223と、を有する。
【0025】
レボルバ駆動部222は、顕微鏡制御部3の制御のもと、マウンタ221をスライドまたは回転させる。レボルバ検出部223は、レボルバ22が顕微鏡本体部24に接続されていることを検知するレボルバ接続センサ(図示せず)と、対物レンズ23が観察光の光路上に挿入された対物レンズ23の種類を識別するレボルバセンサ(図示せず)と、対物レンズ23が観察光の光路上に挿入されたことを検知する移動完了センサ(図示せず)と、を有する。レボルバ検出部223は、各種センサが検出した検出結果を顕微鏡制御部3へ出力する。
【0026】
なお、レボルバ22に代えて、ノーズピースを用いる構成であってもよい。ノーズピースは、対物レンズの光軸に直交する方向にスライド自在に設けられたスライダを介して、所望の対物レンズ23を標本Sの上方に配置することができる。ノーズピースは、スライダによって倍率(観察倍率)が異なる複数の対物レンズ23を保持する。ノーズピースは、顕微鏡制御部3の制御のもと、スライダをX方向にスライドさせることによって、観察光の光路上に挿入されて標本Sの観察に用いる対物レンズ23を択一的に切換えることができる。
【0027】
対物レンズ23は、たとえば1倍,2倍,4倍の比較的倍率の低い対物レンズ231(以下、「低倍対物レンズ231」という)と、10倍,20倍,40倍の低倍対物レンズ231の倍率に対して高倍率である対物レンズ232(以下、「高倍対物レンズ232」という)とを少なくとも一つずつマウンタ221に装着される。なお、低倍対物レンズ231および高倍対物レンズ232の倍率は一例であり、高倍対物レンズ232が低倍対物レンズ231に対して高ければよい。
【0028】
顕微鏡本体部24は、ファイバー251を介して落射照明用光源25から射出された照明光L1(以下、「落射照明光L1」という)を集光する照明レンズ241と、落射照明光L1の光路を対物レンズ23の光軸に沿って偏向させるハーフミラー242と、対物レンズ23およびハーフミラー242を介して入射される標本Sの反射光を集光して観察像を結像する結像レンズ243とが内部に設けられている。
【0029】
また、顕微鏡本体部24は、照射レンズ241とハーフミラー242との間に設けられるポラライザ244と、ハーフミラー242と対物レンズ23との間に設けられるノマルスキープリズム245(以下、「プリズム245」という)と、ハーフミラー242と結像レンズ243との間に設けられるアナライザ246とが設けられている。このポラライザ244、プリズム245およびアナライザ246によって微分干渉観察光学系を形成する。ポラライザ244は、落射照明光L1の光路に挿入され、落射照明光L1を特定方向(単一の振動面)の直線偏光にする。ポラライザ244は、制御端末7の制御のもと、モータ244aの駆動によって移動する。
【0030】
プリズム245は、ポラライザ244を透過し、ハーフミラー242によって偏向された直線偏光を、振動方向が互いに直交している(互いに直交する振動面をもつ)2つの直線偏光に分解して射出するとともに、この2つの直線偏光を照射した標本Sからの2つの光を再び単一の振動面に統合して干渉させる微分干渉プリズムである。標本Sからの2つの光は、微分干渉プリズムによって干渉し、干渉像を生成する。プリズム245は、制御端末7の制御のもと、モータ245aの駆動によって移動する。また、顕微鏡本体部24には、このプリズム245が検出位置に配置された場合にプリズム245を検出するプリズム検出部245bが設けられている。なお、落射照明の場合には1つのノマルスキープリズムが照明光と観察法用とを兼ねるが、透過照明の場合には1対のノマルスキープリズムが必要となる。
【0031】
アナライザ246は、プリズム245を通過して統合された光のみを通過させ、それ以外の光を遮断する。アナライザ246は、干渉像の振動方向に平行な向き、すなわちポラライザ244と直交する向きで配置される。アナライザ246は、制御端末7の制御のもと、モータ246aの駆動によって移動する。
【0032】
なお、ハーフミラー242とプリズム245との間に、標本Sを拡大するズームレンズ機構を有してもよい。ズームレンズ機構は、例えばズームレンズ群およびズームレンズ群を駆動するズームレンズモータ等を用いて構成される。ズームレンズモータは、顕微鏡制御部3の制御のもと、ズームレンズ群を光軸方向に沿って移動させることにより、ズームレンズ機構の倍率を変更することができる。
【0033】
落射照明用光源25は、ハロゲンランプ、キセノンランプまたはLED(Light Emitting Diode)等によって構成される。落射照明用光源25は、ファイバー251を介して標本Sの観察像を形成するための落射照明光L1を出射する。
【0034】
落射照明光L1は、照明レンズ241、ハーフミラー242、微分干渉観察光学系および対物レンズ23を経て標本Sに照射される。標本Sで反射した反射光L2(以下、「観察光L2」という)は、対物レンズ23、ハーフミラー242および結像レンズ243を経て撮像装置4に入射する。
【0035】
顕微鏡制御部3は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて構成され、制御端末7の制御のもと、顕微鏡装置2を構成する各部の動作を統括的に制御する。具体的には、顕微鏡制御部3は、レボルバ駆動部222を駆動することにより、マウンタ221をスライドまたは回転させて観察光L2の光路上に配置する対物レンズ23を切換える切換処理、モータ211またはモータ212を駆動することにより、ステージ21の駆動処理、モータ244a、モータ245aおよびモータ246aを駆動することにより、ポラライザ244、プリズム245およびアナライザ246からなる微分干渉観察光学系の駆動処理、および標本Sの観察に伴う顕微鏡装置2の各部の調整を行う調整処理等を行う。顕微鏡制御部3は、顕微鏡装置2を構成する各部の状態、たとえばステージ21の位置情報(XY位置、Z位置)およびレボルバ22に装着された対物レンズ23の種類情報等を制御端末7に出力する。
【0036】
撮像装置4は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子41を用いて構成される。撮像装置4は、撮像制御部5の制御のもと、結像レンズ243を経て入射された標本Sの観察像を撮像して標本Sの画像データを連続して生成する。撮像装置4は、カメラケーブルを介して生成した標本Sの画像データを制御端末7へ出力する。なお、本実施の形態では、撮像装置4が撮像部として機能する。
【0037】
撮像制御部5は、CPU等を用いて構成され、撮像装置4の動作を制御する。具体的には、撮像制御部5は、撮像装置4の自動ゲイン制御のON/OFF切換処理、ゲインの設定処理およびフレームレートの設定処理等を行って撮像装置4の撮影動作を制御する。撮像制御部5は、AE処理部51と、AF処理部52と、を有する。
【0038】
AE処理部51は、撮像装置4が生成した画像データに基づいて、撮像装置4の露出条件を自動的に設定する。具体的には、AE処理部51は、制御端末7を介して取得した画像データから輝度を算出し、算出した輝度に基づいて撮像装置4の露出条件、たとえば露光時間を決定することで撮像装置4の自動露出を行う。
【0039】
AF処理部52は、撮像装置4が生成した画像データに基づいて、撮像装置4のピントを自動的に調整する。具体的には、AF処理部52は、画像データに含まれるコントラストを評価し、合焦している合焦位置(焦点位置)を検出することにより、撮像装置4のピントを自動的に調整する。なお、AF処理部52は、画像データに基づいて、ステージ21の各Z位置における画像のコントラストを評価することにより、合焦している焦点位置(Z位置)を検出してもよい。
【0040】
表示入力部6は、制御端末7との通信を行う表示通信部61と、画像を表示する表示部62と、外部からの物体の接触に応じた位置信号を出力するタッチパネル63と、を有する。
【0041】
表示通信部61は、制御端末7との通信を行うための通信インターフェースである。表示通信部61は、制御端末7から出力される画像データを表示部62へ出力する。
【0042】
表示部62は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等からなる表示パネルを用いて構成される。表示部62は、表示通信部61を介して入力される画像データに対応する画像を表示する。表示部62は、顕微鏡システム1の各種操作情報等を表示する。
【0043】
タッチパネル63は、表示部62の表示画面上に設けられ、外部からの物体の接触位置に応じた入力を受け付ける。具体的には、タッチパネル63は、ユーザが表示部62に表示される操作アイコンに従ってタッチ(接触)した位置を検出し、この検出したタッチ位置に応じた位置信号を、表示通信部61を介して制御端末7へ出力する。たとえば、図3に示すように、タッチパネル63は、表示部62が、顕微鏡システム1の各種操作情報や、撮像装置4によって連続して生成された画像データに対応するライブ画像、または撮像装置4によって撮像した撮像画像を画像表示領域A1内で表示することで、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)として機能する。一般に、タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式および光学方式等がある。本実施の形態1では、いずれの方式のタッチパネルであっても適用可能である。
【0044】
制御端末7は、顕微鏡制御部3、撮像制御部5および表示入力部6との通信を行う制御通信部71と、顕微鏡システム1の各種情報を記憶する記憶部73と、顕微鏡システム1の各部の駆動を指示する駆動指示信号の入力を受け付ける入力部72と、顕微鏡システム1の各部を制御する制御部74と、を備える。
【0045】
制御通信部71は、顕微鏡制御部3、撮像制御部5および表示入力部6それぞれとの通信を行うための通信インターフェースである。また、制御通信部71は、カメラケーブルを介して撮像装置4から出力される画像データを制御部74へ出力する。
【0046】
入力部72は、キーボード、マウス、ジョイスティックおよび各種スイッチ等を用いて構成され、各種スイッチの操作入力に応じた操作信号を制御部74に出力する。
【0047】
記憶部73は、制御端末7の内部に固定的に設けられるフラッシュメモリおよびRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリを用いて実現される。記憶部73は、顕微鏡システム1に実行させる各種プログラム、プログラムの実行中に使用される各種データを記憶する。また、記憶部73は、制御部74の処理中の情報を一次的に記憶する。記憶部73は、撮像装置4が撮像した画像データを記憶する画像データ記憶部731と、得られた画像データの撮像位置等を示す位置情報を記憶する位置情報記憶部732と、微分干渉観察光学系によって得られる干渉色のうち、代表干渉色として設定された干渉色を記憶する代表干渉色記憶部733と、を有する。また、記憶部73は、表示入力部6のタッチパネル63から入力される接触位置を示す位置信を号一時的に記憶する。なお、記憶部73は、外部から装着されるメモリカード等を用いて構成されてもよい。
【0048】
制御部74は、CPU等を用いて構成され、入力部72およびタッチパネル63からの駆動指示信号、位置信号および切換信号等に応じて顕微鏡システム1を構成する各部に対応する指示やデータの転送等を行って顕微鏡システム1の動作を統括的に制御する。
【0049】
また、制御部74は、画像処理部741と、駆動制御部742と、表示制御部743と、カラーバー作成部744と、リタデーション調整部745と、を有する。
【0050】
画像処理部741は、制御通信部71を介して入力される画像データに対して、所定の画像処理を施して表示部62で表示する表示画像を生成する。具体的には、画像処理部741は、画像データに対して、オプティカルブラック減算処理、ホワイトバランス調整処理、同時化処理、カラーマトリクス演算処理、γ補正処理、色再現処理およびエッジ強調処理等を含む画像処理を行う。画像処理部741は、画像データを所定の方式、たとえばJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式で圧縮し、圧縮した画像データを画像データ記憶部731へ出力する。
【0051】
駆動制御部742は、例えばタッチパネル63または入力部72からの入力に応じて顕微鏡装置2を構成する電動ユニット(ステージ21、微分干渉観察光学系)を駆動する駆動制御を行う。
【0052】
表示制御部743は、表示部62の表示態様を制御する。具体的には、表示制御部743は、撮像装置4が生成するライブ画像や、画像データ記憶部731が記憶する複数の画像データの各々の画像を、制御通信部71、表示通信部61を介して表示部62に表示させる。表示制御部743は、顕微鏡システム1の各々の動作に関する操作情報、たとえば、ステージ21の操作情報等を、制御通信部71、表示通信部61を介して表示部62に表示させる。
【0053】
カラーバー作成部744は、画像データから代表干渉色記憶部733に記憶されている代表干渉色の画像(代表干渉色画像)について、プリズム245の移動量に応じた順で画像を並べて合成したカラーバーを作成する。
【0054】
リタデーション調整部745は、カラーバー作成部744が作成したカラーバーの代表干渉色画像に対する選択指示情報(選択指示信号の入力)に応じて、リタデーション調整を行う。
【0055】
このように構成された顕微鏡システム1は、制御部74の制御のもと、撮像装置4で撮像された標本Sの画像データを、制御通信部71、表示通信部61を介して表示部62に表示することによってユーザに標本Sの画像を観察させることができる。また、顕微鏡システム1は、入力部72やタッチパネル63から入力される信号に基づいて、制御部74が顕微鏡システム1の各部に指示信号や駆動信号を出力することにより、顕微鏡装置2および撮像装置4が駆動する。さらに、顕微鏡システム1は、カラーバー作成部744によって作成されたカラーバーを用いて、入力部72やタッチパネル63から入力される信号に基づいて微分干渉観察光学系を駆動処理して、リタデーションの調整を行う。
【0056】
つぎに、リタデーションの調整を行うためのカラーバー生成処理について説明する。図4は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムが行うカラーバー生成処理の概要を示すフローチャートである。
【0057】
カラーバー生成処理では、まず、制御部74の制御のもと、0次暗黒点設定処理を行う(ステップS101)。この0次暗黒点設定処理では、装置毎の差を補正するため、制御部74が、プリズム245が移動するための原点としての0次暗黒点の設定を行う。0次暗黒点設定処理によって、各干渉色(画像データ)とその座標(位置情報)を対応付けて記憶部73の画像データ記憶部731および位置情報記憶部732にそれぞれ記憶させる。
【0058】
ここで、本実施の形態で用いる0次暗黒点とは、例えば干渉像の背景色(干渉色)が最も暗い画像のことを指す。なお、微分干渉により得られる像(干渉像)は、位相の異なる2つの明視野像の合成像であって、各明視野像の位相差が、波長の1/2に近づくほど、得られる像(合成像)は暗いものとなる。0次暗黒点設定処理では、例えば、目視において最も暗く見える像や、画像全体として最も輝度値の小さい画像を0次暗黒点として設定する。
【0059】
制御部74は、0次暗黒点設定処理後、カラーバー作成処理を行う(ステップS102)。カラーバー作成処理では、カラーバー作成部744によって、リタデーション調整に用いるカラーバーの作成を行う。このカラーバー作成処理では、得られた画像が代表干渉色記憶部733に記憶されている代表干渉色であるかを識別して、代表干渉色であればその代表干渉色画像を取得し、この取得した代表干渉色画像を、プリズム245の移動方向に沿って配列することによってカラーバーを作成する。
【0060】
図5は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムが行うカラーバー表示の一態様を示す模式図である。カラーバー8は、図5に示すように、それぞれ代表干渉色にそれぞれ該当する代表干渉色画像G1〜G8がプリズム245の移動方向に対応して一列に配列されて合成されたものである。各代表干渉色画像G1〜G8は、同一標本、同一視野の画像であり、本実施の形態では、例えばこの視野内に特徴点Pが存在しているものとする。
【0061】
ここで、0次暗黒点として選択する代表干渉色画像では、例えば、特徴点Pの形状等により、他の代表干渉色画像G1〜G4,G6〜G8の特徴点Pと比して、代表干渉色画像G5の特徴点Pの明るさが異なる場合がある。0次暗黒点として選択する画像は、上述したように、最も暗く見える像や、画像における最も輝度値の小さい点をもとに判断されるが、他の画像と比して異なる明るさの特徴部分を判断して選択することも可能である。
【0062】
カラーバー作成処理後、制御部74は、得られたカラーバーを表示画面上に表示する(ステップS103)。例えば、制御部74は、表示制御部743に指示して図5に示すカラーバー8を、図3に示す表示画面上に表示させる。
【0063】
つづいて、ステップS101における0次暗黒点設定処理について、図6を参照して説明する。図6は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムが行う0次暗黒点設定処理の概要を示すフローチャートである。まず、駆動制御部742は、プリズム245をプリズム検出部245bのセンサ検出位置までプリズム245を移動させる(ステップS201)。駆動制御部742は、プリズム245をセンサ検出位置まで移動させると、この位置を0に設定する(ステップS202)。
【0064】
駆動制御部742は、位置設定後、対物レンズ23の光軸に対して直交する方向(ステージ21の標本S載置面に平行な方向)にプリズム245を移動させる(ステップS203)。このとき、移動パルスのカウントを開始する。
【0065】
このとき、画像処理部741は、プリズム245の移動に伴って順次得られる画像をもとに、0次暗黒点であるか否かを判定する(ステップS204)。このとき、駆動制御部742は、画像処理部741から0次暗黒点である画像を判定した旨の信号を受信するまで、プリズム245の移動処理を繰り返す(ステップS204:No)。
【0066】
また、駆動制御部742は、画像処理部741から0次暗黒点である画像を判定した旨の信号を受信すると(ステップS204:Yes)、移動パルスのカウントを終了させて移動パルス数を取得する(ステップS205)。制御部74は、移動パルス数を記憶部73に記憶するとともに(ステップS206)、0次暗黒点が得られた時点のプリズム245の位置(移動パルス数に対応する位置)を原点として設定する(ステップS207)。
【0067】
また、制御部74は、得られた移動パルス数をもとに、プリズム245の可動範囲の設定を行う(ステップS208)。制御部74は、設定した原点および可動範囲を位置情報記憶部732に記憶させる。
【0068】
つづいて、ステップS102におけるカラーバー作成処理について、図7を参照して説明する。図7は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムが行うカラーバー作成処理の概要を示すフローチャートである。まず、駆動制御部742は、プリズム245を0次暗黒点設定処理によって設定された可動範囲の一端までプリズム245を移動させる(ステップS301)。
【0069】
駆動制御部742は、プリズム245を可動範囲の一端まで移動させた後、他端側にプリズム245を移動させる(ステップS302)。このとき、プリズム245の移動方向は、上述したように、対物レンズ23の光軸に対して直交する方向(ステージ21の標本S載置面に平行な方向)である。
【0070】
このとき、駆動制御部742は、設定されたパルスごとにプリズム245を移動させる。制御部74は、プリズム245が停止している間に撮像制御部5によって標本Sの撮像処理を行わせて、標本Sの画像を取得する(ステップS303)。
【0071】
ここで、カラーバー作成部744は、得られた画像が代表干渉色であるか否かを判断する(ステップS304)。このとき、カラーバー作成部744が、得られた画像が代表干渉色でないと判断した場合(ステップS304:No)、制御部74は、ステップS302に移行して、プリズム245の移動および標本Sの撮像処理を行わせる。
【0072】
また、得られた画像が代表干渉色である場合(ステップS304:Yes)、制御部74は、代表干渉色の代表干渉色画像の画像データとこの代表干渉色の位置とを記憶部73に記憶させる(ステップS305)。その後、駆動制御部742は、プリズム245の位置が、可動範囲の他端であるか否かを判断し(ステップS306)、他端でなければステップS302に移行してプリズム245を移動させる(ステップS306:No)。
【0073】
一方、駆動制御部742が、プリズム245の位置が、可動範囲の他端であると判断した場合(ステップS306:Yes)、カラーバー作成部744は、画像データ記憶部731を参照して各代表干渉色の代表干渉色画像を取得し、取得した各代表干渉色の代表干渉色画像をプリズム245の移動方向に対応させて配列して合成し、カラーバーを作成する(ステップS307)。
【0074】
次に、作成されたカラーバーをもとに、リタデーション調整を行う処理について、図8,9を参照して説明する。図8は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムが行うリタデーション調整処理の概要を示すフローチャートである。図9は、本実施の形態にかかる顕微鏡システムが行うカラーバー表示の一態様を示す模式図である。
【0075】
まず、リタデーション調整を行う指示入力画面として、上述したカラーバー作成処理によって作成されたカラーバー8と、このカラーバー8における代表干渉色画像の配列方向に沿って移動可能であり、GUIとして入力指示可能なスライダ81と、が表示され、この表示画面上にタッチパネル63が設けられている。観察者は、この指示入力画面において、タッチパネル63を介して指示入力画面上のGUI(スライダ81)を操作する(ステップS401)。
【0076】
観察者は、GUI(スライダ81)を操作して、カラーバー8として配列されている代表干渉色である各画像のうち、0次暗黒点として選択する代表干渉色画像(ここでは、代表干渉色画像G5)にスライダ81を移動させて、代表干渉色画像G5が0次暗黒点である旨の選択指示信号を入力する。制御部74は、0次暗黒点である旨の選択指示信号を受けると、選択された代表干渉色画像G5を0次暗黒点の画像として設定し、リタデーション調整部745が、位置情報記憶部732を参照してこの画像G5に対応する位置を原点として設定することによってリタデーション調整を行う(ステップS402)。なお、このときにプリズム245の可動範囲の再設定を行ってもよい。
【0077】
その後、駆動制御部742が、リタデーション調整後の原点位置を基準としてプリズム245を移動させるとともに、画像処理部741および表示制御部743が、この原点位置を基準として撮像された画像データに対応した画像表示を行う(ステップS403)。
【0078】
上述した各処理によって、装置によって自動で設定された原点位置に基づいて作成されたカラーバーをもとに、観察者がこのカラーバーを確認して直感的に0次暗黒点を選択してリタデーション調整を行うことによって、一段と正確なリタデーション調整および原点の設定を行うことができる。
【0079】
上述した本実施の形態によれば、設定された代表干渉色に対応する画像を配列することによって作成されたカラーバーにおける代表干渉色画像の選択情報に基づいてリタデーション調整を行うようにしたので、微分干渉観察行う顕微鏡装置のリタデーション調整において、最適なリタデーション位置を高精度に設定することができる。
【0080】
図10は、本実施の形態の変形例にかかる顕微鏡システムが行う表示処理の一態様を示す模式図である。上述した実施の形態では、観察者が、GUI(スライダ81)を操作して、0次暗黒点とする代表干渉色画像を選択するものとして説明したが、表示制御部743が、選択された代表干渉色画像に対して、選択された画像に対応する代表干渉色近傍の干渉色の干渉色画像、例えば、プリズム245の移動方向に沿って隣接する隣接画像G51,G52を表示部62に表示させてもよい。
【0081】
ここで、隣接画像G51,G52は、画像処理部741が、予め撮像された画像を位置情報および画像データ記憶部731を参照して抽出するものであってもよいし、画像G5が選択された旨の情報を受けた制御部74が、駆動制御部742に対して、画像G5に隣接する位置にプリズム245を配置するよう指示するとともに、撮像制御部5に対して隣接画像G51,G52を撮像するよう制御し、隣接画像G51、G52を取得するようにしてもよい。
【0082】
また、表示された画像G51,G52を0次暗黒点として選択することも可能であり、0次暗黒点として選択する画像の自由度を向上させることができる。なお、この画像表示および隣接画像の選択にかかる処理では、観察者が、スライダ81を操作してカラーバー8における代表干渉色画像を選択し、表示された隣接画像G51,G52をタッチ(接触)することによって、0次暗黒点とする画像の選択指示信号を入力することができる。また、隣接画像の表示は、図10のようにカラーバー8の上方に表示するものであってよいし、選択画像G5および隣接画像G51,G52をポップアップ表示するものであってもよい。
【0083】
なお、上述した本実施の形態にかかるカラーバー作成処理において、カラーバー作成部744が、得られた画像ごとにこの画像が代表干渉色であるか否かを判断するものとして説明したが、駆動制御部742が、プリズム245を移動させる際に、可動範囲の一端から他端まで移動させ、この間に画像処理部741またはカラーバー作成部744がCCDカメラ等で、干渉色が代表干渉色であるかを順次判断して、代表干渉色である場合にその位置情報を位置情報記憶部732が記憶するようにし、他端側までプリズム245を移動させた後、記憶した位置情報をもとに代表干渉色の画像を取得するようにしてもよい。
【0084】
また、上述した本実施の形態にかかるリタデーション調整は、装置ごとに行うものであってもよいし、観察する標本ごとに行うものであってもよい。なお、カラーバーは対物レンズの透過率または瞳位置、標本の反射率によって変化するため、対物レンズおよび標本を変えた際にリタデーション調整を行うことが好ましい。ここで、対物レンズごとに0次暗黒点を対応付けたテーブルを記憶部73が記憶し、制御部74が、このテーブルを参照して使用する対物レンズに応じて、リタデーション調整部745にリタデーション調整を行わせてもよい。
【0085】
また、上述した本実施の形態にかかるカラーバーは、代表干渉色画像である矩形の画像をプリズムの移動方向に沿って配列するものとして説明したが、代表干渉色画像の位置情報をもとに、隣接して配置される代表干渉色画像とのプリズム位置の距離に応じて、画像における配列方向の長さを変えて、各代表干渉色画像とプリズム位置との相対的な距離を表現するものとしてもよい。
【0086】
また、上述した本実施の形態にかかる代表干渉色は、記憶部73に記憶されている干渉色から選択されるものであってもよいし、色情報(例えば、画像中に存在する色)等から観察者によって任意に選択されるものであってもよい。
【0087】
また、上述した本実施の形態では、原点として選択するカラーバーにおける代表干渉色画像が、干渉像の背景色が最も暗い画像である0次暗黒点であるものとして説明したが、選択される画像は0次暗黒点に限らず、観察者が任意に選択する干渉色の画像であってもよい。標本の種類等に応じて、リタデーション調整による原点位置を変更することも可能である。
【0088】
また、上述した実施の形態では、タッチパネル63を介して入力指示するものとして説明したが、入力部72によって入力指示を行うものであってもよく、キーボードによる操作や、マウス、ジョイスティック等によって表示画面上のポインタを操作して入力指示を行うものであってもよい。
【0089】
また、上述した実施の形態では、表示入力部と制御端末とが別々に構成されていたが、例えば、表示入力部と制御端末とが一体的に形成された携帯型端末であってもよい。
【0090】
また、上述した実施の形態では、顕微鏡装置として正立型顕微鏡装置を例に説明したが、例えば、倒立型顕微鏡装置であっても本発明を適用することができる。さらに、顕微鏡装置を組み込んだライン装置といった各種システムにも、本発明を適用することができる。
【0091】
また、上述した実施の形態では、顕微鏡装置、撮像装置、表示入力部および制御端末を備えた顕微鏡システムを例に説明したが、例えば、微分干渉観察光学系を形成し、標本を拡大する対物レンズ、対物レンズを介して標本を撮像する撮像機能および画像を表示する表示機能を備えた撮像装置、例えば、ビデオマイクロスコープ等であっても、本発明を適用することができる。
【0092】
以上のように、本発明にかかる顕微鏡システムは、微分干渉観察行う顕微鏡装置のリタデーション調整において、最適なリタデーション位置を高精度に設定するのに有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 顕微鏡システム
2 顕微鏡装置
3 顕微鏡制御部
4 撮像装置
5 撮像制御部
6 表示入力部
7 制御端末
21 ステージ
22 レボルバ
23 対物レンズ
24 顕微鏡本体部
25 落射照明用光源
41 撮像素子
51 AE処理部
52 AF処理部
61 表示通信部
62 表示部
63 タッチパネル
71 制御通信部
72 入力部
73 記憶部
74 制御部
211,212,244a,245a,246a モータ
222 レボルバ駆動部
223 レボルバ検出部
241 照明レンズ
242 ハーフミラー
243 結像レンズ
244 ポラライザ
245 プリズム
245b プリズム検出部
246 アナライザ
731 画像データ記憶部
732 位置情報記憶部
733 代表干渉色記憶部
741 画像処理部
742 駆動制御部
743 表示制御部
744 カラーバー作成部
745 リタデーション調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本が載置されるステージと、
少なくとも前記ステージ上の前記標本からの観察光を集光する対物レンズと、
前記標本に照射する照明光を射出する照明用光源と、
前記照明用光源から射出された前記照明光を分光して前記標本に照射するとともに、該分光した光が照射された前記標本からの光を干渉させる微分干渉観察光学系と、
前記微分干渉観察光学系により生成された干渉像を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した干渉像の画像データ、および干渉によって現れる干渉色のうち、代表的な干渉色である代表干渉色を記憶する記憶部と、
前記代表干渉色の代表干渉色画像を取得して、該代表干渉色画像を配列してカラーバーを作成するカラーバー作成部と、
前記カラーバーを表示する表示部と、
前記表示部上の前記カラーバーに対して選択する代表干渉色画像の選択指示情報を入力する入力部と、
前記入力部からの選択指示情報に応じて、リタデーション調整を行うリタデーション調整部と、
を備えたことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記入力部によって選択される前記カラーバーの画像は、0次暗黒点であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記微分干渉観察光学系は、
前記照明光の光路に挿入され、該照明光を単一の振動面をもつ直線偏光にするポラライザと、
前記対物レンズの光軸に対して直交する方向に移動可能であって、前記直線偏光を互いに直交する振動面をもつ2つの直線偏光に分解して射出するとともに、該射出された前記2つの直線偏光を照射した前記標本からの前記2つの直線偏光に応じた2つの光を、単一の振動面に統合して干渉させるノマルスキープリズムと、
前記ノマルスキープリズムを通過した光のみを通過させるアナライザと、
からなり、
前記ノマルスキープリズムの前記対物レンズの光軸と垂直な方向の移動を制御する駆動制御部をさらに備え、
前記カラーバー作成部は、前記代表干渉色画像を前記ノマルスキープリズムの移動方向に対応付けて配列することを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記入力部は、外部からの物体の接触位置に応じた入力を受け付けるタッチパネルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記表示部の表示態様を制御する表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、
前記入力部によって指示された代表干渉色画像と、
前記入力部によって指示された代表干渉色画像に対応する代表干渉色近傍の干渉色の干渉色画像と、
を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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