説明

風力エネルギー回収浮体船

【課題】
ナセル内部の重量物を少なくし、重心を水面下に下ろし、復元力の高い浮体船を作る。このため発電機を水面近くに下ろし、風力による回転エネルギーを圧搾空気に変換しタワー内部の空洞部に高圧ガスとして蓄圧する。さらに、風車施設が強風時でも風に抗することは無く、微風時でも効率良く受風ができるように、自発的に風車プロペラが風上を向くようにする。
【解決手段】
一基の風車施設で得た風力による回転エネルギーを空気コンプレッサーや油圧ポンプで圧力エネルギーに変換し、得られた圧搾空気をタワー内部に蓄圧保存し、それらを一箇所に集めて発電する。さらに、風車プロペラが常に風上を向くように、風力エネルギー回収浮体船の船首の喫水線近傍を尖らせ、喫水線以下の部分を流線形にして造波抵抗を軽減させ、かつ船底のキールの縦断面積を大きくして復元力の強い風車設備を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
風力エネルギー回収用浮体船が自然に風上に向く構造を有し、かつ圧搾空気に変換された風力エネルギーを浮体船のタワー内に貯蔵する洋上風力エネルギー回収浮体船に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上などの風力発電で得られた電力を消費地に運ぶには送電ケーブルや海底ケーブルが一般的である。しかし、送電ケーブルが高価であること、送電ロスが大きいことなどから、風力エネルギーを電力以外のエネルギーに変換して貯蔵し、これを消費地に輸送する方法が検討されている。有限会社エヌティエイチ設計アンド解析計算の野澤は「エネルギー生産装置」において、メガフロート上の風力発電機や太陽電池パネルあるいは波力発電機により得た電力により海水を電気分解し、酸素ガスおよび水素ガスを液化して貯蔵容器に貯蔵する方法が特許文献1に開示している。谷口は船舶上に設備した垂直軸型風車より得た電力により洋上で海水の電気分解により水素を抽出し燃料電池用燃料に供することが特許文献2に開示している。他方、洋上風力発電から得られた電力で、真下の海水から金属ナトリウムを製造した後、消費地で水を加えて水素を発生させ、発電用燃料に供し、副産物の苛性ソーダはソーダ工業の原料にする、あるいはさらに苛性ソーダを熔融塩電気分解して金属ナトリウムのエネルギーサイクルを構築する方法については、本願発明者によって特許文献3の「海洋資源エネルギー抽出・生産海洋工場」および特許文献4「海洋電気分解工場」、非特許文献1の「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」に開示している。
【0003】
プロペラ型風力発電装置は、受風量を大きくするため、大型化の傾向にある。それに連れて、タワーが高くなり、その頂上のナセルの中には、発電機、高速回転ギア、方向変換ギアなどを格納するために、頭部が重くなり、タワーが重さに耐え切れず損傷する事故が陸上で報告されている。タワーが地盤に固定されている陸地や浅瀬の場合は、固定を強固にすれば良いが、海底が深い沖合や洋上あるいは湖などでは、それら大型風車を浮体上に建設することになる。そのためには、ナセル内部の重量物を水面近くに下ろし、重心を水面近くに下ろさねばならない。そこで、最も重量物である発電機、高速回転ギア、風車のプロペラを風上に動かすための方向変換ギアなどをナセルから外すことを考えねばならない。そこで、ナセル内で、プロペラの回転を直接発電機で発電する代わりに、この風力による回転エネルギーを圧搾空気に変換すれば貯蔵が楽になり、必要に応じて一定なエネルギーを取り出すことが可能になる。一般に気体は圧縮すれば体積は縮小され、それをさらに縮小すれば液体や固体になる。このため風力の貯蔵には大スペースを必要としない。京セラ株式会社の加藤らは「空気エネルギー装置」において、風車に連動した圧縮機により圧搾空気を作り、これを空気タンクに貯える方法を特許文献5に開示している。同様な手法を船井は「圧搾空気生成及び貯蔵装置並びに該圧搾空気生成及び貯蔵装置を使用した発電システム」を特許文献6に開示している。林は「圧力蓄積構造体」において風車の回転で空気室をシリンダーとするピストンを押し下げ、空気室内の空気を圧縮し、これを空気貯蔵槽に送る構想を特許文献7に開示している。佐藤は「風力発電装置」において、複数の風車支持の水平軸風車の回転軸にそれぞれエアコンプレッサーを配管で連結して圧搾空気をエアタンクに貯留し、この圧搾空気でエアモーターを回転させ発電機することが特許文献8に開示している。宮崎は「風力発電装置」において、風車の回転をギアで高速にして一方は発電機、他方は空気圧搾ピストンに繋ぎ、発電量が過剰時は圧搾空気を貯蔵し、不足時にはエアモーターを駆動して発電する方法を特許文献9に開示している。また圧搾空気を利用して水に圧力をかけて水車を回し発電する報告を株式会社間組の吉村が「揚水発電所」において、揚水された水を上部貯水池から下部貯水池に落とす際に落差水を圧搾空気で追加圧することにより有効落差が短くても所定の発電出力を得ることができる方法について特許文献10に開示している。風車の回転により圧搾空気を作り貯蔵し、それに水を満たした水槽タンクに送り、その水圧でタービンを回転させ発電させる方法について、篠崎は「水を高いところから落とさず、低いところの水を利用し風力、空気の圧力、水の圧力を組み合わせ利用した発電装置」を特許文献11に開示している。
【0004】
プロペラで効率よく風力を得るためにはプロペラを風上に向ける必要がある。最も簡便な方法として、ナセル部に風見鳥のような垂直尾翼を取り付る方法が報告されている。独立行政法人国立高等専門学校の一色らは特許文献12の「風力発電装置」において、ナセル後方部分に垂直尾翼と水平尾翼とを設けた構造により、プロペラを自発的に風上に向けている。一方風車の発電機の先端を尖った形状にして風上を向くようにし、風下側にプロペラ備え、両者の回転軸に垂直尾翼を備えて自発的に風上からの風を効率よく捉える方法が、野原により特許文献13の「風力発電装置」に開示している。株式会社リポートサービス北海道の西田らは特許文献14の「ツインローター式風力発電装置」において、2基のプロペラ付き発電機をアームで固定し、そのアームの後方の2基の風車の対称面に垂直尾翼を備え、自発的に風車が風上を向くように工夫することを開示している。清水建設株式会社の宮川らは特許文献15の「浮体構造及び該浮体構造の位置制御方法」において洋上風車の浮体の中央部に風力発電施設を置き、浮体上に具備した風向検出器で測定した方向を複数の浮体に取り付けた舵を作動させて風上に向かせる機構が開示している。プロペラ型風車を自発的に風上に向ける機構について、市吉は「洋上風力発電システム」において、強風の中で船体の風向きに対する姿勢を確保するために、発電船を双胴船型として波浪とローリングの影響を小さくし、かつスポイラーとして水中翼を垂直にして発電船が強風に流されることを防止し、発電船の前後に4枚設置した垂直翼の角度を制御して、船体の姿勢を制御する方法が特許文献16に開示している。
【0005】
海上や湖上又は河川では陸上より風が強く、沖合ではさらに風速が速く、しかも障害物が無いため安定した風が吹いている。さらに陸上では大型風車の設置は運搬がネックであるが、洋上や湖上又は河川では港が利用できるため楽であり、しかも陸上に比べて騒音、電波障害など周辺環境への影響も少ない。しかし設置を考えると我が国と海外は考え方にかなりの隔たりが生じてくる。例えば、海外の洋上風車は浅瀬が多いため、その殆どが海底固定式やプラットホーム式であるが、我が国は水深が深いため浮体式を考える必要がある。と言っても、今後各国が排他的経済水域内あるいはその外側を開発することになれば浮体式風車の必要性は大きくなる。これら風力タービンの支持構造物については本願発明者による非特許文献1の「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」に固定式支持構造と浮体式支持構造の違いについて述べている。独立行政法人海上技術安全研究所の矢後らは「洋上風力発電設備」において、発電用の風車を支持するタワーを昇降可能にし、強風時には同タワーの下端部の浮力タンクに注水することにより、水中へ没入させて、待避を容易に行えるようにする方法について特許文献33に開示している。日立造船株式会社の村上は「洋上風力発電の浮体式基礎構造物」において、風車を立設支持する円筒状の主浮体の中心軸を鉛直に配置し、この主浮体を囲むようにトラスによって一体的に設けられた複数の従浮体を備え、主浮体の下方部分が海中に水没し、従浮体の上方部分は海上に位置し、主浮体の喫水線以下に、主浮体の横断面より大径の平板を水平となるように設置することによって、水深の影響を受けず、海洋地形にも関係せず、波浪外力や風外力等の影響を回避する方法が特許文献17、18、19に、「洋上風力発電装置」においては、平面正三角形状の枠組み構造物の各頂点位置に風力発電機を立設し、夫々3個の風力発電装置を結ぶ枠組み構造物の中心部の水面上に浮体を取り付ける方法が特許文献20に開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−059472号公報
【特許文献2】特開2006−070775号公報
【特許文献3】特開2007−331681号公報
【特許文献4】特開2008−038673号公報
【特許文献5】特開平06−185450号公報
【特許文献6】特開2005−344701号公報
【特許文献7】特開2005−226652号公報
【特許文献8】特開2005−180237号公報
【特許文献9】特開2005−036769号公報
【特許文献10】特開平10−068377号公報
【特許文献11】特開平11−351118号公報
【特許文献12】特開2010−101263号公報
【特許文献13】特開2010−071237号公報
【特許文献14】特開2006−322383号公報
【特許文献15】特開2007−331414号公報
【特許文献16】特開2001−349272号公報
【特許文献17】特開2003−252288号公報
【特許文献18】特開2002−285952号公報
【特許文献19】特開2002−285951号公報
【特許文献20】特開2002−130113号公報
【特許文献21】特開2005−225406号公報
【特許文献22】特開2008−239059号公報
【特許文献23】特開2008−201185号公報
【特許文献24】特開2009−190717号公報
【特許文献25】特開平08−040346号公報
【特許文献26】特開2000−108983号公報
【特許文献27】特開平10−119875号公報
【特許文献28】特開平08−218679号公報
【特許文献29】特公表2005−519253号公報
【特許文献30】特開2008−095702号公報
【特許文献31】特開2001−349272号公報
【特許文献32】特開平06−185450号公報
【特許文献33】特開2005−344701号公報
【特許文献34】特開2005−226652号公報
【特許文献35】特開2007−263077号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】村原正隆・関和市 「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」パワー社出版(2007年12月発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
わが国の海岸線は33,900 kmと長く、地球一周、約4万kmの84.7%の長さを有する世界屈指の海洋国家である。さらに1994年発効した海洋法に関する国際連合条約によると、沿岸国は200海里(370 km)までの海底および海底下を大陸棚とすることが出来るほか、海底の地形・地質が一定条件を満たせば、200海里の外側に大陸棚を設定することができる。これら水深2,000メートル内外に存在する熱水鉱床は金、銀、銅、亜鉛、鉛などを含む泥状の硫化物で、海底において熱水作用に伴い形成された多金属硫化物鉱床であり、我が国の周辺では太平洋の伊豆、小笠原海域、沖縄海域などに存在する可能性が高く、次世代の鉱物資源として有望視されている。その他にも排他的経済水域内の比較的浅い海域に分布するマンガンクラストや5,000メートル内外に分布するマンガン団塊など海水に溶存している量とは比較できないほどの金属が埋蔵している。これら広大で深度が深い洋上に風力エネルギー回収装置建設の工期を短縮するには浮体構造が最適と考える。さらに建設工事の簡便さや台風や強風などを回避する風車の開発や改良が必要である。そこで本願発明では「風見型起き上がり小法師式圧搾空気製造用洋上プロペラ型風車」を提唱する。
近年、プロペラ型風力発電装置は、受風量を大きくするため、大型化の傾向にある。それに連れて、タワーが高くなり、その頂上のナセルの中には、発電機、高速回転ギア、方向変換ギアなどを格納するために、頭部が重くなり、タワーが重さに耐え切れず折れる事故が陸上で報告されている。タワーが地盤に固定されている陸地や浅瀬の場合は、固定を強固にすれば良いが、海底が深い沖合や洋上あるいは湖上では、それら大型風車を浮体上に建設することになる。そのためには、ナセル内部の重量物を水面近くに下ろし、重心を水面近くに下ろさねばならない。そのためには、最も重量物である発電機、高速回転ギアや風車のプロペラを風上に動かすための方向変換ギアなどをナセルから外すことを考える。そこで、ナセル内で、プロペラの回転を直接発電機で発電する代わりに、この風力による回転エネルギーを圧搾空気に変換し、高圧ガスの形で蓄圧する貯蔵庫としてタワー内部の空洞部を用いれば、大容量の圧搾空気を貯蔵でき、無風状態も気にせず必要に応じて一定なエネルギーを取り出すことが可能になる。さらに風車施設を浮体船上に建造すれば、浮体船の喫水線の形状を工夫すれば、自然に風上に風車を向け、かつ風車施設全体が風に逆らうことなく強風に向かって強い風力エネルギーを獲得することが可能になる。風車施設全体が軽く、内部が空洞構造にして、水面下の球形体又は楕円形状水タンクは海水や水を注入することによる錘として風車施設全体を起立させ、曳航や修理・建造・保守点検時には海水や水を抜き水面上に伏させ、台風などの強風を避ける場合には該タワー兼高圧ボンベにも水を注入して所望する任意の深さに垂直に水没させる構造を有することが本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我が国の海岸線は、地球一周の84.7%と長い。しかも海底も深い。さらに排他的経済水域内の海底資源開発のための電力には洋上風力発電は不可欠で、その風力発電施設の構造は浮体式が望ましい。さらに風車が常に風上を向き、強風に抗せず、稼動時の風車施設の重心が水面下に位置し、設置・補修点検が容易で、台風時の緊急避難が容易で、しかも施設での作業が短期間で済む構造が必要である。一般には風車施設建設や修理のために大型クレーンを現場水域に配船するのが常である。しかし、故障が起き易いナセル内の発電機や増速ギアあるいは風向調整ギアを外し、ナセル内には圧搾空気ポンプ又は油圧ポンプのみにすれば、故障の確率は激減する。さらに、風車設備台座の水面下の円柱支持体内のタンクの中の錘としての水を抜き、水面に伏せさせれば、曳航や修理・建造・保守点検時には作業が楽である。 しかも、台風などの強風を避ける場合には該タワー兼高圧ボンベにも水を注入して所望する任意の深さに垂直に水没させることができる。
風車が横風や突風をかわす常套手段は風車のプロペラを風上に向けることである。一般的には、特許文献16に開示しているように、風向検出器で検知した後、浮体船の舵を作動させて間接的に風上を向かせている。しかし、それでは機敏な動作は期待できない。船舶が洋上で停泊する場合、船尾には投錨せず、船首のみに投錨すると自然に船首を風上に向いた位置で停泊する。これは、船が水の抵抗で船首を風上に向かすためである。この原理は、船は水面近傍で空気抵抗と水の抵抗を受けるが、水の流体抵抗は空気の800倍であるから、水から受ける流体抵抗は大きい。その流体抵抗成分は、摩擦抵抗、造波抵抗、粘性圧力抵抗である。摩擦抵抗は、船体表面と水とがこすれる時に生ずる。造波抵抗は、水流と船との界面での摩擦抵抗により水面に波を起こす。粘性圧力抵抗は、前進する物体周囲の流体が物体表面から離れて行き(流れ剥離)、その結果、物体の後方に渦を発生させる。この結果、物体後方の表面に働く圧力が低下し、前方に働く圧力との差が生じる。そこで浮体船における流体の剥離を最小限に抑え、粘性圧力抵抗を小さくするために、船の喫水線以下の部分の形状を流線形にする。また造波抵抗を極力抑えるためには、水を切る船首部分を鋭くする。このため、水面下は流線形に、水面に近い喫水線に極近い部分は先端の尖った形状にする。住友重機マリーンエンジニアリング株式会社の佐々木は特許文献21の「船舶」において船舶の前方に向かって尖った突起物を具備させて造波抵抗を抑制することを開示している。三井造船株式会社の山崎らは特許文献22の「船舶」において船首前半部の方形係数が0.88〜0.96という船型が大きい船舶に関しての船首の形状計算によって造波抵抗を減少する計算式を開示している。
さらに、造波抵抗を物理的に軽減する方法として、喫水線以下の船首部分を球状船首(バルバス・バウ)にする。この方法は、1940年8月8日進水した戦艦大和や1940年11月1日進水した戦艦武蔵に採用され、今日のタンカーや大型船に採用されている。この球状船首による造波抵抗減衰原理は、喫水線下の球状船首で発生した波の山と谷が、喫水線近傍の尖った船首部で発生した波の谷と山とが互いに干渉し、2つの波同士が打ち消されるため造波抵抗が軽減する。株式会社来島ドックの片岡は特許文献23の「自動運搬船の船首構造」において満喫水線下に球状船首を有する自動車運搬船を開示している。井本商運株式会社の井本は特許文献24の「コンテナー船」において球状船首の上方に窪みを付けることを開示している。川崎重工業株式会社の山野らは特許文献25(特開平8−040346)の「船首形状」において主船体との繋がり不連続性が生じないよう球状船首により喫水で造波抵抗と破波抵抗を減少させる形状を開示している。
本発明では圧搾空気を風車タワー内部に蓄圧するが、その圧搾空気の一部を浮体船底で発生させ、直径0.5mm内外の微細な気泡(マイクロバルブ)として船底を覆えば摩擦抵抗を軽減することができる。とくに海流や潮流の流れが速い場所での係留には効果大である。石川島播磨重工業株式会社の高橋は特許文献26(特開2000−108983)の「摩擦抵抗低減船」において球状船首部を前方に突出させ、その部分から気体(マイクロバルブ)を噴出す球状船首により摩擦抵抗を減ずることを開示し、かつ特許文献27(特開平10−119875)の「マイクロバルブ発生装置」で気泡生成装置を開示している。ただし潜水艦のように水中においては船体が空気との接触界面が無いから造波抵抗を考慮する必要が無いために流線形に近い涙滴型をしている。
ただし、風車タワーの背が高く、風の影響を無視できない場合には、風車タワーの形状を流線形として自然に風上に向くようにする。さらに補助手段として、釣り船に見られるように、船尾に比較的大きな1枚の帆(ミズン)又は2枚の帆(スパンカー)を付けることも効果的だと考える。
【0010】
一般に従来の風力発電施設では風車タワーの上端部のナセルの中では風車プロペラ軸が歯車を介してあるいは直接発電機に直結されていた。この発電機の重力バランスが崩れタワーが損傷する事故が報告されている。そこで海底や湖底や地盤に基礎を持たない浮体構造では重心を水面下に下ろして安定を図る。このために、ナセル上の発電機を廃止し、その代りに風車の回転を直接ロータリー空気コンプレッサー、又はクランクシャフトを介して空気コンプレッサーを稼動させ、得られた圧搾空気をタワー内部の圧搾空気貯蔵ボンベに貯える。あるいはナセル内の油圧ポンプ(歯車ポンプやベーンポンプ)でプロペラの回転軸から機械的エネルギーを受け取り、圧力エネルギーに変換された高圧油は、パイプや高圧ゴムホースなどを介して油圧制御弁(圧力制御弁:仕事の大きさを設定、流量制御弁:仕事の速さを設定、方向制御弁:仕事の方向を設定)で各仕事に分けられた後、パイプや高圧ゴムホースなどを介してタワー下部(水面近くの風車台座部)に設置した油圧アクチュエーター(油圧モーター:回転運動に変換、油圧シリンダー:直線運動に変換)に圧送し、再度運動エネルギーに変換されて目的の仕事を実行する。その後、役割を終えた油は夫々の制御弁に戻された後、油タンクで回収される。一般に仕事を終えた油は高温であるため、海水や湖水で冷却し、さらに不足分だけ油を補給し再度低圧油としてナセル内の油圧モーターに送る。風車の基本的な欠点の一つに起動トルクが小さいことである。このため外部からの始動が必要不可欠である。一般的には、プロペラ軸をモーターで始動させるが、その電力は大きい。とくに本発明では、プロペラの回転運動エネルギーを油圧ポンプの圧力エネルギーに変換しているので、始動時に油圧ポンプの低圧油入口から瞬時のみ超高圧油を送れば、油圧ポンプは油圧モーターの役割をして回転を開始する。一度回転が開始されれば、プロペラは風力によって回転を開始するので、その後は、油圧ポンプから高圧油が油圧アクチュエーターに圧送される。ここで使用する超高圧油は、油タンクから油圧ポンプに送られている低圧油の循環経路に、アキュムレーターを繋ぐだけでよい。アキュムレーターの原理は、液体は圧縮しても容積を小さくすることはできないが、気体は圧縮すると容積を小さくできるという性質を応用したものである。アキュムレーターの構造はシリンダーが油室と気体室とがピストンによって分離されている。先ず、気体室の気体出入り口弁を開き、気体(窒素ガス)を封入した後、弁を閉じる。続いて油室の弁を開け、高圧油を圧入すると、圧油はピストンを押し上げ、気体を圧縮して油圧力とガス圧力が平衡になるまで、油を油室に入れる。ここで油の出入り口の弁を閉れば超高圧油が蓄圧される。そこで静止状態にある風車のプロペラを起動したい時に、油室の弁を開放すると、瞬時にガスが膨張して圧油がナセル内の油圧ポンプに瞬間的に高圧油が流れるために、始動が行われ、アキュムレーターの仕事は終了する。このようにアキュムレーターは超高圧油を蓄え、必要時に、瞬発力を発揮して一回目の仕事を終える。しかし、気体と油圧の入力を繰り返せば何回も使えるため経済的である。アキュムレーターを風力発電装置に利用した報告としては、鹿島建設株式会社の羽生らは特許文献28の「能動型制震構造物」において、風力発電用風車の振動を制震するための駆動装置として使うことが開示している。アキュムレーターを風力発電のプロペラのブレーキとして用いることが、ハニング アンド カール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクルテ ハフツング アンド シーオー. カーゲ の アガーディー ゲイバー ヨセフ らによって特許文献29の「特に風力発電装置に用いられるブレーキ装置」で開示している。
【0011】
海底、湖底あるいは地盤に基礎(固定場所)を持たない浮体式風力エネルギー回収装置では、風車装置の安定性を確保するために、風車装置の中心線(風車タワーの中心軸)と浮力の作用線との交点M(メタセンター)が重心Gよりも高ければ、風車全体が傾いても復元力が働く。したがってGM(メタセンターから重心までの距離)が大きければ復元力は強くなる。したがってメタセンターを高くし、かつ重心から離すことが重要である。しかし、復元力が高すぎると、風車装置の揺れが早くなり、安定性が欠けるという弊害がある。そこで浮体式風車のメタセンターの高度を下げるためにタワーの底部に設備類を配置する提案が、オーシャン・ウインド・エナジー・システムズ・インコーポレイテッドのウイリアム・イー・ヘロニマスによって特許文献30の「沖合風力タービン、風タービン、および風力エネルギー変換システム」で開示している。本発明では、風車装置の重心を極端に下げ、さらに復元力を高めるために、浮体船の横幅を広くし、かつ、該浮体船の船底にはヨットのキール(センターボードと該センターボードの末端部に錘)に水を満たした流線形型空洞パイプと、錘として該センターボードの末端には球又はラグビーボール状の錘を備え、かつ該センターボードの両側面と垂直に揺れ止めと傾きを抑制するために大面積フィンを備える。揺れ止めと強風による流れ抑制については特許文献31にスポイラーとして水中翼を垂直にして設備することが開示しているが、これは海底下というよりも海上で台風に対向して発電すると言う主旨であって本願の水面下数十メーターの錘の脇にバランスを取るために設備するものとは大きく異なる。さらに、風車施設が自然に風上を向くように浮体船の船首をアンカーロープで海底や湖底に固定する。
本願発明の主旨はナセル中の発電機の代りに圧縮機を載せ替え、これにより圧搾空気を製造することである。風力エネルギーで圧搾空気を作り、空気タンクに貯える方法は特許文献32,33,34に開示している。また風車設置の据付や補修点検作業を容易にし、かつ台風時の緊急避難が容易なること、しかも施設作業が短期間で済む構造が必要である。このため、風車タワーを水面下に沈めることを可能にし、台風などの強風時にはタワー内の圧搾空気貯蔵ボンベに海水や湖水を注水することにより、目的深度まで没入させる。風車タワーを水没させる方法について特許文献35に開示しているが、本願発明における水面下に沈めるためにタワーに注水する方法は同じであるが、水面下に数十メートルにもおよぶ水タンクとその下端に錘と揺れ止め平面板を備えて風車設備が安定して起立させる方式とは異なる。さらに建設時あるいは保守点検や修理時には水面下の水タンクの水を抜き風車施設全体を水面に寝かした状態あるいは傾斜をつけて作業や港からの曳航ができる構造を有する風見型水注入起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車設備である。
【0012】
液体は圧縮しても容積を小さくすることはできないが、気体は圧縮すると容積を小さくすることができる。このため耐圧容器があれば、蓄圧ができ、必要な時に取り出すことができる。とくに風力発電は風速が一定しないため安定した電力が得られない。そのため、風車施設の高所にあるナセル内部で、回転エネルギーに変換した風力を、さらに圧力エネルギーに変換して製造した圧搾空気をタワー内部の圧搾空気ボンベに貯蔵し、その圧搾空気を水面近くで再度回転運動に変換して発電機を回せば、重さを気にせずに、大型発電機を駆動することができる。何回もエネルギー変換を行えば、変換効率は下がるが、発電機を軽くするために発電効率が低く、かつ設備費が高価な風車施設を複数基作るよりも、安価で、機械的メカニズムだけですむ風力圧搾空気製造・貯蔵施設を多数建造し、この圧搾空気を一箇所に集め海面や湖面上のように重心の低い位置で大型発電機を駆動した方が、発電効率、設備費、建設コスト、故障率、メンテナンス費用などを考えると、経済性大だと考える。さらに風車施設に油圧を用いれば、メンテナンス及び設備が簡便になると考える。ナセル内のプロペラ軸に直結して回転運動を直接圧力に変換する油圧ポンプ(歯車ポンプ、ベーンポンプ)で高圧油を作り、これをパイプでタワーの下部まで圧送し、制御弁を介して油圧アクチュエーター(油圧モーター:回転運動、油圧シリンダー:直線往復運動)を駆動する。
油圧モーターでは大きな回転トルクが得られるから、増速ギアを回して、大型発電機を駆動することができる。一方油圧シリンダーでは大きな圧縮力が得られるから大容量で、高圧縮率の圧搾空気を製造できる。さらに断熱膨張を誘起して液体空気を製造することもできる。これから、液体窒素や液体酸素ができる。
【0013】
請求項1に記載の発明は、強風時でも微風時でも風力エネルギーを効率よく回収可能で、かつ、風力エネルギー回収浮体船が強風に煽られたても、風に抗すること無く、しかも転覆することも無い強い復元力を得るための手段が講じられている。一般にヨットは強風に煽られても転覆しないのは、船底に付けられたキールが錘になって重心を水面下に位置させているからであり、小さなヨットでも1万トン級の貨物船に匹敵するほどの復元力を持っている。そこで本発明では、浮体船喫水面の下側の支持体として内部の空洞部には水を満たした外壁横断面が流線形状又は円形状あるいは楕円状キールを設け、その末端部には錘を付けて、このキールと錘を総称してキールと呼ぶことにする。ここでキールの外壁横断面の形状は円形、楕円形あるいは流線形状の筒状又は錐状のいずれでも良いが、浮体船底部の断面積が広く、末端部の錘側の断面積が小さい錐状が望ましい。とくに、キール内部の空洞部は水タンク構造であり、この空洞部に必要に応じて適量の水を満たすことにより、風車エネルギー回収浮体船を起立させたり、寝かしたりすることが可能である。風車エネルギー回収浮体船を寝かせるためには、水タンクの水を抜くと、その排水量が増すにつれて徐々に横に傾き始め、最終的には横に寝た状態になる。とくに風車本体を港から曳航する場合や建造時あるいは保守点検や修理時には水を抜いて水面に倒し、水を入れれば立ち上がる。このように寝かせたり、起立させたりできる構造は、大型クレーンの必要も無く、工期の短縮、保守点検や修理を経済的に行うことができる。さらに台風接近時など強風時には、浮体船上側の風車タワー内の圧搾空気貯蔵庫に水を注入すれば徐々に水面下に沈めることが可能である。
さらに、重心を下げ、風力エネルギー回収浮体船の安定性を向上させ、転倒防止のために、従来ナセル内の設備物であった発電機や増速ギアあるいは風向調整ギアなどを取り去り、その代りに、空気コンプレッサーや油圧ポンプを設備し、風車プロペラの回転軸に連動した回転エネルギーから圧力エネルギーへの変換装置が、空気コンプレッサーの場合は得られた圧搾空気は、タワー内部の圧搾空気貯蔵庫に貯え、油圧ポンプの場合は得られた高圧油はパイプによってタワー下部又は該浮体船甲板に備えた油圧制御装置に送られ、制御弁を作動させて、圧力制御弁では仕事の大きさ、流量制御弁では仕事の速さ、方向制御弁では仕事の方向を決め、それら制御弁で分岐された高圧油は油圧アクチュエーターに圧送される。
流体が液体でも気体でも抗力を受ける。この抗力は摩擦抵抗や圧力抵抗であり、摩擦抵抗は気体では小さいが、水などの液体では約800倍と大きい。空気や液体において最も強く影響を受けるのが圧力抵抗である。流体が構造物の背後に回った時に、流れが剥離して、物体を前進させる力が減衰する。このため構造物の形状を流線形状にしてスムーズな流れをつくれば、後ろに回った流れが流線形構造物を押し戻す作用が働き、かつ摩擦抵抗も軽減するため風力エネルギー回収効率が上昇する。たとえ、風が弱い時でも風からのエネルギーを効率よく受風するためには風車プロペラを風上に向ける必要があり、風車設備が風上を向く一翼をタワーやナセルの流線形状が担っている。最も風車設備が風上方向を自然に向く原理は、浮体船の喫水線近傍での風による空気抵抗と水との流体抵抗である。
船舶が沖合で停泊する場合、船首のみに投錨すると自然に船首を風上に向ける位置に安定する。これは、船が水の抵抗で船首を風上に向かすためである。このように、常時風力エネルギー回収浮体船が風上を向いていれば、風に抗することは無い。
そこで本発明では、復元力が強く、常に風上を向く浮体船を建造する目的で、浮体船上部の空気流に配慮して風車タワーやナセルの外壁形状を流線形に、浮体船下部のキールや錘も流線形形状にすることが望ましい。しかし、建造費や加工性あるいは材料強度などからタワーやキールを円筒形にし、キール末端部の錘を球にすることも可能である。さらに、風力エネルギー回収浮体船が左右や前後の揺れや傾きを抑制するために、キールの下部で錘の上側部分に複数枚のフィンを等角度に取り付けてある。このフィの設置は、横揺れ防止の観点からキールが円筒形の場合は必要である。一方、キールに対して鉛直に設備されたフィンは、風車施設の縦揺れを防止する働きがあるため必要不可欠である。とくにプロペラの前傾を抑える効果があり、大面積のフィンは欠かせない。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記プロペラ型風車が常時風上を向く構造体として、台風接近時に大型貨物船が港を避けて沖合に避難する。これは船が、船首のみに投錨すれば自然に船首を風上に向ける位置に安定するからである。この原理は、船が水の抵抗で船首を風上に向かすためである。一般に潜水艦は水の中だけで行動するから、造波抵抗は関係なく風車頭部のナセルのように回転流線形状の涙滴型形状でよい。しかし、空気と接触する船体においては水面近傍で空気抵抗と水の抵抗を受ける。ところが、水の流体抵抗は空気の800倍であるから、水から受ける流体抵抗は大きい。その流体抵抗成分は、摩擦抵抗、造波抵抗、粘性圧力抵抗である。摩擦抵抗は、船体表面が水とこすれる時に生ずる。造波抵抗は、水流と船との界面での摩擦抵抗により水面に波を起こす。粘性圧力抵抗は前進する物体周囲の流体はやがて物体表面から離れて行き(流れ剥離)物体の後方に渦が発生する。この結果、物体後方の表面に働く圧力が低下し、前方に働く圧力との差が生じる。そこで浮体船における流体の剥離を最小限に抑え、粘性圧力抵抗を最も小さくするために、船の喫水線以下の部分の形状を流線形とし、造波抵抗を極力抑えるためには、水を切る船首部分を鋭くする。さらに、造波抵抗を物理的に軽減するために、喫水線以下の船首部分を球状船首にする。この球状船首による造波抵抗減衰原理は、喫水線下の球状船首で発生した波の山と谷が、喫水線近傍の尖った船首部で発生した波の谷と山とが互いに干渉し、2つの波同士が打ち消されるため造波抵抗が軽減する。本発明では浮体船のタワー内部に圧搾空気貯蔵庫があるから、この圧搾空気の一部を、該浮体船の船底に備えた小孔から噴出させると、小さな気泡が船底を覆い、摩擦抵抗を激減させる。原油タンカーなどの広底船で低速な船では抵抗の約80%が摩擦抵抗であるため、摩擦抵抗減には有効な手段である。この船底から圧搾空気を噴出させる方法は、浮体船のように静止した構造物には、如実の効果は期待できないが、水の流速が早い場所では有効である。勿論、運搬船を兼ねて航海する船については有効な手段である。船尾の水面下の舵は、物理的に船体の方向を変える以外は風上と風下を結ぶ線上で直線上に固定する。一般に、釣り船などに見られる、船尾甲板上の1枚帆のミズンや2枚帆のスパンカーなどの整流翼は、浮体船を風上に向けるためには有効であるが、本発明のようにタワーを流線形状の場合は必ずしも必要ではないので、脱着可能としてある。この風上を常時向かせるためには、風力エネルギー回収浮体船の船首をアンカーロープやアンカーチェーンなどで固定投錨することが必要不可欠である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、風が吹いても回らない風車を始動させるための手段である。一般に、風車には始動のために、風車の羽が微風でも回転するように発電機の後方にモーターを連結する場合が多い。しかし、始動時のみで稼働率の低い施設を付けることは非経済的である。そこで本発明ではプロペラの回転軸に連動した回転エネルギーから圧力エネルギーへの変換装置が、空気コンプレッサーの場合には、風車ナセルの大気吸入口を閉め、外付けボンベから高圧ガス(空気)を瞬間的に、短時間送り、回転始動したらガスの供給を止め、大気吸入口を開け圧搾空気製造を開始する。他方、油圧ポンプの場合は、気体圧縮式の油圧アキュムレーターを使用する。油圧アキュムレーターにはブラダ型、ダイヤフラム型、ピストン型、インライン型があるが、破壊に対する信頼性の高い、ピストン型を採用する。ピストン型はシリンダーの内壁側がピストンによって気体室と油室にわかれ、夫々の部屋には吸気弁と油出し入れ弁があり、先ず吸気弁及び油出し入れ弁を開放して気体室に窒素ガスで満たした後、吸気弁を閉る。この状態で、油室に油を注ぎ、加圧を行い、気体を圧縮し、均衡状態になったら、油出し入れ弁を閉じる。次に、起動時に、油出し入れ弁を開放して、圧油圧ポンプの油吸込み側を加圧すると、瞬時加圧により得られた超高圧で風車回転軸に直結した該油圧ポンプを回転起動させ、風車プロペラを始動させる。起動後は該プロペラ型風車の回転運動を該油圧ポンプで高圧油に増圧させた油を前記プロペラ型風車タワーの下部又は浮体船甲板に具備した油圧装置又は該油圧アクチュエーターに圧送し風車は仕事を開始する。ここで、油圧アクチュエーターが油圧モーターの場合には直結した増速ギアを介して発電機を回転させて電力を得る。このばあい、増速ギアを重心の低い位置に置くため、作業性が良く、かつ油圧により高いエネルギーが得られるため、速度比の高いギアを回転させることができ発電機を高速回転させて電力を得ることもできる。ここで発電機を回す理由は1艘の風力エネルギー回収浮体船で発電を行うものである。しかし、本発明の主旨は、油圧アクチュエーターが油圧シリンダーの場合であり、油圧シリンダーに直結した空気コンプレッサーと連動させて圧搾空気を作り、風力エネルギー回収浮体船に貯蔵した後、複数艘の圧搾空気を母船に集め、大型発電機を作動させることである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、複数基の風力施設からの風力エネルギーを、水面近くや地上の一箇所に集めて一つの大型発電機で発電するものである。従来の風力発電施設の基本が、一基の風車施設に一基の発電機が載せられ、これが複数基群をなし、風力発電地帯が構成されていたため、これら風車設備のナセル部を頭軽にするために軽い発電機を搭載しなければ成らなかった。さらに風況が一定しないため、得られた電力の一時貯蔵が不可欠であった。そこで、本発明では、風力エネルギーを電力に変換する前に、風力で空気を圧縮し、圧搾空気の形で風車タワー内部に蓄圧保存しておき、必要時に、常に一定風速の風を発電機に送風する方式を採用した。さらに、発電機を船上や地面などの低い位置に設備すれば、大型発電機を駆動でき、大電力を得ることができる。このため、各風車施設に蓄えられた圧搾空気を高圧ホースで発電所に集める方式を採用した。本発明の請求項全てが水面に浮かぶ風力エネルギー回収浮体船と記載してあるが、自然現象を用いて風車プロペラ装置を風上方向の向けるシステムを除けば、陸上風力地域でも利用できるシステムである。陸上風車施設群では、夫々の風車で得られた圧搾空気を高圧ホースや配管で一箇所に集め、そこで発電すればよい。陸上において、プロペラ型風車を自然に風上方向に向かすためには、ナセルあるいは台座部にベアリングを使用するのではなく、磁気浮上させて、摩擦抵抗を無くせば良いが、最も経済的で簡便な方法は、人工池または沼地に風力エネルギー回収浮体船を浮かせ、貯水池として利用できる。さらに人工池に満たす液体は水でも油でも良い。
洋上や湖水あるいは河川の場合には、風力エネルギー回収浮体船を1艘又は複数艘集め、望ましくは複数艘集める。風車タワー内部に貯蔵された圧搾空気は高圧ホースを介してメガフロート機能を有する母船若しくは水上工場又はオンサイト工場あるいは陸上工場に集積させ、集積された該圧搾空気はメガフロート又はオンサイト工場あるいは陸上工場において、発電用タービンの回転源、産業用圧搾空気、又は繰り返し圧縮をして液体空気や液体酸素、液体窒素の製造用に供される。各風力エネルギー回収浮体船から高圧ホースで圧送される圧搾空気を陸地の工場で利用することもできる。また単艘の場合には浮体船の甲板部や船室内に発電機を具備することもできる。一般に油圧装置は駆動部が高温になるが、海水や湖水あるいは河川の水を冷却水として用いることができる。また圧搾空気製造工程で断熱圧縮により発熱する。これらも海水や湖水あるいは河川の水を冷却水として用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による洋上風力エネルギーの回収は、直接電力を得るのでは無く、風車タワー内部に圧搾空気として蓄圧保管し、常時等速度の風により発電を行うものである。さらに、風車施設が強風時でも風に抗することは無く、微風時でも効率良く受風ができるように、浮体船の喫水線近傍で起きる造波抵抗を軽減して、船首が何時も風上を向くようにし、かつ喫水面下のキールと水との摩擦抵抗を軽減させるための横断面の形状と浮力となる外壁の容積あるいは重量となる内部空洞の容積及び錘を調整して、重心位置を下げ、復元力を大きくした。さらに従来ナセル内で起きた増速ギアや発電機の故障はそれらの装置を水面近傍まで下ろすことにより、修理点検が楽になり、さらに各風力施設からの圧搾空気を母船で集め、発電するため、大型発電機1個で大電力が得ることが可能になり、経済効果大である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の効果的な実施の形態を図1〜9に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は風力エネルギー回収浮体船の概観図である。水面上に浮かぶ風力エネルギー回収浮体船が復元力を高くするために、風車タワーの台座である浮体船1の重心2を水面下に位置させ、重心2を通り静止水面に垂直な直線を中心軸として、流線形状又は円形状の錐台構造体であるタワー3を起立固定させる。ここでタワー3の外壁は円形状でも良いが、プロペラ型風車6を自然に風上に向かせるためには、風の整流効果のある流線形状が望ましい。従来タワー内部は利用価値がほとんどなかった。本発明ではこのタワーの内部を圧搾空気貯蔵庫4として利用する。空気は圧縮すると体積が小さくなり大容量を貯蔵でき、圧搾空気を開放すると大出力放出する。正に風力電池(蓄圧)である。空気の取出し口はタワー上部が望ましく、ただし風には水分を含み、かつ海洋では塩分を含む。このため、脱水及び脱塩のためのフィルターが必要である。本発明ではプロペラ型風車6を自然に風上に向かせることが特徴であるため、浮体船1の喫水線が重要である。タワー3の台座としての浮体船1は喫水面を境として上側のタワー頂部はナセル5とプロペラ型風車6とを一体化させた構造体とする。ナセル内部にはプロペラ型風車6の風力による回転エネルギーを圧力エネルギーに変換するために、プロペラ型風車6の回転軸7に連動した空気コンプレッサー8を取り付けて、ナセル内で圧搾空気を製造し、タワー内部の圧搾空気貯蔵庫4に貯蔵する。空気コンプレッサー8の取り付け場所は、回転式の場合はナセル内が望ましいが、ピストン式の場合はプロペラ型風車6の回転軸7にクランクシャフトを介して直線運動に変換してタワー内の上部にピストン式コンプレッサーを付けることもできる。ピストン式コンプレッサーをプロペラ型風車6の回転軸7に鉛直面上に放射線状に配置することによりナセル内に配置することもできる。油圧の利点は比較的細管で遠方まで高圧を送ることができることである。さらに海洋においては塩害による腐食が問題になる。その点油圧装置は腐食に強く、耐久性、操作性などの点で望ましい。そこでプロペラ型風車6の回転軸7に回転式油圧ポンプ9のみを取り付け、油圧制御装置11や油圧アクチュエーター10あるいは発電機や大型油圧装置など重量物は全て喫水面上のタワー下部又は該浮体船甲板に取り付ければ、作業性、安全性、保守点検などの点で望ましい。さらに、頭でっかちの風力エネルギー回収浮体船が転倒せず、かつ復元力を高くするために、重心2を下げた。そこで、浮体船1の喫水面の下側の支持体(台座底面)にはキール(センターボード)13を取り付け、その末端部には錘(バラスト)14を取り付けた。この錘14の形状はキール13が幅広の場合はラクビーボウルのような楕円面体であり、円柱構造の場合は球とする。本発明では、復元力を向上させる他にも、プロペラ型風車6が横揺れや縦揺れに強くし、かつ保守点検や港から設置場所までの装置の輸送などを考えて、キール13の内部は空洞部12を作り、あるときは空気を満たし浮力体の役割をし、風力エネルギー回収時には空洞部12に水を満たして、安定よく起立する構造をとっている。キール13の外壁は流線形状又は円形状あるいは楕円状をなす筒形または錐形とするが、風車構造体内部の空洞に注入する空気や水などの量を勘案し、風車構造体が横ぶれや縦ぶれが少なく、かつ起立を維持する構造を優先的に考え、さらに横に寝かせる場合と沈める場合を想定し、キールの形状や外壁の容積あるいは内部空洞の容積を特定する。とくに、水の流れが強いときは整流効果がある流線形形状が望ましい。さらにキール13の下方部には縦揺れを抑制するために、キール13に対して鉛直方向の両側面にフィン15を付けている。キール13が円筒の場合はフィンを等角度に取り付けることが必要であるが、キールが幅広(縦断面積が大)の場合にはキール13の水平方向にフィン15を取り付ける必要は無い。タワー内部の圧搾空気貯蔵庫4はタワー上部と下部に別々に圧搾空気貯蔵庫を備え、タワー下部は台風時の緊急避難のために水を満たし、水面下に没する場合に使用することもできる。また圧搾空気の圧入口はタワー上部でも下部でも良い。圧搾空気の取り出し口はタワー下部が望ましく、水面下でマイクロバルブを発生させるための場合も同様であるが、下部に限定するものではない。
本発明では請求項2において、プロペラ型風車が常時風上を向く機構16としてタワー3の台座としての浮体船1の喫水線近傍の風と水による抵抗及び流線について、浮体船の船首部位の喫水線近傍は尖形状17にして造波抵抗を軽減させ、船首部位の水面下を球状船首構造18にして喫水線下の球状船首で発生した波の山と谷が、喫水線近傍の尖った船首部で発生した波の谷と山とが互いに干渉して2つの波同士が打ち消されるため造波抵抗が軽減する。さらに喫水面下の浮体船の両舷が流線形状をして摩擦抵抗を減らし、かつ浮体船の船首部や船底に小さな孔を開け、タワー内部の圧搾空気貯蔵庫4から圧搾空気を噴出させてマイクロバブル23を発生させると、小さな気泡が船底を覆い、摩擦抵抗を激減させる。この船底から圧搾空気を噴出させる方法は、浮体船のように静止した構造物には、如実の効果は期待できないが、水の流速が早い場所では有効である。船尾の水面下の舵21は、物理的に船体の方向を変える以外は風上と風下を結ぶ線上で直線上に固定する。一般に、釣り船などに見られる、船尾甲板上の1枚帆のミズンや2枚帆のスパンカーなどの整流翼22は、浮体船を風上に向けるためには有効であるが、本発明のようにタワーを流線形状の場合は必ずしも必要ではないので、脱着可能とする。この風上に浮体船1を常に向けるに最も重要なことは浮体船1の船首部喫水線より上の部分に取り付けてあるフックにアンカーロープやアンカーチェーンをつなぎ、 船首をアンカーロープで固定(投錨)20することである。このアンカーロープが外れたら何の効果も無い。
【0020】
図2はプロペラ型風車をガス圧で始動するための概略図である。プロペラ型風車6は風が吹き出しても回らない。このため始動が必要である。本発明では回転軸7に空気コンプレッサー8が連動した場合には、風車ナセルの大気吸入口の空気入気弁24を閉め、外付けボンベから高圧ガスを瞬間的(パルス的)に、短時間送り、始動したらガスの供給を止め、大気吸入口をあければ、その状態で圧搾空気製造を開始する。
【0021】
図3はプロペラ型風車を油圧アキュムレーターで始動し、始動後の油圧を回転運動に変換するための概略図である。回転運動で得られた油圧を、ここで、油圧ポンプ9を始動するために、気体圧縮式の油圧アキュムレーター26を使用する。油圧アキュムレーター26にはピストン型を採用する。ピストン型はシリンダーの内壁側がピストンによって気体室と油室に分かれ、夫々の部屋には吸気弁と油出し入れ弁がある。これらの弁を油圧アキュムレーター制御弁27で制御し、起動時に、油出し入れ弁を開放して、油圧ポンプの油吸込み側を加圧すると、瞬時加圧により得られた超高圧で風車回転軸7に直結した該油圧ポンプ9を回転起動させ、プロペラ型風車6を回転始動させる。起動後はプロペラ型風車6の回転運動を該油圧ポンプ9で高圧油に増圧させ、この油をタワー3の下部又は浮体船甲板に備えた油圧制御装置11を介して該油圧アクチュエーター28に圧送しプロペラ型風車6は仕事を開始する。ここで、油圧アクチュエーター28が油圧モーター29の場合には直結した増速ギア30を介して発電機31を回転させて電力を得る。
【0022】
図4はプロペラ型風車を油圧アキュムレーターで始動し、始動後の油圧を往復運動に変換するための概略図である。油圧ポンプ9の回転運動で得られた高圧油をタワー3の下部又は浮体船甲板に備えた油圧制御装置11を介して油圧アクチュエーター28に圧送し、ここで油圧の往復運動に変換するために、油圧シリンダー32を使用する。ここで、油圧シリンダー32に直結した空気コンプレッサー33により圧搾空気を作り、風力エネルギー回収浮体船の圧搾空気貯蔵庫4に貯蔵した後、複数艘の圧搾空気を母船に集め、大型発電機を作動させるために使われる。
【0023】
図5は複数艘のプロペラ型風車で蓄圧された圧搾空気をメガフロートに集めるためのシステム図である。夫々のプロペラ型風車6の圧搾空気貯蔵庫4に蓄圧された圧搾空気は、高圧ホース24で母船やメガフロー34に集められ、発電用タービン35で高速回転させ、大型発電機31を回転させて電力を得る。この母船やメガフロー34には水上工場、オンサイト工場、液化ガス工場、電気分解工場などが設置されている。これら工場の廃熱又はメガフロート34に設備した太陽熱集光施設で加熱されることにより、圧搾空気は熱膨張して、さらに増圧されて発電タービン35を回転させる。この母船やメガフロー34に集められた圧搾空気は発電の他にも、圧搾空気をさらに圧縮して、断熱圧縮して得られる廃熱は熱源として、さらに圧縮された圧搾空気は断熱膨張現象を利用して液体空気を製造し、これから液体窒素や液体酸素を製造する。あるいは、各工場の機械類の駆動源として使用される。とくに、油圧装置は駆動部が高温になるが、海水や湖水の水を冷却水として用いることができる。
【0024】
図6は風力エネルギー回収浮体船の台座部を球状または楕円面体にした浮体船概観図である。図1の風力エネルギー回収浮体船との違いは台座を球または楕円面体とし、喫水線部分に船の船首部を球や楕円面体を変形させ、喫水線近傍は尖形状17にして造波抵抗を軽減させ、船首部位の水面下を球状船首構造18にして喫水線下の球状船首で発生した波の山と谷が、喫水線近傍の尖った船首部で発生した波の谷と山とが互いに干渉して2つの波同士が打ち消されるため造波抵抗が軽減する。この構造は浮上した潜水艦を高速で水面上を走らせることを想定し、喫水線近傍の船首部を尖らせ、喫水面下の球または楕円面体形台座の両舷が流線形状をして摩擦抵抗を減らし、かつ浮体船の船首部や船底に小さな孔を開け、タワー内部の圧搾空気貯蔵庫4から圧搾空気を噴出させてマイクロバブル23を発生させると、小さな気泡が船底を覆い、摩擦抵抗を激減させる。この船底から圧搾空気を噴出させる方法は、浮体船のように静止した構造物には、如実の効果は期待できないが、水の流速が早い場所では有効である。さらに、強風にも揺れが少なく、しかも建設、修理点検が楽で台風などの強風時の避難が容易な風車であるために、風車の構造は台座部36が球状又は楕円面体台座(浮体船)であり、台座36の底から下方に伸びたキール11の末端には球状又は楕円面体の錘14備え、キール11下端部には揺れ防止と傾き防止のために風上側に対して鉛直と平行をなすようにフィン15を取り付ける。そして、風車が常に風上を向くようにするために、台座の上部にタワー3を載せ、このタワーの最上部にはナセル5を備え、このナセル内には風車の回転軸に取り付けたクランクを介して風車タワー頭部に設備した多段コンプレッサーで空気を圧搾し、あるいは風車回転軸に取り付けたロータリー式コンプレッサーで空気を圧搾して風車タワー兼圧力ボンベに充填し、この圧搾空気を高圧ホース24を介して母船の液体空気製造工場に送り、かつ該風車装置を曳航や建造あるいは修理・保守点検の場合には水を抜き水上に寝かせ、あるいは台風などの強風を避ける場合には該タワー兼高圧ボンベにも水を注入して水面下まで垂直に水没させることができる。この水没を利用してナセル部やコンプレッサーの修理点検を行うこともできる。また常時風車を風上に向けるために台座36の船首には船首をアンカーロープ固定(投錨)20のためのフックを取り付け、サルカンを介してアンカーロープ21を連結する。また台座36の風下側に風の流れと同方向になるように平面状の舵21を固定する。
【0025】
図7は風力エネルギー回収浮体船の台座部を球状または楕円面体にした浮体船の正立した状態を示す概念図である。(A)は外観図、(B)は内部構造図である。この風車施設を正立させるために、台座内部38、円柱パイプ内部40にバラストとして海水や水を注入し、球上台座36のネック部まで水没させる。そしてプロペラ型風車6の回転をナセル5の内部にあるクランクシャフトで垂直運動に変え、圧搾空気製造所2で圧搾空気を製造し、これを流線形型柱状タワー内部(圧搾空気ボンベ室)40に貯蔵する。
図8は風力エネルギー回収浮体船を保守点検や緊急避難するための概略図である。(A)は水面に寝かせた状態図、(B)は水面下に沈めた状態図である。(A)のように風車装置を水面に寝かせるためには、台座内部38、キール内部39の水を抜くと、その排水量が増すにつれて徐々に横に傾き始め、最終的には横に寝た状態になる。とくに風車本体を港から牽引する場合や建造時あるいは保守点検や修理時には水を抜いて水面に倒し、水を入れれば立ち上がる。大型クレーンの必要も無く、後期の短縮、保守点検や修理を経済的に行うことができる。さらに台風接近時など強風でどうにもならなかったらば、流線形型柱状タワー内部40の圧搾空気を排出し、そこに水を注入すれば徐々に水面下に沈む。プロペラは建造が容易な2枚翼とする。
【0026】
図9は多段式圧搾空気製造ピストンの概略図である。風車の転倒を防ぐためには、風車装置の頭部すなわちナセル5を軽く、しかもナセル部の風受け面積を小さくする必要がある。このために発電機を載せる代わりにコンプレッサーを載せることにした。これまでの風車はプロペラを風上に向けるためにナセルに歯車を搭載していた。しかし本発明ではタワー自身を風上に向ける構造であるためナセル部をタワーと固定することができる。そこで、ここではナセル5内の風車回転軸7に取り付けた風車プーリー41の外周部に、回転運動を上下運動に変換するための横スライド式クランクシャフト42を介して風車タワー上部の多段圧搾機(コンプレッサー)43で空気吸入口44から吸い込んだ空気を圧縮する。シリンダー45内の複数個のピストン46にはクランクシャフト42で変換された上下運動を、上下伝達棒47を介して伝え、同時に上下伝達棒47に連動して開閉を行う各シリンダーの入気逆止弁48および各シリンダーの排気逆止弁49が働き、圧搾空気出口50から圧搾空気が排出される。歯車を用い風車の回転を助長することもできるが、ここでは、シリンダー45内のピストン46において夫々空気吸引室と圧搾室を逆向きに配置して力の均衡を図っている。ここでできた圧搾空気は風車の流線形型柱状タワー内部の圧搾空気ボンベ室に一時的に貯蔵され、高圧ホースを介して母船の液体空気製造工場に送られる。この多段圧搾機43を使い、水を電気分解して生成した水素を圧搾し、液体水素を製造することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、風力による回転エネルギーを圧搾空気として圧力エネルギーに変換して風車構造体の一部であるタワー内部に貯蔵し、蓄圧された圧搾空気を一箇所に集めて発電するため、発電機が大型化でき大電力が得られる。しかも、設備費が高価な風車施設を複数基設置するよりも、安価で、機械的メカニズムだけから構成される風力圧搾空気製造・貯蔵機能も有する風車構造体を複数基建造した方が、発電効率、設備費、建設コスト、故障率、メンテナンス費用などを考えると、経済的に有利となる。これら、ヨーロッパや中国などの浅瀬で実施されていた、洋上風車施設の建造技術を日本近海に適応するよりは、海洋の深度が深く海岸線が地球の赤道の約80%を有する海洋国日本の地の利を生かし、海洋の深度に関係なく、気象状況にもあまり影響されない、復元力に強く、圧搾空気駆動の発電を行ことができる、浮体船構造方式を打ち出した方が、大電力が得られるため、産業の活性化に繋がるのみならず、世界的資源の枯渇と資源高騰あるいはこれに伴う資源供給国の新規台頭や国際社会に影響力を拡大させている現況を沈静化させる意味においても、無尽蔵にあるクリーンで再生可能な海洋資源及び自然エネルギーに活路を求め、化石燃料の代替エネルギー源として確保する事は、四面を海に囲まれた我が国の産業にとっても地球環境上、更には経済的にも重要な手段になり得ると考える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】風力エネルギー回収浮体船の概観図である。
【図2】プロペラ型風車をガス圧で始動するための概略図である。
【図3】プロペラ型風車を油圧アキュムレーターで始動し、始動後の油圧を回転運動に変換するための概略図である。
【図4】プロペラ型風車を油圧アキュムレーターで始動し、始動後の油圧を往復運動に変換するための概略図である。
【図5】複数艘のプロペラ型風車で蓄圧された圧搾空気をメガフロートに集めるためのシステム図である。
【図6】風力エネルギー回収浮体船の台座部を球状または楕円面体にした浮体船概観図である。
【図7】風力エネルギー回収浮体船の台座部を球状または楕円面体にした浮体船の正立した状態を示す概念図である。(A)は外観図、(B)は内部構造図である。
【図8】風力エネルギー回収浮体船を保守点検や緊急避難するための概略図である。(A)は水面に寝かせた状態図、(B)は水面下に沈めた状態図である。
【図9】多段式圧搾空気製造ピストンの概略図である。
【符号の説明】
【0029】
1 浮体船
2 重心
3 タワー
4 圧搾空気貯蔵庫
5 ナセル
6 プロペラ型風車
7 回転軸
8 空気コンプレッサー
9 油圧ポンプ
10 油圧アクチュエーター
11 油圧制御装置
12 空洞部 (水タンク)
13 キール (センターボード)
14 錘(おもり、バラスト)
15 フィン
16 常時風上を向く機構
17 船首部位の喫水線(尖形状)
18 喫水線下 (球状船首構造)
19 喫水面下(流線型状)
20 船首をアンカーロープで固定(投錨)
21 舵
22 整流翼(ミズン、スパンカー)
23 マイクロバブル(圧搾空気で)
24 空気入気弁
25 超高圧気体(窒素ガス)
26 油圧アキュムレーター
27 油圧アキュムレーター制御弁
28 油圧アクチュエーター
29 油圧モーター
30 増速ギア
31 発電機
32 油圧シリンダー
33 空気コンプレッサー
34 メガフロート(母船、水上工場、オンサイト工場)、陸上工場
35 発電用タービン
36 球または楕円面体台座(浮体船)
37 圧搾空気製造所
38 台座内部(水:バラスト)
39 キール内部(水:バラスト)
40 流線形型柱状タワー内部(圧搾空気ボンベ室)
41 風車プーリー
42 横スライド式クランクシャフト(回転運動⇒上下運動に変換)
43 多段圧搾機(コンプレッサー)
44 空気吸入口
45 シリンダー
46 ピストン
47 上下伝達棒
48 各シリンダーの入気逆止弁
49 各シリンダーの排気逆止弁
50 圧搾空気出口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車タワーの台座が水面上に浮かぶ浮体船であり、該浮体船の重心に垂直方向に支持体として流線形状又は円形状の錐台構造体であるタワーを起立させ、該タワー内部が圧搾空気貯蔵庫であり、該浮体船の喫水面の上側のタワー頂部はナセルとプロペラ型風車とを一体化させた構造体とし、該ナセル内部には該プロペラ型風車の回転軸に連動した空気コンプレッサー及び/又は油圧ポンプなどの回転エネルギー及び/又は圧力エネルギー変換装置を取り付け、該タワー下部又は該浮体船甲板には油圧アクチュエーターと該油圧アクチュエーターに連動した油圧制御装置を具備させ、該浮体船喫水面の下側の支持体であるキール部の空洞部には水を満たし、該キールの外壁横断面が流線形状又は円形状あるいは楕円形状であり、該キールの末端部には楕円体又は球状の錘と該錘上側には複数枚のフィンを等角度に取り付け、該浮体船の喫水面近傍では該プロペラ型風車が常時風上を向く機構を具備させ、該支持体となる該タワー内部には該プロペラ型風車の回転力で得られた圧搾空気を蓄圧させる容器を備え付ける構造体とすることを特徴とする風力エネルギー回収浮体船。
【請求項2】
前記プロペラ型風車が常時風上を向く構造体として、該浮体船の船首部位の喫水線近傍は造波抵抗を軽減させる尖形状にし、該船首部位の水面下では球状船首構造にし、該浮体船の船首をアンカーロープで固定投錨させる構造にし、該浮体船の船尾の水面下には方向舵を設け、船尾甲板部には必要に応じて着脱自在とする整流翼を具備させ、該浮体船の船底に備えた小孔からは必要に応じて該圧搾空気を噴出させることを特徴とする請求項1記載の風力エネルギー回収浮体船。
【請求項3】
前記プロペラ型風車を始動させるに、回転エネルギーから圧力エネルギーへの変換装置が該空気コンプレッサーの場合は空気入気弁を閉じて超高圧気体を圧入し、始動後は該空気入気弁を開き、該圧搾空気製造用に供し、回転エネルギーから圧力エネルギーへの変換装置が該油圧ポンプの場合は、油圧アキュムレーターで瞬時加圧し、得られた超高圧で風車回転軸に直結した該油圧ポンプを回転起動させ、始動後は該プロペラ型風車の回転運動を該油圧ポンプで増圧させた油を前記プロペラ型風車タワーの下部又は該浮体船甲板に具備した該油圧装置及び該油圧アクチュエーターに圧送し、該油圧アクチュエーターが油圧モーターの場合には直結した増速ギアを介して発電機を回転させて電力を得る手段と、該油圧アクチュエーターが油圧シリンダーの場合には直結した空気コンプレッサーと連動させて圧搾空気を得る手段とを有することを特徴とする請求項1及び請求項2記載の風力エネルギー回収浮体船。
【請求項4】
単艘若しくは複数艘からなる風力エネルギー回収浮体船において、プロペラ型風車を一体化させた流線形状又は円形状の錐台構造体であるタワー内部が圧搾空気貯蔵庫であり、該浮体船の喫水面の上タワー内部に貯蔵された圧搾空気は高圧ホースを介してメガフロート機能を有する母船若しくは水上工場又はオンサイト工場あるいは陸上工場に集積させ、集積された該圧搾空気はメガフロート又はオンサイト工場あるいは陸上工場において、発電用タービンの回転源、産業用圧搾空気、又は液体空気、液体酸素、液体窒素の製造用に供されることを特徴とする請求項1記載の風力エネルギー回収浮体船。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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